説明

乾燥ポリマービーズ調製物

【課題】凝集なしに再懸濁可能なポリマービーズ調製物を提供すること。
【解決手段】下記工程を含む磁気ビーズ含有懸濁物の濃縮方法:
−懸濁物に磁場の効果を適用して磁気ビーズを含む粒子を固定させる工程、および
−非磁気ビーズを含む粒子を含有する懸濁物の液体を分離する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥ポリマービーズ調製物、かかるポリマービーズ調製物の調製方法、磁気ビーズを含む懸濁物の濃縮方法、分析手段において乾燥ポリマービーズ調製物を使用する方法および乾燥ポリマービーズ調製物を用いる分析対象物の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックビーズは、長い間、分析対象物の検出に対する分析手段に使用されてきた。分析対象物の存在および/またはその量は、凝集物の形成および/またはかかる形成された凝集物の量から結論することができる。
【0003】
近年、免疫アッセイならびに他の試験の試薬として、種々の態様におけるプラスチック磁気ビーズの使用が開発されているのが見受けられる。ビーズに見られる磁気部分の存在のため、これらのビーズは、磁力の適用により懸濁物から分離することができる。使用する適用の型に係わらず、凝集形成を避ける単一の粒子として利用可能な粒子を必要とする。今日まで、かかる磁気ポリマービーズは、唯一懸濁物の形で提供されている。これらの懸濁物は、モノマーを直接重合させることによって得られる。所望ならば、このように得られた粒子を、懸濁物からの粒子の除去なしに行なうさらなる処理に供する。
【0004】
しかしながら、この種類の懸濁物と関連して、特殊な保存上の問題が生じている。比重により磁気ビーズが管の底に沈んだ場合、固い一固まりの塊を形成する。次いで、管を輸送中転倒させた場合、塊は乾燥してしまうこともあり得る。磁気ビーズの再懸濁の間、このように形成した凝集物を再び個々の粒子に完全に分離することは不可能である。超音波適用さえも、満足のいく結果を導かない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、凝集なしに再懸濁可能なポリマービーズ調製物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明の要旨は、
(1) 下記工程を含む磁気ビーズ含有懸濁物の濃縮方法:
−懸濁物に磁場の効果を適用して磁気ビーズを含む粒子を固定させる工程、および
−非磁気ビーズを含む粒子を含有する懸濁物の液体を分離する工程、
(2) 磁気ビーズを含む粒子が、水溶性物質で被覆され、該水溶性物質が本質的に溶解しないように、懸濁物の液体が選択される前記(1)記載の方法、
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、凝集なしに再懸濁可能な乾燥ポリマービーズ調製物、かかるポリマービーズ調製物を調製する方法、磁気ビーズを含む懸濁物を濃縮する方法、分析手段において乾燥ポリマービーズ調製物を使用する方法および乾燥ポリマービーズ調製物を用いる分析対象物の検出方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の主題は、乾燥ポリマービーズ調製物である。
【0009】
本発明においてポリマービーズとは、重合化により得られる粒子である。これらのポリマービーズの好ましい直径は、0.1〜100μmの範囲であり、特に好ましくは1.0〜5.0μmである。粒子は、好ましくは本質的に丸形を有し、ビーズとして公知なものである。ビーズの好ましい主要成分は、有機ポリマーである。有機ポリマーは、1種の単一モノマーから得られたポリマーに加え、数種類のモノマーからなるポリマー、すなわち、コポリマーをも包含する。可能なモノマーとしては、ポリスチレンおよびポリメチルメタクリレートが挙げられる。かかるポリマーの例は、ラテックス粒子である。
【0010】
ポリマービーズは、例えば、液体にモノマーを分散させ、用いる重合化反応の型、すなわち、光または重合開始剤に依存して重合化を開始させること等の公知の方法により製造することができる。ポリマービーズの製造は、例えば、L.B.Bangs(Amer Clin Prod Rev 7,1,22-26) から、当業者に公知である。
【0011】
本発明は、あらゆる種類のポリマービーズを凝集を起こさず、懸濁可能な型にすることが可能であるけれども、本明細書に示す詳細な説明は、磁気ポリマービーズの好ましいケースに適合させている。磁気ビーズは、主として、例えば、Dynal ASから懸濁物の形で購入することができる。これらのビーズは、取り込まれた磁気粒子のために磁性を示す本質的に有機ポリマーからなる粒子である。磁気という用語は、強磁性のみならず常磁性および超常磁性をも含み、後者が好ましい。
【0012】
磁気ビーズは、欧州特許出願公告第0 106 873号明細書に記載のように、製造することができる。
【0013】
ある種の分析手段において、これらのポリマービーズは、分析対象物または分析対象物結合物質を選択的に固定させるために用いられる。これらの場合、試薬によりポリマービーズを懸濁物中で修飾させることが知られている。このことは、例えば、粒子表面にストレプトアビジン層を適用することにより、ビオチンで修飾した分析対象物または分析対象物結合物質を粒子の表面に結合できることを含む。
【0014】
本発明によれば、次いで、これらの粒子を、容易に溶解可能な物質層で被覆する。この物質の易溶性は、粒子が後に再懸濁される溶液にかかる。体液を分析する場合、かかる溶液は本質的に水溶液である。本発明において容易に溶解可能な物質とは、特に、乾燥ポリマービーズ調製物を製造し、貯蔵する条件を超える融点を有する糖である。好適な糖としては、炭素数が6の糖および炭素数が6の糖アルコールを含み、マンニットおよびトレハロースが特に好ましい。
【0015】
容易に溶解可能な物質の被覆は、多数の方法により適用することができる。しかし、容易に溶解可能な物質を含むポリマービーズ懸濁物を調製し、液体が懸濁物から回収される条件下で該ポリマービーズ調製物を噴霧することが好ましい。かかる噴霧−乾燥手段は公知である。市販の懸濁物を使用する場合、一定の量の溶解可能な物質を添加するだけで十分である。この量は、存在する溶解可能な物質の量が完全に溶解するように投与される。よって、該量は、懸濁物の液体中における溶解可能な物質の溶解度に依存する。糖の場合、例えば、0.1〜30重量%の量、特に好ましくは1〜10重量%の量が好都合であることがわかった。溶解可能な物質の量は、各ポリマービーズの被覆層が20nm〜50μmの厚さ、特に好ましくは0.1〜5μmの厚さを有するようにあるべきである。一定の量の溶解可能な物質を用いた場合、層の厚さが所望の範囲にあるかどうかは、顕微鏡によって容易に決定できる。この目的のために、粒子を成形型に流し込むことが好ましく、粒子の厚さと被覆の厚さを読むことが可能なことから、断面図を作製する。このようにして得られたポリマービーズは、それらの元の表面構造に係わらず、平滑な表面を有することが好ましく、被覆が十分厚く、かつ球状の外形を有することが好ましい。
【0016】
噴霧−乾燥工程の間、懸濁物中の磁気ポリマービーズの濃度を低く選択することが好ましい。好適な濃度は、0.05〜0.5重量%である。このことにより、単一の磁気粒子を有するかまたは有さない液滴を形成するという結果を生じる。噴霧したタワーを乾燥する間、95%の対応する乾燥糖粒子または糖粒子が1以下の単一の磁気ビーズを含むことが好ましい。二重または三重、すなわち、2または3個の連結した磁気粒子の凝集物の形成が、有意に低減する。ポリマービーズ懸濁物を調製するために、水溶液が特に好ましい。生じた粒子が1重量%未満、好ましくは0.1重量%未満の遊離水しか含まなくなるまで、噴霧−乾燥工程を続ける。噴霧−乾燥工程で得られた産物を加熱することにより、残留水分が前記条件を満たしているかを見出し、可能な重量変化を決定することが可能である。
【0017】
好ましい方法において、本発明のポリマービーズは、注ぐことができる。
【0018】
噴霧−乾燥で得られた粉末様固まりを、溶解可能な物質を含む液体中で再懸濁した場合、磁場の非存在下で磁気ポリマー粒子の凝集が実質的に形成されないことが示されたことは、驚くべきことである。このことは、非磁気ポリマー粒子にも応用される。
【0019】
本質的に溶解可能な物質からなる被覆ポリマービーズに加えて、用いる溶解可能な物質の量に依存して非ビーズ含有粒子が形成される。溶解可能な物質の割合を高くすることで、例えば、分析手段において妨げとなる場合、本質的に磁気粒子を含まない糖粒子を分離することが可能である。これは、磁気ポリマービーズの場合、特に容易である。このことを行なうために、乾燥ポリマービーズ調製物の懸濁物を、例えば、エタノール等の低級アルコール(炭素原子数1〜3)中の糖の場合のように、溶解可能な物質が溶解しない液体中で調製する。磁石を用いて、磁気粒子を容器の壁で分離し、残りの懸濁物を除去する。液体を用いる数回の洗浄工程および磁石の除去または消去の後、溶解可能な物質で被覆されたポリマー磁気粒子の濃縮物が得られる。低級アルコールの使用の有利な点は、容易に乾燥できることであり、従って、乾燥粉末が得られる。この粉末を溶解可能な物質を含む液体中に再懸濁することにより、特に5%未満の凝集物しか含まない、実質的に凝集物および非磁気粒子を含まないポリマー磁気ビーズの懸濁物が生じる。
【0020】
本発明の他の主題は、分析手段において本発明の乾燥ポリマービーズ調製物を使用する方法である。本発明において分析手段とは、一定の量のポリマービーズに結合した分析対象物の量を決定する手段である。当業者は、例えば、L.B.Bangs(粒子に基づく試験とアッセイ−調製における落とし穴、問題および可能性;Bangs Laboratories, Carmel, IN, USA, 1990 年10月) から、これらの方法に精通している。
【0021】
また、本発明の主題は、(a)乾燥ポリマービーズ調製物を調製する工程、(b)液体に工程(a)で得られた乾燥ポリマービーズを再懸濁させる工程、(c)分析対象物を工程(b)のポリマービーズに結合させる工程および(d)工程(c)でポリマービーズに結合した分析対象物を検出する工程からなる液体から分析対象物を検出する方法である。前記したように、乾燥ポリマービーズは、液体中で溶解可能な物質で被覆され、かつ磁気を帯びていることが好ましい。
【実施例】
【0022】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
【0023】
実施例1
乾燥かつ凝集物不含再懸濁可能ポリマービーズの調製
Dynal AS製の10mgビーズ/mlの濃度を有する25mlの磁気ビーズ懸濁物M280と3gのマンニットと3gの水を混合した。Niro(Soeborg,デンマーク) 製のNiro−Atomizer−Spray−Drier,Minorを用いて、生じた懸濁物を噴霧して淡褐色の粉末状にした。収量は、2.1gであった。
【0024】
得られた粉末の一部を、蒸留水に再懸濁した。光学顕微鏡で観察したところ、凝集物は見られなかった。
【0025】
実施例2
通常の粒子の凝集
Dynal AS製の0.5mlの磁気ビーズ懸濁物M280を、40℃で風乾させた。固体の残留物を収得し、10mlの蒸留水に再懸濁して5分間超音波漕で処理した。得られた懸濁物は、光学顕微鏡下で十分見ることができる大きな凝集物を含んでいた。
【0026】
実施例3
乾燥かつ凝集物不含再懸濁可能磁気ポリマービーズの濃縮
約50mgの実施例1で得られた粉末を、Eppendorf 試験管中、約1.5mlのエタノールで再懸濁した。永久磁石を管の壁に当てた。懸濁物は熱くなり、褐色の沈殿物が磁石の向かい側の壁に生じた。残りの白色懸濁物をピペットで除き、イソプロパノールで洗浄操作を繰り返した。
【0027】
生じた沈殿物を、風乾した。
【0028】
生じた乾燥粉末を蒸留水に再懸濁した。光学顕微鏡下では、懸濁物中に凝集物は見られなかった。
【0029】
本発明の態様として、以下のものが挙げられる。
[1] 乾燥ポリマービーズ調製物。
[2] 磁気ポリマービーズからなる前記[1]記載の調製物。
[3] 容易に溶解可能な物質で被覆されているポリマービーズを含んでなる前記[1]または[2]記載の調製物。
[4] 該物質が糖である前記[3]記載の調製物。
[5] 糖がマンニットである前記[4]記載の調製物。
[6] ポリマービーズが、0.1〜100μmの直径を有する前記[1]〜[5]いずれか記載の調製物。
[7] 下記工程からなる乾燥ポリマービーズ調製物の調製方法:
−液体中で容易に溶解可能な物質を含むポリマービーズの懸濁物を調製する工程、および
−該液体が懸濁物から回収される条件下で、懸濁物を噴霧する工程。
[8] 噴霧時に生成する液滴の95%を越えるものが最大で1つのポリマービーズを含むように、懸濁物を噴霧する前記[7]記載の方法。
[9] 容易に溶解可能な物質が糖である前記[7]または前記[8]記載の方法。
[10] 下記工程からなる磁気ビーズ含有懸濁物の濃縮方法:
−懸濁物に磁場の効果を適用して磁気ビーズを含む粒子を固定させる工程、および
−非磁気ビーズを含む粒子を含有する懸濁物の液体を分離する工程。
[11] 磁気ビーズを含む粒子が水溶性物質で被覆され、該水溶性物質が本質的に溶解しないように、懸濁物の液体が選択される前記[10]記載の方法。
[12] 分析手段において前記[1]〜[6]いずれか記載の乾燥ポリマービーズ調製物を使用する方法。
[13] 下記工程からなる液体中の分析対象物の検出方法、
(a)乾燥ポリマービーズ調製物を調製する工程、
(b)液体に工程(a)で得られた乾燥ポリマービーズを再懸濁させる工程、
(c)分析対象物を工程(b)のポリマービーズに結合させる工程、および
(d)工程(c)でポリマービーズに結合した分析対象物を検出する工程。
[14] ポリマービーズを乾燥させた場合に、ポリマービーズが液体中で溶解する物質で被覆されている前記[13]記載の方法。
[15] ポリマービーズが磁気を帯びている前記[13]または[14]記載の方法。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程を含む磁気ビーズ含有懸濁物の濃縮方法:
−懸濁物に磁場の効果を適用して磁気ビーズを含む粒子を固定させる工程、および
−非磁気ビーズを含む粒子を含有する懸濁物の液体を分離する工程。
【請求項2】
磁気ビーズを含む粒子が、水溶性物質で被覆され、該水溶性物質が本質的に溶解しないように、懸濁物の液体が選択される請求項1記載の方法。


【公開番号】特開2008−12530(P2008−12530A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−157849(P2007−157849)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【分割の表示】特願平9−165041の分割
【原出願日】平成9年6月5日(1997.6.5)
【出願人】(591215177)ロシュ ダイアグノスティックス ゲーエムベーハー (8)
【Fターム(参考)】