説明

乳房撮影定位装置

【課題】放射線源と放射線検出部との間に、生検針とその保持部材、スポット撮影用の小サイズ圧迫板等を配置したまま被検体の乳房のステレオ撮影を行う場合であっても、放射線量の検出に最適な測定位置を選択することができる乳房撮影定位装置を提供する。
【解決手段】マンモグラフィ装置20は、固体検出器60の検出面上にある複数の測定位置から少なくとも1つの放射線量測定位置を選択する測定位置選択部80と、選択された少なくとも1つの放射線量測定位置で、固体検出器60により検出された放射線Xrayの線量に基づいて放射線源30から曝射される放射線量を制御する放射線源制御部76とを備える。そして、測定位置選択部80は、放射線Xrayの線量の検出値が閾値以下である測定位置を、放射線量測定位置から除外する測定的位置除外部96を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物である乳房(マンモ)の生検部位に生検針を刺入して組織の一部を採取する乳房撮影定位装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野においては、病気の診断等のため、病変部位の組織を採取して精密な検査を行うことを目的としたバイオプシ装置が開発されている。
【0003】
特許文献1に開示されたシステムでは、被検体のマンモの放射線画像を取得するマンモグラフィ装置に対してバイオプシ装置を組み込むように構成され、撮影台と圧迫板との間にマンモをポジショニングし、その状態でマンモを2方向から撮影することでステレオ画像情報を得る。これにより、その画像情報に基づいて生検部位の位置情報を取得し、該位置情報に従って生検針を生検部位まで刺入し、生検部位の組織の一部を採取することができる。
【0004】
また、かかるバイオプシ装置(以下、乳房撮影定位装置という。)を用いて放射線画像を得る場合、被検体の放射線量を最小にしながらも良好な放射線画像品質を確保する必要がある。従って、被検体における関心領域の適切な放射線画像情報を取得するためには、該関心領域に所望の量の放射線が曝射されるように曝射制御条件を設定する必要がある。そこで、被検体を透過した放射線量の検出結果に基づき、放射線源から曝射される放射線量を制御する自動露出制御(AEC、Automatic Exposure Control)システムを備える放射線画像撮影装置が提案されている。特に、放射線検出部に複数のAECセンサを配設し、放射線が被検体を透過する位置範囲内にあるAECセンサのみを選択的に用いると、より好適なAECが実現できる。
【0005】
特許文献2に開示されたX線撮影装置では、圧迫板の下面にタッチパネルを設けておき、該タッチパネルに加わる圧力をモニタすることで、乳房が配置されている位置範囲を検出し、その位置範囲内にあるAECセンサのみを選択する。これにより、自動的に被検体のサイズを検出して最適な位置に配設されたAECセンサを選択することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−201749号公報
【特許文献2】特開平8−238237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、放射線源と放射線検出部との間に、生検針とその保持部材、スポット撮影用の小サイズ圧迫板等を配置したまま被検体の乳房のステレオ撮影を行う場合がある。この場合、放射線が被検体の乳房を透過する位置範囲内にあるAECセンサの位置と、生検針等が備える金属部品の形状が放射線受像器に写り込む位置とが重なるときは、該AECセンサは被検体の乳房を透過すべき本来の放射線量を適切に検出できないため、その結果、AECが十分に機能しない場合が生じ得る。このように、上述の場合では、特許文献2に係る装置によっても好適なAECが実現できない可能性がある。
【0008】
本発明は、前記の課題を解決するためになされたものであり、放射線源と放射線検出部との間に、生検針とその保持部材、スポット撮影用の小サイズ圧迫板等を配置したまま被検体の乳房のステレオ撮影を行う場合であっても、放射線量の検出に最適な測定位置を選択することができる乳房撮影定位装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、被検体の乳房に放射線を曝射し放射線画像を撮影する撮影部と、前記被検体の乳房に刺入する生検針と、前記生検針を保持する生検針保持部とを有する、前記被検体の乳房の生検部位に前記生検針を刺入して組織の一部を採取する乳房撮影定位装置に関する。
【0010】
前記撮影部は、前記被検体の乳房を圧迫保持する圧迫板と、回転軸を中心として回転可能に支持された、前記被検体の乳房に放射線を曝射する放射線源と、前記被検体の乳房を透過した前記放射線の画像情報を検出する放射線検出部と、前記放射線検出部の検出面上にある複数の測定位置から少なくとも1つの放射線量測定位置を選択する放射線量測定位置選択部と、前記放射線量測定位置選択部により選択された前記少なくとも1つの放射線量測定位置で、前記放射線検出部により検出された前記放射線の線量に基づいて前記放射線源から曝射される放射線量を制御する放射線源制御部と、を備え、前記放射線量測定位置選択部は、前記放射線の線量の検出値が閾値以下である前記測定位置を、前記放射線量測定位置から除外する測定的位置除外部を備えることを特徴とする。
【0011】
また、前記放射線量測定位置選択部は、各前記検出値に重み付け係数を乗じた値を前記測定的位置除外部に供給する重み付け係数付与部をさらに備えることが好ましい。
【0012】
また、前記重み付け係数付与部は、前記放射線源の回転角度に応じた前記重み付け係数を乗じることが好ましい。あるいは、前記重み付け係数付与部は、前記乳房のポジショニングに応じた前記重み付け係数を乗じることが好ましい。
【0013】
また、前記撮影部は、前記放射線源の位置および前記複数の測定位置に関する撮影位置情報を取得する撮影位置情報取得部と、前記生検針、前記生検針保持部又は前記圧迫板の三次元位置に関する放射線遮蔽部材位置情報を取得する放射線遮蔽部材位置情報取得部と、をさらに備え、前記放射線量測定位置選択部は、前記撮影位置情報取得部により取得された前記撮影位置情報および前記放射線遮蔽部材位置情報取得部により取得された前記放射線遮蔽部材位置情報に基づいて、前記生検針、前記生検針保持部又は前記圧迫板の一部若しくは全部を構成する放射線遮蔽部材によって前記検出面上に生成される予定の前記放射線の曝射に係る投影像と、前記複数の測定位置との重複が発生するか否かについて判定し、前記複数の測定位置のうち前記重複が発生すると判定した放射線量測定位置を除外する推定的位置除外部をさらに備えることが好ましい。
【0014】
さらに、前記撮影部は、前記推定的位置除外部に基づきすべての前記複数の測定位置が除外されると判断されたときは前記撮影を停止する撮影停止指示部と、前記撮影停止指示部により前記撮影が停止された旨を警告する警告部と、をさらに有することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る乳房撮影定位装置によれば、放射線検出部の検出面上にある複数の測定位置から少なくとも1つの放射線量測定位置を選択する際、放射線の線量の検出値が閾値以下である測定位置を放射線量測定位置から除外する測定的位置除外部を設けたので、低い検出値を示す測定位置を生検針等の映り込みがあるとして除外できる。これにより、放射線源と放射線検出部との間に、生検針とその保持部材、スポット撮影用の小サイズ圧迫板等を配置したまま被検体の乳房のステレオ撮影を行う場合であっても、放射線量の検出に最適な測定位置を選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態のマンモグラフィ装置の斜視説明図である。
【図2】図1に示すマンモグラフィ装置における撮影台の内部構成を示す要部説明図である。
【図3】図2に示す撮影台の内部構成を示す一部省略斜視図である。
【図4】図1に示すマンモグラフィ装置を構成する撮影部ブロック図である。
【図5】図1に示すマンモグラフィ装置を構成するバイオプシハンド部の駆動制御回路ブロック図である。
【図6】本実施形態のマンモグラフィ装置の動作フローチャートである。
【図7】測定位置選択部の処理を示すフローチャートである。
【図8】推定的位置除外ステップのフローチャートである。
【図9】図9Aおよび図9Bは、本実施形態のマンモグラフィ装置に係る撮影位置情報の具体例を示す図である。
【図10】本実施形態のマンモグラフィ装置に係る放射線遮蔽部材位置情報の具体例を示す図である。
【図11】放射線の曝射によって形成される、放射線遮蔽部材の投影像のY軸方向断面図(X−Z平面図)である。
【図12】図12Aは、ステレオ撮影を行う場合における正面撮影位置からの乳房28の正視図である。図12Bは、図12Aで示すステレオ撮影によって形成され得る放射線画像の模式図である。
【図13】本実施形態のマンモグラフィ装置に係るステレオ撮影の説明図である。
【図14】本実施形態のマンモグラフィ装置に係る警告部の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本実施形態のマンモグラフィ装置20の斜視説明図である。
【0018】
乳房撮影定位装置としてのマンモグラフィ装置20は、立設状態に設置される基台22と、基台22の略中央部に配設された回転軸24に固定されるアーム部材26と、被検体27の乳房28(検査対象物、図2)に対して放射線Xrayを曝射する放射線源30(図4)を収納し、アーム部材26の一端部に固定される放射線源収納部32と、乳房28を透過した放射線Xrayを検出する固体検出器60(放射線検出部、図2、図3)が収納され、アーム部材26の他端部に固定される撮影台36と、撮影台36に対して乳房28を圧迫して保持する圧迫板38と、圧迫板38に装着され乳房28の生検部位から必要な組織を採取するバイオプシハンド部40とを備える。なお、基台22には、被検体27の撮影部位、撮影方向等の撮影情報、被検体27のID情報等を表示するとともに、必要に応じてこれらの情報を設定可能な表示操作部42が配設される。
【0019】
放射線源収納部32および撮影台36を連結するアーム部材26は、回転軸24を中心として回転することで、被検体27の乳房28に対する撮影方向が調整可能に構成される。また、放射線源収納部32は、ヒンジ部35を介してアーム部材26に連結されており、矢印θ方向に撮影台36とは独立に回転可能に構成される。圧迫板38は、アーム部材26に連結された状態で放射線源収納部32および撮影台36間に配設されており、矢印Z方向に変位可能に構成される。
【0020】
圧迫板38には、バイオプシハンド部40を用いた組織採取のための開口部44が形成される。バイオプシハンド部40は、圧迫板38に固定されたポスト46と、ポスト46に一端部が軸支され、圧迫板38の面に沿って回転可能な第1アーム48と、第1アーム48の他端部に一端部が軸支され、圧迫板38の面に沿って回転可能な第2アーム50とを備える。第2アーム50の他端部には、矢印Z方向に移動可能な生検針52が装着される。生検針52は、図2に示すように、乳房28の生検部位54の組織を吸引して採取する採取部56を有する。生検針52の採取部56は、バイオプシハンド部40の第1アーム48および第2アーム50を圧迫板38の面に沿ったX−Y平面内で移動させるとともに、生検針52を矢印Z方向に移動させることにより、生検部位54の近傍に配置することができる。
【0021】
図2は、マンモグラフィ装置20における撮影台36の内部構成を示す要部説明図であり、撮影台36および圧迫板38間に被検体27の撮影部位である乳房28を配置した状態を示す。なお、参照符号29は、被検体27の胸壁を示す。
【0022】
撮影台36の内部には、放射線源収納部32に内蔵された放射線源30から曝射された放射線Xrayに基づいて撮像された放射線画像情報を蓄積し、電気信号として出力する固体検出器60と、固体検出器60に蓄積記録された放射線画像情報を読み取るために、固体検出器60に読取光を照射する読取光源部62とが収納される。さらに、撮影台36の内部には、放射線Xrayの曝射制御条件を決定するため、乳房28および固体検出器60を透過した放射線Xrayの放射線量を検出する複数の放射線量情報検出器(以下、AECセンサ64という)と、固体検出器60に蓄積されている不要電荷を除去するために、固体検出器60に消去光を照射する消去光源部66とが収納される。
【0023】
固体検出器60は、直接変換方式且つ光読出方式の放射線固体検出器であって、乳房28を透過した放射線Xrayに基づく放射線画像情報を静電潜像として蓄積し、読取光源部62からの読取光により走査されることで、静電潜像に応じた電流を発生する。
【0024】
固体検出器60は、例えば、特開2004−154409号公報に開示された構造のものを用いることができ、具体的には、ガラス基板上に形成され、放射線Xrayを透過する第1導電層と、放射線Xrayが曝射されることで電荷を発生する記録用光導電層と、第1導電層に帯電される潜像極性電荷に対して略絶縁体として作用する一方、潜像極性電荷と逆極性の輸送極性電荷に対して略導電体として作用する電荷輸送層と、読取光が照射されることで電荷を発生して導電性を呈する読取用光導電層と、放射線Xrayを透過する第2導電層とを順に積層して構成される。記録用光導電層と電荷輸送層との界面には、蓄電部が形成される。
【0025】
第1導電層および第2導電層は、それぞれ電極を構成する。第1導電層の電極は、二次元状の平坦な平板電極とされ、第2導電層の電極は、記録される放射線画像情報を画像信号として検出するための所定の画素ピッチからなる多数の線状電極として構成される。線状電極の配列方向が主走査方向、線状電極の延在する方向が副走査方向に対応する。
【0026】
読取光源部62は、例えば、複数のLEDチップを一列に並べて構成されるライン光源と、ライン光源から出力された読取光を固体検出器60上に線状に照射させる光学系とを有し、固体検出器60の第2導電層である線状電極の延在方向と直交する方向にLEDチップが配列されたライン光源を前記線状電極の延在方向(図3の矢印C方向)に移動させることで固体検出器60の全面を露光走査する。
【0027】
消去光源部66は、図3に示すように、短時間で発光/消光し、且つ、残光の非常に小さいLEDチップ68をパネル70上に多数配列して構成される。なお、パネル70は、固体検出器60と平行に配置された状態で撮影台36に収納される。
【0028】
AECセンサ64は、図2および図3に示すように、センサ基板72上に複数(本実施形態の場合、16個)配設されており、消去光源部66を構成するパネル70に形成された孔部73から固体検出器60方向を指向している。なお、各AECセンサ64は、該孔部73からAECセンサ64側に向けて、放射線源30からの放射線Xray方向に沿って延出される角形の筒状部材(不図示)で囲繞した状態で配置される。
【0029】
このようなAECセンサ64は、撮影台36上に乳房28が位置決め固定された状態で、該乳房28に対応するようにしてセンサ基板72上に配列される(図3参照)。
【0030】
図4は、マンモグラフィ装置20を構成する撮影部ブロック図である。
【0031】
マンモグラフィ装置20の制御回路は、放射線源収納部32に収納され、曝射スイッチ74の操作によって放射線Xrayを放出する放射線源30を制御する放射線源制御部76と、撮影条件等を入力設定可能な表示操作部42と、入力設定された前記撮影条件に基づいて放射線源30の位置や回転角度、撮影台36の位置等を駆動制御する駆動制御部78と、複数のAECセンサ(放射線量情報検出器)64によって検出した放射線Xrayの放射線量に基づき、AECに用いるのに適した少なくとも1つ以上のAECセンサ64を選択する測定位置選択部(放射線量測定位置選択部)80と、AECセンサ64によって検出した放射線Xrayの単位時間当たりの放射線量に基づき、放射線源30による放射線Xrayの適切な曝射時間を算出し、曝射制御条件として放射線源制御部76に供給する曝射時間算出部82とを備える。
【0032】
また、マンモグラフィ装置20の制御回路は、固体検出器(放射線検出部)60によって検出された放射線画像情報(画像情報)に基づいて放射線画像を形成する放射線画像形成部84と、前記放射線画像を表示する表示部86とを備える。このように、固体検出器60は、放射線源30から曝射される放射線を検出し放射線画像を生成する放射線画像生成手段として機能する。なお、表示部86には、測定位置選択部80によって推定された乳腺位置を示す位置情報、例えば、AECセンサ64を表す画像が放射線画像に重畳して表示される。
【0033】
さらに、マンモグラフィ装置20の制御回路は、各AECセンサ64からの各検出値(放射線量情報)に、重み付け係数を乗じる重み付け係数付与部88と、表示操作部42から供給される撮影位置情報(放射線源30の位置や回転角度、撮影台36の位置等を含み、駆動制御部78に供給される情報と同一である。)を取得する撮影位置情報取得部90と、表示操作部42から供給される放射線遮蔽部材位置情報(生検針52、バイオプシハンド部40および圧迫板38の三次元位置を決定する情報である。具体的には、バイオプシハンド部40の第1アーム48若しくは第2アーム50の回転角や、撮影台36若しくは圧迫板38の位置等を含み、駆動制御部78に供給される情報と同一である。)を取得する放射線遮蔽部材位置情報取得部92とを備える。
【0034】
ここで、放射線遮蔽部材とは、被検体27と比べて放射線透過率が相対的に低い、金属等の部材をいう。
【0035】
さらに、測定位置選択部80は、撮影位置情報取得部90から供給される撮影位置情報と、放射線遮蔽部材位置情報取得部92から供給される撮影位置情報とに基づき、生検針52、バイオプシハンド部(生検針保持部)40又は圧迫板38の一部若しくは全部を構成する放射線遮蔽部材によって固体検出器60上に生成される予定の放射線源30から放射線Xrayを曝射する場合における投影像と、各AECセンサ64の位置に対応する領域と、の重複が発生するか否かについて判定し、前記領域の重複が発生すると判定した放射線量測定位置を除外する推定的位置除外部94と、複数のAECセンサ64の検出値が閾値以下であるAECセンサ64を除外する測定的位置除外部96と、複数の各AECセンサ64のうちAECに使用する少なくとも1つ以上のAECセンサ64を選択する位置選択部98と、を備える。
【0036】
さらに、マンモグラフィ装置20の制御回路は、推定的位置除外部94に基づきすべての前記複数の測定位置が除外されるものと判断されたときは撮影を停止する撮影停止指示部99と、撮影停止指示部99により前記撮影が停止された旨を警告する警告部100と、を備える。
【0037】
以上のように、本実施形態に係るマンモグラフィ装置20は、放射線量情報検出器であるAECセンサ64によって検出される放射線量に基づき、測定位置選択部80で最適な位置に配設されたAECセンサ64を選択するとともに、放射線源制御部76で放射線源30の制御を行うAEC(自動露出制御)システムとして構成される。
【0038】
図5は、マンモグラフィ装置20を構成するバイオプシハンド部40(図1参照)の駆動制御回路ブロック図である。
【0039】
マンモグラフィ装置20は、管電流、管電圧、放射線源30に設定されるターゲットやフィルタの種類、放射線Xrayの曝射線量、曝射時間等の撮影条件を設定する撮影条件設定部102と、これらの撮影条件に従って放射線源30を駆動制御する放射線源制御部76と、バイオプシハンド部(生検針保持部)40を介して生検針52を所定位置に移動させる生検針駆動制御部104と、圧迫板38を矢印Z方向に移動させる圧迫板駆動制御部106と、乳房28を透過した放射線Xrayを検出して画像情報に変換する固体検出器60を制御する検出器制御部108と、固体検出器60により変換された画像情報を記憶する画像情報記憶部110と、画像情報を処理することで生検部位54を自動検出するCAD(Computer Aided Diagnosis)処理部112と、自動検出された生検部位54を含む乳房28の放射線画像を表示する表示部86とを備える。
【0040】
また、マンモグラフィ装置20は、表示部86に表示された放射線画像から、マウス等のポインティングデバイスを用いて生検部位54を選択する生検部位選択部114と、取得した画像情報に対する選択された生検部位54の位置情報を算出する生検部位位置情報算出部116と、生検針52の移動可能範囲に対する乳房28の必要な移動量、あるいは、生検部位54に対する生検針52の移動量を算出する移動量算出部118とを備える。
【0041】
本実施形態のマンモグラフィ装置20は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、そのワークフローおよび装置動作につき、図6に示すフローチャートに従って説明する。
【0042】
[ステップS1]
先ず、技師は、撮影条件設定部102を用いて、被検体27の年齢、性別、体型、被検体識別番号等に係る被検体情報、放射線画像情報の撮影条件、撮影方法、バイオプシハンド部40の移動を制限した際の移動制限量、生検針52の長さ等の処理条件を設定する。なお、これらの処理条件は、マンモグラフィ装置20の表示操作部42に表示して確認することができる。
【0043】
撮影条件設定部102により設定された処理条件のうち、放射線源30の管電流、管電圧、放射線Xrayの曝射線量、曝射時間等の撮影条件は、放射線源制御部76に設定される。また、処理条件のうち、SID、ステレオ角度等の幾何学的撮影条件は、駆動制御部78に供給され、所定の駆動動作を行う。
【0044】
さらに、バイオプシハンド部40の移動制限量や生検針52の長さに係る情報は、生検針駆動制御部104に設定される。
【0045】
[ステップS2]
次いで、技師は、指定された撮影方法に従い、被検体27の乳房28のポジショニングを行う。本実施例においては、技師はスカウト撮影の設定を行う。なお、スカウト撮影とは、放射線源収納部32を回転させることなく、放射線Xrayの光軸が撮影台36に対して法線方向となるように設定して行う撮影である。
【0046】
図1に示すように乳房28の撮影を行う場合には、アーム部材26を回転軸24を中心に所定角度回転させ(以下、当該角度を「ステレオ角度」という。)、所定の角度位置に設定する。さらに、マンモグラフィ装置20に対して被検体27の右側の乳房28を位置決めする。この場合、右側の乳房28を撮影台36の載置面上に載置した後、圧迫板38を押し下げ、撮影台36および圧迫板38間に乳房28を保持させる(図2参照)。すなわち、右側の乳房28の外側(右腕側)を撮影台36に当てた状態で、内側(左の乳房28側)から圧迫板38を押圧して保持する。
【0047】
[ステップS3]
次いで、技師は、乳房28に曝射する放射線Xrayの放射線量を少なく設定することで、注目部位である乳腺領域での曝射制御条件を決定する曝射(以下、「プレ曝射」という)を行う。技師が曝射スイッチ74を押下すると乳房28に放射線Xrayが曝射され、その後自動的に曝射制御条件がメモリ(不図示)に保持される。これにより、技師はマンモグラフィ装置20の内部処理を意識することなく、好適なAECのために必要な設定を行うことができる。
【0048】
以下、ステップS3に対応するマンモグラフィ装置20の動作を説明する。
【0049】
AECセンサ64は、圧迫板38、乳房28および固体検出器60を透過した放射線Xrayの放射線量を検出し、測定位置選択部80に供給する。測定位置選択部80は、AECセンサ64によって所定のサンプリングタイム毎に検出された放射線Xrayの放射線量から単位時間当たりの放射線量を算出し、その放射線量に基づいて乳腺位置近傍のAECセンサ64を選択する。すなわち、測定位置選択部80は、センサ基板72上に配列された複数のAECセンサ64のうち、最小の放射線量を検出するものを選択して乳腺位置を推定することにより、所定の放射線量測定位置として乳線密度が最も大きい位置を乳腺位置(関心領域)として検出することができる。
【0050】
表示操作部42で入力設定された撮影位置情報は駆動制御部78に供給され、放射線源30の位置や回転角度、撮影台36の位置等の駆動制御がなされる。一方、該撮影位置情報は撮影位置情報取得部90にも供給され、その後に測定位置選択部80に供給される。
【0051】
また、表示操作部42で入力設定された生検針位置情報は駆動制御部78に供給され、第1アーム48や第2アーム50の回転角度、圧迫板38の位置等の駆動制御がなされる。
【0052】
さらに、前記生検針位置情報は放射線遮蔽部材位置情報として放射線遮蔽部材位置情報取得部92にも供給され、その後に測定位置選択部80に供給される。
【0053】
図7は、測定位置選択部80の処理を示すフローチャートである。測定位置選択部80は、この手順に従って複数のAECセンサ64のうち好適な測定位置を選択する。ここで行われる測定位置の選択方法は、推定的位置除外ステップS31と、測定的位置除外ステップS32と、位置選択ステップS33との3つのステップから構成される。
【0054】
図8は、推定的位置除外ステップS31のフローチャートであり、推定的位置除外部94の処理を示す。
【0055】
先ず、撮影位置情報と放射線遮蔽部材位置情報が入力される(S311)。ここで、撮影位置情報とは、撮影位置情報取得部90から供給される、放射線源30の位置や回転角度、撮影台36の位置等である。また、放射線遮蔽部材位置情報とは、放射線遮蔽部材位置情報取得部92から供給される、バイオプシハンド部40の第1アーム48若しくは第2アーム50の回転角度や圧迫板38の位置等である。
【0056】
図9Aおよび図9B、マンモグラフィ装置20に係る撮影位置情報の具体例を示す図である。図9Aは、撮影台36の平面図を示す。回転軸24を中心として放射線源30を回転させたときの、放射線源30から撮影台36の平面に垂線を下ろした交点の軌跡をX軸(Y=0)とし、スカウト撮影条件(ステレオ角度θが0°)における前記交点の座標を原点O(0,0,0)とする。このとき、AECセンサ64が配設されている座標を(x,y,0)とすると、xおよびyが撮影位置情報に相当する。
【0057】
また、図9Bは、放射線源30、撮影台36、AECセンサ64の位置関係についてのY軸方向断面図(X−Z平面図)を示す。固体検出器60(あるいは撮影台36)が構成する平面をZ=0とし、スカウト撮影条件(θ=0°)における放射線源30と固体検出器60(あるいは撮影台36)との距離をDとする。また、放射線源30は、回転軸24上の一点であるアイソセンタO’(0,0,D−R)を中心に半径Rの円軌道を描くように駆動できる。さらに、AECセンサ64は座標(x,0,z)の位置に設置されている。このとき、θ、D、R、xおよびzが撮影位置情報に相当する。
【0058】
なお、撮影位置情報は、ステレオ角度θ、AECセンサ64の位置(x,y,z)、アイソセンタO’の位置(0,0,D−R)、および撮影台36(あるいは固体検出器60)に係る検出面の法線方向の位置(Z=0)の4つのパラメータから構成されることが好ましい。しかし、該4つのパラメータ以外の撮影条件であっても、該4個のパラメータを一意的に導出できるものであれば、撮影位置情報を決定するパラメータとして用いることができる。例えば、図9Bにおいて、アイソセンタO’および固体検出器60に係る検出面の法線方向の位置に代替して、D(スカウト撮影時におけるSIDに相当)を、撮影位置情報を決定するパラメータとして用いることもできる。
【0059】
図10は、マンモグラフィ装置20に係る放射線遮蔽部材位置情報の具体例を示す図である(X−Y断面図の座標定義は図9Aと同じ)。ポスト46は、X−Y断面図の原点OからY軸負方向にGだけ離れた位置に立設され、ポスト46と第1アーム48との軸支点は、撮影台36(あるいは固体検出器60)に係る検出面からHだけ上方にあるとする。また、第1アーム48の長さをL1、第1アーム48の回転角(第1アーム48とY軸とのなす角)をφ1とする。さらに、第2アーム50の長さをL2、第2アーム50の回転角(第2アーム50とY軸とのなす角)をφ2とする。このとき、生検針52が存在する三次元座標(基準座標)は、(L1×sin(φ1)+L2×sin(φ2),L1×cos(φ1)+L2×cos(φ2)−G,H)と表すことができる。同様に、第1アーム48、第2アーム50が存在する三次元座標(基準座標)も算出することができる。このとき、G、H、L1、L2、φ1およびφ2が放射線遮蔽部材位置情報に相当する。
【0060】
このように、上記で例示した撮影位置情報と放射線遮蔽部材位置情報が入力される(S311)。
【0061】
次いで、生検針52、バイオプシハンド部40又は圧迫板38の一部若しくは全部を構成する放射線遮蔽部材をN個の分割要素(Nは自然数)に分割し、それぞれを定義する(S312)。ここで、生検針52、バイオプシハンド部40又は圧迫板38が物理的に分離したN個の放射線遮蔽部材を有する場合は、それぞれの放射線遮蔽部材を各分割要素(計N個)として定義してもよい。さらに、生検針52、バイオプシハンド部40又は圧迫板38が複雑な形態を有する1個の放射線遮蔽部材を有する場合は、この放射線遮蔽部材を複数個の分割要素に分けて定義することもできる。かかる場合、それぞれの分割要素については、該分割要素の投影像(後述)の計算の簡略化のため、直方体、円柱、球等の簡単な形状に置き換えることができる。また、それぞれの分割要素の重心等の基準点についての三次元位置座標や、前記分割要素の各種大きさ(三次元座標表記や極座標表記等)も予め算出しておく。
【0062】
次いで、カウンタの初期化を行う(S313)。なお、該カウンタは、各AECセンサ64の位置において分割要素に係る投影像との重複が発生する該分割要素の個数を計上するためのカウンタである。
【0063】
次いで、i(i=1〜N)番目の分割要素に対して、以下の作業を行う。先ず、i番目の分割要素の投影像推定を行う(S314)。
【0064】
図11は、放射線の曝射によって形成される、放射線遮蔽部材(分割要素)の投影像のY軸方向断面図(X−Z平面図)を示す。ここでは、XYZ座標の定義は図9Bと同様とする。放射線源30からの放射線Xrayの曝射によって、生検針52、バイオプシハンド部40又は圧迫板38が有する放射線遮蔽部材の一部である分割要素122の投影像124が、固体検出器60の検出面上(Z=0)に形成される。分割要素122はZ軸に垂直な円板であり、中心座標を(0,0,d)、円の半径をrとする。放射線源30のステレオ角度がθ=0°の場合の投影像124は、原点O(0,0,0)を中心とし半径をr×D/(D−d)とする円領域をXY平面上に形成される。また、ステレオ角度がθ(θ≠0°)の場合の投影像124は、点(−d×Rsinθ/(D−Rcosθ−d),0,0)を中心とする楕円領域をXY平面上に形成される。
【0065】
このような幾何学的考察によって、i番目の分割要素における投影像形状の推定を行うことができる。
【0066】
次いで、i番目の分割要素の投影像が各AECセンサ64の位置に対応する領域と重複するか否かの判定を行う(S315)。総数M個のAECセンサ64のうちのk番目(k=1〜M)のAECセンサ64の位置が、i番目の分割要素に係る投影像の領域(図11では、円領域又は楕円領域)の範囲内にあるか否かを判定する。該AECセンサ64が前記投影像の領域の範囲内にある場合は、k番目のカウンタに1を加算する(S316)。
【0067】
このような操作をi=1〜Nまで行うと、k(k=1〜M)番目のAECセンサ64における領域の重複が発生する分割要素の個数を算出することができる。
【0068】
次いで、各AECセンサ64に関する領域の重複の有無の判断を行う(S317)。k番目のカウンタの値が0である場合は、すべての分割要素との一切の重複がないため、k番目のAECセンサ64を使用する(除外されない)と判定される。また、k番目のカウンタの値が1〜Nである場合は、いずれかの分割要素の投影像との領域の重複があるため、k番目のAECセンサ64を使用しない(除外される)と判定される。
【0069】
以上のように、推定的位置除外ステップS31が実行され、放射線源30から放射線Xrayを曝射する場合における生検針52、バイオプシハンド部40又は圧迫板38の一部若しくは全部を構成する放射線遮蔽部材に係る固体検出器60への投影像が、各AECセンサ64の位置に対応する領域と重複すると判定したAECセンサ64は、推定的に除外される。
【0070】
続いて、測定的位置除外ステップS32について概説する。推定的位置除外ステップS31において、M個のうちm個のAECセンサ64が除外されると判断された場合、残りの(M−m)個のAECセンサ64について、それぞれの検出値と閾値との大小比較を行う。ここで、閾値は、乳房撮影の際の明らかな撮影異常を識別できるような数値に設定される。具体的には、種々の撮影態様において実際に設定し得る撮影条件を想定し、該撮影条件により放射線Xrayを曝射する際にAECセンサ64で検出されるすべての検出値よりも小さい値を、閾値として設定することが好ましい。
【0071】
ここで、生検針52、バイオプシハンド部40又は圧迫板38の一部又は全部を構成する放射線遮蔽部材が放射線画像に写り込む状態を図12Aおよび図12Bを参照しながら説明する。図12Aは、ステレオ撮影を行う場合における正面撮影位置からの乳房28の正視図を示す。バイオプシハンド部40が図12Aのように配置されており、紙面からみて右上方に位置する放射線源30から放射線Xrayを曝射する。なお、生検針52の一部が放射線遮蔽部材で構成されているとする。
【0072】
図12Bは、図12Aで示すステレオ撮影によって形成され得る放射線画像の模式図を示す。開口部44を透過する放射線Xrayで形成されるモノクロ多階調画像である放射線画像Imgは、固体検出器60により検出された放射線Xrayの線量が多いほど放射線画像は濃くなり、線量が少ないほど放射線画像は薄くなるように描画される。放射線画像Imgには、放射線Xrayの透過線量の差異により乳房28の乳房画像28Iが形成される。一方、放射線遮蔽部材は被検体27と比べて放射線Xrayをほとんど透過させないため、生検針52の放射線遮蔽部材は、放射線画像Img上において写り込み画像52Iとして形成される。
【0073】
このとき、AECセンサ64aは、生検針52の写り込み画像52Iと一部重なっているため、AECセンサ64bの検出値と比較して著しく低い値を示すことが予想される。かかる場合、測定的位置除外ステップS32において、AECセンサ64aおよびAECセンサ64bの検出値と閾値との大小比較を行い、その検出値が閾値を超えるであろうAECセンサ64bの位置を除外せず、その検出値が閾値以下となるであろうAECセンサ64aの位置を除外する。
【0074】
このように、バイオプシハンド部40等(図12Aでは、生検針52)が放射線画像に写り込む影響の程度が中間的であったため推定的位置除外ステップS31による測定位置除外の見逃しが生じた場合であっても、測定的位置除外ステップS32において実測値に基づいてAECセンサ64aの位置を除外することができる。
【0075】
以上のように、測定的位置除外ステップS32が実行され、検出値が閾値以下であるAECセンサ64は測定的に除外される。
【0076】
最後に、選択可能なAECセンサ数の最大個数について制限が課されているような場合には、位置選択ステップS33において、AECセンサ64の選択数をさらに絞り込むことで、さらに好適なAECセンサ64を選択することができる。
【0077】
以上のようにして、測定位置選択部80は、複数のAECセンサ64の位置のうち好適な少なくとも1つ以上の測定位置を選択する。
【0078】
ところで、測定的位置除外ステップS32において各AECセンサ64の検出値をそのまま使用するのではなく、各AECセンサの感度特性、撮影位置条件、乳房28のポジショニング態様等に応じた、重み付け係数を乗ずることができる。
【0079】
重み付け係数付与部88は、該各AECセンサ64が有するセンサ感度ばらつき等を均一に補正する重み付け係数を、各AECセンサ64の検出値に乗じた値を測定位置選択部80に供給することができる。かかる場合は、センサ感度および撮影位置情報の差異の影響を低減させた、好適なAECセンサ64の選択を行うことができる。
【0080】
さらに、重み付け係数付与部88は、ステレオ撮影の際にステレオ角度の変化を考慮した重み付け係数を各AECセンサ64の検出値にさらに乗じた値を測定位置選択部80に供給することができる。かかる場合は、放射線源30と各AECセンサ64との距離に係る相対関係の歪みの影響を排除した、好適なAECセンサ64の選択を行うことができる。
【0081】
さらに、重み付け係数付与部88は、各AECセンサ64のうち乳房28の周辺部よりも中央部側に設置され、胸壁29側よりも乳頭側に設置されたAECセンサ64を、測定位置選択部80にて優先的に選択できるように設定された重み付け係数を、各AECセンサ64の検出値にさらに乗じた値を測定位置選択部80に供給することも好ましい態様である。かかる場合は、乳腺領域よりも放射線吸収係数が大きい傾向がある胸筋に重なるAECセンサ64の設置位置が乳腺位置(関心領域)として誤選択されることが有効に防止される。
【0082】
以上のようにして、測定位置選択部80で乳腺位置近傍と推定されるAECセンサ64が選択されると、曝射時間算出部82は、該乳腺位置においてAECセンサ64が検出した単位時間当たりの放射線量に基づき、乳房28の乳腺領域の適正な放射線画像情報を得るために必要な放射線量を曝射する曝射時間を曝射制御条件として算出する。
【0083】
このように、プレ曝射によって、乳房28に曝射する放射線Xrayの放射線量を少なく設定することで、注目部位である乳腺領域での曝射制御条件を決定することができる。
【0084】
[ステップS4]
次いで、技師は、放射線源30を駆動し、乳房28のステレオ撮影を行う。この場合、ヒンジ部35(図1)を中心として放射線源収納部32を移動させ、図13に示すように、放射線源30をA位置に配置して、被検体27の乳房28を撮影台36と圧迫板38とで保持した状態で撮影を行う。技師が曝射スイッチ74を押下すると撮影を開始し、曝射時間算出部82により算出された曝射時間に基づいて放射線Xrayが曝射された後、自動的に乳房28に係る放射線画像が形成される。同様に、図13に示すように、放射線源30をB位置に配置して、撮影を開始すると、自動的に乳房28に係る放射線画像が形成される。
【0085】
以下、ステップS4に対応するマンモグラフィ装置20の動作を説明する。
【0086】
放射線源30をA位置およびB位置に配置し、放射線Xrayを曝射することにより、乳房28を透過した放射線Xrayが撮影台36の固体検出器60によって放射線の線量として検出される。検出器制御部108は、固体検出器60を制御して、A位置およびB位置における乳房28の前記放射線の線量から放射線画像情報(画像情報)を取得し、該放射線画像情報は放射線画像形成部84に供給される。
【0087】
一方、AECセンサ64は、圧迫板38、乳房28および固体検出器60を透過した放射線Xrayの放射線量を検出する。重み付け係数付与部88は、この検出値に重み付け係数を付与し、該重み付け係数を測定位置選択部80に供給する。測定位置選択部80は、乳房28の乳腺領域の適正な放射線画像情報を得るために必要な放射線量を曝射する曝射時間を曝射制御条件として算出し、必要に応じて放射線源制御部76の曝射時間を更新することができる。測定位置選択部80にAECセンサ64の検出値が供給された後、曝射時間を算出する方法の詳細については、前に述べた通りであるため省略する。
【0088】
また、各AECセンサ64の検出値を放射線画像形成部84に供給し、後述(ステップS5)のCAD処理を含めた画像処理に係るパラメータとして利用できる。さらに、各AECセンサ64の検出値や曝射時間等の種々の撮影情報を画像と併せて表示し、あるいはデータベース化することができる。これにより、技師又は医師は、このデータベース化された患者の被曝情報等の履歴を以後の診断・治療等に活用することができる。
【0089】
ここで、各AECセンサ64の検出値を有効に利用するためには、スカウト撮影の際の重み付け係数をそのまま使用するのではなく、各ステレオ撮影の幾何学的撮影条件に応じた好適な重み付け係数を使用することが望ましい。
【0090】
[ステップS5]
次いで、技師は、マウスやタッチパネル等による必要なGUI操作を行うことで、放射線画像形成部84においてCAD処理が行われる。
【0091】
図13で示すように、A位置およびB位置に放射線源30を回転させて撮影を行った後、これらの2枚の放射線画像情報を一旦画像情報記憶部110に記憶させ、ステレオ画像を作成して表示部86に表示する。CAD処理部112は、画像情報記憶部110に記憶された画像情報に対して定量的な画像処理を施すことにより、異常候補部位を抽出する。
【0092】
[ステップS6]
次いで、技師は、マウスやタッチパネル等による必要なGUI操作を行うことで、表示部86に画像表示が行われる。
【0093】
CAD処理部112によって抽出された異常候補部位を、乳房28の放射線画像とともに表示部86に表示させる。表示部86には、乳房28の放射線画像と、CAD処理によって抽出された異常候補部位を示すマーカと、圧迫板38の開口部44の画像とを併せて表示させることが好ましい。
【0094】
[ステップS7]
次いで、技師は、生検部位選択部114を用いて表示部86に表示されているステレオ画像から生検部位54を指示する。なお、生検部位選択部114は、マウスやタッチパネル等のGUIにより構成することができる。
【0095】
この後、技師による生検部位搾取開始の操作に基づいて、以下のステップS8〜S10に対応するマンモグラフィ装置20の動作が自動的に行われる。
【0096】
[ステップS8]
次いで、生検部位位置情報算出の動作が行われる(ステップS8)。生検部位位置情報算出部116は、技師によって指示された生検部位54と、画像情報記憶部110に記憶されている2枚の放射線画像情報とに基づき、生検部位54の位置情報を算出する。なお、この位置情報は、生検部位54の三次元位置情報である。生検部位位置情報算出部116によって算出された生検部位54の位置情報は、移動量算出部118に供給される。
【0097】
その後、移動量算出部118は、生検部位54の位置情報を用いて、生検針52を生検部位54に移動させる移動量を算出する。この場合、生検針52の移動量は、例えば、開口部44の中心の座標を基準として、X方向移動量、Y方向移動量として生検針駆動制御部104に設定される。移動量算出部118によって算出された生検針52の移動量は、生検針駆動制御部104に供給される。
【0098】
[ステップS9]
次いで、生検針移動の動作が行われる(ステップS9)。生検針駆動制御部104は、移動量算出部118から供給された生検針52の移動量に従い、生検針52を駆動制御して所定の位置まで移動させる。バイオプシハンド部40は、生検部位54のX方向およびY方向の位置情報に従い、第1アーム48および第2アーム50をX−Y平面内で移動させ、生検針52を生検部位54の上部に位置決めする。次いで、生検針52をZ方向に移動させ、圧迫板38に形成した開口部44を介して生検針52を乳房28に刺入する動作を開始する。
【0099】
生検針52のZ方向の位置情報は、生検部位位置情報算出部116によって逐次算出され、生検針駆動制御部104に供給される。前記生検針52のZ方向の位置情報および既に設定されたバイオプシハンド部40の移動制限量に従い、生検針駆動制御部104により生検針52をZ方向に移動させ、生検針52の採取部56(図2)を生検部位54の近傍に到達させる。この場合、生検針52のX−Y平面内での移動が制限されているため、刺入状態において、生検針52が不用意にX方向又はY方向に大きく移動することがなく、乳房28の組織を損傷してしまう事態を回避することができる。
【0100】
[ステップS10]
最後に、生検部位採取の動作が行われる(ステップS10)。生検針52の採取部56が生検部位54の近傍に到達すると、生検針52による吸引処理が開始され、生検部位54が採取される。その後、生検針52をZ方向に移動させることにより、生検針52が乳房28から抜き取られ、作業が終了する。
【0101】
[AECセンサ検出異常の処理]
以上、本実施形態のマンモグラフィ装置20を用いたワークフローおよび装置動作について説明した。次に、AECセンサ64の検出異常が発生した場合の動作について説明する。
【0102】
図6に係るフローチャートに示すプレ曝射(S3)又はステレオ撮影(S4)の際に、推定的位置除外部94によりすべてのAECセンサ64が除外された場合は、測定位置選択部80は、AECセンサ検出異常発生の旨を撮影停止指示部99に通知する。
【0103】
前記通知を受けた撮影停止指示部99は、警告部100、放射線源制御部76、および駆動制御部78にその旨を通知する。
【0104】
放射線源制御部76は、該通知を受けた後、放射線源30が放射線の曝射動作を行っている場合はその曝射動作を即時に停止する。さらに、放射線源制御部76は、放射線源30の曝射停止の状態から曝射ロックを掛ける。該曝射ロックが掛かっているときは、曝射スイッチ74を押下しても放射線源30から放射線Xrayが曝射されないようにする。
【0105】
警告部100は、該通知を受けた後、技師にAECセンサ検出異常発生の旨の警告を行う。なお、該警告は、有形/無形にかかわらず、技師の五感に直接訴えることができる手段であれば態様は問わない。例えば、ブザー等による警告音、画面表示部による警告表示等が好ましい。
【0106】
図14は、本実施形態のマンモグラフィ装置20の警告部100による警告表示の一例を示す図である。本実施例では、警告部100と表示操作部42との画像表示機能を兼ねている。AECセンサ64の検出異常発生の旨の通知を受けた後、警告部100は、技師に対して注意喚起をするメッセージをウィンドウ表示画像1000として表示する。技師は、前記メッセージを読んだ上で、ウィンドウ表示画像1000に記載した確認事項に従って作業確認を行う。技師によりAECセンサ検出異常の原因が特定され、その原因を解決した場合は、タッチパネル等のGUIで[継続して撮影]ボタン1002を押下することにより、ウィンドウ表示画像1000が消滅するとともに、放射線源制御部76に係る曝射ロックが解除される。また、技師によりAECセンサ検出異常の原因が特定できない場合は、[AEC中止]ボタン1004を押下することより、マンモグラフィ装置20はAEC機能をオンからオフの状態に自動的に設定変更し、その後技師は撮影を続行することができる。
【0107】
以上説明したように、上述した実施形態に係るマンモグラフィ装置20は、被検体27の乳房28に放射線を曝射し放射線画像を撮影する撮影部と、被検体27の乳房28に刺入する生検針52と、生検針52を保持するバイオプシハンド部40とが配置される、被検体27の乳房28の生検部位54に生検針52を刺入して組織の一部を採取する乳房撮影定位装置において、前記撮影部は、被検体27の乳房28を圧迫保持する圧迫板38と、回転軸(ヒンジ部35)を中心として回転可能に支持された、被検体27の乳房28に放射線Xrayを曝射する放射線源30と、被検体27の乳房28を透過した放射線Xrayの画像情報を検出する固体検出器60と、被検体27の乳房28を透過した放射線Xrayの線量を検出し、露出制御用の放射線量情報を取得する複数のAECセンサ64と、AECセンサ64が配設される複数の測定位置から少なくとも1つ以上の放射線量測定位置を選択する測定位置選択部80と、測定位置選択部80により選択された前記少なくとも1つ以上の放射線量測定位置で検出された放射線Xrayの線量に基づいて放射線源30から曝射される放射線量を制御する放射線源制御部76と、放射線源30およびAECセンサ64の位置に関する撮影位置情報を取得する撮影位置情報取得部90と、生検針52およびバイオプシハンド部40の三次元位置に関する放射線遮蔽部材位置情報を取得する放射線遮蔽部材位置情報取得部92と、を備え、測定位置選択部80は、前記撮影位置情報および前記放射線遮蔽部材位置情報に基づいて、生検針52、バイオプシハンド部40又は圧迫板38の一部若しくは全部を構成する放射線遮蔽部材によって固体検出器60の検出面上に生成される予定の放射線Xrayの曝射に係る投影像と、AECセンサ64の位置に係る前記検出面上に対応する領域と、の重複が発生するか否かについて判定し、複数のAECセンサ64の位置のうち前記領域の重複が発生すると判定したAECセンサ64の位置を除外する推定的位置除外部94を備える構成を有する。
【0108】
このように、放射線源等の位置に関する撮影位置情報および生検針等の三次元位置に関する放射線遮蔽部材に基づいて、生検針、バイオプシハンド部又は圧迫板の一部又は全部を構成する放射線遮蔽部材の投影像が放射線量情報検出器の配設位置に対応する領域と重複すると判定された該放射線量情報検出器を除外するように構成したので、放射線源と放射線検出部との間に、生検針とその保持部材、スポット撮影用の小サイズ圧迫板等を配置したまま被検体の乳房のステレオ撮影を行う場合であっても、最適な位置に配設された放射線量情報検出器を選択することができる。
【0109】
また、測定位置選択部80は、複数のAECセンサ64の位置において検出した放射線Xrayの線量の検出値が閾値以下であるAECセンサ64の位置を除外する測定的位置除外部96を有するように構成したので、測定位置除外の二重チェックによってAECに好適なセンサを選定できる確率が向上するとともに、AECの精度をさらに向上することができる。
【0110】
さらに、推定的位置除外部94に基づきすべての前記複数の測定位置が除外されるものと判断されたときは前記撮影を停止する撮影停止指示部99と、撮影停止指示部99により前記撮影が停止された旨を警告する警告部100と、を有するように構成したので、AEC誤作動のおそれに関する技師への注意喚起がなされ、AECの信頼性を向上させることができる。
【0111】
なお、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0112】
例えば、上記実施形態で説明した重み付け係数は、本発明が適用される装置や方法に応じて適宜変更であることは言うまでもなく、AECセンサの配設数も勿論変更可能である。
【0113】
また、上記実施形態では、固体検出器60を用いた場合について説明したが、固体検出器60に代替して、蓄積性蛍光体パネルを撮影台36に対して着脱自在に構成される放射線画像撮影装置を用いるようにしてもよい。
【0114】
また、上記実施形態では、固体検出器60に蓄積された静電潜像が、読取光源部62からの読取光により走査されることで電流を発生させる、いわゆる光走査方式について例示して説明したが、前記のような読取光源部62を用いることなくTFT方式により静電潜像の電荷を読出可能な構成にしてもよい。さらに、前記のような読取光源部62を用いることなく直接変換して画像を生成可能な放射線固体検出器を用いることもできる。
【0115】
また、上記実施形態では、画像センサである固体検出器60と、放射線量情報検出器であるAECセンサ64とが別体の場合について例示して説明したが、これに限らず、TFT方式等の場合は、画像センサの一部を放射線量情報検出器として利用することができ、この場合は放射線量情報検出器を画像センサで代用することも可能である。かかる場合は、ステレオ撮影の前に行われるプレ照射で得られた放射線画像を利用することができる。該放射線画像に対して、様々な画像処理アルゴリズムを適用することで適当な関心領域を導出し、その関心領域の数、位置および大きさに基づいて、放射線源30の照射制御を行うことができる。
【符号の説明】
【0116】
20…マンモグラフィ装置 22…基台
24…回転軸 26…アーム部材
27…被検体 28…乳房
29…胸壁 30…放射線源
32…放射線源収納部 36…撮影台
38…圧迫板 42…表示操作部
60…固体検出器 64、64a、64b…AECセンサ
74…曝射スイッチ 76…放射線源制御部
78…駆動制御部 80…測定位置選択部
82…曝射時間算出部 84…放射線画像形成部
86…表示部 88…重み付け係数付与部
90…撮影位置情報取得部 92…放射線遮蔽部材位置情報取得部
94…推定的位置除外部 96…測定的位置除外部
98…位置選択部 99…撮影停止指示部
100…警告部 1000…ウィンドウ表示画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の乳房に放射線を曝射し放射線画像を撮影する撮影部と、
前記被検体の乳房に刺入する生検針と、
前記生検針を保持する生検針保持部とを有する、
前記被検体の乳房の生検部位に前記生検針を刺入して組織の一部を採取する乳房撮影定位装置において、
前記撮影部は、
前記被検体の乳房を圧迫保持する圧迫板と、
回転軸を中心として回転可能に支持された、前記被検体の乳房に放射線を曝射する放射線源と、
前記被検体の乳房を透過した前記放射線の画像情報を検出する放射線検出部と、
前記放射線検出部の検出面上にある複数の測定位置から少なくとも1つの放射線量測定位置を選択する放射線量測定位置選択部と、
前記放射線量測定位置選択部により選択された前記少なくとも1つの放射線量測定位置で、前記放射線検出部により検出された前記放射線の線量に基づいて前記放射線源から曝射される放射線量を制御する放射線源制御部と、
を備え、
前記放射線量測定位置選択部は、
前記放射線の線量の検出値が閾値以下である前記測定位置を、前記放射線量測定位置から除外する測定的位置除外部を備える
ことを特徴とする乳房撮影定位装置。
【請求項2】
請求項1記載の乳房撮影定位装置において、
前記放射線量測定位置選択部は、
各前記検出値に重み付け係数を乗じた値を前記測定的位置除外部に供給する重み付け係数付与部をさらに備える
ことを特徴とする乳房撮影定位装置。
【請求項3】
請求項2記載の乳房撮影定位装置において、
前記重み付け係数付与部は、前記放射線源の回転角度に応じた前記重み付け係数を乗じることを特徴とする乳房撮影定位装置。
【請求項4】
請求項2記載の乳房撮影定位装置において、
前記重み付け係数付与部は、前記乳房のポジショニングに応じた前記重み付け係数を乗じることを特徴とする乳房撮影定位装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の乳房撮影定位装置において、
前記撮影部は、
前記放射線源の位置および前記複数の測定位置に関する撮影位置情報を取得する撮影位置情報取得部と、
前記生検針、前記生検針保持部又は前記圧迫板の三次元位置に関する放射線遮蔽部材位置情報を取得する放射線遮蔽部材位置情報取得部と、をさらに備え、
前記放射線量測定位置選択部は、
前記撮影位置情報取得部により取得された前記撮影位置情報および前記放射線遮蔽部材位置情報取得部により取得された前記放射線遮蔽部材位置情報に基づいて、前記生検針、前記生検針保持部又は前記圧迫板の一部若しくは全部を構成する放射線遮蔽部材によって前記検出面上に生成される予定の前記放射線の曝射に係る投影像と、前記複数の測定位置との重複が発生するか否かについて判定し、前記複数の測定位置のうち前記重複が発生すると判定した放射線量測定位置を除外する推定的位置除外部をさらに備える
ことを特徴とする乳房撮影定位装置。
【請求項6】
請求項5記載の乳房撮影定位装置において、
前記撮影部は、
前記推定的位置除外部に基づきすべての前記複数の測定位置が除外されると判断されたときは前記撮影を停止する撮影停止指示部と、
前記撮影停止指示部により前記撮影が停止された旨を警告する警告部と、をさらに有する
ことを特徴とする乳房撮影定位装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−46871(P2013−46871A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−267100(P2012−267100)
【出願日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【分割の表示】特願2009−134584(P2009−134584)の分割
【原出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】