説明

二次電池

【課題】 高い容量を保持しつつ、充放電サイクル特性を向上させることができる二次電池を提供する。
【解決手段】 帯状の正極21と負極22とがセパレータを介して巻回された巻回体20を電池缶の内部に備える。負極22は、一対の対向面を有する負極集電体22Aと、この負極集電体22Aの表面に設けられ、リチウムを吸蔵および放出することが可能な金属元素あるいは半金属元素の単体,合金または化合物を含む負極活物質層22Bとを有している。負極22は、巻回中心側に外周面側のみにおいて負極活物質層22Bと正極活物質層21Bとが対向する外周面対向領域22Cを2周以上3.25周以下の範囲内で有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極と負極とを電解質を介して積層し巻回してなる巻回体を備えた二次電池に係り、特に、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能な金属元素あるいは半金属元素の単体,合金または化合物を含む負極活物質層を備えた二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラ一体型VTR(ビデオテープレコーダ),携帯電話あるいはノートパソコンなどのポータブル電子機器が多く登場し、その小型軽量化が図られている。これらの電子機器のポータブル電源として用いられている電池、特に二次電池はキーデバイスとして、エネルギー密度の向上を図る研究開発が活発に進められている。中でも、非水電解質二次電池(例えば、リチウムイオン二次電池)は、従来の水系電解液二次電池である鉛電池、ニッケルカドミウム電池と比較して大きなエネルギー密度が得られるので、その改良に関する検討が各方面で行われている。
【0003】
リチウムイオン二次電池に使用される負極活物質としては、比較的高容量を示し良好なサイクル特性を有する難黒鉛化性炭素あるいは黒鉛などの炭素系材料が広く用いられている。ただし、近年の高容量化の要求を考えると、炭素系材料の更なる高容量化が課題となっている。
【0004】
このような背景から、炭素化原料と作成条件とを選ぶことにより炭素系材料で高容量を達成する技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、かかる炭素系材料を用いた場合には、負極放電電位が対リチウムで0.8V〜1.0Vであり、電池を構成したときの電池放電電圧が低くなることから、電池エネルギー密度の点では大きな向上が見込めない。さらには、充放電曲線形状にヒステリシスが大きく、各充放電サイクルでのエネルギー効率が低いという欠点もある。
【0005】
一方、炭素系材料を上回る高容量負極として、ある種の金属リチウムが電気化学的に合金化し、これが可逆的に生成・分解することを応用した合金材料に関する研究も進められている。例えば、Li−Al合金を用いた高容量負極が開発され、さらには、Li−Si合金からなる高容量負極が開発されている(例えば、特許文献2参照)。また、Cu6 Sn5 という金属間化合物も開発されている(例えば、特許文献3参照)。
【非特許文献1】ディ.ラーチャー(D. Larcher)著「ジャーナル オブ ジ エレクトロケミカル ソサエティ(Journal of The Electrochemical Society)」、2000年、5巻、第147号、p1658-1662
【特許文献1】特開平8−315825号公報
【特許文献2】米国特許第4950566号明細書等
【特許文献3】特開平6−325765号公報
【特許文献4】特開平7−230800号公報
【特許文献5】特開平7−288130号公報
【特許文献6】特開平5−234620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、Li−Al合金,Si合金あるいはCu6 Sn5 は、充放電に伴い膨張収縮し、充放電を繰り返す度に微粉化するので、サイクル特性が極めて悪いという大きな問題がある。
【0007】
そこで、サイクル特性を改善する手法として、リチウムの吸蔵・放出に伴う膨張収縮に関与しない元素で一部を置換することが検討されており、例えば、LiSis t (0≦s、0<t<2),Liu Si1-v v w (Mはアルカリ金属を除く金属もしくはケイ素を除く類金属を表し、0≦u、0<v<1、0<w<2である),あるいはLiAgTe系合金が提案されている(例えば、特許文献4〜6参照)。しかし、これらの負極活物質によっても、膨張収縮に由来する充放電サイクル特性の劣化が大きく、高容量という特徴を活かしきれていないのが実状である。特に、正極と負極とを電解質を介して積層し巻回して用いる場合、構造上の理由により充放電サイクル特性の劣化が顕著に現れる。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、高い容量を保持しつつ、充放電サイクル特性を向上させることができる二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による第1の二次電池は、一対の対向面を有する正極集電体に正極活物質層が設けられた正極と、一対の対向面を有する負極集電体に負極活物質層が設けられた負極とを、積層して巻回した巻回体を備え、負極活物質層は、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能な負極活物質として、金属元素の単体,合金および化合物と、半金属元素の単体,合金および化合物とからなる群のうちの少なくとも1種を含み、負極は、外周面側および内周面側の両面において負極活物質層と正極活物質層とが対向する両面対向領域を有すると共に、巻回中心側に、外周面側のみにおいて負極活物質層と正極活物質層とが対向する外周面対向領域を2周以上3.25周以下の範囲内で有するものである。
【0010】
本発明による第2の二次電池は、一対の対向面を有する正極集電体に正極活物質層が設けられた正極と、一対の対向面を有する負極集電体に負極活物質層が設けられた負極とを、積層して巻回した巻回体を備え、負極活物質層は、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能な負極活物質として、金属元素の単体,合金および化合物と、半金属元素の単体,合金および化合物とからなる群のうちの少なくとも1種を含み、負極は、外周面側および内周面側の両面において負極活物質層と正極活物質層とが対向する両面対向領域を有すると共に、巻回中心側に、内周面側のみにおいて負極活物質層と正極活物質層とが対向する内周面対向領域を1周以上2.25周以下の範囲内で有するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1または第2の二次電池によれば、負極活物質層が、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能な負極活物質として、金属元素の単体,合金および化合物と、半金属元素の単体,合金および化合物とからなる群のうちの少なくとも1種を含むようにしたので、高い容量を得ることができる。また、両面対向領域を有すると共に、第1の二次電池では、巻回中心側に、外周面対向領域を2周以上3.25周以下の範囲内で有するようにし、また、第2の二次電池では、巻回中心側に、内周面対向領域を1周以上2.25周以下の範囲内で有するようにしたので、巻回中心側におけるエネルギー密度が適度に低下し、電極反応物質の吸蔵に伴う膨張による応力を緩和させ、局所的な歪みを緩和することができる。よって、高い容量を保持しつつ、サイクル特性を向上させることができる。
【0012】
また、正極の外周面側および内周面側の両面に正極活物質層が設けられた両面領域を形成すると共に、巻回中心側に、内周面側または外周面側のみに正極活物質層が設けられた片面領域を設けるようにすれば、高い効果を得ることができる。
【0013】
更に、外周面側に設けられた正極活物質層の厚みを巻回中心側の端部において、巻回外周側から巻回中心側に向かって薄くなるようにすれば、また、負極活物質層の巻回中心側における外周面側の端部を、保護部材により被覆するようにすれば、巻回しの際の正極活物質層の剥がれや正極の折れを抑制することができ、開回路電圧の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、図において各構成要素は本発明が理解できる程度の形状、大きさおよび配置関係を概略的に示したものであり、実寸とは異なっている。
【0015】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態に係る二次電池の断面構造を表すものである。この二次電池は、いわゆる円筒型といわれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、巻回体20を有している。電池缶11は、例えばニッケル(Ni)のめっきがされた鉄(Fe)により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶11の内部には、巻回体20を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板12,13がそれぞれ配置されている。
【0016】
電池缶11の開放端部には、電池蓋14と、この電池蓋14の内側に設けられた安全弁機構15および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)16とが、ガスケット17を介してかしめられることにより取り付けられており、電池缶11の内部は密閉されている。電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の材料により構成されている。安全弁機構15は、熱感抵抗素子16を介して電池蓋14と電気的に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合にディスク板15Aが反転して電池蓋14と巻回体20との電気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子16は、温度が上昇すると抵抗値の増大により電流を制限し、大電流による異常な発熱を防止するものである。ガスケット17は、例えば、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
【0017】
巻回体20は、正極21と負極22とをセパレータ23を介して積層し巻回したものであり、例えば中心にはセンターピン24が挿入されている。巻回体20の正極21にはアルミニウム(Al)などよりなる正極リード25が接続されており、負極22にはニッケルなどよりなる負極リード26が接続されている。正極リード25は安全弁機構15に溶接されることにより電池蓋14と電気的に接続されており、負極リード26は電池缶11に溶接され電気的に接続されている。
【0018】
図2は図1に示した正極21の巻回前の断面構成を表すものである。正極21は、例えば、対向する一対の面を有する正極集電体21Aの片面または両面に正極活物質層21Bが設けられた構造をしている。具体的には、正極集電体21Aの内周面側のみに正極活物質層21Bが設けられた片面領域21Cと、外周面側および内周面側に負極活物質層21Bが設けられた両面領域21Dとを有している。正極集電体21Aは、例えば、厚みが5μm〜50μm程度であり、アルミニウム箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。
【0019】
正極活物質層21Bは、例えば、正極活物質と、必要に応じてカーボンブラックあるいはグラファイトなどの導電剤と、ポリビニリデンフルオライドなどの結着剤とを含有して構成されている。
【0020】
正極活物質としては、電極反応物質であるリチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料が好ましく、例えば、電池の目的に応じて金属酸化物,金属硫化物あるいは特定の高分子材料などの1種または2種以上が選択される。
【0021】
金属酸化物としては、Lix MIO2 を主体とするリチウム複合酸化物あるいはV2 5 が挙げられる。特にリチウム複合酸化物は高電圧を発生可能であり、エネルギー密度を高くすることができるので好ましい。なお、上記組成式において、MIは1種類以上の遷移金属、特にコバルト(Co),ニッケルおよびマンガン(Mn)からなる群のうちの少なくとも1種が好ましい。xの値は電池の充放電状態によって異なり、通常、0.05≦x≦1.10である。このようなリチウム複合酸化物の具体例としては、LiCoO2 ,LiNiO2 ,Liy Niz Co1-z 2 (yおよびzは電池の充放電状態によって異なり通常、0<y<1、0.7<z<1.02である)あるいはスピネル型構造を有するLiMn2 4 などが挙げられる。
【0022】
金属硫化物としては、TiS2 あるいはMoS2 などが挙げられ、高分子材料としては、ポリアセチレンあるいはポリピロールなどが挙げられる。また、これらの正極活物質の他にもNbSe2 などを用いることができる。
【0023】
図3は図2に示した正極21における巻回中心側の断面構成を拡大して表すものである。外周面側の正極活物質層21Bの厚みは、例えば、巻回中心側の端部21Eにおいて、巻回外周側から巻回中心側に向かって薄くなっていることが好ましく、例えば、端部21Eに斜面が形成されていることが好ましい。正極21、負極22およびセパレータ23を巻回した際に、端部21Eが剥離することを抑制することができ、また、この端部21Eが対極に強く押しつけられた際のセパレータ23の破壊を抑制することができ、内部短絡不良による開回路電圧の低下を抑制することができるからである。
【0024】
また、図4に示したように、端部21Eは、例えば保護部材21Fにより被覆されていることが好ましい。端部21Eの剥がれ、あるいはセパレータ23の破壊を抑制することができるからである。なお、図4では、正極活物質層21Bの端部21Eに、斜面が形成されているように表されているが、このような斜面が形成されていなくてもよい。保護部材21Fで被覆することにより剥がれ防止あるいはセパレータ23の破壊抑制の効果が得られるからである。また、保護部材21Fは、正極活物質層21Bの斜面を有する部分全体を被覆するように表されているが、剥がれ防止などの効果を得ることができる程度に被覆されていればよい。
【0025】
このような保護部材21Fとしては、正極21の表面で安定に存在することができるものであればよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ化ビニリデンが挙げられる。
【0026】
図5は図1に示した負極22の巻回前の断面構成を表すものである。負極22は、例えば、対向する一対の面を有する負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bが設けられた構造を有している。負極集電体22Aは、例えば、銅箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。この負極集電体22Aの厚みは、例えば5μm〜50μmである。
【0027】
負極活物質層22Bは、負極活物質と、必要に応じてポリビニリデンフルオライドなどの結着剤とを含んで構成されている。負極活物質としては、電極反応物質であるリチウムを吸蔵および放出することが可能な金属元素の単体,合金あるいは化合物、またはリチウムを吸蔵および放出することが可能な半金属元素の単体,合金あるいは化合物が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。高い容量を得ることができるからである。また、本明細書において、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とからなるものも含める。その組織には固溶体,共晶(共融混合物),金属間化合物あるいはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
【0028】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な金属元素あるいは半金属元素としては、例えば、スズ(Sn),鉛(Pb),アルミニウム,インジウム(In),ケイ素(Si),亜鉛(Zn),アンチモン(Sb),ビスマス(Bi),カドミウム(Cd),マグネシウム(Mg),ホウ素(B),ガリウム(Ga),ゲルマニウム(Ge),ヒ素(As),銀(Ag),ジルコニウム(Zr),イットリウム(Y)またはハフニウム(Hf)が挙げられる。
【0029】
また、リチウムを吸蔵および放出することが可能な合金および化合物としては、例えば、化学式Map Mbq Mcr で表されるものが挙げられる。これら化学式において、Maはリチウムと合金を形成可能な金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表し、Mbは非金属元素の少なくとも1種を表し、McはMa以外の金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表す。また、p、qおよびrの値はそれぞれp>0、q≧0、r≧0である。
【0030】
中でも、化学式MIIa MIII b (MIIは、スズおよびケイ素のうちの少なくとも一方を表し、MIII はスズおよびケイ素以外の元素のうちの少なくとも1種をそれぞれ表す。)で表される金属間化合物が好ましい。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
【0031】
化学式MII aMIIIb で表される金属間化合物について具体的に例を挙げれば、AsSn,AuSn,CaSn3 ,CeSn3 ,CoCu2 Sn,Co2 MnSn,CoNiSn,CoSn2 ,Co3 Sn2 ,CrCu2 Sn,Cu2 FeSn,CuMgSn,Cu2 MnSn,Cu4 MnSn,Cu2 NiSn,CuSn,Cu3 Sn,Cu6 Sn5 ,FeSn2 ,IrSn,IrSn2 ,LaSn3 ,MgNi2 Sn,Mg2 Sn,MnNi2 Sn,MnSn2 ,Mn2 Sn,Mo3 Sn,Nb3 Sn,NdSn3 ,NiSn,Ni3 Sn2 ,PdSn,Pd3 Sn,Pd3 Sn2 ,PrSn3 ,PtSn,PtSn2 ,Pt3 Sn,PuSn3 ,RhSn,Rh3 Sn2 ,RuSn2 ,SbSn,SnTi2 ,Sn3 U,SnV3 ,BeSiZr,CoSi2 ,β−Cr3 Si,Cu3 Mg2 Si,Fe3 Si,Mg2 Si,MoSi2 ,Nb3 Si,NiSi2 ,θ−Ni2 Si,β−Ni3 Si,ReSi2 ,α−RuSi,SiTa2 ,Si2 Th,Si2 U,β−Si2 U,Si3 U,SiV3 ,Si2 WあるいはSiZr2 などがある。
【0032】
また、国際公開WO96/13873パンフレットで開示されているスズおよびケイ素のうちの少なくとも一方を含む複合酸化物も好ましい。この複合酸化物としては、例えば、化学式SnMIVc d (MIVはケイ素,ゲルマニウム,鉛,ビスマス,アンチモン,リン,ホウ素,アルミニウムおよびヒ素からなる群のうちの少なくとも1種を表し、cは0〜4の数、dは1〜10の数をそれぞれ表す。)、SnMV e f (MV はゲルマニウム,鉛,ビスマス,アンチモン,リン,ホウ素,アルミニウムおよびヒ素からなる群のうちの少なくとも1種を表し、e は0〜4の数、f は1〜10の数をそれぞれ表す。)、SnSiMVI gMVIIh i (MVI,MVIIはゲルマニウム,鉛,ビスマス,アンチモン,リン,ホウ素,アルミニウムおよびヒ素からなる群のうちの少なくとも1種を表し、g,hおよびiは、0.1≦g+h≦4、0.05≦g≦2、1.1≦i≦10をそれぞれ満たす数である。)がある。
【0033】
このような複合酸化物としては、具体的には、SnSi0.011.02,SnGe0.011.02,SnPb0.051.1 ,SnSi0.1 Ge0.1 Pb0.1 2.6 ,SnSi0.2 Ge0.1 2.6 ,SnSi0.7 2.4 ,SnGe0.7 2.4 ,SnSi0.8 2.6 ,SnSiO3 ,SnPbO3 ,SnSi0.9 Ge0.1 3 ,SnSi0.8 Ge0.2 3 ,SnSi0.8 Pb0.2 3 ,SnSi0.8 Ge0.1 Pb0.1 3 ,SnSi1.2 3.4 ,SnSi2 6 ,SnB0.011.015 ,SnAl0.011.015 ,SnP0.012.015 ,SnP0.051.125 ,SnB0.051.075 ,SnP0.1 1.25,SnB0.1 1.15,SnP0.3 1.75,SnB0.7 2.05,SnP0.8 3 ,SnPO3.5 ,SnBO2.5 ,SnSi0.250.2 0.2 3 ,SnSi0.5 0.2 0.2 3 ,SnSi0.8 0.2 3.1 ,SnSi0.8 0.2 2.9 ,SnSi0.8 Al0.2 2.9 ,SnSi0.6 Al0.2 0.2 2.8 ,SnSi0.6 Al0.2 0.2 3 ,SnSi0.6 0.2 0.2 3 ,SnSi0.4 Al0.2 0.4 2.7 ,SnSi0.6 Al0.1 0.1 0.3 3.25,SnSi0.6 Al0.1 0.3 0.1 3.05,SnSi0.5 Al0.3 0.4 0.2 3.55,SnSi0.5 Al0.3 0.4 0.5 4.30あるいはSnSi0.8 Al0.3 0.2 0.2 3.85が挙げられる。
【0034】
なお、このような負極活物質は、例えば、メカニカルアロイング法、または原料を混合して不活性雰囲気下あるいは還元性雰囲気下で加熱処理する方法により作製される。
【0035】
負極活物質層22Bは、また、上述した金属元素あるいは半金属元素の単体,合金または化合物に加えて、他の負極活物質を含んでいてもよい。他の負極活物質としては、リチウムを吸蔵および放出することが可能な炭素質材料,金属酸化物あるいは高分子材料などが挙げられる。なお、炭素質材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素,人造黒鉛,天然黒鉛,熱分解炭素類、コークス類,グラファイト類,ガラス状炭素類,有機高分子化合物焼成体,炭素繊維,活性炭あるいはカーボンブラック類が挙げられる。このうち、コークス類には、ピッチコークス,ニードルコークスあるいは石油コークスなどがあり、有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいう。また、金属酸化物としては酸化スズ(SnO2 )などが挙げられ、高分子材料としてはポリアセチレンあるいはポリピロールなどが挙げられる。
【0036】
なお、リチウムは、電池製造後に電池内で電気化学的に負極活物質に吸蔵されてもよく、電池製造後あるいは電池製造前に、正極21あるいは正極21以外のリチウム源から供給され電気化学的に負極活物質に吸蔵されても構わない。また、負極活物質の合成の際に含有するようにしてもよい。
【0037】
図6は、図1に示した巻回体20のI−I線に沿った断面構成の一例を表すものである。なお、図6ではセパレータ23は省略して表している。巻回体20は、正極活物質層21Bに必ず負極活物質層22Bが対向するように、正極活物質層21Bと負極活物質層22Bとの位置関係が調整されている。また、巻回体20は、負極活物質層22Bが負極22の外周面側のみにおいて正極活物質層21Bと対向する外周面対向領域22Cと、負極22の両面において正極活物質層21Bと対向する両面対向領域22Dと、負極22の内周面側のみにおいて正極活物質層21Bと対向する内周面対向領域22Eとを有している。このうち、外周面対向領域22Cは、巻回中心側に位置し、内周面対向領域22Eは巻回外周側に位置し、両面対向領域22Dはそれらの間に位置している。なお、図7に、外周面対向領域22Cを太線網かけで示し、両面対向領域22Dを右下斜線で示し、内周面対向領域22Eを細線網かけで示した。
【0038】
外周面対向領域22Cは、2周以上3.25周以下の範囲内で設けられていることが好ましい。この長さは正極21の内周面側に設けられた片面領域21Cの長さを変化せることにより、調節される。外周面対向領域22Cの長さが短いと、曲率に対するエネルギー密度が高く、負極22の膨張に伴い巻回中心側において局所的な歪みが生じるので、正極21と負極22との間隔が均一に保たれなくなり、適切な充放電が行われなくなるからである。また、外周面対向領域22Cの長さが長いと、エネルギー密度が低下してしまうからである。
【0039】
図1に示したセパレータ23は、例えばポリプロピレンあるいはポリエチレンなどのポリオレフィン系の材料よりなる多孔質膜、またはセラミック製の不織布などの無機材料よりなる多孔質膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。
【0040】
セパレータ23には、液状の電解質である電解液が含浸されている。この電解液は、例えば、溶媒と、電解質塩であるリチウム塩とを含んで構成されている。溶媒は、電解質塩を溶解し解離させるものである。溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、1, 2−ジメトキシエタン、1, 2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1, 3−ジオキソラン、4メチル1, 3ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、アニソール、酢酸エステル、酪酸エステルあるいはプロピオン酸エステルなどが挙げられ、これらのいずれか1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0041】
リチウム塩としては、例えば、LiClO4 ,LiAsF6 ,LiPF6 ,LiBF4 ,LiB(C6 5 4 ,CH3 SO3 Li,CF3 SO3 Li,LiClあるいはLiBrが挙げられ、これらのいずれか1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0042】
この二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0043】
まず、例えば、正極活物質と、導電剤と、結着剤とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーとする。続いて、この正極合剤スラリーを正極集電体21Aにドクタブレードあるいはバーコーターなどを用いて均一に塗布し溶剤を乾燥させたのち、ローループレス機などにより圧縮成型して正極活物質層21Bを形成し、正極21を作製する。
【0044】
その際、図3および図4に示したように正極活物質層21Bにおける巻回中心側の端部21Eに斜面を形成する手段としては、例えば、正極合剤スラリーを塗布したのちに、削りとるようにして形成してもよいし、特開2001−35483に開示されているように、電極塗液(正極合剤スラリー)の塗布厚を規定する塗布部と、この塗布厚を制御する塗布厚制御部とを有する装置を用いて形成してもよい。
【0045】
次いで、例えば、負極活物質と、結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させてペースト状の負極合剤スラリーとする。続いて、この負極合剤スラリーを負極集電体22Aにドクタブレードあるいはバーコーターなどを用いて均一に塗布し溶剤を乾燥させたのち、ロールプレス機により圧縮成型して負極合剤層22Bを形成し、負極22を作製する。ロールプレス機は加熱して用いてもよい。また、目的の物性値になるまで複数回圧縮成型してもよい。更に、ロールプレス機以外のプレス機を用いてもよい。
【0046】
続いて、正極集電体21Aに正極リード25を溶接などにより取り付けると共に、負極集電体22Aに負極リード26を溶接などにより取り付ける。そののち、正極21と負極22とをセパレータ23を介して積層し図2ないし図5に示した巻回方向に多数回巻回して巻回体20を作製する。
【0047】
巻回体20を作製したのち、巻回体20を一対の絶縁板12,13で挟み、負極リード26を電池缶11に溶接すると共に、正極リード25を安全弁機構15に溶接して、巻回体20を電池缶11の内部に収容し、電解液を電池缶11の内部に注入し、セパレータ23に含浸させる。そののち、電池缶11の開口端部に電池蓋14,安全弁機構15および熱感抵抗素子16をガスケット17を介してかしめることにより固定する。これにより、図1に示した二次電池が完成する。
【0048】
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極21からリチウムイオンが放出し、セパレータ23に含浸された電解液を介して負極22に吸蔵される。放電を行うと、例えば、負極22からリチウムイオンが放出し、セパレータ23に含浸された電解液を介して正極21に吸蔵される。ここでは、外周面対向領域22Cが2周以上3.25周以下の範囲内で形成されているので、巻回中心側におけるエネルギー密度が適度に低下し、リチウムの吸蔵に伴う膨張による応力が緩和され、局所的な歪みが緩和される。これによりサイクル特性が改善される。
【0049】
このように本実施の形態によれば、負極活物質層22Bが、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極活物質として、金属元素の単体,合金および化合物と、半金属元素の単体,合金および化合物とからなる群のうちの少なくとも1種を含むようにしたので、高い容量を得ることができる。また、両面対向領域22Dを有すると共に、巻回中心側に、外周面対向領域22Cを2周以上3.25周以下の範囲内で有するようにしたので、巻回中心側におけるエネルギー密度が適度に低下し、リチウムの吸蔵に伴う膨張による応力を緩和させ、局所的な歪みを緩和することができる。よって、高い容量を保持しつつ、サイクル特性を向上させることができる。
【0050】
また、正極21の外周面側および内周面側の両面に正極活物質層21Bが設けられた両面領域21Dを形成すると共に、巻回中心側に、内周面側のみに正極活物質層21Bが設けられた片面領域21Cを設けるようにすれば、高い効果を得ることができる。
【0051】
更に、外周面側に設けられた正極活物質層21Bの厚みを、巻回中心側の端部21Eにおいて、巻回外周側から巻回中心側に向かって薄くなるようにすれば、また、正極活物質層21Bの巻回中心側における外周面側の端部21Eを、保護部材21Fにより被覆するようにすれば、巻回した際に正極活物質層21Bの剥がれや正極21の折れを抑制することができ、開回路電圧の低下を抑制することができる。
【0052】
(変形例)
図8は、第1の実施の形態の変形例に係る正極21の巻回前の断面構成を表すものであり、図9は、この正極21を用いて作製した巻回体20の断面構成を表すものである。なお、図9ではセパレータ23は省略して表している。このように正極21の巻回外周側に、正極集電体21Aの内周面側のみに正極活物質層21Bを有する片面領域21Gを更に設け、巻回外周側に内周面対向領域22Eを設けなくてもよい。なお、図10に、外周面対向領域22Cを太線網かけで示し、両面対向領域22Dを右下斜線で示した。
【0053】
図11は、第1の実施の形態の変形例に係る負極22の巻回前の断面構成を表すものであり、図12は、この負極22を用いて作製した巻回体20の断面構成を表すものである。なお、図12ではセパレータ23は省略して表している。このように負極22の巻回中心側に、負極集電体21Bの外周面側のみに負極活物質層22Bを有する片面領域22Fを更に設け、巻回中心側に外周面対向領域22Cを設けてもよい。なお、図13に、外周面対向領域22Cを太線網かけで示し、両面対向領域22Dを右下斜線で示し、内周面対向領域22Eを細線網かけで示した。
【0054】
(第2の実施の形態)
図14は、本発明の第2の実施の形態に係る正極21の巻回前の断面構成を表すものであり、図15は、この正極21を用いて作製した巻回体20の断面構成を表すものである。片面領域21Cにおける正極活物質層21Bを外周面側のみに設けたことを除き、他は第1の実施の形態と同様の構成、作用および効果を有しており、同様にして製造することができる。よって、本実施の形態においては、図1および図5を参照して第1の実施の形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の部分についての説明は省略する。なお、図15では、セパレータ23は省略して表している。
【0055】
図15に示すように、巻回体20は、巻回中心側に負極活物質層22Bが負極22の内周面側のみにおいて正極活物質層21Bと対向する内周面対向領域22Gを有しており、更に第1の実施の形態と同様に両面対向領域22Dと、内周面対向領域22Eとを有している。なお、図16に、内周面対向領域22Gを太線網かけで示し、両面対向領域22Dを右下斜線で示し、内周面対向領域22Eを細線網かけで示した。
【0056】
巻回中心側における内周面対向領域22Gは、1周以上2.25周以下の範囲内で設けられていることが好ましい。内周面対向領域22Gの長さが短いと、曲率に対するエネルギー密度が高く、負極22の膨張に伴い巻回中心側において局所的な歪みが生じるので、正極21と負極22との間隔が均一に保たれなくなり、適切な充放電が行われなくなるからである。また、内周面対向領域22Gの長さが長いと、エネルギー密度が低下してしまうと共に、サイクル特性が低下してしまうからである。
【0057】
なお、第1の実施の形態の変形例に係る二次電池のように、正極21の巻回外周側に、正極集電体21Aの内周面側のみに正極活物質層21Bを有する片面領域21Gを更に設け(図8参照)、巻回外周側に内周面対向領域22Eを設けなくてもよい(図9,10参照)。また、負極22の巻回中心側に、負極集電体21Bの内周面側のみに負極活物質層22Bを有する片面領域22Fを更に設け(図11参照)、巻回中心側に内周面対向領域22Gを設けてもよい。
【0058】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態に係る二次電池は、負極活物質層22Bが気相法,液相法あるいは焼結法により形成されたことを除き、他は第1または第2の実施の形態の二次電池と同一の構成,作用および効果を有している。したがって、図1ないし図16を参照し、対応する構成要素には同一の符号を付して同一の部分の説明は省略する。
【0059】
この二次電池では、負極活物質層22Bを気相法,液相法あるいは焼結法で形成することにより、充放電に伴う負極活物質層22Bの膨張・収縮による破壊を抑制することができると共に、負極集電体22Aと負極活物質層22Bとを一体化することができ、負極活物質層22Bにおける電子伝導性を向上させることができるようになっている。また、結着剤および空隙などを低減または排除でき、負極22を薄膜化することもできるようになっている。
【0060】
なお、気相法としては、例えば、物理堆積法あるいは化学堆積法を用いることができ、具体的には、真空蒸着法,スパッタ法,イオンプレーティング法,レーザーアブレーション法,熱CVD(Chemical Vapor Deposition ;化学気相成長)法あるいはプラズマCVD法等が利用可能である。液相法としては電解鍍金あるいは無電解鍍金等の公知の手法が利用可能である。焼結法に関しても公知の手法が利用可能であり、例えば、雰囲気焼結法,反応焼結法あるいはホットプレス焼結法が利用可能である。
【0061】
また、負極活物質層22Bは、負極集電体22Aとの界面の少なくとも一部において負極集電体22Aと合金化していることが好ましい。具体的には、界面において負極集電体22Aの構成元素が負極活物質層22Bに、または負極活物質の構成元素が負極集電体22Aに、またはそれらが互いに拡散していることが好ましい。負極活物質層22Bと負極集電体22Bとを強固に接着することができ、充放電に伴い負極活物質層22Bが膨張・収縮しても、負極活物質層22Bが負極集電体22Aから脱落することを抑制することができるからである。この合金化は、負極活物質層22Bを気相法,液相法あるいは焼結法により形成する際に同時に起こることが多いが、更に熱処理が施されることにより、あるいは初期充電時に起こったものでもよい
【0062】
なお、負極集電体22Aは、例えばリチウムと金属間化合物を形成しない金属元素の少なくとも1種を含む金属材料により構成されることが好ましい。リチウムと金属間化合物を形成すると、充放電に伴い膨張および収縮し、構造破壊が起こって、集電性が低下する他、負極活物質層22Bを支える能力が小さくなり負極活物質層22Bが負極集電体22Aから脱落するする場合があるからである。リチウムと金属間化合物を形成しない金属元素としては、例えば、銅,ニッケル,チタン(Ti),鉄あるいはクロム(Cr)が挙げられる。
【0063】
また、負極集電体22Aは、負極活物質層22Bと合金化する金属元素を含むことが好ましい。リチウムと金属間化合物を形成せず、負極活物質層22Bと合金化する金属元素としては、例えば負極活物質としてケイ素あるいはスズの単体,合金または化合物を用いる場合には、銅,ニッケル,あるいは鉄などが挙げられる。
【実施例】
【0064】
更に、本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
【0065】
(実施例1−1〜1−4)
第1の実施の形態で説明した二次電池を作製した。その際、巻回体20の構造は、図6に示したものとした。
【0066】
まず、炭酸リチウム(Li2 CO3 )と炭酸コバルト(CoCO3 )とを、Li2 CO3 :CoCO3 =0.5:1(モル比)の割合で混合し、空気中において900℃で5時間焼成して、正極活物質としてのリチウム・コバルト複合酸化物(LiCoO2 )を得た。次いで、このリチウム・コバルト複合酸化物91質量部と、導電剤であるグラファイト6質量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン3質量部とを混合して正極合剤を調整した。続いて、この正極合剤を溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極合剤スラリーとし、厚み20μmのアルミニウム箔よりなる正極集電体21Aの両面に均一に塗布して塗布層を形成した。
【0067】
そののち、片面領域21Cにおける外周面側に位置する塗布層をN−メチル−2−ピロリドンを染み込ませた不織布で拭き取り、100℃の真空オーブンで12時間乾燥し、ロールプレス機で圧縮成型して正極活物質層21Bを形成し正極21を作製した。その際、片面領域21Cを実施例1−1,1−4では1周分、実施例1−2では1.5周分、実施例1−3では2.25周分形成した。また、実施例1−1〜1−3では、端部21Eの厚みを巻回中心側から2mmの範囲で、巻回外周側から巻回中心側に向かって連続的に薄くなるように、すなわち斜面を有するように塗布層を拭き取った。一方、実施例1−4では、端部21Eが集電体21Aの巻回方向にほぼ垂直になるようにカッターナイフで塗布層を削り、この部分に保護部材21Fとして長さ5mmのポリエチレン製粘着テープを貼った。続いて、正極集電体21Aの一端にアルミニウム製の正極リード25を取り付けた。
【0068】
また、銅50質量部とスズ50質量部とを石英管に入れてアルゴン(Ar)雰囲気中で高周波溶融炉にて溶融した。そののち、これを直径200mm、幅20mm、回転速度3000rpmの銅よりなる回転ディスクにキャスティングして急冷し、リボン状の銅スズ(CuSn)合金片を得た。得られたリボン状の銅スズ合金片をボールミルを用いてアルゴン雰囲気で粉砕し、粒子状の粉末とした。得られた粉末を63μmのふるいで分級し、負極活物質とした。分級により得られた粉末の平均粒径は25μmであった。
【0069】
次いで、負極活物質として、更にカーボンブラックおよび人造黒鉛の粒子状の粉末を用意し、得られた銅スズ合金60gとカーボンブラック2gと人造黒鉛28gと、結着剤であるポロビニリデンフルオライド10gとを混合し、負極合剤を調整した。続いて、この負極合剤を溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて負極合剤スラリーとし、厚み15μmの銅箔よりなる負極集電体22Aの両面に塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型して負極活物質層22Bを形成した。そののち、負極集電体22Aの一端にニッケル製の負極リード26を取り付けた。
【0070】
続いて、厚み25μmの微孔性ポリプロピレンフィルムよりなるセパレータ23を用意し、正極21,セパレータ23,負極22,セパレータ23の順に積層して積層体を形成したのち、この積層体を渦巻状に多数回巻回し、巻回体20を作製した。巻回体20の胴部の最大径は17. 3mmとした。なお、外周面対向領域22Cは、実施例1−1,1−4では2周、実施例1−2では2.5周、実施例1−3では3.25周である。
【0071】
巻回体20を作製したのち、巻回体20を一対の絶縁板12,13で挟み、負極リード26を電池缶11に溶接すると共に、正極リード25を安全弁機構15に溶接して、巻回体20を内径17.5mmの電池缶11の内部に収容した。そののち、電池缶11の内部に電解液を注入した。電解液には、炭酸エチレン50体積%と炭酸ジエチル50体積%とを混合した溶媒に、電解質塩としてLiPF6 を1mol/dm3 の含有量で溶解させたものを用いた。
【0072】
電池缶11の内部に電解液を注入したのち、ガスケット17を介して電池蓋14を電池缶11にかしめることにより、外径18mm、高さ65mmの円筒型の二次電池を得た。
【0073】
実施例1−1〜1−4に対する比較例1−1として、保護部材を用いず、また正極の片面領域21Cを0.5周分としたことを除き、他は実施例1−4と同様にして二次電池を作製した。また、比較例1−2として、片面領域21Cを2.75周分としたことを除き、他は実施例1−1〜1−3と同様にして二次電池を作製した。なお、外周面対向領域22Cは、比較例1−1では1.5周、比較例1−2では3.75周である。
【0074】
このようにして得られた実施例1−1〜1−4および比較例1−1,1−2の二次電池をそれぞれ50個作製し、不良品を選別したのち、良品について放電容量およびサイクル特性を調べた。得られた結果を表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
なお、不良品は、1Aの定電流で電池電圧が4. 2Vに達するまで定電流充電を行った後、4. 2Vの定電圧で電流値が0. 005Aに達するまで定電圧充電を行い、この充電状態で2週間放置したのち、開回路電圧が4. 15V未満のものとした。
【0077】
また、放電容量は2サイクル目の放電容量について、比較例1−1の値を1.00とした際の容量比で算出した。サイクル特性としては、2サイクル目の放電容量に対する300サイクル目の放電容量維持率(300サイクル目の放電容量/2サイクル目の放電容量)×100(%)を求めた。その際、充放電は、20℃の環境下において、1Aの定電流で電池電圧が4. 2Vに達するまで定電流充電を行った後、4. 2Vの定電圧で電流値が0. 005Aに達するまで定電圧充電を行い、次いで1Aの定電流で電池電圧が2. 5Vになるまで定電流放電を行った。
【0078】
表1からわかるように、外周面対向領域22Cが2周以上3.25周以下の範囲内にある実施例1−1〜1−4によれば、2周未満である比較例1−1よりも容量維持率が向上した。
【0079】
そこで、サイクル特性を評価したのちの比較例1−1の電池を解体したところ、巻回体の中心部に負極が強く歪んだ領域があることが分かった。この歪んだ領域では、正極および負極の距離が著しく開き、リチウムの析出痕が確認された。これは電解液がセパレータに含浸されなくなることにより発生したものと考えられる。また、負極集電体が局所的に折れ曲がり、一部には切断箇所が確認された。巻回体全体として損傷を受けている領域は少ないものの、これらの要因により電池の内部抵抗が上昇し、サイクル特性が低下したものと考えられる。
【0080】
また、実施例1−1〜1−4によれば、外周面対向領域22Cを3.25周超とした比較例1−2よりも放電容量が高かった。
【0081】
更に、端部21Eの形状が斜面を有するようにした実施例1−1〜3によれば、あるいは、端部21Eを保護部材21Fで被覆するようにした実施例1−4によれば、このような形状とせず、また、保護部材を用いていない比較例1−1のように不良品が発生しなかった。
【0082】
すなわち、外周面対向領域22Cを2周以上3.25周以下の範囲内にあるようにすれば、高い容量を保ちつつ、サイクル特性を向上させることができることが分かった。
【0083】
特に、端部21Eの厚みを巻回外周側から巻回中心側に向かって薄くするようにすれば、また、端部21Eを保護部材21Fにより被覆するようにすれば、正極活物質層21Bの剥がれや正極21の折れを抑制することができ、開回路電圧の低下を抑制することができることも分かった。
【0084】
(実施例2−1〜2−3)
第2の実施の形態で説明した二次電池を作製した。その際、巻回体20の構造は、図15に示したものとした。
【0085】
片面領域21Cにおける内周面側に位置する塗布層をN−メチル−2−ピロリドンを染み込ませた不織布で拭き取って作製した正極21を用いたことを除き、他は実施例1−1〜1−3と同様にして二次電池を作製した。その際、片面領域21Cを実施例2−1では1周分、実施例2−2では2周分、実施例2−3では2.25周分形成した。なお、巻回中心側における内周面対向領域22Gは、実施例2−1では1周、実施例2−2では2周、実施例2−3では2.25周である。
【0086】
実施例2−1〜2−3に対する比較例2−1として、片面領域21Cを形成しなかったことを除き、また、比較例2−2,2−3として、片面領域21Cをそれぞれ0.5周分,2.5周分としたことを除き、他は実施例2−1〜2−3と同様にして二次電池を作製した。なお、内周面対向領域22Gは、比較例1−1では形成されず、比較例2−2では0.5周、比較例2−3では2.5周である。
【0087】
得られた実施例2−1〜2−3および比較例2−1〜2−3の二次電池について、実施例1−1〜1−4と同様にして不良品の選別をしたのち、放電容量およびサイクル特性を調べた。得られた結果を表2に示す。なお、放電容量は比較例1−1の値を1.00とした際の容量比で算出した。
【0088】
【表2】

【0089】
表2からわかるように、実施例2−1〜2−3および比較例2−1〜2−3によれば、放電容量および容量維持率は、内周面対向領域22Gが増大するに伴い増加し極大値を示したのち低下した。この傾向は実施例1−1〜1−3とは相違した。また、実施例2−1〜2−3の容量維持率は、実施例1−1〜1−3よりも低い値を示した。これらの結果は、外周面対向領域22Cまたは内周面対向領域22Gを設けた相違に起因するものと考えられる。
【0090】
また、端部21Eの形状が斜面を有するようにした実施例2−1〜2−3によれば、不良品は発生しなかった。
【0091】
すなわち、内周面対向領域22Gを1周以上2.25周以下の範囲内にあるようにすれば、高い容量を保ちつつ、サイクル特性を向上させることができるが、外周面対向領域22Cを2周以上3.25周以下の範囲内で設けた方が好ましいことが分かった。
【0092】
また、端部21Eの厚みを巻回外周側から巻回中心側に向かって薄くするようにすれば、正極活物質層21Bの剥がれや正極21の折れを抑制することができ、開回路電圧の低下を抑制することができることも分かった。
【0093】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、溶媒に液状の電解質である電解液を用いる場合について説明したが、電解液に代えて、他の電解質を用いるようにしてもよい。他の電解質としては、例えば、電解液を高分子化合物に保持させたゲル状の電解質、イオン伝導性を有する固体電解質、固体電解質と電解液とを混合したもの、あるいは固体電解質とゲル状の電解質とを混合したものが挙げられる。
【0094】
なお、ゲル状の電解質には電解液を吸収してゲル化するものであれば種々の高分子化合物を用いることができる。そのような高分子化合物としては、例えば、ポリビニリデンフルオロライドあるいはビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体などのフッ素系高分子化合物、ポリエチレンオキサイドあるいはポリエチレンオキサイドを含む架橋体などのエーテル系高分子化合物、またはポリアクリロニトリルなどが挙げられる。特に、酸化還元安定性の点からは、フッ素系高分子化合物が望ましい。
【0095】
固体電解質には、例えば、イオン伝導性を有する高分子化合物に電解質塩を分散させた有機固体電解質、またはイオン伝導性ガラスあるいはイオン性結晶などよりなる無機固体電解質を用いることができる。このとき、高分子化合物としては、例えば、ポリエチレンオキサイドあるいはポリエチレンオキサイドを含む架橋体などのエーテル系高分子化合物、ポリメタクリレートなどのエステル系高分子化合物、アクリレート系高分子化合物を単独あるいは混合して、または分子中に共重合させて用いることができる。また、無機固体電解質としては、窒化リチウムあるいはヨウ化リチウムなどを用いることができる。
【0096】
また、上記実施の形態および実施例では、巻回構造を有する円筒型の二次電池について説明したが、本発明は、巻回構造を有する二次電池であればいずれも適用することができる。
【0097】
更に、上記実施の形態および実施例では、電極反応物質としてリチウムを用いる場合について説明したが、ナトリウム(Na)あるいはカリウム(K)などの長周期型周期表における他の1族の元素、またはマグネシウムあるいはカルシウム(Ca)などの長周期型周期表における2族の元素、またはアルミニウムなどの他の軽金属、またはリチウムあるいはこれらの合金を用いる場合についても、本発明を適用することができ、同様の効果を得ることができる。その際、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能な負極活物質、正極活物質あるいは溶媒などは、その電極反応物質に応じて選択される。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の一実施の形態に係る二次電池の構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した正極の巻回前の構成を表す断面図である。
【図3】図2に示した正極の一部を拡大した断面図である。
【図4】図2に示した正極の一部を拡大した他の断面図である。
【図5】図1に示した負極の巻回前の構成を表す断面図である。
【図6】図1に示した巻回体のI−I線に沿った構成を表す断面図である。
【図7】図6に示した断面図をハッチングにより分別した説明図である。
【図8】本発明の変形例に係る正極の巻回前の構成を表す断面図である。
【図9】図8に示した正極を用いて作製した巻回体の構成を表す断面図である。
【図10】図9に示した断面図をハッチングにより分別した説明図である。
【図11】本発明の他の変形例に係る負極の巻回前の構成を表す断面図である。
【図12】図11に示した負極を用いて作製した巻回体の構成を表す断面図である。
【図13】図12に示した断面図をハッチングにより分別した説明図である。
【図14】本発明の他の実施の形態に係る正極の巻回前の構成を表す断面図である。
【図15】図14に示した正極を用いて作製した巻回体の構成を表す断面図である。
【図16】図15に示した断面図をハッチングにより分別した説明図である。
【符号の説明】
【0099】
11…電池缶、12,13…絶縁板、14…電池蓋、15…安全弁機構、16…熱感抵抗素子、17…ガスケット、20…巻回体、21…正極、21A…正極集電体、21B…正極活物質層、21C…片面領域、21D…両面領域、21E…端部、21F…保護部材、21G…片面領域、22…負極、22A…負極集電体、22B…負極活物質層、22C…外周面対向領域、22D…両面対向領域、22E,22G…内周面対向領域、22F…片面領域、23…セパレータ、24…センターピン、25…正極リード、26…負極リード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の対向面を有する正極集電体に正極活物質層が設けられた正極と、一対の対向面を有する負極集電体に負極活物質層が設けられた負極とを、積層して巻回した巻回体を備え、
前記負極活物質層は、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能な負極活物質として、金属元素の単体,合金および化合物と、半金属元素の単体,合金および化合物とからなる群のうちの少なくとも1種を含み、
前記負極は、外周面側および内周面側の両面において前記負極活物質層と前記正極活物質層とが対向する両面対向領域を有すると共に、巻回中心側に、外周面側のみにおいて前記負極活物質層と前記正極活物質層とが対向する外周面対向領域を2周以上3.25周以下の範囲内で有する
ことを特徴とする二次電池。
【請求項2】
前記正極は、外周面側および内周面側の両面に前記正極活物質層が設けられた両面領域を有すると共に、巻回中心側に、内周面側のみに前記正極活物質層が設けられた片面領域を有することを特徴とする請求項1記載の二次電池。
【請求項3】
前記正極は、外周面側に設けられた前記正極活物質層の厚みが、巻回中心側の端部において、巻回外周側から巻回中心側に向かって薄くなっていることを特徴とする請求項2記載の二次電池。
【請求項4】
前記正極活物質層の巻回中心側における外周面側の端部は、保護部材により被覆されていることを特徴とする請求項2記載の二次電池。
【請求項5】
一対の対向面を有する正極集電体に正極活物質層が設けられた正極と、一対の対向面を有する負極集電体に負極活物質層が設けられた負極とを、積層して巻回した巻回体を備え、
前記負極活物質層は、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能な負極活物質として、金属元素の単体,合金および化合物と、半金属元素の単体,合金および化合物とからなる群のうちの少なくとも1種を含み、
前記負極は、外周面側および内周面側の両面において前記負極活物質層と前記正極活物質層とが対向する両面対向領域を有すると共に、巻回中心側に、内周面側のみにおいて前記負極活物質層と前記正極活物質層とが対向する内周面対向領域を1周以上2.25周以下の範囲内で有する
ことを特徴とする二次電池。
【請求項6】
前記正極は、外周面側および内周面側の両面に前記正極活物質層が設けられた両面領域を有すると共に、巻回中心側に、外周面側のみに前記正極活物質層が設けられた片面領域を有することを特徴とする請求項5記載の二次電池。
【請求項7】
前記正極は、外周面側に設けられた前記正極活物質層の厚みが、巻回中心側の端部において、巻回外周側から巻回中心側に向かって薄くなっていることを特徴とする請求項6記載の二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−24464(P2006−24464A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−201981(P2004−201981)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】