説明

乾燥精鉱の移送管及び移送管の破損検知方法

【課題】圧縮空気にて移送される精鉱による摩耗を抑制し、耐久性を向上させることのできる二重管構造の乾燥精鉱の移送管を提供する。
【解決手段】乾燥精鉱が圧縮空気により移送される内管2と、内管2の外周囲に配置された外管3と、内管2及び外管3の両端部に配置され、内管2及び外管3とを一体に固着し、内管2と外管3との間に密封された環状空間4を形成するた継手フランジ5と、を備えている。内管2は、外管3の内側に位置し、環状空間4を形成する金属製の管2aと、金属製管2aの最内層を形成するセラミックスリーブ2cと、金属製管2aとセラミックスリーブ2cとの間に設けられた耐熱性の充填剤2bと、にて形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥された精鉱を圧縮空気にて移送するための移送管の構造に関するものであり、また、斯かる構造とされる移送管が、乾燥精鉱による磨耗で破損した時の移送管の破損検知方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、選鉱で得られた精鉱は、製錬主工程における熱エネルギーの節減、鉱石の炉への供給、運搬などの取り扱いを容易とすると共に、水分による反応性の低下を防止するために、熱を用いる乾燥が行われる。特に、自溶炉の場合には厳密な乾燥が行われる。
【0003】
銅製錬所にて自溶炉に供給する銅精鉱を乾燥するための精鉱乾燥設備は、フラッシュドライヤとスチームドライヤとを備えている。図1に、精鉱乾燥設備の一部であるスチームドライヤ105を備えたスチームドライヤ側乾燥設備100を示す。
【0004】
図示するように、銅精鉱Sは、分配器101にてフラッシュドライヤ側乾燥設備100Aと、スチームドライヤ側乾燥設備100とに分配される。フラッシュドライヤ側の精鉱乾燥設備100Aの詳細は省略する。
【0005】
スチームドライヤ側乾燥設備100に分配された精鉱Sは、スチームドライヤ給鉱コンベア102で重量を量りながら搬上される。スチームドライヤ給鉱コンベア102からの精鉱は、振動スクリーン103で粗い精鉱を系外に取り出す。
【0006】
振動スクリーン103にて選定された所定大きさの精鉱Sが、振動フィーダ104にてスチームドライヤ105に装入される。
【0007】
スチームドライヤ105では、自溶炉の廃熱ボイラにて発生した蒸気を利用して精鉱Sを乾燥させる。乾燥した精鉱Sは、ロータリバルブ106を操作することによりスチームドライヤ105から排出される。一方、精鉱Sを乾燥させたときに発生する水蒸気は、バグフィルタ107で除塵して、排気ファン107a、煙突107bを介して大気中へと放出される。
【0008】
バグフィルタ107が集塵した精鉱Sは、スクリューコンベア108により搬送され、バグフィルタ107から排出される。
【0009】
スチームドライヤ105及びバグフィルタ107から排出された精鉱Sは、エプロベータ109で空輸(空気輸送)設備のサービスホッパ110に送られる。次いで、精鉱Sは、サービスホッパ110からリフトタンク111へと送られる。
【0010】
精鉱Sが装入されたリフトタンク111は、その後密閉してコンプレッサ112から圧縮空気を供給し、リフトタンク111内を加圧する。なお、コンプレッサ112にて圧縮された空気は、ドライヤ113、スーパーラインフィルタ114を経て、レーシーバタンク115に貯留された後、リフトタンク111に供給され、リフトタンク111内を加圧する。
【0011】
その後、リフトタンク111に設けた空輸バルブ116を開けることで精鉱Sを圧縮空気と共に移送管117にて既設の乾燥鉱ホッパ200へと空輸(空気輸送)する。移送管117にて空輸された精鉱Sは、乾燥鉱ホッパ200の前に設置されたダストチャンバ118とバグフィルタ119で捕集され、集塵した後、乾燥鉱ホッパ200に送られる。
【0012】
上述のようにして、スチームドライヤ105にて乾燥され、乾燥鉱ホッパ200に集められた精鉱Sは、精鉱装入設備であるLIフィーダを介して自溶炉201へと送給される。
【0013】
従来、移送管117には、直管と曲げ管があり、通常、鋼管が使用されている。また、必要に応じて、曲げ管には耐摩耗性のセラミックホースが使用されている。
【0014】
上述のように、乾燥された銅精鉱Sは、圧縮空気にて移送管117内を移送しているが、乾燥した銅精鉱Sが移送管117内を摩耗させ、噴発し、大気に飛散することがある。このようなことが起こると、操業面、環境面で問題である。
【0015】
そこで、本発明者らは、移送管117の構造を改良すると共に、万一移送管117が破損したときの警報手段について開発を行った。
【0016】
例えば、特許文献1には、石油等の流体を輸送するためのパイプラインとして使用される二重管における二重管破損検知方法が記載されている。
【0017】
この二重管破損検知方法は、内筒と外筒によって形成される環状空間を複数に区分し、区分された環状空間に液体(水)が充填される。内筒破損時には、内筒内の加圧輸送流体が環状空間内に流入し、環状空間の圧力を増大し、環状空間内の水を加圧し、液面監視ドラム内の液面を上昇させ、警報装置を作動させる。外筒破損時には、環状空間内の水が外部に流出し、液面管氏ドラム内の水が環状空間内に流入し、液面監視ドラム内の液面を降下させ、警報装置を作動させる。
【特許文献1】特開昭58−19531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上記特許文献1に記載の二重管破損検知方法では、使用される二重管自体は、通常の二重管構造の鋼管などにて作製されるパイプラインである。
【0019】
このような二重管は、上述のように、本発明が対象とする、石油等の流体ではない、粒状或いは粉体状の高熱の乾燥された精鉱を圧縮空気にて移送する移送管117としては使用することができない。また、二重管を構成する内筒と外筒によって形成される環状空間に水等の流体を充填する二重管破損検知方法は、高熱の乾燥された精鉱を圧縮空気にて移送する精鉱乾燥設備100における移送管117の警報手段としては、万が一内筒が破損したときに、水等の液体が乾燥された精鉱に混入され、乾燥精鉱が水分を吸着し、後段の設備に居付き等の悪影響を及ぼすことから使用することはできない。
【0020】
そこで、本発明の目的は、圧縮空気にて移送される精鉱による摩耗を抑制し、耐久性を向上させることのできる二重管構造の乾燥精鉱の移送管を提供することである。
【0021】
本発明の他の目的は、上記二重管構造の乾燥精鉱により移送管内管が万一破損した場合にも、外管の破損を防止し、精鉱の外部環境への噴発、飛散を防止することのできる乾燥精鉱の移送管破損時の移送管の破損検知方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的は本発明に係る乾燥精鉱の移送管及び移送管破損時の移送管破損検知方法にて達成される。要約すれば、第1の本発明によると、乾燥精鉱が圧縮空気により移送される内管と、前記内管の外周囲に配置された外管と、前記内管及び前記外管の両端部に配置され、前記内管及び前記外管とを一体に固着し、前記内管と前記外管との間に密封された環状空間を形成する継手フランジと、を備えた二重管構造とされた乾燥精鉱を移送するための移送管であって
前記内管は、前記外管の内側に位置し、前記環状空間を形成する金属製の管と、前記金属製管の最内層を形成するセラミックスリーブと、前記金属製管と前記セラミックスリーブとの間に設けられたセラミックスリーブを固定するための充填剤にて形成されることを特徴とする乾燥精鉱の移送管が提供される。
【0023】
本発明の一実施態様によると、前記外管には、前記環状空間内の圧力を検知するための圧力検知手段が接続される。
【0024】
第2の本発明によると、乾燥精鉱を圧縮空気により移送する移送管の破損を検知する移送管の破損検知方法であって、
前記移送管は、二重管構造の、外管に圧力検知手段が接続された上記第1の本発明に係る移送管であり、
前記圧力検知手段は、前記移送管の前記環状空間の圧力を常時、或いは、定期的に、或いは、随時に、計測し、その信号を制御手段に送信し、
前記制御手段は、圧力が第一の所定圧力値に達したときに警報を発し、圧力が第二の所定圧力値に達したとき、乾燥精鉱の移送を停止することを特徴とする移送管の破損検知方法が提供される。
【0025】
第2の本発明にて、一実施態様によると、圧縮空気は0.4MPaであり、前記圧力検知手段が検知する前記環状空間内の前記第一の所定圧力値は9.0kPaであり、前記第二の所定圧力値は9.5kPaである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、移送管内面にセラミックを施し、耐摩耗性を向上させ、乾燥精鉱による磨耗で配管が奮発することを未然に防ぐことができる。また、例え、内管において奮発が生じたとしても、精鉱の外部への飛散を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明に係る乾燥精鉱の移送管及び乾燥精鉱移送管破損時の移送管の破損検知方法を図面に則して更に詳しく説明する。
【0028】
実施例1
図2及び図3に、本発明に係る乾燥精鉱の移送管1の一実施例を示す。本発明の移送管1は、図1を参照して先に説明したスチームドライヤ側精鉱乾燥設備100における移送管117として使用することができる。
【0029】
従って、本実施例によると、スチームドライヤ側精鉱乾燥設備100においては、スチームドライヤ105にて乾燥された精鉱Sは、リフトタンク111からダストチャンバ118へと圧縮空気(0.4MPa)により移送管1内を流速4〜22m/secにて移送される。精鉱Sを含む流体は、例えば、95℃〜100℃といった高温とされる。
【0030】
また、精鉱Sは、本実施例では銅精鉱とされ、概略粒径(平均粒子径)が42μmとされる。
【0031】
本実施例にて、移送管1は、乾燥精鉱を加圧下に移送する内管2と、内管2の外周囲を囲包して配置された外管3とを有する二重管構造とされる。内管2と外管3との間には、空気層とされる環状空間4が形成される。
【0032】
内管2は、内管2での直径方向最外層を形成する鋼管、ステンレス鋼管、などの金属製管2aと、直径方向最内層を形成するセラミックスリーブ2cと、金属製管2aとセラミックスリーブ2cとの間に充填される充填材2bとを有する。充填剤2bは、例えばモルタルセメントなどが好適に使用される。セラミックスリーブ2cとしては、例えば、アルミナ(AL2392%)などが使用される。最内層のセラミックスリーブ2cは、乾燥精鉱による磨耗を防止するためのものである。また、充填剤2bは、セラミックスリーブ2cを金属製管2aに接合すると共に、断熱部材としても機能する。
【0033】
外管3は、内管2の最外層金属製管2aと同様に、鋼管、ステンレス鋼管、などの金属製管とすることができる。
【0034】
通常、内管2の最外層金属製管2a、及び、外管3は、それぞれ、肉厚(ta、T)が5.0、5.3mmとされ、内管2の最外層金属製管2aの外径dは、165.2mm、外管3の内径Dは、180.2mmとされる。また、内管2の最外層金属製管2aと外管3との間には、距離Hが7.45mmとされる環状空間4が形成される。
【0035】
セラミックスリーブ2cの層厚(tc)は、10mmとされる。セラミックスリーブ2cの層厚(tc)が、2mmより薄いと、割れる可能性が高いので使用できない。 本実施例では、内管2と外管3の両端部には、外周部に接続ボルト穴6が形成された環状の継手フランジ5が配置され、内管2と外管3の両端部が溶接などにて一体に固着される。また、図4に示すように、この継手フランジ5を利用して、複数の移送管1(1a、1b、1c)を接続して必要な長さの配管構造とすることができる。通常、一つの移送管1の長さ(L)は、移送管1の直径にもよるが、外管3の直径(D+2T)が、19cmとされる場合には、50〜550cmとされる。
【0036】
更に説明すると、内管2の両端には、図2、図4に示すように、継手フランジ5が配置される。本実施例では、内管2の両端は同様の形状とされるので、図2には一端のみが図示されている。
【0037】
内管2の両端部の外周面が、即ち、最外層金属製管2aの外周面2Aが、継手フランジ5の内径部5aに嵌合し、内管外周面2Aが継手フランジ5aに溶接されて一体に固定される。
【0038】
一方、外管3は、両端部の端面3Aが継手フランジ5の側面5bに突き当てられ、継手フランジ5に溶接されて一体に固定される。これにより、内管2と外管3との間には、所定の間隔Hの、しかも、密封された空間である、中空の環状部、即ち、環状空間4が形成される。
【0039】
また、外管3には、圧力検知取付ノズル7を設置し、圧力検知手段としての圧力検知器10を取り付ける。圧力検知器10は、密封された環状空間4内の圧力を常時、或いは、定期的に、或いは、随時に、検知することができ、検知圧力信号を制御手段であるコントローラ20に送信する。この点については、後で更に詳しく説明する。
【0040】
本発明の移送管1は、図2、図4に示すような直管とすることもできるが、図5に示すように、曲り管とすることもできる。本例の曲り管も、図2に示す直管と同じ構成とされるので、同じ機能をなす部材には、同じ参照番号を付し、説明は省略する。本発明の特徴とする耐摩耗性は、特に、このような曲り管において十分に生かされる。
【0041】
本発明者らの実験研究の結果によれば、上記構造とされる移送管1によれば、圧縮空気により移送される乾燥精鉱による移送管内面の磨耗が著しく低減され、従来に比して大幅な耐磨耗性(即ち、耐久性)を得ることができた。
【0042】
本発明によると、上述したように、移送管1には、圧力検知取付ノズル7に圧力検知器10が取り付けられる。環状空間4は単なる空気層とされる。
【0043】
もし、移送管1の内管2が破損した場合には、環状空間4内の圧力が上昇し、圧力検知器10にて圧力値が検知される。圧力検知器10からの信号は、コントローラ20に送信される。コントローラ20は、本実施例では、圧力検知器10が環状空間4内の圧力が上昇することを検知し、第一の所定圧力値に達した場合には、警報を発する。更に、圧力検知器10が環状空間4内の圧力が第二の所定圧力値にまで上昇したことを検知した場合には、コントローラ20は、圧力検知器10からの信号に対応して、精鉱の移送を自動的に停止する。
【0044】
本実施例では、圧縮空気は0.4MPaであり、内管2が破損した場合には、環状空間4内の圧力は、9.0kPaを当然超える。よって、コントローラ20は、環状空間4内の第一の所定圧力値が9.0kPaとなったとき警報を発し、第二の所定圧力値が9.5kPaとなったとき、精鉱の移送を自動的に停止する構成とした。
【0045】
上記構成により、乾燥精鉱による磨耗で配管が奮発することを未然に防ぐことができる。また、例え、内管において磨耗により穴あきが発生し奮発が生じた場合には、警報を発し、作業者に注意を喚起し、更に、それ以上の所定圧力値となった場合には、精鉱の移送を自動停止させる。これにより、外管までもが摩耗で破損し、精鉱が外部へと飛散し、環境を汚染することを未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】銅製錬所における精鉱乾燥設備の一部を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る移送管の構成を示す縦断面図である。
【図3】本発明に係る移送管の構成を示す横断面図である。
【図4】複数の移送管を接続した態様を示す図である。
【図5】曲り管とされる本発明に係る移送管の構成を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 移送管
2 内管
2a 金属製管
2b モルタルセメント(充填剤)
2c セラミックスリーブ
3 外管
4 環状空間
5 継手フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥精鉱が圧縮空気により移送される内管と、前記内管の外周囲に配置された外管と、前記内管及び前記外管の両端部に配置され、前記内管及び前記外管とを一体に固着し、前記内管と前記外管との間に密封された環状空間を形成する継手フランジと、を備えた二重管構造とされた乾燥精鉱を移送するための移送管であって、
前記内管は、前記外管の内側に位置し、前記環状空間を形成する金属製の管と、前記金属製管の最内層を形成するセラミックスリーブと、前記金属製管と前記セラミックスリーブとの間に設けられた耐熱性の充填剤と、にて形成されることを特徴とする乾燥精鉱の移送管。
【請求項2】
前記外管には、前記環状空間内の圧力を検知するための圧力検知手段が接続されることを特徴とする請求項1に記載の乾燥精鉱の移送管。
【請求項3】
乾燥精鉱を圧縮空気により移送する移送管の破損を検知する移送管の破損検知方法であって、
前記移送管は、請求項2に記載の移送管であり、
前記圧力検知手段は、前記移送管の前記環状空間の圧力を常時、或いは、定期的に、或いは、随時に、計測し、その信号を制御手段に送信し、
前記制御手段は、圧力が第一の所定圧力値に達したときに警報を発し、圧力が第二の所定圧力値に達したとき、乾燥精鉱の移送を停止することを特徴とする移送管の破損検知方法。
【請求項4】
圧縮空気は0.4MPaであり、前記圧力検知手段が検知する前記環状空間内の前記第一の所定圧力値は9.0kPaであり、前記第二の所定圧力値は9.5kPaであることを特徴とする請求項3に記載の移送管の破損検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−85353(P2009−85353A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−256659(P2007−256659)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(500483219)パンパシフィック・カッパー株式会社 (109)
【Fターム(参考)】