説明

乗務員の異常を検知する装置及びシステム

【課題】 列車で業務を行う車掌や客室乗務員の居眠りや気絶などの異常を検知する。
【解決手段】 列車101に搭載される車上情報処理装置105は、乗務する各乗務員ごとに応答確認の結果である確認情報を記憶する乗務員データと、各停車駅ごとに到着時刻と発車時刻を記憶する時刻表データを保持し、いずれかの乗務員によって設定された起動時刻になったとき、乗務員データを参照し、各乗務員の端末へ応答要求し、確認情報を更新するとともに所定時間内の応答を監視し、いずれかの乗務員から応答がないとき、少なくとも一の乗務員の端末へ警告情報を送信する。また車上情報処理装置105は、時刻表データを参照し、起動時刻が到着時刻の一定時間前から発車時刻の一定時間後までの時間範囲に入る場合には、その時間範囲を避けるように起動時刻をずらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車に乗務する乗務員の居眠りや気絶等の異常を検知する方式に係わり、特に業務に支障をきたすことなく乗務員間でお互いの状態を不定期の間隔で監視しあう方式に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の列車では、車掌や客室乗務員が列車運行中に居眠りしたり気絶したりすると、停車駅に到着しても扉開閉を行えず乗客が駅で降車できなくなったり、事故等の緊急時に避難指示ができなかったり、運転士が間違って停車駅を通過したとき等に非常ブレーキ操作を行うことができず乗客に迷惑をかけたり、運転士のブザー合図を聞き取れず停車駅でのオーバーラン時に間違って扉開放を行って事故を起こしてしまったり、脱線等の事故が発生した時に対応処理ができず併発事故を引き起こしてしまったりと、列車運行の安全性が低下する問題点がある。また、乗り越し精算が車内でできなかったり、指定席やグリーン席の購入ができなくなったり、車内放送ができないことで列車内での利便性、サービス性が低下するという問題点がある。
【0003】
例えば新幹線等の運転士向けには居眠り防止のために、制限速度確認、時刻確認等の業務を不定期に行うという運用を行っている。また、例えば特開2002−187450号公報(特許文献1)に記載されているように、密閉空気式音センサを運転席に設置して、運転者の身体の動きを表す信号をとらえて、同時に乗り物から乗り物の走行時にのみ発生する信号をとらえて、両信号を演算回路で比較することにより居眠りを検知して警報を発する装置が考えられている。
【0004】
また特開2003−233890号公報(特許文献2)は、緊急通報受信センター装置と携帯無線型緊急通報端末から成る緊急通報システムを開示する。緊急通報受信センター装置は、被監視者が所持する携帯無線型緊急通報端末に対して所定の周期で安否確認の打診メッセージを配信する。携帯無線型緊急通報端末は、平常時にはこの打診メッセージを受信して表示し、確認ボタン操作により応答メッセージを送信する。緊急通報受信センターは、この応答メッセージの受信により被監視者の安否確認を行う。
【0005】
【特許文献1】特開2002−187450号公報
【特許文献2】特開2003−233890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の対策は、運転士の居眠り防止の対策や検知方式であり、ひとつは一方的に業務指示を行うもので居眠りを検知することはできず、ひとつは車掌や客室乗務員は業務の都合上、常に座席に座っているわけではなく、この方式で乗務員の気絶等の検知はできない。
【0007】
本発明は、乗務員の業務に支障をきたすことなく、乗務員が保持する端末の操作を不定期に行わせ、乗務員が他の乗務員の保持する端末を操作させる時刻を設定することによって、列車で業務を行う車掌や客室乗務員の居眠りや気絶などの異常を同一列車内に乗務する乗務員全員がお互いに監視しあい、乗務員の異常が検知されたときに他の乗務員が業務中で手が離せない場合でも残りの乗務員が異常を確認できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の乗務員の異常を検知する計算機は、列車に乗務する各乗務員ごとに応答確認の結果である確認情報を記憶する乗務員データの記憶手段と、各停車駅ごとに到着時刻と発車時刻を記憶する時刻表データの記憶手段とを設け、いずれかの乗務員によって設定された起動時刻になったとき、乗務員データを参照し、各乗務員の端末へ応答要求し、確認情報を更新するとともに所定時間内の応答を監視し、いずれかの乗務員から応答がないとき、少なくとも一の乗務員の端末へ警告情報を送信する。ただし計算機は、時刻表データを参照し、起動時刻が到着時刻の一定時間前から発車時刻の一定時間後までの時間範囲に入る場合には、その時間範囲を避けるように起動時刻をずらす。
【発明の効果】
【0009】
本発明の乗務員の異常検知方式によれば、車掌や客室乗務員の業務に支障をきたすことなく車掌や客室乗務員の居眠りや気絶などの異常を検知することが可能となる。車掌や客室乗務員が列車運行中に居眠りを行ったり気絶したりしても、他の車掌や客室乗務員が手助けをすることによって、停車駅に到着しても扉開閉を行えず乗客が駅で降車できなくなることはない。また事故等の緊急時に避難指示ができなくなることもなく、運転士が間違って停車駅を通過したとき等に非常ブレーキ操作を行うことができず乗客に迷惑をかけることもなく、運転士のブザー合図を聞き取れず停車駅でのオーバーラン時に間違って扉開放を行って事故を起こしてしまうこともない。また脱線等の事故が発生した時に対応処理ができず併発事故を引き起こしてしまうこともない。さらに乗り越し精算も行え、指定席やグリーン席の購入もでき、車内放送も流されることによって、列車輸送の安全性、利便性、サービス性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本実施形態は、車掌や客室乗務員が利用する表示端末や携帯通信端末に、業務に支障をきたさない時間帯に不定期に確認画面を表示し、互いの状態を確認しあうという最小の手間で乗務員の異常検知を実現するものである。
【0011】
図1は、実施例のシステム構成図である。システムは、列車101、地上ネットワーク102、車外情報処理装置103から構成される。また、列車101内の関連装置は、車上ネットワーク104、車上情報処理装置105、表示装置106、無線通信装置107および携帯通信端末108を含む。地上ネットワーク102は、有線、無線を含むインターネット、イントラネット等であり、車外情報処理装置103には有線で接続され、列車101の車上情報処理装置105には無線通信で接続される。車外情報処理装置103は、事故等が発生した時に、運行する際の遅延時間の指令を各列車101に送信したり、列車101内で乗務員の異常を検知した場合に列車101からのメッセージを受信したりする。
【0012】
車上ネットワーク104は有線、無線を含むローカルエリアネットワークである。信頼性を向上させるために多重系の構成となっていてもよい。車上情報処理装置105は、車上ネットワーク104を介して各表示装置106や携帯通信端末108にメッセージを送信し、表示装置106や携帯通信端末108から送信されたメッセージを受信する。また、地上ネットワーク102を介して車外情報処理装置103にメッセージを送信する。表示装置106は、列車101の乗務員室内に設置されたディスプレイであり、列車101内で業務を行う車掌や客室乗務員が利用する。列車101の運転台に表示装置106を設置してもよい。無線通信装置107は列車101内に複数設置され、列車101内のあらゆる場所で携帯通信端末108と無線通信を行えるようにする無線LANアクセスポイント等である。携帯通信端末108は、車掌もしくは客室乗務員が検札その他の業務のために列車101の客室内にいるときに携帯する端末である。
【0013】
図2は、車上情報処理装置105の構成図である。車上情報処理装置105は、情報処理部201、時刻表データベース202、乗務員データベース203から構成される。情報処理部201は、CPU、プログラムやデータを格納するメモリ、および入出力制御機構を有し、CPUがプログラムを実行することによって、各データベース(DB)202、203の登録、更新処理を行い、車外情報処理装置103とのメッセージ送受信処理を行い、列車101内の各表示装置106、携帯通信端末108とのメッセージ送受信処理を行い、車掌、客室乗務員の異常判定処理を行う。情報処理部201は、バスを介して記憶装置に接続される。時刻表データベース202は、この記憶装置に格納され、該当する列車101の運行時刻情報と遅延情報を保持している。列車101は、この時刻表の情報をもとに運行を行う。乗務員データベース203は、この記憶装置に格納され、該当する列車101に乗車しているすべての車掌と客室乗務員の保持する端末等の情報が登録されている。
【0014】
図3は、時刻表データベース202のデータ構成図である。時刻表データベース202の登録項目は、駅ID301、到着時刻302、発車時刻303および遅延時間304である。時刻表データベース202は、該当する列車101の各停車駅での到着、発車時刻を登録するものである。駅ID301は該当する列車101の停車駅のIDを停車する順番に登録している。到着時刻302は該当する駅への到着時刻である。発車時刻303は該当する駅の発車時刻である。遅延時間304は予め登録された到着時刻302、発車時刻303から遅れが出て運行される時に遅れる時間を登録するものである。時刻表データベース202の駅ID301、到着時刻302、発車時刻303は列車が始発駅を発車する前に登録される。登録の仕方は、運転士が保持するICカードからのダウンロードや始発駅での無線通信を介したダウンロードや車庫内での無線通信を介したダウンロードでもよい。遅延時間304は、運行の遅れがなければ0に設定され、事故等で運行に遅れが生じた場合に、車外情報処理装置103から時間調整のための遅延時間が送信された時に更新される。
【0015】
図4は、乗務員データベース203のデータ構成図である。乗務員データベース203の登録項目は、乗務員ID401、業種別402、端末IPアドレス403、携帯端末IPアドレス404、起動設定権限405および確認情報406である。乗務員データベース203は、該当する列車101に乗車しているすべての車掌と客室乗務員に係わる端末情報等を登録したものである。乗務員ID401は、各乗務員に予め個別に与えられた識別子である。業種別402は乗務している車両番号と車掌であるか客室乗務員であるかの情報が登録されたものである。端末IPアドレス403は、該当する乗務員が利用する表示装置106のIPアドレスである。乗務員に対応する表示装置106がなければ登録しなくてもよい。携帯端末IPアドレス404は、該当する乗務員が利用する携帯通信端末108のIPアドレスである。乗務員に対応する携帯通信端末108がなければ登録しなくてもよい。なお、一人の乗務員が表示装置106と携帯通信端末108の両方を保持する場合は、端末IPアドレス403、携帯端末IPアドレス404の両方が登録されているものとする。客室内で業務を行う乗務員については、少なくとも携帯端末IPアドレス404が登録されているものとする。起動設定権限405は、対応する乗務員に、乗務員異常検知の確認処理を起動するまでの時刻を設定する権限があるか否かを示すフラグである。登録されている乗務員IDのうち、いずれか1人の乗務員に権限を与えられるものとする。確認情報406は、乗務員異常検知の確認が済んだか否かを示すフラグである。「済」なら確認済みであり、「未」なら未確認である。乗務員データベース203の乗務員ID401から携帯端末IPアドレス404までの情報は、列車が始発駅を出発する前に登録される。登録の仕方は、乗務員が持つICカードからのダウンロードや乗務員が持つ携帯通信端末108からの自動登録や表示装置106からの手入力や自動登録でもよい。起動設定権限405と確認情報406は、情報処理部201によって更新される。
【0016】
図5は、表示装置106および携帯通信端末108に表示される乗務員の異常検知の確認情報を表示するとともに操作用ともなる画面501の例である。画面は各乗務員の確認ステータス表示部502と該当乗務員の確認操作表示部503から構成されている。確認ステータス表示部502は、乗務員データベース203に登録されているすべての乗務員の人数分について、業種別402および確認情報406の情報が表示される。該当乗務員の確認操作表示部503は操作説明と操作ボタン504が表示されている。該当乗務員が応答のために操作ボタン504を押下することによって、確認ステータス表示部502の状態を「確認中」から「異常なし」にすることができる。
【0017】
図6は、表示装置106および携帯通信端末108に表示される画面501の例であり、次回起動時刻を設定するための画面の例である。画面は各乗務員の確認ステータス表示部502と該当乗務員の確認操作表示部503から構成されている。乗務員データベース203の起動設定権限405を持つ乗務員の持つ表示装置106および携帯通信端末108について、乗務員異常検知確認の次回起動時刻設定のための操作説明と操作ボタンをもつ確認操作表示部503が表示される。確認操作表示部503には、設定時刻プルダウン601と設定ボタン602が表示されており、次回の起動時刻設定操作のために使用される。
【0018】
図7は、表示装置106および携帯通信端末108に表示される画面501の例であり、乗務員異常検知確認の異常を警告表示するための画面の例である。画面501は、7号車と9号車の客室乗務員からは確認がとれたが、16号車の車掌からは応答が帰ってきておらず、確認ステータス表示部701で異常情報を通知している。このとき、9号車の客室乗務員の表示装置106および携帯通信端末108に表示される確認操作表示部503に警告が表示され、同様に7号車の客室乗務員の表示装置106および携帯通信端末108に表示される確認操作表示部503にも同様の警告が表示される。
【0019】
次に、車上情報処理装置105の情報処理部201が実行する乗務員異常検知判断処理の手順について図8のフローチャートに従って説明する。列車101が始発駅を発車した後1分後に図8に示すフローチャートの処理を開始する。列車101が停車駅に到着する直前及び停車駅の発車直後は車掌が車内放送を行うため、この間は乗務員異常確認処理の業務は行わせないようにするものとする。まず、情報処理部201は、初期設定処理として図9を用いて後述する正常確認時処理を行い、起動時刻を設定する(ステップ814)。次に、乗務員異常確認処理の起動時刻になったか否かを設定したタイマのタイムアウト判定によって判定し(ステップ802)、起動時刻になっていなければ時刻表データベース202の遅延時間304が更新されているか否かを判定する(ステップ803)。時刻表データベース202の更新を判定するためにデータベースに更新フラグを設け、車外情報処理装置103が遅延時間304を更新するとともにこの更新フラグをセットする。情報処理部201は、この更新フラグのセットによって遅延時間304の更新を判定する。時刻表データベース202の遅延時間304が更新されていなければ、時刻表通りに運行すればよく、情報処理部201は、再びステップ802を実行する。
【0020】
時刻表データベース202の遅延時間304が更新されていれば、情報処理部201は、後述のステップ905又は906で設定された乗務員異常確認処理起動までの設定時間の残り時間x分と、新たに更新された遅延時間y分の和を計算する(ステップ804)。次に、情報処理部201は、計算したx+y分後が駅到着時刻に遅延時間を足した時刻に関し駅到着時刻の1分前から駅発車時刻の1分後の間に含まれているか否かを判定する(ステップ805)。駅到着時刻の1分前から駅発車時刻の1分後の間の時間範囲に含まれていれば、情報処理部201は、その間は車掌業務を優先し確認作業をしないように、乗務員異常確認処理の起動時刻までの残り時間をx+y+2分に再設定する(ステップ806)。あるいはこの時間帯を避けるように起動時刻を適宜ずらす。駅到着時刻の1分前から駅発車時刻の1分後の間に含まれていなければ、情報処理部201は、乗務員異常確認処理の起動時刻までの残り時間をx+y分に再設定する(ステップ807)。情報処理部201は、時刻表データベース202の更新フラグをリセットする。そして再びステップ802を実行する。
【0021】
ステップ802において、起動時刻になっていれば、情報処理部201は、乗務員データベース203の確認情報406の項目の値をすべて「未」に更新し、乗務員データベース203に登録されたすべての端末IPアドレス403および携帯端末IPアドレス404をもつ端末の画面に、図5に示したような確認画面を表示する(ステップ808)。このとき、端末IPアドレス403と携帯端末IPアドレス404の両方が登録されている場合には両方の画面に表示することとする。次に、情報処理部201は、予め決められたタイムアウト時間が来たか否かを判定する(ステップ809)。タイムアウト時間が来ていれば、タイムアウトの時間までに全ての乗務員に対して正常確認が取れなかったため、異常検知時処理の実行を行い(ステップ810)、処理を終了する。なお、異常検知時処理の詳細は後述する。
【0022】
ステップ809において、タイムアウト時間が来ていなければ、何れかの表示装置106や携帯通信端末108から確認応答があったか否かを判定し(ステップ811)、応答がなければ再びステップ809を実行する。1人の乗務員のもつ端末が複数ある場合には、情報処理部201は、いずれか1つの端末から応答があればその乗務員について応答ありとみなす。ステップ811において応答があれば、情報処理部201は、乗務員データベース203中の応答があった端末IPアドレス403もしくは携帯端末IPアドレス404を含む乗務員ID401をもつレコードの確認情報406の項目の値を「済」に変更し、乗務員データベース203に登録されたすべての端末IPアドレス403、携帯端末IPアドレス404の画面を更新する(ステップ812)。次に情報処理部201は、乗務員データベース203に登録されたすべての乗務員ID401から応答があったか否かを判定し(ステップ813)、応答がなければ再びステップ809を実行し、乗務員データベース203に登録されたすべての乗務員ID401から応答があれば、正常確認時処理を実行し(ステップ814)、ステップ801に戻る。なお、正常確認時処理の詳細については後述する。
【0023】
次に、車上情報処理装置105の情報処理部201が実行する乗務員異常検知判断の結果として正常確認時の処理の手順について図9のフローチャートに従って説明する。図8に示すステップ813において、乗務員データベース203に登録されたすべての乗務員ID401をもつ乗務員から応答があった場合に図9に示すフローチャートの処理を開始する。まず、情報処理部201は、起動設定権限を持つ乗務員の乗務員ID401をランダムに決定し乗務員データベース203の起動設定権限405の設定を行う(ステップ900)。ランダムに決めるのは、マンネリ化を防ぐためである。次に、情報処理部201は、乗務員データベース203の起動設定権限405を持つ乗務員ID401に対応する端末IPアドレス403及び携帯端末IPアドレス404に対して、図6に示すような設定画面を表示させ、応答要求する(ステップ901)。次に情報処理部201は、設定画面において設定ボタンが押下されたか否かを判定する(ステップ902)。設定ボタンが押下されていなければ再びステップ902を実行する。設定ボタンが押下されていれば、情報処理部201は、設定時間i分の値を取得してメモリに記憶する(ステップ903)。次に現在時刻からi分後の値と時刻表データベース202の対応する到着時刻302、発車時刻303とを比較して、現在時刻からi分後は、駅到着1分前から駅発車1分後の間の時刻の時間範囲に含まれているか否かを判定する(ステップ804)。駅到着時刻の1分前から駅発車時刻の1分後の間に含まれていれば、情報処理部201は、その間は車掌業務を優先して確認作業をしないように、乗務員異常確認処理の起動時刻をi+2分後に設定し(ステップ905)、あるいはこの時間帯を避けるように起動時刻を適宜ずらし、処理を終了する。駅到着時刻の1分前から駅発車時刻の1分後の間に含まれていなければ、情報処理部201は、乗務員異常確認処理の起動時刻をi分後に設定し(ステップ906)、処理を終了する。
【0024】
次に、車上情報処理装置105の情報処理部201が実行する乗務員異常検知判断の結果として異常検知時の処理の手順について図10のフローチャートに従って説明する。図8に示すステップ809において、タイムアウトが発生した場合に図10に示すフローチャートの処理を開始する。まず、情報処理部201は、乗務員データベース203の確認情報406の項目の値が「未」のものについて、これに対応する乗務員ID401の端末IPアドレス403及び携帯端末IPアドレス404に警告画面の表示を行う(ステップ1001)。なお、該当乗務員が居眠りをしている可能性があるので警告音を発するというのでも構わない。次に情報処理部201は、乗務員データベース203の確認情報406の項目の値が「済」のものについて、これに対応する乗務員ID401の端末IPアドレス403及び携帯端末IPアドレス404をもつ端末に図7に示すような異常時画面の表示を行う(ステップ1002)。ステップ1001,1002の表示は、少なくとも一の乗務員の端末に対して行うのでもよい。次に、情報処理部201は、車外情報処理装置103に対して異常を検知した旨のメッセージを自動送信して処理を終了する。
【0025】
以上説明したように、本実施例によれば、車掌が居眠りをしてしまったり気絶してしまったりした場合に、同じ列車101に乗車している他の乗務員が気づくことができ、車掌室に、他の乗務員が車掌を起こしに行ったり救助に向かったりできることで、次の停車駅に到着してもドア開閉が行え、乗客が駅で乗降することができ、列車の輸送性が向上する。
【0026】
また、車掌が居眠りをしてしまったり気絶してしまったりした場合に、同じ列車101に乗車している他の乗務員が気づくことができ、車掌室に、他の乗務員が車掌を起こしに行ったり救助に向かったりできることによって、車内放送で停車駅案内をすることができ、列車のサービス性が向上する。
【0027】
また、車掌が居眠りをしてしまったり気絶してしまったりした場合に、同じ列車101に乗車している他の乗務員が気づくことができ、車掌室に、他の乗務員が車掌を起こしに行ったり救助に向かったりできることによって、緊急時に車内放送で避難指示を出すことができ、輸送の安全性が向上する。
【0028】
また、車掌が居眠りをしてしまったり気絶してしまったりした場合に、同じ列車101に乗車している他の乗務員が気づくことができ、車掌室に、他の乗務員が車掌を起こしに行ったり救助に向かったりできることによって、運転士が停車駅を間違って通過したときや非常時に、非常ブレーキのスイッチ操作を行うことができ、輸送の安全性が向上する。
【0029】
また、車掌が居眠りをしてしまった場合に、同じ列車101に乗車している他の乗務員が気づくことができ、車掌室に、他の乗務員が車掌を起こしに行くことができることによつて、駅停車時のオーバーランによる運転士のブザー合図を聞き取り、オーバーラン時に誤って扉を開閉してしまう事故の危険性を減らせ、輸送の安全性が向上する。
【0030】
また、車掌が気絶してしまった場合に、同じ列車101に乗車している他の乗務員が気づくことができ、車掌室に、他の乗務員が車掌の救助に向かえることによって、列車脱線時等の緊急時に車掌に代わって対応処理ができ、併発事故を引き起こす危険性を減らせ、輸送の安全性が向上する。
【0031】
また、客室乗務員が居眠りをしてしまったり気絶してしまったりした場合に、同じ列車101に乗車している他の乗務員が気づくことができ、乗務員室に、他の乗務員が客室乗務員を起こしに行ったり救助に向かったりできることによって、乗り越し精算、車内検札、指定席やグリーン席の購入が引き続きできるようになり、列車のサービス性が向上する。
【0032】
また、駅停車の直前と直後は乗務員異常確認処理を行わないようにすることによって、駅停車の直前と直後に行う車掌業務や客室乗務員業務に支障を与えることなく、輸送の安全性が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、列車内向けだけでなく、工場内、ビル内の警備員、社員や工事作業者の異常検知などにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施例のシステム構成図である。
【図2】実施例の車上情報処理装置の構成図である。
【図3】時刻表データベースのデータ構成例を示す図である。
【図4】乗務員データベースのデータ構成例を示す図である。
【図5】確認画面の例を示す図である。
【図6】設定画面の例を示す図である。
【図7】異常時画面の例を示す図である。
【図8】実施例の乗務員異常検知判断処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】正常確認時の処理手順を示すフローチャートである。
【図10】異常検知時の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0035】
101:列車、103:車外情報処理装置、104:車上ネットワーク、105:車上情報処理装置、106:表示装置、107:無線通信装置、108:携帯通信端末、201:情報処理部、202:時刻表DB、203:乗務員DB。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車に乗務する各乗務員ごとに応答確認の結果である確認情報を記憶する乗務員データの記憶手段と、
各停車駅ごとに到着時刻と発車時刻を記憶する時刻表データの記憶手段と、
いずれかの乗務員から端末を介して乗務員確認監視を起動するまでの起動時間を受信し、メモリに設定して前記起動時間に対応する起動時刻まで待機する手段と、
前記起動時刻になったとき、前記乗務員データを参照し、前記各乗務員の端末へ応答要求し、前記確認情報を更新するとともに所定時間内の応答を監視する手段と、
いずれかの乗務員から応答がないとき、少なくとも一の乗務員の端末へ警告情報を送信する手段と、
前記時刻表データを参照し、前記起動時刻が前記到着時刻の一定時間前から前記発車時刻の一定時間後までの時間範囲に入る場合には、前記時間範囲を避けるように前記起動時刻をずらす手段とを有することを特徴とする乗務員の異常を検知する計算機。
【請求項2】
前記時刻表データは、さらに前記到着時刻と前記発車時刻に遅延が生じた場合の遅延時間を記憶し、
前記計算機は、さらに前記遅延が生じた場合に、前記時間範囲を前記遅延時間だけ延ばすように補正する手段を有することを特徴とする請求項1記載の乗務員の異常を検知する計算機。
【請求項3】
前記計算機は、さらに前記起動時間を送信する乗務員をランダムに決定する手段を有することを特徴とする請求項1記載の乗務員の異常を検知する計算機。
【請求項4】
1人の前記乗務員のもつ前記端末が複数ある場合には、前記応答を監視する手段は、それらすべての端末に対して前記応答要求をすることを特徴とする請求項1記載の乗務員の異常を検知する計算機。
【請求項5】
前記すべての端末に対して前記応答要求をしたとき、前記応答を監視する手段は、いずれかの端末から応答を受ければ当該乗務員について応答ありとみなすことを特徴とする請求項4記載の乗務員の異常を検知する計算機。
【請求項6】
前記警告情報を送信する手段は、いずれかの乗務員から応答がないとき、残りの乗務員に対して異常を通知することを特徴とする請求項1記載の乗務員の異常を検知する計算機。
【請求項7】
計算機に、
いずれかの乗務員から端末を介して乗務員確認監視を起動するまでの起動時間を受信し、メモリに設定して前記起動時間に対応する起動時刻まで待機する機能と、
前記起動時刻になったとき、各乗務員ごとに応答確認の結果である確認情報を記憶する乗務員データを参照し、前記各乗務員の端末へ応答要求し、前記確認情報を更新するとともに所定時間内の応答を監視する機能と、
いずれかの乗務員から応答がないとき、少なくとも一の乗務員の端末へ警告情報を送信する機能と、
各停車駅ごとに到着時刻と発車時刻を記憶する時刻表データを参照し、前記起動時刻が前記到着時刻の一定時間前から前記発車時刻の一定時間後までの時間範囲に入る場合には、前記時間範囲を避けるように前記起動時刻をずらす機能とを実現させるためのプログラム。
【請求項8】
前記時刻表データは、さらに前記到着時刻と前記発車時刻に遅延が生じた場合の遅延時間を記憶し、
前記計算機に、さらに前記遅延が生じた場合に、前記時間範囲を前記遅延時間だけ延ばすように補正する機能を実現させることを特徴とする請求項7記載のプログラム。
【請求項9】
前記計算機に、さらに前記起動時間を送信する乗務員をランダムに決定する機能を実現させることを特徴とする請求項7記載のプログラム。
【請求項10】
1人の前記乗務員のもつ前記端末が複数ある場合には、前記応答を監視する機能は、それらすべての端末に対して前記応答要求をすることを特徴とする請求項7記載のプログラム。
【請求項11】
前記すべての端末に対して前記応答要求をしたとき、前記応答を監視する機能は、いずれかの端末から応答を受ければ当該乗務員について応答ありとみなすことを特徴とする請求項10記載のプログラム。
【請求項12】
前記警告情報を送信する機能は、いずれかの乗務員から応答がないとき、残りの乗務員に対して異常を通知することを特徴とする請求項7記載のプログラム。
【請求項13】
列車内に搭載される車上情報処理装置と、列車内の乗務員が携帯する携帯通信端末と、車外情報処理装置とを有するシステムであって、
前記車上情報処理装置は、
各乗務員ごとに応答確認の結果である確認情報を記憶する乗務員データの記憶手段と、
各停車駅ごとに到着時刻と発車時刻を記憶する時刻表データの記憶手段と、
いずれかの乗務員から前記携帯通信端末を介して乗務員確認監視を起動するまでの起動時間を受信し、メモリに設定して前記起動時間に対応する起動時刻まで待機する手段と、
前記起動時刻になったとき、前記乗務員データを参照し、前記各乗務員の前記携帯通信端末へ応答要求し、前記確認情報を更新するとともに所定時間内の応答を監視する手段と、
いずれかの乗務員から応答がないとき、少なくとも一の乗務員の前記携帯通信端末へ警告情報を送信する手段と、
いずれかの乗務員から応答がないとき、前記車外情報処理装置に異常を通報する手段と、
前記時刻表データを参照し、前記起動時刻が前記到着時刻の一定時間前から前記発車時刻の一定時間後までの時間範囲に入る場合には、前記時間範囲を避けるように前記起動時刻をずらす手段とを有することを特徴とする乗務員の異常を検知するシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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