説明

二次電池用電解質及びそれを用いた二次電池

【課題】電解液膨潤度が高く、長期使用時にも電解液の染み出しが少ない高分子固体電解質を提供する。
【解決手段】単官能モノマーによって形成される線状ポリマーと、概線状ポリマーを架橋する多官能モノマーとによって三次元架橋された網目構造を有する共重合体であって、架橋点間分子量(Mx)が9000〜25000と大きな重合組成物を用いる。
【効果】概高分子が有機溶媒と電解質塩を含む電解質は電解液膨潤度が高く、ラミネートフィルムを外装材とした薄型リチウムイオン電池用電解質に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム電池等の二次電池及びそれに用いる二次電池用電解質に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は高エネルギー密度を有し、その特性を生かし、ノートパソコンや携帯電話などに広範に利用されている。近年では、二酸化炭素の増加に伴う地球温暖化防止の観点から電気自動車への関心が高まり、その電源としてもリチウムイオン電池の適用が検討されている。
【0003】
リチウムイオン電池には、電解質として液状の電解液が用いられてきた。電解液の漏洩防止の観点から、リチウムイオン電池の外装材には金属製の材料が用いられる。近年、リチウムイオン電池の更なる高エネルギー密度化が要求されており、外装材として、軽量のアルミラミネートの適用が進められている。しかし、アルミラミネートを用いた電池は高温になると、電解液成分の揮発に伴う膨張が見られる問題があった。
【0004】
そこで、電解液の揮発を抑えるため、ゲル状高分子電解質が開発されている。従来のゲル状電解質は、例えば特許文献1に記載のように、モノマー成分に電解液を混合し、熱重合により固体電解質を作成する試みがなされている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−190317号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、電解液成分を含む固体電解質は、時間経過とともに電解液とポリマーが分離してしまう問題があった。これは、ポリマーに保持できる電解液量に上限があるためである。モノマー成分を電解液に混合し、熱重合により固体電解質を作成する際、モノマーから形成されるポリマーの、電解液が保持できる最大量を超えてしまうと、固体電解質内部から電解液成分の染み出しが起こる。固体電解質をLiイオン電池に適用した際、電解液とポリマーの分離が起こると、イオンの吸蔵・放出が均等に行えなくなり、電池容量の低下が起こる。よって、電解液をより多く保持できるポリマーがLiイオン電池用固体電解質を作成するために必要である。
【0007】
一方、電解液を保持できるポリマーは3次元架橋した網目構造を有する。前記ポリマーは分子内に重合性官能基を2つ以上有するモノマー(多官能モノマー)と、分子内に重合性官能基を1つ有するモノマー(単官能モノマー)より作製され、多官能モノマーは網目の節部分を構成し、この節の部分は架橋点と呼ばれる。一方、単官能モノマーは網目部分を構成し、網目の分子量を架橋点間分子量と呼ぶ。架橋点間分子量が大きく網目構造が均一であるポリマーほど、電解液をより多く保持でき、膨純度が大きい。そのため、多官能モノマーと単官能モノマーの選択及びその組成比が重要である。
【0008】
本温発明の目的は、リチウム電池などの二次電池などの電解質として有用な、膨潤度の大きい電解質及びそれを合成するための重合性組成物ならびに前記電解質を用いた二次電池に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、多官能モノマーと、単官能モノマーとの共重合体であり、架橋点間分子量(Mx)が9000〜25000である高分子と、電解質塩及び有機溶媒を含む電解質を提供するものである。また、本発明は、正極と、電解質を介して該正極と対向する負極と、該正極、負極、電解質を収容する容器とを含み、前記電解質は多官能モノマーと、単官能モノマーとの共重合体であり、架橋点間分子量(Mx)が9000〜25000である高分子と、電解質塩及び有機溶媒を含む二次電池を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明による固体電解質をLiイオン電池に用いると、電解液膨潤度が高く、長期使用時にも電解液の染み出しが少なく、円滑に電池の充放電が行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明は、ポリマーの電解液保持性を増大させるために、多官能モノマー、単官能モノマーの組成比、重合反応性および単官能モノマー側鎖の極性に着目した。本発明による電解質におけるポリマーは図1(a)に模式的に示す構造を有し、このポリマーが電解液に接触すると次第に膨潤し、図1(b)のように、ゲル電解質となる。前記ポリマーは多官能モノマー及び単官能モノマーの組成比により架橋点間分子量を調節することが可能である。
【0012】
一方、重合性反応性の異なるモノマーを用いることにより、重合時、多官能モノマー及び単官能モノマーの配列の仕方が変わるため、高分子中の節と網目の配列を制御することが可能である。特に多官能モノマーの単量体反応性比(r)と単官能モノマーの単量体反応性比(r)の関係がr>rであると、均一な網目構造を形成し、電解液膨潤量の大きいポリマーが作製できる。本発明では、rが大きいモノマーとして(メタ)アクリル基を有するモノマー、rが小さいモノマーとしてビニルエーテルを有するモノマーを選定した。また、単官能モノマーの極性は、マトリックスポリマー内の極性を規定する。本発明で用いる電解液は極性が高いため、ポリマーマトリックスの極性が高いほど電解液をより多く保持できるようになる。そのため、単官能モノマーにおいて、側鎖にアルキレンオキシド基を有するモノマーを選定した。
【0013】
本発明における多官能モノマーとは、分子内に重合性官能基を2つ以上持つ化合物である。例えば、重合性官能基を2つ持つジメタクリル酸エチレン、ジアクリル酸エチレン、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレートなどが挙げられる。また、重合性官能基を3つ持つ化合物として、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシ化ロトリメチロールプロパンメタクリレートなどが挙げられる。
【0014】
本発明における単官能モノマーとは、分子内に重合性官能基を1つ持つ化合物である。例えば、酢酸ビニル、(メタ)アクリレート化合物やポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート化合物、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、メトキシポリアルキレングリコールアクリレート、ドデシロキシポリアルキレングリコールアクリレート、オクタデシロキシポリアルキレングリコールアクリレートなどが挙げられる。本発明において、多官能モノマーと単官能モノマーは、それぞれジメタクリル酸エチレンと酢酸ビニルが特に好ましい。
【0015】
本発明における電解液は、有機溶媒と電解質塩とを含む。有機溶媒として、リチウムイオン電池に用いられるジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ―ブチルラクトン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等がある。特に炭酸エステルが好ましい。また、電解質塩としてLiPF、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiClO、LiBF、LiAsF、LiI、LiBr、LiSCN、Li10Cl10、LiCFCO等がある。
【0016】
ラジカル重合開始剤を用いた重合方法は、通常行われている温度範囲および重合時間で行うことができる。電気化学デバイスに用いられる部材を損なわない目的から、分解温度および速度の指標である10時間半減期温度範囲として、30〜90℃のラジカル重合開始剤を用いるのが好ましい。なお、前記10時間半減期温度とはベンゼン等のラジカル不活性溶媒中の濃度0.01モル/リットルにおける未分解のラジカル重合開始剤の量が10時間で1/2となるのに必要な温度を指すものである。本発明における開始剤配合量は、前記重合性官能基1molに対し、0.01〜10mol%である。好ましくは0.1〜5mol%である。
【0017】
ラジカル重合開始剤としては,t−ブチルペルオキシピバレート,t−ヘキシルペルオキシピバレート,メチルエチルケトンペルオキシド,シクロヘキサノンペルオキシド,1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン,2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)オクタン,n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレート,t−ブチルハイドロペルオキシド,クメンハイドロペルオキシド,2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロペルオキシド,ジ−t−ブチルペルオキシド,t−ブチルクミルペルオキシド,ジクミルペルオキシド,α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシm−イソプロピル)ベンゼン,2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン,2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン,ベンゾイルペルオキシド,t−ブチルペルオキシプロピルカーボネート等の有機過酸化物がある。
【0018】
また、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル,2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル),2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル),2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル),1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル),2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル,2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチル−バレロニトリル,2,2−アゾビス(2−メチル−N−フェニルプロピオンアミジン)二塩酸塩,2,2’−アゾビス[N−(4−クロロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]二塩酸塩,2,2’−アゾビス[N−ヒドロキシフェニル]−2−メチルプロピオンアミジン]二塩酸塩,2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(フェニルメチル)プロピオンアミジン]二塩酸塩,2,2’−アゾビス[2メチル−N−(2−プロペニル)プロピオンアミジン]二塩酸塩,2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩,2,2’−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]二塩酸塩,2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩,2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩,2,2’−アゾビス[2−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−1,3−ジアゼピン−2−イル)プロパン]二塩酸塩,2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]二塩酸塩,2,2’−アゾビス[2−(5−ヒドロキシ−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]二塩酸塩,2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}二塩酸塩,2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン],2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ヒ゛ス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド},2,2’−アゾビス{2メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド},2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド],2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)ジハイドレート,2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン),2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン),ジメチル,2,2’−アゾビスイソブチレート,4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸),2,2’−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等のアゾ化合物が挙げられる。
【0019】
電解質の作製方法は、多官能モノマー及び単官能モノマーを混合し、重合開始剤を加え、図1(a)に模式的に示す網目状に架橋したポリマーを得る。この際、前記多官能モノマーと単官能モノマーとの混合物に電解液成分の一部が混合していてもよい。
【実施例】
【0020】
以下,実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが,本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお,本実施例では,全てアルゴン雰囲気下で試料調製および膨潤度測定、電池評価を行った。また,本発明における実施例および比較例一覧表を表1に示した。
<評価方法>
<電解液膨潤度>作成したポリマーを電解液に浸し、所定時間後のポリマー重量を測定した。膨潤度はポリマー1g当たりの電解液の含有量として計算した。
【0021】
浸漬時間は1日、電解液はエチレンカーボネート:ジメチルカーボネート:ジエチルカーボネートを体積比で1:1:1で混合した溶媒に、電解質塩としてLiPF又はLiBETIを1mol/Lになるように調節した電解液を使用した。また、浸漬時の温度は25℃でおこなった。
【0022】
<イオン伝導度の測定>:イオン伝導度の測定は,25℃において電解質をステンレス鋼電極で挟み込むことにより、図2に示す電気化学セルを構成した。電極間に交流を印加して抵抗成分を測定する交流インピーダンス法を用いて行い,コール・コールプロットの実数インピーダンス切片から計算した。
【0023】
<架橋点間分子量測定>:架橋点間分子量の測定は、動的粘弾性測定により計測される貯蔵弾性率より求めた。
<電極の作製方法>
<正極>:セルシード(日本化学工業社製コバルト酸リチウム),SP270(日本黒鉛社製黒鉛)及びKF1120(呉羽化学工業社製ポリフッ化ビニリデン)とを80:10:10重量%の割合で混合し、N−メチル−2−ピロリドンに投入混合して、スラリー状の溶液を作製した。該スラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔にドクターブレード法で塗布し、乾燥した。合剤塗布量は、150g/m であった。合剤カサ密度が3.0g/cmになるようにプレスし、1cm×1cmに切断して正極を作製した。
【0024】
<負極>:カーボトロンPE(呉羽化学工業社製非晶性カーボン)及びKF1120
(呉羽化学工業社製ポリフッ化ビニリデン)とを90:10重量%の割合で混合し、N−メチル−2−ピロリドンに投入混合して、スラリー状の溶液を作製した。該スラリーを厚さ20μmの銅箔にドクターブレード法で塗布し、乾燥した。合剤塗布量は、70g/mであった。合剤カサ密度が1.0g/cmになるようにプレスし、1.2cm×1.2cmに切断して負極を作製した。
【0025】
<電池作製方法>:正極及び負極の間に、電解液を膨潤させた固体電解質を挿入し電池を作製した。正極及び負極上に高分子電解質を作製した。さらに,これら正極及び負極を重ねあわせ,0.1MPaの荷重をかけ80℃で6時間保持することで張り合わせた。次いで,図2に示すように,正極1および負極2にステンレス端子5,6を取り付け,袋状のアルミラミネートフィルム7に挿入した。作製した電池について以下の評価を行った。
【0026】
<電池充放電条件>:充放電器(東洋システム社製TOSCAT3000)を用い,25℃において電流密度0.5mA/cmで充放電を行った。4.1Vまで定電流充電を行い,電圧が4.1Vに達した後,12時間定電圧充電を行った。さらに放電終止電圧3.0Vに至るまで定電流放電を行った。最初の放電で得られた容量を,初回充放電容量とした。上記条件での充電・放電を1サイクルとして,初回充放電容量の70%以下に至るまで充放電を繰り返し,その回数をサイクル特性とした。また,電流密度1mA/cmで4.1Vまで定電流充電を行い,電圧が4.1Vに達した後,12時間定電圧充電を行った。さらに放電終止電圧3.0Vに至るまで定電流放電を行った。得られた容量と,前述の充放電サイクルで得られた初回サイクル容量と比較して,その比率を高速充放電特性とした。
(実施例1)
ジメタクリル酸エチレングリコール0.198g(1mmol)及び、酢酸ビニル6.88g(80mmol)を加えた。さらに重合開始剤として、パーヘキシルPV(日本油脂製)を全モノマーに対し、1wt%になるように加えモノマー液とした。前記モノマー液をポリテトラフルオロエチレン製ボート中に流し込み、60℃で3時間保持することでポリマーを得た。動的粘弾性測定法により求めた架橋点間分子量は、22527であった。前記ポリマーに電解液(エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート=1:1:1(体積比)、LiPF電解液1mol/L、富山化学製)を浸透させ20時間室温で放置した。
【0027】
浸透後、膨潤したポリマーを取り出し重量を測定したところポリマー1g当たり16.51gの電解液を含有していた。イオン伝導度を測定したところ5.0mS/cmであった。作製した電池の初回充放電容量は2.0mAhであり,サイクル特性は500回であった。また,高率放電特性は99%であった。
(実施例2)
ジメタクリル酸エチレングリコール0.198g(1mmol)及び、ジ(エチレングリコール)メチルエーテルメチルメタクリレート22.6g(120mmol)を加えた。さらに重合開始剤として、パーヘキシルPV(日本油脂製)を全モノマーに対し、1wt%になるように加えモノマー液とした。前記モノマー液をポリテトラフルオロエチレン製ボート中に流し込み、60℃で3時間保持することでポリマーを得た。動的粘弾性測定法により求めた架橋点間分子量は、15658であった。前記ポリマーに電解液(エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート=1:1:1(体積比)、LiPF電解液1mol/L、富山化学製)を浸透させ20時間室温で放置した。
【0028】
浸透後、膨潤したポリマーを取り出し重量を測定したところポリマー1g当たり4.40gの電解液を含有していた。イオン伝導度を測定したところ3.0mS/cmであった。作製した電池の初回充放電容量は2.0mAhであり,サイクル特性は450回であった。また,高率放電特性は95%であった。
(実施例3)
トリメチロールプロパントリメタクリレート0.338g(1mmol)及び、ジ(エチレングリコール)メチルエーテルメチルメタクリレート22.6g(80mmol)を加えた。さらに重合開始剤として、パーヘキシルPV(日本油脂製)を全モノマーに対し、1wt%になるように加えモノマー液とした。前記モノマー液をポリテトラフルオロエチレン製ボート中に流し込み、60℃で3時間保持することでポリマーを得た。動的粘弾性測定法により求めた架橋点間分子量は、9662であった。前記ポリマーに電解液(エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート=1:1:1(体積比)、LiPF電解液1mol/l、富山化学製)を浸透させ20時間室温で放置した。
【0029】
浸透後、膨潤したポリマーを取り出し重量を測定したところポリマー1g当たり3.20gの電解液を含有していた。イオン伝導度を測定したところ1.5mS/cmであった。作製した電池の初回充放電容量は2mAhであり,サイクル特性は430回であった。また,高率放電特性は92%であった。
(実施例4)
ジメタクリル酸エチレングリコール0.198g(1mmol)及び、アクリル酸ブチル11.22g(100mmol)を加えた。さらに重合開始剤として、パーヘキシルPV(日本油脂製)を全モノマーに対し、1wt%になるように加えモノマー液とした。前記モノマー液をポリテトラフルオロエチレン製ボート中に流し込み、60℃で3時間保持することでポリマーを得た。動的粘弾性測定法により求めた架橋点間分子量は、17027であった。前記ポリマーに電解液(エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート=1:1:1(体積比)、LiPF電解液1mol/L、富山化学製)に浸透させ20時間室温で放置した。
【0030】
浸透後、膨潤したポリマーを取り出し重量を測定したところポリマー1g当たり2.07gの電解液を含有していた。イオン伝導度を測定したところ1.0mS/cmであった。作製した電池の初回充放電容量は2mAhであり,サイクル特性は430回であった。また,高率放電特性は90%であった。
(実施例5)
トリメチロールプロパントリメタクリレート0.338g(1mmol)及び、アクリル酸ブチル11.22g(100mmol)を加えた。さらに重合開始剤として、パーヘキシルPV(日本油脂製)を全モノマーに対し、1wt%になるように加えモノマー液とした。前記モノマー液をポリテトラフルオロエチレン製ボート中に流し込み、60℃で3時間保持することでポリマーを得た。動的粘弾性測定法により求めた架橋点間分子量は、19133であった。
【0031】
前記ポリマーに電解液(エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート=1:1:1(体積比)、LiPF電解液1mol/L、富山化学製)を浸透させ20時間室温で放置した。浸透後、膨潤したポリマーを取り出し重量を測定したところポリマー1g当たり2.16gの電解液を含有していた。イオン伝導度を測定したところ1.2mS/cmであった。作製した電池の初回充放電容量は2mAhであり,サイクル特性は430回であった。また,高率放電特性は90%であった。結果をまとめると表1のとおりである。
【0032】
【表1】

【0033】
以下の実施例6から18において、ポリマーの架橋点分子量はすべて9000〜25000の範囲内にあった。
(実施例6)
実施例1において、(式2)に示した酢酸ビニル量を8.6g(100mmol)に変更したこと以外は実施例1と同様に行った。電解液浸透後の膨潤ポリマーは、ポリマー1g当たり13.43gの電解液を膨潤した。イオン伝導度を測定したところ4.9mS/cmであった。作製した電池の初回充放電容量は2mAhであり,サイクル特性は500回であった。また,高率放電特性は99%であった。
(実施例7)
実施例1において、酢酸ビニル量を12.9g(150mmol)に変更したこと以外は実施例1と同様に行った。電解液浸透後のポリマーは、ポリマー1g当たり14.59gの電解液を含有していた。イオン伝導度を測定したところ4.8mS/cmであった。作製した電池の初回充放電容量は2mAhであり,サイクル特性は500回であった。また,高率放電特性は99%であった。
(実施例8)
実施例1において、酢酸ビニル量を4.3g(50mmol)に変更したこと以外は実施例1と同様に行った。電解液浸透後の膨潤ポリマーは、ポリマー1g当たり7.55gの電解液を含有していた。イオン伝導度を測定したところ4.6mS/cmであった。作製した電池の初回充放電容量は2mAhであり,サイクル特性は450回であった。また,高率放電特性は97%であった。
(実施例9)
実施例1において、酢酸ビニル量を0.86g(10mmol)に変更したこと以外は実施例1と同様に行った。電解液浸透後の膨潤ポリマーは、ポリマー1g当たり1.85gの電解液を含有していた。イオン伝導度を測定したところ1.2mS/cmであった。作製した電池の初回充放電容量は1.8mAhであり,サイクル特性は350回であった。また,高率放電特性は90%であった。
(実施例10)
実施例1において、酢酸ビニル量を6.9g(80mmol)に、また、電解液を(エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート=1:1:1(体積比)、LiBETI電解液1mol/l、住友3M製)に変更したこと以外は実施例1と同様に行った。電解液浸透後の膨潤ポリマーは、ポリマー1g当たり18.42gの電解液を含有していた。イオン伝導度を測定したところ4.3mS/cmであった。作製した電池の初回充放電容量は2mAhであり,サイクル特性は500回であった。また,高率放電特性は99%であった。
(実施例11)
実施例10において、酢酸ビニル量を8.6g(100mmol)に変更したこと以外は実施例10と同様に行った。電解液浸透後の膨潤したポリマーは、ポリマー1g当たり17.37gの電解液を含有していた。イオン伝導度を測定したところ4.3mS/cmであった。作製した電池の初回充放電容量は2mAhであり,サイクル特性は500回であった。また,高率放電特性は99%であった。
(実施例12)
実施例10において、酢酸ビニル量を12.9g(150mmol)に変更したこと以外は実施例10と同様に行った。電解液浸透後の膨潤ポリマーは、ポリマー1g当たり18.74gの電解液を含有していた。イオン伝導度を測定したところ4.5mS/cmであった。作製した電池の初回充放電容量は2mAhであり,サイクル特性は500回であった。また,高率放電特性は99%であった。
(実施例13)
実施例10において、酢酸ビニル量を4.3g(50mmol)に変更したこと以外は実施例10と同様に行った。電解液浸透後の膨潤ポリマーは、ポリマー1g当たり6.79gの電解液を含有していた。イオン伝導度を測定したところ4.1mS/cmであった。作製した電池の初回充放電容量は2mAhであり,サイクル特性は380回であった。また,高率放電特性は90%であった。
(実施例14)
実施例10において、酢酸ビニル量を0.86g(10mmol)に変更したこと以外は実施例10と同様に行った。電解液浸透後の膨潤ポリマーは、ポリマー1g当たり1.72gの電解液を含有していた。イオン伝導度を測定したところ1.4mS/cmであった。作製した電池の初回充放電容量は2mAhであり,サイクル特性は340回であった。また,高率放電特性は85%であった。
(実施例15)
ジアクリル酸エチレングリコール0.170g(1mmol)及び酢酸ビニル6.88g(80mmol)を加えた。さらに重合開始剤として、パーヘキシルPV(日本油脂製)を全モノマーに対し、1wt%になるように加えモノマー液とした。前記モノマー液をポリテトラフルオロエチレン製ボート中に流し込み、60℃で3時間保持することでポリマーを得た。前記ポリマーに電解液(エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート=1:1:1(体積比)、LiPF電解液1mol/L、富山化学製)を浸透させ20時間室温で放置した。浸透後、膨潤ポリマーを取り出し重量を測定したところポリマー1g当たり15.11gの電解液を含有していた膨潤した。イオン伝導度を測定したところ4.5mS/cmであった。作製した電池の初回充放電容量は2mAhであり,サイクル特性は500回であった。また,高率放電特性は99%であった。
(実施例16)
ジメタクリル酸エチレングリコール0.198g(1mmol)及びプロピオン酸ビニル8.0g(80mmol)を加えた。さらに重合開始剤として、パーヘキシルPV(日本油脂製)を全モノマーに対し、1wt%になるように加えモノマー液とした。前記モノマー液をポリテトラフルオロエチレン製ボート中に流し込み、60℃で3時間保持することでポリマーを得た。前記ポリマーに電解液(エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート=1:1:1(体積比)、LiPF電解液1mol/L、富山化学製)を浸透させ20時間室温で放置した。浸透後、膨潤ポリマーを取り出し重量を測定したところポリマー1g当たり16.12gの電解液を含有していた。イオン伝導度を測定したところ4.0mS/cmであった。作製した電池の初回充放電容量は2mAhであり,サイクル特性は500回であった。また,高率放電特性は99%であった。
(実施例17)
1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート0.254g(1mmol)及び酢酸ビニル6.88g(80mmol)を加えた。さらに重合開始剤として、パーヘキシルPV(日本油脂製)を全モノマーに対し、1wt%になるように加えモノマー液とした。前記モノマー液をポリテトラフルオロエチレン製ボート中に流し込み、60℃で3時間保持することでポリマーを得た。前記ポリマーに電解液(エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート=1:1:1(体積比)、LiPF電解液1mol/l、富山化学製)を浸透させ20時間室温で放置した。
【0034】
浸透後、膨潤ポリマーを取り出し重量を測定したところポリマー1g当たり15.21gの電解液を含有していた。イオン伝導度を測定したところ4.5mS/cmであった。作製した電池の初回充放電容量は2mAhであり,サイクル特性は480回であった。また,高率放電特性は99%であった。
(比較例)
メタクリル酸メチル1g(10mmol)及びジメタクリル酸エチレン1g(5.1mmol)を混合し、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルをモノマーに対し0.1wt%の濃度になるように調整しモノマー液を作成した。前記モノマー液を60℃で加熱することによりポリマーを作成した。前記ポリマーに電解液(エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート=1:1:1(体積比)、LiPF電解液1mol/L、富山化学製)を浸透させ20時間室温で放置した。浸透後、ポリマーを取り出し重量を測定したところポリマー1g当たり0.1gの電解液を含有していた。イオン伝導度を測定したところ0.01mS/cmであった。電池評価は内部抵抗が高く不可能であった。実施例6〜18及び比較例及び比較例の結果をまとめると、表2のとおりである。
【0035】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明における樹脂マトリックスの構造を説明のための模式図である。
【図2】本発明が適用されるリチウム電池の基本構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0037】
1…正極、2…負極、5、6…ステンレス端子、7…アルミラミネートフィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多官能モノマーと、単官能モノマーとの共重合体であり、架橋点間分子量(Mx)が9000〜25000である高分子と、電解質塩及び有機溶媒を含む電解質。
【請求項2】
前記共重合体が、前記単官能モノマーによって形成される線状ポリマーと該線状ポリマーを架橋する多官能モノマーとによって構成された網目構造を有することを特徴とする請求項1記載の電解質。
【請求項3】
前記多官能モノマーに対する前記単官能モノマーのモル比が、多官能モノマー1molに対し、30〜200molであることを特徴とする請求項1記載の電解質。
【請求項4】
前記有機溶媒は炭酸エステル類であることを特徴とする請求項1記載の電解質。
【請求項5】
多官能モノマーと、単官能モノマーと、重合開始剤と、有機溶媒と、電解質塩とを含み、多官能モノマーに対する前記単官能モノマーのモル比が、多官能モノマー1molに対し、30〜200molの共重合体であることを特徴とする重合性組成物。
【請求項6】
前記有機溶媒は炭酸エステル類であることを特徴とする請求項5記載の重合成組成物。
【請求項7】
正極と、電解質を介して該正極と対向する負極と、該正極、負極、電解質を収容する容器とを含み、前記電解質は多官能モノマーと、単官能モノマーとの共重合体であり、架橋点間分子量(Mx)が9000〜25000である高分子と、電解質塩及び有機溶媒を含む二次電池。
【請求項8】
前記共重合体が、前記単官能モノマーによって形成される線状ポリマーと該線状ポリマーを架橋する多官能モノマーとによって構成された網目構造を有する請求項7記載の二次電池。
【請求項9】
前記有機溶媒は炭酸エステル類であることを特徴とする請求項7記載の二次電池。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−12340(P2007−12340A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−189343(P2005−189343)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】