説明

中継システム、中継方法及び中継プログラム

【課題】要求が多い場合においても渋滞を抑制し、迅速な処理を実現するための中継システム、中継方法及び中継プログラムを提供する。
【解決手段】ルータ装置20の制御部21は、受信したパケットのフィルタリングを行ない、タイムスタンプを付与する。そして、制御部21は、パケット蓄積部22にパケットを格納する。パケット蓄積部22に格納されたパケットは、優先順位により到着時刻が早い順番に、ネットワークを介して送出される。更に、ルータ装置20の制御部21は、パケット蓄積量の監視処理を実行する。蓄積量が基準量を超過した場合、制御部21は、タイムスタンプが古いものから所定量のパケットを廃棄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信した要求を効率的に転送するための中継システム、中継方法及び中継プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
システムには処理できる許容量があり、要求が集中すると輻輳状態が生じる。インターネット等における通信では、パケットは中継ルータにおいて待ち行列(キュー)に入れられて処理を待機する。これが通信の遅延の原因となる。中継ルータにおいて受け入れられる待ち行列の量には限りがあるため、パケットが入りきらない場合は転送待ちパケットのいくつかを廃棄し、再送等の処理を行なわなければならなくなる。このパケットの配送の遅延や廃棄される状況がインターネットにおける輻輳である。
【0003】
輻輳の発生を回避する技術や輻輳状態から速やかに回復させるための制御技術が検討されている。例えば、システムの輻輳発生時に品質を維持し、またパケット廃棄に起因する再送を減らしてネットワークを効率的に使用するためのルータ装置が検討されている(例えば、特許文献1参照。)。この文献に記載のルータ装置では、優先度制御ユニットによって、受信したパケットの優先度情報およびプロトコル情報から処理優先度および廃棄許容度を決定し、優先度キューにパケットを追加する。バッファ管理ユニットにおいて空きバッファ領域の状態を監視し、空きバッファ領域の容量が不足し輻輳状態となった場合は、廃棄制御ユニットにおいて処理優先度および廃棄許容度に基づいて選択したパケットを廃棄する。
【0004】
また、ルータ装置での情報の鮮度を保証するための技術も検討されている(例えば、特許文献2参照。)。この文献に記載のルータ装置では、インターネット上の端末から受信した各パケットのバッファでの待機時間を計測する。そして、パケットの待機時間が最大待機時間を超えたことを検出した場合には、そのパケットを廃棄する。また、送信端末が各パケットに情報の重要度を付与し、これに応じてダイアルアップルータの最大待機時間を変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−135512号公報(第1頁、図1)
【特許文献2】特開2000−286893号公報(第1頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような要求の処理においては、一般的に、受信した要求を待ち行列に蓄積し、最初に受信した要求から順番に処理していくことになる(FIFO)。図6は、到着順番と待機時間との関係を示したグラフである。横軸において、右端が早く到着した要求であり、待機時間が長くなっている。後から到着した要求は、左方に蓄積されていき、待機時間が短くなっている。そして、待機していた要求は、FIFOにより右端から順次処理されていくことになる。このような処理において、要求の処理速度(単位時間当たりの要求処理量)と到着速度(単位時間当たりの要求受信量)とが一致している場合、新たに到着した要求は、同じタイミングで処理された要求の待機時間(到着時刻から処理時刻までの時間)と同じ時間だけ待つことになる。
【0007】
ここで、すべての要求の総待機時間は、図6の「待機時間」と「待機している要求量」
との総和(面積)で表わされることになる。図6(a)に示すように要求が少ない場合には総待機時間は短い。しかし、待機している要求量が増大してくると、処理の流れが悪くなり(渋滞)、図6(b)のように、総待機時間が急激に長くなる。
【0008】
そして、受信した要求量が、待ち行列の受け入れ可能量を超えた場合には、新たな要求が廃棄される輻輳が生じる。特許文献1に記載された技術では、輻輳になってからパケットを廃棄するので、総待機時間の短縮を図ることができず、渋滞を解消することはできない。
【0009】
このような輻輳を回避するためには、一般的には要求を処理する処理システムの性能を向上させる投資が検討されている。しかし、要求量にはばらつきがあり、ピーク時の処理量に対応させたシステムでは、ピーク時以外の平常時には過剰な投資となる。
【0010】
また、特許文献2に記載された技術では、パケット量が少ない場合にも廃棄されてしまう。このため、送信側は再送等の処理を行なわなければならなくなり、負担が大きくなる。
【0011】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、この目的は、要求が多い場合においても渋滞を抑制し、迅速な処理を実現するための中継システム、中継方法及び中継プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、第1装置からの要求を第2装置に転送する制御手段と、第1装置から受信した要求を受信時刻に関連づけて記憶する要求蓄積手段とを備えた中継システムであって、前記制御手段が、前記第1装置から要求を受信する受信手段と、前記受信手段において受信した要求を受信時刻に関連づけて前記要求蓄積手段に記録する手段と、前記要求蓄積手段に記憶された要求を、受信時刻が早い要求から順番に第2装置に転送する転送手段と、前記要求蓄積手段に記憶された要求量が受入基準量を超えた場合には、受信時刻が早い順番に転送拒否基準量の要求について転送を拒否する手段とを備えたことを要旨とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の中継システムにおいて、前記制御手段が、第1装置からの要求の到着速度を算出し、前記到着速度に対応して、転送拒否基準量を算出する手段を更に備えていることを要旨とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の中継システムにおいて、前記制御手段が、前記要求蓄積手段に蓄積された各要求の受信時刻に基づいて待機時間を算出し、前記待機時間が転送中止基準時間を経過した要求の転送を拒否する手段を更に備えていることを要旨とする。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一つに記載の中継システムにおいて、前記制御手段が、前記要求蓄積手段に蓄積された各要求の受信時刻に基づいて待機時間を算出し、前記待機時間に対応した転送拒否基準量を算出し、この転送拒否基準量の要求の転送を拒否する手段を更に備えていることを要旨とする。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一つに記載の中継システムにおいて、前記要求は、通信端末から送信されたパケットであることを要旨とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一つに記載の中継システムにおいて、前記要求は、電話端末から送信された電話コールであり、前記制御手段が、前記電話端末に対して、中継ができなかったことを示すメッセージを送信する手段を更に備えている
ことを要旨とする。
【0017】
請求項7に記載の発明は、第1装置からの要求を第2装置に転送する制御手段と、第1装置から受信した要求を受信時刻に関連づけて記憶する要求蓄積手段とを備えた中継システムを用いる中継方法であって、前記制御手段が、前記第1装置から要求を受信する受信段階と、前記受信段階において受信した要求を受信時刻に関連づけて前記要求蓄積手段に記録する段階と、前記要求蓄積手段に記憶された要求を、受信時刻が早い要求から順番に第2装置に転送する転送段階と、前記要求蓄積手段に記憶された要求量が受入基準量を超えた場合には、受信時刻が早い順番に転送拒否基準量の要求について転送を拒否する段階とを実行することを要旨とする。
【0018】
請求項8に記載の発明は、第1装置からの要求を第2装置に転送する制御手段と、第1装置から受信した要求を受信時刻に関連づけて記憶する要求蓄積手段とを備えた中継システムを用いる中継プログラムであって、前記制御手段を、前記第1装置から要求を受信する受信手段、前記受信手段において受信した要求を受信時刻に関連づけて前記要求蓄積手段に記録する手段、前記要求蓄積手段に記憶された要求を、受信時刻が早い要求から順番に第2装置に転送する転送手段、前記要求蓄積手段に記憶された要求量が受入基準量を超えた場合には、受信時刻が早い順番に転送拒否基準量の要求について転送を拒否する手段として機能させることを要旨とする。
【0019】
(作用)
請求項1、7又は8に記載の発明によれば、制御手段が、第1装置から要求を受信し、受信時刻に関連づけて要求蓄積手段に記録する。要求蓄積手段に記憶された要求を、受信時刻が早い要求から順番に第2装置に転送する。そして、要求蓄積手段に記憶された要求量が受入基準量を超えた場合には、受信時刻が早い順番に転送拒否基準量の要求について転送を拒否する。古い要求を転送対象外とすることにより、総待機時間を減らすことができる。総待機時間を短くするためには、中継システムの能力を向上させるための投資により対応することも可能である。しかし、要求量が少ないときには、必要以上の能力を備えることになり過剰投資となる。そこで、待機時間が長くなっている場合には送信側において再送信してもらうことにより、中継システムにおいて蓄積される要求量を減らして総待機時間を短くする。ここで、送信側が多数の場合には、各送信側の負担の増加は少ないので、中継システムの必要以上の投資を抑制しながら、中継システムにおける総待機時間を減らすことができる。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、制御手段が、第1装置からの要求の到着速度を算出し、到着速度に対応して、転送拒否基準量を算出する。単位時間当たりに到着する要求量(到着速度)が多い場合には、総待機時間の増加率も速くなるため、転送拒否する量を多くすることにより、新たな要求についての待機時間を短くすることができる。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、制御手段が、要求蓄積手段に蓄積された各要求の受信時刻に基づいて待機時間を算出し、待機時間が転送中止基準時間を経過した要求の転送を拒否する。これにより、待機時間が長い要求を排除することができ、新たな要求についての待機時間を短くすることができる。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、制御手段が、要求蓄積手段に蓄積された各要求の受信時刻に基づいて待機時間を算出する。そして、待機時間に対応した転送拒否基準量を算出し、この転送拒否基準量の要求の転送を拒否する。これにより、要求が到着してから処理されるまでの時間(待機時間)により渋滞状況を把握し、渋滞状況に応じて待機量を制限することができる。
【0023】
請求項5に記載の発明によれば、通信端末から送信されたパケットに適用することにより、ネットワーク上での渋滞を抑制することができる。
請求項6に記載の発明によれば、電話端末から送信された電話コールに適用することができる。制御手段が、電話端末に対して、中継ができなかったことを示すメッセージを送信する。利用者が、一旦、電話コールを廃棄し、必要に応じて電話のかけ直しを行なうことにより、負荷分散を図りながら、待機時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、要求が多い場合においても渋滞を抑制し、迅速な処理を実現するための中継システム、中継方法及び中継プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態のシステム概略図。
【図2】本実施形態の処理手順の説明図。
【図3】本実施形態の処理手順の説明図。
【図4】他の実施形態の処理手順の説明図。
【図5】他の実施形態の処理手順の説明図。
【図6】到着順番と待機時間の関係の説明図であって、(a)は要求が少ない場合、(b)は要求が多い場合の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した一実施形態を、図1〜図3に従って説明する。本実施形態では、図1に示すように、中継システムとしてのルータ装置20を用いる。本実施形態では、このルータ装置20は、ネットワークを介して、送信元である通信装置10(第1装置)からのパケットを受信する。そして、ネットワークを介して、送信先である通信装置11(第2装置)に転送する。なお、通信装置10、通信装置11の数はそれぞれ一つに限定されるものではなく、複数の送信元と送信先とを中継する場合に適用可能である。
【0027】
ネットワークを介して受信するパケットには、パケットフィルタリングにより、通信内容に応じて異なる優先順位が設定される。本実施形態では、優先順位として「高」、「中」、「低」の三つの段階がある場合を想定する。優先順位:「高」のパケットについては、到着順番により最優先で転送を行なう。具体的には、先に到着していた低い順位のパケットがある場合にも、優先順位:「高」のパケットを優先して転送する。優先順位:「中」のパケットについては、優先順位:「高」のパケットが蓄積されていない場合、到着順番により転送を行なう。優先順位:「低」のパケットについては、優先順位「高」、「中」のパケットが蓄積されていない場合、到着順番により転送を行なう。このため、優先順位:「高」、「中」のパケットが蓄積されている場合には、優先順位:「低」のパケットは、高い優先順位のパケットがなくなるまで待機状態となり待機時間が長くなる傾向にある。そこで、本実施形態においては、この優先順位:「低」のパケットに対して本願発明を適用する場合を説明する。
【0028】
ルータ装置20は、制御部21とパケット蓄積部22を備えている。制御部21は、受信したパケットの制御処理を実行する。そして、制御部21は、CPU、RAM、ROM等から構成された制御手段として機能し、後述する処理(受信段階、記録段階、転送段階、転送拒否段階を含む処理)を行なう。このための中継プログラムを実行することにより、制御部21は、パケット受信手段211、パケット送信手段212、パケット廃棄手段213として機能する。
【0029】
パケット受信手段211は、ネットワークを介して送信元である通信装置10からパケ
ットを受信する処理を実行する。そして、パケット受信手段211は、受信したパケットをパケット蓄積部22に格納する。
【0030】
パケット送信手段212は転送手段として機能し、パケット蓄積部22に格納されたパケットを、到着順番に基づいて転送を行なう処理を実行する。この場合、優先順位:「高」のパケットが蓄積されている場合には、この順位のパケットを優先的に転送する。優先順位:「高」のパケットがない場合には、優先順位:「中」のパケットの転送を行なう。更に、優先順位:「高」、「中」のパケットがない場合には、優先順位:「低」のパケットの転送を行なう。
【0031】
パケット廃棄手段213は、優先順位:「低」のパケットについて、後述するように、パケットを廃棄する処理を実行する。このため、パケット廃棄手段213は、パケットの廃棄要否を判定するための基準量(受入基準量)に関するデータを保持している。本実施形態においては、優先順位:「低」に割り当てられたメモリ領域の90%を基準量として保持している。
【0032】
更に、パケット廃棄手段213は、廃棄対象のパケットの種別と廃棄量に関するデータを保持している。本実施形態においては、優先順位:「低」のパケットを廃棄対象として、メモリ使用量が基準割合になるまでの量(転送拒否基準量)を廃棄する。
【0033】
パケット蓄積部22は要求蓄積手段として機能し、ネットワークを介して受信し、転送を待機しているパケットを格納する。このパケット蓄積部22は、先に入力したデータが先に出力されるFIFO型のデータ構造(キュー)として機能する。このパケット蓄積部22には、パケットの種別やアドレスに応じて決定された優先順位(「高」、「中」、「低」)毎に割り当てられたメモリ領域が設けられている。
【0034】
各パケットは、ヘッダ部とデータ部とを備える。ヘッダ部は、サービスタイプ情報、プロトコル情報、送信先アドレス情報、送信元アドレス情報等が設定されるフィールドを含んで構成される。このサービスタイプ情報には、ビデオ、音声、ウェブ、メールに対応して決定された優先順位が設定される。
【0035】
データ部には、このパケットにより送信される内容(アプリケーションのデータ)が記録される。
更に、パケット蓄積部22においては、各パケットには、到着順番を特定できるように、到着時刻に関するデータが関連付けられて記録される。この到着時刻は、このパケットをルータ装置20が受信した時刻(受信時刻)を用いる。
【0036】
次に、上記のように構成されたシステムにおいて、パケット転送の処理手順について、図2〜図3を用いて説明する。
(パケット受信処理)
まず、パケット受信処理について、図2を用いて説明する。
【0037】
ここでは、ルータ装置20の制御部21は、パケットフィルタリング処理を実行する(ステップS1−1)。具体的には、制御部21のパケット受信手段211は、受信したパケットのヘッダ部から、プロトコルや送信元アドレス、送信先アドレスやポート番号などの情報を取得し、このパケットを通過させるかどうかを決定する。通過させることができないパケットについては、送信元に通知したり、破棄したりする。
【0038】
更に、パケット受信手段211は、サービスタイプ情報、送信元アドレスや送信先アドレス、使用プロトコル等のヘッダ部内のフィールドで指定された優先度に基づいて優先順
位(本実施形態では「高」、「中」、「低」)を決定する。この優先順位の決定には、公知のQoS(Quality of Service)における優先制御技術を用いる。
【0039】
次に、ルータ装置20の制御部21は、タイムスタンプ付与処理を実行する(ステップS1−2)。具体的には、制御部21のパケット受信手段211は、パケットフィルタリングを行なったパケットに対して到着時刻を関連付けられる。
【0040】
次に、ルータ装置20の制御部21は、パケットの格納処理を実行する(ステップS1−3)。具体的には、制御部21のパケット受信手段211は、到着時刻と関連付けたパケットをパケット蓄積部22に格納する。この場合、パケット受信手段211は、決定された優先順位のキューに格納する。
【0041】
このパケット蓄積部22に格納されたパケットは、パケット送信手段212により、優先順位が高い順番で、到着時刻が早い順番に、ネットワークを介して送出される。
【0042】
(廃棄処理)
次に、廃棄処理について、図3を用いて説明する。
ここでは、ルータ装置20の制御部21は、パケット蓄積量の監視処理を実行する(ステップS2−1)。具体的には、制御部21のパケット廃棄手段213は、パケット蓄積部22に格納された転送待機中のパケットの蓄積によるメモリの使用量を算出する。本実施形態においては、優先順位:「低」のパケットの蓄積量を算出する。
【0043】
そして、ルータ装置20の制御部21は、蓄積量が基準量を超過したかどうかについての判定処理を実行する(ステップS2−2)。具体的には、制御部21のパケット廃棄手段213は、保持している基準量と、算出したメモリ使用量とを比較する。
【0044】
蓄積量が基準量を超過した場合(ステップS2−2において「YES」の場合)、ルータ装置20の制御部21は、タイムスタンプが古いものから所定量のパケットの廃棄処理を実行する(ステップS2−3)。具体的には、制御部21のパケット廃棄手段213は、優先順位:「低」のキューの中から到着時刻が早いパケットから廃棄する。この場合、パケット蓄積部22において優先順位:「低」に割り当てられたメモリ領域が所定割合(例えば50%)になるまでパケットを廃棄する。この場合、パケット廃棄手段213は、パケットを廃棄したことを、このパケットを送信した通信装置10に通知する。そして、この通信装置10は、パケットが廃棄された通信装置10は、所定時間の経過後にパケットを再送信する。
【0045】
一方、蓄積量が基準量を超過していない場合(ステップS2−2において「NO」の場合)、ルータ装置20の制御部21は、パケット蓄積量の監視処理(ステップS2−1)を継続する。
【0046】
本実施形態の中継システムによれば、以下のような効果を得ることができる。
・ 本実施形態では、蓄積量が基準量を超過した場合(ステップS2−2において「YES」の場合)、ルータ装置20の制御部21は、タイムスタンプが古いものから所定量のパケットの廃棄処理を実行する(ステップS2−3)。これにより、到着時刻が早いパケットを廃棄するため、パケット蓄積部22に蓄積されたパケットの総待機時間を短縮することができる。
【0047】
(第2の実施形態)
第1の実施形態においては、パケットの蓄積量が基準量を超過した場合、一定の割合になるまでの転送拒否基準量のパケットを廃棄する。これに代えて、第2の実施形態におい
ては、渋滞状況(ここでは、パケット受信からの経過時間)に応じて廃棄量を決定する。この実施形態においては、パケット廃棄手段213に廃棄量決定テーブルを保持させておく。この廃棄量決定テーブルには、経過時間に対応して、パケットの廃棄量(転送拒否基準量)が設定されている。
【0048】
この場合の廃棄処理を、図4を用いて説明する。
まず、ルータ装置20の制御部21は、パケット蓄積量の監視処理を実行する(ステップS3−1)。具体的には、ステップS2−1と同様に、制御部21のパケット廃棄手段213は、パケット蓄積部22に格納された優先順位:「低」のパケット蓄積量を算出する。
【0049】
次に、ルータ装置20の制御部21は、蓄積量が基準量を超過したかどうかについての判定処理を実行する(ステップS3−2)。具体的には、ステップS2−2と同様に、制御部21のパケット廃棄手段213は、保持している基準量と、算出したパケット蓄積によるメモリの使用量とを比較する。
【0050】
蓄積量が基準量を超過した場合(ステップS3−2において「YES」の場合)、ルータ装置20の制御部21は、先頭パケットのタイムスタンプの取得処理を実行する(ステップS3−3)。具体的には、制御部21のパケット廃棄手段213は、パケット蓄積部22の優先順位:「低」のキューに蓄積されたパケットの中で最も早い到着時刻を取得する。
【0051】
次に、ルータ装置20の制御部21は、このタイムスタンプに応じて廃棄量の決定処理を実行する(ステップS3−4)。具体的には、制御部21のパケット廃棄手段213は、取得した先頭パケットの到着時刻から現在時刻までの経過時間を算出する。そして、パケット廃棄手段213は、廃棄量決定テーブルを用いて、算出した経過時間に対応する廃棄量を取得する。
【0052】
次に、ルータ装置20の制御部21は、タイムスタンプが古いものから廃棄量のパケットの廃棄処理を実行する(ステップS3−5)。具体的には、制御部21のパケット廃棄手段213は、決定した廃棄量に到達するまで、到着時刻が早いものから順番にパケットを廃棄する。
【0053】
本実施形態の中継システムによれば、以下のような効果を得ることができる。
・ 本実施形態では、ルータ装置20の制御部21は、先頭パケットのタイムスタンプの取得処理を実行する(ステップS3−3)。そして、制御部21は、このタイムスタンプに応じて廃棄量の決定処理を実行する(ステップS3−4)。これにより、待機時間が長い場合には、より多くのパケットを廃棄することにより、総待機時間の短縮化を図ることができる。
【0054】
(第3の実施形態)
第1の実施形態においては、パケットの蓄積量が基準量を超過した場合、一定の割合になるまでの転送拒否基準量のパケットを廃棄する。また、第2の実施形態においては、先頭パケットの待機時間に基づいて廃棄量(転送拒否基準量)を決定する。これに代えて、第3の実施形態においては、待機時間が基準時間を超えたパケットを廃棄する。このため、パケット廃棄手段213は、待機を許容するために予め定められた基準時間(最大待機可能時間)に関するデータを保持する。
【0055】
この場合の廃棄処理を、図5を用いて説明する。
まず、ルータ装置20の制御部21は、パケット蓄積量の監視処理を実行する(ステッ
プS4−1)。具体的には、ステップS2−1と同様に、制御部21のパケット廃棄手段213は、パケット蓄積部22に格納された優先順位:「低」のパケット蓄積量を算出する。
【0056】
まず、ルータ装置20の制御部21は、蓄積量が基準量を超過したかどうかについての判定処理を実行する(ステップS4−2)。具体的には、ステップS2−2と同様に、制御部21のパケット廃棄手段213は、保持している基準量と、算出したパケット蓄積によるメモリの使用量とを比較する。
【0057】
蓄積量が基準量を超過した場合(ステップS4−2において「YES」の場合)、ルータ装置20の制御部21は、タイムスタンプが古いものから所定量のパケットの廃棄処理を実行する(ステップS4−3)。具体的には、制御部21のパケット廃棄手段213は、優先順位:「低」のキューの中から受信時刻が古いものから順番に廃棄する。この場合、パケット蓄積部22において優先順位:「低」に割り当てられたメモリ領域の所定割合(例えば70%)になるまでパケットを廃棄する。
【0058】
次に、ルータ装置20の制御部21は、先頭パケットのタイムスタンプの取得処理を実行する(ステップS4−4)。具体的には、制御部21のパケット廃棄手段213は、パケット蓄積部22の優先順位:「低」のキューに蓄積されたパケットの中で到着時刻が最も早いパケットを特定する。
【0059】
次に、ルータ装置20の制御部21は、最大待機可能時間を経過したかどうかについての判定処理を実行する(ステップS4−5)。具体的には、制御部21のパケット廃棄手段213は、取得した先頭パケットの受信時刻から現在時刻までの経過時間を算出する。そして、パケット廃棄手段213は、保持している最大待機可能時間と、算出した経過時間とを比較する。
【0060】
最大待機可能時間を経過していない場合(ステップS4−5において「NO」の場合)、ルータ装置20の制御部21は、パケット蓄積によるメモリの使用量の監視を継続する。
【0061】
一方、最大待機可能時間を経過している場合(ステップS4−5において「YES」の場合)、ルータ装置20の制御部21は、後続パケットがあるかどうかについての判定処理を実行する(ステップS4−6)。具体的には、制御部21のパケット廃棄手段213は、優先順位:「低」のキューにおいて、先頭パケットの次に待機しているパケットがあるかどうかを判定する。
【0062】
後続パケットがある場合(ステップS4−6において「YES」の場合)には、ルータ装置20の制御部21は、最大待機可能時間を超えたパケットの廃棄処理を実行する(ステップS4−7)。具体的には、制御部21のパケット廃棄手段213は、先頭パケットを廃棄する。そして、ステップS4−4の処理に戻る。このように、順次、後続パケットについて処理を繰り返す。後続パケットがない場合(ステップS4−6において「NO」の場合)には、パケット蓄積量の監視処理(ステップS4−1)を継続する。
【0063】
本実施形態の中継システムによれば、以下のような効果を得ることができる。
・ 本実施形態では、蓄積量が基準量を超過した場合(ステップS4−2において「YES」の場合)、ルータ装置20の制御部21は、タイムスタンプが古いものから所定量のパケットの廃棄処理を実行する(ステップS4−3)。更に、最大待機可能時間の経過についての判定処理(ステップS4−5)、後続パケットの有無の判定処理(ステップS4−6)を実行する。そして、最大待機可能時間を経過している場合であって、後続パケ
ットがある場合、ルータ装置20の制御部21は、パケットの廃棄処理を実行する(ステップS4−7)。これにより、待機時間の増加を抑制するとともに、輻輳が生じないようにパケットを廃棄することができる。また、後続パケットがない場合には廃棄せずに待機させることにより、送信側の負荷軽減を図ることができる。
【0064】
また、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
○ 上記実施形態においては、優先順位:「低」のみを廃棄対象とした。廃棄の対象は、これに限定されるものではなく、より高い優先順位のパケットを廃棄の対象とすることも可能である。例えば、「優先順位:中」のパケットを廃棄対象にするようにしてもよい。
【0065】
○ 上記第2の実施形態においては、優先順位:「低」の渋滞状況に応じて廃棄量を決定した。廃棄量の決定方法は、これに限定されるものではない。例えば、優先順位が高いパケットの混雑状況に応じて廃棄量を決定したりするようにしてもよい。具体的には、到着速度に対応して廃棄量を決定するための廃棄量決定テーブルを、パケット廃棄手段213に保持させておく。この廃棄量決定テーブルにおいては、優先順位が高いパケットの到着速度が速い場合に、優先順位が低いパケットの廃棄量を多くするように設定されている。
【0066】
パケット廃棄手段213は、単位時間における上位の優先順位(優先順位:「高」や「中」)のパケットの到着量を計算し、到着速度を算出する。次に、パケット廃棄手段213は、廃棄量決定テーブルから、この到着速度に対応する廃棄量を取得する。そして、パケット廃棄手段213は、この廃棄量に応じた優先順位が低いパケットを廃棄する。
【0067】
○ 上記実施形態においては、要求としてのパケットを受信し、転送した。処理対象の要求はパケットに限定されるものではない。例えば、要求として、電話コールの中継システムに適用可能である。具体的には、利用者の電話端末から受信した電話コールをオペレータ端末やホストシステムに取り次ぐ場合を想定する。
【0068】
利用者の電話端末から取り次ぎ要求の電話コールが着信した中継システムは、オペレータ端末やホストシステムにおける対応可否を判定する。オペレータ端末やホストシステムにおいて対応ができない場合、中継システムは、待機を依頼するメッセージを利用者の電話端末に出力する。そして、中継システムは、着信の順番に電話コールの待機を管理する。
【0069】
ここで、オペレータ端末やホストシステムにおいて対応となった場合、着信順番に電話コールをオペレータ端末やホストシステムに取り次ぐ。
更に、中継システムは、待機中の電話コールの本数を監視する。この待機数が基準量を超えた場合、待機時間が長い電話コールから順番に、待機数が所定値(例えば、半分)になるまで、利用者の電話端末に対して取り次ぎができないことを示すメッセージを出力する。これにより、待機している取り次ぎ要求の総和時間を短縮することができる。例えば、チケット申込やコールセンタ、災害時における電話コールの輻輳にも応用することができる。
【符号の説明】
【0070】
10,11…通信装置、20…ルータ装置、21…制御部、211…パケット受信手段、212…パケット送信手段、213…パケット廃棄手段、22…パケット蓄積部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1装置からの要求を第2装置に転送する制御手段と、
第1装置から受信した要求を受信時刻に関連づけて記憶する要求蓄積手段とを備えた中継システムであって、
前記制御手段が、
前記第1装置から要求を受信する受信手段と、
前記受信手段において受信した要求を受信時刻に関連づけて前記要求蓄積手段に記録する手段と、
前記要求蓄積手段に記憶された要求を、受信時刻が早い要求から順番に第2装置に転送する転送手段と、
前記要求蓄積手段に記憶された要求量が基準量を超えた場合には、受信時刻が早い順番に転送拒否基準量の要求について転送を拒否する手段と
を備えたことを特徴とする中継システム。
【請求項2】
前記制御手段が、第1装置からの要求の到着速度を算出し、
前記到着速度に対応して、転送拒否基準量を算出する手段を更に備えていることを特徴とする請求項1に記載の中継システム。
【請求項3】
前記制御手段が、前記要求蓄積手段に蓄積された各要求の受信時刻に基づいて待機時間を算出し、
前記待機時間が転送中止基準時間を経過した要求の転送を拒否する手段を更に備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の中継システム。
【請求項4】
前記制御手段が、前記要求蓄積手段に蓄積された各要求の受信時刻に基づいて待機時間を算出し、
前記待機時間に対応した転送拒否基準量を算出し、この転送拒否基準量の要求の転送を拒否する手段を更に備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の中継システム。
【請求項5】
前記要求は、通信端末から送信されたパケットであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の中継システム。
【請求項6】
前記要求は、電話端末から送信された電話コールであり、
前記制御手段が、前記電話端末に対して、中継ができなかったことを示すメッセージを送信する手段を更に備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の中継システム。
【請求項7】
第1装置からの要求を第2装置に転送する制御手段と、第1装置から受信した要求を受信時刻に関連づけて記憶する要求蓄積手段とを備えた中継システムを用いる中継方法であって、
前記制御手段が、
前記第1装置から要求を受信する受信段階と、
前記受信段階において受信した要求を受信時刻に関連づけて前記要求蓄積手段に記録する段階と、
前記要求蓄積手段に記憶された要求を、受信時刻が早い要求から順番に第2装置に転送する転送段階と、
前記要求蓄積手段に記憶された要求量が基準量を超えた場合には、受信時刻が早い順番に転送拒否基準量の要求について転送を拒否する段階と
を実行することを特徴とする中継方法。
【請求項8】
第1装置からの要求を第2装置に転送する制御手段と、第1装置から受信した要求を受信時刻に関連づけて記憶する要求蓄積手段とを備えた中継システムを用いる中継プログラムであって、
前記制御手段を、
前記第1装置から要求を受信する受信手段、
前記受信手段において受信した要求を受信時刻に関連づけて前記要求蓄積手段に記録する手段、
前記要求蓄積手段に記憶された要求を、受信時刻が早い要求から順番に第2装置に転送する転送手段、
前記要求蓄積手段に記憶された要求量が基準量を超えた場合には、受信時刻が早い順番に転送拒否基準量の要求について転送を拒否する手段
として機能させることを特徴とする中継プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−239570(P2010−239570A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87914(P2009−87914)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(592131906)みずほ情報総研株式会社 (187)
【出願人】(509091859)さくらアカデミア株式会社 (1)
【Fターム(参考)】