説明

二次電池

【課題】電解液が電極体に浸透しやすい二次電池を提供する。
【解決手段】二次電池は、正極集電体41の両面に正極活物質を含む正極層が設けられた正極部材と、負極集電体31の両面に負極活物質を含む負極層が設けられた負極部材とが、セパレータ51を介して積層されてなる電極部と、電解質液とを備えた二次電池であって、正極層には溝部45が設けられており、かつ、負極集電体には、貫通孔35が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電気自動車には、二次電池としてリチウムイオン電池が用いられている。リチウムイオン電池は、電極板と非水電解液とが共に外装ケース内に収納されてなるものである。電極板は、正極集電箔の両面に正極活物質層が塗布され形成された正極部材と、負極集電箔の両面に負極活物質層が塗布され形成された負極部材とを有し、これらがセパレータを介して積層されて巻回されている。
【0003】
このような二次電池では、電解液を外装ケース内に注入して電極体に電解液を浸していく(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−48964号公報(段落0002等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この場合に、電極板に電解液が十分に浸されていないと所望の充放電効率を得ることができないので、一般に電極液を外装ケースから注入していく場合には、電解液が電極体に浸透するまでに時間がかかることから製造時間がかかるという問題がある。このため、例えば圧力をかけて電極により電解液を浸透させやすくすることも考えられるが、十分に製造時間を短縮することはできない。
【0006】
そこで、本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決することにあり、電解液が電極体に浸透しやすい二次電池を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の二次電池は、正極集電体の両面に正極活物質を含む正極層が設けられた正極部材と、負極集電体の両面に負極活物質を含む負極層が設けられた負極部材とが、セパレータを介して積層されてなる電極部と、電解質液とを備えた二次電池であって、前記正極層には溝部が設けられており、かつ、前記負極集電体には、貫通孔が設けられていることを特徴とする。溝部及び貫通孔が設けられていることで、電解液が電極部の内部中央まで浸透しやすく、製造時間を短縮することが可能である。
【0008】
本発明の好ましい実施形態としては、前記電極部は、正極部材と負極部材とセパレータとからなる電極板が巻回してなるものであることが挙げられる。
【0009】
応力を効率的に緩和するためには、前記溝部は、前記電極部の巻回してできた湾曲された部分に形成されていることが好ましい。このように設けることで、リチウムデンドライドの析出を抑制することが可能である。
【0010】
前記溝部は、前記正極層のうち、内周側に位置する部分に形成されていることが好ましい。
【0011】
前記溝部が、前記電極部の軸方向に沿って設けられていることが好ましい。このように設けられていることで、電極部の軸方向に対して電解液が浸透しやすく、これにより電極部の内部中央までより電解液が浸透しやすい。
【0012】
前記溝部が、前記電極部の前記軸方向における端部に露出していることが好ましい。溝部が端部に露出していることで、電解液が電極部に浸透しやすく、より電極部の中央まで電解液を浸透させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の二次電池によれば、電解液の浸透が従来に比較して早く製造時間を短縮できると共に応力集中による端部での割れを防止したという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】二次電池の構造を示す模式的断面図である。
【図2】二次電池の電極部の模式的上面図である。
【図3】二次電池の電極部の端部を示す模式的上面図である。
【図4】図3におけるA-A線での模式的断面図である。
【図5】負極電極箔の模式的斜視図である。
【図6】電解液の浸透を示す模式的断面図である。
【図7】溝部の形状を説明するための電極部の模式的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の二次電池について、図1〜7を用いて説明する。
【0016】
図1に示すように、二次電池1は、電池ケース11を有する。電池ケース11内には、電極部(電極体)12が絶縁板13により電池ケース11とは絶縁されて収容されている。電池ケース11内は、電解液(例えばエチレンカーボネート)14で満たされており、電池ケース11は蓋部15によって封止されている。
【0017】
電極部12は、負極タブ16と正極タブ17とが設けられていて、それぞれ電極部12の後述する負極部材及び正極部材に接続されている。負極タブ16は、蓋部15に設けられた負極端子18に接続され、正極タブ17は蓋部15に設けられた正極端子19に接続される。
【0018】
かかる電極部12について図2を用いて説明する。
【0019】
電極部12は、一つの電極板21が巻回されることで構成されている。具体的には、電極部12は、上面視において、直線状の中央部22と、中央部22の外側にあり、略半円状となるように巻回された端部23とから構成されている。
【0020】
電極部12の端部23の拡大図である図3及びその一部断面図である図4に示すように、電極板21は、セパレータ51を介して負極板30と正極板40とからなるものである。負極板30は、負極集電箔31並びにその内周側の面に形成された第1負極活物質層32及びその外周側の面に形成された第2負極活物質層33からなる。また、正極板40は、正極集電箔41並びにその内周側の面に形成された第1正極活物質層42及びその外周側の面に形成された第2正極活物質層43からなる。負極板30と正極板40との間には、セパレータ51が設けられている。即ち、電極板21はセパレータ51を介して負極板30と正極板40とからなり、負極板30側が内側に配されるように電極板21を巻回することで電極部12が構成されている。
【0021】
負極集電箔31は、本実施形態では銅箔を用いている。負極集電箔31には、図5に示すように複数の貫通孔35が全面に亘って等間隔に設けられている。詳しくは後述するが、負極集電箔31に貫通孔35が設けられていることで、電極部12への電解液の浸透性を向上させている。本実施形態では、貫通孔35の形状は円形状であるが、これに限定されず、例えば略矩形状であってもよい。負極集電箔31における貫通孔35は、例えば銅を電気分解で溶かした後に析出させることで形成されている。
【0022】
各活物質層は、それぞれ電極の活物質とバインダーとを含む。正極活物質としては、通常用いられる活物質、例えばリチウムを吸蔵および放出可能な金属酸化物、例えば層状構造型の金属酸化物、スピネル型の金属酸化物及び金属化合物、酸化酸塩型の金属酸化物などが挙げられる。層状構造型の金属酸化物としては、リチウムニッケル系複合酸化物、リチウムコバルト系複合酸化物、三元系複合酸化物(LiCo1/3Ni1/3Mn1/3)が挙げられる。リチウムニッケル系複合酸化物としては、好ましくはニッケル酸リチウム(LiNiO)が挙げられる。リチウムコバルト系複合酸化物としては、好ましくはコバルト酸リチウム(LiCoO)が挙げられる。スピネル型の金属酸化物としては、マンガン酸リチウム(LiMn)等のリチウムマンガン系複合酸化物が挙げられる。酸化酸塩型の金属酸化物としては、リン酸鉄リチウム(LiFePO)、リン酸マンガンリチウム(LiMnPO)、リン酸シリコンリチウム等が挙げられる。本実施形態では、正極の活物質として、コバルト酸リチウムを用いることができる。
【0023】
負極活物質としては、通常用いられる活物質、例えば金属リチウム、リチウム合金、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、および黒鉛等の炭素材料等を挙げることができる。金属酸化物としては、例えばスズ酸化物やケイ素酸化物などの不可逆性容量をもつものが挙げられる。炭素系材料としての黒鉛としては、人造黒鉛であっても天然黒鉛であっても良く、本実施形態では、負極の活物質としてはグラファイトを用いている。
【0024】
バインダーとしては、通常用いられるバインダー、例えばポリフッ化ビニリデンを用いることができる。なお、活物質層にはアセチレンブラック等の導電性向上剤、電解質(例えば、リチウム塩(支持電解質)、イオン伝導性ポリマー等)が含まれていてもよい。また、イオン伝導性ポリマーが含まれる場合には、前記ポリマーを重合させるための重合開始剤が含まれてもよい。
【0025】
そして、電極板21は、端部23において湾曲していることから、より内側に配された部分ほど、例えば充放電時に体積が増えることによる応力が大きくなることが考えられる。そこで、本実施形態では、第1正極活物質層42に、電極板21の長手方向に直交する方向に亘って形成された複数の溝部45を設けている。各溝部45は、電極部12の上下端部に開口している。このように溝部45を設けることで、端部23における応力を逃がすことが可能である。
【0026】
また、図6に示すように、溝部45が設けられていることで、電極部12の上面及び下面に開口する溝部45からも電解液が浸透するのでより電解液が電極部12の内部中央まで浸透しやすい。さらに、本実施形態では、負極集電箔31としては貫通孔35が設けられたものを用いている。このように貫通孔35が設けられていることで、電極部12内部に浸透した電解液14が電極部12の径方向により移動しやすく、電極部12の内部中央まで浸透しやすい。従って電極部12全体に電解液14を簡易に均等に浸透させることが可能であり、二次電池の製造時間を短縮することが可能である。
【0027】
即ち、本実施形態では、負極集電箔31に貫通孔35が設けられていることで、電極部12の径方向に対して電解液が浸透しやすく、かつ、溝部45が設けられていることで、電解液が電極部12の軸方向に対しても浸透しやすい。これにより、電極部12の内部中央まで容易に電解液を浸透させることができる。
【0028】
この場合に、正極活物質層のうち、より内周側に存在する第1正極活物質層42に溝部45を設けることが好ましい。電極部12の端部23においては、より内周側に位置する活物質層は隣接する活物質層と比較して体積が少ない。例えば、第2負極活物質層33と第1正極活物質層42と比較すると、体積が少ない。このため、電極部12の端部23においては、第2負極活物質層33と第1正極活物質層42とを比較すると、正極活物質よりも負極活物質が少ない。そうすると、リチウムイオンが第1正極活物質層42から第2負極活物質層33に移動した場合に、リチウムイオンの量が多すぎてリチウムデンドライドとして析出してしまい、電池性能を低下させてしまうことが考えられるため、これを防止する必要がある。
【0029】
そこで、本実施形態では、内周側に存在する第1正極活物質層42にのみ溝部45を設けて内周側の第1正極活物質層42の体積を減少させていることで、充電時において第1正極活物質層42から第2負極活物質層33に移動するリチウムイオンの量を減少させることができるので、リチウムデンドライドの形成を防止し、効率的に電池を使用することができる。
【0030】
なお、応力を低減させることのみを考慮すれば、溝部45を例えば最も内側の第1負極活物質層32や第2負極活物質層33に設けることが考えられる。しかし、第1負極活物質層32や第2負極活物質層33に設けるとすれば、上述のように負極活物質が不足してリチウムデンドライドが析出しやすくなってしまい、電池性能を低下させてしまうことが考えられるので好ましくない。
【0031】
また、溝部45を第2正極活物質層43に設ける場合、応力を低減することができると同時に、電解液の浸透性が高くなるので好ましい。しかしながら、この場合には隣接する第1負極活物質層32に対して第2正極活物質層43における正極活物質の量が少なくなり、効率的に充放電を行うことができないおそれがある。従って、応力をある程度緩和しつつ、効率的に充放電を行うことができるように、第1正極活物質層42に設けることが好ましい。
【0032】
そして、このように第1正極活物質層42に溝部45を設けることで、リチウムデンドライドの析出を防止するために負極活物質層の体積を正極活物質層に比較して多くする必要もないために、正極活物質層を薄く設けることができる。その結果、本実施形態の電極板21は、全体として巻数を多くすることができるので、正極活物質層の体積を減少させたとしても電池容量が低下することがなく、向上する。
【0033】
このような溝部45は、本実施形態では電極板21の長手方向に対して直交する方向に延びるように設けられているが、これに限定されない。電極板21の長手方向に対して直交する方向に沿うように設けられていればよい。例えば、図7(1)に示すように電極板21の長手方向に対して傾斜するように設けられていてもよい。この場合であっても、上述のように溝部45から電解液が浸透するように溝部45の開口が電極部12の上面及び下面に露出していることが好ましい。また、図7(2)に示すように溝部45が電極部12の軸方向だけでなく周方向にも延設されて互いに接続しあうように設けられていてもよい。
【0034】
溝部45の形状は、本実施形態では電極部12の上面及び下面に開口し、かつ、負極側のセパレータ51にのみ接する溝部であったが、これに限定されない。電極部12の径方向における溝の深さはもっと深くなるように構成されていてもよい。例えば、溝部45がセパレータ51及び正極集電箔41に接するように設けても良い。この場合には、製造時において未塗工の部分を設けて溝部45としてもよい。
【0035】
なお、この溝部45は上述したように電解液の浸透性を向上させるものであるから、電極部12の中央部22にも形成されていてもよい。しかしながら、中央部22においては内周側負極活物質層と外周側の正極活物質層との間における体積の違いは生じないので、あまり溝部45を形成しすぎて正極活物質層の体積が減ると容積の減少が生じてしまうので、あまり多量に設けることは好ましくない。端部においてより多く設ける方が好ましい。
【0036】
本実施形態では、負極集電箔31の全面に亘って貫通孔35が設けられているが、これに限定されない。例えば、貫通孔35の形成密度が、負極集電箔31の短手方向の中央部が短手方向の端部よりも密となるようにしてもよい。この場合に、貫通孔35を負極集電箔31の短手方向の中央部にのみ形成してもよい。このように、貫通孔35を負極集電箔31の短手方向の中央部が短手方向の端部よりも密となるように形成することで、電解液14の中央部への浸透性を高めることができる。また、負極集電箔31の製造工程において、負極集電箔31を平坦にするために縦横からテンションをかけて負極集電箔31を引っ張るが、この際に集電箔の端部に貫通孔35が多く形成されていると負極集電箔31が破れてしまうおそれがあるので、貫通孔35を負極集電箔31の短手方向の中央部が短手方向の端部よりも密となるように形成することでこれを抑制することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 二次電池
11 電池ケース
12 電極部
13 絶縁板
14 電解液
15 蓋部
16 負極タブ
17 正極タブ
18 負極端子
19 正極端子
21 電極板
22 中央部
23 端部
31 負極集電箔
32 第1負極活物質層
33 第2負極活物質層
35 貫通孔
41 正極集電箔
42 第1正極活物質層
43 第2正極活物質層
45 溝部
51 セパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体の両面に正極活物質を含む正極層が設けられた正極部材と、負極集電体の両面に負極活物質を含む負極層が設けられた負極部材とが、セパレータを介して積層されてなる電極部と、電解質液とを備えた二次電池であって、
前記正極層には溝部が設けられており、かつ、前記負極集電体には、貫通孔が設けられていることを特徴とする二次電池。
【請求項2】
前記電極部は、正極部材と負極部材とセパレータとからなる電極板が巻回してなるものであることを特徴とする請求項1記載の二次電池。
【請求項3】
前記溝部は、前記電極部の巻回してできた湾曲された部分に形成されていることを特徴とする請求項2記載の二次電池。
【請求項4】
前記溝部は、前記正極層のうち、内周側に位置する層のみに形成されていることを特徴とする請求項2又は3記載の二次電池。
【請求項5】
前記溝部が、前記電極部の軸方向に沿って設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項6】
前記溝部が、前記電極部の前記軸方向における端部に露出していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図7】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−73763(P2013−73763A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211592(P2011−211592)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】