説明

二つの連続的に撹拌されている槽から成る反応器を使用しメタロセン触媒を用い二峰性のポリオレフィンを製造する方法

本発明によれば、(i)第1の連続的に撹拌されている反応器の中で、第1の重合条件下において、オレフィン単量体および第1の共反応物を触媒系と接触させ、第1の分子量分布をもつ第1のポリオレフィンをつくり;(ii)第2の連続的に撹拌されている反応器の中で、第2の重合条件下において、オレフィン単量体および第2の共反応物を触媒系と接触させ、第1の分子量分布とは異なった第2の分子量分布をもつ第2のポリオレフィンをつくる段階を含んで成る二峰性または多峰性の分子量分布をもったポリオレフィンの製造法において、第1および第2の連続的に撹拌されている反応器は直列に連結されており、第1および第2のポリオレフィンは一緒に混合され、該共反応物の一つは水素であり、他の共反応物は共重合単量体であり、各触媒系は(a)ビスインデニル触媒成分、および(b)該触媒成分を賦活する賦活剤を含んで成る方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリオレフィンの製造法、特に2個の直列に連結された連続的に撹拌されている槽から成る反応器を用い、多峰性の分子量分布(MWD)をもつポリエチレン、さらに特定的には二峰性の分子量分布をもつポリエチレンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子量をもったポリエチレンのようなポリオレフィンは低分子量をもつものに比べ一般に改善された機械的性質をもっている。しかし、高分子量のポリオレフィンは加工が困難であり、製造コストが高い可能性がある。二峰性の分子量分布をもつポリオレフィンは、高分子量部分のもつ有利な機械的性質と低分子量部分のもつ改善された加工性が組み合わされているために望ましい材料である。
【0003】
特定的には、靭性、強度、および環境応力亀裂に対する抵抗性(ESCR)が強化されているポリエチレンが重要である。これらの強化された性質は高分子量のポリエチレンを用いれば容易に達成される。しかし、重合体の分子量が増加するにつれて樹脂の加工性は低下する。広い、即ち二峰性のMWDをもつ重合体をつくることにより、高分子量樹脂の特徴である所望の性質が保持されると同時に加工性、特に押出し性が改善される。
【0004】
二峰性の、即ち広い分子量分布をもった樹脂の製造法はいくつか存在し、熔融配合法、直列に連結した形の反応器を用いる方法、または単一の反応器において二重部位触媒を用いる方法などがある。熔融配合法は完全に均一化することが必要であり、またコストが高いという欠点をもっている。単一の反応器の中で二峰性の樹脂をつくるため二重部位触媒を使用することも知られている。
【0005】
ポリオレフィンの製造に使用されるクロム触媒は分子量分布を広げる傾向があり、或る場合には二峰性の分子量分布を生じることができるが、通常はこれらの樹脂の低分子量部分はかなりの量の共重合単量体を含んでいる。分子量分布が広がると許容できる加工性が得られると同時に、二峰性の分子量分布は優れた性質を与えることができる。或る場合には高分子量および低分子量の部分を調節し、それにより機械的性質を調節することさえできる。しかし例えば単一部位の触媒を用いて二峰性のポリエチレンをつくることは困難である。何故なら二つの別々の組の反応条件が必要だからである。
【0006】
Ziegler−Natta触媒は、二つの反応器を直列に使用して二峰性のポリエチレンを製造できることが知られている。典型的には、第1の反応器の中でZiegler−Natta触媒を存在させ水素とエチレンとの反応により低分子量の単独重合体を生成させる。この過程においては過剰の水素を使用することが重要であり、その結果生成物を第2の反応器に送る前にすべての水素を第1の反応器から取り除く必要がある。第2の反応器の中でエチレンとヘキセンとの共重合体をつくり、高分子量のポリエチレンを製造する。
【0007】
ポリオレフィンの製造にはメタロセン触媒も知られている。例えば特許文献1には多峰性、または少なくとも二峰性の分子量分布をもったポリオレフィン、例えばポリエチレンの製造法が記載されている。この方法では、一つの反応器の中で少なくとも2種のメタロセン触媒を含む触媒系が使用される。使用されるメタロセン触媒は例えば二塩化ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムおよび二塩化エチレン−ビス(インデニル)ジルコニウムである。同じ反応器の中で2種の異なったメタロセン触媒を使用することにより、少
なくとも二峰性の分子量分布が得られる。
【0008】
特許文献2には、二つの反応区域を用いメタロセン触媒を使用して二峰性のポリオレフィンを製造する方法が記載されている。各反応区域には、それぞれビス−テトラヒドロインデニル化合物を含んで成るメタロセン触媒成分を含む異なった触媒系が含まれている。第1および第2の反応区域が相互に連結されたループ反応器であるか、或いは一つの互いに連結されたループ反応器であって連続的に撹拌されている反応器である可能性が開示されている。
【特許文献1】ヨーロッパ特許−A−0619325号明細書。
【特許文献2】ヨーロッパ特許−A−0881237号明細書。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は二峰性または多峰性の分子量分布をもったポリオレフィンの新規製造法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明によれば、
(i)第1の連続的に撹拌されている反応器の中で第1の重合条件下においてオレフィン単量体および第1の共反応物を触媒系と接触させて第1の分子量分布を有する第1のポリオレフィンを含んで成る生成物をつくり、
(ii)第2の連続的に撹拌されている反応器の中で第2の重合条件下においてオレフィン単量体および第2の共反応物を触媒系と接触させて第1の分子量分布とは異なった第2の分子量分布を有する第2のポリオレフィンを含んで成る生成物をつくる段階を含んで成り、
ここで第1および第2の連続的に撹拌されている反応器は直列に連結され、第1および第2のポリオレフィンは一緒に混合され、共反応物の一つは水素であって他は共重合単量体であり、各触媒系は(a)メタロセンまたはポスト−メタロセン(post−metallocene)触媒成分、および(b)該触媒系を賦活する賦活剤を含んで成っていることを特徴とする二峰性または多峰性の分子量分布をもつポリオレフィンの製造法が提供される。
【0011】
上記の説明から各反応器の中では単一部位の触媒系が使用されていることが分かるであろう。
【0012】
メタロセン触媒成分は少なくとも第1の共反応物の濃度が比較的低いところで作用することができるから、この方法は実質的にすべての第1の共反応物が第1の反応区域の中で消費されるような条件下で行うことができる。このことは、段階(i)の生成物を段階(ii)において第2の共反応物と接触させる場合には特にそうである。これによって本発明方法は一層効率的に且つ一層経済的に操作できるようになる。第1の共反応物の過剰な量を除去するのに必要なコストを避けることができる。
【0013】
樹脂の低分子量部分の分岐が少ないこと(理想的には分岐がないこと)と高分子量部分の濃度が高いこととが組み合わされると、環境応力亀裂に対する抵抗性(ESCR)および衝撃強さに関する樹脂の性質が著しく改善されることが見出だされた。
【0014】
本発明の触媒系を用い直列に互いに連結された二つの連続的に撹拌されている反応器を使用すると、樹脂の性質が改善されることが見出だされた。
【0015】
本発明に従えば、連続的に撹拌されている反応器は典型的には液体を満たした条件で操
作される。
【0016】
本発明方法のメタロセンまたはポースト−メタロセン触媒成分には特に制限はない。触媒成分は、賦活剤によって賦活された場合、水素の存在下において低分子量の分布をもつポリオレフィンを含んで成る生成物を生じるように作動し得る良好な水素応答性をもっている触媒である。さらに、本発明の触媒成分は共重合単量体の存在下において高分子量の分布をもつポリオレフィンを含んで成る生成物を生じるように作動し得る良好な共重合単量体混入性をもっていなければならない。このタイプの触媒成分は当業界の専門家には公知である。しかしいくつかの好適な触媒成分を下記に詳細に示す。
【0017】
「良好な水素応答性」および/または「良好な共重合単量体混入性」をもった触媒は対象となる標準的な触媒を用いて得られるポリオレフィン生成物のメルトインデックスおよび分子量を測定することによって決定することができる。
【0018】
好適な触媒成分の第1の種類は一般式
(IndHR”MQ
のビス−テトラヒドロインデニル化合物を含んで成る成分である。ここで各Indは同一または相異なり、インデニルまたは置換インデニルであり:R”はC〜C−アルキレン基、ジアルキルゲルマニウム、または珪素またはシロキサン、或いはアルキルフォスフィンまたはアミン基を含んで成る架橋であり、該架橋は置換基をもちまたはもたないものであり;Mは周期律表の第4族の金属またはバナジウムであり;各Qは独立に炭素数1〜20のヒドロカルビル基、またはハロゲンである。
【0019】
各ビス−テトラヒドロインデニル化合物はシクロペンタジエニル環、シクロヘキセニル環、およびエチレン架橋の中の一つまたはそれ以上の位置において同じようにまたは互いに異なった方法で置換されていることができる。各置換基は独立に式XRの基から選ぶことができ、ここでXは周期律表第14族、酸素および窒素から選ばれ、各Rは同一または相異なり水素および炭素数1〜20のヒドロカルビルから選ばれ、v+1はXの原子価である。Xは好ましくはCである。シクロペンタジエニル環が置換基をもっている場合、その置換基はオレフィン単量体の金属Mに対する配位に影響を与えるような非常に嵩張った基であってはならない。シクロペンタジエニル環上における式XRをもつ置換基はRが水素またはCHであることが好ましい。さらに好ましくは少なくとも一つの、最も好ましくは両方のシクロペンタジエニル環は置換基をもっていない。
【0020】
特に好適な具体化例においては、両方のインデニルは置換基をもっていない。
【0021】
R”は好ましくは置換基をもったまたはもたないエチレン架橋である。
【0022】
金属Mは好ましくはジルコニウム、ハフニウムまたはチタンであり、最も好ましくはジルコニウムである。
【0023】
各Qは同一または相異なり、炭素数1〜20のヒドロカルビルまたはヒドロカルボキシ基であるか、或いはハロゲンである。適当なヒドロカルビル基にはアリール、アルキル、アルケニル、アルキルアリール、またはアリールアルキルが含まれる。各Qは好ましくはハロゲン、さらに好ましくはClであるか、メチル基である。
【0024】
二塩化エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロ−1−インデニル)ジルコニウムは本発明の特に好適なビステトラヒドロインデニル化合物である。
【0025】
好適な触媒成分の第1の種類の触媒成分は公知方法によって製造することができる。好
適な製造法はJ.Org.Chem.誌、288巻、63〜67頁(1985年)に記載されている。
【0026】
第2の種類の好適な触媒成分はへテロ原子を含む配位子を有するもの、特に一般式
(L)M(Q) (I)
を含んで成るものである。ここでMはTi、Zr、Sc、V、Cr、希土類金属、Fe、Co、NiまたはPdから成る群から選ばれる。各Qは独立に炭素数1〜20の炭化水素またはハロゲンであり、pはMの原子価からすべてのLの配位数の和を差し引いた値であり、nは1、2または3から選ばれ、Lはへテロ原子を含む配位子である。このへテロ原子は望ましくは電子供与性の配位子であり、Mに配位することができるように位置している。Lは2個以上のへテロ原子を含んでいることができる。LがMに配位できる2個または3個のへテロ原子を含んでいる場合、典型的にはLはそれぞれ二座または三座配位子である。
【0027】
好ましくはQは塩素、臭素、ヨード、および炭素数1〜20のアルキル基を含んでいる。
【0028】
一具体化例においては、nは1であり、Lは下記のものから選ばれる二座配位子である。
【0029】
【化1】

【0030】
ここでnは2または3であり;R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R16およびR17はそれぞれ独立にヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルから選ばれ、R、R、R、R、R、R14、R15、R18およびR19はそれぞれ独立に水素、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルから選ばれ、式IIのRとRは一緒になって環をつくることができ、式IIIの中の2個のRおよび/またはRとRおよび/またはRとRは一緒になって環をつくることができ、および/または式VのR18とR19は環をつくることができる。
【0031】
一般に式IVのR12とR10;R11とR13;またはR14とR15は環をつくらない。
【0032】
上記式II、III、IVおよびVにおいて、Nは事実上任意の電子供与性のへテロ原子である。他の適当なヘテロ原子はPおよびOを含んでいる。
【0033】
Lが上記式II、III、IVおよびVから選ばれる場合、Mは好ましくはNiまたはPdである。
【0034】
式Iの触媒成分およびそれらの製造法は米国特許第5,880,323号明細書に記載されている。この特許は引用により本明細書に包含される。式Iの触媒成分に対する触媒の合成はメタロセンの合成よりも容易である。さらに、これらの触媒成分は、単一部位で重合体へ変化させることができ、沈澱により極性の共重合単量体を導入できる限りにおいて有利である。
【0035】
理論によって本発明を限定するつもりはないが、これらの触媒についてはβ−水素化物除去経路により重合を行う機構が提案されている。この提案された反応機構に関するこれ以上の情報はChemical Market Resources Inc.1996年2月発行の社報、第1号、4〜8頁に記載されている。
【0036】
一般式Iの特に好適な触媒成分を下記式VIに示す。
【0037】
【化2】

【0038】
ここで、MはNiまたはPdであり;各Qは独立に上記一般式Iに関して定義した通りであり、Arはアリール基を含む。好ましくはQはCHまたはBrであり、Arは置換基をもったフェニル基、例えば2,6−C(i−Pr)である。
【0039】
好適な触媒成分の第2の種類の範囲内で、nが1であり、Lが三座の配位子である他の具体化例を定義することができる。好ましくはMは鉄またはコバルトである。好適なLは2,6−置換ピリジン基に結合した二つの2,3−ジイソプロピルアニリン基から成る三座配位子である。このような触媒は下記一般式VIIを含んで成っている:
【0040】
【化3】

【0041】
ここで、各Qは上記定義の通りであり;MはFeまたはCoであり;R、R、RおよびRはそれぞれ独立に水素、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビル、好ましくはH、MeまたはPrである。
【0042】
好ましくは両方のQはClである。
【0043】
MおよびR〜Rの好適な組み合わせは次の通りである。
1 M=Fe; R=Me; R=R=Pr; R=H
2 M=Fe; R=R=R=Me; R=H
3 M=Fe; R=R=R=R=Me
4 M=Fe; R=R=R=Me; R=H
5 M=Fe; R=R=H; R=R=Me
6 M=Co; R=Me; R=R=Pr; R=H
好適な触媒成分の第2の種類におけるさらに他の具体化例では、n=3であり、各Lは一座配位子である。好ましくは各Lはフェニル基を含んでいる。このような触媒成分は下記一般式VIIIを含んで成っていることができる。
【0044】
【化4】

【0045】
ここで、各Qは独立に上記の定義の通りであり;MeはFeまたはCo;R、RおよびRは独立に水素、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルである。好ましくは両方のRはMeであり、すべてのRおよびRはPrである。
【0046】
好ましくは各QはClである。
【0047】
第1の反応器の中の触媒成分は第2の反応器の中の触媒成分と同一または相異なることができる。
【0048】
一具体化例においては、各反応器の中で異なった単一部位触媒を使用する。他の具体化例においては、二つの異なった触媒を単一の担体の上に担持させ(二重部位触媒をつくるため)、この二重部位触媒を両方の反応器で使用することができる。
【0049】
メタロセン触媒またはポスト−メタロセン触媒成分を賦活する賦活剤は、この目的に対して公知の任意の賦活剤、例えばアルミニウム含有賦活剤または硼素含有賦活剤であることができる。アルミニウム含有賦活剤はアルモキサン、アルキルアルミニウムおよび/またはルイス酸を含んで成ることができる。
【0050】
本発明に使用できるアルモキサンは公知であり、好ましくはオリゴマー状の直鎖アルモキサンに対しては式(I)
【0051】
【化5】

【0052】
で、オリゴマー状の環式アルモキサンに対しては式(II)
【0053】
【化6】

【0054】
で表されるオリゴマー状の直鎖および/または環式のアルキルアルモキサンを含んで成っている。ここでnは1〜40、好ましくは10〜20であり:mは3〜40、好ましくは3〜20であり;RはC〜C−アルキル基、好ましくはメチルである。
【0055】
他の好適な賦活剤にはヒドロキシイソブチルアルミニウムおよび金属アルミノキシネートが含まれる。これらは、Main Group Chemistry誌、1999年、第3巻、53〜57頁;Polyhedron誌、第18巻、(1999年)、2211〜2218頁;およびOrganometallics誌、2001年、第20巻、460〜467頁に記載されたメタロセンに対して特に好適である。
【0056】
一般に、例えばアルミニウムトリメチルと水からアルモキサンをつくる場合、直鎖および環式化合物の混合物が得られる。
【0057】
適当な硼素含有賦活剤は硼酸トリフェニルカルベニウム、例えばヨーロッパ特許A−0427696号明細書に記載されているようなテトラキス−ペンタフルオロフェニル−ボラ−ト−トリフェニルカルベニウムか、またはヨーロッパ特許−A−0277004号明細書(6頁、30行〜7頁、7行)記載のような一般式[L’−H]+[BArAr]の化合物を含んで成っていることができる。
【0058】
本発明方法の(i)および(ii)の両方の段階において同じ触媒系を使うことが好ましい。この触媒系は均一過程である溶液重合法、または不均一過程であるスラリ法に使用することができる。溶液法においては、典型的な溶媒は炭素数4〜7の炭化水素、例えばヘプタン、トルエン、またはシクロヘキサンを含んでいる。スラリ法では、触媒系を不活性担体、特に多孔性の固体担体、例えばタルク、無機酸化物、および樹脂担体材料、例えばポリオレフィンの上に固定する必要がある。担体材料は微粉末の形の無機酸化物であることが好ましい。
【0059】
本発明に使用することが望ましい適当な無機酸化物材料には、第2a、3a、4a、4b族の金属酸化物、例えばシリカ、アルミナ、およびこれらの混合物が含まれる。単独で或いはシリカまたはアルミナと組み合わせて使用できる他の無機酸化物はマグネシア、チタニア、ジルコニア等である。しかし、微粉末の官能化されたポリオレフィン、例えば微粉末ポリエチレンのような他の適当な担体材料も使用することができる。
【0060】
好ましくは、担体は表面積が200〜700m/g,細孔容積が0.5〜3ml/gのシリカである。固体担持触媒の製造に有用に使用されるアルモキサンおよびメタロセンまたはポスト−メタロセンの量は広い範囲で変えることができる。アルミニウム対遷移金属のモル比は1:1〜100:1、好ましくは5:1〜50:1の範囲であることが好適である。
【0061】
メタロセンまたはポスト−メタロセンおよびアルモキサンを担体材料に添加する順序は変えることができる。本発明の好適具体化例に従えば、適当な不活性炭化水素溶媒に溶解した賦活剤を同じまたは他の適当な液体炭化水素の中でスラリ化し、その後でメタロセン触媒成分の混合物をこのスラリに加える。
【0062】
好適な溶媒には鉱油、および反応温度において液体であり個々の成分と反応しない種々の炭化水素が含まれる。有用な溶媒の例示的な例にはアルカン、例えばペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、およびノナン;シクロアルカン、例えばシクロペンタンおよびシクロヘキサン、および芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、およびジエチルベンゼンが含まれる。
【0063】
好ましくは担体材料をトルエンの中でスラリ化し、担体材料に添加する前にメタロセンまたはポスト−メタロセンおよびアルモキサンをトルエンに溶解する。
【0064】
本発明による一つの配置においては、連続的に撹拌されている反応器の中で各ポリオレフィンを別々に製造し、次いでこれを一緒に押出して混合を行う。別法として、熔融配合によりポリオレフィンを一緒に混合することもできる。このようにポリオレフィンの低分子量部分と高分子量部分とを別の反応器の中で製造することができる。
【0065】
また一つの好適な配置においては、オレフィン単量体を含む段階(i)の生成物を段階(ii)においては第2の反応区域の中で第2の共反応物および触媒系と接触させて第2のポリオレフィンをつくり、これを第1のポリオレフィンと混合する。第1および第2の反応区域は互いに連結された連続的に撹拌されている反応器であることが便利である。新しいオレフィン単量体並びに段階(i)の生成物を第2の反応区域に導入することもできる。
【0066】
第2のポリオレフィンは第1のポリオレフィンの存在下において生成するから、多峰性の、または少なくとも二峰性の分子量分布が得られる。
【0067】
適当な共重合単量体にはアルカンおよびアルケンのグループ、特に炭素数1〜8のグループが含まれる。典型的な共重合単量体にはヘキセン、ブテン、オクテンまたはメチルペンテン、好ましくはヘキセンまたはブテンが含まれる。分離を容易にするために、共重合単量体は重合溶媒とは異なった沸点をもっていることが好ましい。
【0068】
本発明の一具体化例においては、第1の共反応物は水素であり、第2の共反応物は共重合単量体、好ましくはヘキセンまたはブテンである。
【0069】
段階(ii)を行う前に、実質的にすべての水素が第1の反応区域の中で消費されるような速度で、水素を第1の反応区域に供給することが好適である。
【0070】
これは、二峰性の分子量分布をもったポリオレフィン、好ましくはポリエチレンを製造する便利な方法であり、この場合、比較的低分子量の単独重合体が第1の反応区域でつくられ、高分子量の共重合体が第2の反応区域でつくられる。第1の反応区域で実質的にすべての水素が消費されるから、第2の反応区域における共重合は殆どまたは全く妨害を受けない。
【0071】
別の具体化例においては、第1の共反応物は共重合単量体、好ましくはヘキセンまたはブテンである。本発明の触媒成分は共重合単量体に対する応答性が良好であり、且つ水素に対する応答性も良好であるから、この具体化例においては第1の反応区域において実質的にすべての共重合単量体が消費される。共重合単量体の妨害を殆どまたは全く受けることなく第2の反応区域で単独重合が行われる。
【0072】
二つの連続的に撹拌されている反応器の条件は独立に変えることができる。
【0073】
各反応器の温度は60〜90℃、好ましくは65〜85℃、さらに好ましくは75〜8
5℃である。各反応器の圧力は5〜10バールの範囲である。
【0074】
各反応器における滞留時間は45分〜9時間、もっと典型的には45分〜4時間の範囲であることができる。
【0075】
本発明方法におけるオレフィン単量体はエチレンを含んで成っていることが好ましい。この点に関し、生成したポリオレフィンがポリエチレンを含んで成っていることが好ましい。
【0076】
ポリエチレンの場合、連続的に撹拌されている槽から成る反応器(CSTR)の中におけるZiegler−Natta触媒系に対し、当業界の専門家は特定の処理技術についていくつかの選択を行うことができる。
【0077】
これらの処理技術のいくつかはChemical Market Resources
Inc.2002年6月/7月発行の社報、第7巻、6号、18〜27頁にまとめられている。
【0078】
この文献には「Hostalen」法が要約されている。この中には、温度範囲75〜85℃、圧力5〜10バールで操作されている反応器に、単量体、共重合単量体、水素およびヘキサン(希釈剤)を連続的に供給することが述べられている。各反応器の条件は独立に変えることができる。重合体の懸濁液はこれらの反応器から通常のポスト反応器へと流れる。この懸濁液を遠心分離により分離し、重合体を乾燥し、押出し機に送ってペレットにする。CSTR反応器は直列で操作される。
【0079】
また上記文献には「CX法」が記載されている。この方法は同じ大きさの二つの連続的に撹拌されている槽から成る反応器を具備し、これを直列に作動させて二峰性の分子量分布をもつフィルム用の樹脂をつくる。希釈剤はヘキサンであり、通常共重合単量体はブテン−1である。典型的な条件は操作圧力が7.8バール、操作温度が85℃、反応器1個当たりの滞留時間は45分である。
【0080】
Chemical Market Resources Inc.の社報に記載されていない他の特定の方法に「Hoechst」法がある。この方法はMFIの範囲が1.0〜52.0で密度の範囲が0.944〜0.957の高密度製品、およびMFIの範囲が0.24〜0.55で密度の範囲が0.946〜0.956の高分子量製品をつくるのに使用することができる。
【0081】
この方法では触媒はバッチ法でつくることができ、これを触媒貯蔵容器に移し、ここから重合反応器に供給する。
【0082】
エチレン、共重合単量体および水素から成るガスの供給混合物を連続的に第1段階の反応器に供給することができる。溶媒のヘキサンを同時に反応器に圧入する。粉末生成物の下流においてヘキサンを回収し、反応器に戻して循環させることができる。また、調製用のヘキサンを加えて損失を補うことができる。
【0083】
「Hoechst」法においては、重合は圧力5〜10バール、温度75〜90℃で起こる。この反応は極めて発熱的であり、冷却用のジャケットを通じて反応熱を除去することができる。分子量分布の制御は触媒の濃度、および共重合単量体および水素の濃度を変化させて行うことができる。
【0084】
重合体の懸濁液を膨張容器に入れ、脱ガスを行って残った量のエチレンおよび共重合単
量体を除去することができる。廃ガスとして除去されるヘキサンを凝縮させて分離し循環させることができる。重合体のスラリを遠心分離器に供給し、ここでポリエチレンの粉末をヘキサンの母液から分離し、母液は第1段階の反応器へ循環させることができる。循環されるヘキサンは精製せずに直接反応器へ送ることができる。ポリエチレンの粉末は乾燥機へと送ることができ、ここで残留したヘキサンが高温の窒素を用いて追出される。
【0085】
「Hoechst」法によって最高2%のブテン−1共重合単量体を混入することができる。
【0086】
次に例示だけを目的とした下記の実施例を参照して本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0087】
触媒の製造
二塩化エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロ−1−インデニル)ジルコニウムはJournal of Organometallic Chemistry誌、288巻(1985年)63〜67頁記載のBrintzingerの方法で製造した。
【0088】
使用した担体は全細孔容積が4.217ml/g、表面積が322m/gのシリカである。このシリカをシュレンクライン(schlenk line)の上で高真空において3時間乾燥して、物理的に吸着された水を除去することにより調製する。このシリカ5gを50mlのトルエン中に懸濁させ、磁気撹拌機、窒素入口および滴下濾斗を備えた丸底フラスコの中に入れる。
【0089】
0.31gの量のメタロセンを25mlのメチルアルモキサン(トルエン中30重量%のMAO)と温度25℃において10分間反応させ、対応するメタロセニウム陽イオンと陰イオン性のメチルアルモキサン・オリゴマーとの溶液混合物を得た。
【0090】
次にこのメタロセニウム陽イオンと陰イオン性のメチルアルモキサン・オリゴマーとを含んで成る得られた溶液を窒素雰囲気下において滴下濾斗を通して担体に加え、その直後に滴下濾斗を還流冷却器と取り替える。この混合物を110℃で90分間加熱する。次いで反応混合物を室温に冷却し、窒素下で濾過し、トルエンで洗滌する。
【0091】
得られた触媒を次にペンタンで洗滌し、穏やかな真空下で乾燥する。
【実施例2】
【0092】
押出し配合法による二峰性のポリエチレンの製造
二つの別々の連続的に撹拌されている反応器(CSTR)の中で実施例1の担持されたメタロセン触媒を使用し、異なった分子量分布をもつ2種のポリエチレン樹脂をつくり、次にこれを一緒に押出して配合し、二峰性の分子量分布をもつポリエチレンをつくった。
【0093】
各反応器は351 CSTR反応器であった。
【0094】
この方法に従ってつくられた生成物のゲル浸透クロマトグラフは二峰性の分子量分布を示した。
【実施例3】
【0095】
相互に連結された連続的に撹拌されている反応器を用いる二峰性ポリエチレンの製造
直列に連結された連続的に撹拌されている反応器(CSTR)を用い、二峰性ポリエチレンの製造に実施例1の担持されたメタロセン触媒を使用した。
【0096】
第1の351CSTR反応器の中でエチレンとヘキセンとを共重合させて高分子量のポリエチレンをつくり、第2の351CSTR反応器の中で水素の存在下においてエチレンの単独重合を行って低分子量のポリエチレンをつくった。第1のCSTRから得られた約60重量%の高分子量ポリエチレンおよび第2のCSTRから得られた40重量%の低分子量ポリエチレンを含んで成る二峰性のポリエチレンが製造された。二峰性の分子量分布をもつポリエチレン製品が得られた。
【実施例4】
【0097】
連続的に撹拌されている反応器を用いる二峰性ポリエチレンの製造
本実施例においては、実施例3とは対照的に、第1のCSTR反応器において二峰性ポリエチレンの低分子量部分をつくり、第2のCSTR攪拌反応器において高分子量部分をつくる。本実施例においては実施例1の担持メタロセン触媒を用いた。第1の反応器において水素を存在させてエチレンの単独重合を行う。第2の反応器においてエチレンとヘキセンとを共重合させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)第1の連続的に撹拌されている反応器の中で、第1の重合条件下において、オレフィン単量体および第1の共反応物を触媒系と接触させ、第1の分子量分布をもつ第1のポリオレフィンを含んでなる生成物をつくり;
(ii)第2の連続的に撹拌されている反応器の中で、第2の重合条件下において、オレフィン単量体および第2の共反応物を触媒系と接触させ、第1の分子量分布とは異なった第2の分子量分布をもつ第2のポリオレフィンを含んでなる生成物をつくる段階を含んで成る二峰性または多峰性の分子量分布をもったポリオレフィンの製造法において、
第1および第2の連続的に撹拌されている反応器は直列に連結されており、第1および第2のポリオレフィンは一緒に混合され、該共反応物の一つは水素であり、他の共反応物は共重合単量体であり、各触媒系は
(a)一般式
(IndHR”MQ
但し式中、各Indは同一または相異なりインデニルまたは置換インデニルであり、R”はC〜C−アルキレン基、ジアルキルゲルマニウム、または珪素またはシロキサン、アルキルフォスフィンまたはアミン基を含んで成る置換基をもちまたはもたない架橋であり、Mは第IV族の金属またはバナジウムであり、各Qは独立に炭素数1〜20のヒドロカルビルまたはハロゲンである、
をもつビス−テトラヒドロインデニル触媒成分化合物;および
(b)該触媒成分を賦活する賦活剤を含んで成ることを特徴とする方法。
【請求項2】
段階(i)の生成物を、オレフィン単量体を含めて、段階(ii)において第2の共反応物および触媒系と接触させ、第2の反応区域において第2のポリオレフィンをつくりこれを第1のポリオレフィンと混合することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
各ポリオレフィンは反応器の中で別々につくられ、押出しによって一緒に混合されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
オレフィン単量体がエチレンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載された方法。
【請求項5】
第2の共反応物が水素であり、共重合単量体がヘキセンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載された方法。
【請求項6】
各反応区域の温度は60〜90℃の範囲にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載された方法。
【請求項7】
触媒成分を賦活する賦活剤はアルミニウム含有賦活剤または硼素含有賦活剤を含んで成ることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載された方法。
【請求項8】
該触媒系はさらに不活性の担体を含んで成ることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載された方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一つに記載された方法により得られる二峰性または多峰性の分子量分布をもったポリオレフィン。
【請求項10】
該ポリオレフィンがポリエチレンであることを特徴とする請求項9に記載のポリオレフィン。

【公表番号】特表2009−513744(P2009−513744A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518219(P2006−518219)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【国際出願番号】PCT/EP2004/051368
【国際公開番号】WO2005/005493
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(504469606)トータル・ペトロケミカルズ・リサーチ・フエリユイ (180)
【Fターム(参考)】