説明

中華鍋

【課題】 単純な構成で容器とグリップとを強固に係止して、使用時にどのような衝撃や振動を加えても決して分離しない構造とし、且つ、不使用時には容易に分離することができる、使用時の堅牢性および安全性と不使用時の収納性に優れる中華鍋を提供する。
【解決手段】 中華鍋100は、略半球または略半球の一部の形状に成型された鍋部11と、鍋部の外周縁部11aに形成した切欠部12と、切欠部12の下に形成した穴部13とを有する本体10、切欠部12へ側面から差し込むことができるようにするための溝部21を形成した円筒状のグリップ20、本体10の穴部13へ挿入可能なピン30、ピン30の一端をグリップ20へ繋止するバネ40、で構成される。本体10の切欠部12とグリップ20の溝部21とを係着させ、ピン30をグリップ20の本体側端面から筒内へ向けて挿入し、本体10の穴部13を貫通して固定することにより、本体10とグリップ20とが固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の調理に用いる中華鍋に関する。
【背景技術】
【0002】
フライパンや鍋については、従来、収納の便利さから把持部(グリップ)を着脱式にしたものが提案されている(例えば、特許文献1又は2を参照)。
【0003】
例えば、特許文献1に開示された取り外し可能な把持装置によれば、ハンドル(グリップ)に形成された把持手段とロック手段により、鍋やフライパンなどの容器の縁が強固に把持され、容易とハンドルが一体化する。とはいえ、上記は通常の使用において安全性が確保されたものであり、容器を激しく振り回したり、加熱器具の五徳に叩きつけたりしたような場合にはロック手段が外れ、把持部が開放して容器がグリップから外れる虞がある。調理用具の中では、特に、中華鍋は、強い火力を用いて迅速に調理を行うなどの特徴から、容器を激しく振り回したり、加熱器具の五徳の上で揺さぶったり、容器の部分を叩きつけたりすることが多い。
【0004】
このように、上記従来の着脱可能なグリップの場合、衝撃や振動の大きな使用を行った場合には容器がグリップから外れる虞があるという問題があった。これは、複雑な機構で把持手段やロック手段を形成して安全性を高めているものの、容器を把持している(挟み込んでいる)だけであり、容器とグリップとを直接的に係止する手段が介在していないため、把持部が開放されると即座に容器が外れてしまうところに問題の原因がある。
【0005】
また、上記従来のグリップは、特許文献1又は2に開示された形状のように構造が複雑であり、日用品としては高価になる傾向があるという問題もあった。更に、中華鍋は、容器となる部分が鍋やフライパンのように屹立していない(即ち、斜めになっている)独特の形状であるため、従来の着脱式のグリップが適用しにくいという問題もあった。
【0006】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−501883号公報(第4頁〜第10頁、図2)
【特許文献2】特開平8−206021号公報(第3頁〜第7頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、単純な構成で容器とグリップとを強固に係止して、使用時にどのような衝撃や振動を加えても決して分離しない構造とし、且つ、不使用時には容易に分離することができる、使用時の堅牢性および安全性と不使用時の収納性に優れる中華鍋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の中華鍋は、略半球または略半球の一部の形状に成型された鍋部と、前記鍋部の外周縁部に形成した切欠部と、前記切欠部の下に形成した穴部と、を有する本体と、前記切欠部へ側面から差し込むことができるようにするための溝部を形成した円筒状のグリップと、本体の前記穴部へ挿入可能なピンと、で構成され、前記切欠部と前記溝部とを係着させ、前記ピンを前記グリップの本体側端面から筒内へ向けて挿入し、本体の前記穴部を貫通して固定することにより、前記本体と前記グリップとを固定することを特徴とする。
上記構成によれば、ピンを挿入、固定することにより、鍋の容器部分とグリップとが確実に係止されるので、使用時にどのような衝撃や振動を加えても決して分離しない構造とすることができる。また、不使用時には、ピンを抜くことにより、鍋の容器部分とグリップを容易に分離することができる。従って、使用時の堅牢性および安全性と不使用時の収納性とを兼備した中華鍋とすることができる。
【0010】
また、本発明の中華鍋は、請求項1に記載の中華鍋であって、前記ピンは、その一端が前記グリップへ繋止されていることを特徴とする。
上記構成によれば、ピンを外した際にピンだけが独立した部品として分離されることがないので、ピンの紛失を防止することができる。
【0011】
また、本発明の中華鍋は、請求項2に記載の中華鍋であって、前記繋止手段はバネであることを特徴とする。
上記構成によれば、ピンを外した際にピンだけが独立した部品として分離されることがないので、ピンの紛失を防止することができる。
【0012】
また、本発明の中華鍋は、請求項3に記載の中華鍋であって、前記バネは、前記ピンが前記穴部を貫通する方向に引張力が働くよう前記グリップへ繋止されていることを特徴とする。
上記構成によれば、バネの引張力に抗して引き抜かない限りピンが外れることがないため、使用時に衝撃や振動を加えても分離しない構造の信頼性を高め、使用時の堅牢性および安全性を向上させることができる。
【0013】
また、本発明の中華鍋は、略半球または略半球の一部の形状に成型され外周部にフランジを有する鍋部と、前フランジの外周縁部に形成した切欠部と、前記切欠部の内側に形成した穴部と、を有する本体と、前記切欠部へ末端を差し込むことができるようにするための溝部を形成し、前記切欠部と前記溝部とを係着させた際に前記穴部に対向する双方の側面に孔部を形成した円筒状のグリップと、本体の前記穴部および前記孔部へ挿入可能なピンと、で構成され、前記切欠部と前記溝部とを係着させ、前記ピンを、前記グリップ側面に形成した前記孔部から筒内へ向けて直角に挿入し、本体の前記穴部と更に前記グリップのもう一方の側面に形成した前記孔部を貫通して固定することにより、前記本体と前記グリップとを固定することを特徴とする。
上記構成によれば、ピンを挿入、固定することにより、鍋の容器部分とグリップとが確実に係止されるので、使用時にどのような衝撃や振動を加えても決して分離しない構造とすることができる。また、不使用時には、ピンを抜くことにより、鍋の容器部分とグリップを容易に分離することができる。従って、使用時の堅牢性および安全性と不使用時の収納性とを兼備した中華鍋とすることができる。
【0014】
また、本発明の中華鍋は、請求項5に記載の中華鍋であって、前記ピンは、その一端が前記グリップへ繋止されていることを特徴とする。
上記構成によれば、ピンを外した際にピンだけが独立した部品として分離されることがないので、ピンの紛失を防止することができる。
【0015】
また、本発明の中華鍋は、請求項6に記載の中華鍋であって、前記繋止手段はバネであることを特徴とする。
上記構成によれば、ピンを外した際にピンだけが独立した部品として分離されることがないので、ピンの紛失を防止することができる。
【0016】
また、本発明の中華鍋は、請求項7に記載の中華鍋であって、前記バネは、前記ピンが前記穴部および前記孔部を貫通する方向に引張力が働くよう前記グリップへ繋止されていることを特徴とする。
上記構成によれば、バネの引張力に抗して引き抜かない限りピンが外れることがないため、使用時に衝撃や振動を加えても分離しない構造の信頼性を高め、使用時の堅牢性および安全性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の中華鍋によれば、容器部分とグリップを分離できるという収納性の良さを備えつつ、容器部分とグリップを一体成型した製品程度に、使用時における堅牢性および安全性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】 本発明の実施の形態1における中華鍋の外観を示す斜視図である。
【図2】 本発明の実施の形態1における中華鍋の、使用時におけるピン挿入状態を示す断面図である。
【図3】 本発明の実施の形態1における中華鍋の、グリップの構造を拡大した模式図である。
【図4】 本発明の実施の形態2における中華鍋の外観を示す斜視図である。
【図5】 本発明の実施の形態2における中華鍋の、使用時におけるピン挿入状態を示す断面図である。
【図6】 本発明の実施の形態2における中華鍋の、グリップの構造を拡大した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態における中華鍋について、図面を用いて詳細に説明する。
【0020】
[実施の形態1]図1は、本発明の実施の形態1における中華鍋の外観を示す斜視図である。中華鍋100は、主に、略半球または略半球の一部の形状に成型された鍋部11と、鍋部の外周縁部11aに形成した切欠部12と、切欠部12の下に形成した穴部13とを有する本体10、切欠部12へ側面から差し込むことができるようにするための溝部21を形成した円筒状のグリップ20、本体10の穴部13へ挿入可能なピン30、ピン30の一端をグリップ20へ繋止するバネ40、などで構成される。
【0021】
図2は、本発明の実施の形態1における中華鍋の、使用時におけるピン挿入状態を示す断面図である。本体10の切欠部12とグリップ20の溝部21とを係着させ、ピン30をグリップ20の本体側端面から筒内へ向けて挿入し、本体10の穴部13を貫通して固定することにより、本体10とグリップ20とが固定される。
【0022】
図3は、本発明の実施の形態1における中華鍋の、グリップの構造を拡大した模式図である。ピン30は、一端がリング状に形成されており、この一端を繋止するバネ40は、ピン30が円筒状のグリップ20の内部を通り、穴部13を貫通して挿入された際、貫通する方向に引張力が働くよう反対側の末端がグリップ20の末端22へ繋止されている。従って、ピン30をバネ40の引張力に抗して引き抜かない限りピン30が外れることがない。
【0023】
以上のように、本発明の実施の形態1における中華鍋は、従来のようにハンドルで容器本体の縁を挟み込んで固定し、容器本体とハンドルとを一体化するという構造ではなく、係着させた本体10とグリップ20にピン30を貫通させて双方を固定するという構造であるため、使用時にどのような衝撃や振動を加えてもピン30が外れない限り決して分離することがない。また、ピン30を繋止するバネ40は、ピン30の挿入状態が維持される方向に引張力が働くように配置されているので、使用時における堅牢性および安全性に係る信頼性がさらに向上する。一方、手動でピンを抜くことにより、鍋の本体10とグリップ20を容易に分離することができ、収納性に優れる。また、ピン30はバネ40で繋止されているので紛失等の虞がない。
【0024】
[実施の形態2]図4は、本発明の実施の形態2における中華鍋の外観を示す斜視図である。中華鍋110は、主に、略半球または略半球の一部の形状に成型され外周部にフランジ54を有する鍋部51と、フランジ54の外周縁部54aに形成した切欠部52と、切欠部12の内側に形成した穴部53とを有する本体50、切欠部52へ末端を差し込むことができるようにするための溝部61を形成し、切欠部52と溝部61とを係着させた際に穴部53に対向する双方の側面に孔部63、64を形成した円筒状のグリップ60、本体50の穴部53へ挿入可能なピン70、ピン70の一端をグリップ60へ繋止するバネ80、などで構成される。
【0025】
図5は、本発明の実施の形態2における中華鍋の、使用時におけるピン挿入状態を示す断面図である。本体50の切欠部52とグリップ60の溝部61とを係着させ、グリップ側面に形成した孔部63から筒内へ向けて直角にピン70を挿入し、本体50の穴部53と更にグリップ60のもう一方の側面に形成した孔部64を貫通して固定することにより、本体50とグリップ60とが固定される。
【0026】
図6は、本発明の実施の形態2における中華鍋の、グリップの構造を拡大した模式図である。ピン70は、一端がリング状に形成されており、この一端を繋止するバネ80は、ピン70が孔部63、穴部53、孔部64を貫通して挿入された際、貫通する方向に引張力が働くよう反対側の末端がグリップ20の中央部22へ繋止されている。従って、ピン70をバネ80の引張力に抗して引き抜かない限りピン70が外れることがない。
【0027】
以上のように、本発明の実施の形態2における中華鍋は、従来のようにハンドルで容器本体の縁を挟み込んで固定し、容器本体とハンドルとを一体化するという構造ではなく、係着させた本体50とグリップ60にピン70を貫通させて双方を固定するという構造であるため、使用時にどのような衝撃や振動を加えてもピン70が外れない限り決して分離することがない。また、ピン70を繋止するバネ80は、ピン70の挿入状態が維持される方向に引張力が働くように配置されているので、使用時における堅牢性および安全性に係る信頼性がさらに向上する。一方、手動でピンを抜くことにより、鍋の本体50とグリップ60を容易に分離することができ、収納性に優れる。また、ピン70はバネ80で繋止されているので紛失等の虞がない。
【0028】
以上のように、本発明の実施の形態における中華鍋は、容器部分とグリップを分離できるという収納性の良さを備えつつ、容器部分とグリップが一体となった製品程度に、使用時における堅牢性および安全性を維持することができる。
【0029】
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明にかかわる中華鍋は、収納性の良さを備えつつ堅牢性および安全性を維持することができるという効果を有し、比較的厳しい使用環境にある鍋の構造として有用である。
【符号の説明】
【0031】
10 本体
11 鍋部
12 切欠部
13 穴部
20 グリップ
21 溝部
30 ピン
40 バネ
50 本体
51 鍋部
52 切欠部
53 穴部
54 フランジ
60 グリップ
61 溝部
63、64 孔部
70 ピン
80 バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略半球または略半球の一部の形状に成型された鍋部と、前記鍋部の外周縁部に形成した切欠部と、前記切欠部の下に形成した穴部と、を有する本体と、
前記切欠部へ側面から差し込むことができるようにするための溝部を形成した円筒状のグリップと、
本体の前記穴部へ挿入可能なピンと、で構成され、
前記切欠部と前記溝部とを係着させ、前記ピンを前記グリップの本体側端面から筒内へ向けて挿入し、本体の前記穴部を貫通して固定することにより、前記本体と前記グリップとを固定することを特徴とする中華鍋。
【請求項2】
前記ピンは、その一端が前記グリップへ繋止されていることを特徴とする請求項1に記載の中華鍋
【請求項3】
前記繋止手段はバネであることを特徴とする請求項2に記載の中華鍋。
【請求項4】
前記バネは、前記ピンが前記穴部を貫通する方向に引張力が働くよう前記グリップへ繋止されていることを特徴とする請求項3に記載の中華鍋。
【請求項5】
略半球または略半球の一部の形状に成型され外周部にフランジを有する鍋部と、前フランジの外周縁部に形成した切欠部と、前記切欠部の内側に形成した穴部と、を有する本体と、
前記切欠部へ末端を差し込むことができるようにするための溝部を形成し、前記切欠部と前記溝部とを係着させた際に前記穴部に対向する双方の側面に孔部を形成した円筒状のグリップと、
本体の前記穴部および前記孔部へ挿入可能なピンと、で構成され、
前記切欠部と前記溝部とを係着させ、前記ピンを、前記グリップ側面に形成した前記孔部から筒内へ向けて直角に挿入し、本体の前記穴部と更に前記グリップのもう一方の側面に形成した前記孔部を貫通して固定することにより、前記本体と前記グリップとを固定することを特徴とする中華鍋。
【請求項6】
前記ピンは、その一端が前記グリップへ繋止されていることを特徴とする請求項5に記載の中華鍋。
【請求項7】
前記繋止手段はバネであることを特徴とする請求項6に記載の中華鍋。
【請求項8】
前記バネは、前記ピンが前記穴部および前記孔部を貫通する方向に引張力が働くよう前記グリップへ繋止されていることを特徴とする請求項7に記載の中華鍋。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−30994(P2011−30994A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191432(P2009−191432)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(504204384)有限会社ユイット (32)
【Fターム(参考)】