説明

二次電池システム、二次電池システムを用いた二次電池モジュールおよび二次電池の制御方法

【課題】電池の放電容量の劣化を抑制する。
【解決手段】二次電池の充放電を制御する充放電制御部と、二次電池の電池温度を計測する電池状態検出部と、を備え、充放電制御部は、二次電池の充電状態SOC1を算出し、SOC1がSOC第1閾値SOCm以下の時に、電池状態検出部で二次電池の電池温度T1が計測され、T1が電池温度第1閾値Tm以下の時に、充放電制御部は二次電池を充電電流第1閾値Im以下で充電し、T1がTmより大きく、かつ、電池温度第2閾値Tn以下の時に、充放電制御部は二次電池を充電電流第2閾値In以下で充電し、T1がTmより大きく、かつ、Tnより大きい時に、充放電制御部は二次電池への充電を停止する二次電池システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池システム、二次電池システムを用いた二次電池モジュールおよび二次電池の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来例として、特許文献1には次のような技術が開示されている。充電完了時刻または発車時刻に関する情報を記憶する記憶部と、蓄電装置の充電量と目標充電量に基づいて必要充電量を算出し、蓄電装置に関する温度に基づいて補正した単位時間当たりに充電可能な充電量と充電開始時刻から充電完了時刻または発車時刻までの充電時間とに基づいて算出した最大充電量を算出する充電量算出処理を所定のタイミングで実行し、最大充電量よりも必要充電量が少ない場合は冷却装置を駆動することなく充電を間歇的に行う間歇充電処理と、充電量算出処理を所定のタイミングで実行し、最大充電量よりも必要充電量が多い場合は充電を実施するとともに、所定の条件を満たす場合に蓄電装置を冷却装置により冷却する冷却・充電制御処理とを実行する制御部とを備えている制御装置。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−233360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
低温では、負極活物質のLiイオンの受入れ性が低下するため、負極吸蔵サイトが減少する。また、低SOC側のステージ構造が変化する電位で負極活物質の体積が変化(膨張収縮)するが、高レート充電では、負極活物質の膨張速度が速く、追従できずにマイクロクラックが発生する。マイクロクラック部分は負極活物質がむき出しとなっているため、電解液を分解して被膜を形成する。被膜が負極活物質表面のマイクロクラック発生箇所に偏って形成されるため、負極活物質間の電気的な接触面積が低下する。よって、電池の放電容量が劣化する。
【0005】
特許文献1の技術では、上記に基づく電池の放電容量の劣化を抑制することが難しい。本発明は、電池の放電容量の劣化を抑制させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の特徴は、例えば以下の通りである。
(1)二次電池の充放電を制御する充放電制御部と、二次電池の電池温度を計測する電池状態検出部と、を備え、充放電制御部は、二次電池の充電状態SOC1を算出し、SOC1がSOC第1閾値SOCm以下の時に、電池状態検出部で二次電池の電池温度T1が計測され、T1が電池温度第1閾値Tm以下の時に、充放電制御部は二次電池を充電電流第1閾値Im以下で充電し、T1がTmより大きく、かつ、電池温度第2閾値Tn以下の時に、充放電制御部は二次電池を充電電流第2閾値In以下で充電し、T1がTmより大きく、かつ、Tnより大きい時に、充放電制御部は二次電池への充電を停止する二次電池システム。
(2)上記において、充放電制御部で充電された二次電池の充電状態SOC2がSOC第2閾値SOCn以下の時に、電池状態検出部で二次電池の電池温度T2が計測され、SOC1<SOC2、SOCm<SOCnであり、T2が電池温度第2閾値Tn以下である時、充放電制御部は二次電池をIn以下で充電し、T2がTnより大きい時、充放電制御部は二次電池への充電を停止する二次電池システム。
(3)上記において、Tnが二次電池の充電状態に応じて変化する二次電池システム。
(4)上記において、SOCmが20%以上35%以下にある二次電池システム。
(5)上記において、Tmが5℃以上15℃以下、Tnが45℃以上55℃以下である二次電池システム。
(6)上記において、ImまたはInは一定電流である二次電池システム。
(7)上記のいずれかの二次電池システムを用いた二次電池モジュール。
(8)二次電池の充放電を制御する充放電制御部と、二次電池の電池温度を計測する電池状態検出部と、を備えた二次電池の制御方法であって、充放電制御部は、二次電池の充電状態SOC1を算出し、SOC1がSOC第1閾値SOCm以下の時に、電池状態検出部で二次電池の電池温度T1が計測され、T1が電池温度第1閾値Tm以下の時に、充放電制御部は二次電池を充電電流第1閾値Im以下で充電し、T1がTmより大きく、かつ、電池温度第2閾値Tn以下の時に、充放電制御部は二次電池を充電電流第2閾値In以下で充電し、T1がTmより大きく、かつ、Tnより大きい時に、充放電制御部は二次電池への充電を停止する二次電池の制御方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、電池の放電容量の劣化を抑制できる。上記した以外の課題、構成及び効果は以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態にかかる円筒形の非水系二次電池の一部切欠斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る二次電池システムの概略構成図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る二次電池システムのシステムフロー図である。
【図4】制御部による充電処理における蓄電装置の充電状態、温度、及び充電電流の時系列変化を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面等を用いて、本発明の実施形態について説明する。以下の説明は本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明がこれらの説明に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能である。また、本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【実施例1】
【0010】
図1は本実施形態の非水系二次電池(以下、単に電池とも表記する)を示している。複合リチウム酸化物を活物質とする正極板11とリチウムイオンを保持する材料を活物質とする負極板12とをセパレータ13を介して渦巻き状に捲回した電極捲回群22を作製した後、電極捲回群22を底の有る円筒形の電池缶26の内部に収容する。電極捲回群22の下部より導出した負極タブ24を電池缶26の底部に溶接し、次いで電極捲回群22の上部より導出した正極タブ23を電池蓋25に溶接する。電池缶26には所定の電解液を注入し、電池缶26の開口部に絶縁性ガスケット(図示せず)を周辺に取り付けた電池蓋25を取り付けて、かしめる構成にしている。ここで捲回軸21側を内周側31とし、その外側を外周側32とする。本実施例では、非水系二次電池としてリチウムイオン二次電池を用いているが、ナトリウムイオンなどアルカリ金属イオンの挿入・離脱が可能な正極と負極を用いた非水系二次電池を用いても良い。
【0011】
正極板11に塗布された正極活物質としては、例えば、コバルト酸リチウム及びその変性体(コバルト酸リチウムにアルミニウムやマグネシウムを固溶させたものなど)、ニッケル酸リチウム及びその変性体(一部ニッケルをコバルト置換させたもの)、マンガン酸リチウム及びその変性体、およびこれらの複合酸化物(ニッケル、コバルト、マンガン)が挙げることができる。
【0012】
このとき正極用導電剤としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラックや各種グラファイトを単独、あるいは組み合わせて用いることができる。
【0013】
正極用結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデンの変性体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アクリレート単位を有するゴム粒子結着剤などを用いることができ、この際に反応性官能基を導入したアクリレートモノマー、またはアクリレートオリゴマーを結着剤中に混入させることも可能である。
【0014】
次に、負極板12に塗布された負極活物質としては、各種天然黒鉛、人造黒鉛、シリサイドなどのシリコン系複合材料、及び各種金属塑性材料を用いることができる。
【0015】
負極用結着剤としては、PVdFおよびその変性体をはじめ各種バインダーを用いることができるが、リチウムイオンを受入れ性向上の観点から、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子(SBR)およびその変性体に、カルボキシメチルセルロース(CMC)をはじめとするセルロース系樹脂などを併用、もしくは少量添加するのがより好ましい。
【0016】
このとき負極用導電剤としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラックや各種グラファイトを単独、あるいは組み合わせて用いることができる。
【0017】
セパレータについては、リチウムイオン二次電池の使用範囲に耐えうる組成であれば、特に限定されないが、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の微多孔フィルムを単一あるいは複合して用いるのが一般的であり、また態様として好ましい。このセパレータの厚みに限定されないが、10〜40μmが好ましい。
【0018】
電解液については、電解質塩としてLiPF6及びLiBF4などの各種リチウム化合物を用いることができる。また溶媒としてエチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)を単独もしくは組み合わせて用いることができる。また、正極電極及び負極電極上に良好な皮膜を形成させ、過充放電時の安定性を保証するために、ビニレンカーボネート(VC)やシクロヘキルベンゼン(CHB)およびその変性体を用いることが好ましい。
【0019】
本実施形態における電極捲回群の形状は必ずしも真円筒形である必要はなく、捲回群断面が楕円である長円筒形や捲回断面が長方形の様な角柱の様な形状でもよい。代表的な使用形態としては、筒状で底のある電池缶に電極捲回群と電解液を充填し、電極板から電流を取り出すタブがキャップと電池缶に溶接された状態で封じられている形態が好ましい。しかし、特にこの形態に限定されない。
【0020】
また、電極捲回群を充填する電池缶は、特に限定されるものではないが、耐腐食のために鉄にメッキを施した電池缶、ステンレス鋼製電池缶など、強度、耐腐食性、加工性に優れるものが好ましい。また、アルミニウム合金や各種エンジニアリングプラスティックを使用して軽量化をはかることも可能であり、各種エンジニアリングプラスティックと金属との併用も可能である。
【0021】
次に、図2に二次電池システムを示す。組電池41は図1の電池を複数直列及び並列に組み合わせている。この組電池41の状態を検出するために、バッテリーコントローラ51を備える。このバッテリーコントローラ51(充放電制御部)は組電池41の電池電圧、充放電電流、電池表面温度を検出し、また、累積充放電時間、累積充放電電気量、累積時間を測定している。組電池41は、複数のリチウム単電池(リチウムセル)を電気的に直列あるいは並列あるいは直並列に接続したものから構成されている。
【0022】
さらに組電池41とバッテリーコントローラ51を並列に組み合わせ、バッテリーコントローラ51で得られたデータを全て全体コントローラ61に送信する。全体コントローラ61では、各バッテリーコントローラ51から得られたデータに応じて、各電池の充放電電流値及びその時間を各バッテリーコントローラ51にデータ送信する。
【0023】
バッテリーコントローラ51はCPU、ROM、RAMを有し、所定のプログラムによって作動するマイクロコンピュータを含んでいる。そして、このバッテリーコントローラ51は全体コントローラ61から送信されたデータを基に組電池41の充放電制御を行う。
【0024】
バッテリーコントローラ51が行う制御のうち、内部抵抗値を検知もしくは推定する制御機能(機構)を内部抵抗検知部という。また、本発明では放電制御方法に特徴を有しており、放電に関する制御機能(機構)を放電制御部という。
【0025】
全体コントローラ61はバッテリーコントローラ同様、CPU、ROM、RAMを有し、所定のプログラムによって作動するマイクロコンピュータを含んでいる。そして、バッテリーコントローラ51と通信ケーブルで接続され、それぞれ双方向で通信が可能となっており、各組電池41の状態に応じて様々な制御を行う。
【0026】
電圧検出部42では、組電池41の電圧を検出する。検出する電池電圧は組電池41を構成する一つの電池(リチウムセル)もしくは、電池を複数個直列に接続した電池群、及び電池を複数個直並列に接続した組電池の電圧が考えられるが、測定する電池電圧は特に限定されるものではない。
【0027】
電流検出部43では、組電池41の充放電電流の値を検出する。検出方法としては、検流計、シャント抵抗を用いた検流、及びクランプメータなどが考えられるが、これに限定されるものではなく、電流値を検出する手段であれば、如何なる手段も用いることができる。
【0028】
温度検出部44では、組電池41の温度を検出する。温度を検出する手段は、熱電対、サーミスタ等が考えられるが、特に限定されるものではない。また、温度を検出する箇所は電池表面、電池内部、組電池が収められている筺体の表面温度、及び組電池41の周囲環境温度が考えられる。
【0029】
これら電圧検出部42、電流検出部43、温度検出部44をまとめて電池状態検出部という。組電池41、電圧検出部42、電流検出部43、温度検出部44、バッテリーコントローラ51が合わさって二次電池モジュールとなる。バッテリーコントローラ51に電圧検出部42、電流検出部43、温度検出部44が組み込まれていてもよい。
【0030】
タイマーは、バッテリーコントローラ内に設けられ、組電池41の充放電に関する時間を計測する。例えば、放電を開始してからの経過時間等を計測するものである。
【0031】
電気負荷71は、例えば自動車であれば、ヒータ、電動ブレーキ、電動パワーステアリング、電動モータであってよい。
【0032】
以上のように、本実施形態によれば、組電池41を複数個並列に接続した二次電池システムにおいて、組電池41に対して、バッテリーコントローラ51をそれぞれ有し、バッテリーコントーラ51で組電池41の状態を検出し、その組電池41の状態に応じて制御することで、リチウムイオン二次電池の電池容量低下及び内部抵抗上昇を抑制し、長寿命な二次電池システムを提供することができる。
【0033】
次に、バッテリーコントローラ51の充放電制御方法について説明する。
図3は本発明の実施形態に係る二次電池システムのフロー図である。
最初に、リチウムイオン二次電池の充電を開始する命令を全体コントローラ61からバッテリーコントローラ51に送り、各バッテリーコントローラ51は各組電池41の充電を開始する(ステップS001)。
【0034】
バッテリーコントローラ51は充電開始後、電圧検出部42により電池電圧V、電流検出部43により充電電流I、温度検出部44により電池温度Tを計測し、タイマーにより充電時間t(充電開始からの経過時間)を計測する。
【0035】
バッテリーコントローラ51は電池電圧から充電状態(State of Charge:SOC)を算出する。SOCの算出方法として、例えば[数2]に基づいて算出される。ここでVOは充電開始前の開回路電圧を示し、Q(V0)は充電開始前の電池容量を示す([数1])。また、初期の電池容量をQbとする(ステップS002)。
【0036】
[数1]
Q(V0)=α1O+β1
[数2]
SOC1=Q(VO)/Qb×100
【0037】
ステップS002の後に、バッテリーコントローラ51は組電池41のSOC1をSOC第1閾値SOCmと比較する(ステップS003)。ここで、組電池41のSOC1がSOC第1閾値SOCm以下であればステップS004に進み、SOC第1閾値SOCmより高ければステップS012に進む。SOC第1閾値SOCmとして具体的には、20%以上35%以下であることが望ましい。
【0038】
ステップS004では、バッテリーコントローラ51は温度検出部44により、電池温度T1を計測し、ステップS005で計測した電池温度T1と電池温度第1閾値Tmと比較する。そして、電池温度T1が電池温度第1閾値Tmより高ければステップS006に進み、電池温度第1閾値Tm以下であればステップS007に進む。
【0039】
ステップS006では、計測した電池温度T1が電池温度第2閾値Tn以下であればステップS008へ進み、電池温度第2閾値Tnより高ければステップS009に進む。電池温度第1閾値Tmとして具体的には、5℃以上15℃以下、電池温度第2閾値Tnとして具体的には、45℃以上55℃以下であることが望ましい。電池温度第2閾値Tnは電池温度第1閾値Tmより大きい。
【0040】
ステップS007では、バッテリーコントローラ51は組電池41を充電する充電電流を充電電流第1閾値Im以下とする。このとき、充電電流第1閾値Imは一定電流でも良いし、例えば[数3]に基づいて算出されても良い。[数3]のようにSOCと温度の値によって充電電流を制御することで、黒鉛のステージ構造が変化しない場所では、充電電流を高めに設定し、黒鉛のステージ構造が変化する場所では、充電電流を低めに設定するなど、きめ細かい制御ができ、一定電流よりも劣化を抑制できる。ただし、充電電流第1閾値Imを一定電流とすることにより、低コスト化が望める。充電電流第1閾値ImはSOCと電池温度Tを変数とする値であり、α2、α3、β2は定数である。
【0041】
[数3]
m(SOC、T)=α2SOC+α3T+β2
【0042】
ステップS008では、バッテリーコントローラ51は組電池41を充電する充電電流を充電電流第2閾値In以下とする。このとき充電電流第2閾値Inは一定電流でも良いし、例えば[数4]に基づいて算出されても良い。SOCが高いと劣化に対する温度の感度が高くなるので、[数4]のようにSOCと温度の値によって充電電流を制御することで、高温、高SOCほど電流を下げて、ジュール発熱による温度上昇を抑えることができ、一定電流よりも劣化を抑制できる。ただし、充電電流第2閾値Inを一定電流とすることにより、低コスト化が望める。充電電流第2閾値InはSOCと電池温度Tを変数とする値であり、α4、α5、β3は定数である。
【0043】
[数4]
n(SOC、T)=α4SOC+α5T+β3
【0044】
ステップS009では、バッテリーコントローラ51は組電池41の充電を一時的に停止する。充電停止期間は、一定期間でも良いし、電池温度T1が電池温度第3閾値TL以下となるまで停止しても良い。まずは温度TLで規定しておいて、温度が一定期間TLより下がらなければ時間で規定して充電停止期間を終了させることが望ましい。
【0045】
ステップS010では、バッテリーコントローラ51は電圧検出部42により算出した電池電圧VからSOC2を再度算出する。SOC2の算出方法として、例えば[数8]に基づいて算出される。ここで、[数5]におけるR(SOC、T)は組電池41の電池内部抵抗を示し、[数6]におけるVO′は充電期間中の電池電圧Vから想定される開回路電圧を示し、[数7]におけるQ(VO′)は充電期間中の電池容量を示す。充電期間中の電池容量Q(VO′)は充電開始前の電池容量Qに充電電流×時間の積算で求められる容量を足し合わせて算出しても良いし、[数7]に基づいて算出しても良い。
【0046】
[数5]
R(SOC、T)=α6SOC+α7T+β4
[数6]
O′=V―I×R(T)
[数7]
Q(VO′)=α1O′+β1
[数8]
SOC2=Q(VO′)/Qb×100
【0047】
ステップS010の後に、バッテリーコントローラ51は組電池41のSOC2をSOC第1閾値SOCmと比較する(ステップS011)。ここで、組電池41のSOC2がSOC第1閾値SOCm以下であればステップS004に進み、SOC第1閾値SOCmより高ければステップS012に進む。
【0048】
ステップS011の後に、バッテリーコントローラ51は組電池41のSOC2をSOC第2閾値SOCnと比較する(ステップS012)。ここで、組電池41のSOC2がSOC第2閾値SOCn以下であればステップS013に進み、SOC第2閾値SOCnより高ければステップS018に進む。HEVであれば、SOC第2閾値SOCnは60〜70%、PHEV、EVであれば、SOC第2閾値SOCnは90〜100%程度であることが望ましい。SOC第2閾値SOCnはSOC第1閾値SOCmより大きい。
【0049】
ステップS013では、バッテリーコントローラ51は温度検出部44により電池温度T2を計測し、ステップS014で計測した電池温度T2と電池温度第2閾値Tnと比較する。そして電池温度T2が電池温度第2閾値Tn以下であればステップS015に進み、高ければステップS016に進む。ここで電池温度第2閾値Tnは[数9]で算出されても良い。電池温度第2閾値TnはSOCを変数とする値であり、α8、β5は定数である。
【0050】
[数9]
n(SOC)=α8SOC+β5
【0051】
ステップS015では、バッテリーコントローラ51は組電池41を充電する充電電流を充電電流第3閾値IO以下に制御する。このとき充電電流第2閾値IOは一定電流でも良いし、例えば[数10]に基づいて算出されても良い。充電電流第3閾値IOは電池温度第2閾値Tnと同じ値にしても良いし、異なる値にしても良い。図4では電池温度第2閾値Tn=充電電流第3閾値IOとしている。
【0052】
[数10]
I(SOC、T)=α9SOC+α10T+β6
【0053】
ステップS016では、バッテリーコントローラ51は組電池41への充電を一時的に停止する。充電停止期間は、一定期間でも良いし、電池温度T2が電池温度第3閾値TL以下となるまで停止しても良い。
【0054】
ステップS017では、バッテリーコントローラ51は組電池41の電池電圧VからSOCを再度算出する。SOCの算出方法として、例えば[数8]に基づいて算出される。そして、組電池41のSOCがSOC第2閾値SOCn以下であればS013に進み、組電池41のSOCがSOC第2閾値SOCnより高ければS018に進む。
【0055】
ステップS018では、バッテリーコントローラ51は組電池41の充電を終了し、全体コントローラ61に充電終了の命令を送信する。
【0056】
以上のように、リチウムイオン電池を充電する際に、充電状態の低い位置では、充電電流の値を小さく制御して負極活物質の膨張速度を抑えることで、負極活物質のマイクロクラックを抑制することができるため、長寿命な二次電池システムを提供することができる。
【0057】
図4はバッテリーコントローラ51による充電処理における組電池41の充電状態、温度、及び充電電流の時系列変化を例示する説明図である。
【0058】
図4に示すように時刻t01において、充電が開始された後、縦軸に示す組電池41の電池温度、及び充電状態(SOC)は時間の経過とともに上昇する。なお、図4においては、説明の便宜上、組電池41の温度が線形的に上昇しているが、あくまで例示であって、これに限定されるものではない。
【0059】
バッテリーコントローラ51は、組電池41のSOCがSOC第1閾値SOCm以下、及び組電池の電池温度Tが電池温度第1閾値Tm以下と判定した場合、組電池41への充電電流を充電電流第1閾値Im以下となるように制御する(図4に示す時刻t01からt02の期間)。
【0060】
バッテリーコントローラ51は、組電池41のSOC及び電池温度Tを継時的に測定しており、例えば組電池41の電池温度Tが電池温度第1閾値Tmを超えた場合、組電池41へ充電する充電電流を充電電流第2閾値In以下となるように制御する。ここで、充電電流の閾値はIm<Inの関係にある(図4に示す時刻t02からt03の期間)。
【0061】
バッテリーコントローラ51は、組電池41の電池温度Tが電池温度第2閾値Tnを超えた場合、組電池41への充電を停止する。そして電池温度Tが電池温度第3閾値TL以下となった場合、充電を再開する(図4に示す時刻t03からt04、t06からt07、t08からt09の期間)。
【0062】
バッテリーコントローラ51は、組電池41のSOCがSOC第1閾値SOCmを超えた場合、組電池41へ充電する充電電流を充電電流第2閾値In以下となるように制御する(図4に示す時刻t05からt06、t07からt08、t09からt10の期間)。
【0063】
バッテリーコントローラ51は組電池41の充電を終了し、全体コントローラ61に充電終了の命令を送信する(図4に示す時刻t10)。
【0064】
以上のように、組電池41を充電する際に、SOCの低い位置が低く、かつ、電池温度が低い場合、充電電流の値を低く制御することで上述の通り劣化を抑制することができるため、長寿命な二次電池システムを提供することができる。
【0065】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨に逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できる。
【0066】
例えば、電池を捲回型のリチウムイオン二次電池としたが、複数の正極板と、複数の負極板とをセパレータを介して交互に積層してなる積層型のリチウムイオン二次電池に適用しても良い。
【符号の説明】
【0067】
11 正極板
12 負極板
13 セパレータ
14 集電体
15 電極合剤層
21 捲回軸
22 電極捲回群
23 正極タブ
24 負極タブ
25 電池蓋
26 電池缶
31 内周側
32 外周側
41 組電池
42 電圧検出部
43 電流検出部
44 温度検出部
51 バッテリーコントローラ
61 全体コントローラ
71 電気負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の充放電を制御する充放電制御部と、
前記二次電池の電池温度を計測する電池状態検出部と、を備え、
前記充放電制御部は、前記二次電池の充電状態SOC1を算出し、
SOC1がSOC第1閾値SOCm以下の時に、前記電池状態検出部で前記二次電池の電池温度T1が計測され、
1が電池温度第1閾値Tm以下の時に、前記充放電制御部は前記二次電池を充電電流第1閾値Im以下で充電し、
1がTmより大きく、かつ、電池温度第2閾値Tn以下の時に、前記充放電制御部は前記二次電池を充電電流第2閾値In以下で充電し、
1がTmより大きく、かつ、Tnより大きい時に、前記充放電制御部は前記二次電池への充電を停止する二次電池システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記充放電制御部で充電された前記二次電池の充電状態SOC2がSOC第2閾値SOCn以下の時に、前記電池状態検出部で前記二次電池の電池温度T2が計測され、
SOC1<SOC2、SOCm<SOCnであり、
2が電池温度第2閾値Tn以下である時、前記充放電制御部は前記二次電池をIn以下で充電し、
2がTnより大きい時、前記充放電制御部は前記二次電池への充電を停止する二次電池システム。
【請求項3】
請求項1または2において、
nが前記二次電池の充電状態に応じて変化する二次電池システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
SOCmが20%以上35%以下にある二次電池システム。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれかにおいて、
mが5℃以上15℃以下、
nが45℃以上55℃以下である二次電池システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
mまたはInは一定電流である二次電池システム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかの二次電池システムを用いた二次電池モジュール。
【請求項8】
二次電池の充放電を制御する充放電制御部と、
前記二次電池の電池温度を計測する電池状態検出部と、を備えた二次電池の制御方法であって、
前記充放電制御部は、前記二次電池の充電状態SOC1を算出し、
SOC1がSOC第1閾値SOCm以下の時に、前記電池状態検出部で前記二次電池の電池温度T1が計測され、
1が電池温度第1閾値Tm以下の時に、前記充放電制御部は前記二次電池を充電電流第1閾値Im以下で充電し、
1がTmより大きく、かつ、電池温度第2閾値Tn以下の時に、前記充放電制御部は前記二次電池を充電電流第2閾値In以下で充電し、
1がTmより大きく、かつ、Tnより大きい時に、前記充放電制御部は前記二次電池への充電を停止する二次電池の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−110901(P2013−110901A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255703(P2011−255703)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】