説明

中継装置

【課題】プロトコルの異なる複数のネットワーク間で送受信されるスキャン伝送データを中継装置で中継する際に、受信中データを次の新たな受信データで上書きして破壊並びに誤認するといったことを防止することを可能にする。
【解決手段】中継装置Aのスキャン伝送送信タイミング調整部Eが、N2用送信バッファD2に格納されたネットワークN1からのスキャン伝送データを中継先ネットワークN2へ送信する際に、前回送信時刻と現在時刻との双方の時間差が、スキャン伝送の送信周期Tよりも所定時間短く且つ中継先ネットワークN2の最小受信間隔T[N2](min)よりも長い特定時間(T−Δt2)以上であれば即時送信し、双方の時間差が特定時間(T−Δt2)未満であれば、双方の時間差が特定時間(T−Δt2)以上となった時点で送信するように、構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロトコルの異なる複数のネットワーク間においてスキャン伝送パケットデータを中継し、分散制御システム及び安全計装システム等に適用される、中継装置に関する。
【背景技術】
【0002】
分散制御システム及び安全計装システムは、石油化学、鉄鋼、紙パルプ、食品、薬品、電力等の幅広い分野のプラント運転制御及び安全確保に用いられている。これらのシステムでは通信局同士がバルブの操作値や流量値などをデータで通信するデータ通信を行っている。このようなシステムは例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
プラント制御に使用するデータ共有では、一般的にネットワーク内の複数の通信局へサイクリックに同報通知するスキャン伝送を利用している場合が多い。このスキャン伝送は、1対多の同報通知であり、1対多のユニキャスト通信に比べて送信回数が少なくて済むため、通信帯域を節約することができ、リアルタイム性が求められるような制御ネットワークにとって有効な通信方式である。現在では、特許文献2に記載のように、スキャン伝送パケットデータ(スキャン伝送データとも称す)を異なるネットワーク間で中継する中継装置も発明されている。
【0004】
特許文献2にあるような、既存の中継装置を用いてプロトコルの異なる2つのネットワーク間のスキャン伝送データを中継する場合の通信ネットワークシステム図を図4に示す。ここでは、簡単のため、ネットワークN1のスキャン伝送データを、中継装置ApでネットワークN2へ中継する処理について記述するが、逆も同様である。
【0005】
中継装置Apは、ネットワークN1に存在する任意の通信局N1aのホスト1ahからスキャン伝送データをN1用通信部B1を使用して受信すると、スキャン伝送中継部Cを用いてネットワークN2のプロトコルに適合するように加工処理を行い、このデータをN2送信バッファD2に格納する。この格納されたスキャン伝送データは直ちにN2用通信部B2を使用してネットワークN2へと送信される。
【0006】
今、図5に示すように、ネットワークN1で生じる遅延の最大値と最小値を、それぞれ時刻tm1とtm2間のtd[N1](max)、時刻tm5とtm6間のtd[N1](min)とすると、ネットワークN1での実際の受信間隔の最小値T[N1](min)は次式(1)で表される。
【0007】
T[N1](min)=T−(td[N1](max)−td[N1](min))
…(1)
ネットワークN2で生じる遅延の最大値と最小値を、それぞれ時刻tm3とtm4間のtd[N2](max)、時刻tm7とtm8間のtd[N2](min)とすると、ネットワークN2での実際の受信間隔の最小値は次式(2)で表される。
【0008】
T[N2](min)=T−(td[N2](max)−td[N2](min))
…(2)
ここで、ネットワークN1,N2におけるホストインターフェース仕様によるスキャン伝送の最小受信間隔をそれぞれt1,t2とすると、スキャン周期をTとして、T[N1](min)>t1、T[N2](min)>t2が成立している。
【0009】
スキャン伝送データを中継する際には、中継装置Apでの中継処理によっても遅延が生じる。この遅延の最大値と最小値を、それぞれ時刻tm2とtm3間のtd[Nr](max)、時刻tm6とtm7間のtd[Nr](min)とする。
【0010】
上記の遅延時間を考慮すると、従来の中継装置Apによってスキャン伝送データを中継する場合、図5に示すように送信元通信局N1aのホスト1ahが送信要求をかけてから、中継先ネットワークN2の例えば通信局N2bのホスト2bhが、そのスキャン伝送データを受け取るまでに発生する遅延の時刻tm1とtm4間の最大値td(max)及び時刻tm5とtm8間の最小値td(min)はそれぞれ次式(3)及び(4)で表される。
【0011】
td(max)=td[N1](max)+td[Nr](max)
+td[N2](max)…(3)
td(min)=td[N1](min)+td[Nr](min)
+td[N2](min)…(4)
従って、中継先ネットワークN2の通信局N2bのホスト2bhが送信元ネットワークN1のスキャン伝送データを受信する際の時刻tm4とtm8間の最小受信間隔T[N2][N1](min)は次式(5)のようになる。
T[N2][N1](min)=T−(td(max)−td(min))…(5)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−176161号公報
【特許文献2】特開2005−094289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献2にあるような、図4及び図5に示したプロトコルの異なるネットワークN1とN2は、それぞれ異なる思想で設計されているため、スキャン伝送データが中継装置Apで中継されることを想定していない。このため、異なるネットワークへスキャンが中継されたとき、中継先通信局N2aのホスト2ahのスキャン伝送の最小受信間隔T[N2](min)が、中継先スキャン伝送の受信に関するホストインターフェース仕様のスキャン伝送の最小受信間隔t2を満たすかどうかは保証されない。
【0014】
従って、その最小受信間隔T[N2][N1](min)がネットワークN2のスキャン伝送受信のホストインターフェース仕様を満たしていない場合、つまり、T[N2][N1](min)<t2である場合、ネットワークN2では中継されたスキャン伝送データを受信した際にホストインターフェース仕様を満たさない可能性がある。このようにスキャン伝送データを受信した際にホストインターフェース仕様を満たさないと、ホスト2ahがスキャン伝送データを読み込んでいる最中に、次の新たなスキャン伝送データが読み込み中のデータを上書きしてしまい、データが破壊されたり、ホスト2ahがデータを誤認したりする問題が発生する。
【0015】
中継装置Apを介したネットワークN1,N2のシステムが上述のようなプラント運転制御に適用されている場合、先の誤認によって最悪の場合、正常なプラント操業に支障を来す可能性がある。
【0016】
本発明は上記した課題を解決するためになされたものであり、プロトコルの異なる複数のネットワーク間で送受信されるスキャン伝送データを中継装置で中継する際に、中継先ネットワークに存在する通信局のスキャン伝送受信のホストインターフェース仕様を満たすことができ、これにより受信中データを次の新たな受信データで上書きして破壊並びに誤認するといったことを防止することができる、中継装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記した課題を解決するために本発明は、異なるプロトコルを使用する複数のネットワーク間でスキャン伝送されるデータを受信後に、中継先ネットワークのプロトコルに適合するように加工処理を行ってバッファに格納し、この格納後に中継先ネットワークへ送信する中継処理を行う中継装置であって、前記格納されたデータを前記中継先ネットワークへ送信する際に、前回送信時刻と現在時刻との双方の時間差が、前記スキャン伝送の送信周期よりも所定時間短く且つ前記中継先ネットワークのスキャン伝送のホストインターフェース仕様による最小受信間隔よりも長い特定時間以上であれば即時送信し、前記双方の時間差が前記特定時間未満であれば、当該双方の時間差が前記特定時間以上となった時点で送信する送信タイミング調整手段、を有することを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、送信元ネットワークからのスキャン伝送によるデータが、中継装置により中継先ネットワークへ中継される際に、中継装置の送信タイミング調整手段で、データの前回送信時刻と現在時刻との双方の時間差が特定時間以上であれば即時送信され、双方の時間差が特定時間未満であれば、その双方の時間差が特定時間以上となった時点で送信される。特定時間は、スキャン伝送の送信周期よりも所定時間短く且つ中継先ネットワークのスキャン伝送のホストインターフェース仕様による最小受信間隔よりも長い時間なので、中継先ネットワークがデータを必ず受信完了後に次の新しいデータが受信される。従って、従来のように中継先ネットワークがデータを受信中に、次の新たなデータが受信中データを上書きしてしまい、データが破壊されたり、データを誤認したりするといったことが無くなる。
【0019】
また、中継装置はデータを送信元ネットワークより受信してから、一時的に格納によるペンディングを行った後、中継先ネットワークへ送信することになる。この場合、特定時間はスキャン伝送の送信周期よりも所定時間短いので、ペンディングによって生じた遅延は、これに続くデータを送信するたびに、スキャン伝送の一送信周期から特定時間を引いた時間(例えばΔt2)ずつ吸収され、所定中継回数後には完全に解消することができる。
【0020】
本発明において、前記中継先ネットワークの最小受信間隔は、当該中継先ネットワークにおけるホストインターフェース仕様によるスキャン伝送の最小受信間隔以上であることを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、特定時間は、スキャン伝送の送信周期よりも所定時間短く且つ中継先ネットワークにおけるホストインターフェース仕様によるスキャン伝送の最小受信間隔よりも長いので、中継先ネットワークがデータを必ず受信完了後に次の新しいデータが受信されることになる。従って、従来のような中継先ネットワークがデータ受信中に、次の新たなデータが受信中データを上書きするといった不具合が無くなる。
【0022】
本発明において、二重化された中継装置のうち制御中の中継装置に異常が生じた際に、待機中の中継装置に制御権を獲得させる制御権管理手段を備え、前記制御権管理手段により新しく制御側とされた中継装置の前記送信タイミング調整手段は、制御動作開始から前記スキャン伝送の1送信周期分の規定の時間を経過するまでは、受信データを送信せずに前記バッファに格納し、前記規定の時間が経過した時点で中継動作を開始することを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、待機側の中継装置が制御権を獲得した後、制御動作開始からスキャン伝送1周期分の時間、送信を停止することで、中継先ネットワークのデータの受信のホストインターフェースを確実に満たし、データの破壊を防止することができる。その際発生した遅延は、上記の発明の通り次第に解消される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、プロトコルの異なる複数のネットワーク間で送受信されるスキャン伝送データを中継装置で中継する際に、中継先ネットワークに存在する通信局のスキャン伝送受信のホストインターフェース仕様を満たすことができ、これにより受信中データを次の新たな受信データで上書きして破壊並びに誤認するといったことを防止することができる、中継装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態に係る通信ネットワークシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態に係る通信ネットワークシステムにおける中継動作を示すシーケンス図である。
【図3】本実施形態に係る通信ネットワークシステムの応用例の構成を示すブロック図である。
【図4】従来の通信ネットワークシステムの構成を示すブロック図である。
【図5】従来の通信ネットワークシステムにおける中継動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための実施の形態(以下、単に本実施形態という)について詳細に説明する。
(実施形態の構成)
図1は、本実施形態に係る通信ネットワークシステムの構成を示すブロック図である。本実施形態に係る通信ネットワークシステムは、プロトコルの異なる2つのネットワークN1,N2と、これらネットワークN1,N2間に介在する中継装置Aとを備えて構成されており、図4に示した従来の通信ネットワークシステムと異なる点は、中継装置Aにある。
【0027】
ネットワークN1は、各々が送受信装置としてのホスト1ah,1bh,1chを有する複数の通信局N1a,N1b,N1cを備え、ネットワークN2も同様に、各々が送受信装置としてのホスト2ah,2bh,2chを有する複数の通信局N2a,N2b,N2cを備える。
【0028】
中継装置Aは、プロトコルの異なる2つのネットワークN1,N2間のスキャン伝送データを中継するものであり、N1用通信部B1と、N2用通信部B2と、スキャン伝送中継部Cと、N1用送信バッファD1と、N2用送信バッファD2と、スキャン伝送送信タイミング調整部(送信タイミング調整手段)Eとを備えて構成されている。
【0029】
N1用通信部B1は、ネットワークN1に存在する任意の通信局N1aのホスト1ahとスキャン伝送データの送受信を行い、N2用通信部B2は、ネットワークN2に存在する任意の通信局N2bのホスト2bhとスキャン伝送データの送受信を行う。
【0030】
スキャン伝送中継部Cは、N1用通信部B1で受信されたネットワークN1からのスキャン伝送データを、送信先のネットワークN2のプロトコルに適合するように加工処理を行ってN2送信バッファD2に格納する。また、N2用通信部B2で受信されたネットワークN2からのスキャン伝送データを、送信先のネットワークN1のプロトコルに適合するように加工処理を行ってN1用送信バッファD1に格納する。
【0031】
スキャン伝送送信タイミング調整部Eは、ネットワークN1からネットワークN2方向への通信において、前回ネットワークN2へ送信した時刻を格納(記憶)し、この前回送信時刻と現在時刻との双方を比較し、この双方の時間差がスキャン伝送の送信周期Tよりも所定の僅かに短い特定時間(T−Δt2)以上であれば即時送信し、双方の時間差が(T−Δt2)未満であれば、双方の時間差が(T−Δt2)以上になるタイミングを監視し、そのタイミングでN2用送信バッファD2に格納されたスキャン伝送データをN2用通信部B2を使用してネットワークN2へ送信する。この逆のネットワークN2からネットワークN1方向への通信時にも同様の処理を行う。
【0032】
但し、Δt2は、スキャン伝送の送信周期Tに対して所定の十分小さい値であり、図2に時刻tm4a〜tm8aで示すT[N2](min)−Δt2がT[N2](min)−Δt2>t2を満たす(ネットワークN2のスキャン伝送受信のホストインターフェース仕様を満たす)ように決定される。
【0033】
ここで、T[N2](min)は、中継先ネットワークN2の任意の通信局N2aのホスト2ahのスキャン伝送の最小受信間隔である。t2は、ネットワークN2におけるホストインターフェース仕様によるスキャン伝送の最小受信間隔である。ネットワークN1におけるホストインターフェース仕様によるスキャン伝送の最小受信間隔はt1である。従って、特定時間(T−Δt2)は、スキャン伝送の送信周期Tよりも短く、ネットワークN2のスキャン伝送のスキャン伝送のホストインターフェース仕様による最小受信間隔よりも長い。
また、スキャン伝送送信タイミング調整部Eの上記調整機能により、中継装置AがネットワークN2へ送信するスキャン伝送の最小送信間隔は、図2に時刻tm3〜tm7a間又は時刻tm7a〜tm11aで示す(T−Δt2)となる。また、ネットワークN2の通信局ホスト(例えば2bh)がネットワークN1から中継装置Aで中継されたスキャン伝送データを受信する最小受信間隔は、ネットワークN2内で送受信されているスキャン伝送の最小受信間隔T[N2](min)よりもΔt2だけ短い、即ち、時刻tm4a〜tm8a間又は時刻tm8a〜tm12aで示すT[N2](min)−Δt2となる。
(実施形態の動作)
以下、図1に示す本実施形態に係る通信ネットワークシステムにおける中継装置Aの動作について、図2のシーケンス図を参照しながら詳細に説明する。但し、ネットワークN1のスキャン伝送データをネットワークN2へ中継する処理について説明する。なお、その逆方向は同様なので省略する。
【0034】
まず、時刻tm1において、ネットワークN1の通信局N1aのホスト1ahからスキャン伝送データの送信要求に応じた送信があり、この送信に応じて時刻tm2にて中継装置AがN1用通信部B1を使用してスキャン伝送データを受信したとする。この受信されたスキャン伝送データは、スキャン伝送中継部Cにより、送信先のネットワークN2のプロトコルに適合するように加工処理が行われ、N2送信バッファD2に格納される。この格納は初めての格納であるため、スキャン伝送送信タイミング調整部Eによる調整処理は行われないものとする。従って、その格納されたスキャン伝送データは、時刻tm3の送信要求に応じてネットワークN2へ送信され、時刻tm4aで例えば通信局N2bのホスト2bhで受信される。但し、送信要求の時刻tm3は、スキャン伝送送信タイミング調整部Eにスキャン伝送データの送信時刻(前回送信時刻)として記憶される。
【0035】
次に、時刻tm1からスキャン伝送の送信周期Tが経過した時刻tm5において、ホスト1ahからスキャン伝送データの送信要求応じた送信があり、この送信に応じて時刻tm6にて中継装置AでN1用通信部B1によりスキャン伝送データが受信され、更にスキャン伝送中継部Cにより送信先ネットワークN2のプロトコルへの適合処理が行われ、時刻tm7までにN2送信バッファD2に格納される。
【0036】
この際、スキャン伝送送信タイミング調整部Eにより、上記で記憶された前回送信時刻tm3と現在時刻tm7aとの双方が比較される。この結果、双方の時間差が時刻tm3〜tm7aの(T−Δt2)以上であったとする。この場合、スキャン伝送データは即時ネットワークN2へ送信され、時刻tm8aにてホスト2bhで受信される。但し、送信要求の時刻tm7aは、スキャン伝送送信タイミング調整部Eに前回送信時刻として記憶される。
【0037】
次に、時刻tm5からスキャン伝送の送信周期Tが経過した時刻tm9において、ホスト1ahからスキャン伝送データが送信要求に応じて送信され、このデータが時刻tm10にてN1用通信部B1で受信され、更にスキャン伝送中継部Cで送信先ネットワークN2のプロトコルへの適合処理が行われ、時刻tm11までにN2送信バッファD2に格納される。
【0038】
この際、スキャン伝送送信タイミング調整部Eにより、既に記憶された前回送信時刻tm7aと現在時刻tm11aとの双方が比較され、双方の時間差が時刻tm7a〜tm11aの(T−Δt2)未満であったとする。この場合、双方の時間差が(T−Δt2)以上になるタイミングが監視され、そのタイミングとなった時刻tm11aでスキャン伝送データがネットワークN2へ送信され、時刻tm12aにてホスト2bhで受信される。
【0039】
このような過程により中継装置Aはスキャン伝送データを送信元ネットワークN1から受信してから、一時的にペンディングした後、中継先ネットワークN2へ送信することになるが、ペンディングによって生じた遅延はこれに続くスキャン伝送データを送信するたびにΔt2ずつ吸収され、最終的には完全に解消される。例えば、Tを100ms、Δt2を2msとし、仮に一度100msペンディングしたとすると、一時的に100msの遅延が発生するが、続く50回の送信(2ms×50回=100ms)ですべて吸収されるため、遅延は5秒(100ms×50回)で解消される。
(実施形態の効果)
以上説明のように本実施形態に係る中継装置Aによれば、スキャン伝送送信タイミング調整部Eが、N2用送信バッファD2に格納されたネットワークN1からのスキャン伝送データを中継先ネットワークN2へ送信する際に、前回送信時刻と現在時刻との双方の時間差が、スキャン伝送の送信周期Tよりも所定時間短く且つ中継先ネットワークN2のスキャン伝送のホストインターフェース仕様による最小受信間隔T[N2](min)よりも長い特定時間(T−Δt2)以上であれば即時送信し、双方の時間差が特定時間(T−Δt2)未満であれば、双方の時間差が特定時間(T−Δt2)以上となった時点で送信するようにした。
【0040】
従って、送信元ネットワークN1からのスキャン伝送データが、中継装置Aにより中継先ネットワークN2へ中継される際に、中継装置Aのスキャン伝送送信タイミング調整部Eで、スキャン伝送データの前回送信時刻と現在時刻との双方の時間差が特定時間(T−Δt2)以上であれば即時送信され、双方の時間差が特定時間(T−Δt2)未満であれば、その双方の時間差が特定時間(T−Δt2)以上となった時点で送信される。
【0041】
特定時間(T−Δt2)は、スキャン伝送の送信周期Tよりも所定時間短く且つ中継先ネットワークN2のスキャン伝送のホストインターフェース仕様による最小受信間隔T[N2](min)よりも長い時間なので、中継先ネットワークN2がスキャン伝送データを必ず受信完了後に次の新しいスキャン伝送データが受信される。従って、従来のように中継先ネットワークN2がスキャン伝送データを受信中に、次の新たなスキャン伝送データが受信中データを上書きしてしまい、データが破壊されたり、データを誤認したりするといったことが無くなる。
【0042】
また、中継装置Aはスキャン伝送データを送信元ネットワークN1より受信してから、一時的に格納によるペンディングを行った後、中継先ネットワークへ送信することになる。この場合、特定時間(T−Δt2)はスキャン伝送の送信周期Tよりも所定時間短いので、ペンディングによって生じた遅延は、これに続くデータを送信するたびに、スキャン伝送の一送信周期から特定時間を引いた時間Δt2ずつ吸収され、所定中継回数後には完全に解消される。
【0043】
また、本実施形態に係る中継装置Aによれば、特定時間(T−Δt2)は、スキャン伝送の送信周期Tよりも所定時間短く且つ中継先ネットワークN2におけるホストインターフェース仕様によるスキャン伝送の最小受信間隔t2よりも長い時間である。
【0044】
従って、中継先ネットワークN2がスキャン伝送データを必ず受信完了後に次の新しいスキャン伝送データが受信されることになるので、従来のような中継先ネットワークN2がデータ受信中に、次の新たなデータが受信中データを上書きするといった不具合が無くなる。
(実施形態の応用例)
図3は、本実施形態に係る通信ネットワークシステムの応用例の構成を示すブロック図である。この応用例が図1に示した通信ネットワークシステムと異なる点は、各中継装置AX及びAYの各々に制御権管理部FX,FYを備えて、中継装置を二重化構成とした点にある。この二重化は、生産制御システムや安全計装システムで使用される通信局において、信頼性を向上するために成されることが多い。
【0045】
また、各中継装置AX及びAYの構成要素であるN1用通信部B1、N2用通信部B2、スキャン伝送中継部C、N1用送信バッファD1、N2用送信バッファD2、スキャン伝送送信タイミング調整部Eには、何れの中継装置AX又はAYのものかを区別するために、符号の末尾にX又はYを付した。
【0046】
制御権管理部FX,FYは、制御中の例えば中継装置AXが何らかの原因で正常に動作しなくなった場合、二重化された中継装置AX,AYが制御権管理部FX,FYを使用して情報のやり取りを行い、制御権を交代する必要性を認識し、待機側の中継装置AYが制御権を獲得し、制御動作を開始する。
【0047】
この際、新しく制御側になった中継装置AYは、直前に中継されたスキャン伝送データの送信タイミングを知らないため、制御動作開始直後から中継した場合、中継先通信局(例えばN2b)のスキャン伝送の受信ホストインターフェース仕様を満たさず、データを破壊してしまう可能性がある。
【0048】
そこで、制御動作を開始した中継装置AYはスキャン伝送送信タイミング調整部EYを用いて、制御動作開始からスキャン伝送1周期分(規定の時間)の間、受信したスキャン伝送データを中継先ネットワークN2へ送信しない。この間に受信したスキャン伝送データはN2用送信バッファD2に格納し、制御動開始からスキャン伝送1周期分の時間が経過したタイミングで中継先ネットワークN2へ送信する。初回の送信が行われた後は、上記実施形態に記載したスキャン伝送中継動作を実施する。
【0049】
このように待機側の中継装置AYが制御権を獲得した後、制御動作開始からスキャン伝送1周期分の時間送信を停止することで、中継先ネットワークN2の通信局N2bのスキャン伝送データの受信のホストインターフェースを確実に満たし、データの破壊を防止することができる。その際発生した遅延は、上記の実施形態に記載の通り次第に解消される。
【0050】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明の技術的範囲予測は上記実施形態に記載の範囲予測には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲予測に含まれ得ることが、特許請求の範囲予測の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0051】
N1,N2・・ネットワーク、N1a〜N1c,N2a〜N2c・・通信局、1ah〜1ch,2ah〜2ch・・ホスト、A,AX,AY・・中継装置、B1,B1X,B1Y・・N1用通信部、B2,B2X,B2Y・・N2用通信部、C,CX,CY・・スキャン伝送中継部、D1,D1X,D1Y・・N1用送信バッファ、D2,D2X,D2Y・・N2用送信バッファ、E,EX,EY・・スキャン伝送送信タイミング調整部、FX,FY・・制御権管理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なるプロトコルを使用する複数のネットワーク間でスキャン伝送されるデータを受信後に、中継先ネットワークのプロトコルに適合するように加工処理を行ってバッファに格納し、この格納後に中継先ネットワークへ送信する中継処理を行う中継装置であって、
前記格納されたデータを前記中継先ネットワークへ送信する際に、前回送信時刻と現在時刻との双方の時間差が、前記スキャン伝送の送信周期よりも所定時間短く且つ前記中継先ネットワークのスキャン伝送のホストインターフェース仕様による最小受信間隔よりも長い特定時間以上であれば即時送信し、前記双方の時間差が前記特定時間未満であれば、当該双方の時間差が前記特定時間以上となった時点で送信する送信タイミング調整手段、を有することを特徴とする中継装置。
【請求項2】
前記中継先ネットワークの最小受信間隔は、当該中継先ネットワークにおけるホストインターフェース仕様によるスキャン伝送の最小受信間隔以上であることを特徴とする請求項1に記載の中継装置。
【請求項3】
二重化された中継装置のうち制御中の中継装置に異常が生じた際に、待機中の中継装置に制御権を獲得させる制御権管理手段を備え、
前記制御権管理手段により新しく制御側とされた中継装置の前記送信タイミング調整手段は、制御動作開始から前記スキャン伝送の1送信周期分の規定の時間を経過するまでは、受信データを送信せずに前記バッファに格納し、前記規定の時間が経過した時点で中継動作を開始することを特徴とする請求項1又は2に記載の動作監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−253532(P2012−253532A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124070(P2011−124070)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】