説明

中継装置、ネットワークシステムおよびプログラム

【課題】災害の発生時において、ルーティング・プロトコルのコネクションの切断を待たずに、通信パケットの中継経路の切り替えを迅速に行う。または、ルーティング・プロトコルのコネクションが切断されない場合において、災害の発生に伴う通信品質の低下を抑制する。
【解決手段】中継装置は、通信パケットの中継地域を識別可能な地域情報と、他の中継装置のネットワーク上のアドレスとを含む経路情報を学習し、当該経路情報に基づいて、受信した通信パケットの中継経路を決定する経路制御部と、受信した通信パケットを、決定した中継経路に基づいて、受信した通信パケットの宛先に送信する中継部とを備える。経路制御部は、災害地域を通知する災害通知パケットを受信した場合であって、決定した中継経路に災害地域を含むときに、決定した中継経路を、災害地域を含まない中継経路に切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信パケットの中継を行う中継装置の中継経路制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
地震、台風などの自然災害や、大規模な武力攻撃、テロなどの人的災害などの大規模災害が発生した場合、被災地域のパケット中継装置(以下、パケット中継装置を単に中継装置ともいう)、例えば、ルータやスイッチが破損するなどして、コネクションが切断されることがあった。従来のIPネットワークにおけるルーティング・プロトコル、例えば、BGP(Border Gateway Protocol)などによる経路制御では、被災地域の中継装置と被災していない地域の中継装置の間のルーティング・プロトコルのコネクションが切断されると、中継経路の再計算を行い、中継経路の切り替えが行われていた。かかる切り替え動作について、図1を用いて説明する。
【0003】
図1に示すネットワークシステムは、地域A1において、中継装置11a,12aがネットワークN1aに相互に接続されている。同様に、地域A2では、中継装置21a,22aとネットワークN2aとが、地域A3では、中継装置31a,32aとネットワークN3aとが、地域A4では、中継装置41a,42aとネットワークN4aとが、相互に接続されている。地域A1のネットワークは、リンクR1aによって地域A3のネットワークと接続され、地域A3のネットワークは、リンクR2aによって地域A2のネットワークに接続されている。また、地域A1のネットワークは、リンクR3aによって地域A4のネットワークと接続され、地域A4のネットワークは、リンクR4aによって地域A2のネットワークに接続されている。
【0004】
通常時は、地域A1の中継装置11aから地域A2の中継装置22aまで、地域A3のネットワークを経由した通信経路P1aが確立されている。また、ルーティング・プロトコルによって、地域A4のネットワークを経由した通信経路P2aが代替経路として確立されている。
【0005】
かかる状況において、図1に示すように、地域A3で大規模災害が発生した場合、地域A3内の中継装置の障害やリンク障害等の発生により、ネットワーク障害が多発する。そのため、通信経路P1a上の中継装置間のルーティング・プロトコルのコネクションが切断される場合がある。ルーティング・プロトコルのコネクションが切断されると、それを契機として、地域A1の中継装置11aは、正常にリンクしている代替経路の通信経路P2aへ中継経路を切り替えることで、中継経路を再構築する。
【0006】
しかしながら、かかる従来の手法においては、経路収束時間の観点と、通信品質の観点から、改善の余地があった。経路収束時間の観点では、次の通りである。特定の中継装置が破損すると、隣接の中継装置は該当経路を削除し、経路の再計算を行い、更に隣接の中継装置に経路情報を通知することで、ネットワーク全体に経路情報を伝播させる。被災地域で多数の中継装置が破損すると、ネットワーク全体で、このような動作が拡大していくことになる。被災地域の境界に位置する中継装置にも徐々に上述のような影響が伝播し、経路情報の再計算が多発することで、中継装置の演算負荷が急増し、ルーティング・プロトコルの処理遅延等が発生する。その結果、被災地域のうちの被災していない地域側の地域に位置する中継装置(例えば、図1の中継装置32a)と、被災していない地域のうちの被災地域側の地域に位置する中継装置(例えば、図1の中継装置11a)との間で、ルーティング・プロトコルのコネクションが切断されることになる。この時点で初めて代替経路への切り替えが行われるので、実際に災害が発生してから経路の切り替えまでに相当の時間がかかり、通信が途絶える時間が長くなる。また、宛先まで到達不能になったことを示す経路情報を、被災していない地域のうちの被災地域側の地域に位置する中継装置(例えば、図1の中継装置11a)に伝播するのに時間がかかり、通信が途絶える時間が長くなる。つまり、経路収束時間(コンバージェンス)が長くなるという問題があった。
【0007】
通信品質の観点では、以下の通りである。仮に、被災地域を経由する通信経路上の中継装置の間で、ルーティング・プロトコルのコネクションが切断されなければ、被災地域を経由する中継経路が、維持され続けることになる。ここで、災害発生時には、被災地域への安否確認等のためのトラフィックが集中することが予想される。その結果、被災地域のネットワークが輻輳することになり、被災地域を経由する通信パケット(以下、単にパケットともいう)の遅延や損失が発生する確率が高くなり、通信品質が悪くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−130161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の問題の少なくとも一部を考慮し、本発明が解決しようとする課題は、災害の発生時において、ルーティング・プロトコルのコネクションの切断を待たずに、通信パケットの中継経路の切り替えを迅速に行うこと、または、ルーティング・プロトコルのコネクションが切断されない場合において、災害の発生に伴う通信品質の低下を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0011】
[適用例1]通信パケットの中継を行う中継装置であって、
前記通信パケットの中継地域を識別可能な地域情報と、他の中継装置のネットワーク上のアドレスとを含む経路情報を学習し、該学習した経路情報に基づいて、受信した通信パケットの中継経路を決定する経路制御部と、
前記中継装置が受信した前記通信パケットを、前記決定した中継経路に基づいて、該受信した通信パケットの宛先に送信する中継部と
を備え、
前記経路制御部は、前記中継装置が、災害地域を通知する災害通知パケットを受信した場合であって、前記決定した中継経路に前記災害地域を含むときに、該決定した中継経路を、該災害地域を含まない前記中継経路に切り替える
中継装置。
【0012】
かかる構成の中継装置によれば、災害通知パケットの受信を契機として、決定済みの中継経路を、災害地域を含まない中継経路に切り替えることができる。したがって、災害発生時に、災害地域を経由する通信経路上の中継装置間でルーティング・プロトコルのコネクションが切断するのを待たずに、中継経路を代替経路に切り替えることができる。あるいは、ルーティング・プロトコルのコネクションが切断しない場合においても、中継経路が災害地域を迂回する経路に切り替えられるため、災害地域のネットワークの混雑を回避することができる。その結果、災害地域以外の地域間の通信品質の低下を抑制することができる。なお、災害地域とは、災害が発生した被災地域のほか、災害が予測された地域を含む。
【0013】
[適用例2]適用例1記載の中継装置であって、前記中継装置の設置地域を記憶する記憶部を備え、前記経路制御部は、前記中継装置が、前記他の中継装置としての第1の他の中継装置から、前記経路情報を学習するための経路情報パケットであって、前記他の中継装置の設置地域と、該他の中継装置のネットワーク上のアドレスとを含む経路情報パケットを受信した場合に、該経路情報パケットに基づいて、前記経路情報の学習を行い、前記受信した経路情報パケットに、前記中継装置の設置地域と、該中継装置のネットワーク上のアドレスとを付加した新たな経路情報パケットを生成し、前記中継部は、前記生成した新たな経路情報パケットを、前記第1の他の中継装置とは異なる第2の他の中継装置に送信する中継装置。
【0014】
かかる構成の中継装置によれば、中継装置は、適用例2の構成を備えた他の中継装置との間で経路情報パケットを交換し合って、経路情報をダイナミックに学習することができる。したがって、ユーザの利便性が向上する。
【0015】
[適用例3]前記中継装置の設置地域を記録したサーバに対して行う要求への応答として前記中継装置が受信する応答パケットに含まれる前記中継装置の設置地域を前記記憶部に記録する設置地域設定部を備えた適用例2記載の中継装置。
【0016】
かかる構成の中継装置によれば、中継装置の設置地域を自動的に記録することができる。したがって、ユーザは、中継装置にその設置地域を手動操作で入力する必要がない。かかる効果は、中継装置が多数ある場合に顕著となる。
【0017】
[適用例4]適用例1ないし適用例3のいずれか記載の中継装置であって、前記地域情報は、前記中継地域の各々の乖離の程度を把握可能に構成され、前記経路制御部は、前記災害地域を含まない中継経路への切り替えを行う場合であって、該切り替えの候補となる中継経路が複数存在するときには、該災害地域からの前記乖離の程度が相対的に小さい前記中継地域を含む前記中継経路の優先順位を相対的に低くして、前記切り替える中継経路を決定する中継装置。
【0018】
かかる構成の中継装置によれば、切り替えの候補となる中継経路が複数存在するときに、災害地域からの乖離の程度が相対的に小さい中継地域を含む中継経路への切り替えを抑制することができる。したがって、切り替えた後の中継経路の信頼性が向上する。
【0019】
[適用例5]前記経路制御部は、前記学習した経路情報におけるホップ数が相対的に少ない前記中継経路を優先して、前記中継経路の決定を行う適用例1ないし適用例4のいずれか記載の中継装置。
【0020】
かかる構成の中継装置によれば、ホップ数が少なく、効率的な通信パケットの中継を実現することができる。
【0021】
また、本発明は、中継装置のほか、適用例6または適用例7のネットワークシステムとしても実現することができる。勿論、これらのネットワークシステムに、適用例2〜5の構成を付加することもできる。
【0022】
[適用例6]サーバと、区分された地域ごとに少なくとも1台ずつ設置され、通信パケットの中継を行う複数の中継装置とを備えたネットワークシステムであって、前記サーバは、所定の地域に災害が生じたこと、または、生じることの予測を表す災害情報を外部から取得する取得部と、前記取得した災害情報に基づいて、前記所定の地域である災害地域を表す情報を含む災害通知パケットを送信して、前記複数の中継装置のうちの少なくとも前記災害地域に配置された中継装置以外の中継装置に前記災害地域を通知する災害通知部とを備え、前記中継装置の各々は、前記地域の区分に基づいて表される前記通信パケットの中継地域を識別可能な地域情報と、他の中継装置のネットワーク上のアドレスとを含む経路情報を学習し、該学習した経路情報に基づいて、受信した通信パケットの中継経路を決定する経路制御部と、前記中継装置が受信した前記通信パケットを、前記決定した中継経路に基づいて、該受信した通信パケットの宛先に送信する中継部とを備え、前記経路制御部は、前記中継装置が、前記災害通知パケットを受信した場合であって、前記決定した中継経路に前記災害地域を含むときに、該決定した中継経路を、該災害地域を含まない前記中継経路に切り替えるネットワークシステム。
【0023】
[適用例7]第1のサーバと、区分された地域ごとに少なくとも1台ずつ設置された複数の第2のサーバと、前記区分された地域ごとに少なくとも1台ずつ設置され、通信パケットの中継を行う複数の中継装置とを備えたネットワークシステムであって、前記第1のサーバは、所定の地域に災害が生じたこと、または、生じることの予測を表す災害情報を外部から取得する取得部と、前記取得した災害情報に基づいて、前記所定の地域である災害地域を表す情報を含む第1の災害通知パケットを送信して、前記複数の第2のサーバのうちの少なくとも前記災害地域に配置された第2のサーバ以外の第2のサーバに前記災害地域を通知する第1の災害通知部とを備え、前記第2のサーバの各々は、前記第1の災害通知パケットを受信する受信部と、該第1の災害通知パケットに含まれる前記災害地域を表す情報を含む第2の災害通知パケットを送信して、前記複数の中継装置のうちの少なくとも前記災害地域に配置された中継装置以外の中継装置に前記災害地域を通知する第2の災害通知部とを備え、前記中継装置の各々は、前記区分に基づいて表される前記通信パケットの中継地域を識別可能な地域情報と、他の中継装置のネットワーク上のアドレスとを含む経路情報を学習し、該学習した経路情報に基づいて、受信した通信パケットの中継経路を決定する経路制御部と、前記中継装置が受信した前記通信パケットを、前記決定した中継経路に基づいて、該受信した通信パケットの宛先に送信する中継部とを備え、前記経路制御部は、前記中継装置が、前記第2の災害通知パケットを受信した場合であって、前記決定した中継経路に前記災害地域を含むときに、該決定した中継経路を、該災害地域を含まない前記中継経路に切り替えるネットワークシステム。
【0024】
また、本発明は、上述した適用例6または適用例7のネットワークシステムを構成するサーバ、適用例8ないし適用例11のプログラム、当該プログラムを記録した記録媒体、中継装置の中継経路制御方法などとしても実現することができる。
【0025】
[適用例8]通信パケットの中継を行う複数の中継装置に通知を行うプログラムであって、所定の地域に災害が生じたこと、または、生じることの予測を表す災害情報を外部から取得する取得機能と、前記取得した災害情報に基づいて、前記所定の地域である災害地域を表す情報を含む災害通知パケット送信して、前記複数の中継装置のうちの少なくとも前記災害地域に配置された中継装置以外の中継装置に前記災害地域を通知する災害通知機能とをコンピュータに実現させるためのプログラム。
【0026】
かかるプログラムによれば、適用例1〜5の中継装置に、災害地域を好適に通知することができる。その結果、上述した中継装置の効果を奏することができる。
【0027】
[適用例9]適用例8記載のプログラムであって、更に、前記取得した災害情報に対して、所定のキーワードを用いて検索を行うことで前記災害地域を抽出する抽出機能をコンピュータに実現させ、前記災害通知機能は、前記抽出した災害地域を表す情報を含む前記災害通知パケットを生成して、送信するプログラム。
【0028】
かかるプログラムによれば、災害情報が所定のフォーマットで作成されたデータに限定されることがない。したがって、当該プログラムは、汎用性に優れる。
【0029】
[適用例10]前記災害情報に前記災害の規模が含まれる場合に、前記災害通知機能は、前記災害の規模が所定の閾値以上である場合に限り、前記災害地域の通知を行う適用例8または適用例9記載のプログラム。
【0030】
かかるプログラムによれば、中継装置間の通信に影響を与える程度の災害の発生、または、予測のみを対象として、中継経路の切り替えを行うこととなる。したがって、不必要な中継経路の切り替えを抑制することができる。また、不必要な災害通知パケットの送信を抑制できるので、ネットワーク負荷の増大を抑制することができる。
【0031】
[適用例11]適用例8ないし適用例10のいずれか記載のプログラムであって、更に、前記複数の中継装置の設置地域をそれぞれ記憶する記憶機能と、前記中継装置の要求に応じて、該中継装置の前記設置地域を該中継装置に通知する設置地域通知機能とをコンピュータに実現させるためのプログラム。
【0032】
かかるプログラムによれば、適用例3の中継装置に、当該中継装置の設置地域を好適に通知することができる。その結果、上述した適用例3の中継装置の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】従来例としての中継装置の経路制御を示す説明図である。
【図2】本発明の実施例としてのネットワークシステム1000の概略構成を示す説明図である。
【図3】災害情報管理サーバ200が災害情報発信サーバ100から受信する災害情報DIの内容を示す説明図である。
【図4】災害情報管理サーバ200の概略構成を示す説明図である。
【図5】災害情報管理サーバ200の閾値テーブル230の具体例を示す説明図である。
【図6】災害情報管理サーバ200の地域テーブル240の具体例を示す説明図である。
【図7】災害情報管理サーバ200の災害通知先テーブル250の具体例を示す説明図である。
【図8】中継装置300xの概略構成を示す説明図である。
【図9】中継装置300aの装置固有テーブル340aの具体例を示す説明図である。
【図10】中継装置300aのBGPテーブル350aの具体例(災害発生前)を示す説明図である。
【図11】中継装置300aのルーティングテーブル360aの具体例(災害発生前)を示す説明図である。
【図12】地域IDパケットのフォーマットを示す説明図である。
【図13】ネットワークシステム1000における経路制御の概要を示すシーケンス図である。
【図14】中継装置300xにおける設定処理の流れを示すフローチャートである。
【図15】災害情報管理サーバ200における地域ID配布処理の流れを示すフローチャートである。
【図16】災害情報管理サーバ200における災害通知処理の流れを示すフローチャートである。
【図17】中継装置300xにおける経路制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図18】経路情報パケットのフォーマットを示す説明図である。
【図19】経路制御処理のうちの経路情報パケット処理の流れを示すフローチャートである。
【図20】経路情報処理によって、中継装置300xが中継経路を学習する様子を示すシーケンス図である。
【図21】経路制御処理のうちの地域IDパケット処理の流れを示すフローチャートである。
【図22】経路制御処理による中継経路の切り替えの具体例を示す説明図である。
【図23】中継装置300aのBGPテーブル350aの具体例(災害発生後)を示す説明図である。
【図24】中継装置300aのルーティングテーブル360aの具体例(災害発生後)を示す説明図である。
【図25】第2実施例としてのネットワークシステム2000の概略構成を示す説明図である。
【図26】第2実施例としての災害情報管理プロキシサーバ800xの概略構成を示す説明図である。
【図27】第2実施例としての災害情報管理サーバ200の災害通知先テーブル250の具体例を示す説明図である。
【図28】災害情報管理プロキシサーバ800aの災害通知先テーブル850aの具体例を示す説明図である。
【図29】ネットワークシステム2000における経路制御の概要を示すシーケンス図である。
【図30】災害情報管理プロキシサーバ800xにおける災害通知処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
A.第1実施例:
A−1.システム構成:
本発明の中継装置の実施例としての中継装置300a〜300nを用いたネットワークシステム1000の概略構成を図2に示す。図示するように、ネットワークシステム1000は、災害情報管理サーバ200と中継装置300a〜300n(以下、総称して300xともいう)とを備えている。このネットワークシステム1000は、災害情報管理サーバ200とネットワークN1〜N7がリンクR1〜R14によって相互接続されて構成される。詳しくは後述するが、災害情報管理サーバ200は、地理情報の配布と災害情報の受発信を行う。中継装置300a〜300nは、OSI参照モデルにおけるネットワーク層(レイヤ3)でパケットの中継を行う。ただし、中継装置300a〜300nは、レイヤ2でパケットの中継を行うものであってもよい。
【0035】
各ネットワークN1〜N7は、単一の管理権限で運用している独立したネットワークシステムであるAS(Autonomous System)の中の特定地域にある。各ネットワークN1〜N7には、ASを特定するためにAS番号(AS1〜AS6)と、ネットワークの所在地域を特定するための地域ID(地域ID1〜ID6)とが付与されている。また、各ネットワークN1〜N7は、複数の中継装置とリンクとによって、相互に接続されている。このネットワークN1〜N7と、当該ネットワークに直接接続される中継装置との組み合わせをネットワークグループNG1〜NG7ともいう。
【0036】
ネットワークグループNG1〜NG7は、AS番号と、地域IDとによって、識別することができる。例えば、ネットワークN1と中継装置300a,300bとで構成されるネットワークグループNG1は、「AS1+地域ID1」によって、他のネットワークグループNG2〜NG7と識別することができる。同様に、例えば、ネットワークN2と中継装置300c,300dとで構成されるネットワークグループNG2は、「AS2+地域ID2」によって、他のネットワークグループNG1,NG3〜NG7と識別することができる。
【0037】
かかるネットワークシステム1000の中継装置300a〜300nは、BGPを活用して経路制御を行う。BGPは、周知の技術であり、詳しい説明は省略するが、隣接する中継装置間で経路情報を交換し合い、ASを最小単位としてAS間の経路制御を行うルーティング・プロトコルである。ただし、本実施例では、AS中の地域IDを割り当てたネットワークを最小単位として地域ID間の経路制御を行う。
【0038】
災害情報管理サーバ200は、気象庁が提供する緊急地震速報のサービスを行うサーバ(以下、本願では、災害情報発信サーバ100ともいう)に、所定のネットワーク(図示省略)を介して接続されている。緊急地震速報とは、地震の発生直後に、震源に近い地震計でとらえた観測データを解析して震源や地震の規模(マグニチュード)を直ちに推定し、これに基づいて各地での主要動の到達時刻や震度を予測し、報知する地震動の予報および警報である。以下、緊急地震速報を災害情報DIともいう。
【0039】
本実施例における災害情報DIの内容を図3に示す。図示するように、災害情報DIには、地震の発生時刻、地震の発生場所(震源)の推定値、地震の規模(マグニチュード)の推定値、地域名と対応付けられた予測震度、その地域への大きな揺れの到達時刻の予測値(主要動到達予測時刻)を含んでいる。
【0040】
ネットワークシステム1000では、災害情報管理サーバ200が災害情報発信サーバ100から受信した災害情報DIに基づいて、中継装置300xに災害が発生した旨の通知を行う。中継装置300xは、受信した通知に基づいて、中継経路の切り替えを行う。以下、かかる経路制御の構成について説明する。
【0041】
なお、図2に示すように、災害情報管理サーバ200の属するネットワークおよびネットワークグループNG1〜NG7には、ネットワークアドレスとしてH,A,B,C,D,E,F,Gが付与されている。また、災害情報管理サーバ200および中継装置300a,300d,300f,300h,300j,300l,300nにはIPアドレスとしてH1,A1,B1,C1,D1,E1,F1,G1が付与されている。
【0042】
A−2.災害情報管理サーバ200の構成:
災害情報管理サーバ200の概略構成を図4に示す。図示するように、災害情報管理サーバ200は、地域ID配布部210、災害情報受発信部220、閾値テーブル230、地域テーブル240、災害通知先テーブル250を備えている。なお、地域ID配布部210は請求項の設置地域通知機能に相当する。災害情報受発信部220は、請求項の取得機能、災害通知機能、抽出機能に相当する。災害通知先テーブル250は、請求項の記憶機能に対応している。
【0043】
地域ID配布部210は、各中継装置300xからの要求に応じて、要求を行った中継装置300xに地域IDを配布する。災害情報受発信部220は、災害情報発信サーバ100から災害情報DIを受信して各中継装置300xに災害地域の地域IDを通知する(以下、この通知を災害通知ともいい、災害通知に用いるパケットを災害通知パケットともいう)。本実施例では、地域ID配布部210および災害情報受発信部220の機能は、災害情報管理サーバ200が備えるCPU(図示省略)が所定のプログラムを実行することによって実現される。これらの機能の詳細は後述する。
【0044】
閾値テーブル230、地域テーブル240、災害通知先テーブル250は、災害情報管理サーバ200が備えるメモリ(図示省略)の所定領域に確保されている。これらのテーブルの内容は、ユーザによって、予め登録される。
【0045】
閾値テーブル230は、中継装置300xに災害通知を行う際の判断基準となる災害規模閾値THが格納されている。災害規模閾値TH以上の災害情報DIを受信した場合に、災害情報受発信部220は、災害通知を行うこととなる。閾値テーブル230の具体例を図5に示す。この例では、閾値テーブル230には、災害規模閾値THとして、地震の規模(マグニチュード)の値8が記録されている。
【0046】
地域テーブル240には、地域IDと物理的な地域名の対応一覧が格納されている。地域IDは、地域名ごとに一意な番号として付与される。地域テーブル240の具体例を図6に示す。この例では、地域テーブル240には、例えば、地域ID「1」と、地域名「大阪府北部」とが対応付けられている。また、地域ID「2」と、地域名「愛知県西部」とが対応付けられている。これらの地域の区分は、ユーザが任意に設定すればよい。
【0047】
災害通知先テーブル250には、災害通知の通知先の一覧が格納されている。災害通知先テーブル250に記録される通知先は、各中継装置300xである。本実施例では、災害通知の通知先となる中継装置300xのIPアドレスと、中継装置300xに付与された地域IDとが対応付けられている。中継装置300xには、中継装置300xの設置地域に対応する地域IDが付与される。災害通知先テーブル250の具体例を図7に示す。この例では、災害通知先テーブル250には、例えば、災害通知先として、IPアドレス「A1」と、地域ID「1」とが対応付けられている。この災害通知先は、中継装置300aを示している。
【0048】
A−3.中継装置300xの構成:
中継装置300x(中継装置300a〜300n)は、同一の構成を有している。以下、中継装置300xの構成について説明する。中継装置300xの概略構成を図8に示す。図示するように、中継装置300xは、構成情報設定部310x、経路制御部320x、パケット中継部330x、装置固有テーブル340x、BGPテーブル350x、ルーティングテーブル360x、インタフェース部370xを備える。なお、以下の説明において、中継装置300xの構成要素のうちの、中継装置300a〜300nのいずれかの構成要素を例示する場合は、構成要素の末尾を「x」から、対応する「a」〜「n」の符号に代えて表示する。例えば、中継装置300aの構成情報設定部は、構成情報設定部310aと表示する。構成情報設定部310xは、請求項の設置地域設定部に相当する。経路制御部320xは、請求項の経路制御部に相当する。パケット中継部330xは、請求項の中継部に相当する。装置固有テーブル340xは、請求項の記憶部に相当する。
【0049】
構成情報設定部310xは、ユーザから装置の設定情報を受け付けて、自機に設定する。経路制御部320xは、最適経路の選択などを行う。パケット中継部330xは、受信したパケットを最適な経路宛に中継する。本実施例では、構成情報設定部310x、経路制御部320xおよびパケット中継部330xの各機能は、中継装置300xが備えるCPU(図示省略)が所定のプログラムを実行することによって実現される。
【0050】
インタフェース部370xは、物理回線にパケットを送受信するインタフェースである。本実施例では、インタフェース部370xは4つのポート371x〜374xを備える。ポート371x〜374xをインタフェースIF1〜IF4ともいう。
【0051】
装置固有テーブル340x、BGPテーブル350x、ルーティングテーブル360xは、中継装置300xが備えるメモリ(図示省略)の所定領域に確保されている。
【0052】
装置固有テーブル340xは、中継装置300xごとに固有の情報を保持するテーブルである。本実施例では、装置固有テーブル340xには、AS番号と、地域IDと、災害通知取得先と、機能有効状態とが対応付けられて登録される。装置固有テーブル340xの具体例として、中継装置300aの装置固有テーブル340aを図9に示す。AS番号には、中継装置300aに付与されたAS番号「1」が登録されている。地域IDには、中継装置300aに付与された地域ID「1」が登録されている。災害通知取得先には、災害通知を取得するサーバのIPアドレス、すなわち、災害情報管理サーバ200のIPアドレス「H1」が登録されている。機能有効状態は、災害情報管理サーバ200から受信する災害通知に基づいた経路切替機能の有効/無効(ON/OFF)の設定状態を示す情報である。図示する例では、機能有効状態はON(有効)となっている。
【0053】
AS番号と災害通知取得先と機能有効状態とは、ユーザによって予め登録される。地域IDは、本実施例では、後述する処理によって、中継装置300aが災害情報管理サーバ200から取得して、登録する。ただし、ユーザが地域IDを予め登録することとしてもよい。
【0054】
BGPテーブル350xは、ルーティング・プロトコルであるBGPが使用するテーブルである。本実施例では、BGPテーブル350xには、最適経路と、優先度と、宛先ネットワークアドレスと、AS番号・地域IDリストと、ネクストホップと、インタフェースとが対応付けられて登録される。BGPテーブル350xの具体例として、中継装置300aのBGPテーブル350aを図10に示す。図10は、非災害時、つまり、中継装置300aが災害情報管理サーバ200から災害通知を受信していない状態でのBGPテーブル350aの具体例を示している。
【0055】
最適経路は、同一の宛先ネットワークアドレスに対して該当経路が最適経路であることを示す。優先度は、同一の宛先ネットワークアドレスに対して、非災害時に選択すべき経路の優先順位を示す。宛先ネットワークアドレスは、中継装置300aが転送するパケットの宛先となるネットワークアドレスを示す。AS番号・地域IDリストは、宛先のネットワークまでに経由するネットワークグループNG1〜NG7、すなわち、AS番号と地域IDの組み合わせを示すリストである。ネクストホップは、宛先ネットワークアドレスに送信するために次に転送する中継装置のIPアドレスである。インタフェースは、ネクストホップに対応するポートである。
【0056】
図10に示すように、最適経路領域には、当該エントリの経路が最適経路である場合は「○」が設定される。最適経路でない場合、値は設定されない。この最適経路は、宛先ネットワークアドレスごとに設定される。非災害時においては、優先度が最も高いエントリに対して、最適経路が設定される。優先度は優先順位が高い方から順番に値1,2,3と設定される。この優先度は、同一の宛先ネットワークアドレスに対して、経由するAS番号と地域IDとの組み合わせが少ないほど、すなわち、経由するネットワークグループNG1〜NG7が少ないほど優先順位が高くなる。図示する例では、例えば、宛先ネットワークアドレス「G」に対しては、経由するネットワークグループが最も少ないNG2(AS2+地域ID2),NG3(AS3+地域ID3),NG7(AS6+地域ID6)の3つで構成されるエントリが優先度「1」として設定されている。また、その結果、当該エントリが最適経路として設定されている。当該エントリにおいては、中継装置300aから宛先ネットワークアドレス「G」に向かうネクストホップとして、中継装置300dのIPアドレスである「B1」が設定されている。また、中継装置300dに対応するインタフェースとして、インタフェース「IF1」が設定されている。かかるBGPテーブル350aの各エントリは、中継装置300aに実装されたBGPルーティング・プロトコルにより学習されて登録される。
【0057】
ルーティングテーブル360xは、経路情報の一覧を記録するテーブルである。ルーティングテーブル360xには、宛先のネットワークアドレスとネクストホップとインタフェースとが対応付けられて、登録される。このルーティングテーブル360xには、BGPテーブル350xにおいて最適経路として設定されたエントリの内容のみが登録される。ルーティングテーブル360xの具体例として、中継装置300aのルーティングテーブル360aを図11に示す。図示するルーティングテーブル360xは、非災害時の状態を示している。図示するように、ルーティングテーブル360aには、例えば、宛先ネットワークアドレス「G」と、ネクストホップ「B1」と、インタフェース「IF1」とが設定されている。このエントリは、図10に示した宛先ネットワークアドレス「G」の最適経路のエントリに対応している。
【0058】
A−4.経路制御:
上述したネットワークシステム1000において、中継装置300xは、非災害時には、BGPを用いて中継経路の最適化制御を行う。また、中継装置300xは、災害発生時、つまり、災害情報管理サーバ200から災害通知を受信した際には、災害通知の内容に応じて、中継経路の切り替えを行う。かかる中継装置300xの経路制御について以下に説明する。
【0059】
A−4−1.経路制御に用いる地域IDパケットの構成:
中継装置300xの経路制御の説明に先立って、経路制御に用いる地域IDパケットのフォーマットについて説明する。この地域IDパケットは、以下の3つのケースに共通して用いられるパケットである。
(1)第1のケース:中継装置300xが災害情報管理サーバ200に対して自機の地域IDの配布を要求する場合に、地域ID取得要求パケットとして用いるケース
(2)第2のケース:災害情報管理サーバ200が、地域ID取得要求パケットへの応答として、中継装置300xに地域IDを配布する場合に、地域ID取得応答パケットとして用いるケース
(3)第3のケース:災害情報管理サーバ200が中継装置300xに所定地域における災害の発生(予測を含む)を通知する災害通知パケットとして用いるケース
【0060】
地域IDパケットのフォーマットを図12に示す。図示するように、地域IDパケットは、IPヘッダ部とペイロード部とを備えている。IPヘッダ部は、OSI参照モデルにおける第3層のヘッダフィールドである。ペイロード部は、地域ID通知タイプフィールドと地域IDフィールドとを備えている。なお、地域IDパケットには、認証や暗号化のための情報を付加してもよい。こうすれば、セキュリティが向上する。
【0061】
本実施例では、地域ID通知タイプフィールドの値が値1である場合、地域IDパケットが地域ID取得要求パケット(第1のケース)として使用されていることを示す。また、地域ID通知タイプフィールドの値が値2である場合、地域IDパケットが地域ID取得応答パケット(第2のケース)として使用されていることを示す。また、地域ID通知タイプフィールドの値が値3である場合、地域IDパケットが災害通知パケット(第3のケース)として使用されていることを示す。
【0062】
地域IDパケットが地域ID取得要求パケットとして使用される場合、地域IDフィールドの値は、常に値0となる。地域IDパケットが地域ID取得応答パケットとして使用される場合、地域IDフィールドの値は、地域ID取得要求パケットを送信した中継装置300xが存在する場所の地域IDの値となる。この地域IDの値は、上述の通り、災害通知先テーブル250に登録されている。地域IDパケットが災害通知パケットとして使用される場合、地域IDフィールドの値は、災害地域の地域IDの値となる。
【0063】
A−4−2.経路制御の概要:
ネットワークシステム1000における経路制御の概要について説明する。経路制御の流れを図13に示す。ネットワークシステム1000における経路制御は、災害発生前における地域IDの配布・中継経路の決定フェーズと、災害発生時における災害地域の地域IDの通知フェーズとに分類できる。図13では、説明の便を考慮し、災害情報発信サーバ100と、災害情報管理サーバ200と中継装置300aと中継装置300dとの間で行われる処理のシーケンスを例示するが、実際には、図13と同様の処理が、災害情報発信サーバ100と、災害情報管理サーバ200と各中継装置300xとの間で行われる。
【0064】
地域IDの配布・中継経路の決定フェーズでは、図13に示すように、まず、中継装置300aにおいて、ユーザが、装置固有テーブル340aにAS番号、地域ID、災害通知取得先IPアドレスを設定するとともに、機能有効状態を「ON」に設定した場合、構成情報設定部310aは経路制御部320aに機能有効化の通知を行う(通信T11)。次に、経路制御部320aは、中継装置300aに付与された地域IDを得るために、パケット中継部330aを介して(通信T12)、災害情報管理サーバ200の地域ID配布部210に地域ID取得要求を行う(通信T13)。
【0065】
災害情報管理サーバ200の地域ID配布部210は、要求元の中継装置300aの地域IDを応答するために、中継装置300aのパケット中継部330aを介して(通信T14)、経路制御部320aに地域ID取得応答を行う(通信T15)。本応答を受信すると、経路制御部320aは、中継装置300a自身の経路情報を隣接の中継装置300dに伝達するために、パケット中継部330aを介して(通信T16)、隣接の中継装置300dに経路情報パケットを送信する(通信T17)。経路情報パケットは、他の中継装置に、中継経路を学習させるためのパケットである。上述した中継装置300aの処理と同様の処理が隣接の中継装置300dでも実行されるため、隣接の中継装置300dは中継装置300aに経路情報を送信する(通信T18)。
【0066】
中継装置300aが中継装置300dから経路情報を受信すると(通信T19)、経路制御部320aは、受信した経路情報に基づいて経路情報の優先度の設定と最適経路の決定を行う(ステップS20)。そして、経路制御部320aは、パケット中継部330aを介して(通信T21)、隣接の中継装置300dに、決定した最適経路の経路情報パケットを送信する(通信T22)。こうして、地域IDの配布・中継経路の決定フェーズの処理は終了となる。
【0067】
災害地域の地域IDの通知フェーズでは、図13に示すように、災害情報発信サーバ100は、大規模災害の発生を契機として、災害情報管理サーバ200の災害情報受発信部220に災害情報DIの通知を行う(通信T31)。災害情報DIを受信すると、災害情報受発信部220は、中継装置300aのパケット中継部330aを介して(通信T32)、経路制御部320aに災害地域の地域IDの通知を行う(通信T33)。
【0068】
災害地域の地域IDの通知を受けると、経路制御部320aは、受信した地域IDに基づいて、最適経路の決定を行う(ステップS30)。この処理は、最適経路を代替経路に切り替える処理である。そして、経路制御部320aは、パケット中継部330aを介して(通信T34)、隣接の中継装置300dに、決定した最適経路の経路情報パケットを送信する(通信T35)。こうして、災害地域の地域IDの通知シーケンスは終了となる。以下では、上述した処理の詳細について説明する。
【0069】
A−4−3.設定処理:
中継装置300xにおける設定処理について説明する。設定処理とは、経路制御を行うための構成情報の設定を行う処理である。この処理は、図13の通信T11に対応している。設定処理は、ユーザが構成情報を設定する操作を開始することで開始される。
【0070】
設定処理の流れを図14に示す。図示するように、設定処理が開始されると、中継装置300xの構成情報設定部310xは、ユーザ操作によって入力される、災害情報と連動した経路切替機能の有効化の設定指示を受け付けたか否かを判断する(ステップS410)。判断の結果、設定指示を受け付けていなければ(ステップS410:NO)、構成情報設定部310xは、装置固有テーブル340xの機能有効状態領域に「OFF」を格納し(ステップS420)、処理を終了する。
【0071】
一方、設定指示を受け付けていれば(ステップS410:NO)、構成情報設定部310xは、装置固有テーブル340xの機能有効状態領域に「ON」を格納する(ステップS430)。そして、構成情報設定部310xは、ユーザ操作によって入力される、AS番号、災害通知取得先IPアドレスの値と、その設定指示を受け付けたか否かを判断する(ステップS440)。
【0072】
判断の結果、設定指示を受け付けていなければ(ステップS440:NO)、構成情報設定部310xは、処理を終了する。一方、設定指示を受け付けていれば(ステップS440:YES)、構成情報設定部310xは、装置固有テーブル340xのAS番号領域、災害通知取得先IPアドレス領域に、受け付けたAS番号、災害通知取得先IPアドレスを格納する(ステップS450)。なお、装置固有テーブル340xの地域ID領域には、図13で示した通信T13,T14によって、取得された地域IDが格納される(詳細は後述する)。ただし、ユーザが、AS番号、災害通知取得先IPアドレスとともに、地域IDを入力する場合には、上記ステップS440において、地域IDについても受け付けたかを判断し、ステップS450において、地域ID領域に、入力された地域IDを格納してもよい。つまり、地域IDは、通信T13,T14のように動的に取得されてもよいし、ユーザの入力によって静的に設定されてもよい。
【0073】
AS番号、災害通知取得先IPアドレスを格納すると、構成情報設定部310xは、経路制御部320xに機能有効化の通知を行う(ステップS460)。こうして、設定処理は終了となる。
【0074】
A−4−4.地域ID配布処理
災害情報管理サーバ200における地域ID配布処理について説明する。地域ID配布処理とは、中継装置300xの要求に応じて、要求元の中継装置300xが設置された地域の地域IDを配布する処理である。この処理は、図13の通信T14に対応している。地域ID配布処理は、災害情報管理サーバ200の動作中において、繰り返し実行される。
【0075】
地域ID配布処理の流れを図15に示す。図示するように、地域ID配布処理が開始されると、災害情報管理サーバ200の地域ID配布部210は、まず、自機宛のパケットを受信したか否かを判断する(ステップS510)。その結果、パケットを受信していなければ(ステップS510:NO)、地域ID配布部210は、処理を元に戻す。一方、自機宛のパケットを受信すると(ステップS510:YES)、地域ID配布部210は、受信したパケットの種別が、地域IDパケットであり、かつ、地域ID通知タイプの値が「1」であるか否かを判断する(ステップS520)。地域ID通知タイプの値が「1」の地域IDパケットは、当該パケットが、地域ID取得要求パケットであることを意味している。
【0076】
判断の結果、地域ID取得要求パケットの受信でなければ(ステップS520:NO)、地域ID配布部210は、処理を元に戻す。一方、地域ID取得要求パケットの受信であれば(ステップS520:YES)、地域ID配布部210は、地域ID取得要求パケットの送信元IPアドレスを検索キーとして災害通知先テーブル250を検索し、送信元IPアドレスに対応する地域IDを取り出す(ステップS530)。取り出される地域IDは、地域ID取得要求パケットを送信した中継装置300xの設置地域を表している。
【0077】
地域IDを取り出すと、地域ID配布部210は、要求を行った中継装置300xに宛てて、地域IDパケットを送信する(ステップS540)。この地域IDパケットの地域ID通知タイプフィールドには「2」が設定される。「2」は、地域IDパケットが地域ID取得応答パケットであることを意味する。また、地域IDパケットの地域IDフィールドには、上記S530で取り出した地域IDの値が設定される。かかる地域IDパケットを送信すると、中継装置300xは、処理を元に戻す。
【0078】
A−4−5.災害通知処理:
災害情報管理サーバ200における災害通知処理について説明する。災害通知処理とは、災害情報管理サーバ200が、災害の発生、または災害の発生予測を取得した場合に、災害の発生地域を中継装置300xに通知する処理である。この処理は、図13の通信T32に対応している。災害通知処理は、災害情報管理サーバ200の動作中において、繰り返し実行される。
【0079】
災害通知処理の流れを図16に示す。図示するように、災害通知処理が開始されると、災害情報管理サーバ200の災害情報受発信部220は、まず、災害情報発信サーバ100から災害情報DIを受信したか否かを判断する(ステップS610)。判断の結果、災害情報DIを受信していなければ(ステップS610:NO)、災害情報受発信部220は、処理を元に戻す。一方、災害情報DIを受信していれば(ステップS610:YES)、災害情報受発信部220は、災害情報DIの内容を解釈し、災害情報DIに含まれる災害規模の推定値が閾値テーブル230に格納された災害規模閾値THよりも大きいか否かを判断する(ステップS620)。
【0080】
判断の結果、災害規模の推定値が災害規模閾値TH以下であれば(ステップS620:NO)、災害情報受発信部220は、処理を元に戻す。一方、災害規模の推定値が災害規模閾値THよりも大きければ(ステップS620:YES)、災害情報受発信部220は、災害情報DIに含まれる地域名を検索キーとして地域テーブル240を検索し、地域テーブル240から地域名に対応する地域IDを取り出す(ステップS630)。取り出された地域IDは、災害が発生した、または、災害の発生が予測された災害地域を表している。
【0081】
災害情報DIに含まれる地域名は複数であってもよい。この場合、取り出す地域IDは、災害情報DIに含まれる複数の地域名のいずれかに一致するものであればよい。また、災害情報DIに含まれる1つの地域名に対して、複数の地域IDを取り出してもよい。例えば、災害情報DIに含まれる地域名「長野県」に対して、図6に示した地域テーブル240から、地域ID「4」と地域ID[5]とを取り出してもよい。かかる説明からも明らかなように、ステップS630における検索は、災害情報DIに含まれる地域名と、地域テーブル240の地域名とが、必ずしも完全に一致する必要はない。災害情報DIに含まれる地域名を含む地域テーブル240の地域名に対応する地域IDを取り出してもよい。あるいは、災害情報DIに含まれる地域名の一部を含む地域テーブル240の地域名に対応する地域IDを取り出してもよい。
【0082】
地域IDを取り出すと、災害情報受発信部220は、災害通知先テーブル250のエントリのうちの未選択の1つのエントリを選択する(ステップS640)。1つのエントリを選択すると、災害情報受発信部220は、選択したエントリに登録された地域IDを取り出す(ステップS650)。そして、災害情報受発信部220は、ステップS650で取り出した地域IDが、ステップS630で取り出した地域IDであるか否かを判断する(ステップS660)。
【0083】
判断の結果、ステップS650で取り出した地域IDがステップS630で取り出した地域IDであれば(ステップS660:YES)、ステップS650で取り出した地域IDは、災害情報DIに含まれる地域名に対応しているということである。つまり、災害通知先テーブル250において、ステップS650で取り出した地域IDに対応付けられた災害通知先IPアドレスが付与された中継装置300xは、災害が発生している、または、災害の発生が予測されている災害地域に設置されているということである。本実施例においては、災害地域の中継装置には、災害通知を行わない構成としている。災害地域は、安否確認のための通信や、中継経路の変更のための経路情報パケットの通信が頻発し、ネットワーク負荷の著しい増大が予想されるため、これ以上、ネットワーク負荷を増大させないためである。また、災害通知は、中継装置300xが、災害地域を迂回した中継経路を構築するために送信するので、災害地域の中継装置300xに災害通知を送信しても、大きな意味を持たないためである。そこで、災害情報受発信部220は、処理を上記ステップS640に戻す。ただし、災害地域の中継装置に対しても、災害通知を行う構成としてもよい。
【0084】
一方、ステップS650で取り出した地域IDがステップS630で取り出した地域IDでなければ(ステップS660:NO)、災害情報受発信部220は、選択したエントリに登録された災害通知先IPアドレスを宛先にして、地域IDパケットを送信する(ステップS670)。この地域IDパケットの地域ID通知タイプフィールドには「3」が設定される。「3」は、地域IDパケットが災害通知パケットであることを意味する。また、地域IDパケットの地域IDフィールドには、上記S630で取り出した地域IDの値が設定される。この地域IDは、災害地域を示している。
【0085】
かかる地域IDパケット(災害通知パケット)を送信すると、災害情報受発信部220は、上記ステップS640において、全てのエントリを選択したか否かを判断する(ステップS680)。その結果、全てのエントリについて選択済みでなければ(ステップS680:NO)、災害情報受発信部220は、処理を上記ステップS640に戻す。一方、全てのエントリについて選択済みであれば(ステップS680:YES)、災害情報受発信部220は、処理を元に戻す。つまり、災害情報受発信部220は、災害通知先テーブル250にIPアドレスが登録された全ての中継装置300xのうちの、災害地域の中継装置を除く中継装置に対して、災害通知パケットを送信する。
【0086】
A−4−6.経路制御処理:
中継装置300xにおけるにおける経路制御処理について説明する。経路制御処理とは、他の中継装置との間での通信によって、経路情報を学習し、学習結果に基づいて、中継経路を決定する処理である。当該経路制御処理においては、災害が発生すると、あるいは、災害の発生が予測されると、決定済みの中継経路から、災害地域を含まない中継経路への切り替えが行われる。経路制御処理は、図13の通信T15〜T22,通信T33〜T35,ステップS20,S30に対応している。災害通知処理は、中継装置300xの動作中において、繰り返し実行される。
【0087】
経路制御処理の流れを図17に示す。図示するように、経路制御処理が開始されると、中継装置300xの経路制御部320xは、まず、装置固有テーブル340xの機能有効状態が「ON」であるか否かを判断する(ステップS710)。判断の結果、機能有効状態が「OFF」であれば(ステップS710:NO)、経路制御部320xは、処理を元に戻す。
【0088】
一方、機能有効状態が「ON」であれば(ステップS710:YES)、経路制御部320xは、構成情報設定部310xから機能有効化の通知(上記ステップS460参照)を受信したか否かを判断する(ステップS720)。この判断は、設定処理が実行された直後であるか否かの判断を行うためのものである。本実施例では、装置固有テーブル340xに格納する地域IDは、災害情報管理サーバ200から動的に取得する構成としているため、設定処理が実行された直後においては、装置固有テーブル340xの地域ID領域には、未だ自機の地域IDが格納されていないこととなる。
【0089】
判断の結果、機能有効化の通知を受信したのであれば(ステップS720:YES)、装置固有テーブル340xの地域ID領域には、自機の地域IDが未だ格納されていない。そこで、経路制御部320xは、パケット中継部330xを介して、地域IDパケットを送信し(ステップS730)、処理を元に戻す。地域IDパケットは、災害情報管理サーバ200から自機の地域IDの配布を受けるために送信される。つまり、この地域IDパケットの地域ID通知タイプフィールドには「1」が設定される。「1」は、地域IDパケットが地域ID取得要求パケットであることを意味する。
【0090】
一方、機能有効化の通知を受信したのでなければ(ステップS720:NO)、装置固有テーブル340xの地域ID領域には、自機の地域IDが既に格納されている。あるいは、経路制御部320xは、災害情報管理サーバ200に対して地域IDの取得要求中、つまり、地域IDの応答待ち状態である。そのため、新たに自機の地域IDを要求する必要は無い。そこで、経路制御部320xは、パケット中継部330xから自機宛のパケットを受信したか否かを判断する(ステップS740)。
【0091】
その結果、自機宛のパケットを受信していなければ(ステップS740:NO)、経路制御部320xは、処理を元に戻す。なお、他の中継装置300x宛のパケットを受信した場合には、経路制御部320xは、受信したパケットの宛先IPアドレスに含まれるネットワークアドレスがルーティングテーブル360xに登録された宛先ネットワークアドレスに一致する経路に、受信したパケットを、パケット中継部330xを介して送信する。具体的には、経路制御部320xは、受信したパケットの転送指示をパケット中継部330xに行う。パケット中継部330xは、経路制御部320xからの転送指示に基づいて、インタフェース部370xから回線にパケットを送信する。一方、自機宛のパケットを受信していれば(ステップS740:YES)、経路制御部320xは、受信したパケットの種別が地域IDパケットであるか否かを判断する(ステップS750)。
【0092】
その結果、受信したパケットが地域IDパケットでなければ(ステップS750:NO)、経路制御部320xは、受信したパケットの種別が経路情報パケットであるか否かを判断する(ステップS760)。その結果、受信したパケットが経路情報パケットでなければ(ステップS760:NO)、経路制御部320xは、処理を元に戻す。
【0093】
一方、受信したパケットが経路情報パケットであれば(ステップS760:YES)、経路制御部320xは、経路情報パケット処理を行い(ステップS770)、処理を元に戻す。経路情報パケット処理は、図13の通信T16〜T22およびステップS20に対応する処理である。経路情報パケット処理の詳細は、後述する。また、受信したパケットが地域IDパケットであれば(ステップS750:YES)、経路制御部320xは、地域IDパケット処理を行い(ステップS780)、処理を元に戻す。地域IDパケット処理は、図13の通信T15,通信T33〜T35およびステップS30に対応する処理である。地域IDパケット処理の詳細は、後述する。
【0094】
A−4−6−1.経路情報パケット処理:
経路情報パケット処理について説明する。経路情報パケット処理の説明に先立ち、経路情報パケットのフォーマットについて説明する。経路情報パケットのフォーマットを図18に示す。経路情報パケットは、中継装置300x間で経路情報の交換を行うパケットである。本実施例では、BGPで使用される経路情報パケットのフォーマットを利用している。
【0095】
具体的には、経路情報パケットは、図18に示すように、BGPメッセージヘッダと、経路の更新を示すUPDATEメッセージデータとを備えている。UPDATEメッセージデータは、パスセグメントタイプフィールドと、パスセグメント長フィールドと、パスセグメント値フィールドとを備えている。パスセグメントタイプでは、従来のBGPのパスセグメントタイプに対して、AS番号に地域IDを付加することを示すタイプ値を新たに定義して追加している。パスセグメント値は、経由したAS番号と地域IDのリストの値(以後、AS_PATH属性ともいう)を示す。パスセグメント長は、パスセグメント値に含まれるAS番号と地域IDの組み合わせの数を示す。
【0096】
このように、従来のBGPの経路情報パケットのフォーマットに対して、新たなパスセグメントタイプ値とパスセグメント値を追加することで、中継装置300x間での経路情報の交換を簡単に実現することができる。ただし、専用のフォーマットを新たに作成して、用いてもかまわない。
【0097】
経路情報パケット処理の流れを図19に示す。図示するように、経路情報パケット処理が開始されると、経路制御部320xは、まず、装置固有テーブル340xに地域IDが設定されているか否かを判断する(ステップ771)。その結果、地域IDが設定されていなければ(ステップS771:NO)、経路制御部320xは、処理を経路制御処理に戻す。
【0098】
一方、地域IDが設定されていれば(ステップS771:YES)、経路制御部320xは、隣接の中継装置300xから受信した経路情報パケットのパスセグメント値を抽出するとともに、経路情報パケットの送信元IPアドレスからネットワークアドレスを抽出し、BGPテーブル350xの該当する宛先ネットワークアドレスとAS番号・地域IDリストとを追加または更新する(ステップS772)。つまり、経路制御部320xは、受信した経路情報パケットによって、中継経路を学習する。
【0099】
BGPテーブル350xへの追加、または更新を行うと、経路制御部320xは、同一の宛先ネットワークアドレスを有し、かつ、異なるAS番号・地域IDリストを持つ複数の経路情報に対して、優先度を設定し、当該優先度に基づいて、最適経路を決定して、最適経路領域に「○」を設定する(ステップS773)。本実施例においては、災害通知を受信する前では、最適経路は、図10に示したように、優先度が最も高いエントリの経路、つまり、経由するAS番号と地域IDとの組み合わせが最も少ない中継経路である。
【0100】
最適経路領域に「○」を設定すると、経路制御部320xは、BGPテーブル350xの最適経路が「○」の経路を、ルーティングテーブル360xに登録する(ステップS774)。そして、経路制御部320xは、パケット中継部330xを介して、隣接の中継装置300xへ経路情報パケットを送信する(ステップS775)。この経路情報パケットのパスセグメントタイプフィールドには、地域IDが付加されたAS_PATH属性であることを示すタイプ値が格納される。また、パスセグメント値には、最適経路に「○」が設定されたAS番号・地域IDリストの値に、自機のAS番号と地域IDとを追加した値が格納される。こうして、経路情報パケット処理は終了となる。
【0101】
上述した経路情報処理によって、各中継装置300xが中継経路を学習するシーケンスを図20に示す。図示する例では、中継装置300aが、中継装置300nから中継装置300aまでの中継経路を学習するプロセスを示している。図20に示すように、まず、中継装置300nが、経路情報パケットを隣接の中継装置300fに送信する(通信T41)。この経路情報パケットのパスセグメント値フィールドには自機に付与された「AS6+地域ID6」が格納される。したがって、中継装置300fが受信する経路情報パケットのAS_PATH属性は、「AS6+地域ID6」である。通信T41は、後述するステップS783またはステップS790に基づく処理である。
【0102】
中継装置300fは、中継装置300nが送信した経路情報パケットを受信すると、パスセグメント値フィールドの先頭に、自機に付与された「AS3+地域ID3」を付加して、隣接の中継装置300dに送信する(通信T42)。したがって、中継装置300dが受信する経路情報パケットのAS_PATH属性は、「AS3+地域ID3,AS6+地域ID6」である。
【0103】
中継装置300dは、中継装置300fが送信した経路情報パケットを受信すると、パスセグメント値フィールドに自機に付与された「AS2+地域ID2」を付加して、隣接の中継装置300aに送信する(通信T43)。したがって、中継装置300aが受信する経路情報パケットのAS_PATH属性は、「AS2+地域ID2,AS3+地域ID3,AS6+地域ID6」である。かかるプロセスによって、中継装置300aは、中継装置300nから中継装置300aまでの中継経路の1つであるAS_PATH属性として、「AS2+地域ID2,AS3+地域ID3,AS6+地域ID6」を学習する。
【0104】
同様にして、中継装置300n,300l,300j,300h,300aの順に経路情報パケットが送信されることによって(通信T51〜T54)、中継装置300aは、中継装置300nから中継装置300aまでの中継経路の1つであるAS_PATH属性として、「AS4+地域ID4,AS4+地域ID5,AS5+地域ID5,AS6+地域ID6」を学習する。
【0105】
A−4−6−2.地域IDパケット処理:
地域IDパケット処理について説明する。地域IDパケット処理の流れを図21に示す。図示するように、地域IDパケット処理が開始されると、経路制御部320xは、まず、受信した地域IDパケットの地域ID通知タイプが「2」であるか否か、つまり、地域ID取得応答パケットであるか否かを判断する(ステップS781)。
【0106】
その結果、受信した地域IDパケットが地域ID取得応答パケットであれば(ステップS781:YES)、経路制御部320xは、受信した地域IDパケットの地域IDフィールドから地域IDを取り出し、構成情報設定部310xに対して指示を行い、当該地域IDを装置固有テーブル340xの地域IDフィールドに格納させる(ステップS782)。
【0107】
地域IDを格納すると、経路制御部320xは、隣接の中継装置300xに自機の経路情報を格納した経路情報パケットを、パケット中継部330xを介して送信する(ステップS783)。この経路情報パケットのパスセグメントタイプフィールドには、地域IDが付加されたAS_PATH属性であることを示すタイプ値が格納される。また、パスセグメント値フィールドには、自機に付与されたAS番号と地域IDとが格納される。経路情報パケットを送信すると、経路制御部320xは、処理を経路制御処理に戻す。
【0108】
一方、受信した地域IDパケットが地域ID取得応答パケットでなければ(ステップS781:NO)、経路制御部320xは、受信した地域IDパケットの地域ID通知タイプが「3」であるか否か、つまり、災害通知パケットであるか否かを判断する(ステップS784)。
【0109】
その結果、受信した地域IDパケットが災害通知パケットでなければ(ステップS784:NO)、経路制御部320xは、処理を経路制御処理に戻す。一方、受信した地域IDパケットが災害通知パケットであれば(ステップS784:YES)、経路制御部320xは、受信した地域IDパケットの地域IDフィールドから地域IDを取り出す(ステップS785)。取り出した地域IDは、災害地域を示している。
【0110】
地域IDを取り出すと、経路制御部320xは、BGPテーブル350xを参照し、最適経路が「○」のエントリであり、かつ、AS番号・地域IDリスト300上に、取り出した地域IDを含むエントリの宛先ネットワークアドレスの1つを選択する(ステップS786)。宛先ネットワークアドレスの1つを選択すると、経路制御部320xは、選択した宛先ネットワークアドレスを含む代替のエントリであって、AS番号・地域ISDリスト上に、取り出した地域IDを含まないエントリがあるか否かを判断する(ステップS787)。判断の結果、条件を満たすエントリがなければ(ステップS787:NO)、経路制御部320xは、処理を上記ステップS786に戻して、ステップS786の条件を満たす未選択のエントリを選択する。
【0111】
一方、条件を満たすエントリがあれば(ステップS787:YES)、経路制御部320xは、選択した宛先ネットワークアドレスを含む代替のエントリであり、かつ、現在の最適経路が「○」の次に優先度の高い経路のエントリの最適経路を「○」とする(ステップS788)。つまり、最適経路を、災害地域を含まない中継経路のうちの優先度が最も高い中継経路に設定し直す。
【0112】
最適経路を切り替えると、経路制御部320xは、BGPテーブル350xの最適経路が「○」に切り替わった中継経路を、ルーティングテーブル360xに登録する(ステップS789)。これにより、中継経路が、災害地域を含む中継経路から、災害地域を含まない中継経路のうちの優先度が最も高い中継経路に切り替わる。
【0113】
中継経路を切り替えると、経路制御部320xは、隣接の中継装置300xに対して、最適経路が「○」になった新たな経路情報を格納した経路情報パケットを、パケット中継部330xを介して送信する(ステップS790)。この経路情報パケットのパスセグメントタイプフィールドには、地域IDが付加されたAS_PATH属性であることを示すタイプ値が格納される。また、パスセグメント値フィールドには、最適経路が「○」になったAS番号・地域IDリストが格納される。この経路情報パケットを受信した中継装置300xは、切り替わった新たな中継経路を学習することとなる。
【0114】
経路情報パケットを送信すると、経路制御部320xは、上記ステップS787において、条件を満たす全ての宛先ネットワークアドレスを選択したか否かを判断する(ステップS791)。その結果、条件を満たす全ての宛先ネットワークアドレスについて選択済みでなければ(ステップS791:NO)、経路制御部320xは、処理を上記ステップS786に戻して、ステップS786の条件を満たす未選択のエントリを選択する。一方、条件を満たす全ての宛先ネットワークアドレスについて選択済みであれば(ステップS791:YES)、経路制御部320xは、処理を経路制御処理に戻す。
【0115】
以上説明した経路制御処理による中継経路の切り替えの具体例を図22に示す。図22に示すように、ネットワークシステム1000における中継装置300aと300nとの間の中継経路は、災害発生前においては、上述した経路制御処理によって、中継装置300c〜300fを経由する通信経路P1に設定されている。
【0116】
このときのBGPテーブル350aの状態は、図10に示したとおりである。図10に示したように、BGPテーブル350aには、宛先ネットワークアドレスアドレスが「G」の2つのエントリが存在する。この2つのエントリのうちの、優先度が「1」のエントリの最適経路に「○」が設定されている。すなわち、ホップ数が最も少ないAS_PATH属性「AS2+地域ID2,AS3+地域ID3,AS6+地域ID6」を有するエントリの最適経路に「○」が設定されている。こうすることで、効率的なパケットの中継を行うことができる。
【0117】
また、このときのルーティングテーブル360aの状態は、図11に示したとおりである図11に示したように、ルーティングテーブル360aには、宛先ネットワークアドレスアドレス「G」のネクストホップとして、BGPテーブル350aの最適経路として設定されたエントリに対応する「B1」、すなわち、中継装置300dが登録されている。
【0118】
ここで、ネットワークグループNG3の所在地域(地域ID=「3」)で大規模災害が発生したとする。この場合、中継装置300aは、災害情報管理サーバ200から、地域ID3を含む災害通知パケットを受信する。最適経路に「○」が設定された宛先ネットワークアドレスアドレスが「G」のエントリでは、AS番号・地域IDリストに、災害地域を示す地域ID3を含むAS_PATH属性が記録されている。そこで、中継装置300aは、上記ステップS788によって、BGPテーブル350aの更新を行う。
【0119】
更新後のBGPテーブル350aの状態を図23に示す。図示するように、更新後のBGPテーブル350aにおいては、宛先ネットワークアドレスアドレスが「G」の2つのエントリのうちの優先順位が「2」のエントリに最適経路に「○」が設定されている。このエントリのAS番号・地域IDリストに記録されたAS_PATH属性は、「AS4+地域ID4,AS4+地域ID5,AS5+地域ID5,AS6+地域ID6」である。つまり、災害地域を含まないAS_PATH属性を有するエントリの中で最も優先順位が高いエントリに最適経路が変更される。なお、宛先ネットワークアドレスアドレスが「F」のエントリのうちの最適経路に「○」が設定されたエントリでは、AS番号・地域IDリストに、災害地域を示す地域ID3を含むAS_PATH属性が記録されていない。このため、宛先ネットワークアドレスアドレスが「F」のエントリは、更新されない。
【0120】
このようにBGPテーブル350aが更新されると、中継装置300aは、上記ステップS789によって、ルーティングテーブル360aの更新を行う。更新後のルーティングテーブル360aの状態を図24に示す。宛先ネットワークアドレスアドレスが「G」のエントリでは、BGPテーブル350aの更新に伴って、宛先ネットワークアドレスアドレス「G」へのネクストホップとして、BGPテーブル350aの最適経路として新たに設定されたエントリに対応する「D1」が登録されている。「D1」は、中継装置300hのIPアドレスである。
【0121】
これによって、中継装置300aと300nとの間の中継経路は、中継装置300c〜300fを経由する通信経路P1、すなわち、災害地域を通る経路から、中継装置300g〜300lを経由する通信経路P2、すなわち、災害地域を通らない経路に切り替えられる。
【0122】
A−5.効果:
上述したネットワークシステム1000において、災害情報管理サーバ200は、災害情報発信サーバ100からの災害情報DIを受信して、災害地域の地域IDを含む災害通知パケットを中継装置300xに送信する。中継装置300xは、災害情報管理サーバ200からの災害通知パケットの受信を契機として、決定済みの中継経路を、受信した災害通知パケットに含まれる地域IDに基づいて、災害地域を含まない中継経路に切り替える。したがって、災害発生時に、災害地域を経由する通信経路上の中継装置間でルーティング・プロトコルのコネクションが切断するのを待たずに、中継経路を代替経路に迅速に切り替えることができる。あるいは、ルーティング・プロトコルのコネクションが切断しない場合においても、中継経路が災害地域を迂回する経路に迅速に切り替えられるため、災害地域のネットワークの混雑を回避することができる。その結果、災害地域以外の地域間の通信品質の低下を抑制することができる。
【0123】
また、ネットワークシステム1000において、中継装置300xは、経路情報パケットを相互に交換し合って、経路情報をダイナミックに学習する。したがって、ユーザの手動設定によって、中継装置300xに経路情報を学習させる必要がなく、ユーザの利便性が向上する。また、通信環境に応じて、柔軟に経路情報を学習することができる。
【0124】
また、ネットワークシステム1000において、災害情報管理サーバ200は、中継装置300xからの要求に応じて、要求元の中継装置300xに付与された地域IDを当該中継装置300xに配布する。したがって、中継装置300xは、自機に付与された地域IDを自動的に装置固有テーブル340aに登録することができる。その結果、ユーザは、手動操作の入力によって、地域IDを中継装置300xに登録する必要がない。また、中継装置300xのユーザは、中継装置300xに付与された地域IDを知っていなくてもよい。
【0125】
また、ネットワークシステム1000において、災害情報管理サーバ200は、災害情報DIに含まれる規模の推定値が災害規模閾値THよりも大きい場合にのみ、災害通知パケットを中継装置300xに送信する。したがって、中継装置300x間の通信に影響を与える程度の災害の発生、または、予測のみを対象として、中継経路の切り替えを行うことができる。したがって、不必要な中継経路の切り替えを抑制することができる。また、不必要な災害通知パケットの送信を抑制できるので、ネットワーク負荷の増大を抑制することができる。
【0126】
B.第2実施例:
本発明の第2実施例について説明する。第2実施例としてのネットワークシステム2000の概略構成を図25に示す。図示するように、ネットワークシステム2000が第1実施例としてのネットワークシステム1000と異なる点は、ネットワークグループNG1〜NG7の各々に1つずつ、災害情報管理プロキシサーバ800a〜800g(以下、災害情報管理プロキシサーバ800a〜800gを総称して、災害情報管理プロキシサーバ800xともいう)が設けられている点である。災害情報管理プロキシサーバ800a〜800gには、IPアドレスとしてA3〜G3が付与されている。以下、ネットワークシステム2000が第1実施例と異なる点についてのみ説明し、第1実施例と同様の点については、説明を省略する。
【0127】
災害情報管理プロキシサーバ800xの概略構成を図26に示す。図示するように、災害情報管理プロキシサーバ800xは、地域ID配布部810x、災害情報受発信部820x、地域テーブル840x、災害通知先テーブル850xを備えている。地域ID配布部810xは、災害情報管理サーバ200の地域ID配布部210と同様の機能を有している。
【0128】
災害情報受発信部820xは、災害情報管理サーバ200から災害通知パケットを受信して、当該災害通知パケットに含まれる地域IDを含む災害通知パケットを、中継装置300xに送信する。つまり、災害情報管理サーバ200は、第1実施例では、災害通知を中継装置300xに送信したが、第2実施例では、災害通知を災害情報管理プロキシサーバ800xに送信する。このため、災害情報管理サーバ200の災害通知先テーブル250には、図27に示すように、災害情報管理プロキシサーバ800xのIPアドレスが、災害通知先IPアドレスとして登録されている。
【0129】
地域テーブル840xは、災害情報管理サーバ200の地域テーブル240と同一の構成を有している。災害通知先テーブル850xには、災害情報管理プロキシサーバ800xが属するネットワークグループNG1〜NG7の中継装置300xのIPアドレスが登録されている。災害情報管理プロキシサーバ800aの災害通知先テーブル850aを図28に示す。図示するように、災害通知先テーブル850aには、災害情報管理プロキシサーバ800aが属するネットワークグループNG1の中継装置300a,300bのIPアドレス「A1」,「A2」が登録されている。本実施例では、災害通知先テーブル850xの登録内容は、災害情報管理プロキシサーバ800xのユーザが、予め登録しておくものとした。ただし、災害情報管理サーバ200に事前に登録しておき、第1実施例の地域ID取得処理と同様に、災害情報管理プロキシサーバ800xが災害情報管理サーバ200から取得してもよい。
【0130】
かかるネットワークシステム2000における経路制御の流れを図29に示す。図29は、第1実施例の図13に対応する図である。以下、第1実施例(図13)と異なる点についてのみ説明し、第1実施例と同様の点については、説明を省略する。なお、図29において、第1実施例と異なる通信については、太線で示している。
【0131】
災害発生前における地域IDの配布・中継経路の決定フェーズでは、図29に示すように、中継装置300aは、中継装置300aに付与された地域IDを得るために、災害情報管理プロキシサーバ800aの地域ID配布部810aに地域ID取得要求を行う(通信T13)。災害情報管理プロキシサーバ800aの地域ID配布部810aは、要求元の中継装置300aの地域IDを応答するために、中継装置300aに地域ID応答を行う(通信T14)。地域IDの配布・中継経路の決定フェーズのその他の点については、第1実施例と同様である。
【0132】
災害地域の地域IDの通知フェーズでは、図29に示すように、災害情報管理サーバ200の災害情報受発信部220は、災害情報DIを受信すると、災害通知先テーブル250を参照して、災害情報管理プロキシサーバ800aの災害情報受発信部820aに災害通知パケットを送信して、災害地域の地域IDの通知を行う(通信T37)。なお、本実施例においては、災害通知パケットは、第1実施例と同様に、災害地域に配置された中継装置300xには送信されない。災害地域の地域IDの通知を受けると、災害情報受発信部820aは、中継装置300aに災害通知パケットを送信して、災害地域の地域IDの通知を行う(通信T38)。災害地域の地域IDの通知フェーズのその他の点については、第1実施例と同様である。
【0133】
災害情報管理プロキシサーバ800xにおける災害通知処理について説明する。ここでの災害通知処理とは、災害情報管理プロキシサーバ800xから災害通知パケットを受信して、それに基づいて、災害の発生地域を中継装置300xに通知する処理である。この処理は、図29の通信T38に対応している。災害通知処理は、災害情報管理プロキシサーバ800xの動作中において、繰り返し実行される。
【0134】
災害通知処理の流れを図30に示す。図示するように、災害通知処理が開始されると、災害情報管理プロキシサーバ800xの災害情報受発信部820xは、まず、自機宛のパケットを受信したか否かを判断する(ステップS910)。その結果、自機宛のパケットを受信していなければ(ステップS910:NO)、災害情報受発信部820xは、処理を元に戻す。一方、自機宛のパケットを受信していれば(ステップS910:YES)、災害情報受発信部820xは、受信したパケットの種別が地域IDパケットであり、かつ、地域ID通知タイプの値が「3」であるか否かを判断する(ステップS920)。地域ID通知タイプの値が「3」の地域IDパケットは、当該パケットが、災害通知パケットであることを意味している。
【0135】
判断の結果、災害通知パケットの受信でなければ(ステップS920:NO)、災害情報受発信部820xは、処理を元に戻す。一方、災害通知パケットの受信であれば(ステップS920:YES)、受信した災害通知パケットから地域IDを取り出す(ステップS930)。この地域IDは、災害地域を示している。
【0136】
地域IDを取り出すと、災害情報受発信部820xは、災害通知先テーブル850xのエントリのうちの未選択の1つのエントリを選択する(ステップS940)。1つのエントリを選択すると、災害情報受発信部820xは、選択したエントリに登録された災害通知先IPアドレスを宛先にして、地域IDパケットを送信する(ステップS950)。この地域IDパケットの地域ID通知タイプフィールドには「3」が設定される。「3」は、地域IDパケットが災害通知パケットであることを意味する。また、地域IDパケットの地域IDフィールドには、上記S930で取り出した地域IDの値が設定される。
【0137】
地域IDパケットを送信すると、災害情報受発信部820xは、上記ステップS940において、全てのエントリを選択したか否かを判断する(ステップS960)。その結果、全てのエントリについて選択済みでなければ(ステップS960:NO)、災害情報受発信部820xは、処理を上記ステップS940に戻す。一方、全てのエントリについて選択済みであれば(ステップS960:YES)、災害情報受発信部820xは、処理を元に戻す。
【0138】
以上説明したネットワークシステム2000は、ネットワークグループNG1〜NG7の各々に災害情報管理プロキシサーバ800xを配置する。そして、災害情報管理プロキシサーバ800xは、災害情報管理サーバ200から災害通知パケットを受信した際に、自機と同一のネットワークグループに属する、つまり、自機と同一の地域IDが付与された中継装置300xに、災害通知パケットを送信する。したがって、中継装置300xのIPアドレスを分散して管理できる。その結果、災害情報管理サーバ200の処理負担とIPアドレスの管理負担とを軽減することができる。
【0139】
C.変形例:
上述の実施例の変形例について説明する。
C−1.変形例1:
上述の実施形態においては、気象庁が提供する緊急地震速報サービスを利用して、災害情報管理サーバ200が災害情報DIを取得する構成について示したが、災害情報DIを取得する態様は、上述の例に限られるものではない。例えば、民間会社の提供する地震速報を利用してもよい。もとより、災害情報DIの取得は、地震速報に限られない。例えば、災害情報管理サーバ200が、インターネット上の所定のサイトの更新を監視し、更新された情報に所定のキーワードが含まれる場合に、地震が発生したと判断してもよい。かかる所定のサイトとしては、例えば、気象庁の防災気象情報サイトや、各種災害に係るRSS(RDF Site Summaryなど)サイトとすることができる。
【0140】
かかる場合、災害情報管理サーバ200は、取得した災害情報に対して、所定のキーワードを用いて検索を行うことで災害地域を抽出する抽出部を備えていてもよい。所定のキーワードとしては、地域名を表すキーワードや、地震の発生を表すキーワードとすることができる。地域名は、地方名、都道府県名、市町村名などを適宜設定すればよい。また、地震の規模、震度などを示すキーワードを含めて、災害の規模も抽出してもよい。このように、検索を行うことによって、災害地域を抽出する構成とすれば、災害情報DIを、災害情報管理サーバ200用に作成された専用のフォーマットで構成しなくてもよい。したがって、災害情報DIの取得元を、上述した種々の情報源とすることができるので、災害情報管理サーバ200の汎用性が向上する。
【0141】
C−2.変形例2:
上述の実施形態においては、災害情報管理サーバ200は、災害情報DI(緊急地震速報)に含まれる規模の推定値と災害規模閾値THとを比較することによって、災害通知の可否を判断する構成としたが、かかる構成に限られるものではない。例えば、緊急地震速報に含まれる予測震度が所定の閾値よりも大きい場合に、災害通知を行う構成としてもよい。緊急地震速報において、予測震度が所定値以上の場合は、予測震度は、地域名ごとに与えられるので、この場合、災害情報管理サーバ200は、閾値を超える震度が予測された地域のみを災害通知パケットによって通知してもよい。こうすれば、より精度の高い経路制御を行うことができる。
【0142】
C−3.変形例3:
上述の実施形態においては、中継装置300xは、災害通知を受信した場合に切り替える代替経路として、BGPテーブル350aにおいて相対的に優先度が高い経路を採用する構成について示した。ただし、代替経路の候補が複数ある場合において、代替経路の選択方法は、上述の例に限られるものではない。例えば、地域IDを、地域IDが示す地域間の距離的な乖離の程度を把握可能に構成する場合には、災害地域からの乖離の程度が相対的に小さい地域IDを含む中継経路の優先順位を相対的に低くしてもよい。
【0143】
具体的には、例えば、簡易な手法として、区分した地域に対して、都道府県番号のように、北東から南西に向かって、地域IDの値が次第に大きく、あるいは、小さくなるように地域IDを構成してもよい。この場合、AS_PATH属性に含まれる地域IDと、災害地域を示す地域IDとの差分値の絶対値は、おおむね、各地域と災害地域との距離的な乖離の程度を表すことになる。そのため、中継装置300xは、以下のようにして、代替経路を決定してもよい。
【0144】
まず、中継装置300xは、同一の宛先ネットワークアドレスを有するBGPテーブル350aの各エントリについて、AS番号・地域IDリストに記録されたAS_PATH属性を構成する地域IDの各々と、災害地域を示す地域IDとの差分値の絶対値を算出する。次に、エントリごとに、算出した差分値の絶対値のうちの最小値を求める。そして、当該最小値が最も大きいエントリのAS_PATH属性を、代替経路として採用する。
つまり、各エントリの災害地域に最も近い中継地域を比較した場合に、当該最も近い中継地域が災害地域に近いほど、優先順位を低く設定する。こうすれば、災害地域から物理的距離が近い地域を通る中継経路を採用することを避けることができるので、代替経路の信頼性が向上する。
【0145】
あるいは、地域IDを、緯度および経度などの座標情報で構成してもよい。こうすれば、各地域と災害地域との距離的な乖離の程度の算出精度が向上する。その結果、代替経路の信頼性をいっそう向上させることができる。
【0146】
また、各地域と災害地域との距離的な乖離の程度は、経路全体で判断してもよい。例えば、中継装置300xは、同一の宛先ネットワークアドレスを有するBGPテーブル350aの各エントリについて、AS番号・地域IDリストに記録されたAS_PATH属性を構成する地域IDの各々と、災害地域を示す地域IDとの差分値の絶対値を算出する。次に、エントリごとに、算出した差分値の絶対値の各々の和を、ホップ数を用いて正規化した評価値Eを求める。評価値Eは、次式(1)で表すことができる。評価値Eは、所定の重み付け係数によって、差分値の絶対値を重み付けてもよい。式(1)において、nはホップ数、IDiは、AS_PATH属性を構成する地域IDの値の各々、IDDは、災害地域を示す地域IDの値、Kiは重み付け係数である。
【0147】
【数1】

【0148】
そして、評価値Eの値が最も大きいエントリのAS_PATH属性を、代替経路として採用する。こうすれば、経路全体として、災害地域から離れた中継経路を優先的に代替経路として採用することができるので、代替経路の信頼性が向上する。Kiは、IDiとIDDとの差分に応じて、可変に設定してもよい。具体的には、IDiとIDDとの差分が大きい場合には、Kiを小さくし、IDiとIDDとの差分が小さい場合には、Kiを大きくしてもよい。こうすれば、災害地域から十分に離れた地域が評価に影響することを抑制できる。
【0149】
C−4.変形例4:
上述の実施形態においては、既存のプロトコルであるBGPを活用して、中継装置300xが経路情報を学習する構成を示した。このため、中継装置300xが学習する経路情報は、AS番号と地域IDとの組み合わせによるAS_PATH属性として構成された。ただし、AS番号を含めて経路情報を学習することは、必須ではない。例えば、BGPを活用せずに、経路情報を学習する新たなプロトコルを作成する場合には、経路情報は、パケットの中継地域を識別可能な地域情報と、中継装置300xのネットワーク上のアドレスとを含むものであればよい。
【0150】
C−5.変形例5:
上述の実施形態においては、中継装置300xは、経路制御パケットを中継装置300x間で交換し合うことによって、経路情報の学習を行う構成について示したが、経路情報の学習方法は、かかる構成に限るものではない。例えば、災害情報管理サーバ200において、経路情報を一括管理しておき、中継装置300xが、災害情報管理サーバ200から経路情報を受信することで、経路情報を学習する構成としてもよい。あるいは、中継装置300xは、ユーザが行う経路情報の入力を受け付けて、経路情報を学習する構成としてもよい。
【0151】
C−6.変形例6:
上述の実施形態においては、災害情報DIは、地震に関する情報であったが、災害情報DIの内容は、地震に限るものではない。災害情報DIは、種々の災害の発生、または発生予測に関する情報とすることができる。ここでの災害とは、気象などの自然現象の変化、あるいは人為的な原因などによって、人命や社会生活に対する被害を生じる現象である。こうした現象としては、例えば、火災、水害、火山噴火、竜巻、テロ、戦争などを例示することができる。
【0152】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した実施形態における構成要素のうち、独立クレームに記載された要素に対応する要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略、または、組み合わせが可能である。また、本発明はこうした実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を脱しない範囲において、種々なる態様で実施できることは勿論である。例えば、本発明は、中継装置やネットワークシステムとしての構成のほか、ネットワークシステムを構成するサーバ、当該サーバや中継装置のプログラム、当該プログラムを記録した記憶媒体、中継装置の経路制御方法等としても実現することができる。
【符号の説明】
【0153】
100…災害情報発信サーバ
200…災害情報管理サーバ
210…地域ID配布部
220…災害情報受発信部
230…閾値テーブル
240…地域テーブル
250…災害通知先テーブル
300a〜300n,300x…中継装置
310x…構成情報設定部
320x…経路制御部
330x…パケット中継部
340x…装置固有テーブル
350x…BGPテーブル
360x…ルーティングテーブル
370x…インタフェース部
371x〜374x…ポート
800a〜800g,800x…災害情報管理プロキシサーバ
810x…地域ID配布部
820x…災害情報受発信部
840x…地域テーブル
850x…災害通知先テーブル
1000,2000…ネットワークシステム
R1〜R14…リンク
P1,P2…通信経路
N1〜N7…ネットワーク
NG1〜NG7…ネットワークグループ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信パケットの中継を行う中継装置であって、
前記通信パケットの中継地域を識別可能な地域情報と、他の中継装置のネットワーク上のアドレスとを含む経路情報を学習し、該学習した経路情報に基づいて、受信した通信パケットの中継経路を決定する経路制御部と、
前記中継装置が受信した前記通信パケットを、前記決定した中継経路に基づいて、該受信した通信パケットの宛先に送信する中継部と
を備え、
前記経路制御部は、前記中継装置が、災害地域を通知する災害通知パケットを受信した場合であって、前記決定した中継経路に前記災害地域を含むときに、該決定した中継経路を、該災害地域を含まない前記中継経路に切り替える
中継装置。
【請求項2】
請求項1記載の中継装置であって、
前記中継装置の設置地域を記憶する記憶部を備え、
前記経路制御部は、
前記中継装置が、前記他の中継装置としての第1の他の中継装置から、前記経路情報を学習するための経路情報パケットであって、前記他の中継装置の設置地域と、該他の中継装置のネットワーク上のアドレスとを含む経路情報パケットを受信した場合に、該経路情報パケットに基づいて、前記経路情報の学習を行い、
前記受信した経路情報パケットに、前記中継装置の設置地域と、該中継装置のネットワーク上のアドレスとを付加した新たな経路情報パケットを生成し、
前記中継部は、前記生成した新たな経路情報パケットを、前記第1の他の中継装置とは異なる第2の他の中継装置に送信する
中継装置。
【請求項3】
前記中継装置の設置地域を記録したサーバに対して行う要求への応答として前記中継装置が受信する応答パケットに含まれる前記中継装置の設置地域を前記記憶部に記録する設置地域設定部を備えた請求項2記載の中継装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか記載の中継装置であって、
前記地域情報は、前記中継地域の各々の乖離の程度を把握可能に構成され、
前記経路制御部は、前記災害地域を含まない中継経路への切り替えを行う場合であって、該切り替えの候補となる中継経路が複数存在するときには、該災害地域からの前記乖離の程度が相対的に小さい前記中継地域を含む前記中継経路の優先順位を相対的に低くして、前記切り替える中継経路を決定する
中継装置。
【請求項5】
前記経路制御部は、前記学習した経路情報におけるホップ数が相対的に少ない前記中継経路を優先して、前記中継経路の決定を行う請求項1ないし請求項4のいずれか記載の中継装置。
【請求項6】
サーバと、区分された地域ごとに少なくとも1台ずつ設置され、通信パケットの中継を行う複数の中継装置とを備えたネットワークシステムであって、
前記サーバは、
所定の地域に災害が生じたこと、または、生じることの予測を表す災害情報を外部から取得する取得部と、
前記取得した災害情報に基づいて、前記所定の地域である災害地域を表す情報を含む災害通知パケットを送信して、前記複数の中継装置のうちの少なくとも前記災害地域に配置された中継装置以外の中継装置に前記災害地域を通知する災害通知部と
を備え、
前記中継装置の各々は、
前記地域の区分に基づいて表される前記通信パケットの中継地域を識別可能な地域情報と、他の中継装置のネットワーク上のアドレスとを含む経路情報を学習し、該学習した経路情報に基づいて、受信した通信パケットの中継経路を決定する経路制御部と、
前記中継装置が受信した前記通信パケットを、前記決定した中継経路に基づいて、該受信した通信パケットの宛先に送信する中継部と
を備え、
前記経路制御部は、前記中継装置が、前記災害通知パケットを受信した場合であって、前記決定した中継経路に前記災害地域を含むときに、該決定した中継経路を、該災害地域を含まない前記中継経路に切り替える
ネットワークシステム。
【請求項7】
第1のサーバと、区分された地域ごとに少なくとも1台ずつ設置された複数の第2のサーバと、前記区分された地域ごとに少なくとも1台ずつ設置され、通信パケットの中継を行う複数の中継装置とを備えたネットワークシステムであって、
前記第1のサーバは、
所定の地域に災害が生じたこと、または、生じることの予測を表す災害情報を外部から取得する取得部と、
前記取得した災害情報に基づいて、前記所定の地域である災害地域を表す情報を含む第1の災害通知パケットを送信して、前記複数の第2のサーバのうちの少なくとも前記災害地域に配置された第2のサーバ以外の第2のサーバに前記災害地域を通知する第1の災害通知部と
を備え、
前記第2のサーバの各々は、
前記第1の災害通知パケットを受信する受信部と、
該第1の災害通知パケットに含まれる前記災害地域を表す情報を含む第2の災害通知パケットを送信して、前記複数の中継装置のうちの少なくとも前記災害地域に配置された中継装置以外の中継装置に前記災害地域を通知する第2の災害通知部と
を備え、
前記中継装置の各々は、
前記区分に基づいて表される前記通信パケットの中継地域を識別可能な地域情報と、他の中継装置のネットワーク上のアドレスとを含む経路情報を学習し、該学習した経路情報に基づいて、受信した通信パケットの中継経路を決定する経路制御部と、
前記中継装置が受信した前記通信パケットを、前記決定した中継経路に基づいて、該受信した通信パケットの宛先に送信する中継部と
を備え、
前記経路制御部は、前記中継装置が、前記第2の災害通知パケットを受信した場合であって、前記決定した中継経路に前記災害地域を含むときに、該決定した中継経路を、該災害地域を含まない前記中継経路に切り替える
ネットワークシステム。
【請求項8】
通信パケットの中継を行う複数の中継装置に通知を行うプログラムであって、
所定の地域に災害が生じたこと、または、生じることの予測を表す災害情報を外部から取得する取得機能と、
前記取得した災害情報に基づいて、前記所定の地域である災害地域を表す情報を含む災害通知パケット送信して、前記複数の中継装置のうちの少なくとも前記災害地域に配置された中継装置以外の中継装置に前記災害地域を通知する災害通知機能と
をコンピュータに実現させるためのプログラム。
【請求項9】
請求項8記載のプログラムであって、
更に、前記取得した災害情報に対して、所定のキーワードを用いて検索を行うことで前記災害地域を抽出する抽出機能をコンピュータに実現させ、
前記災害通知機能は、前記抽出した災害地域を表す情報を含む前記災害通知パケットを生成して、送信する
プログラム。
【請求項10】
前記災害情報に前記災害の規模が含まれる場合に、前記災害通知機能は、前記災害の規模が所定の閾値以上である場合に限り、前記災害地域の通知を行う請求項8または請求項9記載のプログラム。
【請求項11】
請求項8ないし請求項10のいずれか記載のプログラムであって、
更に、前記複数の中継装置の設置地域をそれぞれ記憶する記憶機能と、
前記中継装置の要求に応じて、該中継装置の前記設置地域を該中継装置に通知する設置地域通知機能と
をコンピュータに実現させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2012−238933(P2012−238933A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104811(P2011−104811)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(504411166)アラクサラネットワークス株式会社 (315)
【Fターム(参考)】