説明

乗員拘束装置

【課題】 インフレータから延びてピラーに固定されたハーネスが、ピラーに沿って展開するエアバッグに接触して損傷しないように保護する。
【解決手段】 ドア開口部19の上縁に沿って配置された折り畳み状態のエアバッグ21とルーフサイドレール12との間に配置された車体前後方向に延びるプロテクタ24に上下方向に延びる開口部eを形成し、ピラー15の近傍に設けたインフレータ28から延びるハーネス46をプロテクタ24の開口部eを通してピラー16の下部に通線したので、車両の衝突時に展開するエアバッグ21とハーネス26との間にプロテクタ24を介在させることで、ハーネス46の損傷を防止して修理コストを削減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア開口部の上縁に沿って折り畳み状態のエアバッグを配置し、車両の衝突時にピラーの近傍に設けたインフレータが発生するガスで前記エアバッグを膨張させて車室の側部内面に沿ってカーテン状に展開させる乗員拘束装置に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる乗員拘束装置において、ルーフサイドレールに設けたインフレータを制御装置に接続するハーネスを、ルーフサイドレールおよびリヤピラーに沿って配置するものが、下記特許文献1により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−247238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の衝突時にインフレータから延びるハーネスが固定されたピラーに沿ってエアバッグが下向きに展開するとき、特にハーネスの柔軟性が低下する低温時に、エアバッグに強く擦られたハーネスが損傷する場合がある。このようにハーネスが損傷すると、衝突した車両を修理すべくエアバッグを交換する際に、本来は再使用可能なハーネスも同時に交換する必要が生じ、修理コストが増加してしまう問題がある。
【0005】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、インフレータから延びてピラーに固定されたハーネスが、ピラーに沿って展開するエアバッグに接触して損傷しないように保護することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、ドア開口部の上縁に沿って折り畳み状態のエアバッグを配置し、車両の衝突時にピラーの近傍に設けたインフレータが発生するガスで前記エアバッグを膨張させて車室の側部内面に沿ってカーテン状に展開させる乗員拘束装置において、折り畳み状態の前記エアバッグと車体との間には車体前後方向に延びるプロテクタが配置され、前記インフレータから延びるハーネスは前記プロテクタに形成した上下方向に延びる開口部を通して前記ピラーの下部に通線されることを特徴とする乗員拘束装置が提案される。
【0007】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記プロテクタは、前記開口部の前側および後側に前記車体に当接する複数のリブを有することを特徴とする乗員拘束装置が提案される。
【0008】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、前記プロテクタの前記車体への固定点と、前記ハーネス前記車体への固定点とは相互に隣接して配置されることを特徴とする乗員拘束装置が提案される。
【0009】
尚、実施の形態のルーフサイドレール12は本発明の車体に対応し、実施の形態の前部ドア開口部18および後部ドア開口部19は本発明のドア開口部に対応し、実施の形態の第3プロテクタ24は本発明のプロテクタに対応し、実施の形態のクリップ44,49は本発明の固定点に対応し、実施の形態の縦リブf,h,jは本発明のリブに対応する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の構成によれば、ドア開口部の上縁に沿って配置された折り畳み状態のエアバッグと車体との間に配置された車体前後方向に延びるプロテクタに上下方向に延びる開口部を形成し、ピラーの近傍に設けたインフレータから延びるハーネスをプロテクタの開口部を通してピラーの下部に通線したので、車両の衝突時に展開するエアバッグとハーネスとの間にプロテクタを介在させることで、ハーネスの損傷を防止して修理コストを削減することができる。
【0011】
また請求項2の構成によれば、プロテクタは開口部の前側および後側に車体に当接する複数のリブを有するので、エアバッグが展開する荷重がプロテクタに加わっても、車体に対するプロテクタの位置関係を一定に保持してハーネスを一層確実に保護することができる。
【0012】
また請求項3の構成によれば、プロテクタの車体への固定点と、ハーネス車体への固定点とを相互に隣接して配置したので、エアバッグが展開する荷重がプロテクタに加わっても、プロテクタの開口部およびハーネスの位置関係を一定に保持してハーネスを一層確実に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】エアバッグの非展開時の自動車の車室内面を示す図。
【図2】図1の2部拡大図。
【図3】図2の3方向矢視図。
【図4】図3の要部の分解斜視図。
【図5】図2の5−5線断面図。
【図6】図2の6−6線断面図。
【図7】図2の7方向矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1〜図7に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
図1に示すように、ルーフパネル11の側部に沿ってルーフサイドレール12が車体前後方向に配置されており、ルーフサイドレール12からAピラー13,13、Bピラー14、Cピラー15およびDピラー16が下向きに延出する。前後2本に分割されたAピラー13,13の間に前部窓開口部17が形成され、後側のAピラー13およびBピラー14間に前部ドア開口部18が形成され、Bピラー14およびCピラー15間に後部ドア開口部19が形成され、Cピラー15およびDピラー16間に後部窓開口部20が形成される。乗員拘束装置のロール状に折り畳まれたエアバッグ21は、ルーフサイドレール12に沿って車体前後方向に取り付けられる。尚、乗員拘束装置は、実質的に同一構造のものが車体の左右両側にそれぞれ設けられているが、以下その代表として車体の右側に設けられたものについて説明する。
【0016】
エアバッグ21は2枚重ねの基布を縫製して構成されるもので、その上部に沿って合成樹脂製の第1プロテクタ22、第2プロテクタ23および第3プロテクタ24を装着し、エアバッグ21の展開時に破断可能なテープ25…でロールが解けないように結束される。エアバッグ21の上縁から上方に突出する複数の取付片21a…が、第1〜第3プロテクタ22,23,24に重ねられた状態あるいは単独で、固定部材26…を介してルーフサイドレール12等に固定される。Bピラー14およびCピラー15の間のルーフサイドレール12には、前後一対の取付ブラケット27,27を介してインフレータ28が固定される。インフレータ28の前端から前方に突出するガス供給パイプ29がエアバッグ21の前後方向中間部に接続される。
【0017】
後側のAピラー13およびBピラー14の間のルーフサイドレール12には、前席の乗員用のアシストグリップ41を取り付けるためのアシストグリップベース30が固定され、Cピラー15の上方のルーフサイドレール12には、後席の乗員用のアシストグリップ41を取り付けるためのアシストグリップベース31が固定される。尚、エアバッグ21の後端部は、Dピラー16の手前で前向きに折り返される。
【0018】
図5に示すように、ルーフパネル11の車幅方向外端に連なるルーフサイドレール12は、ルーフサイドパネルアウター32と、ルーフサイドレールインナー33と、それらを結合して補強するルーフサイドレールスチフナ34,35とを備えて閉断面に構成される。Cピラー15は、ルーフサイドパネルアウター32から下方に延びるCピラーアウター36と、ルーフサイドレールインナー33から下方に延びるCピラーインナー37とを備えて閉断面に構成される。後部ドア開口部19を開閉する後部ドア38はスライドドアで構成される。
【0019】
ルーフパネル11の下面およびルーフサイドレール12の内面はルーフライニング39で覆われ、Cピラー15の内面はCピラーガーニッシュ40で覆われる。第3プロテクタ24、インフレータ28、アシストグリップベース31はルーフサイドレール12およびルーフライニング39に挟まれた空間に配置され、アシストグリップベース31に固定されるアシストグリップ41はルーフライニング39を貫通して車室内に露出する。
【0020】
図2に示すように、第3プロテクタ24は、折り畳んだエアバッグ21の上半部を覆う半割円筒状のカバー部24aと、カバー部24aの車幅方向外側部分から下向きに延びる前後の取付部24b,24cとを備える。
【0021】
図3に詳細に示すように、後側の取付部24cは、水平方向に延びる3枚の横リブa,b,cと、2枚の横リブb,cの間に形成されたボックス構造のクリップ貫通部dと、2枚の横リブa,bおよびクリップ貫通部dに3方を囲まれた切欠き状の開口部eと、横リブaの上面に設けられて車幅方向に延びる3枚の縦リブf…と、前後方向に延びて3枚の縦リブf…を接続する縦リブgと、クリップ貫通部dの上面に設けられて車幅方向に延びる2枚の縦リブh,hと、前後方向に延びて2枚の縦リブh,hを接続する縦リブiと、横リブcの上面に設けられて車幅方向に延びる2枚の縦リブj,jとを備える。
【0022】
図3、図4および図6に示すように、アシストグリップベース31は、前後の2カ所の締結部31a,31aがボルト42,42でルーフサイドレール12に固定される。固定部材26には一対の固定突起26a,26aと、一対の係止突起26b,26bとが形成され、かつ第3プロテクタ24のカバー部24aから上方に突出するプロテクタ固定部24dには一対の係止孔24e,24eが形成されており、係止突起26b,26bを係止孔24e,24eに係止することで、第3プロテクタ24のプロテクタ固定部24dに固定部材26が固定される。そして固定部材26の固定突起26a,26aを、エアバッグ21の取付片21aに形成した一対の固定孔21b,21bと、アシストグリップベース31のエアバッグ取付部31bに形成した一対の固定孔31d,31dとに挿入した状態で、固定部材46を貫通させたボルト43をアシストグリップベース31に締結することで、第3プロテクタ24のプロテクタ固定部24dおよびエアバッグ21の取付片21aがアシストグリップベース31に固定される。
【0023】
このように、第3プロテクタ24のプロテクタ固定部24dは、アシストグリップベース31を介してルーフサイドレール12に固定され、かつ後側の取付部24cのクリップ貫通部dを貫通するクリップ44でルーフサイドレール12に固定される。そしてアシストグリップベース31の前後の締結部31a,31aおよびエアバッ取付部31bに挟まれた前後のアシストグリップ取付部31c,31cに、アシストグリップ41が固定される。
【0024】
尚、第3プロテクタ24は、その前側の取付部24bもクリップ44によってルーフサイドレール12に固定される(図2参照)。
【0025】
図2および図7に示すように、ルーフサイドレール12に一対の取付ブラケット27,27を介して固定されたインフレータ28の後端には、カプラ45を介してハーネス46が接続される。カプラ45の上方に位置するルーフパネル11の下面には車幅方向に延びるルーフアーチ47が固定されており、カプラ45から延びるハーネス46は上方に屈曲してルーフアーチ47の下面にクリップ48で固定され、そこからルーフサイドレール12に沿って後方に延びた後に下向きに屈曲し、第3プロテクタ24の後側の取付部24cの開口部eを上から下に通過してCピラー15に沿って下方に延びている。ハーネス46は、ルーフサイドレール12およびCピラー15の複数個所において前記クリップ48とは別のクリップ49…で固定される(図5参照)。
【0026】
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
【0027】
車両の側面衝突あるいはロールオーバーが検出されると、インフレータ28が発生するガスがガス供給パイプ29からエアバッグ21の内部に供給され、膨張するエアバッグ21がテープ25…を破断して下向きに展開する。このとき、第1〜第3プロテクタ22,23,24がエアバッグ21の上部を覆うことで、エアバッグ21を確実に下向きに展開させることができる。エアバッグ21がCピラー15に沿って展開するとき、Cピラー15の表面に沿って固定されたハーネス46がエアバッグ21と擦れて損傷する可能性がある。この傾向は、ハーネス46の柔軟性が失われる低温時に顕著である。
【0028】
しかしながら本実施の形態によれば、第3プロテクタ24の後側の取付部24cにルーフサイドレール12側に向けて開口する開口部e(図2および図3参照)を形成し、この開口部eを通してハーネス46を第3プロテクタ24の上側から下側に通線したので、展開するエアバッグ21とハーネス46との間に第3プロテクタ24の後側の取付部24cを介在させることで、ハーネス46の損傷を防止することができる。これにより、衝突した車両を修理すべく展開したエアバッグ21を交換する際に、ハーネス46を交換することなく再利用することが可能になり、修理コストの削減に寄与することができる。
【0029】
またエアバッグ21が展開する荷重が第3プロテクタ24に加わっても、第3プロテクタ24は開口部eの前側および後側にルーフサイドレール12に当接する複数の横リブa,cおよび縦リブf…,h…,i…を備えるので、ルーフサイドレール12に対する第3プロテクタ24の位置関係を一定に保持し、ハーネス46が第3プロテクタ24の開口部eのエッジと干渉しないようにして一層確実に保護することができる。
【0030】
しかも第3プロテクタ24をルーフサイドレール12に固定するクリップ44と、ハーネス46をルーフサイドレール12に固定するクリップ49とが相互に近接して配置されるので(図3参照)、第3プロテクタ24およびハーネス46の位置関係を一定に保持し、ハーネス46が第3プロテクタ24の開口部eのエッジと干渉しないようにして一層確実に保護することができる。
【0031】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0032】
例えば、実施の形態の第3プロテクタ24は開口部eは一方向に開口している切欠き状のものであるが、周囲が閉じた孔状のものであっても良い。
【0033】
また本発明のピラーはCピラー15に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0034】
12 ルーフサイドレール(車体)
15 Cピラー(ピラー)
18 前部ドア開口部(ドア開口部)
19 後部ドア開口部(ドア開口部)
21 エアバッグ
24 第3プロテクタ(プロテクタ)
28 インフレータ
44 クリップ(固定点)
46 ハーネス
49 クリップ(固定点)
e 開口部
f 縦リブ(リブ)
h 縦リブ(リブ)
i 縦リブ(リブ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア開口部(18,19)の上縁に沿って折り畳み状態のエアバッグ(21)を配置し、車両の衝突時にピラー(15)の近傍に設けたインフレータ(28)が発生するガスで前記エアバッグ(21)を膨張させて車室の側部内面に沿ってカーテン状に展開させる乗員拘束装置において、
折り畳み状態の前記エアバッグ(21)と車体(12)との間には車体前後方向に延びるプロテクタ(24)が配置され、前記インフレータ(28)から延びるハーネス(46)は前記プロテクタ(24)に形成した上下方向に延びる開口部(e)を通して前記ピラー(15)の下部に通線されることを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項2】
前記プロテクタ(24)は、前記開口部(e)の前側および後側に前記車体(12)に当接する複数のリブ(f,h,j)を有することを特徴とする、請求項1に記載の乗員拘束装置。
【請求項3】
前記プロテクタ(24)の前記車体(12)への固定点(44)と、前記ハーネス(46)前記(12)車体への固定点(49)とは相互に隣接して配置されることを特徴とする、請求項1に記載の乗員拘束装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−95304(P2013−95304A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240969(P2011−240969)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】