説明

乳化組成物

【課題】 抱水性、保形性が良好な乳化組成物、およびその製造方法の提供。
【解決手段】 炭素数18以上の脂肪酸を構成脂肪酸とする飽和脂肪酸トリグリセリド類を含む油脂を少なくとも含んでなる油相成分を調製する。次に、この油相成分を融解し、その後飽和脂肪酸トリグリセリド類が安定型以外の結晶型の結晶となるように、急速に冷却する。次いでこの油相成分を、飽和脂肪酸トリグリセリド類の少なくとも一部が安定型結晶となるように、再加熱し、再加熱後の油相成分に水性媒体を加えて乳化する。そして、上記調製、融解、冷却、および再加熱工程のうち、少なくとも一工程において、エルカ酸を構成脂肪酸とするショ糖脂肪酸エステルを油相成分に加える。これにより、抱水性および保形性に優れた、安定した乳化組成物が得られる。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
本発明は、飽和脂肪酸トリグリセリド類およびショ糖脂肪酸エステルを含んでなる、抱水性および保形性に優れた乳化組成物の製造方法およびその方法によって得られる乳化組成物に関する。
【0002】
背景技術
食品、化粧品をはじめとする種々の分野において、乳化組成物は、基礎材料の一つとして利用されており、最終製品に所望の物性を付与するため、様々な性質の乳化組成物を製造することが従前検討されている。
【0003】
例えば、特開昭58−134961号公報(特許文献1)には、油脂にショ糖脂肪酸エステルおよび/または高融点トリグリセリドを加えた油性物質を冷却結晶化し、さらには加温融解して、乳化物を得る方法が開示されている。
【0004】
また、特開平10−295271号公報(特許文献2)には、油相に微細な結晶を維持する高融点油脂を5〜100重量%含有することで安定な乳化剤無添加油中水型エマルションを調製する方法が開示されている。
【0005】
国際公開第WO00/57715号公報(特許文献3)には、食用油脂とベヘン酸を含有するトリ飽和脂肪酸グリセリドの混合油を添加してなる含気泡チョコレートおよびその製造法が開示されている。
【0006】
国際公開第WO05/6870号公報(特許文献4)には、油脂、水、および気体のみから実質的になる安定な油中水型エマルションである含水油脂組成物およびその製造法が開示されている。
【0007】
乳化組成物は、その最終製品の形態により求められる性質は無論異なるが、優れた抱水性および保形性を同時に満たすことがしばしば求められ、例えば、クリーム状の菓子類をはじめとする食品、化粧品などでは、長期間において水分を安定に保持し、かつその形態も維持しうる性質が必要とされる。したがって、多量の水相を保持することが可能であり、かつ保形性に優れた乳化組成物を創出することが望まれるといえる。
【0008】
【特許文献1】特開昭58−134961号公報
【特許文献2】特開平10−295271号公報
【特許文献3】国際公開第WO00/57715号公報
【特許文献4】国際公開第WO05/6870号公報
【発明の概要】
【0009】
本発明者らは、今般、飽和脂肪酸トリグリセリド類を含んでなる油脂を用い、飽和脂肪酸トリグリセリド類の結晶型を制御して、さらに、エルカ酸を構成脂肪酸とするショ糖脂肪酸エステルを加えて乳化組成物を製造することにより、多量の水を保持し、かつ長期間その形態も保持しうる乳化組成物が得られるとの知見を得た。本発明はかかる知見に基づくものである。
【0010】
したがって、本発明は、抱水性および保形性が良好な乳化組成物を得ることができる製造方法およびその方法によって得られる乳化組成物の提供をその目的としている。
【0011】
そして、本発明による乳化組成物の製造方法は、
炭素数18以上の脂肪酸を構成脂肪酸とする飽和脂肪酸トリグリセリド類を含む油脂を少なくとも含んでなる油相成分を調製する調製工程と、
該油相成分を融解する融解工程と、
融解工程を経た油相成分を、飽和脂肪酸トリグリセリド類が安定型以外の結晶型の結晶となるように、急速に冷却する冷却工程と、
冷却工程を経た油相成分を、飽和脂肪酸トリグリセリド類の少なくとも一部が安定型結晶となるように、再加熱する再加熱工程と、
再加熱工程を経た油相成分に水性媒体を加えて乳化する乳化工程と
を少なくとも含んでなり、
調製工程、融解工程、冷却工程、および再加熱工程のうち、少なくとも一つの工程において、エルカ酸を構成脂肪酸とするショ糖脂肪酸エステルを油相成分に加えることを特徴とする。
また、本発明による乳化組成物は、前記方法により製造され得るものである。
本発明による乳化組成物は、優れた抱水性、保形性を有する油中水型エマルションであり、多量の水を保持しかつ長期間その形態を保持することが必要な乳化製品の製造において、有利に利用することができる。
【発明の具体的説明】
【0012】
ショ糖脂肪酸エステル
本発明において用いられるショ糖脂肪酸エステルは、その構成脂肪酸をエルカ酸とすることを一つの特徴とする。ショ糖脂肪酸エステルは、食品、化粧品などの分野において乳化剤として広く利用されているが、とりわけ、エルカ酸を構成脂肪酸とするショ糖脂肪酸エステルが、多量の水相を含んだ乳化組成物において、その安定した乳化状態を損なうことなく優れた保形性を付与しうることが見出されたことは意外な事実である。
【0013】
飽和脂肪酸トリグリセリド類
本発明における飽和脂肪酸トリグリセリド類は、炭素数18以上の長鎖飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするものである。本発明の好ましい態様によれば、飽和脂肪酸トリグリセリド類として、炭素数18〜22の長鎖飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするものの利用が好ましい。飽和脂肪酸トリグリセリド類の構成脂肪酸の好ましい例としては、炭素数18のステアリン酸、炭素数20のアラキン酸、および炭素数22のベヘン酸が挙げられる。したがって、本発明の好ましい態様によれば、飽和脂肪酸トリグリセリド類における構成脂肪酸は、ステアリン酸、アラキン酸、およびベヘン酸からなる群から選択される少なくとも一つのものである。
【0014】
本発明における飽和脂肪酸トリグリセリド類は、温度調節により、安定型の結晶、または安定型以外の結晶を取り得る。ここで、本発明における安定型の結晶とはβ型の結晶を意味し、安定型以外の結晶とは、β型以外の結晶、すなわち、不安定なα型結晶、準安定なβ’型結晶などを意味する。
【0015】
油脂
また、油相成分中の、飽和脂肪酸トリグリセライド類以外の油脂としては、飽和脂肪酸トリグリセリド類より融点の低い油脂であれば特に制限されないが、好ましくは常温、より好ましくは20℃において液状の油脂が用いられる。本発明における油脂の好ましい具体例としては、大豆油、コーン油、菜種油、オリーブ油、綿実油などが挙げられる。これらの油脂は、一般に、常温にて固形または半固形状態の油脂(パーム油、カカオ脂など)よりも乳化が困難であるとされているが、本発明にあっては、これら液状油脂を用いても安定な乳化を達成することができる。
【0016】
水性媒体
本発明において、水性媒体としては、乳化が達成される限り特に限定されず、本発明による乳化組成物の用途に応じて、適宜決定されてよい。その具体例としては、水、乳製品、果汁、酢、または酒類などが挙げられる。
【0017】
製造方法
本発明による方法は、上述の通り、調製工程、融解工程、冷却工程、再加熱工程、および乳化工程を含んでなり、これらの工程を通じて飽和脂肪酸トリグリセリドの結晶型を制御し、さらには、上記調製工程、融解工程、冷却工程、および再加熱工程のうち少なくとも一つの工程において、エルカ酸を構成脂肪酸とするショ糖脂肪酸エステルを油相成分に加えることを一つの特徴とする。
【0018】
そして、本発明の好ましい態様によれば、ショ糖脂肪酸エステルは、調製工程、融解工程、または再加熱工程において油相成分に添加される。さらに、本発明のより好ましい態様によれば、ショ糖脂肪酸エステルは調製工程において油相成分に添加される。油相成分におけるショ糖脂肪酸エステルの添加量は、好ましくは0.5〜2重量%である。各工程中における、ショ糖脂肪酸エステルを添加する手法および時期は、飽和脂肪酸トリグリセリド類の結晶型の制御、および乳化を妨げない限り特に限定されない。
【0019】
そして、本発明における方法にあっては、まず、調製工程において、飽和脂肪酸トリグリセリド類を含んでなる油脂を用意する。さらに、上述の通り、この調製工程において、油脂にショ糖脂肪酸エステルを添加して油相成分を調製することが好ましいが、後の融解、冷却、または再加熱工程においてショ糖脂肪酸エステルを添加してもよい。ここで、飽和脂肪酸トリグリセリド類の油相成分中の含有量は2〜10重量%とすることができるが、好ましくは4〜6重量%である。飽和脂肪酸トリグリセリド類がこの範囲にあることで、乳化組成物は安定性に優れ口溶けも良好であり、食品への適用に好適である。このような飽和脂肪酸トリグリセリド濃度は、油脂に飽和脂肪酸トリグリセリドを後添加することにより達成されていてもよく、また、このような飽和脂肪酸トリグリセリドを含む天然体由来の油脂をそのまま用いてもよい。
【0020】
次に、融解工程において、油相成分を融解する。本発明の好ましい態様によれば、融解工程において、油相成分を60〜75℃に加熱して、完全に融解する。
【0021】
次に、冷却工程において、この融解した油相成分を飽和脂肪酸トリグリセリド類が安定型以外の結晶型の結晶となるように急速に冷却する。この冷却工程では、油相成分を好ましくは25℃以下まで、好ましくは5℃/分以上の冷却速度で急冷する。これにより、飽和脂肪酸トリグリセリド類を、好ましくはすべて、不安定型結晶(α型)として結晶化させる。急冷によって得た不安定型結晶(α型)には、数多くの微細結晶が存在し、これらは安定なβ型結晶の核形成サイトとなり得るので、再加熱工程において数多くの微細な安定型結晶を得るのに有利である。
【0022】
本発明による方法にあっては、次に、再加熱工程において、この油相成分を再加熱し、飽和脂肪酸トリグリセリド類の少なくとも一部を安定型結晶とする。この再加熱工程において、油相成分は、好ましくは30〜45℃、より好ましくは35〜40℃にて、好ましくは40分間以上等温保持することにより、飽和脂肪酸トリグリセリド類の少なくとも一部、好ましくは40〜100重量%を微細な安定型結晶(β型)とする。このように効率的に結晶型を安定型(β型)に揃えることにより、飽和脂肪酸トリグリセリド類の添加量を少なく抑えても、安定した乳化が達成される。
【0023】
本発明による方法にあっては、次に、この油相成分に水性媒体を加え、乳化工程を行う。乳化は油相成分と水性媒体とを攪拌することにより行われる。本発明によれば、微細な安定型結晶(β型)を多量に含む結果として、添加する水性媒体が少量である場合のみならず、多量である場合にも安定した乳化を達成することができる。本発明の好ましい態様によれば、したがって、乳化工程において、油相成分と、水性媒体との混合比は、重量基準として80:20〜10:90である。ここで、水性媒体の油相成分への添加は、徐々に行われても、全てを一気に加えることにより行われてもよい。
【0024】
この乳化工程の攪拌処理の温度条件は、再加熱工程後の油相成分および水性媒体を、好ましくは40℃以下にて攪拌するのがよい。この攪拌速度は適宜決定されてよい。また、攪拌方法についても適宜選択されてよいが、例えば、ハンディミキサー、オーバーミキサー、または連続式のホイッピングマシンなどを用い、乳化組成物を含気クリームとして得ることができる。攪拌の際、飽和脂肪酸トリグリセリド類の微細な安定型結晶が、分散質としての水相および気体と分散媒としての油相との界面に均一分散していることが安定な乳化を実現するために好ましい。
【0025】
用途
本発明によれば、乳化組成物の製造において、エルカ酸を構成脂肪酸とするショ糖脂肪酸エステルおよび飽和脂肪酸トリグリセリド類を少量用いることにより、優れた抱水性および保形性を同時に備えた、安定な乳化組成物が提供される。そして、飽和脂肪酸トリグリセリド類以外の油脂成分および水性媒体には様々な液状物を使用することができるので、本技術は、食品、化粧品、乳化香料などの、抱水性、保形性が必要な乳化製品全般の製造において極めて有用である。
【0026】
本発明によれば、上記の乳化組成物を含んでなるまたはこれを原料とする可食物が提供される。その具体例としては、フィリングクリーム、ファットスプレットなどが挙げられる。なお、上記の名称は法令等で限定されるものではない。そして、本発明の別の態様によれば、可食物の製造のための、上記乳化組成物の使用が提供される。
【0027】
また、本発明によれば、上記の乳化組成物を含んでなるまたはこれを原料とする化粧品が提供される。そして、本発明の別の態様によれば、化粧品の製造のための、上記乳化組成物の使用が提供される。
【実施例】
【0028】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
油相部の調製
菜種極度硬化油(旭電化工業製)6重量部、リョートーシュガーエステルER−190(エルカ酸を構成脂肪酸とするショ糖脂肪酸エステル、三菱化学フーズ製)1重量部およびコーン油93重量部の混合物を用意し、70℃に加熱して完全に融解させた。得られた混合物を10℃/分の冷却速度を保ちながら20℃まで急冷し、その後、この混合物を38℃に再加熱し、この温度にて60分間保持した。得られた混合物を油相部として以下の工程に用いた。
なお、菜種極度硬化油の脂肪酸組成は表1に示される通りであった。
【0029】
【表1】

【0030】
ホイップクリームの調製
油相部30重量部に対して70重量部の水を徐々に添加した。水を添加した後、得られた混合物を25℃程度に保ちながらハンディミキサーにて攪拌して乳化し、油中水型ホイップクリームを得た。このホイップクリームを絞り袋に入れ、袋から絞り出した。このホイップクリームを袋から絞り出された状態で5℃および25℃にて保存したところ、変形することなく、袋から絞り出されたときの形状を14日間保っていた。
【0031】
実施例2
ホイップクリームの調製
実施例1にて得た油相部10重量部に対して90重量部の水を徐々に添加した。水を添加した後、得られた混合物を25℃程度に保ちながらハンディミキサーにて攪拌して乳化し、油中水型ホイップクリームを得た。このホイップクリームを絞り袋に入れ、袋から絞り出した。得られたホイップクリームは、絞り出した状態で5℃及び25℃にて保存したところ、変形することなく、14日間袋から絞り出されたときの形状を保っていた。
【0032】
実施例3
ホイップクリームの調製
実施例1にて得られた油相部50重量部に対して50重量部の水を徐々に添加した。水を添加した後、得られた混合物を25℃程度に保ちながらハンディミキサーにて攪拌して乳化し、油中水型ホイップクリームを得た。このホイップクリームを絞り袋に入れ、袋から絞り出した。このホイップクリームを袋から絞り出された状態で5℃および25℃にて保存したところ、変形することなく、14日間袋から絞り出しされた形状を保っていた。
【0033】
実施例4
油相部の調製
菜種極度硬化油(旭電化工業製)4重量部、リョートーシュガーエステルER−190(エルカ酸を構成脂肪酸とするショ糖脂肪酸エステル、三菱化学フーズ製)0.5重量部、およびオリーブ油95.5重量部の混合物を用い、実施例1と同様にして油相部を調製した。
【0034】
油中水型クリームの調製
油相部40重量部に対して濃縮ラズベリー果汁60重量部を徐々に添加した。濃縮ラズベリー果汁を添加した後、得られた混合物を、品温を30℃程度に保ちながらハンディミキサーにて攪拌して乳化し、油中水型乳化組成物を得た。この乳化組成物45重量部を、ファットクリーム(オリーブ油40重量部、砂糖40重量部、全粉乳19.5重量部、レシチン0.5重量部)55重量部に添加し、品温を30℃に保ちながら攪拌混合して油中水型クリームを得た。この油中水型クリームは水相部と油相部が分離することなく、良好な乳化状態を保っていた。
【0035】
チョコレート製品の調製
ミルクチョコレート(明治製菓製)を溶融し、テンパリングした。このミルクチョコレートを樹脂型に流し込み、この樹脂型を反転して余分なミルクチョコレートを落下させた。この樹脂型をその内壁にミルクチョコレートが付着した状態にて冷却し、樹脂型の内壁にシェルチョコレートを形成させた。このシェルチョコレートに上記油中水型クリームを流し込み、さらに、ボトムチョコレートとして、テンパリングしたミルクチョコレート(明治製菓製)を注入した。これを冷却固化し、内部のチョコレートを樹脂型から剥離して、油中水型クリームをセンター部分に含むチョコレートを得た。このチョコレートは、センター部分が良好な乳化状態を保ち、みずみずしい風味であった。
【0036】
実施例5
油中水型クリームの調製
ファットクリーム(オリーブ油38重量部、砂糖40重量部、全粉乳19重量部、レシチン0.5重量部、菜種極度硬化油2重量部、リョートーシュガーエステルER−190 0.5重量部)を70℃に加熱して完全に融解させ、その後、10℃/分の冷却速度を保ちながら20℃まで急冷した。このファットクリームを38℃まで再加熱し、この温度にて60分間保持した。このファットクリーム88重量部に対して濃縮ラズベリー果汁12重量部を徐々に添加した。濃縮ラズベリー果汁を添加した後、得られた混合物を、品温を30℃程度に保ちながらハンディミキサーにて攪拌して乳化し、油中水型クリームを得た。この油中水型クリームは、水相部と油相部とが分離することなく、良好な乳化状態を保っていた。
【0037】
チョコレート製品の調製
ミルクチョコレート(明治製菓製)を溶融し、テンパリングした。このミルクチョコレートを樹脂型に流し込み、この樹脂型を反転して余分なミルクチョコレートを落下させた。この樹脂型をその内壁にミルクチョコレートが付着した状態にて冷却し、樹脂型の内壁にシェルチョコレートを形成させた。このシェルチョコレートに上記油中水型クリームを流し込み、さらに、ボトムチョコレートとして、テンパリングしたミルクチョコレート(明治製菓製)を注入した。これを冷却固化し、内部のチョコレートを樹脂型から剥離して、油中水型クリームをセンター部分に含むチョコレートを得た。このチョコレートは、センター部分が良好な乳化状態を保ち、みずみずしい風味であった。
【0038】
参考例1
油相部の調製
リョートーシュガーエステルER−190の代わりにリョートーシュガーエステルS−170(ステアリン酸を構成脂肪酸とするショ糖脂肪酸エステル、三菱化学フーズ製)を使用し、実施例1と同様の手法により油相部を調製した。
ホイップクリームの調製
上記油相部を使用し、実施例1と同様の手法によりホイップクリームの調製を試みたところ、乳化攪拌工程において油相部と水が分離し、ホイップクリームを調製することができなかった。
【0039】
参考例2
油相部の調製
リョートーシュガーエステルER−190の代わりにリョートーポリグリエステルER−60D(エルカ酸を構成脂肪酸とするポリグリセリン脂肪酸エステル、三菱化学フーズ製)を使用し、実施例1と同様の手法により油相部を調製した。
【0040】
ホイップクリームの調製
上記油相部を使用し、実施例1と同様の手法により、油中水型ホイップクリームを調製した。このホイップクリームを絞り袋に入れ、袋から絞り出した。このホイップクリームを袋から絞り出された状態で5℃および25℃にて保存したところ、両温度において1日にて変形した。
【0041】
参考例3
油相部の調製
リョートーシュガーエステルER−190の代わりにSYグリスターPO−3S(オレイン酸を構成脂肪酸とするポリグリセリン脂肪酸エステル、阪本薬品製)を使用し、実施例1と同様の手法により油相部を調製した。
【0042】
ホイップクリームの調製
上記油相部を使用し、実施例1と同様の手法によりホイップクリームの調製を試みたところ、乳化攪拌工程において油相部と水とが分離し、ホイップクリームを調製することができなかった。
【0043】
参考例4
油相部の調製
リョートーシュガーエステルER−190の代わりにSYグリスターNE−750(エルカ酸を構成脂肪酸とするポリグリセリン脂肪酸エステル、阪本薬品製)を使用し、実施例1と同様の手法により油相部を調製した。
【0044】
ホイップクリームの調製
上記油相部を使用し、実施例1と同様の手法により、油中水型ホイップクリームを調製したこのホイップクリームを絞り袋に入れ、袋から絞り出した。このホイップクリームを袋から絞り出した状態で5℃および25℃にて保存したところ、5℃では4日にて変形し、25℃では1日にて変形した。
【0045】
参考例5
油相部の調製
リョートーシュガーエステルER−190 1重量部およびコーン油99重量部の混合物を38℃に保持し、油相部の調製を行った。
ホイップクリームの調製
この油相部を使用し、実施例1と同様の手法により、油中水型ホイップクリームを得た。このホイップクリームを絞り袋に入れ、袋から絞り出した。このホイップクリームを袋から絞り出された状態で5℃および25℃にて保存したところ、ホイップクリームは両温度において1日で変形した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳化組成物の製造方法であって、
炭素数18以上の脂肪酸を構成脂肪酸とする飽和脂肪酸トリグリセリド類を含む油脂を少なくとも含んでなる油相成分を調製する調製工程と、
該油相成分を融解する融解工程と、
前記融解工程を経た油相成分を、前記飽和脂肪酸トリグリセリド類が安定型以外の結晶型の結晶となるように、急速に冷却する冷却工程と、
前記冷却工程を経た油相成分を、前記飽和脂肪酸トリグリセリド類の少なくとも一部が安定型結晶となるように、再加熱する再加熱工程と、
前記再加熱工程を経た油相成分に水性媒体を加えて乳化する乳化工程と
を少なくとも含んでなり、
前記調製工程、融解工程、冷却工程、および再加熱工程のうち、少なくとも一つの工程において、エルカ酸を構成脂肪酸とするショ糖脂肪酸エステルを前記油相成分に加えることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記ショ糖脂肪酸エステルが、前記調製工程、融解工程、または再加熱工程において前記油相成分に添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記油脂が20℃において液状である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法により製造され得る、乳化組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の乳化組成物を含んでなるまたは原料とする、可食物。

【公開番号】特開2006−230352(P2006−230352A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−53325(P2005−53325)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000006091)明治製菓株式会社 (180)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(593204214)三菱化学フーズ株式会社 (45)
【Fターム(参考)】