説明

二次電池、二次電池の温度調節構造、及び二次電池を搭載した車両

【課題】電極体の層の内部の温度調節を効率良く行うこと。
【解決手段】ケース20の周壁である第1側壁21b及び第2側壁21cに接触する伝熱部材40を、電極体11の層と層の間に第1及び第2絶縁部材を介して配設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極板と負極板との間を絶縁してこれらを層状に形成してなる電極体を備えた二次電池、二次電池の温度調節構造、及び二次電池を搭載した車両に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、帯状の正極板と帯状の負極板との間に帯状のセパレータを介在させて、これらを渦捲き状に捲回することで形成される電極体を備えた二次電池が知られている。詳細には、正極板及び負極板には、活物質が塗布されている塗工部と、活物質が塗られていない未塗工部とが形成されている。正極板及び負極板は、セパレータを介して幅方向にずらして積層されるとともに、正極板及び負極板の未塗工部を、セパレータの両端縁からそれぞれ外側へ突出させた状態で渦捲き状に捲回される。正極板及び負極板の未塗工部には集電端子がそれぞれ接続されている。そして、各集電端子が接続された電極体が、金属製(例えばアルミニウム製)のケース内に電解液と共に収容されることで二次電池が構成されている。
【0003】
ところで、このような二次電池は、充放電による発熱に伴って二次電池の性能が劣化してしまうという問題がある。また、二次電池によっては環境温度が低いと充放電性能が低下するため、冬季等の低温環境下においては、特に起動時に二次電池を加温する必要がある。電極体の層の外部はケースの内面に密着した状態でケース内に収容されるため、例えば、ケースに向けて供給された熱媒体と電極体の層の外部とがケースを介して熱交換されることで、電極体の層の外部が温度調節される。しかしながら、電極体の捲回軸方向の両端部は、各集電端子の配置スペースを確保する必要があることから、ケースの内面から離れている。このため、電極体は、その層の外部から内部に向かうにつれて、熱媒体との熱交換が行われ難く、電極体の層の内部においては温度調節がし難いという問題がある。
【0004】
そこで、特許文献1の二次電池では、電極体の層の内側に放熱プレートが配設されている。この放熱プレートにより、電極体の層の内部の温度調節(特許文献1では主に電極体の層の内部の冷却)が行われるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−55887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の二次電池よりも、電極体の層の内部の温度調節をさらに効率良く行いたいという要望がある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、電極体の層の内部の温度調節を効率良く行うことができる二次電池、二次電池の温度調節構造、及び二次電池を搭載した車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、正極板と負極板との間を絶縁してこれらを層状に形成してなる電極体を備え、正極端子及び負極端子が外部に向けて突設された金属製のケース内に前記電極体が収容される二次電池であって、前記正極端子及び前記負極端子が突設された前記ケースの端子壁の周縁から立設された周壁の少なくとも一つに接触する金属製の伝熱部材が、前記電極体の層と層の間に絶縁部材を介して配設されていることを要旨とする。
【0008】
この発明によれば、伝熱部材が、ケースの周壁に接触していない場合に比べると、ケースに向けて供給された熱媒体と電極体の層の内部とが、ケース及び伝熱部材を介して熱交換され易くなる。その結果、絶縁部材により電極体と伝熱部材との絶縁を確保しつつも、電極体の層の内部の温度調節を効率良く行うことができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記絶縁部材は熱伝導率が25.0W/m・K以上のセラミックスから形成されていることを要旨とする。
この発明によれば、絶縁部材が、熱伝導率が25.0W/m・K以上のセラミックスから形成されているため、絶縁部材により電極体と伝熱部材との絶縁を確保しつつも、ケース及び伝熱部材を介した電極体の層の内部と熱媒体との熱交換をさらに効率良く行うことができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記正極板及び前記負極板は、活物質が塗布されている塗工部と、前記活物質が塗布されていない未塗工部とを有し、前記正極板及び前記負極板の各未塗工部が前記ケースの前記周壁に向けて互いに反対側に突出するとともに、前記正極板及び前記負極板の各未塗工部には集電端子がそれぞれ接続され、前記集電端子にはスリットが形成されており、前記伝熱部材は、少なくともその一部が、前記伝熱部材と前記集電端子との絶縁が確保された状態で前記スリットに差し込まれていることを要旨とする。
【0011】
この発明によれば、伝熱部材が、集電端子を避けるようにして、ケースの周壁に接触している場合に比べると、伝熱部材とケースの周壁との接触部位を増やすことができる。その結果として、ケース及び伝熱部材を介した電極体の層の内部と熱媒体との熱交換をさらに効率良く行うことができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は請求項3に記載の発明において、前記伝熱部材は金属板であり、前記絶縁部材はセラミックス板であり、前記セラミックス板は前記金属板の両面を覆うように固着されていることを要旨とする。
【0013】
この発明によれば、伝熱部材及び絶縁部材を容易に一体化させることができる。
請求項5に記載の発明は、請求項2〜請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記伝熱部材はアルミニウム製であり、前記絶縁部材は窒化アルミニウムであることを要旨とする。
【0014】
この発明によれば、伝熱部材及び絶縁部材の熱伝導性を向上させることができる。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の二次電池の温度調節構造であって、前記ケースの前記周壁の外側に熱媒体流路が形成されていることを要旨とする。
【0015】
この発明によれば、伝熱部材が接触しているケースの周壁の外側に熱媒体流路が形成されているため、熱媒体流路を流れる熱媒体と電極体の層の内部とが、ケース及び伝熱部材を介して効率良く熱交換される。
【0016】
請求項7に記載のように、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の二次電池を搭載した車両であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、電極体の層の内部の温度調節を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態における二次電池の縦断面図。
【図2】ケース本体を示す斜視図。
【図3】電極体の一部を展開して示す斜視図。
【図4】伝熱部材が電極体の層の内側に配設された状態を示す斜視図。
【図5】伝熱部材の断面図。
【図6】伝熱部材が集電端子のスリットに差し込まれた状態を示す斜視図。
【図7】電極体をケース本体に収容している状態を示す縦断面図。
【図8】温度調節構造を模式的に示す図。
【図9】別の実施形態における二次電池の縦断面図。
【図10】別の実施形態における二次電池の縦断面図。
【図11】別の実施形態における二次電池の横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図8にしたがって説明する。なお、二次電池は、車両としてのプラグインハイブリッド車に搭載されるとともに、走行モータを駆動するために用いられる。
【0020】
図1に示すように、二次電池10は、電極体11と、電極体11を収容する金属製(本実施形態ではアルミニウム製)のケース20とから構成されている。ケース20は、一面が開口する有底矩形箱状をなすケース本体21と、ケース本体21の開口を閉鎖するとともにケース20の周壁の一部を形成する矩形板状の蓋22とから構成されている。ケース20の内部には電解液が注入されている。蓋22には、正極端子22a及び負極端子22bが外部に向けて突設されている。すなわち、蓋22はケース20の端子壁に相当する。
【0021】
図2に示すように、ケース本体21は、ケース20の周壁を形成する矩形板状の底壁21aと、底壁21aの周縁に立設された矩形板状の第1〜第4側壁21b,21c,21d,21eとから形成されている。第1側壁21b及び第2側壁21cは、ケース20の短手方向に互いに平行に延びるように形成されるとともに、第3側壁21d及び第4側壁21eは、ケース20の長手方向に互いに平行に延びるように形成されている。
【0022】
図3に示すように、電極体11は、帯状の正極板12と帯状の負極板13との間に帯状のセパレータ14を介在させて、これらを捲回軸L周りに渦捲き状に捲回して構成されている。正極板12はアルミニウムから形成されるとともに、負極板13は銅から形成されている。正極板12及び負極板13には、活物質が塗布されている塗工部12a,13aと、活物質が塗布されていない未塗工部12b,13bとが形成されている。正極板12及び負極板13は、セパレータ14を介して幅方向にずらして積層されるとともに、正極板12及び負極板13の未塗工部12b,13bを、セパレータ14の両端縁14a,14bからそれぞれ外側へ突出させた状態で捲回軸L周りに渦捲き状に捲回される。すなわち、本実施形態の電極体11は、正極板12、負極板13及びセパレータ14それぞれが連続したものを層状に捲回してなる捲回型の電極体11である。
【0023】
図4に示すように、電極体11の層の最も内側の層よりも内側(電極体11の短径方向に積層される電極体11の層のうち、最も内側に位置する層と層の間)には伝熱部材40が配設されている。ここで、電極体11の「層」とは、正極板12、負極板13及びセパレータ14からなるものである。伝熱部材40は金属製(本実施形態ではアルミニウム製)であるとともに、矩形平板状をなしている。図1に示すように、伝熱部材40の長手方向の長さRは、ケース本体21の第1側壁21bの内面と第2側壁21cの内面との間の距離よりも僅かに長くなっている。
【0024】
図5に示すように、伝熱部材40の表面40aには絶縁部材としての第1絶縁部材41が伝熱部材40の表面40a全体を覆うように固着されている。また、伝熱部材40の裏面40bには絶縁部材としての第2絶縁部材42が伝熱部材40の裏面40b全体を覆うように固着されている。第1絶縁部材41及び第2絶縁部材42は矩形平板状をなすとともにセラミックスから形成されている。本実施形態では、第1絶縁部材41及び第2絶縁部材42は、セラミックスの中でも熱伝導率が高く電気絶縁性が高い窒化アルミニウムから形成されている。ここでは、熱伝導率が25.0W/m・K以上の値を有するセラミックスを熱伝導率の高いセラミックスとし、窒化アルミニウムの熱伝導率は160.0W/m・Kである。なお、図5では、伝熱部材40、第1絶縁部材41及び第2絶縁部材42の厚み(厚み比率)を誇張して描いている。
【0025】
図4に示すように、伝熱部材40は、正極板12、負極板13及びセパレータ14を径方向両側から圧縮する途中で、伝熱部材40が挿入可能なスペースが電極体11の層の最も内側の層よりも内側に形成された状態で、電極体11の層の最も内側の層よりも内側に挿入される。このとき、第1及び第2絶縁部材41,42によって伝熱部材40と電極体11との絶縁が確保されている。また、伝熱部材40の長手方向に延びるとともに伝熱部材40の表面40a及び裏面40bを繋ぐ両側面40c,40dには、図示しない絶縁シートが貼着されており、伝熱部材40の両側面40c,40dと電極体11との絶縁が確保されている。
【0026】
また、伝熱部材40が電極体11の層の最も内側の層よりも内側に挿入された状態において、正極板12、負極板13及びセパレータ14を径方向両側からさらに圧縮することにより扁平状の電極体11が形成される。このとき、第1及び第2絶縁部材41,42は電極体11の層の最も内側の層に密着して熱的に結合されている。また、伝熱部材40の長手方向の両端部401,402は、電極体11の捲回軸L方向の両端部よりも突出している。
【0027】
図1に示すように、電極体11の捲回軸L方向両端において、正極板12の未塗工部12b及び負極板13の未塗工部13bには集電端子31がそれぞれ接合されている。なお、以下の説明では、正極板12の未塗工部12b側について詳しく説明する。
【0028】
図4に示すように、集電端子31は金属板を屈曲することで形成されている。集電端子31は、正極板12の未塗工部12bに接続される接続部32と、正極端子22aに接続される端子接続部33と、接続部32と端子接続部33とを繋ぐ連繋部34とから構成されている。
【0029】
接続部32及び連繋部34は、電極体11の長径方向に沿って延びるとともに、接続部32と連繋部34との間には電極体11の捲回軸L方向に沿って延びる段差部35が形成されている。接続部32の両側縁には一対の接続代32aが電極体11の捲回軸L方向に沿って立設されている。端子接続部33は、連繋部34に連なるとともに電極体11の捲回軸L方向に沿って延びている。
【0030】
集電端子31には第1及び第2絶縁部材41,42が固着された伝熱部材40の一部を差し込み可能なスリット50が形成されている。具体的には、接続部32にはスリット50の一部を形成する第1スリット50aが電極体11の長径方向に沿って延びるように形成されている。また、段差部35には、スリット50の一部を形成するとともに第1スリット50aに連なり、電極体11の捲回軸L方向に沿って延びる第2スリット50bが形成されている。さらに、連繋部34には、スリット50の一部を形成するとともに第2スリット50bに連なり、電極体11の長径方向に沿って延びる第3スリット50cが形成されている。第1スリット50aにおける第2スリット50bとは反対側は開放されており、第3スリット50cにおける第2スリット50bとは反対側は閉塞している。すなわち、スリット50はその一方側のみが開放されている。
【0031】
図6に示すように、接続部32の接続代32aは、正極板12の層の最も内側の層よりも内側に全て埋没されるとともに、接続代32aの外面と正極板12の未塗工部12bの内周面とが対向するように配置される。このとき、第1及び第2絶縁部材41,42が固着された伝熱部材40の一部がスリット50に差し込まれる。伝熱部材40の表面40a及び裏面40bと集電端子31とは第1及び第2絶縁部材41,42により絶縁が確保されている。また、伝熱部材40の一方の側面40cと集電端子31とは絶縁シートにより絶縁が確保されている。
【0032】
そして、電極体11を、圧縮方向の両側から加圧し、接続代32aの外面と正極板12の未塗工部12bの内周面とを密着させた状態で、超音波溶接により接合する。これにより、正極板12の各層に亘って集電端子31が接続される。連繋部34は、正極板12の端部よりも捲回軸L方向外側を通過しながら電極体11よりも外側まで延びている。
【0033】
なお、負極板13側の説明は、前述の説明中の正極板12側の説明と同じであるため、その詳細な説明を省略する。このため、負極板13側の説明は、前述の説明中における「正極板12」を「負極板13」に、「未塗工部12b」を「未塗工部13b」に、「正極端子22a」を「負極端子22b」に夫々読み替えることで説明される。
【0034】
図7に示すように、各集電端子31を介して正極板12が正極端子22aに接続されるとともに、負極板13が負極端子22bに接続された電極体11を、ケース本体21に収容する。このとき、電極体11を強制的に押し込みながらケース本体21内に収容することで、伝熱部材40の長手方向の両端部401,402が、第1側壁21bの内面及び第2側壁21cの内面に接触した状態で、電極体11がケース本体21内に収容されていく。
【0035】
また、伝熱部材40の長手方向の両端部401,402には熱伝導性の高い接着剤が予め塗布されており、伝熱部材40の両端部401,402と第1側壁21b及び第2側壁21cとが接着剤により接着される。これにより、伝熱部材40の両端部401,402が第1側壁21bの内面及び第2側壁21cの内面に接触した状態で、電極体11がケース本体21内に収容される。また、電極体11がケース本体21に収容された状態において、電極体11の層の最も外側の層は、第3側壁21dの内面及び第4側壁21eの内面に密着している。そして、蓋22によりケース本体21の開口が塞がれて密閉されることで二次電池10が構成される。すなわち、第1〜第4側壁21b,21c,21d,21eは、蓋22の周縁から立設された周壁に相当する。
【0036】
次に、二次電池10の温度調節構造について説明する。
図8に示すように、本実施形態の二次電池10が複数並設されてなる電池モジュールMは、電池パックM1内に収容されている。電池パックM1の一端壁M10には熱媒体としての空気を電池パックM1内に供給するための供給口M2が形成されている。また、電池パックM1の他端壁M11には電池パックM1内の空気を排出する排出口M3が形成されている。隣り合う二次電池10同士の間には隙間S1が形成されている。二次電池10の並設方向の最も一端側に位置する二次電池10と、電池パックM1の一端壁M10と他端壁M11とを繋ぐ一側壁M12との間には隙間S2が形成されている。また、二次電池10の並設方向の最も他端側に位置する二次電池10と、電池パックM1の一端壁M10と他端壁M11とを繋ぐ他側壁M13との間には隙間S3が形成されている。
【0037】
各二次電池10は、第1側壁21bが電池パックM1の一端壁M10側を向くとともに、第2側壁21cが電池パックM1の他端壁M11側を向くように配置されている。各二次電池10の第1側壁21bと電池パックM1の一端壁M10との間には、供給口M2と各隙間S1,S2,S3と連通させる連通路R1が形成されている。また、各二次電池10の第2側壁21cと電池パックM1の他端壁M11との間には、各隙間S1,S2,S3と排出口M3とを連通させる連通路R2が形成されている。
【0038】
そして、供給口M2から空気が供給されると、供給された空気は、連通路R1を介して各隙間S1,S2,S3に向けて流れ、第3側壁21d及び第4側壁21eに沿って流れ込む。そして、各隙間S1,S2,S3を通過した空気は連通路R2を介して排出口M3に向けて空気が流れようとする結果、各二次電池10の第2側壁21c側に向けて空気が流れる。これにより、第1〜第4側壁21b,21c,21d,21eと空気とが熱交換される。よって、本実施形態では、各ケース20の第1〜第4側壁21b,21c,21d,21eの外側に形成された連通路R1,R2及び隙間S1,S2,S3によって熱媒体流路が形成されている。
【0039】
次に、本実施形態の作用について説明する。
例えば、二次電池10を冷却する場合を考える。電極体11の層の最も外側の層は、第3側壁21d及び第4側壁21eに密着しているため、電極体11の層の外部の熱が第3側壁21d及び第4側壁21eに伝わる。そして、電極体11の温度よりも低い温度に温度調節された空気と第3側壁21d及び第4側壁21eとが熱交換されることにより、第3側壁21d及び第4側壁21eの熱が放熱される。その結果、電極体11の層の外部が冷却される。
【0040】
また、電極体11の層の最も内側の層は、第1及び第2絶縁部材41,42を介して伝熱部材40に密着しているとともに、伝熱部材40の両端部401,402と第1側壁21b及び第2側壁21cとが接触している。よって、電極体11の層の内部の熱が、第1及び第2絶縁部材41,42及び伝熱部材40を介して第1側壁21b及び第2側壁21cに伝わる。そして、二次電池10の温度よりも低い温度に温度調節された空気と第1側壁21b及び第2側壁21cとが熱交換されることにより、第1側壁21b及び第2側壁21cの熱が放熱される。その結果として、電極体11の内部の層が冷却される。これにより、プラグインハイブリッド車の走行中において、電極体11の温度が所定の温度以上になることが抑えられ、プラグインハイブリッド車の走行性能が良好に保たれる。また、二次電池10の性能が劣化し難くなり、二次電池10の寿命が長くなる。
【0041】
一方、例えば、二次電池10を加温する場合を考える。電極体11の層の最も外側の層は、第3側壁21d及び第4側壁21eに密着している。よって、電極体11の温度よりも高い温度に温度調節された空気と第3側壁21d及び第4側壁21eとが熱交換されるとともに、第3側壁21d及び第4側壁21eの熱が電極体11の層の外部に伝わることで、電極体11の層の外部が加温される。
【0042】
また、電極体11の層の最も内側の層は、第1及び第2絶縁部材41,42を介して伝熱部材40に密着しているとともに、伝熱部材40の両端部401,402と第1側壁21b及び第2側壁21cとが接触している。よって、電極体11の温度よりも高い温度に温度調節された空気と第1側壁21b及び第2側壁21cとが熱交換されるとともに、第1側壁21b及び第2側壁21cの熱が伝熱部材40の両端部401,402に伝わる。そして、伝熱部材40、第1及び第2絶縁部材41,42を介して電極体11の層の内部に熱が伝わることにより、電極体11の層の内部が加温される。これにより、例えば、低温環境下において、二次電池10を加温することができ、プラグインハイブリッド車の始動がスムーズに行われるようになる。
【0043】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)ケース20の周壁である第1側壁21b及び第2側壁21cに接触する伝熱部材40を、電極体11の層と層の間に第1及び第2絶縁部材41,42を介して配設した。よって、伝熱部材40が、第1側壁21b及び第2側壁21cに接触していない場合に比べると、ケース20に向けて供給された空気と電極体11の層の内部とが、ケース20及び伝熱部材40を介して熱交換され易くなる。その結果、第1及び第2絶縁部材41,42により電極体11と伝熱部材40との絶縁を確保しつつも、電極体11の層の内部の温度調節を効率良く行うことができる。
【0044】
(2)第1及び第2絶縁部材41,42を、熱伝導率が25.0W/m・K以上のセラミックスから形成した。よって、第1及び第2絶縁部材41,42により電極体11と伝熱部材40との絶縁を確保しつつも、ケース20及び伝熱部材40を介した電極体11の層の内部と空気との熱交換をさらに効率良く行うことができる。
【0045】
(3)集電端子31には伝熱部材40を差し込み可能なスリット50を形成した。そして、伝熱部材40の一部を、伝熱部材40と集電端子31との絶縁が確保された状態でスリット50に差し込むとともに、その伝熱部材40の両端部401,402全てを第1側壁21b及び第2側壁21cに接触させた。よって、伝熱部材40が、集電端子31を避けるようにして、第1側壁21b及び第2側壁21cに接触している場合に比べると、伝熱部材40と、第1側壁21b及び第2側壁21cとの接触部位を増やすことができる。その結果として、ケース20及び伝熱部材40を介した電極体11の層の内部と空気との熱交換をさらに効率良く行うことができる。
【0046】
(4)伝熱部材40は金属板であり、第1及び第2絶縁部材41,42はセラミックス板であり、第1及び第2絶縁部材41,42は伝熱部材40の両面を覆うように固着されている。よって、伝熱部材40及び第1及び第2絶縁部材41,42を容易に一体化させることができる。
【0047】
(5)伝熱部材40はアルミニウム製であり、第1及び第2絶縁部材41,42は窒化アルミニウムである。よって、伝熱部材40及び第1及び第2絶縁部材41,42の熱伝導性を向上させることができる。
【0048】
(6)各ケース20の第1〜第4側壁21b,21c,21d,21eの外側に熱媒体流路としての連通路R1,R2及び隙間S1,S2,S3を形成した。よって、ケース20及び伝熱部材40を介した電極体11の層の内部と空気との熱交換をさらに効率良く行うことができる。
【0049】
(7)第1及び第2絶縁部材41,42をセラミックスから形成した。よって、ケース20内に注入された電解液に第1及び第2絶縁部材41,42が溶けてしまうことを防止することができる。
【0050】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態において、例えば、第1〜第4側壁21b,21c,21d,21eの外面に凹部を形成する。そして、各二次電池10の第1側壁21bと電池パックM1の一端壁M10との間、各二次電池10の第2側壁21cと電池パックM1の他端壁M11との間、隣り合う二次電池10同士の間、又は二次電池10と電池パックM1の一側壁M12及び他側壁M13との間に、凹部により区画形成された空間によって熱媒体流路が形成されていてもよい。
【0051】
○ 実施形態において、伝熱部材40が、集電端子31を避けるようにして設けられていてもよい。具体的には、図9に示すように、集電端子31と干渉する部位を削除した形状の伝熱部材80であってもよい。また、図10に示すように、集電端子31と干渉しないように短手方向の長さを短くした形状の伝熱部材90であってもよい。このような場合、集電端子31に形成したスリット50を削除してもよい。
【0052】
○ 実施形態において、第1及び第2絶縁部材41,42をセラミックスから形成したが、これに限らず、例えば、第1及び第2絶縁部材41,42がアルミナ、窒化シリコン、ダイアモンドライクカーボン、導電性セラミックスフィラー入りの絶縁樹脂等から形成されていてもよい。
【0053】
○ 実施形態において、第1及び第2絶縁部材41,42を削除してもよい。この場合、例えば、電極体11の層の最も内側の層に絶縁部材としてのセパレータ14を介在させて、このセパレータ14によって電極体11と伝熱部材40との絶縁を確保するようにする。
【0054】
○ 実施形態において、電極体11の層の内側に伝熱部材40が複数配設されていてもよい。例えば、電極体11の層の最も内側の層と、内側から二番目の層との間に伝熱部材40がさらに配設されていてもよい。
【0055】
○ 実施形態において、伝熱部材40はアルミニウムから形成されていたが、これに限らず、例えば、銅から形成されていてもよい。
○ 実施形態において、熱媒体は空気に限らず、例えば、液体の熱媒体であってもよい。
【0056】
○ 実施形態において、伝熱部材40は、その両端部401,402がケース本体21の第1側壁21b及び第2側壁21cに接触していたが、これに限らず、例えば、伝熱部材40の一端部401のみが第1側壁21bに接触していてもよいし、伝熱部材40の他端部402のみが第2側壁21cに接触していてもよい。この場合、伝熱部材40の長手方向の長さRは、ケース本体21の第1側壁21bの内面と第2側壁21cの内面との間の距離よりも短くなっている。そして、ケース本体21内に電極体11が収容されたときに、伝熱部材40の一端部401のみが第1側壁21bに接触、又は、伝熱部材40の他端部402のみが第2側壁21cに接触するように、伝熱部材40における電極体11の層の最も内側の層よりも内側に対する配置位置を調整する。なお、ケース20に供給される空気の流通方向上流側に位置する側壁に伝熱部材40の端部が接触しているのが好ましい。そして、本実施形態では、空気は第1側壁21b側から流れ込むため、第1側壁21bを介して空気と熱交換し易くするために、伝熱部材40の他端部402のみが第2側壁21cに接触しているよりも、伝熱部材40の一端部401のみが第1側壁21bに接触しているのが好ましい。
【0057】
○ 実施形態において、図11に示すように、ケース本体21の第1側壁21bの内面及び第2側壁21cの内面に伝熱部材40の両端部401,402が案内されるガイド溝95が形成されていてもよい。この場合、伝熱部材40の長手方向の長さRは、ケース本体21の第1側壁21bの内面と第2側壁21cの内面との間の距離よりも長くなっている。また、ケース本体21の第1側壁21bの内面、又は第2側壁21cの内面のみにガイド溝95が形成されていてもよい。
【0058】
○ 実施形態において、第1及び第2絶縁部材41,42は、伝熱部材40の表面40a及び裏面40b全体を覆うように固着されていたが、これに限らない。例えば、伝熱部材40の表面40a及び裏面40bにおいて、電極体11及び集電端子31と重なる範囲に、最低限、第1及び第2絶縁部材41,42が固着されていればよい。すなわち、伝熱部材40と電極体11及び集電端子31との絶縁が確保されていれば、第1及び第2絶縁部材41,42が伝熱部材40の表面40a及び裏面40bに固着される範囲は限定されるものではない。
【0059】
○ 実施形態において、集電端子31の第1スリット50aにおける第2スリット50bとは反対側が閉塞していてもよい。この場合、伝熱部材40全体が差し込み可能なスリットとしての差し込み孔を集電端子31の接続部32に形成することができるように、接続部32が、電極体11の長径方向において、伝熱部材40の側面40dよりも外側に延びている必要がある。
【0060】
○ 実施形態において、集電端子31の接続部32の接続代32aは、正極板12の層の最も内側の層よりも内側に全て埋没されていたが、これに限らず、接続代32aが、正極板12の層の最も内側の層よりも内側に一部分だけ埋没していてもよい。
【0061】
○ 実施形態において、集電端子31は、伝熱部材40を避けるようにして、電極体11の層の最も外側の層に位置する未塗工部12b,13bに接続されていてもよい。このような場合、集電端子31に形成したスリット50を削除してもよい。
【0062】
○ 実施形態において、伝熱部材40の長手方向の長さRは、ケース本体21の第1側壁21bの内面と第2側壁21cの内面との間の距離と同じであってもよい。
○ 実施形態において、伝熱部材40の両側面40c,40dに、熱伝導率の高いセラミックスから形成された絶縁部材を設けてもよい。
【0063】
○ 実施形態において、伝熱部材40の両端部401,402と第1側壁21bの内面及び第2側壁21cの内面との間に、熱伝導率の高いセラミックスから形成された絶縁部材を設けてもよい。
【0064】
○ 実施形態では、帯状の正極板12と負極板13との間に帯状のセパレータ14を介在させて、これらを捲回軸L周りに渦捲き状に捲回して構成された捲回型の電極体11を用いたが、これに限らず、例えば、正極板と負極板との間にセパレータを介在させて、これらを一定方向に複数積層して構成された積層型の電極体を用いてもよい。ここで、積層型の電極体とは、正極板、負極板及びセパレータそれぞれが不連続となったものを一定方向に積層してなる電極体のことである。この場合、伝熱部材40を、ケース本体21の第1側壁21b及び第2側壁21cに加えて、ケース本体21の底壁21aにも接触させることができ、ケース本体21と伝熱部材40との接続部位を増やすことができる。
【0065】
○ 実施形態において、二次電池10はプラグインハイブリッド車に搭載されていたが、これに限らず、例えば、電気自動車に搭載されていてもよい。
○ 本発明を、車両用の二次電池10に具体化したが、これに限らず、車両用以外の二次電池に具体化してもよい。
【0066】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の二次電池が複数並設されてなることを特徴とする電池モジュール。
【符号の説明】
【0067】
M…電池モジュール、R1,R2…熱媒体流路を形成する連通路、S1,S2,S3…熱媒体流路を形成する隙間、10…二次電池、11…電極体、12…正極板、12a…塗工部、12b…未塗工部、13…負極板、13a…塗工部、13b…未塗工部、20…ケース、21b…周壁としての第1側壁、21c…周壁としての第2側壁、22…端子壁としての蓋、22a…正極端子、22b…負極端子、31…集電端子、40,80,90…伝熱部材、41…絶縁部材としての第1絶縁部材、42…絶縁部材としての第2絶縁部材、50…スリット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板と負極板との間を絶縁してこれらを層状に形成してなる電極体を備え、
正極端子及び負極端子が外部に向けて突設された金属製のケース内に前記電極体が収容される二次電池であって、
前記正極端子及び前記負極端子が突設された前記ケースの端子壁の周縁から立設された周壁の少なくとも一つに接触する金属製の伝熱部材が、前記電極体の層と層の間に絶縁部材を介して配設されていることを特徴とする二次電池。
【請求項2】
前記絶縁部材は熱伝導率が25.0W/m・K以上のセラミックスから形成されていることを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記正極板及び前記負極板は、活物質が塗布されている塗工部と、前記活物質が塗布されていない未塗工部とを有し、
前記正極板及び前記負極板の各未塗工部が前記ケースの前記周壁に向けて互いに反対側に突出するとともに、前記正極板及び前記負極板の各未塗工部には集電端子がそれぞれ接続され、
前記集電端子にはスリットが形成されており、
前記伝熱部材は、少なくともその一部が、前記伝熱部材と前記集電端子との絶縁が確保された状態で前記スリットに差し込まれていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記伝熱部材は金属板であり、前記絶縁部材はセラミックス板であり、前記セラミックス板は前記金属板の両面を覆うように固着されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の二次電池。
【請求項5】
前記伝熱部材はアルミニウム製であり、前記絶縁部材は窒化アルミニウムであることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の二次電池の温度調節構造であって、
前記ケースの前記周壁の外側に熱媒体流路が形成されていることを特徴とする二次電池の温度調節構造。
【請求項7】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の二次電池を搭載した車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−101773(P2013−101773A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243705(P2011−243705)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】