説明

中継システム、端末装置、およびショートメッセージ中継方法、およびコンピュータプログラム

【課題】無線選択呼出受信機の機能を有しない端末装置であっても通話中にショートメッセージを受信できるようにする。
【解決手段】交換局1に、第一の端末装置がBチャネルを介して回線交換方式によって第三の端末装置と通信を行っているか否かを判別する着信側状態判別部132と、そのように通信を行っていると第一の端末装置が判別された場合に、第一の端末装置が使用するBチャネルを特定する、チャネル判別部133と、特定されたBチャネルに対応するDチャネルを介して、第二の端末装置からのショートメッセージをINFOメッセージによって第一の端末装置へ転送する転送手段と、を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショートメッセージのやり取りを行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、Personal Handy-phone System(PHS)または携帯電話通信システムなどを用いた移動体通信サービスが普及している。移動体通信サービスには、通話のサービスだけでなく、インターネットへの接続のサービスおよびGlobal Positioning System(GPS)のサービスなど、様々なサービスがある。
【0003】
移動体通信サービスの1つとして、「Short Message Service(SMS)」などと呼ばれるサービスがある。SMSは、2台の端末装置(移動局)同士で「ショートメッセージ」と呼ばれるメッセージをやり取りするサービスである。PHSにおいては、2台の端末装置は、Dチャネルを介して回線交換方式によってショートメッセージをやり取りする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−143555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
携帯無線機(端末装置)は、互いに独立な携帯電話システムの移動機の機能および無線選択呼出システムの移動機の機能、つまり、携帯電話機の機能と無線選択呼出受信機の機能とを併せ持っていれば、通話中であっても、メッセージを受信することができる(特許文献1)。
【0006】
ところが、無線選択呼出受信機の機能を有しない端末装置、例えば、PHSの端末装置は、通話中の場合は、ショートメッセージを受信することができない。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑み、無線選択呼出受信機の機能を有しない端末装置が通話中であってもショートメッセージが受信できるようにすることを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態に係る中継システムは、第二の端末装置から第一の端末装置へ宛てて発信されたショートメッセージである送信対象ショートメッセージを中継する中継システムであって、音声のやり取りに用いられる通信チャネルである音声チャネルを介して前記第一の端末装置が回線交換方式によって第三の端末装置と通信を行っているか否かを判別する、通信状態判別手段と、前記第一の端末装置が前記通信を行っていると判別された場合に、前記第一の端末装置が使用する前記音声チャネルを特定する、音声チャネル特定手段と、特定された前記音声チャネルの制御用の通信チャネルである制御チャネルを介して前記送信対象ショートメッセージを、前記通信が行われていない場合にショートメッセージを転送するために使用する第一の種別のメッセージとは異なる第二の種別のメッセージに含ませて前記第一の端末装置へ転送する転送手段と、を有する。
【0009】
好ましくは、前記音声チャネルは、ISDN(Integrated Services Digital Network)のBチャネルであり、前記制御チャネルは、ISDNのDチャネルであり、前記第一の種別は、Q.931のSETUPであり、前記第二の種別は、Q.931のINFOであり、前記転送手段は、前記送信対象ショートメッセージを、UUI(User-to-user Information)に当該送信対象ショートメッセージを含むINFOメッセージである第一のINFOメッセージを送信することによって、転送する。
【0010】
または、前記転送手段は、前記第一のINFOメッセージを、前記送信対象ショートメッセージが含まれていることを示すコードである第一のコードを当該第一のINFOメッセージのUUIに含ませて送信する。
【0011】
または、前記第一の端末装置から、前記送信対象ショートメッセージを受信した旨を示すコードである第二のコードがUUIに含まれているINFOメッセージである第二のINFOメッセージを受信した場合に、当該送信対象ショートメッセージが届いた旨を示す情報を含むALERTメッセージを前記第二の端末装置へ送信するALERT送信手段、を有する、
本発明の一形態に係る端末装置は、音声のやり取りに用いられる通信チャネルである音声チャネルを介して他の端末装置と回線交換方式によって通信しているときに、当該他の端末装置と通信していないときにショートメッセージを受信するために使用する第一の種別のメッセージとは異なる第二の種別のメッセージを、当該音声チャネルの制御用の通信チャネルである制御チャネルを介して中継システムから受信する受信手段と、受信されたメッセージにショートメッセージが含まれている場合に、当該ショートメッセージを所定の記憶領域に保存する保存手段と、ショートメッセージを受信した旨を前記第二の種別のメッセージによって前記中継システムへ送信する送信手段と、を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、無線選択呼出受信機の機能を有しない端末装置であっても通話中にショートメッセージを受信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】通信システムの全体的な構成の例を示す図である。
【図2】交換局の構成の例を示す図である。
【図3】端末装置の構成の例を示す図である。
【図4】呼情報管理テーブルおよび呼情報の例を示す図である。
【図5】端末情報管理テーブルおよび端末情報の例を示す図である。
【図6】交換局および端末装置の処理の流れを説明するためのシーケンス図である。
【図7】通話中時送信処理部の構成の例を示す図である。
【図8】INFOメッセージのフォーマットの例を示す図である。
【図9】INFOメッセージのフォーマットの例を示す図である。
【図10】呼情報の例を示す図である。
【図11】端末情報の例を示す図である。
【図12】端末情報の例を示す図である。
【図13】呼情報の例を示す図である。
【図14】端末情報の例を示す図である。
【図15】呼情報の例を示す図である。
【図16】交換局の全体的な処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図17】交換局の全体的な処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図18】端末装置の全体的な処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図19】端末装置の全体的な処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、通信システムTSの全体的な構成の例を示す図である。
【0015】
図1に示す通信システムTSは、移動体通信サービスの加入者同士が会話をしたり電子データをやり取りしたりするためのシステムである。以下、移動体通信の方式としてPersonal Handy-phone System(PHS)が用いられる場合を例に説明する。
【0016】
通信システムTSは、図1に示すように、交換局1、基地局2A、2B、2C、…、および端末装置3A、3B、3C、…などを有する。
【0017】
以下、説明の簡単のために、ある1つのエリアXに位置する3台の端末装置3A、3B、および3C同士が通信を行う場合を例に説明する。また、端末装置3Aは基地局2Aのセルの中に位置し、端末装置3Bは基地局2Bのセルの中に位置し、端末装置3Cは、基地局2Cの中に位置するものとする。基地局2A、2B、2Cを「基地局2」と総称し、端末装置3A、3B、および3Cを「端末装置3」と総称することがある。
【0018】
交換局1とエリアXの中の基地局2とは、通信回線によって繋がれている。基地局2は、その基地局2のセルの中に位置する端末装置3と無線によって通信を行う。
【0019】
交換局1は、発呼側の端末装置3が位置するセルの基地局2と着呼側の端末装置3が位置するセルの基地局2とを接続し、両端末装置3同士の通信を制御する。
【0020】
交換局1は、様々なサービスのための処理を行うが、そのうちの1つとして、Short Message Service(SMS)のための処理を行う。SMSは、端末の電話番号(いわゆる携帯電話番号)を宛先にしてメッセージを送受信できるサービスである。このメッセージは、一般に「ショートメッセージ」または「ショートメール」などと呼ばれており、インターネットで取り扱われる電子メールに比べて長さの制限が厳しい。つまり、短文でなければならない。
【0021】
また、本実施形態では、交換局1は、ある端末装置3が、通話中の端末装置3へショートメッセージを発信しても、このショートメッセージが届くように種々の処理を行う。この仕組みについては、後に説明する。交換局1は、いわゆる市内交換局であってもよいし、Private Branch Exchange(PBX)であってもよい。
【0022】
基地局2は、交換局1とその基地局2の近隣の端末装置3との間の通信を中継する。基地局2は、「BS(Base Station)」、「Node−B」、または「BTS(Base Transfer Station)」などと呼ばれることもある。
【0023】
図2は、交換局1の構成の例を示す図である。図3は、端末装置3の構成の例を示す図である。図4は、呼情報管理テーブル101および呼情報5の例を示す図である。図5は、端末情報管理テーブル102および端末情報6の例を示す図である。
【0024】
交換局1は、図2に示すように、呼情報管理テーブル101、端末情報管理テーブル102、およびショートメッセージ中継処理部103などを有する。図2に示す各部の機能をハードウェアのみによって実現してもよいし、一部の機能をプログラムに基づいてCentral Processing Unit(CPU)によってハードウェアを制御することによって実現してもよい。端末装置3が有する機能についても、同様である。
【0025】
端末装置3は、図3に示すように、INFOメッセージ受信処理部301、通話中時メッセージ処理部302、SETUPメッセージ受信処理部303、および非通話中時メッセージ処理部304などを有する。
【0026】
図2において、呼情報管理テーブル101には、図4に示すように、所定の個数の呼情報5が記憶されている。呼情報5には、それぞれを識別するためのユニークな呼番号が与えられている。
【0027】
端末装置3から呼が発信されるごとに、現在他のいずれの呼にも割り当てられていない呼情報5が1つ選出され、発信された呼に対して割り当てられる。そして、割り当てられた呼情報5に、発信側の端末装置3に関する情報および着信側の端末装置3に関する情報などが記録される。
【0028】
呼情報5には、呼状態、発信者情報、発信者BS番号、発信者チャネル番号、発信者端末論理番号、発信者メッセージ通知用呼番号、着信者情報、着信者BS番号、着信者チャネル番号、着信者端末論理番号、および着信者メッセージ通知用呼番号などの情報が含まれる。
【0029】
「呼状態」は、呼の状態を示す。具体的には、発信中、着信中、および通話中のうちのいずれかを示す。「発信中」は、発信側の端末装置3から呼が発せられたが着信側の端末装置3へ未だ呼が届いていない状態である。「着信中」は、着信側の端末装置3へ呼が届き呼出しが行われている状態である。「通話中」は、発信側の端末装置3と着信側の端末装置3とのセッションが確立している状態である。つまり、通話が行われている状態である。
【0030】
ただし、使用されていない呼情報5の呼状態は、使用されていないことを意味する「0」を示す。
【0031】
「発信者情報」は、呼の発信側の端末装置3の電話番号である。「着信者情報」は、呼の着信側の端末装置3の電話番号である。
【0032】
「発信者BS番号」は、呼の発信側の端末装置3が位置するセルの基地局2のBS番号である。なお、「BS番号」は、基地局2ごとに与えられている、基地局2を識別するための番号である。「着信者BS番号」は、呼の着信側の端末装置3が位置するセルの基地局2のBS番号である。
【0033】
「発信者チャネル番号」は、呼の発信側の端末装置3が使用するチャネルのチャネル番号である。なお、「チャネル番号」は、チャネルごとに与えられている、チャネルを識別するための番号である。「着信者チャネル番号」は、呼の着信側の端末装置3が使用するチャネルのチャネル番号である。
【0034】
「発信者端末論理番号」は、呼の発信側の端末装置3に割り当てられた端末情報6の端末論理番号である。端末情報6については、後に説明する。なお、「端末論理番号」は、端末情報6ごとに与えられている、端末情報6を識別するための番号である。「発信者端末論理番号」は、呼の発信側の端末装置3に割り当てられた端末情報6の端末論理番号である。
【0035】
「発信者メッセージ通知用呼番号」は、呼の発信側の端末装置3が通話中であるときにこの端末装置3へショートメッセージを送信した送信元に割り当てられている呼情報5の呼番号である。ただし、ショートメッセージのやり取りがないときは、発信者メッセージ通知用呼番号は「0」を示す。「着信者メッセージ通知用呼番号」は、呼の着信側の端末装置3が通話中であるときにこの端末装置3へショートメッセージを送信した送信元に割り当てられている呼情報5の呼番号である。ただし、ショートメッセージのやり取りがないときは、着信者メッセージ通知用呼番号は「0」を示す。
【0036】
図2に戻って、端末情報管理テーブル102には、図5に示すように、端末装置3ごとの端末情報6が記憶されている。
【0037】
端末情報6には、電話番号、呼番号、および位置登録エリア番号などの情報が含まれる。
【0038】
「電話番号」は、端末情報6が割り当てられた端末装置3の電話番号である。「呼番号」は、その端末装置3に割り当てられた呼情報5の呼番号である。ただし、通信を行っていない場合は、呼番号は「0」である。「位置登録エリア番号」は、その端末装置3が位置するエリアのエリア番号である。なお、「エリア番号」は、エリアごとに与えられている、エリアを識別するための番号である。
【0039】
端末情報6は、端末装置3が初めて交換局1に接続された際に生成され、端末情報管理テーブル102に登録される。
【0040】
図2に戻って、ショートメッセージ中継処理部103は、SETUPメッセージ受信処理部131、着信側状態判別部132、チャネル判別部133、通話中時送信処理部134、完了通知送信処理部135、非通話中時送信処理部136などを有する。
【0041】
ショートメッセージ中継処理部103の各部は、ショートメッセージを一方の端末装置3から他方の端末装置3へ中継するための処理を行う。
【0042】
図3に示す端末装置3の各部は、通話中であってもショートメッセージを受信するための処理を行う。
【0043】
ここで、端末装置3Bと通話中である端末装置3Aへ端末装置3Cがショートメッセージを送信する場合を例に、ショートメッセージ中継処理部103および端末装置3(3A)の各部の処理を、シーケンス図などを参照しながら説明する。
【0044】
図6は、交換局1、端末装置3B、および端末装置3Cの処理の流れを説明するためのシーケンス図である。図7は、通話中時送信処理部134の構成の例を示す図である。図8は、INFOメッセージ72のフォーマットの例を示す図である。図9は、INFOメッセージ73のフォーマットの例を示す図である。
【0045】
端末装置3Cは、従来通り、ショートメッセージをSETUPメッセージによって端末装置3Aへ宛てて送信する(図6の#381)。具体的には、端末装置3Cは、ショートメッセージの本文を示すUser-to-user Information(UUI)、発番号、および着番号などを含むSETUPメッセージ71を生成し、交換局1へ送信する。「発番号」は、発信側の電話番号であり、本例では、端末装置3Cの電話番号である。「着番号」は、着信側の電話番号であり、本例では、端末装置3Aの電話番号である。なお、「SETUPメッセージ」は、International Telecommunications Union Telecommunication Standardization Sector(ITU−T)のQ.931の規格で定められているメッセージの一種である。後述するINFOメッセージ、ALERTメッセージ、およびCALLPROCメッセージもQ.931の規格で定められている。
【0046】
交換局1において、SETUPメッセージ受信処理部131は、端末装置3CからSETUPメッセージ71を受信し(#161)、送信元つまり端末装置3CへCALLPROCメッセージを返信する(#162)。
【0047】
着信側状態判別部132は、SETUPメッセージ71に示される着番号の端末装置3つまり端末装置3Aが通話中であるか否かを次のように判別する。
【0048】
着信側状態判別部132は、端末情報管理テーブル102の中から、その着番号が電話番号として示される端末情報6を検索する。そして、その端末情報6の呼番号が「0」であれば、着信側状態判別部132は、端末装置3Aが通知中でないと、判別する。一方、何らかの呼番号を示す場合は、着信側状態判別部132は、端末装置3Aが通知中でないと、判別する。
【0049】
なお、本実施形態では、2台の端末装置3同士は、回線交換方式によって通話を行うので、着信側状態判別部132は、端末装置3Aが通話中であると判別できる場合は、回線交換方式によって通話を行っていると判定する。
【0050】
チャネル判別部133は、検索された端末情報6の呼番号を有する呼情報5の発信者情報に端末装置3Aの電話番号が示される場合は、この呼情報5に示される発信者BS番号および発信者チャネル番号によって決まるチャネルを、端末装置3Aが現在通話のために使用しているBチャネルであると判別する。一方、この呼情報5の着信者情報に端末装置3Aの電話番号が示される場合は、この呼情報5に示される着信者BS番号および着信者チャネル番号によって決まるチャネルを、端末装置3Aが現在通話のために使用しているBチャネルであると判別する。
【0051】
通話中時送信処理部134は、図7に示すように、呼情報設定部13E、端末情報設定部13F、ショートメッセージ送信処理部13G、および完了通知受信処理部13Hなどを有する。このような構成により、通話中時送信処理部134は、端末装置3Aが通話中であると着信側状態判別部132によって判別された場合に、SETUPメッセージ71に含まれるショートメッセージの本文などを端末装置3Aへ送信するための処理を次のように行う。
【0052】
呼情報設定部13Eおよび端末情報設定部13Fは、呼情報5および端末情報6の設定に関する処理を行う。この処理については、後述する。
【0053】
ショートメッセージ送信処理部13Gは、図8のようなINFOメッセージ72を生成し、チャネル判別部133によって判別(特定)されたBチャネルのペアであるDチャネルを介して端末装置3Aへ送信する(#163)。INFOメッセージ72には、図8の通り、メッセージ種別、情報要素識別子、アプリケーション内容長、およびアプリケーション情報などが含まれる。
【0054】
「メッセージ種別」は、このINFOメッセージ72の種類を示し、本例では、「INFOメッセージ」であることを示す。
【0055】
「情報要素識別子」および「アプリケーション内容長」は、それぞれ、アプリケーション情報の種類および長さを示す。本例では、アプリケーション情報としてUUIが用いられる。そこで、情報要素識別子には、UUIの識別子が示される。
【0056】
アプリケーション情報つまりUUIには、発番号およびショートメッセージの本文のほか、これらの長さを示す情報(発番号内容長およびメッセージ内容長)およびアプリケーション識別子が含まれる。本例では、アプリケーション識別子として、送信通知コードが用いられる。「送信通知コード」は、ショートメッセージを送信することを通知するための独自のコードである。
【0057】
端末装置3Aにおいて、INFOメッセージ受信処理部301は、交換局1からINFOメッセージ72を受信する(#361)。
【0058】
通話中時メッセージ処理部302は、図3に示すように、送信通知コード確認部321、ショートメッセージ保存処理部322、着信通知処理部323、およびINFO応答処理部324などを有する。このような構成により、通話中時メッセージ処理部302は、通話中のショートメッセージの受信の処理を次のように行う。
【0059】
送信通知コード確認部321は、INFOメッセージ72のUUIに送信通知コードが示されているか否かを確認する。
【0060】
送信通知コードがINFOメッセージ72のUUIに示されていることが確認されたら、ショートメッセージ保存処理部322は、INFOメッセージ72から発番号およびショートメッセージの本文を抽出し、これらを示すショートメッセージデータを端末装置3A自身のメッセージボックスなどの所定の記憶領域に保存する(#362)。
【0061】
着信通知処理部323は、アイコンまたはピクトなどの画像をディスプレイに表示し、音を鳴らし、またはバイブレータを振動させるなどして、ショートメッセージを受信したことをユーザに対して通知する(#363)。
【0062】
INFO応答処理部324は、ショートメッセージを受信した旨の返信を、INFOメッセージを送信することによって行う(#364)。
【0063】
具体的には、INFO応答処理部324は、図9のようなINFOメッセージ73を生成し、現在通話のために使用しているBチャネルのペアであるDチャネルを介して交換局1へ送信する。INFOメッセージ73には、図9の通り、メッセージ種別、情報要素識別子、アプリケーション内容長、およびアプリケーション情報などが含まれる。図8と比較して分かるように、INFOメッセージ73の構造は、INFOメッセージ72と基本的に同じである。ただし、アプリケーション情報の内容が相違する。
【0064】
INFOメッセージ73のアプリケーション情報つまりUUIのアプリケーション識別子には、受信通知コードが用いられる。「受信通知コード」は、ショートメッセージを受信できたことを通知するための独自のコードである。また、一般に、いわゆるアプリケーション汎用データ(ユーザデータ)をINFOメッセージに載せることができるが、INFOメッセージ73には、アプリケーション汎用データを載せない。そこで、ユーザデータを載せるためのフィールドの長さが0であることを示す情報(アプリケーション汎用データ長)がINFOメッセージ73に示される。
【0065】
交換局1において、完了通知受信処理部13Hは、端末装置3AからINFOメッセージ73を受信する(#164)。
【0066】
すると、呼情報設定部13Eおよび端末情報設定部13Fは、呼情報5を解放する処理などを行う。この処理については、後述する。
【0067】
そして、完了通知送信処理部135は、ショートメッセージの中継が完了した旨を示すALERTメッセージを端末装置3Cへ送信する(#165)。
【0068】
一方、端末装置3Aが通話中でないと着信側状態判別部132によって判別された場合は、非通話中時送信処理部136が従来通りの方法でSETUPメッセージ71を端末装置3Aへ送信する。
【0069】
すると、端末装置3Aにおいて、SETUPメッセージ受信処理部303は、交換局1からSETUPメッセージ71を受信する。
【0070】
非通話中時メッセージ処理部304は、SETUPメッセージ71のUUIにショートメッセージの本文が示される場合は、従来通り、ショートメッセージが届いたことを画像または音などによってユーザに知らせる処理などを適宜、実行する。
【0071】
図10は、呼情報51の例を示す図である。図11は、端末情報62の例を示す図である。図12は、端末情報61、62の例を示す図である。図13は、呼情報51、52の例を示す図である。図14は、端末情報61、62の例を示す図である。図15は、呼情報51、52の例を示す図である。
【0072】
前述の通り、呼情報設定部13Eおよび端末情報設定部13Fは、呼情報5および端末情報6の設定および解放の処理を行う。ここで、これらの処理を、端末装置3Bからの呼に応答し端末装置3Bとの通話の最中である端末装置3Aへ端末装置3Cがショートメッセージを送信する場合を例に、図10〜図15を参照しながら説明する。
【0073】
端末装置3Cがショートメッセージを端末装置3Aへ送信する前であって、端末装置3Aが端末装置3Bと通話を行っているときに、例えば図10のような呼情報51が、端末装置3Aと端末装置3Bとの通話の呼情報5として用いられる。また、例えば図11のような端末情報61が、端末装置3Aの端末情報6として用いられる。
【0074】
図10の通り、未だ端末装置3Cからショートメッセージが発信されていないので、呼情報51の着信者メッセージ通知用呼番号は「0」である。なお、端末装置3Bの端末情報6も既に設定されているが、説明を省略する。
【0075】
端末装置3Cが端末装置3A宛てのショートメッセージを載せたSETUPメッセージ71を発信し交換局1がSETUPメッセージ71を受信すると、端末情報設定部13Fは、例えば図12に示す端末情報62を、端末装置3Cの端末情報6として登録する。この時点では、端末情報62の呼番号は「0」である。ただし、既に端末装置3Cの端末情報6が登録されている場合は、新たに登録する必要はない。
【0076】
呼情報設定部13Eは、このショートメッセージの中継の通信のための呼情報5として、例えば図13に示す呼情報52を設定する。
【0077】
すると、端末情報設定部13Fは、図14に示すように、端末情報62の呼番号に呼情報52の呼番号を設定する。さらに、呼情報設定部13Eは、図15に示すように、呼情報51の着信者メッセージ用呼番号に呼情報52の呼番号を設定する。
【0078】
これらの設定後、ショートメッセージ送信処理部13Gは、各呼情報5および各端末情報6に基づいてリソースを用い、上述の手順で端末装置3Aへのショートメッセージの中継を行う。
【0079】
また、INFOメッセージ73つまりショートメッセージの受信の完了のメッセージがショートメッセージ送信処理部13Gによって受信されると、呼情報設定部13Eは、呼情報52を解放し使用されていない状態に戻すとともに、呼情報51の着信者メッセージ通知用呼番号を「0」に戻す。また、端末情報設定部13Fは、端末情報62の呼番号を「0」に戻す。
【0080】
図16および図17は、交換局1の全体的な処理の流れの例を説明するフローチャートである。図18および図19は、端末装置3の全体的な処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【0081】
次に、交換局1および端末装置3の全体的な処理の流れを、図16〜図18のフローチャートを参照しながら説明する。
【0082】
図16および図17において、交換局1は、SETUPメッセージを端末装置3から受信すると(#801)、呼情報管理テーブル101の中から空いている(使用されていない)呼情報5を検索し、その端末装置3のために割り当てる(#802)。交換局1は、その呼情報5の「呼状態」の項目に「1(発信中)」を設定するとともに(#803)、その端末装置3の端末情報6の「呼番号」の項目にその呼情報5の呼番号を設定する(#804)。交換局1は、その呼情報5および端末情報6のそのほかの項目にも、その端末装置3に関する状況を設定する。
【0083】
交換局1は、SETUPメッセージの宛先である端末装置3の端末情報6の呼番号をチェックする(#805)。そして、呼番号が「0」でない場合は(#807でNo)、交換局1は、SETUPメッセージのUUIにショートメッセージの本文が載っているか否かをチェックする。載っていない場合は(#808でNo)、従来通り、必要に応じて留守番電話サービスの処理を行ったり、いわゆる割込み通話の処理を行ったりする(#809)。
【0084】
一方、載っている場合は(#808でYes)、交換局1は、送信先の端末装置3の呼の呼情報5(つまり、ステップ#805でチェックした呼番号を有する呼情報5)の発信者メッセージ通知用呼番号および着信者メッセージ通知用呼番号のうちのいずれか一方に、送信元の端末装置3に割り当てた呼情報5の呼番号を設定する(#810)。具体的には、送信先の端末装置3の通話が自らの発呼により確立された場合は発信者メッセージ通知用呼番号に設定し、着呼により確立された場合は着信者メッセージ通知用呼番号に設定する。
【0085】
そして、交換局1は、INFOメッセージ72によって、独自コードである送信通知コードとともにショートメッセージの本文を送信先の端末装置3へ送信する(#811)。この際に、交換局1は、送信先の端末装置3が使用しているBチャネルを特定し、このBチャネルに対応するDチャネルを介して、このINFOメッセージ72を送信する。
【0086】
その後、交換局1は、送信先の端末装置3からINFOメッセージ73を受信すると(#812)、INFOメッセージ73に受信通知コードが含まれていれば、INFOメッセージ73のやり取りに用いられた回線の呼番号の呼情報5を検索する。さらに、交換局1は、検索した呼情報5の発信者メッセージ通知用呼番号または着信者メッセージ通知用呼番号に設定されている呼番号を抽出する(#813)。
【0087】
そして、交換局1は、抽出した呼番号の呼情報5を検索し(#814)、検索した呼情報5に基づいて、ショートメッセージの発信者に対して、ショートメッセージの送信の完了の報告をALERTメッセージによって行う(#820)。さらに、送信元の端末装置3に割り当てた呼情報5を解放し、送信先の呼情報5の発信者メッセージ通知用呼番号(または、着信者メッセージ通知用呼番号)および送信元の端末情報6の呼番号をリセットする(#821)。これにより、送信元の端末装置3の呼が解放される。送信先の端末装置3は、相手との通話をそのまま継続する(#822)。
【0088】
一方、ステップ#805でチェックした呼番号が「0」である場合は(#807でYes)、交換局1は、送信先の端末装置3が通話中でないと判別し、従来通りに通話の処理またはショートメッセージの中継の処理を次のように行う。
【0089】
ステップ#801で受信したSETUPメッセージにショートメッセージの本文が載っていない場合は(#815でNo)、交換局1は、SETUPメッセージに従って通話のために2台の端末装置3同士のセッションを確立する処理を行う(#816)。
【0090】
または、ショートメッセージの本文が載っている場合は(#815でYes)、交換局1は、SETUPメッセージによってショートメッセージを送信先の端末装置3へ送信する(#817)。この際に、送信元の端末装置3と送信先の端末装置3との間でセッションが確立され、呼情報5および端末情報6が設定される。また、交換局1は、受信完了のALERTメッセージを送信先の端末装置3から受信すると(#818)、従来通り、今回使用した呼情報5を解放する処理などを行うとともに、送信元の端末装置3に対して、受信完了のALERTメッセージを送信する(#819)。
【0091】
図18および図19において、端末装置3は、交換局1からINFOメッセージを受信した場合は(#851でYes)、受信したINFOメッセージのUUIに送信通知コードが含まれていれば(#852でYes、#853でYes)、UUIから発信者の電話番号およびショートメッセージの本文を取り出す(#854、#855)。取り出した発信者の電話番号およびショートメッセージの本文を示すデータをメッセージボックスなどに保存するとともに(#856)、画像、音声、または振動によって受信の旨をユーザに対して知らせる(#857)。そして、受信通知コードなどを含むINFOメッセージ73を交換局1へ返信する(#858)。
【0092】
一方、受信したINFOメッセージのUUIにショートメッセージの本文が載っていない場合は(#852でNoまたは#853でNo)、端末装置3は、INFOメッセージに従い従来通りの処理を行う(#859)。
【0093】
または、端末装置3は、交換局1からSETUPメッセージを受信した場合は(#852でNo)、受信したSETUPメッセージのUUIにショートメッセージの本文が載っていれば(#860でYes)、従来通り、ショートメッセージの受信および保存などの処理を行う(#861〜#865)。ショートメッセージの本文などの取出し元が異なる以外は、処理内容はステップ#854〜#858と基本的に同じである。
【0094】
一方、ショートメッセージの本文が載っていなければ(#860でNo)、従来通り、着呼の音を鳴らしたりセッションを確立したりするなどして、通話のための処理を行う(#866)。
【0095】
本実施形態によると、無線選択呼出受信機の機能を有しない端末装置は、通話中であってもショートメッセージを受信することができる。
【0096】
本実施形態では、PHSにおけるショートメッセージのやり取りを例に説明したが、本発明は、他の通信形態におけるショートメッセージのやり取りにも適用することができる。
【0097】
その他、通信システムTS、交換局1、端末装置3の全体または各部の構成、処理内容、処理順序、テーブルの構成、およびメッセージの構成などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0098】
1 交換局(中継システム)
2 基地局(中継システム)
132 着信側状態判別部(通信状態判別手段)
133 チャネル判別部(音声チャネル特定手段)
134 通話中時送信処理部(転送手段)
135 完了通知送信処理部(ALERT送信手段)
3 端末装置
301 INFOメッセージ受信処理部(受信手段)
322 ショートメッセージ保存処理部(保存手段)
324 INFO応答処理部(送信手段)
71 SETUPメッセージ
72 INFOメッセージ
73 INFOメッセージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第二の端末装置から第一の端末装置へ宛てて発信されたショートメッセージである送信対象ショートメッセージを中継する中継システムであって、
音声のやり取りに用いられる通信チャネルである音声チャネルを介して前記第一の端末装置が回線交換方式によって第三の端末装置と通信を行っているか否かを判別する、通信状態判別手段と、
前記第一の端末装置が前記通信を行っていると判別された場合に、前記第一の端末装置が使用する前記音声チャネルを特定する、音声チャネル特定手段と、
特定された前記音声チャネルの制御用の通信チャネルである制御チャネルを介して前記送信対象ショートメッセージを、前記通信が行われていない場合にショートメッセージを転送するために使用する第一の種別のメッセージとは異なる第二の種別のメッセージに含ませて前記第一の端末装置へ転送する転送手段と、
を有する中継システム。
【請求項2】
前記音声チャネルは、ISDN(Integrated Services Digital Network)のBチャネルであり、
前記制御チャネルは、ISDNのDチャネルであり、
前記第一の種別は、Q.931のSETUPであり、
前記第二の種別は、Q.931のINFOであり、
前記転送手段は、前記送信対象ショートメッセージを、UUI(User-to-user Information)に当該送信対象ショートメッセージを含むINFOメッセージである第一のINFOメッセージを送信することによって、転送する、
請求項1記載の中継システム。
【請求項3】
前記転送手段は、前記第一のINFOメッセージを、前記送信対象ショートメッセージが含まれていることを示すコードである第一のコードを当該第一のINFOメッセージのUUIに含ませて送信する、
請求項2記載の中継システム。
【請求項4】
前記第一の端末装置から、前記送信対象ショートメッセージを受信した旨を示すコードである第二のコードがUUIに含まれているINFOメッセージである第二のINFOメッセージを受信した場合に、当該送信対象ショートメッセージが届いた旨を示す情報を含むALERTメッセージを前記第二の端末装置へ送信するALERT送信手段、を有する、
請求項2または請求項3記載の中継システム。
【請求項5】
音声のやり取りに用いられる通信チャネルである音声チャネルを介して他の端末装置と回線交換方式によって通信しているときに、当該他の端末装置と通信していないときにショートメッセージを受信するために使用する第一の種別のメッセージとは異なる第二の種別のメッセージを、当該音声チャネルの制御用の通信チャネルである制御チャネルを介して中継システムから受信する受信手段と、
受信されたメッセージにショートメッセージが含まれている場合に、当該ショートメッセージを所定の記憶領域に保存する保存手段と、
ショートメッセージを受信した旨を前記第二の種別のメッセージによって前記中継システムへ送信する送信手段と、
を有する端末装置。
【請求項6】
中継システムに、
第二の端末装置から第一の端末装置へ宛てて発信されたショートメッセージである送信対象ショートメッセージを受信する処理を実行させ、
音声のやり取りに用いられる通信チャネルである音声チャネルを介して前記第一の端末装置が回線交換方式によって第三の端末装置と通信を行っているか否かを判別する処理を実行させ、
前記第一の端末装置が前記通信を行っていると判別した場合に、前記第一の端末装置が使用する前記音声チャネルを特定する処理を実行させ、
特定した前記音声チャネルの制御用の通信チャネルである制御チャネルを介して前記送信対象ショートメッセージを、前記通信が行われていない場合にショートメッセージを転送するために使用する第一の種別のメッセージとは異なる第二の種別のメッセージに含ませて前記第一の端末装置へ転送する処理を実行させ、
前記第一の端末装置に、
前記第二の種別のメッセージを受信する処理を実行させ、
受信した前記第二の種別のメッセージから前記送信対象ショートメッセージを抽出し所定の記憶領域に保存する処理を実行させる、
ショートメッセージ中継方法。
【請求項7】
第二の端末装置から第一の端末装置へ宛てて発信されたショートメッセージである送信対象ショートメッセージを中継するための処理を行う中継装置に用いられるコンピュータプログラムであって、
前記中継装置に、
音声のやり取りに用いられる通信チャネルである音声チャネルを介して前記第一の端末装置が回線交換方式によって第三の端末装置と通信を行っているか否かを判別する処理を実行させ、
前記第一の端末装置が前記通信を行っていると判別された場合に、前記第一の端末装置が使用する前記音声チャネルを特定する処理を実行させ、
特定された前記音声チャネルの制御用の通信チャネルである制御チャネルを介して前記送信対象ショートメッセージを、前記通信が行われていない場合にショートメッセージを転送するために使用する第一の種別のメッセージとは異なる第二の種別のメッセージに含ませて前記第一の端末装置へ転送する処理を実行させる、
コンピュータプログラム。
【請求項8】
端末装置に、
音声のやり取りに用いられる通信チャネルである音声チャネルを介して他の端末装置と回線交換方式によって通信しているときに、当該他の端末装置と通信していないときにショートメッセージを受信するために使用する第一の種別のメッセージとは異なる第二の種別のメッセージを、前記音声チャネルの制御用の通信チャネルである制御チャネルを介して中継システムから受信する処理を実行させ、
受信されたメッセージにショートメッセージが含まれている場合に、当該ショートメッセージを所定の記憶領域に保存する処理を実行させ、
ショートメッセージを受信した旨を前記第二の種別のメッセージによって前記中継システムへ送信する処理を実行させる、
コンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−254398(P2011−254398A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128190(P2010−128190)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】