説明

乳剤タンクのパイプ式加熱装置

【課題】電気的な加熱装置を用いることなく、乳剤タンク内の下底部を含むアスファルト乳剤全体を熱効率良く均一に加熱できるようにする。
【解決手段】アスファルトフィニッシャに搭載した乳剤タンク6のパイプ式加熱装置であって、乳剤タンク6内に、熱油が流動する熱油パイプ30を設け、熱油パイプ30は、乳剤タンク6内を上下左右に折れ曲がるように配管され、熱油パイプ30からの放熱により、乳剤タンク6内のアスファルト乳剤19を加熱するように構成した。更に、熱油パイプ30の熱油出口部には、乳剤タンク6の最下底部に沿って配設された下底部用熱油パイプ33が接続され、下底部用熱油パイプ33からの放熱により、乳剤タンク6内の最下底部のアスファルト乳剤19も確実に加熱できるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳剤タンクのパイプ式加熱装置に関するものであり、詳しくは、アスファルトフィニッシャ(舗装機械)等に搭載された乳剤タンクのパイプ式加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、アスファルトフィニッシャよって道路舗装を行う場合、乳剤散布装置によってアスファルト乳剤を施工面に散布している。このように、アスファルト乳剤を施工面に散布することにより、アスファルト混合物と施工面との間に接着力を付与できるほか、防水層を形成する等の効果がある。
【0003】
かかる乳剤散布装置を搭載したアスファルトフィニッシャ、所謂タックペーバが舗装工事を施工する際に広く使用されている。このタックペーバを用いた舗装工事では、機体後方に設けられた乳剤散布装置により、アスファルト乳剤を施工面上に散布し、その上にアスファルト混合物を供給し、これをスクリードで敷き均して舗装する。
【0004】
ところで、アスファルト乳剤は、流動性を良好にして劣化を防止するために、適切な温度で加熱する必要がある。従来の乳剤タンクの加熱装置としては、乳剤タンクの下半部外周面に装着したジャケットの温水室内に、温水循環管路中に配設した加熱手段で加熱された温水を充満させながら流動させることにより、乳剤タンク内のアスファルト乳剤を加熱する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
又、他の従来技術としては、乳剤タンクの下部外周面にジャケットを装着して、乳剤タンクとジャケットとの対向面間の空間部を熱油貯留部に形成すると共に、ジャケットの外底面に装着した電気ヒータ等の加熱手段で熱油貯留部内の熱油を加熱して、この熱油によって乳剤タンク内のアスファルト乳剤を加熱する技術も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−285852号公報
【特許文献2】特開2004−100145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の従来技術は、乳剤タンクの下半部外周面に装着したジャケット内の温水室に温水を導入して、乳剤タンクを加熱するように構成しているので、乳剤タンクの下半部外周面に沿う部分が集中的に加熱され、乳剤タンクの内側中心部分のアスファルト乳剤を加熱することが困難であるうえに、乳剤タンクにおける下部外周側部分と内側中心部分とで温度差が生じて、アスファルト乳剤を均一に加熱することができない。
【0008】
又、ジャケット加熱方式の構造では、乳剤タンク下半部に装着されたジャケットの外周側加熱面積に対して、ジャケットの内周側放熱面積が小さいため、所要の外周側放熱面積を確保するには、ジャケット自体を大きく形成しなければならない。
【0009】
その結果、ジャケットの大径化に伴い、乳剤タンクも大型化するため、乳剤タンク全体
の重量が重くなるという欠点があった。
【0010】
さらに、特許文献2記載の従来技術では、乳剤タンク内のアスファルト乳剤を加熱するための熱源が電気ヒータであるため、電気ヒータに加えて、該電気ヒータの電源を確保するために発電機駆動用の油圧モータや発電機や制御盤などが必要となりコスト高を招く。
【0011】
そこで、電気的な加熱装置を用いることなく、乳剤タンク内の最下底部を含むアスファルト乳剤全体を熱効率良く均一に加熱できるようにするために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は前記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、アスファルト乳剤が貯留された乳剤タンクのパイプ式加熱装置であって、前記乳剤タンク内に、熱油が流動する熱油パイプを設け、該熱油パイプは、上下方向及び左右方向に折れ曲がりながら該乳剤タンクの長手方向に沿って配管され、該熱油パイプからの放熱により乳剤タンク内の内側中心部及び外周内面近傍部を含むアスファルト乳剤全体を満遍なく加熱できるように構成したことを特徴とする乳剤タンクのパイプ式加熱装置を提供する。
【0013】
この構成によれば、乳剤タンク内に配管した熱油パイプに熱油を導入することで、熱油パイプからの放熱により、乳剤タンク内の内側中心部及び外周内面近傍部に至る領域が満遍なく加熱される。
【0014】
請求項2記載の発明は、前記乳剤タンクは底面に傾斜部を有し、該乳剤タンクの最下底部に下底部用熱油パイプが配設され、該下底部用熱油パイプに前記熱油パイプが接続され、前記下底部用熱油パイプからの放熱により乳剤タンク内の最下底部に貯留するアスファルト乳剤を加熱できるように構成したことを特徴とする請求項1記載の乳剤タンクのパイプ式加熱装置を提供する。
【0015】
この構成によれば、熱油パイプに導入された熱油は熱油パイプを流動した後、下底部用熱油パイプに導入される。依って、下底部用熱油パイプからの放熱により乳剤タンク内の最下底部のアスファルト乳剤も加熱される。
【0016】
請求項3記載の発明は、前記熱油は、アスファルトフィニッシャの機構要素を作動させるアクチュエータの駆動によって熱エネルギーが付与されるように構成したことを特徴とする請求項1又は2記載の乳剤タンクのパイプ式加熱装置を提供する。
【0017】
この構成によれば、前記熱油は、アスファルトフィニッシャの機構要素を作動させるアクチュエータの駆動によって熱エネルギーが付与され、該熱油が流動する熱油パイプからの放熱により乳剤タンク内のアスファルト乳剤を加熱する。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の発明によれば、熱油パイプからの放熱により、乳剤タンク内の内側中心部及び外周内面近傍部に至る領域が満遍なく加熱されるので、乳剤タンクの内側中心部のアスファルト乳剤も、外周内面近傍部のアスファルト乳剤と同様に効率良く加熱でき、加えて、乳剤タンクにおける下部外周部と内側中心部との温度差を無くして、乳剤タンク内の全てのアスファルト乳剤を均一かつ効果的に加熱することができる。
【0019】
又、熱油パイプ加熱方式を採用することで、熱油パイプの外周面にアスファルト乳剤が直接接触する。その結果、熱油パイプ加熱方式の本発明はジャケット加熱方式に比して、アスファルト乳剤に対する接触加熱面積(伝熱面積)が広くなるため、それに応じて乳剤
タンクの小型化が可能になり、乳剤タンクの軽量化を図ることができる。
【0020】
請求項2記載の発明によれば、下底部用熱油パイプからの放熱により乳剤タンク内の最下底部のアスファルト乳剤をも加熱できるので、請求項1記載の発明の効果に加えて、アスファルト乳剤の貯留量が少なくなって乳剤タンク内の最下底部のみに残存して、前記熱油パイプによる加熱が困難になった場合でも、前記乳剤タンク内の最下底部に残存するアスファルト乳剤を安定して加熱することができる。
【0021】
請求項3記載の発明によれば、前記熱油は、アスファルトフィニッシャの各種アクチュエータの駆動によって熱エネルギーが付与されるので、請求項1又は2記載の発明の効果に加えて、電気的な加熱装置を用いることなく、アスファルト乳剤を加熱することができ、以て、電気ヒータの電源を確保するための発電機駆動用の油圧モータ等が不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例に適用される乳剤散布装置を備えたアスファルトフィニッシャの側面図。
【図2】本発明の実施例に係る乳剤タンクのパイプ式加熱装置に適用される油圧回路を示す説明図。
【図3】本発明の実施例に係る乳剤タンクのパイプ式加熱装置を示す正面図。
【図4】図3の左側面図。
【図5】図3の右側面図。
【図6】図3の平面図。
【図7】図3のA−A線断面図。
【図8】図3のB−B線断面図。
【図9】乳剤タンクの下底部に下底部用熱油パイプを配設しないパイプ式加熱装置を示す正面図。
【図10】図9の左側面図。
【図11】図9の右側面図。
【図12】図9の平面図。
【図13】図9のA−A線断面図。
【図14】図9のB−B線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、電気的な加熱装置を用いることなく、乳剤タンク内の下底部を含むアスファルト乳剤全体を熱効率良く均一かつ迅速に加熱できるようにするという目的を達成するために、アスファルト乳剤が貯留された乳剤タンクのパイプ式加熱装置であって、前記乳剤タンク内に、熱油が流動する熱油パイプを設け、該熱油パイプは、上下方向及び左右方向に折れ曲がりながら該乳剤タンクの長手方向に沿って配管され、該熱油パイプからの放熱により乳剤タンク内の内側中心部及び外周内面近傍部を含むアスファルト乳剤全体を満遍なく加熱できるように構成したことによって実現した。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の好適な実施例を図1乃至図8に基づいて説明する。図1は、本実施例に係る乳剤散布装置を備えたアスファルトフィニッシャ(以下、「タックペーバ」という。)の側面図である。
【0025】
図1に示すタックペーバ10は、自走式の走行車両1に、アスファルト混合物を収容するホッパ2と、該ホッパ2内のアスファルト混合物を施工面上に送り出す送出し装置3と、該送出し装置3におけるスプレッディングスクリュー3bの前側に設けられた一対のアスファルト乳剤散布用のスプレーバー4A,4Bと、スプレッディングスクリュー3bの後側に設けられた一対のスクリード5A,5Bと、アスファルト乳剤を貯蔵する乳剤タンク6とを備えている。
【0026】
スプレーバー4A,4Bによって、乳剤タンク6内に貯留されたアスファルト乳剤を施工面7上に散布しながら、送出し装置3によって、ホッパ2からのアスファルト混合物をアスファルト乳剤の上へ送り出す。その後、各スクリード5A,5Bによってアスファルト混合物を敷き均して平坦化する。
【0027】
また、送出し装置3は、ホッパ2内のアスファルト混合物を走行車両1の後方へ送るためのバーフィーダ3aと、該バーフィーダ3aによって後方に送り出されて施工面7上に落下したアスファルト混合物を走行車両1の幅方向(図1で紙面に垂直な方向)に広げるスプレッディングスクリュー3bとから成る。
【0028】
スプレーバー4A,4Bとスクリード5A,5Bの夫々の左右の一対は、走行車両1の進行方向の前後に平行に位置をずらして該走行車両1に支持され、且つ、走行車両1の前記幅方向に伸縮自在に設けられ、アスファルト乳剤の散布幅とアスファルト混合物の敷き均し幅とを調節できるように構成されている。
【0029】
次に、本実施例のパイプ式加熱装置に適用される油圧回路の構成例を図2に示す。この加熱装置は、電源装置を用いることなく、タックペーバ10の各種アクチュエータを循環する高温の作動油(熱油)を乳剤タンク6内のパイプに供給し、作動油の熱エネルギーを乳剤タンク6内のアスファルト乳剤と熱交換させることで、アスファルト乳剤を所望の温度に加熱させることを特徴としている。
【0030】
図2において、作動油タンク11内の作動油11aは、エンジン12で駆動する油圧ポンプ13によって所定の流量で所定の油圧に上昇し、油圧回路14を通過して、タックペーバ10の各種機構部品を駆動させるアクチュエータ15に供給される。
【0031】
作動油11aは、アクチュエータ15の駆動エネルギーにより加熱されて温度上昇する。特に、アクチュエータ15をリリーフさせると、作動油11aはリリーフ弁16を通過する。
【0032】
このとき、リリーフ弁16を通過する高圧の作動油11aの油圧エネルギーによって、作動油11aの温度が急上昇する。この作動油11aの高温化は、特に舗装作業開始前に、乳剤タンク6内のアスファルト乳剤19を暖めるために利用できる。また、舗装作業中には、アクチュエータ15の駆動エネルギーによって作動油11aの温度がある程度まで上昇するので、この油温を有効に利用できる。
【0033】
前記アクチュエータ15又はリリーフ弁16を通過した作動油11aは、コントローラ17の制御によって第1の三方切替弁18の油路が切り替えられ、乳剤タンク6内に配設された熱油パイプ30等(下底部用熱油タンク33を含む)又はバイパス油路21へ導かれる。
【0034】
そして、熱油パイプ30等又はバイパス油路21を通過した作動油11aは、コントローラ17の制御によって第2の三方切替弁22の油路を切り替えることで、バイパス油路24を経由して作動油タンク11に直接戻されるか、あるいは、ファン12aの回転で冷却されるオイルクーラ23を通過して、所定の油温に冷却されたのち作動油タンク11に戻される。
【0035】
乳剤タンク6内には、アスファルト乳剤19の温度を計測して該温度情報をコントロー
ラ17へ送信する第1の温度センサ25が設けられている。また、作動油タンク11内には、作動油11aの温度を計測して該温度情報をコントローラ17へ送信する第2の温度センサ26が設けられている。
【0036】
前記構成により、アスファルト乳剤19を常温から目標温度に加熱する場合は、アクチュエータ15を駆動する作動油11aをリリーフ弁16によってリリーフさせて、これにより高温となった作動油11aをリリーフ弁16側から第1の三方切替弁18へ送出する。
【0037】
次に、コントローラ17の制御によって、第1の三方切替弁18を熱油パイプ30の油路側へ切り替えて、高温の作動油11aを熱油パイプ30へ送出する。これによって、熱油パイプ30内の高温の作動油11aの熱エネルギーが乳剤タンク6内のアスファルト乳剤19に熱交換され、該アスファルト乳剤19を加熱して目標温度まで上昇させる。
【0038】
次に、乳剤タンク6内のアスファルト乳剤19が目標温度に達したときは、第1の温度センサ25からの温度情報に基づいて、コントローラ17は、第1の三方切替弁18を切り替えて作動油11aをバイパス油路21に切り替えるが、このとき、作動油11aはアスファルト乳剤19と熱交換作用を行わない。
【0039】
そして、作動油タンク11内の作動油11aの油温が所定の温度以上になったら、第2の温度センサ26の温度情報に基づくコントローラ17からの指令により、第2の三方切替弁22をオイルクーラ23側へ切り替える。これによって、作動油11aはオイルクーラ23を通過して冷却され、作動油タンク11へ戻される。
【0040】
次に、乳剤タンク6内のアスファルト乳剤19が所定値以下の低温である場合は、第1の温度センサ25からの温度情報に基づきコントローラ17は、第1の三方切替弁18を熱油パイプ30の油路側へ切り替えて、高温の作動油11aを熱油パイプ30へ送出する。このため、熱油パイプ30内の高温の作動油11aの熱交換作用により、乳剤タンク6内のアスファルト乳剤19を加熱する。
【0041】
図4及び図5に示すように、乳剤タンク6はその底部に傾斜面6aを有し、該乳剤タンク6内には、前記高温の作動油(以下、「熱油という。」)11aが流入する熱油パイプ30が設けられている。熱油パイプ30は、乳剤タンク6の長手方向(図3における左右方向L)の一端側に熱油入口部31を有し、この熱油入口部31は乳剤タンク6の一端側上面部に配置されている。
【0042】
この熱油パイプ30の熱油入口部31は、図2に示した第1の三方切替弁18に接続されている。又、熱油パイプ30は、乳剤タンク6の長手方向Lの他端側に熱油出口部32を有し、熱油出口部32は乳剤タンク6の他端側前面部に配置されている。
【0043】
熱油パイプ30の中間部は、乳剤タンク6内のアスファルト乳剤19を満遍なく加熱すべく、上下方向及び左右方向に多数回折れ曲がるように形成されている。即ち、熱油パイプ30の中間部は、図3に示す正面視では、多数の逆U字形状部同士を乳剤タンク6の長手方向Lにて相互に連結した立体形状を呈し、又、図7に示す平面視では、互いに点対称な多数のコ字形状部同士を乳剤タンク6の長手方向Lにて相互に連結した立体形状を呈している。
【0044】
更に、熱油パイプ30の中間部は、図8に示す側面視では、多数のU字形状部同士を乳剤タンク6の長手方向Lにて相互に連結した立体形状を呈している。依って、熱油パイプ30の中間部は、乳剤タンク6内の内側中心部及び外周内面に十分近接して至るように、
乳剤タンク6の長手方向Lの略全域に沿って、上下方向及び左右方向に多数回繰り返し反転して配設されている。したがって、熱油パイプ30内を流動する熱油11aからの放熱により、乳剤タンク6内のアスファルト乳剤19を満遍なく加熱できるように構成されている。
【0045】
更に、熱油パイプ30の熱油出口部32には連結パイプ(図示せず)を介して、断面角型の下底部用熱油パイプ33の熱油入口部34が接続され、熱油パイプ30の熱油出口部32から下底部用熱油パイプ33に熱油11aを導入できるように構成されている。この下底部用熱油パイプ33の熱油入口部34は、乳剤タンク6の長手方向Lにおける一端側最下部の前面部に配置されている。又、下底部用熱油パイプ33の熱油出口部35は、乳剤タンク6の長手方向Lにおける他端側最下部の前面部に配置され、該熱油出口部35は、図2に示した第2の三方切替弁22に接続されている。
【0046】
下底部用熱油パイプ33の中間部は、乳剤タンク6の最下底部の長手方向Lに沿って配管されている。依って、下底部用熱油パイプ33内を流動する熱油11aからの放熱により、乳剤タンク6内の最下底部に少量残留するアスファルト乳剤19であっても、之これを熱効率良く加熱できるように構成されている。
【0047】
因みに、図9乃至図14に示すように、乳剤タンク6の下底部に下底部用熱油パイプが配管されていない構造のパイプ式加熱装置の場合は、次のような問題を有する。即ち、乳剤タンク6は、アスファルト乳剤19の残留量が少なくなっても、アスファルト乳剤19を使い切れるように、乳剤タンク6の下底面部が吸い込み口36に向かって下方傾斜するように形成されている。そのため、立体的に折れ曲がる形状の熱油パイプ30を乳剤タンク6内に配管した場合は、熱油パイプ30に形成された曲げ形状部や戻り形状部を配管する関係上、乳剤タンク6の下底部側まで熱油パイプ30を配設することができない。
【0048】
その結果、アスファルト乳剤19の残留量が少なくなったときは、アスファルト乳剤19の液面に対して熱油パイプ30の下端部が突出する状態になり、熱油パイプ30からの放熱によってアスファルト乳剤19を加熱することができなくなる。又、乳剤タンク6の下底部側を熱油パイプ30からの放熱で温めることができないため、アスファルト乳剤19の満タンのときでさえ乳剤タンク6内の上部側の乳剤温度と、乳剤タンク6の下部側の乳剤温度との差が大きくなり、乳剤タンク6内のアスファルト乳剤19全体を均一に温めることができない。
【0049】
その点、本発明では、乳剤タンク6の最下底部に下底部用熱油パイプ33を配設しているので、乳剤タンク6の最下部に残留するアスファルト乳剤19を加熱することができる。
【0050】
又、アスファルト乳剤19が満タンの場合は、乳剤タンク6の上部側の乳剤温度と、乳剤タンク6の下部側の乳剤温度との差が生じないように、乳剤タンク6内のアスファルト乳剤19を均一に温めることができる。
【0051】
叙上の如く本発明によると、乳剤タンク6内に、熱油11aが流動する熱油パイプ30を設け、熱油パイプ30は、乳剤タンク6内を上下左右に折れ曲がるように配管され、熱油パイプ30からの放熱により乳剤タンク6内のアスファルト乳剤19を加熱するように構成したので、熱油パイプ30の全外周面がアスファルト乳剤19に面接触することとも相俟って、アスファルト乳剤19を所望温度に熱効率良く均一かつ迅速に加熱することができる。
【0052】
又、熱油11aが流動する熱油パイプ30の熱油出口部32には、乳剤タンク内6の最下底部に沿って配設された下底部用熱油パイプ33が接続されているので、下底部用熱油パイプ33からの放熱により、乳剤タンク6内の最下底部も確実に加熱することができる。依って、アスファルト乳剤19の残留量が少なくなっても、下底部用熱油パイプ33からの放熱によって、乳剤タンク6の最下部に残存するアスファルト乳剤19を効率良く加熱することができる。
【0053】
又、乳剤タンク6の下底部側を下底部用熱油パイプ33からの放熱で温めることができるため、アスファルト乳剤19が満タンの場合は、乳剤タンク6の上部側の乳剤温度と、乳剤タンク6の下部側の乳剤温度との差が無くなり、乳剤タンク6内のアスファルト乳剤19全体を均一に温めることができる。
【0054】
さらに、本発明は、タックペーバ10における機械作業装置の作動油11aで高温化した熱エネルギーでアスファルト乳剤19を加熱している。従って、発電機や電気ヒータなどの電気的な加熱装置は全く不要となり、タックペーバ10における乳剤加熱装置の構成要素が簡単化するとともにコストダウンが図られる。
【0055】
また、舗装設作業中においては、アクチュエータ15の駆動エネルギーによって温度上昇した熱油11aの熱エネルギーをアスファルト乳剤19に熱交換するので、タックペーバ10の熱エネルギーを有効利用して、全体のエネルギー効率を上げることができる。
【0056】
更に又、本発明は、熱油パイプ30の外周面にアスファルト乳剤19が直接接触するため、ジャケット加熱方式に比し、アスファルト乳剤19に対する接触加熱面積が大幅に広くなる。従って、アスファルト乳剤19に対する接触加熱面積が増大し、これに応じて乳剤タンク6の小型化及び軽量化を図ることができる。
【0057】
以上、本発明の具体的な実施例について説明したが、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。
【0058】
例えば、必要であれば、熱油パイプ30と下底部用熱油パイプ33は互いに並列に接続して、両者の熱油流量を互いに独立に制御するように構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の乳剤加熱装置は、乳剤タンクに熱油パイプを設け、熱油パイプを流動する熱油によって乳剤タンク内のアスファルト乳剤を加熱する方式であれば、タックペーバに限らず、アスファルト乳剤を利用する全ての機械装置に本発明を利用することが可能である。
【符号の説明】
【0060】
5A,5B スクリード
6 乳剤タンク
10 タックペーバ(アスファルトフィニッシャ)
11 作動油タンク
11a 作動油(熱油)
13 油圧ポンプ
14 油圧回路
15 アクチュエータ
16 リリーフ弁
17 コントローラ
18 第1の三方切替弁
19 アスファルト乳剤
22 第2の三方切替弁
30 熱油パイプ
31 熱油入口部
32 熱油出口部
33 下底部用熱油パイプ
34 熱油入口部
35 熱油出口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルト乳剤が貯留された乳剤タンクのパイプ式加熱装置であって、前記乳剤タンク内に、熱油が流動する熱油パイプを設け、該熱油パイプは、上下方向及び左右方向に折れ曲がりながら該乳剤タンクの長手方向に沿って配管され、該熱油パイプからの放熱により、乳剤タンク内の内側中心部及び外周内面近傍部を含むアスファルト乳剤全体を満遍なく加熱できるように構成したことを特徴とする乳剤タンクのパイプ式加熱装置。
【請求項2】
前記乳剤タンクは底面に傾斜部を有し、該乳剤タンクの最下底部に下底部用熱油パイプが配設され、該下底部用熱油パイプには前記熱油パイプが接続され、前記下底部用熱油パイプからの放熱により、前記乳剤タンク内の最下底部に貯留するアスファルト乳剤を加熱できるように構成したことを特徴とする請求項1記載の乳剤タンクのパイプ式加熱装置。
【請求項3】
前記熱油は、アスファルトフィニッシャの機構要素を作動させるアクチュエータの駆動によって熱エネルギーが付与されるように構成したことを特徴とする請求項1又は2
記載の乳剤タンクのパイプ式加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−104180(P2013−104180A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246951(P2011−246951)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(502246528)住友建機株式会社 (346)
【出願人】(590002482)株式会社NIPPO (130)
【Fターム(参考)】