乗物シート用ケーブル装置
【課題】ケーブルの大径部と小径部の境部分を好適にスライド可能に設置し得るガイド部材を備えるケーブル装置を提供する。
【解決手段】乗物シート１０のシートクッション１１に対して脚部材１２を移動させるためのケーブル装置１であって、脚部材１２から延出するケーブル２と、シートクッション１１に設けられかつケーブル２がスライド可能に掛けられるガイド部材３を有する。ケーブル２は、脚部材１２側から延出する小径部２ａと、小径部２ａから延出しかつ小径部２ａより径が大きい大径部２ｂを有する。ガイド部材３は、小径部２ａがスライド可能に掛けられかつ大径部２ｂの太さよりも小さい幅を有する小ガイド部３ｂと、小ガイド部３ｂと直列的に配されかつ大径部２ｂがスライド可能に掛けられる幅を有する大ガイド部３ｃを有する。
【解決手段】乗物シート１０のシートクッション１１に対して脚部材１２を移動させるためのケーブル装置１であって、脚部材１２から延出するケーブル２と、シートクッション１１に設けられかつケーブル２がスライド可能に掛けられるガイド部材３を有する。ケーブル２は、脚部材１２側から延出する小径部２ａと、小径部２ａから延出しかつ小径部２ａより径が大きい大径部２ｂを有する。ガイド部材３は、小径部２ａがスライド可能に掛けられかつ大径部２ｂの太さよりも小さい幅を有する小ガイド部３ｂと、小ガイド部３ｂと直列的に配されかつ大径部２ｂがスライド可能に掛けられる幅を有する大ガイド部３ｃを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、乗物シートの第一部材に対して第二部材を移動させるための乗物シート用ケーブル装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
乗物シートは、従来例えば、乗物本体に回転可能に取付けられるシートクッションと、シートクッションに回転可能に取付けられる脚部材を有する。ケーブル装置は、ケーブルを有し、ケーブルは、一端部が乗物本体に取付けられ、中間部がシートクッションに設けられたガイド部材にスライド可能に掛けられ、他端部が脚部材に取付けられる。したがって乗物本体に対してシートクッションを使用位置から格納位置へ回転させることで、ケーブルが脚部材を引っ張り、脚部材がシートクッションに対して起立する使用位置からシートクッションの下面に沿う格納位置に回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００３】
【特許文献１】特開２００９−１７９０９１号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
しかしケーブルに径の異なる大径部と小径部を設けたい場合がある。例えば法規などを理由にケーブルの一部を径の大きい大径部にしたい、またはスペースが狭いためにケーブルの一部を径の小さい小径部にしたい場合等がある。しかし径の異なる境部分を好適にスライド可能に設置し得るガイド部材が従来知られていない。そこでケーブルの大径部と小径部の境部分を好適にスライド可能に設置し得るガイド部材を備えるケーブル装置が従来必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【０００５】
前記課題を解決するために本発明は、各請求項に記載の通りの構成を備える乗物シート用ケーブル装置であることを特徴とする。一つの特徴によると本発明は、乗物シートの第一部材に対して第二部材を移動させるための乗物シート用ケーブル装置であって、第二部材から延出するケーブルと、第一部材に設けられかつケーブルがスライド可能に掛けられるガイド部材を有する。ケーブルは、第二部材側から延出する小径部と、小径部から延出しかつ小径部より径が大きい大径部を有する。ガイド部材は、小径部がスライド可能に掛けられかつ大径部の太さよりも小さい幅を有する小ガイド部と、小ガイド部と直列的に配されかつ大径部がスライド可能に掛けられる幅を有する大ガイド部を有する。
【０００６】
したがってケーブルは、小径部と大径部を有する。そのためケーブルは、スペースの狭い場所に小径部、あるいは径が所定以上であることが好ましい場所に大径部を有し得る。ガイド部材は、小ガイド部と大ガイド部を有する。そのためガイド部材は、ケーブルを好適に保持し得る。例えば小ガイド部が小径部を保持し、同時に大ガイド部が大径部を保持する。これによりケーブルは、径方向にがたつくことがガイド部材の小ガイド部と大ガイド部によって抑制され得る。ケーブルが引っ張られた場合は、大径部が大ガイド部から引っ張り出され、小径部が小ガイド部と大ガイド部とに位置する。この時、ケーブルは、小径部が小ガイド部によって径方向にがたつくことが抑制され得る。そのため例えばガイド部材が大ガイド部のみを有し、小径部が大ガイド部のみに掛けられ、小径部が大ガイド部に対して径方向にがたつく構造に比べ、ケーブルは、ガイド部材に対して径方向にがたつくことが抑制され得る。
【図面の簡単な説明】
【０００７】
【図１】乗物シートの斜視図である。
【図２】シートバックをシートクッションの上に倒した際の乗物シートの後面図である。
【図３】格納位置における乗物シートの後面図である。
【図４】ケーブルの一部とガイド部材の斜視図である。
【図５】ケーブルの一部とガイド部材の下面図である。
【図６】シートを使用位置にした際のケーブル装置の後面図である。
【発明を実施するための形態】
【０００８】
本発明の一つの実施の形態を図１〜６にしたがって説明する。図１に示すように乗物シート１０は、自動車等の乗物の床面に装着されるシートであって、シートクッション１１とシートバック１３を有する。シートバック１３は、シートクッション１１の後部にリクライニング装置１８によって角度調整可能に取付けられる。シートバック１３の上部には、ヘッドレスト１４が上下方向に位置調整可能に取付けられる。シートバック１３の一側部には、アームレスト１５が傾動可能に取付けられる。
【０００９】
シートクッション１１は、図１，２に示すようにパッド１１ａと、パッド１１ａの表面を覆う表皮１１ｂと、パッド１１ａの下面を覆うカバー１１ｃを有する。シートクッション１１の一端部に脚部材１２が取付けられ、シートクッション１１の他端部にアーム１６が取付けられる。脚部材１２の上端部は、ピン１２ａによってシートクッション１１に回転可能に取付けられる。アーム１６は、シートクッション１１から上方に延出し、上端部がピン１６ａとブラケット２２によって乗物本体に回転可能に取付けられる。
【００１０】
乗物本体は、図１，２に示すように床面２０と側壁２１を有する。床面２０にアンカ２３が取付けられ、側壁２１にブラケット２２が取付けられる。アンカ２３には、脚部材１２の端部に取付けられたロック装置１７が解除可能にロックされる。
【００１１】
シート１０には、図２，３に示すように脚部材１２をシートクッション１１に対して移動させるためのケーブル装置１が設けられる。ケーブル装置１は、ケーブル２とガイド部材３，４を有する。ケーブル２は、金属線等から形成されるケーブル本体２ｃと、樹脂製のチューブ２ｄを有する。チューブ２ｄは、例えば耐熱性と耐磨耗性に優れるポリエステル系エラストマーなどから構成される。図４に示すようにチューブ２ｄは、ケーブル本体２ｃの一端側の外周面を覆う。チューブ２ｄは、ケーブル本体２ｃに取付けられた取付部材２ｇによってケーブル本体２ｃに対して長手方向への移動が規制される。
【００１２】
ケーブル本体２ｃとチューブ２ｄによってケーブル２には、図２，５に示すように小径部２ａと大径部２ｂが形成される。小径部２ａは、径の小さい部分であって、ケーブル本体２ｃのみから構成される。大径部２ｂは、小径部２ａよりも径が大きい部分であって、ケーブル本体２ｃとチューブ２ｄから構成される。ケーブル２の一端部２ｅは、脚部材１２に取付けられ、ピン１２ａよりも下側に位置する。ケーブル２の一端部２ｆは、ブラケット２２に取付けられ、ピン１６ａよりも下側に位置する。
【００１３】
ガイド部材３，４は、図２に示すように脚部材１２とブラケット２２の間において、シートクッション１１に設けられる。ガイド部材３，４は、ポリアセタールなどの樹脂から成形される。ガイド部材４は、脚部材１２の上方に位置する。ガイド部材４の上端面には、ケーブル２がスライド可能に掛けられる溝状のガイド部４ａが形成される。ケーブル２は、脚部材１２から延出して、ガイド部材４の上端面に掛けられ、パッド１１ａとカバー１１ｃの間をガイド部材３に向けて延出する。
【００１４】
ガイド部材３は、図２に示すようにシートクッション１１の幅方向の一端部近傍に設けられる。図４，５に示すようにガイド部材３の本体部３ａの下端面には、小ガイド部３ｂと大ガイド部３ｃが形成される。小ガイド部３ｂは、ケーブル２の小径部２ａに対応する幅を有し、大ガイド部３ｃは、ケーブル２の大径部２ｂに対応する幅を有する。小ガイド部３ｂの幅は、小径部２ａの直径よりも大きく、かつ大径部２ｂの直径より小さい。大ガイド部３ｃの幅は、小ガイド部３ｂの幅より大きく、かつ大径部２ｂの直径よりも少し大きい。
【００１５】
図４，５に示すように小ガイド部３ｂと大ガイド部３ｃは、直列的に配される。小ガイド部３ｂと大ガイド部３ｃの各幅中心線は、略同一線上に位置する。小ガイド部３ｂと大ガイド部３ｃは、底側の断面が略半円形の溝状に形成される。小ガイド部３ｂの溝深さは、ケーブル２の小径部２ａの直径と略同じで、大ガイド部３ｃの溝深さは、大径部２ｂの直径と略同じである。
【００１６】
図４，５に示すように小ガイド部３ｂと大ガイド部３ｃの間には、小ガイド部３ｂから大ガイド部３ｃに向けて徐々に幅と深さが大きくなる連結部３ｄが形成される。図５，６に示すように小ガイド部３ｂには、ケーブル２の小径部２ａがスライド可能に収納される。大ガイド部３ｃには、通常、大径部２ｂがスライド可能に収納される。
【００１７】
シート１０を図１の使用状態から図２の折り畳み状態にする場合は、シートクッション１１の後部下側等に設けられたレバーを引っ張る。これによりリクライニング装置１８がロック解除され、シートバック１３がシートクッション１１の上に倒れ得る。次に、ロック装置１７がアンカ２３から解除され、アーム１６が付勢部材２４によって上方に回転するように付勢される。シートクッション１１をアーム１６とともにピン１６ａを中心に上方に回転させると、シートクッション１１が床面２０に対して略平行な図２に示す使用位置から、側壁２１に対して略平行な図３に示す格納位置に回転する。
【００１８】
図２，３に示すようにケーブル２の一端部２ｆは、シートクッション１１の回転中心となるピン１６ａよりも下に位置する。そのためシートクッション１１を使用位置から格納位置に回転させると、ケーブル２が一端部２ｆ側に引っ張られる。これによりケーブル２が付勢部材１９に抗して脚部材１２を引っ張り、脚部材１２がピン１２ａを中心に回転する。その結果、脚部材１２がシートクッション１１に対して下方に延出する図２に示す使用位置からシートクッション１１の下面に沿う図３に示す格納位置に回転する。
【００１９】
図３に示すようにケーブル２が一端部２ｆ側に引っ張られると、大径部２ｂがガイド部材３から離間する。一方、小径部２ａは、ガイド部材３の小ガイド部３ｂと大ガイド部３ｃにおいて延出する。シートクッション１１が使用位置から格納位置に回転すると、大径部２ｂもシートクッション１１とともに回転し、側壁２１から離れ、かつアーム１６の下側に露出する。したがって大径部２ｂは、法規等によって露出される部分の対象となる。しかし大径部２ｂは、小径部２ａに比べて径が大きいため、法規によって定める半径（例えば３．２ｍｍ）等よりも径が所定以上に容易に設定され得る。
【００２０】
図２，６に示すようにガイド部材３の近傍には、カバー１１ｃなどの周辺部品が位置する。これら周辺部品は、ガイド部材３よりもシートクッション１１の中心側に位置する。シートクッション１１が使用位置にある場合、大径部２ｂがガイド部材３の大ガイド部３ｃに位置し、小径部２ａが小ガイド部３ｂに位置する。そのため大径部２ｂは、カバー１１ｃなどの周辺部品から離れ、小径部２ａが周辺部品の近傍に位置する。したがって小径部２ａは、大径部２ｂに比べて径が細く、周辺部品に対して干渉し難い。
【００２１】
以上のようにケーブル装置１は、図２に示すように脚部材１２（第二部材）から延出するケーブル２と、シートクッション１１（第一部材）に設けられかつケーブル２がスライド可能に掛けられるガイド部材３を有する。ケーブル２は、脚部材１２側から延出する小径部２ａと、小径部２ａから延出しかつ小径部２ａより径が大きい大径部２ｂを有する。ガイド部材３は、小径部２ａがスライド可能に掛けられかつ大径部２ｂの太さよりも小さい幅を有する小ガイド部３ｂと、小ガイド部３ｂと直列的に配されかつ大径部２ｂがスライド可能に掛けられる幅を有する大ガイド部３ｃを有する。
【００２２】
したがってケーブル２は、小径部２ａと大径部２ｂを有する。そのためケーブル２は、スペースの狭い場所に小径部２ａを有し、径が所定以上であることが好ましい場所に大径部２ｂを有し得る。ガイド部材３は、小ガイド部３ｂと大ガイド部３ｃを有する。そのためガイド部材３は、ケーブル２を好適に保持し得る。例えば図６に示すように小ガイド部３ｂが小径部２ａを保持し、同時に大ガイド部３ｃが大径部２ｂを保持する。これによりケーブル２は、径方向にがたつくことがガイド部材３の小ガイド部３ｂと大ガイド部３ｃによって抑制され得る。
【００２３】
図３に示すようにケーブル２が引っ張られた場合は、大径部２ｂが大ガイド部３ｃから引っ張り出され、小径部２ａが小ガイド部３ｂと大ガイド部３ｃとに位置する。この時、ケーブル２は、小径部２ａが小ガイド部３ｂによって径方向にがたつくことが抑制され得る。そのため例えばガイド部材が大ガイド部のみを有し、小径部が大ガイド部のみに掛けられ、小径部が大ガイド部に対して径方向にがたつく構造に比べて、ケーブル２がガイド部材３に対して径方向にがたつくことが抑制され得る。
【００２４】
またケーブル２は、図２，３に示すように一端部２ｆが乗物本体に取付けられ、乗物本体に移動可能に取付けられたシートクッション１１（第一部材）を乗物本体に対して移動させることでケーブル２が脚部材１２（第二部材）を引っ張り、脚部材１２がシートクッション１１に対して移動する。ケーブル２の大径部２ｂは、ガイド部材３側から乗物本体側に延出する。
【００２５】
したがってシートクッション１１（第一部材）の乗物本体に対する移動に連動して脚部材１２（第二部材）がケーブル２によってシートクッション１１に対して移動する。この時、図３に示すようにシートクッション１１が乗物本体に対して移動するため、乗物本体側に位置するケーブル２の一部がシート１０から露出されやすい。しかし露出されやすい部分に大径部２ｂが位置している。そのため露出される部分を大径部２ｂによって法規等に規定する所定以上の径に容易に設定することができる。
【００２６】
またケーブル２は、図４に示すように小径部２ａと大径部２ｂにおいて延出するケーブル本体２ｃと、大径部２ｂにおいてケーブル本体２ｃの外周に装着されるチューブ２ｄを有する。したがってケーブル本体２ｃの一部にチューブ２ｄを装着することで簡易に大径部２ｂが形成され得る。
【００２７】
（他の実施の形態）
本発明は、上記実施の形態に限定されず、以下の形態等であっても良い。例えば、図２に示す脚部材１２は、シートクッション１１に回転可能に取付けられ、ケーブル装置１が脚部材１２をシートクッション１１に対して回転させる。しかし脚部材がシートクッションに対してスライド可能に取付けられ、ケーブル装置が脚部材をシートクッションに対してスライドさせても良い。
【００２８】
図２に示すケーブル装置１は、シートクッション１１（第一部材）に対して脚部材１２（第二部材）を移動させる。しかしケーブル装置がシートクッション（第一部材）に対して移動可能に取付けられたオットマン等の第二部材を移動させても良い。またはケーブル装置がシートバック（第一部材）に対して移動可能に取付けられたアームレストあるいはテーブルなどの第二部材を移動させても良い。またはケーブル装置がシートクッション（第一部材）に対して回転可能に取付けられたシートバックなどの第二部材を回転させても良い。
【００２９】
図２，３に示すシートクッション１１は、乗物に対して幅方向に回転可能に取付けられる。しかしシートクッションが乗物に対して前方または後方に回転可能に取付けられ、シートクッションの該回転によってケーブルが引っ張られても良い。図２，３に示すケーブル２は、シートクッション１１の乗物本体に対する移動によって引っ張られる。しかしケーブルを引っ張るレバーがシート等に設けられており、ケーブルが該レバーによって引っ張られても良い。
【００３０】
図４に示すガイド部材４は、溝状の小ガイド部３ｂと大ガイド部３ｃを有する。しかし小ガイド部と大ガイド部がそれぞれケーブルの幅方向両側に起立する二つの凸部を有していても良い。図４に示す小ガイド部３ｂと大ガイド部３ｃは、底側の断面が半円形である。しかし小ガイド部と大ガイド部が断面三角形あるいは断面四角形であっても良い、または貫通孔状であっても良い。図４に示す小ガイド部３ｂと大ガイド部３ｃは、それぞれケーブル２の小径部２ａと大径部２ｂを収納し得る形状を有する。しかし小ガイド部と大ガイド部がそれぞれ小径部と大径部の一部のみを収納し得る形状であっても良い。
【００３１】
図４に示すケーブル２は、ケーブル本体２ｃとチューブ２ｄを有し、大径部２ｂがチューブ２ｄによって形成される。しかしケーブルが小径部と大径部を備えるケーブル本体を有し、大径部がケーブル本体によって形成されても良い。ケーブル２は、断面円形であっても良いが、断面多角形等であっても良い。乗物は、自動車、バスなどの車両でも良いが、船舶や航空機などであっても良い。
【符号の説明】
【００３２】
１…ケーブル装置
２…ケーブル
２ａ…小径部
２ｂ…大径部
２ｃ…ケーブル本体
２ｄ…チューブ
３，４…ガイド部材
３ｂ…小ガイド部
３ｃ…大ガイド部
１０…乗物シート
１１…シートクッション（第一部材）
１２…脚部材（第二部材）
１３…シートバック
１５…アームレスト
１６…アーム
【技術分野】
【０００１】
本発明は、乗物シートの第一部材に対して第二部材を移動させるための乗物シート用ケーブル装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
乗物シートは、従来例えば、乗物本体に回転可能に取付けられるシートクッションと、シートクッションに回転可能に取付けられる脚部材を有する。ケーブル装置は、ケーブルを有し、ケーブルは、一端部が乗物本体に取付けられ、中間部がシートクッションに設けられたガイド部材にスライド可能に掛けられ、他端部が脚部材に取付けられる。したがって乗物本体に対してシートクッションを使用位置から格納位置へ回転させることで、ケーブルが脚部材を引っ張り、脚部材がシートクッションに対して起立する使用位置からシートクッションの下面に沿う格納位置に回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００３】
【特許文献１】特開２００９−１７９０９１号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
しかしケーブルに径の異なる大径部と小径部を設けたい場合がある。例えば法規などを理由にケーブルの一部を径の大きい大径部にしたい、またはスペースが狭いためにケーブルの一部を径の小さい小径部にしたい場合等がある。しかし径の異なる境部分を好適にスライド可能に設置し得るガイド部材が従来知られていない。そこでケーブルの大径部と小径部の境部分を好適にスライド可能に設置し得るガイド部材を備えるケーブル装置が従来必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【０００５】
前記課題を解決するために本発明は、各請求項に記載の通りの構成を備える乗物シート用ケーブル装置であることを特徴とする。一つの特徴によると本発明は、乗物シートの第一部材に対して第二部材を移動させるための乗物シート用ケーブル装置であって、第二部材から延出するケーブルと、第一部材に設けられかつケーブルがスライド可能に掛けられるガイド部材を有する。ケーブルは、第二部材側から延出する小径部と、小径部から延出しかつ小径部より径が大きい大径部を有する。ガイド部材は、小径部がスライド可能に掛けられかつ大径部の太さよりも小さい幅を有する小ガイド部と、小ガイド部と直列的に配されかつ大径部がスライド可能に掛けられる幅を有する大ガイド部を有する。
【０００６】
したがってケーブルは、小径部と大径部を有する。そのためケーブルは、スペースの狭い場所に小径部、あるいは径が所定以上であることが好ましい場所に大径部を有し得る。ガイド部材は、小ガイド部と大ガイド部を有する。そのためガイド部材は、ケーブルを好適に保持し得る。例えば小ガイド部が小径部を保持し、同時に大ガイド部が大径部を保持する。これによりケーブルは、径方向にがたつくことがガイド部材の小ガイド部と大ガイド部によって抑制され得る。ケーブルが引っ張られた場合は、大径部が大ガイド部から引っ張り出され、小径部が小ガイド部と大ガイド部とに位置する。この時、ケーブルは、小径部が小ガイド部によって径方向にがたつくことが抑制され得る。そのため例えばガイド部材が大ガイド部のみを有し、小径部が大ガイド部のみに掛けられ、小径部が大ガイド部に対して径方向にがたつく構造に比べ、ケーブルは、ガイド部材に対して径方向にがたつくことが抑制され得る。
【図面の簡単な説明】
【０００７】
【図１】乗物シートの斜視図である。
【図２】シートバックをシートクッションの上に倒した際の乗物シートの後面図である。
【図３】格納位置における乗物シートの後面図である。
【図４】ケーブルの一部とガイド部材の斜視図である。
【図５】ケーブルの一部とガイド部材の下面図である。
【図６】シートを使用位置にした際のケーブル装置の後面図である。
【発明を実施するための形態】
【０００８】
本発明の一つの実施の形態を図１〜６にしたがって説明する。図１に示すように乗物シート１０は、自動車等の乗物の床面に装着されるシートであって、シートクッション１１とシートバック１３を有する。シートバック１３は、シートクッション１１の後部にリクライニング装置１８によって角度調整可能に取付けられる。シートバック１３の上部には、ヘッドレスト１４が上下方向に位置調整可能に取付けられる。シートバック１３の一側部には、アームレスト１５が傾動可能に取付けられる。
【０００９】
シートクッション１１は、図１，２に示すようにパッド１１ａと、パッド１１ａの表面を覆う表皮１１ｂと、パッド１１ａの下面を覆うカバー１１ｃを有する。シートクッション１１の一端部に脚部材１２が取付けられ、シートクッション１１の他端部にアーム１６が取付けられる。脚部材１２の上端部は、ピン１２ａによってシートクッション１１に回転可能に取付けられる。アーム１６は、シートクッション１１から上方に延出し、上端部がピン１６ａとブラケット２２によって乗物本体に回転可能に取付けられる。
【００１０】
乗物本体は、図１，２に示すように床面２０と側壁２１を有する。床面２０にアンカ２３が取付けられ、側壁２１にブラケット２２が取付けられる。アンカ２３には、脚部材１２の端部に取付けられたロック装置１７が解除可能にロックされる。
【００１１】
シート１０には、図２，３に示すように脚部材１２をシートクッション１１に対して移動させるためのケーブル装置１が設けられる。ケーブル装置１は、ケーブル２とガイド部材３，４を有する。ケーブル２は、金属線等から形成されるケーブル本体２ｃと、樹脂製のチューブ２ｄを有する。チューブ２ｄは、例えば耐熱性と耐磨耗性に優れるポリエステル系エラストマーなどから構成される。図４に示すようにチューブ２ｄは、ケーブル本体２ｃの一端側の外周面を覆う。チューブ２ｄは、ケーブル本体２ｃに取付けられた取付部材２ｇによってケーブル本体２ｃに対して長手方向への移動が規制される。
【００１２】
ケーブル本体２ｃとチューブ２ｄによってケーブル２には、図２，５に示すように小径部２ａと大径部２ｂが形成される。小径部２ａは、径の小さい部分であって、ケーブル本体２ｃのみから構成される。大径部２ｂは、小径部２ａよりも径が大きい部分であって、ケーブル本体２ｃとチューブ２ｄから構成される。ケーブル２の一端部２ｅは、脚部材１２に取付けられ、ピン１２ａよりも下側に位置する。ケーブル２の一端部２ｆは、ブラケット２２に取付けられ、ピン１６ａよりも下側に位置する。
【００１３】
ガイド部材３，４は、図２に示すように脚部材１２とブラケット２２の間において、シートクッション１１に設けられる。ガイド部材３，４は、ポリアセタールなどの樹脂から成形される。ガイド部材４は、脚部材１２の上方に位置する。ガイド部材４の上端面には、ケーブル２がスライド可能に掛けられる溝状のガイド部４ａが形成される。ケーブル２は、脚部材１２から延出して、ガイド部材４の上端面に掛けられ、パッド１１ａとカバー１１ｃの間をガイド部材３に向けて延出する。
【００１４】
ガイド部材３は、図２に示すようにシートクッション１１の幅方向の一端部近傍に設けられる。図４，５に示すようにガイド部材３の本体部３ａの下端面には、小ガイド部３ｂと大ガイド部３ｃが形成される。小ガイド部３ｂは、ケーブル２の小径部２ａに対応する幅を有し、大ガイド部３ｃは、ケーブル２の大径部２ｂに対応する幅を有する。小ガイド部３ｂの幅は、小径部２ａの直径よりも大きく、かつ大径部２ｂの直径より小さい。大ガイド部３ｃの幅は、小ガイド部３ｂの幅より大きく、かつ大径部２ｂの直径よりも少し大きい。
【００１５】
図４，５に示すように小ガイド部３ｂと大ガイド部３ｃは、直列的に配される。小ガイド部３ｂと大ガイド部３ｃの各幅中心線は、略同一線上に位置する。小ガイド部３ｂと大ガイド部３ｃは、底側の断面が略半円形の溝状に形成される。小ガイド部３ｂの溝深さは、ケーブル２の小径部２ａの直径と略同じで、大ガイド部３ｃの溝深さは、大径部２ｂの直径と略同じである。
【００１６】
図４，５に示すように小ガイド部３ｂと大ガイド部３ｃの間には、小ガイド部３ｂから大ガイド部３ｃに向けて徐々に幅と深さが大きくなる連結部３ｄが形成される。図５，６に示すように小ガイド部３ｂには、ケーブル２の小径部２ａがスライド可能に収納される。大ガイド部３ｃには、通常、大径部２ｂがスライド可能に収納される。
【００１７】
シート１０を図１の使用状態から図２の折り畳み状態にする場合は、シートクッション１１の後部下側等に設けられたレバーを引っ張る。これによりリクライニング装置１８がロック解除され、シートバック１３がシートクッション１１の上に倒れ得る。次に、ロック装置１７がアンカ２３から解除され、アーム１６が付勢部材２４によって上方に回転するように付勢される。シートクッション１１をアーム１６とともにピン１６ａを中心に上方に回転させると、シートクッション１１が床面２０に対して略平行な図２に示す使用位置から、側壁２１に対して略平行な図３に示す格納位置に回転する。
【００１８】
図２，３に示すようにケーブル２の一端部２ｆは、シートクッション１１の回転中心となるピン１６ａよりも下に位置する。そのためシートクッション１１を使用位置から格納位置に回転させると、ケーブル２が一端部２ｆ側に引っ張られる。これによりケーブル２が付勢部材１９に抗して脚部材１２を引っ張り、脚部材１２がピン１２ａを中心に回転する。その結果、脚部材１２がシートクッション１１に対して下方に延出する図２に示す使用位置からシートクッション１１の下面に沿う図３に示す格納位置に回転する。
【００１９】
図３に示すようにケーブル２が一端部２ｆ側に引っ張られると、大径部２ｂがガイド部材３から離間する。一方、小径部２ａは、ガイド部材３の小ガイド部３ｂと大ガイド部３ｃにおいて延出する。シートクッション１１が使用位置から格納位置に回転すると、大径部２ｂもシートクッション１１とともに回転し、側壁２１から離れ、かつアーム１６の下側に露出する。したがって大径部２ｂは、法規等によって露出される部分の対象となる。しかし大径部２ｂは、小径部２ａに比べて径が大きいため、法規によって定める半径（例えば３．２ｍｍ）等よりも径が所定以上に容易に設定され得る。
【００２０】
図２，６に示すようにガイド部材３の近傍には、カバー１１ｃなどの周辺部品が位置する。これら周辺部品は、ガイド部材３よりもシートクッション１１の中心側に位置する。シートクッション１１が使用位置にある場合、大径部２ｂがガイド部材３の大ガイド部３ｃに位置し、小径部２ａが小ガイド部３ｂに位置する。そのため大径部２ｂは、カバー１１ｃなどの周辺部品から離れ、小径部２ａが周辺部品の近傍に位置する。したがって小径部２ａは、大径部２ｂに比べて径が細く、周辺部品に対して干渉し難い。
【００２１】
以上のようにケーブル装置１は、図２に示すように脚部材１２（第二部材）から延出するケーブル２と、シートクッション１１（第一部材）に設けられかつケーブル２がスライド可能に掛けられるガイド部材３を有する。ケーブル２は、脚部材１２側から延出する小径部２ａと、小径部２ａから延出しかつ小径部２ａより径が大きい大径部２ｂを有する。ガイド部材３は、小径部２ａがスライド可能に掛けられかつ大径部２ｂの太さよりも小さい幅を有する小ガイド部３ｂと、小ガイド部３ｂと直列的に配されかつ大径部２ｂがスライド可能に掛けられる幅を有する大ガイド部３ｃを有する。
【００２２】
したがってケーブル２は、小径部２ａと大径部２ｂを有する。そのためケーブル２は、スペースの狭い場所に小径部２ａを有し、径が所定以上であることが好ましい場所に大径部２ｂを有し得る。ガイド部材３は、小ガイド部３ｂと大ガイド部３ｃを有する。そのためガイド部材３は、ケーブル２を好適に保持し得る。例えば図６に示すように小ガイド部３ｂが小径部２ａを保持し、同時に大ガイド部３ｃが大径部２ｂを保持する。これによりケーブル２は、径方向にがたつくことがガイド部材３の小ガイド部３ｂと大ガイド部３ｃによって抑制され得る。
【００２３】
図３に示すようにケーブル２が引っ張られた場合は、大径部２ｂが大ガイド部３ｃから引っ張り出され、小径部２ａが小ガイド部３ｂと大ガイド部３ｃとに位置する。この時、ケーブル２は、小径部２ａが小ガイド部３ｂによって径方向にがたつくことが抑制され得る。そのため例えばガイド部材が大ガイド部のみを有し、小径部が大ガイド部のみに掛けられ、小径部が大ガイド部に対して径方向にがたつく構造に比べて、ケーブル２がガイド部材３に対して径方向にがたつくことが抑制され得る。
【００２４】
またケーブル２は、図２，３に示すように一端部２ｆが乗物本体に取付けられ、乗物本体に移動可能に取付けられたシートクッション１１（第一部材）を乗物本体に対して移動させることでケーブル２が脚部材１２（第二部材）を引っ張り、脚部材１２がシートクッション１１に対して移動する。ケーブル２の大径部２ｂは、ガイド部材３側から乗物本体側に延出する。
【００２５】
したがってシートクッション１１（第一部材）の乗物本体に対する移動に連動して脚部材１２（第二部材）がケーブル２によってシートクッション１１に対して移動する。この時、図３に示すようにシートクッション１１が乗物本体に対して移動するため、乗物本体側に位置するケーブル２の一部がシート１０から露出されやすい。しかし露出されやすい部分に大径部２ｂが位置している。そのため露出される部分を大径部２ｂによって法規等に規定する所定以上の径に容易に設定することができる。
【００２６】
またケーブル２は、図４に示すように小径部２ａと大径部２ｂにおいて延出するケーブル本体２ｃと、大径部２ｂにおいてケーブル本体２ｃの外周に装着されるチューブ２ｄを有する。したがってケーブル本体２ｃの一部にチューブ２ｄを装着することで簡易に大径部２ｂが形成され得る。
【００２７】
（他の実施の形態）
本発明は、上記実施の形態に限定されず、以下の形態等であっても良い。例えば、図２に示す脚部材１２は、シートクッション１１に回転可能に取付けられ、ケーブル装置１が脚部材１２をシートクッション１１に対して回転させる。しかし脚部材がシートクッションに対してスライド可能に取付けられ、ケーブル装置が脚部材をシートクッションに対してスライドさせても良い。
【００２８】
図２に示すケーブル装置１は、シートクッション１１（第一部材）に対して脚部材１２（第二部材）を移動させる。しかしケーブル装置がシートクッション（第一部材）に対して移動可能に取付けられたオットマン等の第二部材を移動させても良い。またはケーブル装置がシートバック（第一部材）に対して移動可能に取付けられたアームレストあるいはテーブルなどの第二部材を移動させても良い。またはケーブル装置がシートクッション（第一部材）に対して回転可能に取付けられたシートバックなどの第二部材を回転させても良い。
【００２９】
図２，３に示すシートクッション１１は、乗物に対して幅方向に回転可能に取付けられる。しかしシートクッションが乗物に対して前方または後方に回転可能に取付けられ、シートクッションの該回転によってケーブルが引っ張られても良い。図２，３に示すケーブル２は、シートクッション１１の乗物本体に対する移動によって引っ張られる。しかしケーブルを引っ張るレバーがシート等に設けられており、ケーブルが該レバーによって引っ張られても良い。
【００３０】
図４に示すガイド部材４は、溝状の小ガイド部３ｂと大ガイド部３ｃを有する。しかし小ガイド部と大ガイド部がそれぞれケーブルの幅方向両側に起立する二つの凸部を有していても良い。図４に示す小ガイド部３ｂと大ガイド部３ｃは、底側の断面が半円形である。しかし小ガイド部と大ガイド部が断面三角形あるいは断面四角形であっても良い、または貫通孔状であっても良い。図４に示す小ガイド部３ｂと大ガイド部３ｃは、それぞれケーブル２の小径部２ａと大径部２ｂを収納し得る形状を有する。しかし小ガイド部と大ガイド部がそれぞれ小径部と大径部の一部のみを収納し得る形状であっても良い。
【００３１】
図４に示すケーブル２は、ケーブル本体２ｃとチューブ２ｄを有し、大径部２ｂがチューブ２ｄによって形成される。しかしケーブルが小径部と大径部を備えるケーブル本体を有し、大径部がケーブル本体によって形成されても良い。ケーブル２は、断面円形であっても良いが、断面多角形等であっても良い。乗物は、自動車、バスなどの車両でも良いが、船舶や航空機などであっても良い。
【符号の説明】
【００３２】
１…ケーブル装置
２…ケーブル
２ａ…小径部
２ｂ…大径部
２ｃ…ケーブル本体
２ｄ…チューブ
３，４…ガイド部材
３ｂ…小ガイド部
３ｃ…大ガイド部
１０…乗物シート
１１…シートクッション（第一部材）
１２…脚部材（第二部材）
１３…シートバック
１５…アームレスト
１６…アーム
【特許請求の範囲】
【請求項１】
乗物シートの第一部材に対して第二部材を移動させるための乗物シート用ケーブル装置であって、
前記第二部材から延出するケーブルと、前記第一部材に設けられかつ前記ケーブルがスライド可能に掛けられるガイド部材を有し、
前記ケーブルは、前記第二部材側から延出する小径部と、前記小径部から延出しかつ前記小径部より径が大きい大径部を有し、
前記ガイド部材は、前記小径部がスライド可能に掛けられかつ前記大径部の太さよりも小さい幅を有する小ガイド部と、前記小ガイド部と直列的に配されかつ前記大径部がスライド可能に掛けられる幅を有する大ガイド部を有する乗物シート用ケーブル装置。
【請求項２】
請求項１に記載の乗物シート用ケーブル装置であって、
前記ケーブルは、一端部が乗物本体に取付けられ、前記乗物本体に移動可能に取付けられた前記第一部材を前記乗物本体に対して移動させることで前記ケーブルが前記第二部材を引っ張り、前記第二部材が前記第一部材に対して移動し、
前記ケーブルの前記大径部は、前記ガイド部材側から前記乗物本体側に延出する乗物シート用ケーブル装置。
【請求項３】
請求項２に記載の乗物シート用ケーブル装置であって、
前記ケーブルは、前記小径部と前記大径部において延出するケーブル本体と、前記大径部において前記ケーブル本体の外周に装着されるチューブを有する乗物シート用ケーブル装置。
【請求項１】
乗物シートの第一部材に対して第二部材を移動させるための乗物シート用ケーブル装置であって、
前記第二部材から延出するケーブルと、前記第一部材に設けられかつ前記ケーブルがスライド可能に掛けられるガイド部材を有し、
前記ケーブルは、前記第二部材側から延出する小径部と、前記小径部から延出しかつ前記小径部より径が大きい大径部を有し、
前記ガイド部材は、前記小径部がスライド可能に掛けられかつ前記大径部の太さよりも小さい幅を有する小ガイド部と、前記小ガイド部と直列的に配されかつ前記大径部がスライド可能に掛けられる幅を有する大ガイド部を有する乗物シート用ケーブル装置。
【請求項２】
請求項１に記載の乗物シート用ケーブル装置であって、
前記ケーブルは、一端部が乗物本体に取付けられ、前記乗物本体に移動可能に取付けられた前記第一部材を前記乗物本体に対して移動させることで前記ケーブルが前記第二部材を引っ張り、前記第二部材が前記第一部材に対して移動し、
前記ケーブルの前記大径部は、前記ガイド部材側から前記乗物本体側に延出する乗物シート用ケーブル装置。
【請求項３】
請求項２に記載の乗物シート用ケーブル装置であって、
前記ケーブルは、前記小径部と前記大径部において延出するケーブル本体と、前記大径部において前記ケーブル本体の外周に装着されるチューブを有する乗物シート用ケーブル装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【公開番号】特開２０１１−１７８１９１（Ｐ２０１１−１７８１９１Ａ）
【公開日】平成２３年９月１５日（２０１１．９．１５）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１０−４１５９９（Ｐ２０１０−４１５９９）
【出願日】平成２２年２月２６日（２０１０．２．２６）
【出願人】（０００２４１５００）トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２３年９月１５日（２０１１．９．１５）
【国際特許分類】
【出願日】平成２２年２月２６日（２０１０．２．２６）
【出願人】（０００２４１５００）トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Ｆターム（参考）】
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