説明

二次電池の製造方法

【課題】高額な設備コストのかかる低湿度の作業環境が不要であり、安価で高性能のリチウム二次電池を製造できるリチウム二次電池の製造方法を提供すること。
【解決手段】内部の気体を排気する及び/又は内部に電解液を注入するためのバルブを有する管を少なくとも1本備えた電池容器の内部に、正極と負極をセパレータにて電気的に絶縁してなる電池素子を封入する封入工程と、前記管を介して前記電池容器の内部の気体を減圧下で排気すると共に、前記電池容器の内部を加熱乾燥する水分除去工程と、前記管を介して前記電池容器内に電解液を注入する注液工程と、前記管を封止する管封止工程とを有し、注液工程において、電解液を収容するタンク、該タンクに接続された定量ポンプおよび該定量ポンプに接続された排気装置を備えた注液装置の前記定量ポンプを前記管に接続した後に、前記管のバルブと注液装置の間の気体を排気することを特徴とする二次電池の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二次電池の製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、電池内部の水分除去及び製造工程における水分の浸入防止に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポータブル機器用の電源として経済性等の点から二次電池が多く使われている。二次電池には様々な種類があり、現在最も一般的なものはニッケル‐カドミウム電池であり、最近になってニッケル水素電池も普及してきている。
さらに、正極材料としてリチウム酸コバルト(LiCoO2)、リチウム酸ニッケル (LiNiO2)、これらの固溶体(Li(Co1-XNiX)O2)、あるいはスピネル型構造を有するLiMn24等を、また負極材料としては黒鉛等の炭素材料を、また液体の有機化合物を溶媒とし、リチウム化合物を溶質とした電解液を用いたリチウム二次電池は、ニッケル‐カドミウム電池やニッケル水素電池よりも出力電圧が高く、高エネルギー密度であるため主力になりつつある。
【0003】
これらのリチウム二次電池を製造するにあたり、水分が電池の性能に大きく影響することは良く知られている。リチウム電池の動作電位は3.6V以上であり、電池材料自身に水分が含まれていると、この水分が電気分解されて副生成物を生ずるからである。したがって、一般的にリチウム二次電池を製造するに際しては、正極板や負極板やセパレータなどの電池内部の構成物を予め減圧乾燥などの手段により水分を除去し、その後にこれらを低湿度の環境下に搬送し、その低湿度環境下で、組立工程や電解液の注入工程や電池容器の封口工程を行なうことが一般的である。しかし、二次電池を大量生産するためには、大規模な低湿度の環境を構築せねばならず、また低湿度を維持するためにも莫大なコストを要し、そのためにリチウム二次電池はニッケル水素電池等に比べて電池1個あたりの値段が高くなってしまう。
【0004】
そのために、正極板と負極板とセパレータからなる電池要素を電池容器内に挿入した後に乾燥させて、その後に低湿度の雰囲気下で注液及び封口作業を行なうことにより、正極板と負極板とセパレータを個別に乾燥させる工程を省略し低コスト化を図り得る製造方法が公知である(例えば、特許文献1、2、3参照)。
また、電池容器内に電池要素を挿入し乾燥させた後に封口を行ない、その後に注液栓より注液を行なうことにより、二次電池を製造する方法(特許文献4参照)や、電池容器に電解液注入管を固定し、電池容器内に電池要素を封入した後に電解液を注入し、しかるのちに注入管を封止する技術(特許文献5参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−47418号公報
【特許文献2】特開2000−188114号公報
【特許文献3】特開2001−319641号公報
【特許文献4】特開2002−198096号公報
【特許文献5】特開平11−120966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1〜3の方法では、乾燥後の工程で必ず低湿度の環境が必要であるために、膨大な設備費用が必要となったり、あるいは水分の浸入を完全に防ぐ手立てがなく電池性能に悪影響を及ぼすおそれがある。また、上記特許文献4、5の技術では、電解液注入後の水分の浸入の可能性は低いが、電池要素の水分を予め個別に乾燥して除去する必要があり、電池の組立の際には低湿度の環境が必須である。
【0007】
本発明の主要な目的の一つは、高額な設備コストのかかる低湿度の作業環境が不要であり、安価で高性能のリチウム二次電池を製造できるリチウム二次電池の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かくして、本発明によれば、内部の気体を排気する及び/又は内部に電解液を注入するためのバルブを有する管を少なくとも1本備えた電池容器の内部に、正極と負極をセパレータにて電気的に絶縁してなる電池素子を封入する封入工程と、
前記管を介して前記電池容器の内部の気体を減圧下で排気すると共に、前記電池容器の内部を加熱乾燥する水分除去工程と、
前記管を介して前記電池容器内に電解液を注入する注液工程と、
前記管を封止する管封止工程とを有し、
注液工程において、電解液を収容するタンク、該タンクに接続された定量ポンプおよび該定量ポンプに接続された排気装置を備えた注液装置の前記定量ポンプを前記管に接続した後に、前記管のバルブと注液装置の間の気体を排気する二次電池の製造方法が提供される。
【0009】
本発明によれば、電池要素の封入工程以降は、水分の浸入経路は電池容器に備えつけられた管のみであり、よってこの管から電池容器内に水分が浸入しないように管理しておくことにより、封入工程以降の工程中に水分浸入の可能性がなくなる。したがって、高額な設備コストのかかる低湿度の作業環境が不要となり、簡便な設備で低コストにて高性能な二次電池を製造することがきる。
【0010】
本発明の製造方法が適用できる電池としては、水分の浸入により電池性能に影響を受け易いリチウム電池が対象となるが、リチウム電池の種類としては一次電池、二次電池の種類に限定されるものではなく、また正極活物質や負極活物質、電解質の種類や形状にも限定されない。更にリチウム電池に限らず水分の影響を受ける事が予想される電池系全てにも応用が可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電池要素の封入工程以降は、水分の浸入経路は電池容器に備えつけられた管のみであり、よってこの管から電池容器内に水分が浸入しないように管理しておくことにより、封入工程以降の工程中に水分浸入の可能性がなくなる。したがって、高額な設備コストのかかる低湿度の作業環境が不要となり、簡便な設備で低コストにて高性能な二次電池を製造することがきる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1(参考例)の二次電池の製造方法における封入工程後の電池容器を示す斜視図である。
【図2】同実施の形態1における水分除去工程を示す模式図である。
【図3】同実施の形態1における注液工程を示す模式図である。
【図4】同実施の形態1における正極板を示す正面図である。
【図5】同実施の形態1における負極板を示す正面図である。
【図6】本発明の実施の形態2の二次電池の製造方法における封入工程の電池容器を示す斜視図である。
【図7】同実施の形態2における注液工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は実施の形態に限定されるものではない。
【0014】
[実施の形態1(参考例)
図1は本発明の実施の形態1の二次電池の製造方法における封入工程後の電池容器を示す斜視図であり、図2は同実施の形態1における水分除去工程を示す模式図であり、図3は同実施の形態1における注液工程を示す模式図であり、図4は同実施の形態1における正極板を示す正面図であり、図5は同実施の形態1における負極板を示す正面図である。なお、本実施の形態1では、リチウム二次電池の場合を説明する。
【0015】
図1に示す電池容器1は、その容器本体1aの内部に正極板9(図4参照)と負極板10(図5参照)をセパレータにより電気的に絶縁してなる電池要素が収納されており、容器本体1aの開口部は負極側外部導電端子11aを有する封入板11により液密に施蓋されている。なお、容器本体1aの底部には、正極側外部導電端子が設けられている。
また、封入板11には、電池容器1の内部の気体を排気可能で、かつ電池容器1の内部に電解液を注入可能な排気・注液管2が設けられており、この排気・注液管2は封入板11を介して電池容器1の内部に連通している。
【0016】
電池容器1としては、金属製、樹脂製あるいは金属箔に樹脂フィルムが積層されたラミネートフィルムを金属製や樹脂製の容器体に被覆したり、メッキを施したものなど、製造後の水分の浸入を防止でき、かつ電解液に対して化学的に安定なものが好ましい。電池容器1が金属製の場合、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス等が使用可能であり、鋳造あるいは平板状の金属板をプレス加工により容器形状に加工したり、いくつかの部品を溶接あるいは接着して形成することができる。なお、電池容器1の形状としては、図1に示すような薄型の角筒状、円筒状などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
排気・注液管2は、電池容器1と同様に金属製、樹脂製あるいは金属箔に樹脂フィルムが積層されたラミネートフィルムを金属製や樹脂製の容器体に被覆したり、メッキを施したものなど、製造後の水分の浸入を防止でき、かつ電解液に対して化学的に安定なものが好ましい。
【0018】
また、排気・注液管2には、外気と電池容器1の内部を遮断するためのバルブ3を取り付けておくことが好ましい。電池容器1とバルブ3の間隔Pは、0.5〜100cmが好ましい。上記間隔Pが0.5cmより小さいと、注液後にバルブ3と電池容器1との間における排気・注液管2の封止作業が困難になり、一方100cmを越えると電池製造時の電池容器1の移動に支障をきたす。
また、排気・注液管2の太さは特に限定されないが、速やかに電池容器1の内部の気体を排気したり、速やかに電解液を注入するために、管の内径は0.1mm以上であることが好ましい。なお、管の内径の上限としては接続する電池容器1の外形寸法である。
また、排気・注液管2の肉厚としては、特に限定されないが、薄すぎると管の材質によってはピンホールやクラックなどにより、電池容器1の内部に気体が浸入したり、電解液が流出したり、あるいは減圧に耐え切れずに管がつぶれてしまうので、管の内径の1/10以上の厚みを有することが好ましい。また、管の肉厚が厚すぎると最終工程での管の封止が困難になるので、管の内径の10倍程度までが好ましい。
【0019】
排気・注液管2を電池容器1の封入板11に取り付ける方法としては、例えば、封入板11に排気・注液管2の外径程度の挿入孔を形成し、この挿入孔に排気・注液管2の端部を挿入して溶接、接着、かしめなどにより固着することができる。この時、封入板11と排気・注液管2との間にピンホール等が形成されて外気が電池容器1の内部に浸入することがないよう、完全に封止する必要がある。したがって、かしめの場合には、ガスケットなどを介してかしめることにより液密に接続しても良い。なお、排気・注液管2を封入板11に取り付ける位置は特に限定されないが、外部導電端子11aよりも離間させた位置とすれば、最終工程での管の封止が容易となる。
【0020】
次に、本発明のリチウム二次電池における電極の構成及び製造方法について説明する。
図4に示した正極板9は、正極活物質が塗布された平板状の本体部9aと、本体部9aの端部に設けられた正極活物質が塗布されていない端子片部9bとからなる。また、図5に示した負極板10は、負極活物質が塗布された平板状の本体部10aと、本体部10aの端部に設けられた負極活物質が塗布されていない端子片部10bとからなる。
【0021】
正極板9の正極活物質としては、遷移金属酸化物あるいはリチウム遷移金属酸化物の粉末と、これに導電剤、結着剤及び場合によっては、固体電解液を混合して形成される。遷移金属酸化物としては,酸化バナジウム(V25)、酸化クロム(Cr38)等が挙げられる。リチウム遷移金属酸化物としては、リチウム酸コバルト(LixCoO2:0<x<2)、リチウム酸ニッケル(LixNiO2:0<x<2)、リチウム酸ニッケルコバルト複合酸化物(Lix(Ni1-yCoy)O2:0<x<2,0<y<1)、リチウム酸マンガン(LixMn24:0<x<2)、リチウム酸バナジウム(LiV25,LiVO2)、リチウム酸タングステン(LiWO3)、リチウム酸モリブデン(LiMoO3)等が挙げられる。
【0022】
また、必要であるならば正極電極の電子伝導性を向上させるために、電子導電剤を使用することもできる。導電剤にはアセチレンブラック、グラファイト粉末等の炭素材料や、金属粉末、導電性セラミックスを用いることができる。結着剤にはポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系ポリマー等を用いることができる。これらの混合比は正極活物質100重量部に対して、導電剤を1〜50重量部、結着剤を1〜50重量部とすることができる。導電剤が1重量部より少ないと電極の抵抗あるいは分極が大きくなり、電極としての容量が小さくなるために実用的なリチウム二次電池が構成できない。一方導電剤が50重量部より多いと電極内の正極活物質の量が減少するために容量が小さくなり好ましくない。結着剤が1重量部より少ないと、結着能力がなくなってしまい、電極が構成できなくなる。一方結着剤が50重量部より多いと、電極の抵抗あるいは分極が大きくなり、かつ電極内の正極活物質の量が減少するために容量が小さくなり実用的ではない。
【0023】
また、本発明における負極材料としては、金属リチウム、リチウムアルミニウム等のリチウム合金や、リチウムイオンを挿入・脱離できる物質、例えばポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリパラフェニレン等の導電性高分子、熱分解炭素、触媒の存在下で気相分解された熱分解炭素、ピッチ、コークス、タール等から焼成された炭素、セルロース、フェノール樹脂等の高分子を焼成して得られる炭素、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛等の黒鉛材料、リチウムイオンを挿入・脱離反応しうるWO2、MoO2等の物質単独又はこれらの複合体を用いることができるが、中でも熱分解炭素、触媒の存在下で気相分解された熱分解炭素、ピッチ、コークス、タール等から焼成された炭素、セルロース、フェノール樹脂等の高分子を焼成して得られる炭素、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛等の炭素材料が好ましい。炭素材料の粒径分布は、0.1〜150μm程度であることが好ましい。粒径が、0.1μmよりも小さい場合には、電池のセパレータの空孔を通して内部短絡を引き起こす危険性が高くなり、一方150μmよりも大きくなる場合には、電極の均一性、活物質の充填密度電極を作製する工程上でのハンドリング性などが低下するので、いずれも好ましくない。
【0024】
さらに負極材料としては、黒鉛を芯材料として表面に低結晶性の炭素材料を付着させた黒鉛材料を用いることも可能である。高結晶性黒鉛の表面に低結晶性の炭素材料が付着した黒鉛材料は、表面に気相法、液相法、固相法等の手法により、上記黒鉛材料の表面に結晶性の低い炭素を付着させることによって得ることができる。このように黒鉛の表面に低結晶性炭素を付着させた材料は、芯材が有する比表面積を小さくする効果があり好ましい。また、必要であるならば負極電極の電子伝導性を向上させるために、電子導電剤を使用することもできる。導電剤にはアセチレンブラック、グラファイト粉末等の炭素材料や、金属粉末、導電性セラミックスを用いることができる。
【0025】
これらの電極あるいは混合物を集電体に圧着又は、N-メチル-2-ピロリドン等の溶剤に溶かしスラリー状にし、これを集電体に塗布し乾燥させる。集電体には金属箔、金属メッシュ、金属不繊布等の導電性体が使用できる。この後に電極を所望の厚みまで圧縮することもできる。
【0026】
また、セパレータとしては、ポリエチレンあるいはポリプロピレンから形成された多孔質材料を使用することも可能である。あるいは不織布を用いることも可能である。セパレータの材質としては、電解液中に含まれる有機溶媒に対して溶解したり膨潤しないものが好ましく、具体的にはポリエステル系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー、エーテル系ポリマー、あるいはガラスなどの無機材料が挙げられる。
【0027】
次に、本発明の二次電池の製造方法について説明する。
先ず、このようにして作成した正極板9と負極板10の間にセパレータを挟んで積層することにより電池要素を形成する。
【0028】
(封入工程1)
その後、電池要素を複数重ね合わせてなる積層体を容器本体1a内に挿入し、正極板9及び負極板10を電池容器1の正極側外部導電端子及び封入板11の負極側外部導電端子11aに接続する。その後、各電池要素を外気より遮断するために、容器本体1aの開口部に封入板11を嵌め込み、溶接して密閉する。なお、円筒型や扁平型の電池を作成する場合は、短冊状に電池要素を形成し、それを巻き取って円筒型や扁平型の電池容器内に封入してもよい。また、円筒型の電池の場合、封口の方法は容器本体の開口部に樹脂製のパッキンを有する蓋を嵌め込み、容器本体をかしめることによって密封を行なうことができる。これらの方法以外に、接着剤で密封したり、ガスケットなどを介してボルトなどで固定することも可能である。
【0029】
(水分除去工程1)
続いて、図2に示すように、上述のようにして組立てた電池容器1の排気・注液管2を、排気装置に取り付ける。図2において、4は排気装置であるロータリーポンプ、5は電池容器1を加熱するための加熱装置としてのヒーターである。
次に、排気装置4を作動させ、バルブ3を開放し、電池容器1の内部を減圧させて乾燥を行なう。排気装置としては、ロータリーポンプ以外にターボ分子ポンプや拡散ポンプ等を使用しても良い。また高真空度を達成するために、バルブと排気装置の間に液体窒素などの冷媒を用いたトラップ等を使用しても良い。また、生産性を良くするために、一つの排気装置4に複数個の電池容器1を接続して減圧することも可能である。この減圧乾燥に際しては、電池容器1の内部の圧力が大気圧の2/3以上であると乾燥に時間を要するため、大気圧の2/3未満であることが好ましい。これ以下であれば圧力が0になるまで減圧を行なっても良い。さらに、より水分を効率よく効果的に除去するために、電池容器1を加熱することが好ましい。加熱の方法は特に限定されないが、図2に示したヒーターで電池容器1を外部から加熱したり、熱風を電池容器1にさらしたり、赤外線で加熱したりする等の方法が挙げられる。このときの加熱温度(電池容器1の表面温度)は、電池容器1の内部のセパレータや樹脂製のガスケットなどの融点以下あるいはガラス転移点以下であることが好ましく、具体的には150℃以下である。加熱に要する時間は特に制限は無いが、生産性を考慮して1〜24時間が好ましい。
その後、バルブ3を閉鎖し、電池容器1の内部の減圧状態を保ったまま排気装置4から排気・注液管2を取り外す。この時点で、電池容器1の温度が注入する電解液の沸点以下であれば、注液工程に移るが、電池容器1の温度が注入する電解液の沸点よりも高ければ、注液工程の前に冷却工程に移る。
【0030】
(冷却工程1)
電池容器1の温度が高い状態で電解液を注入すると沸騰する危険があるので、冷却工程では、少なくとも注入する電解液の沸点以下の温度まで冷却することが好ましい。冷却の方法としては、特に限定されるものではなく、自然冷却、送風や冷風による冷却等を適宜選択することができる。
【0031】
(注液工程1)
次に、図3に示すように、電池容器1の排気・注液管2を注液装置6に接続する。注液装置6としては、任意の流量を吐出する定量ポンプ7と、定量ポンプ7に接続された電解液が収納されたタンク8とから構成することができる。バルブ3と注液装置6の間の気体はわずかながらではあるが、水分を含む通常の空気が存在する。よって排気・注液管2と注液装置を接続した後に、真空ポンプ等でこの水分を含んだ空気を外部に排気することが好ましい。これにより、電池容器1内に水分をわずかでも浸入させることがなくなる。その後、バルブ3を開放し、定量ポンプ7を作動させて、排気・注液管2より電池容器1の内部に電解液を注入する。このとき、電池容器1の内部は減圧状態にあるので電解液は速やかに染み込んで注入される。
その後、排気・注液管2のバルブ3を閉鎖し、注液装置より電池容器1を取り外す。そして、電池の充放電により初期にガス等が発生しない場合には、管封止工程に移るが、電池の充放電により初期にガス等が発生する場合には、管封止工程の前にガス抜き工程に移る。
【0032】
(ガス抜き工程1)
ガス抜き工程では、バルブ3を閉じた状態で電池の充電又は放電を行ない、その後バルブ3を開いて電池容器1の内部のガスを外部に放出する。この際、電池容器1内のガスが抜けた後に、外部の空気が電池容器1内に流入しないよう速やかにバルブ3を閉じる。これにより、電池容器1内を正常な圧力に保持することができる。
その後、バルブ3を取り付けたまま電池を使用することも可能であるが、バルブ3を取り除く場合は次の管封止工程に移る。
【0033】
(管封止工程1)
管封止工程では、バルブ3を閉じた状態で、電池容器1とバルブ3の間を封止する。封止の方法は特に限定されないが、例えば、管を機械的に内部の空洞が無くなるまで押しつぶし、その押しつぶし部分を加熱により溶解して切断する、あるいは押しつぶし部分を超音波により溶接し、その後溶接部分を切断しても良い。
【0034】
以上の工程を経てリチウム二次電池が作成される。
このような二次電池の製造方法においては、電池要素を電池容器1の内部に封入した後は、一切外気に触れることなく電池要素を電池容器1内で乾燥し、管から電解液を注入し、管を液密に封止して二次電池を製造することができるので、製造工程上での水分の浸入の可能性が無く、安定した高品質の二次電池を得ることができる。また、低湿度雰囲気下での作業を行なう必要が無いので、安価に二次電池を提供することができる。
【0035】
[実施の形態2]
図6は本発明の実施の形態2の二次電池の製造方法における封入工程の電池容器を示す斜視図であり、図7は同実施の形態2における注液工程を示す模式図である。
【0036】
この実施の形態2の二次電池の製造方法では、電池容器13の封入板14に、バルブ16を有する排気管15と、バルブ18を有する注液管17とが設けられ、以下に説明する製造方法により二次電池を製造することができる。
【0037】
(封入工程2)
封入工程では、実施の形態1と同様に、電池要素を複数重ね合わせてなる積層体を容器本体13a内に挿入し、正極板及び負極板を封入板14の正極側外部導電端子及び負極側外部導電端子19に接続する。その後、容器本体13aの開口部に封入板14を嵌め込み密閉する。なお、電池容器13及び排気管15・注液管17が金属製で、かつ排気管15・注液管17が電池容器13に溶接により接続されている場合には、これらの排気管15・注液管17が電池の端子を兼ねることもできる。
【0038】
(水分除去工程2)
水分除去工程では、注液管17のバルブ18を閉じ、排気管15を図示しない排気装置に接続する。そして、排気装置を作動させ、排気管15のバルブ16を開放し、電池容器13の内部を減圧し乾燥する。この際、電池容器13を加熱することが好ましく、それにより水分の除去を効率よく効果的に行うことができる。また、減圧に際しては、排気管15と共に注液管17からも同時に効率よく排気を行なっても良い。
その後、バルブ16を閉鎖し、電池容器13の内部の減圧状態を保ったまま排気装置から排気管15を取り外す。この時点で、電池容器1の温度が注入する電解液の沸点以下であれば、注液工程に移るが、電池容器1の温度が注入する電解液の沸点よりも高ければ、注液工程の前に冷却工程に移る。
(水分除去工程3)
上記水分除去工程2の代わりに、以下に説明する水分除去工程3を行なってもよい。
水分除去工程3では、注液管17のバルブ18および排気管15のバルブ16を開放し、注液管17を図示しない乾燥気体供給装置に接続する。そして、乾燥気体供給装置から電池容器13の内部に、乾燥した気体を送り込み容器内部を乾燥する。この際、電池容器13を加熱することが好ましく、それにより水分の除去を効率よく効果的に行うことができる。あるいは電池容器13の内部に供給する気体を予め加熱してもよい。電池容器13の内部に供給される気体の水分量としては湿度が0.1%以下である事が好ましい。気体としては空気や窒素などが挙げられる。
その後、バルブ16およびバルブ18を閉鎖し、注液管17を乾燥気体供給装置から取り外す。この時点で、電池容器13の温度が注入する電解液の沸点以下であれば、注液工程に移るが、電池容器13の温度が注入する電解液の沸点よりも高ければ、注液工程の前に冷却工程に移る。
【0039】
(冷却工程2)
冷却工程では、実施の形態1と同様に、少なくとも注入する電解液の沸点以下の温度まで冷却することが好ましい。
【0040】
(注液工程2)
次に、図7に示すように、電池容器13の注液管17を注液装置20に接続する。注液装置20としては、任意の流量を吐出する定量ポンプ21と、定量ポンプ21に接続された電解液が収納されたタンク22と、定量ポンプ21に接続された排気装置であるロータリーポンプ23とから構成することができる。注液管17と注液装置20を接続した後に、バルブ18と定量ポンプ21との間の空気をロータリーポンプ23で外部に排気する。その後、バルブ18を開放し、定量ポンプ21を作動させて、注液管17より電池容器13の内部に電解液を注入する。このとき、電池容器13の内部は減圧状態にあるので電解液は速やかに染み込んで注入される。また、電池容器13の形状や大きさにより電解液の注入に時間がかかることが予想される場合は、注液管17と共に排気管15からも同時に注液を行うようにしてもよい。
なお、以前の冷却工程の間に、バルブ15又はバルブ18を開放して電池容器13の内部に水分を含まない気体(例えば水分を含まない窒素)を導入してもよく、この場合、注液工程では電池容器13の内部が減圧状態ではないので、排気管15のバルブ16を開放して電池容器13内の気体を排気しながら注液を行なう。
その後、注液管17のバルブ18(及び排気管15のバルブ3)を閉鎖し、注液装置20より電池容器13を取り外す。そして、電池の充放電により初期にガス等が発生しない場合には、管封止工程に移るが、電池の充放電により初期にガス等が発生する場合には、管封止工程の前にガス抜き工程に移る。
【0041】
(ガス抜き工程2)
ガス抜き工程では、両方のバルブ15、18を閉じた状態で電池の充電又は放電を行ない、その後一方のバルブを開いて電池容器13の内部のガスを外部に放出する。この際、電池容器13内のガスが抜けた後に、外部の空気が電池容器13内に流入しないよう速やかにバルブを閉じる。
その後、バルブ15、18を取り付けたまま電池を使用することも可能であるが、バルブ15、18を取り除く場合は次の管封止工程に移る。
【0042】
(管封止工程2)
管封止工程では、各バルブ15、18を閉じた状態で、電池容器13とバルブ15、18の間を封止する。封止の方法は実施の形態1と同様にして行うことができる。
【実施例】
【0043】
下記の手順にしたがって、図6と図7で説明した上記実施の形態2のリチウム二次電池を作製した。正極活物質にはリチウム酸コバルトLiCoO2を用いた。LiCoO2に10wt%のアセチレンブラックを導電剤として、10wt%のテフロン(登録商標)樹脂粉末を結着剤として混合した。この混合物をN-メチル-2-ピロリドン等の溶剤に溶かしスラリー状にし、これをアルミニウム箔にドクターブレード法で塗布し乾燥した後に、プレスを行った。この様に作成した正極を70mm×100mmの大きさに切断した。この電極の形状は図4で説明したごとくである。
【0044】
負極活物質には天然黒鉛粉末を使用した。この天然黒鉛粉末に約10wt%のテフロン(登録商標)樹脂粉末を結着剤として混合した。この混合物をN-メチル-2-ピロリドン等の溶剤に溶かしスラリー状にし、これを銅箔に塗布し乾燥した後に、プレスを行った。この様に作成した負極を74mm×104mmの大きさに切断した。この電極の形状は図5で説明したごとくである。
【0045】
これらの正極と負極とが電気的に接触しない様に多孔質ポリエチレンからなるセパレータを挟み込み正極30枚、負極31枚を交互に積層さることにより、積層体を完成させた。
【0046】
本実施例で使用した電池容器の外観は図6のごとくである。容器本体13aの封入板14はアルミニウムからなり、この封入板14にはバルブ16を有するアルミニウム製の排気管15と、バルブ18を有する注液管17が、封入板14を貫通して溶接により固定されている。
【0047】
前述の積層体を電池容器13の内部に挿入し、正極板9を電池容器13に、負極板10のタブを封入蓋14に設けられた外部導電端子19にそれぞれ溶接した。その後、封入蓋14を電池容器13に嵌め込み、接合部分をレーザー溶接して電池容器13を密封した。
【0048】
この密封された電池容器13の注液管17のバルブ18を閉鎖し、排気管15の先端をロータリーポンプに接続して電池容器13の内部の減圧を行なった。電池容器13の内部が10-2Torrまで減圧された後に、電池容器13を両側からヒーターにより加熱した。加熱の際には、電池容器13の表面に熱電対を貼り付けて表面の温度が150℃を超えないように温度を制御し、12時間放置した。
【0049】
12時間加熱した後、ヒーターを外して電池容器13の表面温度が30℃になるまで放置した。その後、注液管17のバルブ18を閉鎖し、排気管15をロータリーポンプから切り離した。
【0050】
その後、図7に示すように、注液管17の先端を注液装置20の定量ポンプ21に接続した。この定量ポンプ21はロータリーポンプ2に接続されており、電池容器13の内部に電解液を注入する前に、バルブ18から定量ポンプ21の間の空気を排気した。その後、注液管17のバルブ18を開いて定量ポンプ21を駆動し、電解液を25cm3電池容器13内に注入した。なお、電解液にはエチレンカーボネートとジエチレンカーボネートの混合溶媒に過塩素酸リチウムを1mol/l溶解させた物を用いた。またエチレンカーボネートとジエチレンカーボネートは体積比で50:50になるように調整した。電解液の注入後、注液管17のバルブ18を閉鎖し、電池容器13を注液装置20から取り外した。そして、排気管15における電池容器13とバルブ15の間の中間位置、及び注液管17における電池容器13とバルブ18の間の中間位置を、溶接により管の内部の空洞をつぶし、溶接部分を切断して各バルブ15、18を切り離した。
【比較例】
【0051】
比較例として、実施例と同様の工程で電池容器を作製し、電池容器を入れたチャンバー内を減圧して加熱乾燥を行い、電池容器の表面温度が30℃になるまで放置した。ここまでは、実施例と同様である。
その後、チャンバー内部に空気を導入し、電池容器を取り出した。取り出した電池容器に実施例で用いたものと同じ封入板を嵌め込み、接合部分をレーザー溶接し電池を密封した。その後、注液管の先端を注液装置に接続し、注液管と排気管の各バルブを開け、電解液を25cm3電池容器内に注入した。電解液の注入後、注液管と排気管の各バルブを閉鎖し、電池容器を注液装置から取り外した。そして、実施例と同様に、排気管15及び注液管17を溶接により管の内部の空洞をつぶし、溶接部分を切断して各バルブを切り離した。
【0052】
実施例と比較例のリチウム二次電池を以下の条件にて充放電を行ない、サイクル試験を行なった。その結果を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
表1の数値は、1サイクル目の容量を100%とした時の各サイクルにおける容量の比率である。この表1から、比較例の二次電池は実施例の二次電池に比べてサイクル特性が劣っていることがわかる。これは、比較例の場合、電池容器の冷却後にバルブを開けたままの状態でチャンバー内に空気を導入したことにより、電池容器の内部に水分が侵入したためと考えられる。
また、表2に実施例と比較例の電池内部の電解液の水分量を調べた結果を示す。水分量は、実施例および比較例の手順で電池を組み立てた後、電池を大気中に3時間放置した後に、電池内部より電解液を取り出して測定を行なった。電池内部の電解液を取り出す作業は、水分が0.1%以下の乾燥アルゴン雰囲気下で行なった。水分量の測定はカールフィッシャー法にて行った。
【0055】
【表2】

【0056】
表2から明らかなように、実施例の二次電池は比較例に比して水分含有量が大幅に少なく、本発明の二次電池の製造方法によれば、製造工程中において電池内部への水分の浸入を有効に防止できることがわかる。
【符号の説明】
【0057】
2 排気・注液管
4 排気装置
15 排気管
17 注液管
1、13 電池容器
9 正極板
10 負極板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部の気体を排気する及び/又は内部に電解液を注入するためのバルブを有する管を少なくとも1本備えた電池容器の内部に、正極と負極をセパレータにて電気的に絶縁してなる電池素子を封入する封入工程と、
前記管を介して前記電池容器の内部の気体を減圧下で排気すると共に、前記電池容器の内部を加熱乾燥する水分除去工程と、
前記管を介して前記電池容器内に電解液を注入する注液工程と、
前記管を封止する管封止工程とを有し、
注液工程において、電解液を収容するタンク、該タンクに接続された定量ポンプおよび該定量ポンプに接続された排気装置を備えた注液装置の前記定量ポンプを前記管に接続した後に、前記管のバルブと注液装置の間の気体を排気することを特徴とする二次電池の製造方法。
【請求項2】
注液工程において、水分除去工程後の前記電池容器内の減圧状態を保持したまま電解液を注入する請求項1に記載の二次電池の製造方法。
【請求項3】
水分除去工程と注液工程の間に、前記電池容器を少なくとも前記電解液の沸点以下の温度まで冷却させる冷却工程を含む請求項1または2に記載の二次電池の製造方法。
【請求項4】
注液工程と管封止工程の間に、充電又は放電を行って前記電池容器内部のガスを前記管から外部に放出するガス抜き工程を含む請求項1〜の何れか1つに記載の二次電池の製造方法。
【請求項5】
前記電池容器は、バルブを有する排気用の管と、バルブを有する注液用の管の少なくとも2本を備え、
水分除去工程において、前記排気用の管と前記注液用の管の両方を用いて前記電池容器の排気を行う請求項1〜の何れか1つに記載の二次電池の製造方法。
【請求項6】
前記電池容器は、バルブを有する排気用の管と、バルブを有する注液用の管の少なくとも2本を備え、
水分除去工程において、乾燥した気体を前記注液用の管から前記電池容器内部に注入し、前記排気用の管から排気を行う請求項1〜の何れか1つに記載の二次電池の製造方法。
【請求項7】
前記電池容器は、バルブを有する排気用の管と、バルブを有する注液用の管の少なくとも2本を備え、
注液工程において、前記注液用の管と前記排気用の管の両方を用いて前記電解液を前記電池容器内に注入する請求項1〜の何れか1つに記載の二次電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−62163(P2010−62163A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284090(P2009−284090)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【分割の表示】特願2003−142103(P2003−142103)の分割
【原出願日】平成15年5月20日(2003.5.20)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】