説明

予作動式スプリンクラー設備

【課題】 スプリンクラーヘッドが誤作動した場合に起動する排水手段において、該排水手段の起動に電気的手段を用いないで起動可能な排水手段を備えた予作動式スプリンクラー設備の提供。
【解決手段】 一次側が給水源1と接続され、二次側にスプリンクラーヘッド4が設置され、該スプリンクラーヘッド4の近傍に設置された火災感知器21の作動によって開放される開閉弁3の二次側の圧力が第1の圧力以下に降下したことにより二次側の液体を排出する排水手段5を設けた。さらに開放弁3の二次側の圧力が、第1の圧力より高い第2の圧力以下に降下した場合に一次側から二次側へ通水が可能となる減圧流通手段を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予作動式スプリンクラー設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
予作動式スプリンクラー設備は、室内に設置された火災感知器とスプリンクラーヘッドが火災によって両方作動した場合にスプリンクラーヘッドから消火水が散布されるものである。
【0003】
予作動式スプリンクラー設備に用いられる予作動式流水検知装置は、水源からスプリンクラーヘッドまで接続されている配管の途中に設けられ、該予作動式流水検知装置の一次側は水源と接続しており、二次側はスプリンクラーヘッドに接続されている。
【0004】
予作動式流水検知装置の二次側に接続された配管、いわゆる二次側配管に空気や不燃ガス等の気体を充填したものを乾式予作動スプリンクラー設備といい、消火水が充填されたものを湿式予作動スプリンクラー設備という。
【0005】
乾式、湿式いずれの場合も予作動式流水検知装置内部の弁体は平時は閉鎖状態にある。火災時に火災感知器が作動すると前記弁体は開放され、水源からスプリンクラーヘッドまでの水路が開放される。乾式の場合は二次側配管に消火水が流入する。
【0006】
上記の予作動式スプリンクラー設備において火災が発生すると、火災の熱によって火災感知器が作動して、予作動式流水検知装置の弁体を開放する。すると一次側の消火水が二次側に通水可能な状態となり、乾式の場合は二次側配管内に充水が行われる。
【0007】
火災感知器の作動に続いてスプリンクラーヘッドが作動すると二次側配管内に充水された水がスプリンクラーヘッドより放出される。続いてポンプが起動し、水源の消火水を汲み上げスプリンクラーヘッドに供給して連続的に消火水の散布を行い火災を鎮圧・消火する。
【0008】
火災時以外にスプリンクラーヘッドが作動した場合には、予作動式流水検知装置の弁体は閉止したままなので、二次側配管内の気体または消火水が流出するだけであり、湿式の場合においても水漏れによる被害は最小限に抑えることができる。
【0009】
近年においては、設備構成が簡単で火災時に即座に消火水が放出される湿式予作動スプリンクラー設備が注目されている。また湿式予作動スプリンクラー設備においてスプリンクラーヘッドが誤作動した場合の水損量を低減するために、火災感知器が作動せずにスプリンクラーヘッドのみが作動した場合には、二次側配管内の水を排水することや、吸引することによりスプリンクラーヘッドからの放水量を低減して水損被害を抑制可能なスプリンクラー設備がある(例えば、特許文献1、2参照。)
【0010】
【特許文献1】特開2000−51385号公報(第2−3頁、第1図)
【特許文献2】特開2000−140148号公報(第2−4頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献1、2記載のスプリンクラー設備は、排水手段や吸引手段の起動に電気的手段を用いているため、非常時においても確実に動作を行うためには非常用電源の確保が必要となり、設備コストが増大してしまうものであった。
【0012】
そこで本発明では、上記問題に鑑み、排水手段の起動に電気的手段を用いないで起動可能な排水手段を備えた予作動式スプリンクラー設備の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、一次側が給水源と接続され、二次側にスプリンクラーヘッドが設置され、該スプリンクラーヘッドの近傍に設置された火災感知器の作動によって開放される開閉弁が設置された予作動式スプリンクラー設備において、開放弁の二次側の圧力が第1の圧力以下に降下したことにより二次側の液体を排出する排水手段が設置されている予作動式スプリンクラー設備である。
【0014】
請求項2記載の発明は、前記予作動式スプリンクラー設備において、作動した排水手段は二次側の圧力が第1の圧力以上になると閉止する構造である請求項1記載の予作動式スプリンクラー設備である。
【0015】
請求項3記載の発明は、前記予作動式スプリンクラー設備において、開放弁の二次側の圧力が、第1の圧力より高い第2の圧力以下に降下した場合に一次側から二次側へ通水が可能となる減圧流通手段が設置されている請求項1記載の予作動式スプリンクラー設備である。
【0016】
請求項4記載の発明は、前記減圧流通手段とは、常時は閉止状態にあり開放弁の二次側の減圧によって開放される弁装置であり、弁装置の開放によって一次側と二次側が連通可能となる請求項3記載の予作動式スプリンクラー設備である。
【0017】
請求項5記載の発明は、前記排水手段が、弁体が弾発体および開放弁の二次側流体の圧力により閉止されており、開閉弁の二次側の圧力減少によって弁体が開放する請求項1記載の予作動式スプリンクラー設備である。
【0018】
請求項6記載の発明は、前記排水手段が、開閉弁の二次側の圧力により弁体が閉止されており、開閉弁の二次側の圧力減少によって弁体が開放する請求項1記載の予作動式スプリンクラー設備である。
【0019】
請求項7記載の発明は、前記排水手段が、開閉弁の弁体の動作に連動して作動する請求項1記載の予作動式スプリンクラー設備である。
【0020】
請求項8記載の発明は、前記排水手段が、減圧流通手段の起動から所定時間経過後において、二次側の圧力が第2の圧力以下の場合に作動される請求項3記載の予作動式スプリンクラー設備である。
【0021】
請求項9記載の発明は、前記排水手段において、火災感知器の作動確定後に排水手段を無効にする排水阻止手段を設けた請求項1記載の予作動式スプリンクラー設備である。
【発明の効果】
【0022】
請求項1記載の発明によれば、従来のスプリンクラー設備のように二次側配管内の減圧検知手段に関係なく排水手段が起動されるものであり、電気的手段を用いないことによって電源や配線が不要であり、シンプルな構成により排水手段を設けることが可能となる。また、排水手段の作動を検知することで二次側配管の減圧を検知することが可能となる。
【0023】
請求項2記載の発明によれば、スプリンクラーヘッドの作動により二次側配管内は減圧して圧力が第1の圧力に達すると、排水手段が起動され二次側配管内の消火水は排出される。排水手段の起動によって二次側配管内は減圧されるが、後に火災感知器が作動するとポンプが起動して加圧水が二次側配管内に流入する。二次側配管内の圧力が第1の圧力以上になると排水手段は停止し、スプリンクラーヘッドから安定して消火水が放出される。
【0024】
請求項3記載の発明によれば、二次側配管内の消火水は気温の変化による圧力変動や、配管の継目からの微量な漏れ等によって次第に減少していくので、この圧力減少により排水手段を起動させないために、第1の圧力以上に設定された第2の圧力において起動する減圧流通手段を設けたものである。減圧流通手段によって警戒時においては二次側配管内の消火水を排水手段が起動されない所定圧力以上に維持できるものである。
【0025】
請求項4記載の発明によれば、減圧流通手段は常時は弁装置により一次側と二次側との流通が阻止されており、二次側の減圧によって開放されるもので、例えば弁装置内の弁体を常時バネと開放弁の二次側圧力により付勢させて閉止状態とし、開放弁の二次側が減圧することで開弁される簡易な構成によって減圧流通手段を設けることができるものである。
【0026】
請求項5、6記載の発明によれば、排水手段を上記減圧流通手段と同様に、開放弁の二次側圧力の減少によって起動する構造としたものである。
【0027】
請求項7記載の発明によれば、排水手段を開放弁に一体に設け、二次側の減圧による開放弁の弁体の移動に連動して作動されるものであり、排水手段と開放弁を一体に設置したことで装置の小型化やコストダウンが図れるものである。
【0028】
請求項8記載の発明によれば、減圧流通手段の起動から所定時間経過後に開放弁の二次側の圧力が減圧流通手段の起動圧力である第2の圧力以下である場合に排水手段を起動させることにより、スプリンクラーヘッドまたは二次側配管の漏れが減圧流通手段からの供給水量以上で、排水手段の起動圧力である第1の圧力以上である場合に、排水手段が起動して水損被害が抑制できるものである。
【0029】
請求項9記載の発明によれば、火災感知器の作動確定後に排水手段を無効にすることで、続いて作動するスプリンクラーヘッドから消火水が遅滞なく散布可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明を実施するにあたって、排水手段は開放弁の二次側の圧力減少によって開弁する減圧作動弁を用いるのが好ましい。該減圧作動弁は開放弁の二次側の圧力が復帰すると弁体を閉止する構造であり、具体的な一例としては弁体の一面が開放弁の二次側の圧力により閉止方向に不勢され、反対側の面がバネ等の弾発体により開放方向に不勢される構造である。その際、弾発体の力は開放弁の二次側の圧力が第1の圧力以
下になった際に弁体を開放するように設計する。
【0031】
減圧流通手段は、開放弁の一次側の圧力と二次側の圧力を等しくした場合、二次側圧力とバネの力により弁体を付勢する簡易なものを開放弁の一次側と二次側との間に設置する。二次側の圧力を一次側の圧力より小さくしたい場合には、一次側と二次側とを電気的制御可能な電動弁により閉鎖し、二次側に設けた圧力検知手段によって電動弁の開閉を制御することや一次側と二次側との間に減圧弁を使用することも可能である。
【0032】
排水阻止手段は、排水手段の二次側に常時開放状態の電動弁を設置し、火災感知器の作動確定後に電動弁を閉止制御することで構成可能である。
【実施例1】
【0033】
以下、この発明の実施例1を図1から図3を参照して説明する。図1は本発明の予作動式スプリンクラー設備の系統図、図2は実施例1の開放弁の断面図、図3は実施例1の排水手段の断面図を表す。
【0034】
本発明の予作動式スプリンクラー設備は図1に示すように、水源1、ポンプ2、開放弁3、スプリンクラーヘッド4、排水装置5から構成される。これらの構成品は配管によって接続され、常時閉止状態の開放弁3を境に一次側配管6と二次側配管7に分けられ、一次側配管6および二次側配管7内には消火水が充填されている。
【0035】
水源1は、消火水を備蓄しておく水槽である。ポンプ2は火災時に水源1の消火水を作動したスプリンクラーヘッドまで送水する加圧送水装置であり、一次側配管6に設置されている圧力タンク8の圧力値が所定圧力以下になるとポンプ2が起動される。
【0036】
開放弁3は図2に示すように内部が隔壁9によって一次室Iと二次室IIに分けられている。隔壁9には一次室Iと二次室IIを連通する連通口10が開けられており、連通口10は有底円筒型の弁体11および弁体11の背面に設置され、連通口10側に不勢するバネ12により閉塞されている。
【0037】
弁体11の側面は弁箱の内壁に沿って摺動可能である。弁体11の背面には弁体11と弁箱の内壁とによって制御室13という空間が形成されており、該制御室13内に消火水を流入・排出することで、弁体11が弁箱内壁に沿って摺動し、連通口10の開放・閉止が可能となる。
【0038】
制御室13には接続口14、15が設置されており、接続口14は一次室Iと接続している配管が設置されている。該配管上には、逆止弁16が設置されており、逆止弁16の内部はバネ17により一次室I側に不勢された弁体18が設けられており、逆止弁内部の流体圧力とバネ17の力によって弁体18が流路を閉塞している。
【0039】
バネ17の力は弱いものでよく、制御室13内の圧力が一次室Iの圧力を下回った場合に弁体18がバネ17側に移動され、一次室Iの消火水が制御室13に補充される。制御室13内の消火水は、弁体11に穿設された小穴19によって二次室IIにも流出されており、一次室I、制御室13、二次室IIは同圧状態となっている。
【0040】
制御室13の接続口15には、排水管が接続され、該配水管上には常時閉止状態の電動弁20が設置されている。該電動弁20はスプリンクラーヘッド4の近傍に設置されている火災感知器21の作動によって開放されるものである。電動弁20が開放されると制御室13内の消火水は排水され、弁体11が連通口10から離れて一次室Iと二次室IIが連通可能な状態となる。
【0041】
スプリンクラーヘッド4は火災の熱によって作動するもので、二次側配管7内の消火水を室内に均一に散布するものである。スプリンクラーヘッドについては周知であるので説明は省略する。
【0042】
排水装置5は図3に示すように筒状で上下に接続口22、23が設けられ、接続口22は図示しない二次側配管7に接続され、接続口23は図示しない排水管に接続されている。排水装置5の内部には内フランジ24が設置されており、該内フランジ24の上に弁体25が載置され、接続口23側に二次側配管7内の消火水が流れないように開口26を閉塞している。
【0043】
弁体25の接続口23側にはバネ27が設置され、弁体25を接続口22側に押し上げるように不勢している。しかしながら弁体25は二次側配管7内の消火水の圧力によって内フランジ24を押圧していることから、バネ27の力によって弁体25は内フランジ24から離れることはない。バネ27の力は二次側配管7内が例えば0.05MPaになったときに弁体25を内フランジ24から引き離す程度の力に設計するとよい。
【0044】
続いて、実施例1の予作動式スプリンクラー設備の作動について説明する。
【0045】
平時において、開放弁3は閉止状態を維持しており、一次側配管6および二次側配管7内には消火水が充填された状態にある。火災が発生すると、火災感知器21が作動して開放弁3の電動弁20を起動して制御室13内の消火水を排水し、弁体11を開放する。
【0046】
弁体11の開放によって一次室Iと二次室IIは消火水が通過可能な状態となる。火災感知器21の作動に続いてスプリンクラーヘッド4が作動すると、二次側配管7内部の消火水が作動したスプリンクラーヘッド4から放出される。スプリンクラーヘッド4の作動によって二次側配管7内は減圧されるとともに、一次側配管6内の消火水も開放弁3を通過して二次側配管7に供給されるので一次側配管6内も減圧する。
【0047】
一次側配管6内が減圧すると圧力タンク8内の圧力も減少し、圧力タンク8からポンプ起動信号が出力され、ポンプ2が起動される。ポンプ2の起動によって水源1より汲み上げられた消火水は、一次側配管6、開放弁3、二次側配管7を通過し、作動したスプリンクラーヘッドへ連続的に供給され、スプリンクラーヘッド4から放出された消火水は室内に均一に散布されて火災が消し止められる。
【0048】
さらに、火災感知器の作動よりも先にスプリンクラーヘッドが作動した場合について説明する。
【0049】
火災の熱によってスプリンクラーヘッド4が作動すると、二次側配管7内の消火水が作動したスプリンクラーヘッド4より放出され、二次側配管7内は急激に減圧される。二次側配管7の減圧によって排水装置5内のバネ27が弁体25を押圧する二次側配管7内の圧力に打ち勝って、弁体25が開放される。弁体25の開放によって二次側配管7内の消火水は排水管から外部に流出して、二次側配管7内は空の状態となる。
【0050】
続いて火災感知器21が作動すると、開放弁3内の弁体11が開放され、一次側配管6内の消火水が二次側配管7内に流れ込んでくる。さらに一次側配管6内も急激に減圧するため、圧力タンク8よりポンプ起動信号が出力され、ポンプ2の起動によって水源1から作動したスプリンクラーヘッド4へ加圧された消火水が供給される。
【0051】
二次側配管7内に加圧された消火水が流入すると、二次側配管7内の圧力は増加し、排水装置5の弁体25は二次側配管7内の圧力によって内フランジ24の上に着座され、排水は停止する。スプリンクラーヘッド4より連続して消火水が放水されることで火災は消火される。
【0052】
一方、非火災時にスプリンクラーヘッドが誤作動した場合について説明する。
【0053】
スプリンクラーヘッドが外的衝撃等により火災時以外に誤作動すると、誤作動したスプリンクラーヘッド4から二次側配管7内の消火水が流出して、二次側配管7内は減圧される。二次側配管7の減圧により減圧装置5の弁体25が開かれ、二次側配管7内部の消火水を急速排水するので二次側配管7内部は空になる。また火災感知器21が作動していないので開放弁3も閉止状態を維持することから、誤作動したスプリンクラーヘッド4からの放水は停止し、水損被害を低減できるものである。
【実施例2】
【0054】
続いて、本発明の実施例2について図4を参照して説明する。図4は実施例2の開放弁の断面図である。
【0055】
実施例2において、実施例1と構造が同じ部分については同符号を付して説明は省略する。実施例2の予作動式スプリンクラー設備は、開放弁の二次側の圧力が一次側の圧力よりも低く設定されているものであり、常時において二次側配管内の圧力が一定範囲内にあるように制御されるものである。
【0056】
実施例2の予作動式スプリンクラー設備のシステム構成および動作は、実施例1と略同様である。相違点は開放弁の構造の違いであり、この点について説明する。
【0057】
実施例2の開放弁30は、二次室IIの消火水の圧力が一次室Iの圧力よりも低く設定され、二次室IIおよび二次側配管7内の消火水の圧力をできるだけ低く抑えることにより、スプリンクラーヘッド4が誤作動した際に放出される消火水の量を低減する効果がある。
【0058】
ここでは一例として、二次側室IIおよび二次側配管7内の圧力を0.2MPa付近に維持するように構成した開放弁30について説明する。開放弁30は概ね実施例1の開放弁3と同じ構造であるが、弁体11の閉止時に二次室IIへ消火水を補充する構造が異なり、一次室Iと二次室IIとを連通する配管31が設置され、該配管31上に常時閉止状態の電動弁32が設置されている。
【0059】
また、電動弁32と二次室IIとの間には、圧力検知ユニット33が設置され、該圧力検知ユニットから出力される信号によって電動弁32が開閉制御されるものである。
【0060】
具体的には、圧力検知ユニット33は電動弁32を開放する圧力値、例えば0.15MPa以下と、電動弁32を閉止する圧力値である0.3MPa以上の2つの圧力値の検出が可能である。
【0061】
これにより二次室IIおよび二次側配管7内は0.15MPaから0.3MPaの範囲内にあり、スプリンクラーヘッド4が誤作動した際にも水損被害を低減できるものである。
【実施例3】
【0062】
次に実施例3について図5、6を参照して説明する。図5は実施例3の開放弁の断面図である。図6はスプリンクラーヘッドが誤作動した際の図5の断面図を表す。
【0063】
実施例3も実施例2と同様、略実施例1と同じ構成および作用であるので、構造が同じ部分には同符号を付して説明は省略する。実施例3の予作動式スプリンクラー設備は、開放弁に排水手段を一体に設置したものであり、その構造を図5に示す。
【0064】
図5に示す開放弁40おいて、連通口10には筒状の可動弁座41が設置され、皿バネ42によって可動弁座41は弁体11側に不勢されており、可動弁座41に弁体11の底面が接している状態にある。
【0065】
弁体11の軸の二次室II側の延長上には、排水口Dが設けられ、排水管が接続されている。排水口Dの手前には弁座43Aおよび弁体43Bが設けられ、弁体43Bには弁体11の底面に接するロッド44が固定設置されている。弁体43Bはバネ45によって弁座43A側に不勢されており、常時において弁体43Bは閉止状態にある。
【0066】
弁体11には、複数の小穴46が穿設され、一次室I内の消火水が制御室13を介して二次室IIへ流入可能な構造となっている。制御室13から二次室IIへと連通する小穴46を通過する水量は、スプリンクラーヘッド1個が作動する際の流量よりも少ない水量となるように小穴の径を設定する。
【0067】
続いて実施例3の予作動式スプリンクラー設備上のスプリンクラーヘッドが誤作動した場合について説明する。
【0068】
スプリンクラーヘッド4が火災時以外に作動した場合、開放弁40の弁体11は閉止されたままの状態にあり、二次側配管7内の消火水は作動したスプリンクラーヘッド4より流出して、二次側配管7内および二次室II内は減圧する。その際、一次室Iより制御室13を介して二次室II側に消火水は流れ込むが、制御室13と二次室IIとを連通する小穴の水量は、スプリンクラーヘッドから放出される消火水の水量よりも少ないことから二次側配管7内は継続して減圧される。
【0069】
二次側配管7の圧力と制御室13内の圧力との差が大きくなると、制御室13内の圧力によって可動弁座41を不勢している皿バネ42が弾性変形により潰され、弁体11および可動弁座41が二次室II側に移動する。
【0070】
弁体11の移動
に伴い、弁体11に接していたロッド44も同方向に移動され、ロッド44に固定設置されていた弁体43Bは弁座43Aから離れて二次室IIの消火水は排水口Dから排水される。これによりスプリンクラーヘッドの誤作動時における水損被害の低減が可能となる。
【0071】
その他、上記以外の実施例として、排水手段と減圧流通手段とを一体に構成してもよい。例えば三方弁により第1の接続口を開放弁の二次側に、第2の接続口を排水管に、第3の接続口をオリフィスを介して開放弁の一次側に、各々接続する。二次側に設けた圧力検知手段からの信号により三方弁の流路を切替えることで排水手段と減圧流通手段とを一体に構成することが可能となる。
【0072】
また前述にもあるとおり、排水手段および減圧流通手段は電気的に制御することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の予作動式スプリンクラー設備の系統図
【図2】実施例1の開放弁の断面図
【図3】実施例1の排水手段の断面図
【図4】実施例2の開放弁の断面図
【図5】実施例3の開放弁の断面図
【図6】スプリンクラーヘッドが誤作動した際の図5の断面図
【符号の説明】
【0074】
1 水源 2 ポンプ 3 開放弁 4 スプリンクラーヘッド 5 排水装置 10 連通口 11 弁体 13 制御室 16 逆止弁 19 小穴 20 電動弁 21 火災感知器 22 二次側接続口 23 排水側接続口 25 弁体 30 実施例2の開放弁 32 電動弁 33 圧力検知ユニット 40 実施例3の開放弁 41 可動弁座 42 皿バネ 43A 排水手段の弁座 43B 排水手段の弁体 44 ロッド 46 小穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側が給水源と接続され、二次側にスプリンクラーヘッドが設置され、該スプリンクラーヘッドの近傍に設置された火災感知器の作動によって開放される開閉弁が設置された予作動式スプリンクラー設備において、開放弁の二次側の圧力が第1の圧力以下に降下したことにより二次側の液体を排出する排水手段が設置されていることを特徴とする予作動式スプリンクラー設備。
【請求項2】
前記予作動式スプリンクラー設備において、作動した排水手段は二次側の圧力が第1の圧力以上になると閉止する構造であることを特徴とする請求項1記載の予作動式スプリンクラー設備。
【請求項3】
前記予作動式スプリンクラー設備において、開放弁の二次側の圧力が、第1の圧力より高い第2の圧力以下に降下した場合に一次側から二次側へ通水が可能となる減圧流通手段が設置されていることを特徴とする請求項1記載の予作動式スプリンクラー設備。
【請求項4】
前記減圧流通手段とは、常時は閉止状態にあり開放弁の二次側の減圧によって開放される弁装置であり、弁装置の開放によって一次側と二次側が連通可能となることを特徴とする請求項3記載の予作動式スプリンクラー設備。
【請求項5】
前記排水手段は、弁体が弾発体および開放弁の二次側流体の圧力により閉止されており、開閉弁の二次側の圧力減少によって弁体が開放することを特徴とする請求項1記載の予作動式スプリンクラー設備。
【請求項6】
前記排水手段は、開閉弁の二次側の圧力により弁体が閉止されており、開閉弁の二次側の圧力減少によって弁体が開放することを特徴とする請求項1記載の予作動式スプリンクラー設備。
【請求項7】
前記排水手段は、開閉弁の弁体の動作に連動して作動することを特徴とする請求項1記載の予作動式スプリンクラー設備。
【請求項8】
前記排水手段は、減圧流通手段の起動から所定時間経過後において、二次側の圧力が第2の圧力以下の場合に作動されることを特徴とする請求項3記載の予作動式スプリンクラー設備。
【請求項9】
前記排水手段において、火災感知器の作動確定後に排水手段を無効にする排水阻止手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の予作動式スプリンクラー設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−82735(P2009−82735A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321805(P2008−321805)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【分割の表示】特願2005−309640(P2005−309640)の分割
【原出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(000199186)千住スプリンクラー株式会社 (87)
【Fターム(参考)】