説明

二座内部供与体を有する自己制限性触媒組成物

プロピレンの重合のための触媒組成物が提供される。触媒組成物は、1以上の遷移金属化合物と内部電子供与体とを有する1以上のチーグラ−ナッタプロ触媒組成物、1以上のアルミニウム含有助触媒、および外部電子供与体を含む。内部電子供与体は、プリタレートを除く二座化合物である。好適なビデンテール化合物として、ジエーテル、スクシネート、ジアルコキシベンゼンおよびジオールエステルが挙げられる。外部電子供与体は、活性制限剤と選択性決定剤との混合物である。本触媒組成物は、高い触媒活性および高い立体選択性を有し、自己消滅性である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる、2007年12月21日に出願された米国特許出願番号第61/015,978号に付与された優先権を主張する。
【0002】
本開示は、重合反応、特にプロピレン重合における使用のための立体選択性チーグラ−ナッタ触媒組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
フタレート内部電子供与体を有するチーグラ−ナッタ触媒系にシラン組成物を添加することにより、触媒選択性を改善させることが知られている。シラン組成物を活性制限剤(ALA)、例えば芳香族カルボン酸エステルと混合させることにより、自己消滅特性を有するチーグラ−ナッタ触媒系をさらに提供する。現在の調査により、フタレートに関連する健康上のリスクについての懸念の高まりが示されている。自己消滅性であり、ナフタレン系内部電子供与体を必要としない、選択性を制御する他のチーグラ−ナッタ触媒系の開発が望まれている。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、高い触媒活性および高い立体選択性を有し、自己消滅性でもある触媒組成物を対象とする。本触媒組成物は、ナフタレン系内部電子供与体を必要としない。
【0005】
一実施形態において、触媒組成物が提供される。該触媒組成物は、1以上の遷移金属化合物と内部電子供与体とを含有する1以上のチーグラ−ナッタプロ触媒組成物を含む。内部電子供与体は二座化合物である。触媒組成物は、アルミニウム含有助触媒も含む。触媒組成物は、外部電子供与体をさらに含む。外部電子供与体は、選択性決定剤と活性制限剤との混合物である。
【0006】
二座化合物は、少なくとも2つの酸素含有官能基を含有し、酸素含有官能基は、ヘテロ原子(複数可)を場合により含有していてよい少なくとも1つのC〜C10飽和炭化水素鎖によって隔てられている。二座化合物は、フタレートを除く。二座化合物は、ジエーテル、スクシネート、グルタレート、ジアルコキシベンゼン、ビス(アルコキシフェニル)、ジオールエステル、アルコキシアルキルエステル、およびこれらの任意の組み合わせであってよい。
【0007】
一実施形態において、触媒組成物が提供される。該触媒組成物は、1以上のチーグラ−ナッタプロ触媒組成物を含む。プロ触媒組成物は、1以上の遷移金属化合物と、ジエーテルである内部電子供与体とを含む。プロ触媒組成物はまた、1以上のアルミニウム含有助触媒も含む。該触媒組成物は、外部電子供与体をさらに含む。外部電子供与体は、選択性決定剤と活性制限剤との混合物である。
【0008】
一実施形態において、ジエーテルは、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパンまたは9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンであってよい。選択性決定剤は、アルコキシシラン組成物またはジエーテルであってよい。アルコキシシラン組成物は、n−プロピルトリメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシランもしくはメチルシクロヘキシルジメトキシシラン、または、n−プロピルトリメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシランおよび/もしくはメチルシクロヘキシルジメトキシシランを含むアルコキシシランの混合物であってよい。選択性決定剤はまた、先に開示した内部電子供与体のジエーテルと同じであっても異なっていてもよいジエーテル、例えば2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパンであってもよい。活性制限剤は、例えばp−エトキシ安息香酸エチルなどの芳香族モノまたはポリカルボン酸エステル、ポリ(アルケングリコール)、ポリ(アルケングリコール)エステル、または脂肪酸エステルであってよい。ジエーテルは、追加の活性制限剤として作用することもできる。
【0009】
一実施形態において、別の触媒組成物が提供される。該触媒組成物は、1以上のチーグラ−ナッタプロ触媒組成物を含む。プロ触媒組成物は、1以上の遷移金属化合物と、スクシネートである内部電子供与体とを含む。プロ触媒組成物は、1以上のアルミニウム含有助触媒をさらに含む。触媒組成物は、外部電子供与体をさらに含む。外部電子供与体は、選択性決定剤と活性制限剤との混合物である。
【0010】
一実施形態において、スクシネートは、2,3−ジイソプロピルコハク酸ジエチルである。選択性決定剤は、アルコキシシラン組成物またはジエーテルであってよい。アルコキシシラン組成物は、n−プロピルトリメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、または、n−プロピルトリメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシランおよび/もしくはメチルシクロヘキシルジメトキシシランを含有するアルコキシシランの混合物であってよい。選択性決定剤はまた、先に開示した内部電子供与体のジエーテルと同じであっても異なっていてもよいジエーテル、例えば2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパンであってもよい。活性制限剤は、例えばp−エトキシ安息香酸エチルなどの芳香族モノまたはポリカルボン酸エステル、ポリ(アルケングリコール)、ポリ(アルケングリコール)エステル、または脂肪酸エステルであってよい。ジエーテルは、追加の活性制限剤として作用することもできる。
【0011】
一実施形態において、選択性決定剤はジエーテルであり、活性制限剤はカルボン酸エステルである。例えば、選択性決定剤は、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパンであってよく、活性制限剤は、脂肪酸エステルであってよい。ジエーテルはまた、追加の活性制限剤として作用することもできる。
【0012】
一実施形態において、別の触媒組成物が提供される。該触媒組成物は、1以上のチーグラ−ナッタプロ触媒組成物を含む。プロ触媒組成物は、1以上の遷移金属化合物と、ジアルコキシベンゼンである内部電子供与体とを含む。プロ触媒組成物は、1以上のアルミニウム含有助触媒をさらに含む。触媒組成物はまた、外部電子供与体も含む。外部電子供与体は、選択性決定剤と活性制限剤との混合物である。
【0013】
一実施形態において、ジアルコキシベンゼンは、1−エトキシ−2−n−ペントキシベンゼンである。選択性決定剤は、アルコキシシラン組成物またはアミン組成物であってよい。活性制限剤は、芳香族カルボン酸エステルまたはジエーテルであってよい。ジエーテルはまた、追加の活性制限剤として作用することもできる。
【0014】
一実施形態において、選択性決定剤は、アルコキシシラン組成物、例えばメチルシクロヘキシルジメトキシシランであり、活性制限剤は、例えばp−エトキシ安息香酸エチルなどのカルボン酸エステルである。
【0015】
一実施形態において、選択性決定剤は、アミン組成物であり、活性制限剤は、芳香族カルボン酸エステルおよび/またはジエーテルであってよい。例えば、選択性決定剤は、例えば2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのアミン組成物であってよく、活性制限剤は、例えばp−エトキシ安息香酸エチルなどの芳香族カルボン酸エステルであってよい。あるいは、選択性決定剤は、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンであってよく、活性制限剤は、例えば2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパンなどのジエーテルであってよい。ジエーテルはまた、追加の選択性決定剤として作用することもできる。
【0016】
一実施形態において、別の触媒組成物が提供される。該触媒組成物は、1以上のチーグラ−ナッタプロ触媒組成物を含む。プロ触媒組成物は、1以上の遷移金属化合物と、ジオールエステルである内部電子供与体とを含む。プロ触媒はまた、1以上のアルミニウム含有助触媒も含む。触媒組成物は、外部電子供与体をさらに含む。外部電子供与体は、選択性決定剤と活性制限剤との混合物である。
【0017】
一実施形態において、ジオールエステルは、2,4−ペンタンジオールジ(p−n−ブチル)ベンゾエートである。選択性決定剤は、アルコキシシラン組成物であってよく、活性制限剤は、芳香族カルボン酸エステルであってよい。例えば、選択性決定剤は、メチルシクロヘキシルジメトキシシランであってよく、活性制限剤は、p−エトキシ安息香酸エチルであってよい。
【0018】
本明細書に開示されている本触媒組成物に外部電子供与体が存在することで、本触媒組成物を自己消滅性にする。本明細書に開示されているあらゆる触媒組成物が、0.5:1〜4:1のアルミニウム対全外部電子供与体のモル比を含むことができる。ポリマー性またはオリゴマー性の活性制限剤については、触媒組成物が、1.0:1〜50:1のアルミニウム対外部電子供与体のモル比を含むことができる。
【0019】
一実施形態において、重合プロセスが提供される。該重合プロセスは、重合条件下で、オレフィンを触媒組成物と接触させることを含む。触媒組成物として、遷移金属化合物と内部電子供与体とを有するチーグラ−ナッタプロ触媒組成物が挙げられる。内部電子供与体は、フタレートを除く二座化合物である。触媒組成物はまた、アルミニウム含有助触媒、および外部電子供与体も含む。外部電子供与体は、選択性決定剤と活性制限剤との混合物である。この方法は、ポリオレフィン組成物を形成する工程をさらに含む。
【0020】
一実施形態において、重合プロセスは、プロピレンを触媒組成物と接触させること、および約0.5%〜約10%のキシレン可溶分を有するプロピレン含有ポリマーを形成することを含む。さらなる実施形態において、重合プロセスは、プロピレンおよびエチレンを触媒組成物と接触させること、ならびにプロピレンおよびエチレンコポリマーを形成することを含む。
【0021】
一実施形態において、重合プロセスは、重合反応の間のアルミニウム対全外部電子供与体比を0.5:1〜4:1に制御することを含む。ポリマー性またはオリゴマー性の活性制限剤については、触媒組成物が、1.0:1〜50:1のアルミニウム対外部電子供与体のモル比を含むことができる。
【0022】
本開示の利点は、ポリオレフィンの製造のためのフタレート非含有触媒組成物である。
【0023】
本開示の利点は、改善された触媒組成物の提供である。
【0024】
本開示の利点は、フタレート非含有ポリオレフィン、特にフタレート非含有ポリプロピレン組成物を製造する触媒組成物である。
【0025】
本開示の利点は、フタレート内部電子供与体を含有しない自己消滅性触媒組成物の提供である。
【0026】
本開示の利点は、反応器の付着物が低減されポリマー凝集が低減された重合プロセスの提供である。
【0027】
本開示の利点は、アイソタクチシティが高くキシレン可溶分が低いフタレート非含有プロピレン含有ポリマーの製造である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書に挙げられているあらゆる数値範囲は、1単位の増分において、低い値から高い値までの全ての値を含む。ただし、任意の低い値と任意の高い値との間で少なくとも2単位離れているとする。例として、組成的、物理的または他の特性、例えば、分子量、メルトインデックスなどが、100〜1,000までの状態であるとき、例えば100、101、102などの全ての個々の値、および、例えば100〜144、155〜170、197〜200などの部分範囲が、本明細書において明確に列挙されることを意図している。1未満である値を含む範囲、すなわち、1を超える少数(例えば、1.1、1.5など)を含む範囲については、1単位は、必要に応じて、0.0001、0.001、0.01または0.1であるとみなされる。10未満の1桁の数(例えば、1〜5)を含む範囲については、1単位は、一般に0.1であるとみなされる。これらは、明確に意図されていることの単なる例であり、列挙される最低値と最高値との間の数値の全ての可能な組み合わせは、本出願において明確に記述されているとみなされるべきである。例えば、本明細書に挙げられているあらゆる数値範囲は、低い値「を超える」または「以上」の値を含む。同様に、本明細書に挙げられているあらゆる数値範囲は、高い値「未満」または「以下」の値を含む。本明細書で述べられているように、密度、成分の重量パーセント、分子量および他の特性に関する数値範囲が挙げられている。
【0029】
本明細書において用いるとき、用語「組成物」は、該組成物を含む材料の混合物、ならびに該組成物の材料から形成される反応生成物および分解生成物を含む。
【0030】
用語「ポリマー」は、同じまたは異なるタイプのモノマーを重合することによって調製される高分子化合物である。「ポリマー」は、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、インターポリマーなどを含む。用語「インターポリマー」は、少なくとも2種類のモノマーまたはコモノマーの重合によって調製されるポリマーを意味する。インターポリマーの例として、限定されないが、コポリマー(異なる2種類のモノマーまたはコモノマーから調製されるポリマーを通常は称する、ターポリマー(異なる3種類のモノマーまたはコモノマーから調製されるポリマーを通常は称する)、テトラポリマー(異なる4種類のモノマーまたはコモノマーから調製されるポリマーを通常は称する)などが挙げられる。
【0031】
上述のように、本明細書において用いるとき、用語「インターポリマー」は、少なくとも2種類の異なるモノマーの重合によって調製されるポリマーを言う。したがって総称インターポリマーは、2種類の異なるモノマーから調製されるポリマー、および3種類以上のモノマーから調製されるポリマーを称するのに通常使用されるコポリマーを含む。
【0032】
本明細書において用いるとき、用語「ブレンド」または「ポリマーブレンド」は、2以上のポリマーの組成を意味する。そのようなブレンドは、混和性であってもなくてもよい。そのようなブレンドは、相分離されていてもされていなくてもよい。そのようなブレンドは、透過型電子顕微鏡から判断される1以上のドメイン配置を含有していてもしていなくてもよい。
【0033】
本触媒組成物は、各々以下に詳述されるチーグラ−ナッタプロ触媒組成物、内部電子供与体、助触媒、および外部電子供与体を含有する。本触媒組成物において、当該分野で一般に公知であるあらゆる従来のチーグラ−ナッタプロ触媒を用いることができる。一実施形態において、チーグラ−ナッタプロ触媒組成物は、遷移金属化合物および第2族金属化合物を含有する。遷移金属化合物は、遷移金属化合物、例えば、チタン、ジルコニウム、クロムもしくはバナジウムのヒドロカルビルオキシド、ヒドロカルビル、ハライド、またはこれらの混合物から誘導される固体錯体であってよい。
【0034】
遷移金属化合物は、一般式TrXを有し、式中、Trは遷移金属であり、XはハロゲンまたはC1〜10のヒドロカルボキシルもしくはヒドロカルビル基であり、xは第2族金属化合物と組み合わされた化合物における該X基の数である。Trは、第4、5または6族の金属であってよい。一実施形態において、Trは、第4族金属、例えばチタンであり、Xは、塩素イオン、臭素イオン、C1〜4のアルコキシドもしくはフェノキシド、またはこれらの混合物であってよい。一実施形態において、Xは塩素イオンである。
【0035】
チーグラ−ナッタプロ触媒組成物を形成するために用いられ得る好適な遷移金属化合物の非限定例は、TiCl、ZrCl、TiBr、TiCl、Ti(OCCl、Zr(OCCl、Ti(OCBr、Ti(OCCl、Ti(OCCl、Zr(OCCl、およびTi(OC)Clである。このような遷移金属化合物の混合物を用いることもできる。遷移金属化合物の数については、少なくとも1種の遷移金属化合物が存在する限り制限されない。一実施形態において、遷移金属化合物はチタン化合物である。
【0036】
好適な第2族金属化合物の非限定例として、マグネシウムハライド、ジアルコキシマグネシウム、アルコキシマグネシウムハライド、マグネシウムオキシハライド、ジアルキルマグネシウム、およびマグネシウムのカルボキシレートが挙げられる。一実施形態において、第2族金属化合物は、二塩化マグネシウムである。
【0037】
さらなる実施形態において、チーグラ−ナッタプロ触媒組成物は、マグネシウム化合物に担持された、またはこれから誘導されたチタン部分の混合物である。好適なマグネシウム化合物として、無水塩化マグネシウム、塩化マグネシウム付加物、マグネシウムジアルコキシドもしくはアリールオキシド、またはカルボキシル化されたマグネシウムジアルコキシドもしくはアリールオキシドが挙げられる。一実施形態において、マグネシウム化合物は、マグネシウムジ(C1〜4)アルコキシド、例えばジエトキシマグネシウムである。
【0038】
好適なチタン部分の非限定例として、チタンアルコキシド、チタンアリールオキシド、および/またはチタンハライドが挙げられる。チーグラ−ナッタプロ触媒組成物を調製するために用いられる化合物として、1以上のマグネシウムジ(C1〜4)アルコキシド、マグネシウムジハライド、マグネシウムアルコキシハライドまたはこれらの混合物、および1もしくは複数のチタンテトラ(C1〜4)アルコキシド、チタンテトラハライド、チタンテトラ(C1〜4)アルコキシハライド、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0039】
前駆体組成物を用いて、当該分野で一般に公知のチーグラ−ナッタプロ触媒組成物を調製することができる。前駆体組成物は、上記の混合マグネシウム化合物、チタン化合物またはこれらの混合物の塩化によって調製されてよく、固体/固体メタセシスにより特定の組成物の形成または可溶化を助ける「クリッピング剤」と称される1以上の化合物の使用が関与し得る。好適なクリッピング剤の非限定例として、ホウ酸トリアルキル、特にホウ酸トリエチル、フェノール化合物、特にクレゾール、およびアルコキシシランが挙げられる。
【0040】
一実施形態において、前駆体組成物は、MgTi(ORの混合マグネシウム/チタン化合物であり、式中、Rは、1〜14の炭素原子を有する脂肪族もしくは芳香族炭化水素基またはCOR’であり、ここでR’は、1〜14の炭素原子を有する脂肪族または芳香族炭化水素基であり;各OR基は、同じまたは異なり;Xは、独立して塩素、臭素またはヨウ素であり;dは、0.5〜56であり;または2〜4、もしくは3であり;fは、2〜116、または5〜15であり;gは0.5〜116、または1〜3である。前駆体は、その調製に用いられた反応混合物からアルコールを除去することによって、制御された沈殿により調製され得る。一実施形態において、反応媒体として、芳香族液体、特に塩素化芳香族化合物、例えばクロロベンゼンまたは塩素化トルエンと、アルカノール、特にエタノール、および無機塩素化剤との混合物が挙げられる。好適な無機塩素化剤として、ケイ素、アルミニウムおよびチタンの塩素誘導体、例えば四塩化チタンまたは三塩化チタン、特に四塩化チタンが挙げられる。塩素化に用いた溶液からアルカノールを除去することにより、所望の形態および表面積を有する固体前駆体の沈殿をもたらす。さらに、得られる前駆体は、特に均一な粒子サイズにされ、粒子の粉砕ならびに得られるプロ触媒の分解に対して耐性である。
【0041】
次に、前駆体は、無機ハライド化合物、好ましくはチタンハライド化合物とのさらなる反応(ハロゲン化)、および内部電子供与体の組み込みによって固体プロ触媒に転換される。前駆体に十分量で組み込まれていないとき、内部電子供与体をハロゲン化の前、間、または後で別途添加してもよい。この手順は、場合によってはさらなる添加剤またはアジュバントの存在下で1以上回繰り返されてよく、最終の固体生成物は、脂肪族溶媒で洗浄されてよい。固体プロ触媒を作製、回収および保存するあらゆる方法が、本開示での使用に好適である。
【0042】
前駆体のハロゲン化に好適な一方法は、前駆体を、場合によっては炭化水素または炭化水素希釈剤の存在下に4価のチタンハライドと高温で反応させることによるものである。好ましい4価のチタンハライドは、四塩化チタンである。オレフィン重合プロ触媒の製造に使用される場合による炭化水素またはハロ炭化水素溶媒は、最大で12を含めた炭素原子、または最大で9を含めた炭素原子を好ましくは含有する。例示的な炭化水素として、ペンタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、アルキルベンゼン、およびデカヒドロナフタレンが挙げられる。例示的な脂肪族ハロ炭化水素として、塩化メチレン、臭化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジブロモエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロシクロヘキサン、ジクロロフルオロメタンおよびテトラクロロオクタンが挙げられる。例示的な芳香族ハロ炭化水素として、クロロベンゼン(MCB)、ブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、およびクロロトルエンが挙げられる。脂肪族ハロ炭化水素は、少なくとも2つの塩化物置換基を含有する化合物、例えば四塩化炭素または1,1,2−トリクロロエタンであってよい。芳香族ハロ炭化水素は、クロロベンゼンまたはo−クロロトルエンであってよい。
【0043】
ハロゲン化は、ハロゲン化とハロゲン化との間に、また、ハロゲン化の後に不活性液体、例えば脂肪族もしくは芳香族炭化水素またはハロ炭化水素による洗浄を場合によっては伴って1以上回繰り返されてよい。100℃を超える、または110℃を超える特に高温での、不活性液体希釈剤、特に脂肪族または芳香族炭化水素との接触を含む抽出をさらに場合によっては1以上回使用して、不安定な種、特にTiClを除去することができる。
【0044】
一実施形態において、チーグラ−ナッタプロ触媒組成物は、(i)ジアルコキシマグネシウムを室温で液体である芳香族炭化水素に懸濁させること、(ii)ジアルコキシマグネシウムをチタンハライドと接触させること、ならびにさらに(iii)得られた組成物をチタンハライドと2回接触させ、ジアルコキシマグネシウムを(ii)のチタンハライドによる処理の間のある時点において以下の内部供与体(下述)のいずれかと接触させることによって得られる固体触媒成分を含む。
【0045】
チーグラ−ナッタプロ触媒組成物は、内部電子供与体を含む。内部電子供与体は、タクチシティ制御および触媒結晶サイジングを与える。一実施形態において、内部電子供与体は、二座化合物である。本明細書で用いるとき、「二座化合物」は、少なくとも2つの酸素含有官能基(これらの酸素含有官能基は同じまたは異なる)を含有する分子または化合物であり、酸素含有官能基は、少なくとも1つのC〜C10飽和炭化水素鎖によって隔てられており、二座化合物はフタレートを除く。二座化合物に好適な酸素含有官能基の非限定例として、酸素、カルボキシレート、カルボニル、ケトン、エーテル、アミド、スルホキシド、スルホン、スルホネート、ホスフィン、ホスフィネート、ホスフェート、ホスホネート、およびホスフィンオキサイドが挙げられる。C〜C10鎖における1以上の炭素原子は、第14、15、および16族のヘテロ原子によって置換されていてよい。C〜C10鎖における1以上のH原子は、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アリール、アルキルアリール、アラルキル、ハロゲン、または第14、15、および16族のヘテロ原子を含有する官能基で置換されていてよい。
【0046】
内部電子供与体として好適な二座組成物の非限定例として、ジエーテル、スクシネート、グルタレート、ジアルコキシベンゼン、ビス(アルコキシフェニル)、ジオールエステル、アルコキシアルキルエステル、およびこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0047】
一実施形態において、内部電子供与体は、1,3−ジエーテルである。ジエーテルは、以下の式によって表されるジアルキルジエーテル化合物であってよい:
【0048】
【化1】


式中、R〜Rは、互いに独立して、最大で20の炭素原子を有するアルキル、アリール、またはアラルキル基であり、第14、15、16、または17族のヘテロ原子を場合により含有していてよく、ただし、RおよびRは、水素原子であってよい。RおよびRはまた、連結して環状構造、例えばシクロペンタジエンまたはフルオレンを形成してもよい。ジアルキルエーテルは、線状または分枝状であってよく、1以上の以下の基を含んでいてよい:1〜18の炭素原子を有するアルキル、脂環式、アリール、アルキルアリール、またはアリールアルキル基、および水素。好適なジアルキルジエーテル化合物の非限定例として、ジメチルジエーテル、ジエチルジエーテル、ジブチルジエーテル、メチルエチルジエーテル、メチルブチルジエーテル、メチルシクロヘキシルジエーテル、2,2−ジメチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジエチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジ−n−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−エチル−2−n−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−n−プロピル−2−シクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジメチル−1,3−ジエトキシプロパン、2−n−プロピル−2−シクロヘキシル−1,3−ジエトキシプロパン、2−(2−エチルヘキシル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−n−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−sec−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−シクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−フェニル−1,3−ジエトキシプロパン、2−クミル−1,3−ジエトキシプロパン、2−(2−フェニルエチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(2−シクロヘキシルエチル)1,3−ジメトキシプロパン、2−(p−クロロフェニル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(ジフェニルメチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(1−ナフチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(フルオロフェニル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(1−デカヒドロナフチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(p−t−ブチルフェニル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジ−n−プロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−n−プロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−ベンジル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−エチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−フェニル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−シクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(p−クロロフェニル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(2−シクロヘキシルエチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−(2−エチルヘキシル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジフェニル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジベンジル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(シクロヘキシルメチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジエトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジ−n−ブトキシプロパン、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジ−sec−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジ−t−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジ−ネオペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−フェニル−2−ベンジル−1,3−ジメトキシプロパン、2−シクロヘキシル−2−シクロヘキシルメチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−(3,7−ジメチルオクチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−シクロヘキシルメチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−シクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−シクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−n−ヘプチル−2−n−ペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、および9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンが挙げられる。一実施形態において、内部電子供与体は、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、または9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンである。
【0049】
一実施形態において、内部電子供与体は、以下の式を有するスクシネート組成物である:
【0050】
【化2】


式中、RおよびR’は、同一または異なっていてもよく、Rおよび/またはR’は、1以上の以下の基を含む:場合によってはヘテロ原子を含有する、線状または分枝状のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、またはアルキルアリール基。1以上の環構造は、1または2−および3−位の炭素原子を介して形成されていてよい。好適なスクシネートの非限定例として、ジエチル2,3−ビス(トリメチルシリル)スクシネート、ジエチル2−sec−ブチル−3−メチルスクシネート、ジエチル2−(3,3,3−トリフルオロプロピル)−3−メチルスクシネート、ジエチル2,3−ビス(2−エチルブチル)スクシネート、ジエチル2,3−ジエチル−2−イソプロピルスクシネート、ジエチル2,3−ジイソプロピル−2−メチルスクシネート、ジエチル2,3−ジシクロヘキシル−2−メチルスクシネート、ジエチル2,3−ジベンジルスクシネート、ジエチル2,3−ジイソプロピルスクシネート、ジエチル2,3−ビス(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジエチル2,3−ジ−t−ブチルスクシネート、ジエチル2,3−ジイソブチルスクシネート、ジエチル2,3−ジネオペンチルスクシネート、ジエチル2,3−ジイソペンチルスクシネート、ジエチル2,3−(1−トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジエチル2−(9−フルオレニル)スクシネート、ジエチル2−イソプロピル−3−イソブチルスクシネート、ジエチル2−t−ブチル−3−イソプロピルスクシネート、ジエチル2−イソプロピル−3−シクロヘキシルスクシネート、ジエチル2−イソペンチル−3−シクロヘキシルスクシネート、ジエチル2−シクロヘキシル−3−シクロペンチルスクシネート、ジエチル2,2,3,3−テトラメチルスクシネート、ジエチル2,2,3,3−テトラエチルスクシネート、ジエチル2,2,3,3−テトラ−n−プロピルスクシネート、ジエチル2,3−ジエチル−2,3−ジイソプロピルスクシネート、ジイソブチル2,3−ビス(トリメチルシリル)スクシネート、ジイソブチル2−sec−ブチル−3−メチルスクシネート、ジイソブチル2−(3,3,3−トリフルオロプロピル)−3−メチルスクシネート、ジイソブチル2,3−ビス(2−エチルブチル)スクシネート、ジイソブチル2,3−ジエチル−2イソプロピルスクシネート、ジイソブチル2,3−ジイソプロピル−2−メチルスクシネート、ジイソブチル2,3−ジシクロヘキシル−2−メチルスクシネート、ジイソブチル2,3−ジベンジルスクシネート、ジイソブチル2,3−ジイソプロピルスクシネート、ジイソブチル2,3−ビス(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジイソブチル2,3−ジ−t−ブチルスクシネート、ジイソブチル2,3−ジイソブチルスクシネート、ジイソブチル2,3−ジネオペンチルスクシネート、ジイソブチル2,3−ジイソペンチルスクシネート、ジイソブチル2,3−ビス(3,3,3−トリフルオロプロピル)スクシネート、ジイソブチル2,3−ジ−n−プロピルスクシネート、ジイソブチル2−(9−フルオレニル)スクシネート、ジイソブチル2−イソプロピル−3−イソブチルスクシネート、ジイソブチル2−t−ブチル−3−イソプロピルスクシネート、ジイソブチル2−イソプロピル−3−シクロヘキシルスクシネート、ジイソブチル2−イソペンチル−3−シクロヘキシルスクシネート、ジイソブチル2−n−プロピル−3−(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジイソブチル2−シクロヘキシル−3−シクロペンチルスクシネート、ジイソブチル2,2,3,3−テトラメチルスクシネート、ジイソブチル2,2,3,3−テトラエチルスクシネート、ジイソブチル2,2,3,3−テトラ−n−プロピルスクシネート、ジイソブチル2,3−ジエチル−2,3−ジイソプロピルスクシネート、ジネオペンチル2,3−ビス(トリメチルシリル)スクシネート、ジネオペンチル2,2−ジ−sec−ブチル−3−メチルスクシネート、ジネオペンチル2−(3,3,3−トリフルオロプロピル)−3−メチルスクシネート、ジネオペンチル2,3−ビス−(2−エチルブチル)スクシネート、ジネオペンチル2,3−ジエチル−2−イソプロピルスクシネート、ジネオペンチル2、3−ジイソプロピル−2−メチルスクシネート、ジネオペンチル2,3−ジシクロヘキシル−2−メチルスクシネート、ジネオペンチル2,3−ジベンジルスクシネート、ジネオペンチル2,3−ジイソプロピルスクシネート、ジネオペンチル2,3−ビス−(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジネオペンチル2、3−ジ−t−ブチルスクシネート、ジネオペンチル2,3−ジイソブチルスクシネート、ジネオペンチル2,3−ジネオペンチルスクシネート、ジネオペンチル2,3−ジイソペンチルスクシネート、ジネオペンチル2,3−ビス(3,3,3−トリフルオロプロピル)スクシネート、ジネオペンチル2,3−n−プロピルスクシネート、ジネオペンチル2−(9−フルオレニル)スクシネート、ジネオペンチル2−イソプロピル−3−イソブチルスクシネート、ジネオペンチル2−t−ブチル−3−イソプロピルスクシネート、ジネオペンチル2−イソプロピル−3−シクロヘキシルスクシネート、ジネオペンチル2−イソペンチル−3−シクロヘキシルスクシネート、ジネオペンチル2−n−プロピル−3−(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジネオペンチル2−シクロヘキシル−3−シクロペンチルスクシネート、ジネオペンチル2,2,3,3−テトラメチルスクシネート、ジネオペンチル2,2,3,3−テトラ−エチルスクシネート、ジネオペンチル2,2,3,3−テトラ−n−プロピルスクシネート、ジネオペンチル2,3−ジエチル−2,3−ジイソプロピルスクシネート、ジエチル1,2−シクロヘキサンジカルボキシレート、およびジエチルノルボルネン−2,3−ジカルボキシレート、ならびに上記の各スクシネートの立体特異的異性体および/または当該異性体の混合物などが挙げられる。一実施形態において、内部電子供与体は、2,3−ジイソプロピルコハク酸ジエチルである。
【0051】
一実施形態において、内部電子供与体は、ジアルコキシベンゼンである。ジアルコキシベンゼンは、以下の式によって表される1,2−ジアルコキシベンゼンであってよい:
【0052】
【化3】


式中、RおよびRは、線状、分枝状または環状であってよいC〜C10またはC〜Cのアルキルであり、数字3〜6は、場合により置換されていてよいベンゼン環の位置を称する。
【0053】
およびRは、互いに同一または異なっていてもよい。RおよびRの分枝が酸素原子に結合する炭素の位置であるとき、供与体は触媒にあまり結合せず、したがって分枝によって作り出されるいくらかの立体バルクが酸素原子から離れた少なくとも1つの炭素に存在する(例えば、イソペントキシ)。好適なアルコキシ基の非限定例として、プロポキシ、n−ブトキシ、n−ペントキシ、イソペントキシ、n−ヘキソキシ、n−オクトキシ、3−シクロヘキシルプロポキシおよび4−シクロペンチルブトキシが挙げられる。一実施形態において、少なくとも1つのアルコキシ基がエトキシである。
【0054】
置換基は、ベンゼン環の3〜6位に存在していてよく、例として、10未満の炭素原子を有する炭化水素(アルキル(例えば、メチルまたはt−ブチル)、アリール(例えば、ナフチル)、脂環式(例えば、シクロペンチル)、またはアルカリールを含む)、10未満の炭素原子を有するヒドロカルボキシル(例えば、アルコキシ、アリールオキシまたはアルカリールオキシ)、シリル基(例えば、シリルまたはトリメチルシリル)またはハロゲン(例えば、ClまたはF)がある。一実施形態において、ベンゼン環上に置換基が1つだけ存在するか、または全く存在しない。さらなる実施形態において、4位に1つの置換基が存在する。
【0055】
好適な1,2−ジアルコキシベンゼンの非限定例として1−エトキシ−2−メトキシ−3−メチルベンゼン;1,2−ジエトキシベンゼン、1,2−ジエトキシ−3−フルオロベンゼン;1,2−ジエトキシ−3−メチル−ベンゼン;1,2−ジエトキシ−4−t−ブチルベンゼン;1,2−ジエトキシ−3−トリメチルシリル−ベンゼン;1−エトキシ−2−n−プロポキシベンゼン;1,2−ジ−n−プロポキシベンゼン;1−エトキシ−2−n−ペントキシベンゼン;1,2−ジイソペントキシベンゼン;1,2−ジエトキシナフタレン;2,3−ジエトキシ−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン;1,2−ジ−n−ブトキシベンゼン;1−イソペントキシ−2−エトキシ−3−フルオロ−5−t−ブチルベンゼン;および1−エトキシ−2−n−ヘキソキシベンゼンが挙げられる。一実施形態において、ジアルコキシベンゼンは、1−エトキシ−2−n−ペントキシベンゼンである。
【0056】
一実施形態において、内部電子供与体は、以下の式によって表されるジオールエステルである:
【0057】
【化4】

式中、nは1〜5の整数である。RおよびRは、同一または異なっていてもよく、それぞれ、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、アリル、フェニル、またはハロフェニル基から選択されてよく、R、R、R、R、R、およびRは、同一または異なっていてもよく、それぞれ、水素、ハロゲン、1〜20の炭素原子を有する置換または非置換のヒドロカルビルから選択されてよい。R〜R基は、炭素、水素または両方を置き換える1以上のヘテロ原子を場合により含有してもよく、該ヘテロ原子は、窒素、酸素、硫黄、ケイ素、リンおよびハロゲンから選択される。R〜R基は、連結して環状構造を形成していてもよい。RおよびRは、同一または異なっていてもよく、フェニル環の2−、3−、4−、5−、および6−位の任意の炭素原子に結合していてもよい。
【0058】
本明細書で用いるとき、「ヒドロカルビル」は、線状または分枝状の脂肪族基、例えば、アルキル、アルケニル、およびアルキニル;脂環式基、例えばシクロアルキル、シクロアルケニル;芳香族基、例えば単環式または多環式芳香族基、ならびにこれらの混合物、例えばアルカリールおよびアラルキルである。
【0059】
一実施形態において、R、R、R、R、R、およびRは、全て同時に水素であることはない。R、R、R、およびRの少なくとも1つの基が、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、フェニル、またはハロフェニルであってよい。さらなる実施形態において、RおよびR、RおよびRの少なくとも1つが、それぞれ水素であり、他方が、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、フェニル、またはハロフェニルである。
【0060】
好適なジオールエステルの非限定例として1,3−プロピレン−グリコールジベンゾエート、2−メチル−1,3−プロピレン−グリコールジベンゾエート;2−エチル−1,3−プロピレン−グリコールジベンゾエート;2−プロピル−1,3−プロピレン−グリコールジベンゾエート;2−ブチル−1,3−プロピレン−グリコールジベンゾエート;2,2−ジメチル−1,3−プロピレン−グリコールジベンゾエート;(R)−1−フェニル−1,3−プロピレン−グリコールジベンゾエート;(S)−1−フェニル−1,3−プロピレン−グリコールジベンゾエート;1,3−ジフェニル−1,3−プロピレン−グリコールジベンゾエート;2−メチル−1,3−ジフェニル−1,3−プロピレン−グリコールジベンゾエート;2,2−ジメチル−1,3−ジフェニル−1,3−プロピレン−グリコールジベンゾエート;2−エチル−1,3−ジ(tert−ブチル)−1,3−プロピレン−グリコールジベンゾエート;2−ブチル−2−エチル−1,3−プロピレン−グリコールジベンゾエート;2,2−ジエチル−1,3−プロピレン−グリコールジベンゾエート;2−ジメトキシメチル−1,3−プロピレン−グリコールジベンゾエート;2−メチル−2−プロピル−1,3−プロピレン−グリコールジベンゾエート;2−イソアミル−2−イソプロピル−1,3−プロピレン−グリコールジベンゾエート;2−イソアミル−2−イソプロピル−1,3−プロピレン−グリコールジ(p−クロロベンゾエート);2−イソアミル−2−イソプロピル−1,3−プロピレン−グリコールジ(m−クロロベンゾエート);2−イソアミル−2−イソプロピル−1,3−プロピレン−グリコールジ(p−メトキシベンゾエート);2−イソアミル−2−イソプロピル−1,3−プロピレン−グリコールジ(p−メチルベンゾエート);2,2−ジイソブチル−1,3−プロピレングリコールジベンゾエート;1,3−ジイソプロピル−1,3−プロピレン−グリコールジ(4−ブチルベンゾエート);2−エチル−2−メチル−1,3−プロピレン−グリコールジベンゾエート;2−アミノ−1−フェニル−1,3−プロピレン−グリコールジベンゾエート;2,4−ペンタンジオールジベンゾエート;3−メチル−2,4−ペンタンジオールジベンゾエート;3−エチル−2,4−ペンタンジオールジベンゾエート;3−n−プロピル−2,4−ペンタンジオールジベンゾエート;3−n−ブチル−2,4−ペンタンジオールジベンゾエート;3,3−ジメチル−2,4−ペンタンジオールジベンゾエート;(2S,4S)−(+)−2,4−ペンタンジオールジベンゾエート;(2R,4R)−(+)−2,4−ペンタンジオールジベンゾエート;2,4−ペンタンジオールジ(p−クロロベンゾエート);2,4−ペンタンジオールジ(p−ブロモベンゾエート);2,4−ペンタンジオールジ(p−メチルベンゾエート);2,4−ペンタンジオールジ(p−tert−ブチルベンゾエート);2,4−ペンタンジオールジ(p−ブチルベンゾエート);2−メチル−1,3−ペンタンジオールジベンゾエート;2−メチル−1,3−ペンタンジオールジ(p−クロロベンゾエート);2−メチル−1,3−ペンタンジオールジ(p−メチルベンゾエート);2−ブチル−1,3−ペンタンジオールジ(p−メチルベンゾエート);2−メチル−1,3−ペンタンジオールジ(p−tert−ブチルベンゾエート);2,2−ジメチル−1,3−ペンタンジオールジベンゾエート;2−エチル−1,3−ペンタンジオールジベンゾエート;2−ブチル−1,3−ペンタンジオールジベンゾエート;2−アリル−1,3−ペンタンジオールジベンゾエート;2−メチル−1,3−ペンタンジオールジベンゾエート;2−エチル−1,3−ペンタンジオールジベンゾエート;2−n−プロピル−1,3−ペンタンジオールジベンゾエート;2−n−ブチル−1,3−ペンタンジオールジベンゾエート;1,3−ペンタンジオールジ(p−クロロベンゾエート);1,3−ペンタンジオールジ(p−ブロモベンゾエート);1,3−ペンタンジオールジ(p−メチルベンゾエート);1,3−ペンタンジオールジ(p−tert−ブチルベンゾエート);1,3−ペンタンジオールジ(p−ブチルベンゾエート);2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジベンゾエート;および3−メチル−1−トリフルオロメチル−2,4−ペンタンジオールジベンゾエート;2,4−ペンタンジオールジ(p−フルオロメチルベンゾエート);および3−ブチル−3−メチル−2,4−ペンタンジオールジベンゾエートが挙げられる。一実施形態において、ジオールエステルは、2,4−ペンタンジオールジ(p−n−ブチル)ベンゾエートである。
【0061】
チーグラ−ナッタプロ触媒組成物はまた、不活性支持材を含んでいてもよい。該支持材は、遷移金属化合物の触媒性能を不利に変化させない不活性固体であり得る。非限定例として、アルミナなどの金属酸化物、およびシリカなどのメタロイド酸化物が挙げられる。
【0062】
上記チーグラ−ナッタプロ触媒組成物と共に使用するための助触媒は、アルミニウム含有組成物である。好適なアルミニウム含有組成物の非限定例として、各アルキル−またはアルコキシド−基に1〜10、または1〜6の炭素原子を含有する有機アルミニウム化合物、例えばトリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハイドライド、アルキルアルミニウムジハイドライド、ジアルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムジハライド、ジアルキルアルミニウムアルコキシド、およびアルキルアルミニウムジアルコキシド化合物が挙げられる。一実施形態において、助触媒は、C1〜4トリアルキルアルミニウム化合物、例えばトリエチルアルミニウム(TEAl)である。アルミニウム対チタンのモル比は、10:1〜100:1、または25:1〜70:1、または30:1〜60:1、または35:1〜50:1(またはこれらの間のいずれかの値もしくは部分範囲)である。一実施形態において、アルミニウム対チタンのモル比は45:1である。
【0063】
触媒組成物はまた、外部電子供与体も含む。本明細書において用いるとき、「外部電子供与体」は、プロ触媒の形成とは無関係に添加される化合物であり、電子対を金属原子に供与することができる少なくとも1つの官能基を含有する。外部電子供与体は、(i)1以上の選択性決定剤(SDA)と(ii)1以上の活性制限剤(ALA)との混合物である。本明細書において用いるとき、「選択性決定剤」は、触媒の立体選択性を高める(すなわち、ホルマントポリマー中のキシレン可溶性物質を低減する)組成物である。本明細書において用いるとき、「活性制限剤」は、重合反応温度が閾値温度(すなわち、約85℃または100℃を超える温度)を超えて上昇するとき触媒活性を低下させる組成物である。選択性決定剤および/または活性制限剤は、自己消滅特性に加えて高い立体選択性を有する触媒組成物を提供することができる。
【0064】
選択性決定剤は、アルコキシシラン組成物、アミン組成物、またはジエーテル組成物であってよい。アルコキシシラン組成物は、一般式:SiR(OR’)4−m(I)を有し、ここで、Rは、独立して、それぞれ、第14、15、16、または17族のヘテロ原子を含有する1以上の置換基によって場合により置換されているヒドロカルビルまたはアミノ基である。Rは、水素およびハロゲンを数に入れず最大で20個の原子を含有し、R’は、C1〜20アルキル基であり、mは0、1、2または3である。一実施形態において、Rは、C6〜12アリールまたはアラルキル、C1〜20アルキル、C3〜12シクロアリル、C3〜12分枝状アルキルまたはC3〜12環状アミノ基であり、R’は、C1〜4アルキルであり、mは1または2である。好適なシラン組成物の非限定例として、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジ−tert−ブチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、エチルシクロヘキシルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、イソブチルイソプロピルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、シクロペンチルピロリジノジメトキシシラン、ビス(ピロリジノ)ジメトキシシラン、ビス(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、およびジメチルジメトキシシランが挙げられる。一実施形態において、シラン組成物は、ジシクロペンチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、またはこれらの任意の組み合わせであってよい。さらなる実施形態において、アルコキシシラン組成物は、2種以上の上記シラン組成物を含む。
【0065】
一実施形態において、選択性決定剤は、アミン組成物である。好適なアミン組成物の非限定例として、2,6−置換ピペリジン、例えば2,6−ジメチルピペリジン、および2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ならびに2,5−置換ピペリジンが挙げられる。さらなる実施形態において、ピペリジン化合物は、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンである。
【0066】
一実施形態において、選択性決定剤はジエーテルである。ジエーテルは、本明細書において先に開示したいずれのジエーテルであってもよい。一実施形態において、ジエーテルは、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、または2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパンである。したがって、内部電子供与体は、第1のジエーテルであってよく、選択性決定剤は第2のジエーテルであってよい。さらなる実施形態において、内部電子供与体および選択性決定剤は同一の組成物、すなわち、同一のジエーテルである。SDAジエーテルは、追加の活性制限剤として作用することもできる。
【0067】
別の実施形態において、選択性決定剤は、本明細書に開示されている少なくとも1種のアルコキシシラン、ならびに本明細書に開示されているアミンおよび/またはジエーテルから選択される1メンバーを含んでいてよい。さらなる実施形態において、選択性決定剤は、ジシクロペンチルジメトキシシランとジエーテルとの混合物である。
【0068】
触媒組成物はまた、活性制限剤も含む。活性制限剤は、カルボン酸エステル、またはジエーテル、ポリ(アルケングリコール)、ポリ(アルケングリコール)エステル、または複数のエーテル基を含有するポリマーもしくはオリゴマー化合物であってよい。カルボン酸エステルは、芳香族モノもしくはポリカルボン酸エステル、または脂肪酸エステルであってよい。好適な芳香族カルボン酸の非限定例として、芳香族モノカルボン酸のC1〜10アルキルまたはシクロアルキルエステルが挙げられる。その好適な置換誘導体として、1以上の第14、15、16または17族のヘテロ原子、特に酸素を含有する1以上の置換基によって芳香族環またはエステル基の両方において置換されている化合物が挙げられる。そのような置換基の例として、(ポリ)アルキルエーテル、シクロアルキルエーテル、アリールエーテル、アラルキルエーテル、アルキルチオエーテル、アリールチオエーテル、ジアルキルアミン、ジアリールアミン、ジアラルキルアミンおよびトリアルキルシラン基が挙げられる。芳香族カルボン酸エステルは、安息香酸のC1〜20ヒドロカルビルエステル(式中、ヒドロカルビル基は、非置換または1もしくは複数の第14、15、16または17族のヘテロ原子含有置換基によって置換されている)およびそのC1〜20(ポリ)ヒドロカルビルエーテル誘導体、または安息香酸C1〜4アルキルおよびそのC1〜4環アルキル化誘導体、すなわち安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸n−プロピル、p−メトキシ安息香酸メチル、p−エトキシ安息香酸メチル、p−メトキシ安息香酸エチル、およびp−エトキシ安息香酸エチルであってよい。一実施形態において、芳香族モノカルボン酸は、p−エトキシ安息香酸エチルである。
【0069】
一実施形態において、活性制限剤は脂肪酸エステルである。脂肪族酸エステルは、脂肪酸エステルであってよく、C〜C30脂肪族酸エステルであってよく、モノまたはポリ(2以上)エステルであってよく、直鎖または分枝状であってよく、飽和または不飽和、およびこれらの任意の組み合わせであってよい。C〜C30脂肪族酸エステルはまた、1以上の第14、15、16、または17族のヘテロ原子含有置換基によって置換されていてもよい。好適なC〜C30脂肪族酸エステルの非限定例として、脂肪族C4〜30モノカルボン酸のC1〜20アルキルエステル、脂肪族C8〜20モノカルボン酸のC1〜20アルキルエステル、脂肪族C4〜20モノカルボン酸およびジカルボン酸のC1〜4アリルモノおよびジエステル、脂肪族C8〜20モノカルボン酸およびジカルボン酸のC1〜4アルキルエステル、ならびにC2〜100(ポリ)グリコールまたはC2〜100(ポリ)グリコールエーテルのC4〜20アルキルモノまたはポリカルボキシレート誘導体が挙げられる。さらなる実施形態において、C〜C30脂肪族エステルは、ミリスチン酸イソプロピル、セバシン酸ジ−n−ブチル、(ポリ)(アルキレングリコール)モノまたはジアセテート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノまたはジミリステート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノまたはジラウレート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノまたはジオレエート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノまたはジステアレート、グリセリルトリ(アセテート)、C2〜40脂肪族カルボン酸のグリセリルトリエステル、およびこれらの混合物であってよい。
【0070】
一実施形態において、脂肪族酸エステルは脂肪酸エステルである。一実施形態において、脂肪酸エステルは、ポリ(エチレングリコール)エステルの混合物である。別の実施形態において、脂肪酸エステルは、Chem Service、Inc.(ペンシルベニア州ウエストチェスター)からS−191として市販されているポリ(エチレングリコール)エステルの混合物である。
【0071】
一実施形態において、活性制限剤はジエーテルである。本明細書において先に開示されているあらゆるジエーテルを活性制限剤として用いることができる。一実施形態において、活性制限剤は、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、またはこれらのテクスチャである。ジエーテルはまた、追加の選択性決定剤として作用することもできる。
【0072】
触媒組成物は、上記内部電子供与体(二座化合物)のいずれかを本明細書に開示されている外部電子供与体のいずれかと組み合わせて含んでもよい。一実施形態において、本開示は、1以上の遷移金属化合物を含む1以上のチーグラ−ナッタプロ触媒組成物を有する触媒組成物を提供する。触媒組成物はまた、ジエーテルである内部電子供与体も含む。触媒組成物はまた、1以上のアルミニウム含有助触媒も含む。触媒組成物は、選択性決定剤(SDA)と活性制限剤(ALA)との混合物である外部電子供与体をさらに含む。
【0073】
内部電子供与体は、先に開示されているいずれのジエーテルであってもよい。一実施形態において、ジエーテルは、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、または9,9−ビス(メトキシメチル)フッ素である。内部電子供与体は、これらのジエーテルの1または任意の組み合わせであってよい。
【0074】
外部電子供与体は、本明細書に開示されている任意の選択性決定剤と任意の活性制限剤との混合物であってよい。一実施形態において、選択性決定剤は、上述のようなアルコキシシラン組成物またはジエーテルである。さらなる実施形態において、選択性決定剤は、ジシクロペンチルジメトキシシランまたはメチルシクロヘキシルジメトキシシランである。なおさらなる実施形態において、選択性決定剤は、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパンである。さらなる実施形態において、外部電子供与体は、芳香族モノもしくはポリカルボン酸エステル、例えばp−エトキシ安息香酸エチルと組み合わせた、これらのアルコキシシラン組成物のいずれかまたはジエーテルであってもよい。
【0075】
本開示は、別の触媒組成物を提供する。一実施形態において、触媒組成物は、1以上の遷移金属化合物を有する1以上のチーグラ−ナッタプロ触媒組成物を含む。触媒組成物はまた、スクシネートである内部電子供与体も含む。触媒組成物には、1以上のアルミニウム含有助触媒も含まれる。触媒組成物は、選択性決定剤(SDA)と活性制限剤(ALA)との混合物である外部電子供与体をさらに含む。
【0076】
内部電子供与体は、本明細書に開示されているいずれのスクシネートであってもよい。好適なスクシネートの非限定例は、2,3−ジイソプロピルコハク酸ジエチルである。
【0077】
外部電子供与体は、本明細書に開示されている任意の選択性決定剤と任意の活性制限剤との混合物であってよい。一実施形態において、選択性決定剤は、上述のアルコキシシラン組成物またはジエーテルである。さらなる実施形態において、選択性決定剤は、n−プロピルトリメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシランまたはメチルシクロヘキシルジメトキシシランである。なおさらなる実施形態において、選択性決定剤は、メチルシクロヘキシルジメトキシシランであり、活性制限剤はp−エトキシ安息香酸エチルである。
【0078】
一実施形態において、選択性決定剤はジエーテルであり、活性制限剤はカルボン酸エステルである。例えば、選択性決定剤は、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパンであってよく、活性制限剤は、脂肪酸エステル、例えばS−191(Chem Service、Inc.(ペンシルベニア州ウエストチェスター)から市販されている)であってよい。
【0079】
本開示は、別の触媒組成物を提供する。一実施形態において、該触媒組成物は、1以上の遷移金属化合物を有する1以上のチーグラ−ナッタプロ触媒組成物を含む。該触媒組成物はまた、ジアルコキシベンゼンである内部電子供与体も含む。該触媒組成物には、1以上のアルミニウム含有助触媒も含まれる。該触媒組成物は、選択性決定剤(SDA)と活性制限剤(ALA)との混合物である外部電子供与体をさらに含む。
【0080】
ジアルコキシベンゼンは、本明細書に開示されているいずれのジアルコキシベンゼンであってもよい。内部電子供与体に好適なジアルコキシベンゼンの非限定例は、1−エトキシ−2−n−ペントキシベンゼンである。
【0081】
外部電子供与体は、本明細書に開示されている任意の選択性決定剤と任意の活性制限剤との混合物であってよい。一実施形態において、選択性決定剤は、上述のアルコキシシラン組成物またはアミン組成物である。活性制限剤は、上述のカルボン酸エステルまたはジエーテルである。
【0082】
一実施形態において、外部電子供与体は、アルコキシシラン組成物およびカルボン酸エステルを含む。さらなる実施形態において、選択性決定剤は、ジシクロペンチルジメトキシシランまたはメチルシクロヘキシルジメトキシシランである。なおさらなる実施形態において、選択性決定剤は、メチルシクロヘキシルジメトキシシランであり、活性制限剤はp−エトキシ安息香酸エチルである。
【0083】
一実施形態において、選択性決定剤は、アミン組成物であり、活性制限剤は、芳香族カルボン酸またはジエーテルである。例えば、選択性決定剤は、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンであってよく、活性制限剤は、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパンであってよい。ジエーテルはまた、追加の選択性決定剤として作用することもできる。代替的には、選択性決定剤は、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンであってよく、活性制限剤は、p−エトキシ安息香酸エチルであってよい。
【0084】
本開示は、別の触媒組成物を提供する。一実施形態において、該触媒組成物は、1以上の遷移金属化合物を有する1以上のチーグラ−ナッタプロ触媒組成物を含む。該触媒組成物はまた、ジオールエステルである内部電子供与体も含む。該触媒組成物には、1以上のアルミニウム含有助触媒も含まれる。該触媒組成物は、選択性決定剤(SDA)と活性制限剤(ALA)との混合物である外部電子供与体をさらに含む。
【0085】
ジオールエステルは、本明細書に開示されているいずれのジオールエステルであってよい。内部電子供与体に好適なジオールエステルの非限定例は、2,4−ペンタンジオールジ(p−n−ブチル)ベンゾエートである。
【0086】
外部電子供与体は本明細書に開示されている任意の選択性決定剤と任意の活性制限剤との混合物であってよい。一実施形態において、選択性決定剤はアルコキシシラン組成物である。活性制限剤はカルボン酸エステルである。
【0087】
一実施形態において、選択性決定剤は、ジシクロペンチルジメトキシシランまたはメチルシクロヘキシルジメトキシシランである。さらなる実施形態において、選択性決定剤は、メチルシクロヘキシルジメトキシシランであり、活性制限剤は、p−エトキシ安息香酸エチルである。
【0088】
任意の上記触媒組成物において、アルミニウム対全外部電子供与体のモル比は、0.25:1〜20:1(またはこれらの間のいずれかの値もしくは部分範囲)、または0.5:1〜4:1もしくは1:1〜3:1、または2:1〜3:1もしくは2.5:1以下であってよい。本明細書において用いるとき、「全外部電子供与体」とは、外部電子供与体組成物に存在する選択性決定剤および活性制限剤の合計量である。ポリマー性またはオリゴマー性の活性制限剤について、触媒組成物は、1.0:1〜50:1(またはこれらの間のいずれかの値もしくは部分範囲)のアルミニウム対外部電子供与体のモル比を含むことができる。一実施形態において、アルミニウム対全外部電子供与体のモル比は3:1である。
【0089】
出願人らは、驚くべきことに、予想外にも、二座内部電子供与体、例えばジエーテル、スクシネート、アルコキシベンゾエート、および/またはジオールエステルを有する非自己消滅性触媒系を、上記外部電子供与体のいずれかを利用することによって自己消滅性触媒組成物に転換することができることを見出した。さらに、出願人らは、驚くべきことに、アルミニウム対全外部電子供与体のモル比を0.5:1〜4:1に制御することによって、優れた操作性を有しながら高い生産性を示し、自己消滅性である触媒系を有利にも得ることを見出した。本明細書において用いるとき、「自己消滅性」触媒は、(1)通常の重合条件下で観察される活性と比較して約100℃を超える温度で、または(2)活性制限剤(ALA)が同モル量の選択性決定剤(SDA)で置き換えられているときに観察される活性と比較して85℃を超える温度で低下した活性を示す触媒である。加えて、実用化基準として、重合プロセス、特に、通常の処理条件で運転する流動床の気相重合が、ポリマー粒子の凝集に対して悪影響を及ぼさずに該床を遮断して結果として崩壊させ得るとき、触媒組成物が「自己消滅性」であると言える。
【0090】
本明細書での使用のための、高温における重合活性の標準的な測定法として、触媒活性を、温度によって種々のモノマー濃度を補うように調整する。例えば、液相(スラリーまたは溶液)重合条件が用いられるとき、高温における反応混合物中への低いプロピレン溶解度に相当する補正係数が含まれる。すなわち、触媒活性が「正規化」されて、より低い温度、特に67℃基準と比較して低下した溶解度を補う。温度Tでの「正規化」活性、すなわちAは、温度Tで測定された活性、すなわち(ポリマー重量/触媒重量/時間)、活性(T)を濃度補正係数[P(67)]/[P(T)](式中、[P(67)]は67℃でのプロピレン濃度であり、[P(T)]は温度Tでのプロピレン濃度である)で乗じることによって定義される。正規化活性に関する式を以下に与える。
【0091】
【数1】

【0092】
上式において、温度Tでの活性に、67℃でのプロピレン濃度対温度Tでのプロピレン濃度の比を乗じる。得られた正規化活性(A)は、温度上昇に伴ってプロピレン濃度が低下するように調整され、変動温度条件下での触媒活性の比較に用いられ得る。補正係数を液相重合に用いられる条件について測定し、以下に列挙する。
【0093】
【表1】

【0094】
補正係数は、重合活性が使用される条件下でプロピレン濃度と共に線形的に上昇するとする。補正係数は、用いられる溶媒または希釈剤の関数である。例えば、先に列挙した補正係数は、一般的なC6〜10脂肪族炭化水素混合物(Isopar(商標)E、Exxon Chemical Companyから入手可能)についてのものである。気相重合条件下では、モノマー溶解度は、通常は係数でなく、活性は、温度差について一般には補正されない。すなわち、活性と正規化活性とは同じである。
【0095】
「正規化活性比」は、A/A67として定義され、ここで、Aは温度Tでの活性であり、A67は、67℃での活性である。この値を温度の関数としての活性変化の指標として用いることができる。例えば、0.30に等しいA100/A67は、100℃での触媒活性が67℃での触媒活性のたった30%であることを示す。100℃においては、35%以下のA/A67比が、自己消滅性の系である触媒系を典型的には得ることが見出された。
【0096】
任意の上記実施形態において、外部電子供与体は、約50モル%〜約99モル%(またはこれらの間のいずれかの値もしくは部分範囲)のALAおよび約1モル%〜約50モル%(またはこれらの間のいずれかの値もしくは部分範囲)のSDAを含むことができる。ポリマー性またはオリゴマー性の活性制限剤(例えば、ポリ(アルキレングリコール)、および/またはポリ(アルキレングリコールエステル))について、外部電子供与体は、約5モル%〜約90モル%(またはこれらの間のいずれかの値もしくは部分範囲)のALAおよび約10モル%〜約95モル%(またはこれらの間のいずれかの値もしくは部分範囲)のSDAを含むことができる。
【0097】
アルミニウム対SDAのモル比は、750:1〜1.25:1(またはこれらの間のいずれかの値)、または150:1〜1.25:1、または80:1〜1.5:1、または40:1〜1.67:1、または20:1〜2.5:1、または13:1〜5:1であってよい。
【0098】
アルミニウム対ALAのモル比は、20:1〜0.5:1(またはこれらの間のいずれかの値)、または6.7:1〜0.5:1、または5.7:1〜0.52:1、または5:1〜0.62:1、または4.4:1〜0.71:1、または5.3:1〜0.5:1であってよい。全外部電子供与体対チタンのモル比は、約5:1〜約100:1であってよい。一実施形態において、全外部電子供与体対チタンのモル比は30:1である。ポリマー性またはオリゴマー性の活性制限剤(例えばポリ(アルキレングリコール)、および/またはポリ(アルキレングリコールエステル))を含有するとき、アルミニウム対ALAのモル比は、200:1〜1:1(またはこれらの間のいずれかの値)、または70:1〜1:1、または50:1〜1.5:1、または30:1〜2:1、または20:1〜2.5:1、または17:1〜3:1であってよい。全外部電子供与体対チタンのモル比は、約2:1〜約100:1であってよい。
【0099】
本触媒組成物は、高い剛性および高いアイソタクチシティ(すなわち、低キシレン可溶分)を有するポリプロピレン組成物を生成する。特定の理論に束縛されることを望まないが、アルミニウム対外部電子供与体のモル比が、得られるポリマーにベンゾエートの強い臭気を付与することなく、安息香酸エステルを電子供与体として利用する第3世代触媒の自己消滅特性を再現する触媒組成物をもたらすと考えられる。加えて、本触媒組成物は、フタレート系内部電子供与体を使用することなく、従来の第4世代触媒の活性を満たすまたは超える。このように、本触媒組成物は、第4世代触媒の活性を満たし、または超えて、第3世代触媒の自己消滅性特徴を示す。
【0100】
一実施形態において、重合プロセスが提供される。該重合プロセスは、重合条件下でオレフィンを触媒組成物と接触させることを含む。触媒組成物は、本明細書に開示されているいずれの触媒組成物であってもよく、遷移金属化合物および内部電子供与体を有するチーグラ−ナッタプロ触媒組成物を含む。内部電子供与体は、本明細書に開示されているいずれの二座化合物であってもよい。触媒組成物はまた、アルミニウム含有助触媒、および外部電子供与体も含む。外部電子供与体は、選択性決定剤と活性制限剤との混合物である。該プロセスは、ポリオレフィン組成物を形成することをさらに含む。
【0101】
本明細書において用いるとき、「重合条件」は、1以上のオレフィン間の重合および/または共重合を促進するのに好適な重合反応器内の温度および圧力パラメータ、ならびに所望のポリマーを形成するための触媒組成物である。重合プロセスは、気相、スラリー、またはバルク重合プロセスを含めたいずれの方式で実施されてもよく、重合は1以上の反応器で起こる。オレフィンは、非限定例として、例えばエチレン、プロピレン、ブテンおよびこれらのオレフィンの混合物を含めたC〜Cのαオレフィンであってよい。該オレフィンは、気体状態または液体状態のいずれで用いられてもよい。
【0102】
一実施形態において、重合プロセスが提供される。該重合プロセスは、重合反応器においてプロピレンを触媒組成物と接触させることを含む。触媒組成物は、上記触媒組成物のいずれであってもよい。内部電子供与体は、本明細書で述べられている二座化合物のいずれかである。
【0103】
一実施形態において、重合プロセスは、プレ重合工程を含むことができる。プレ重合は、プロ触媒組成物が助触媒ならびに選択性決定剤および/または活性制限剤と接触した後で、少量のオレフィンをプロ触媒組成物と接触させることを含む。次いで、得られたプレ活性化触媒ストリームを重合反応ゾーンに導入し、重合されるオレフィンモノマーの残余、および場合により1以上の外部電子供与体成分と接触させる。プレ重合によって、助触媒ならびに選択性決定剤および/または活性制限剤と組み合わされるプロ触媒組成物が得られ、該組み合わせは、ホルマントポリマーのマトリクス中に分散される。場合により、追加量の選択性決定剤および/または活性制限剤を添加することができる。
【0104】
一実施形態において、重合プロセスは、プレ活性化工程を含むことができる。プレ活性化は、プロ触媒組成物を助触媒ならびに選択性決定剤および/または活性制限剤と接触させることを含む。得られたプレ活性化触媒ストリームを続いて重合反応ゾーンに導入し、重合されるオレフィンモノマー、および場合により1以上の外部電子供与体成分と接触させる。プレ活性化によって、助触媒ならびに選択性決定剤および/または活性制限剤と組み合わされたプロ触媒組成物が得られる。場合により、追加量の選択性決定剤および/または活性制限剤を添加することができる。
【0105】
一実施形態において、この方法は、アルミニウム対全外部電子供与体のモル比を約0.5:1〜約4:1に維持または制御することを含む。換言すると、アルミニウム対全外部電子供与体の比を重合プロセスの間終始調整して、該比を0.5:1〜4:1、または1:1〜3:1、または3:1の範囲に保持または制御する。重合プロセスは、プロピレン含有ポリマーを形成することをさらに含む。このように、アルミニウムを一定量に維持しながら反応内に導入される外部電子供与体成分の量を調整することによって、または外部供与体の量を維持しながらアルミニウムの量を調整することによって、または両方の方法の組み合わせを用いることによって、アルミニウム対外部電子供与体の比を制御する。ポリマー性またはオリゴマー性の活性制限剤について、触媒組成物は、1.0:1〜50:1のアルミニウム対外部電子供与体のモル比を含むことができる。
【0106】
一実施形態において、重合プロセスはまた、アルミニウム対チタン比を約45:1に維持、調整、または制御することを含んでもよい。
【0107】
一実施形態において、重合プロセスは、プロピレンを触媒組成物と接触させることおよびプロピレン含有ポリマーを形成することを含む。重合プロセスによって形成されるプロピレン含有ポリマーは、ポリプロピレンホモポリマー、またはプロピレンおよび1もしくは複数のコモノマーのコポリマーであってよい。コモノマーは、2〜12の炭素原子を有するαオレフィンであってよい。好適なコモノマーの非限定例として、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチルペンテン、1−ヘプテン、および1−オクテンが挙げられる。したがって、ポリプロピレン組成物は、ポリプロピレンホモポリマー、またはプロピレンモノマーおよび1もしくは複数のコモノマーとのポリマーであってよい。一実施形態において、プロピレン含有ポリマーは、約0.5重量%〜約10.0重量%、または約2.0重量%〜約5.0重量%のキシレン可溶分を有する。
【0108】
一実施形態において、重合プロセスは、重合反応器の温度が約100℃を超えるとき、触媒組成物によって、重合プロセスまたは反応を消滅させることを含む。
【0109】
一実施形態において、重合プロセスは、1以上の反応器において操作する気相重合プロセスである。好適な気相重合プロセスは、縮合方式ならびに超縮合方式の使用を含み、ここで、添加された不活性な低沸点化合物を含む気体成分が、熱除去を目的として液体形態で反応器内に注入される。複数の反応器が使用されるとき、それらは連続で操作されること、すなわち、第1反応器からの流出物が第2反応器に投入され、追加のモノマーまたは異なるモノマーが連続重合に添加されることが望ましい。追加の触媒または触媒成分(すなわち、プロ触媒または助触媒)が添加されてよく、同様に、追加量の外部電子供与体混合物、別の外部電子供与体混合物、あるいは個々のアルコキシシランおよび/または1もしくは複数の活性制限剤が添加されてもよい。
【0110】
重合プロセスは、プロピレンおよびエチレンを触媒組成物と接触させること、ならびにプロピレンおよびエチレンコポリマーを形成することを含んでよい。一実施形態において、重合プロセスは、2つの反応器で行われ、ここで、2種類のオレフィン、例えばプロピレンおよびエチレンを接触させてコポリマーを調製する。ポリプロピレンを第1反応器で調製し、エチレンおよびプロピレンのコポリマーを第1反応器からのポリプロピレンの存在下に第2反応器で調製する。使用される重合技術に関わらず、外部電子供与体、プロ触媒、および/またはその助触媒を、反応器への添加の前に、他の重合成分、特にモノマーの非存在下で接触させてよいことが理解されよう。一実施形態において、上記二重重合プロセは、溶液重合である。
【0111】
重合反応器の温度は、40〜130℃、または60〜100℃、または65℃〜80℃である。該温度は、反応器壁で測定した反応混合物の平均温度である。反応器の孤立領域は、上記限界を超える局部温度になっていてよい。
【0112】
例として、限定されないが、本開示の実施例をここで提供する。
【実施例】
【0113】
(1)触媒の調製
触媒A:該触媒をN下、以下の手順にしたがって作製する:(1)12.00gのMagTi(米国特許第6,825,146号の実施例1に記載のように製造する)前駆体を、175mlのMCB中TiCl溶液(1:1 vol:vol)、次いで4.80mlの1−エトキシ−2−n−ペントキシベンゼン(EPB)と接触させる。混合物を100℃に加熱し、この温度で60分間維持した後、濾過して溶媒を除去する。この手順を2回繰り返す。(2)得られた固体を200mlのイソオクタンを用いて25℃で3回洗浄した後、濾過する。次いで固体をN流で乾燥させる。蛍光X線による分析は、固体触媒が4.45重量%のTiを含有することを示す。
【0114】
触媒B:(1)12.00gのMagTi前駆体および2.46gの9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン(BMFI)を、N下でフラスコに投入する。175mlのMCB中TiCl溶液(1:1 vol:vol)を添加する。混合物を115℃に加熱し、この温度で60分間維持した後、濾過して溶媒を除去する。(2)175mlのMCB中TiCl溶液(1:1 vol:vol)を固体に添加し、混合物を115℃で30分間維持し、次いで濾過する。この手順を1回繰り返す。(3)得られた固体を200mlのイソオクタンを用いて25℃で3回洗浄した後、濾過する。次いで固体をN流で乾燥させる。蛍光X線による分析は、固体触媒が4.32重量%のTiを含有することを示す。
【0115】
触媒C:(1)12.00gのMagTi前駆体を、175mlのMCB中TiCl溶液(1:1 vol:vol)、次いで2.40mlの2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン(DiBMP)と接触させる。混合物を115℃に加熱し、この温度で60分間維持した後、濾過して溶媒を除去する。(2)175mlのMCB中TiCl溶液(1:1 vol:vol)を固体に添加し、混合物を115℃で30分間維持し、次いで濾過する。この手順を1回繰り返す。(3)得られた固体を200mlのイソオクタンを用いて25℃で3回洗浄した後、濾過する。次いで固体をN流で乾燥させる。蛍光X線による分析は、固体触媒が3.59重量%のTiを含有することを示す。
【0116】
触媒D:2.48mlの2,3−ジイソプロピルコハク酸ジエチルを2.40mlの2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパンの代わりに用いること以外は触媒Cと同様。Ti含量は3.75重量%である。
【0117】
触媒E:(1)2.88mlの2,4−ペンタンジオールジ(p−n−ブチル)ベンゾエートを2.40mlの2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパンの代わりに用いること、および(2)それぞれのTiCl接触において、200mlのTiCl溶液を175mlの代わりに用いたこと以外は触媒Cと同様。Ti含量は3.92重量%である。
【0118】
触媒F:(1)3.00gのMagTi前駆体を60mlのMCB中TiCl溶液(1:1 vol:vol)、次いで0.42mlの2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパンと接触させる。混合物を115℃に加熱し、この温度で60分間維持した後、濾過して溶媒を除去する。(2)60mlのMCB中TiCl溶液(1:1 vol:vol)を固体に添加し、混合物を115℃で30分間維持し、次いで濾過した。この手順を1回繰り返す。(3)得られた固体を70mlのイソオクタンを用いて25℃で3回洗浄した後、濾過する。次いで固体をN流で乾燥させる。蛍光X線による分析は、固体触媒が4.79重量%のTiを含有することを示す。
【0119】
触媒G:0.42mlの2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパンも第2のTiCl接触において反応混合物に添加したこと以外は触媒Fと同様。固体触媒のTi含量は、2.81重量%である。
【0120】
(2)重合
触媒固体を撹拌棒で30〜45分間撹拌することによって触媒粉末の粒子サイズを減少させる。次いで触媒スラリーをトルエン中で調製する。各触媒について、スラリーの濃度および投入量を以下に挙げる。
【0121】
【表2】

【0122】
全てのSDAおよびALAを、並列式重合反応器(PPR、Symyx Technologies、Inc.製)に注入する前に、トルエンに溶解しているS−191以外をIsopar E(商標)中0.005Mに希釈する。TEAl(トリエチルアルミニウム)をIsopar E(商標)について調製し、0.02または0.1Mの溶液として用いる。
【0123】
パージしたPPR反応器を50℃に加熱し、TEAlおよびIsopar E(商標)作製溶媒を各反応器に添加した後、Hを添加して5psigの安定化圧力にする。反応器を指定温度(67、100または115℃)に加熱する。プロピレンを添加して100psigにし、10分間安定化させる。各反応器にSCAまたはSDAとALAとの混合物、および500ulのIsopar E(商標)チェイサーを添加し、直後に触媒(275ul)および500ulのIsopar E(商標)チェイサーを添加する。60分後または最大相対収率が100に達したら、反応をCOによってクエンチする。
【0124】
(3)XS測定
ポリプロピレン(PP)中のキシレン可溶分率(%XS)は、多くの製品仕様説明書に列挙されている材料特性であり、測定手順はASTM法D5492−98によって特定されている。該方法は、o−キシレンに25℃で可溶であるPPサンプルの画分を求める。可溶性画分は、PP中の非晶質画分(パーセント)と良好な相関関係を有する。非晶質画分の含量は最終生成物の性能特性と密接に関係し、プロセス制御にも重要である。ツールを用いてトリクロロベンゼン中のポリプロピレン(PP)可溶分(%)(%TCB)を測定し、この値をPP標準に基づいてキシレン可溶分(%)と相関させる。システム設計は、Cavroの液体マニプレータのフットプリントに基づいており、特注の周辺機器に収容されて、熱ポリマー溶液の操作、仕上げ、濾過および分析を行う。ポリマー溶液の濃度を測定するCavroロボットシステムおよびPolymer Char社のIR4フィルタベースの赤外検出器をパーソナルコンピュータにインターフェース接続する。ユニットの多様性により、スタンドアロンモードでのポリマーサンプルの希釈および再現サンプルの作製に用いることができる。48個のサンプルを、標準の2gのサンプルに対してわずか30mgを用いる同様の手動のASTM調製方法と比較して約10倍に増加する10時間で処理することができる。一般には、希釈されたサンプルを分析の間160℃に加熱して保持し、次いで個々のサンプルを、IR4赤外検出器による分析のために175℃にサンプルを加熱するサンプリングブロックに移動させる。全てのサンプルの分析が完了したら、サンプルブロックを1時間で40℃まで冷却し、濾過し、60℃に加温して溶液中の残存ポリプロピレンを維持し、次いでIR4を用いて175℃で再分析する。読み取り前後の差は、最終の%TCB(%XS)値に関する基準を与える。TCB可溶分を、十分なポリマーを生成したセルについてのみ測定する。
【0125】
【表3】

【0126】
データTable 1.は、SDAの部分をALAで置き換えると、高い触媒活性および立体選択性を維持しながら、高温、例えば100℃および115℃における触媒活性が実質的に低下することを示す。
【0127】
米国特許プラクティスの目的で、本明細書で参照したあらゆる特許、特許出願、または公報の内容は、特に当該分野における構造、合成技術および一般知識の開示に関して、本明細書においてその全体が参照により本明細書によって組み込まれる。本明細書に記載の本発明の好ましい実施形態に対する種々の変更および改変が当業者には明らかであることが理解されるべきである。そのような変更および改変は、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、また、その意図する利点を低減することなく行われ得る。したがって、そのような変更および改変は、添付の特許請求の範囲によってカバーされることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の遷移金属化合物と、少なくとも1つのC〜C10飽和炭化水素鎖によって隔てられている少なくとも2つの酸素含有官能基を含有する二座化合物を含む内部電子供与体とを含む1以上のチーグラ−ナッタプロ触媒組成物;
1以上のアルミニウム含有助触媒;および
選択性決定剤と活性制限剤との混合物を含む外部電子供与体
を含む触媒組成物。
【請求項2】
二座化合物が、ジエーテル、スクシネート、グルタレート、ジアルコキシベンゼン、ビス(アルコキシフェニル)、ジオールエステル、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
1以上の遷移金属化合物と、ジエーテルを含む内部電子供与体とを含む1以上のチーグラ−ナッタプロ触媒組成物;
1以上のアルミニウム含有助触媒;および
選択性決定剤と活性制限剤との混合物を含む外部電子供与体
を含む触媒組成物。
【請求項4】
ジエーテルが、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、および9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンからなる群から選択される、請求項3に記載の触媒組成物。
【請求項5】
選択性決定剤が、n−プロピルトリメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項3に記載の触媒組成物。
【請求項6】
選択性決定剤が、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパンである、請求項3に記載の触媒組成物。
【請求項7】
活性制限剤が、p−エトキシ安息香酸エチルおよび脂肪酸エステルからなる群から選択される、請求項3に記載の触媒組成物。
【請求項8】
0.5:1〜4:1のアルミニウム対全外部電子供与体のモル比を含む、請求項3に記載の触媒組成物。
【請求項9】
触媒組成物が自己消滅性である、請求項3に記載の触媒組成物。
【請求項10】
1以上の遷移金属化合物と、スクシネートを含む内部電子供与体とを含む1以上のチーグラ−ナッタプロ触媒;
1以上のアルミニウム含有助触媒;および
選択性決定剤と活性制限剤との混合物を含む外部電子供与体
を含む触媒組成物。
【請求項11】
スクシネートが、2,3−ジイソプロピルコハク酸ジエチルである、請求項10に記載の触媒組成物。
【請求項12】
選択性決定剤が、n−プロピルトリメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシランおよびメチルシクロヘキシルジメトキシシランからなる群から選択され、活性制限剤が、p−エトキシ安息香酸エチルおよび脂肪酸エステルからなる群から選択される、請求項10に記載の触媒組成物。
【請求項13】
選択性決定剤がジエーテルであり、活性制限剤がカルボン酸エステルである、請求項10に記載の触媒組成物。
【請求項14】
外部電子供与体が、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパンおよび脂肪酸エステルを含む、請求項10に記載の触媒組成物。
【請求項15】
0.5:1〜4:1のアルミニウム対全外部電子供与体のモル比を含む、請求項10に記載の触媒組成物。
【請求項16】
触媒組成物が自己消滅性である、請求項10に記載の触媒組成物。
【請求項17】
1以上の遷移金属化合物と、ジアルコキシベンゼンを含む内部電子供与体とを含む1以上のチーグラ−ナッタプロ触媒組成物;
1以上のアルミニウム含有助触媒;および
選択性決定剤と活性制限剤との混合物を含む外部電子供与体
を含む触媒組成物。
【請求項18】
ジアルコキシベンゼンが、1−エトキシ−2−n−ペントキシベンゼンである、請求項17に記載の触媒組成物。
【請求項19】
選択性決定剤が、アルコキシシラン組成物からなる群から選択され、活性制限剤がカルボン酸エステルである、請求項17に記載の触媒組成物。
【請求項20】
外部電子供与体が、メチルシクロヘキシルジメトキシシランおよびp−エトキシ安息香酸エチルを含む、請求項17に記載の触媒組成物。
【請求項21】
選択性決定剤が、アミン組成物であり、活性制限剤が、芳香族カルボン酸エステルおよびジエーテルからなる群から選択される、請求項17に記載の触媒組成物。
【請求項22】
外部電子供与体が、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンおよびp−エトキシ安息香酸エチルを含む、請求項17に記載の触媒組成物。
【請求項23】
外部電子供与体が、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンおよび2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパンを含む、請求項17に記載の触媒組成物。
【請求項24】
0.5:1〜4:1のアルミニウム対全外部電子供与体のモル比を含む、請求項17に記載の触媒組成物。
【請求項25】
触媒組成物が自己消滅性である、請求項17に記載の触媒組成物。
【請求項26】
1以上の遷移金属化合物と、ジオールエステルを含む内部電子供与体とを含む1以上のチーグラ−ナッタプロ触媒組成物;
1以上のアルミニウム含有助触媒;および
選択性決定剤と活性制限剤との混合物を含む外部電子供与体
を含む触媒組成物。
【請求項27】
ジオールエステルが、2,4−ペンタンジオールジ(p−n−ブチル)ベンゾエートである、請求項26に記載の触媒組成物。
【請求項28】
外部電子供与体が、アルコキシシラン組成物およびカルボン酸エステルを含む、請求項26に記載の触媒組成物。
【請求項29】
外部電子供与体が、メチルシクロヘキシルジメトキシシランおよびp−エトキシ安息香酸エチルを含む、請求項26に記載の触媒組成物。
【請求項30】
0.5:1〜4:1のアルミニウム対全外部電子供与体のモル比を含む、請求項26に記載の触媒組成物。
【請求項31】
触媒組成物が自己消滅性である、請求項26に記載の触媒組成物。
【請求項32】
重合条件下で、オレフィンを、
遷移金属化合物と、少なくとも1つのC〜C10飽和炭化水素鎖によって隔てられている少なくとも2つの酸素含有官能基を含有する二座化合物を含む内部電子供与体とを含むチーグラ−ナッタプロ触媒組成物、アルミニウム含有助触媒、および選択性決定剤と活性制限剤との外部電子供与体を含む触媒組成物と接触させること;ならびに
ポリオレフィン組成物を形成すること
を含む重合プロセス。
【請求項33】
二座化合物が、ジエーテル、スクシネート、ジアルコキシベンゼン、ジオールエステル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項32に記載の重合プロセス。
【請求項34】
プロピレンを触媒組成物と接触させること、および約0.5%〜約10%のキシレン可溶分を有するプロピレン含有ポリマーを形成することを含む、請求項32に記載の重合プロセス。
【請求項35】
アルミニウム対全外部電子供与体比を0.5:1〜4:1に制御することを含む、請求項32に記載の重合プロセス。
【請求項36】
プロピレンおよびエチレンを触媒組成物と接触させること、ならびにプロピレンおよびエチレンコポリマーを形成することを含む、請求項32に記載の重合プロセス。
【請求項37】
選択性決定剤が、アルコキシシラン組成物、アミン組成物、およびジエーテル組成物からなる群から選択される、請求項32に記載の重合プロセス。
【請求項38】
活性制限剤が、カルボン酸エステル、ポリ(アルケングリコール)、およびジエーテルからなる群から選択される、請求項32に記載の重合プロセス。

【公表番号】特表2011−508013(P2011−508013A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539658(P2010−539658)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/086551
【国際公開番号】WO2009/085649
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】