説明

二次電池

【課題】CIDが作動した後,その電池を安全かつ容易に処分することのできる二次電池を提供すること。
【解決手段】本発明の二次電池は,内部に発電要素を収容して密閉されている扁平角形の電池ケースと,電池ケースの内部で発電要素に接続されているとともに,一部が電池ケースの外部に突出している外部端子となっている端子部材と,電池ケースの一部に形成されている脆弱箇所である安全弁と,電池ケースの内部で端子部材に設けられ,電池の状態値が予め決めた作動閾値を超えた場合に,端子部材を,発電要素側の部分と外部端子側の部分とに分割して導通を遮断する電流遮断機構とを有し,端子部材には,電流遮断機構によって導通が遮断された場合に発電要素側となる部分から安全弁の直下の位置まで延びる導電性の凸部が形成されているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,電池ケースに発電要素を封入してなる二次電池に関する。さらに詳細には,電池ケース内に電流遮断機構(CID:Current Interrupt Device)を備える二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より,密閉型の二次電池では,何らかの原因によって過充電状態となった場合,電池の内圧が通常状態の範囲より上昇してしまうことがある。そこで,多くの二次電池は,内圧の過上昇を回避するための安全弁を有している。この安全弁は,他の箇所より脆弱に形成されており,内圧が限度を超えて上昇した場合に破断して開弁し,電池内部に溜まったガスを排出する排出口となるものである。
【0003】
さらに,通常状態の内圧よりは高く,安全弁の開弁圧よりは低い内圧で作動するCIDを備えた二次電池もある(例えば,特許文献1参照。)。本文献に記載されているCIDは,金属板を湾曲させた「ダイアフラム35」を有するものである。二次電池が過充電等によって内圧の高い状態となると,この「ダイアフラム35」が押し上げられて変形する。「ダイアフラム35」が変形すると,電極板に接続されている「接続金属34」とこの「ダイアフラム35」とが離れ,その間の導通が遮断される。これにより,この箇所で電流経路が遮断されるので,それ以上その電池が充放電されることはないとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−157451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
CIDが作動した場合,その電池は過充電状態となっていることがある。CIDの作動によって電流経路が遮断されているので,その電池に対してそれ以上の充放電はなされない。しかし,CIDが作動して過充電状態のままとなった電池を,例えばリサイクルするために安全に取り扱う手法は,確立されているとはいえない。特に,CIDは作動したが,安全弁は開弁はしていない状態となった二次電池の取扱は容易ではないという問題点があった。上記の特許文献には,CID作動後の二次電池の取扱についての記載はない。
【0006】
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,CIDが作動した後,その電池を安全かつ容易に処分することのできる二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の二次電池は,内部に発電要素を収容して密閉されている扁平角形の電池ケースと,電池ケースの内部で発電要素に接続されているとともに,一部が電池ケースの外部に突出している外部端子となっている端子部材と,電池ケースの一部に形成されている脆弱箇所である安全弁と,電池ケースの内部で端子部材に設けられ,電池の状態値が予め決めた作動閾値を超えて上昇した場合に,端子部材を,発電要素側の部分と外部端子側の部分とに分割して導通を遮断する電流遮断機構とを有し,端子部材には,電流遮断機構によって導通が遮断された場合に発電要素側となる部分から安全弁の直下の位置まで延びる導電性の凸部が形成されているものである。
【0008】
本発明の二次電池によれば,電流遮断機構が作動すると,端子部材は,発電要素側の部分と外部端子側の部分とに分割される。つまり,この電流遮断機構による遮断動作は,一般的に,不可逆の動作である。そして本発明では,端子部材のうち,発電要素側となる部分には,安全弁の直下の位置まで延びる導電性の凸部が形成されている。つまり,安全弁の位置に電池ケースの外部から導電性の部材を挿入すれば,その部材と二次電池に形成されている導電性の凸部とを導通させることができる。その状態で,その導電性の部材と,電流遮断機構の設けられていない他極の端子とを接続させれば,この電池から放電させることができる。従って,電流遮断機構が作動した後,その電池を安全かつ容易に処分することができる。
【0009】
さらに本発明では,状態値が電池ケース内の圧力値であることが望ましい。
あるいは,状態値としては,電池ケース内の温度,電池に流れる電流値等を使用することもできる。あるいは,これらの複数の状態値のいずれかによって動作する電流遮断機構に適用することもできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の二次電池によれば,CIDが作動した後,その電池を安全かつ容易に処分することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本形態に係る二次電池の概略構成を示す正面図である。
【図2】二次電池の側面図である。
【図3】二次電池の放電を行っている様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下,本発明を具体化した形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,リチウムイオン二次電池等の密閉型で角形の二次電池に本発明を適用したものである。
【0013】
本形態の電池10は,扁平形のリチウムイオン二次電池である。本形態の電池10の概略構成を,図1と図2に示す。本形態の電池10は,ケース本体11と蓋材12とを接合してなる電池ケース13の内部に,帯状の電極板とセパレータとを重ねて平たく捲回した電極体15を収納したものである。電池ケース13は,図中奥行き方向に薄い,扁平な角型の金属製のケースである。ケース本体11は,図中で上側の一面のみが開口した箱状のものであり,その開口箇所は,蓋材12によって密閉されている。
【0014】
電池10は,図1に示すように,正極端子21と負極端子22とを有している。正極端子21と負極端子22とはそれぞれ,電池ケース13の蓋材12から電池10の外部へ突出している。正極端子21は,正極内部端子31を介して,電池ケース13の内部の電極体15の正極板15aに接続されている。負極端子22は,負極内部端子32を介して,電池ケース13の内部の電極体15の負極板15bに接続されている。図2は,電池10を正極端子21側(図1中で左側)から見た側面図である。
【0015】
蓋材12には,図1に示すように,その長手方向の中央部に安全弁35が形成されている。安全弁35は,蓋材12の厚みを部分的に薄くした箇所であり,他の箇所に比較して脆弱な箇所である。電池10の内圧が予め決まった安全弁35の開弁圧を超えて上昇した場合には,安全弁35が破壊されて内部に溜まったガス等が排出される。これにより,電池10の内圧を下げることができる。つまり,安全弁35の開弁圧が適切に設定されているので,電池10の内圧が上がりすぎることはない。
【0016】
本形態の電池10の通常の使用時には,その内圧は,安全弁35の開弁圧より低い予め決まった範囲内で使用状況に応じて変化する。以下では,この通常使用時の圧力範囲を通常圧という。そして,電池10は,図1に示すように,正極内部端子31と正極端子21との間に,CID37を有するものである。CID37は,電池10の内圧が予め決めた作動圧力を超えると作動し,CID37の箇所での電流経路を遮断するものである。CID37の作動圧力は,安全弁35の開弁圧より低く,通常圧の上限値より高い範囲内の値に設定されている。
【0017】
CID37は,一定以上の圧力を受けると変形する部材を内部に含み,その部材の変形によって電流経路が遮断される構造を有している。CID37の内部構造は,様々なものが従来より提案されており,それらの構造から適宜選択するものとしてもよい。例えば,前記した特許文献1に記載されているものとしてもよい。あるいは,本出願人が以前に出願した国際公開番号WO2010/146701A1に記載したものとすることもできる。本形態のCID37は,電池ケース13の内部で蓋材12の内面側に設けられている。そして,電池ケース13の内圧が作動圧力をこえると,CID37が作動し,正極内部端子31と正極端子21との間で電流経路が遮断される。
【0018】
さらに本形態の正極内部端子31には,図1に示すように,放電用凸部39が形成されている。この放電用凸部39は,正極内部端子31と電気的に導通されており,蓋材12や電池ケース13とは導通されないように配置されている。放電用凸部39は,例えば,正極内部端子31としてその一部を突出した形状に製造したものを用いることによって得られる。あるいは,正極内部端子31とは別に放電用凸部39を作成し,これらを接合または取り付けることによって導通するようにしたものでも良い。
【0019】
そして,放電用凸部39は,正極内部端子31のうち,CID37に接続されている箇所と電極体15の正極板15aに接続されている箇所との間の箇所に設けられている。本形態の放電用凸部39は,電池10の蓋材12の長手方向に沿って,少なくとも安全弁35の直下まで延びている。つまり,放電用凸部39は,安全弁35の範囲を蓋材12をなす面に直角に,電池10の内部に向かって延長した筒状の範囲内に,少なくともその一部が配置される。なお,電池10の通常の使用時においては,この放電用凸部39は,特別な役割を果たすことはない。
【0020】
この電池10を使用中に何らかの原因で内圧が上昇し,通常圧の上限を超えて高くなってしまうことがあるかもしれない。そして,内圧がCID37の作動圧力を超えると,CID37が作動し,正極内部端子31と正極端子21との導通が遮断される。このようになると,電池10の外部に出ている正極端子21は,もはや電極体15の正極板15aとは導通していない。
【0021】
従って,CID37が作動した電池10は,正極端子21と負極端子22との間に電圧が印加されたとしても,電極体15には電圧は加わらないので,それ以上充電されるおそれはない。また,CID37が作動した電池10の正極端子21と負極端子22とを,電池ケース13の外部で単に接続したとしても,そのままでは放電することはできない。ただし,この状態でも,放電用凸部39は正極内部端子31の側にあるので,放電用凸部39と電極体15の正極板15aとの導通は維持されている。なお,CID37が作動した電池10は,そのまま再使用することはできない。
【0022】
CID37が作動した電池10は,たいてい過充電された状態となっている。CID37の作動後もさらに内圧が上昇して安全弁35の開弁圧を超えた場合には,内圧は下がっているかもしれないが,電気的には過充電された状態のままであることが多い。そのため,そのままでは取扱に相当の注意を要する。本形態の電池10は,CID37が作動
した後に,容易に放電させることができるものである。放電後の電池10は,取扱に特別の注意が必要とされることはない。
【0023】
CID37が作動した本形態の電池10を放電させる場合には,図3に示すように,安全弁35に放電棒41を刺し,放電棒41と負極電極22とを抵抗42を介して通電させる。放電棒41は,この放電処理に使用されるものであり,導電性を有する棒状の部材である。また,抵抗42は,急激に大電流が流れることのないように,緩やかな放電をさせるための部材である。
【0024】
安全弁35は開弁していれば貫通穴となっている。開弁していなくても,安全弁35は,他の箇所に比較して脆弱な箇所であり,放電棒41を差し込むことで容易に貫通させることができる。つまり,外部から開弁させることができる。従って,放電棒41を差し込むことは容易である。
【0025】
そして前述したように,安全弁35の直下には,放電用凸部39の一部が配置されている。従って,安全弁35から電池10の内部に差し込まれた放電棒41は,放電用凸部39に接触する。これにより,放電棒41は,正極内部端子31と導通される。従って,放電棒41と負極端子22とを導通させることにより,正極板15aと負極板15bとが導通されることとなり,電池10を強制的に放電させることができる。
【0026】
以上詳細に説明したように本形態の電池10は,正極内部端子31に導通され,安全弁35の直下まで延びる放電用凸部39を有している。従って,安全弁35の箇所から放電棒41を差し込むことにより,放電棒41と正極内部端子31とを容易に導通させることができる。CID37の作動によって,正極端子21と正極内部端子31との導通が遮断された場合に,放電棒41を差し込んで負極端子22と導通させれば,電池10を放電させることは容易である。従って,CID37が作動した電池10を安全かつ容易に処分することができる。
【0027】
なお,本形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。
例えば,上記の形態では,正極端子21と正極内部端子31との間にCID37が設けられ,正極内部端子31に放電用凸部39を有しているとしたが,これらの構成を負極側に設けてもよい。また,放電用凸部39の一部を,安全弁の直下の位置に固定しておいてもよい。
【符号の説明】
【0028】
10 電池
13 電池ケース
15 電極体
15a 正極板
21 正極端子
31 正極内部端子
35 安全弁
37 CID
39 放電用凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に発電要素を収容して密閉されている扁平角形の電池ケースと,
前記電池ケースの内部で前記発電要素に接続されているとともに,一部が前記電池ケースの外部に突出している外部端子となっている端子部材と,
前記電池ケースの一部に形成されている脆弱箇所である安全弁と,
前記電池ケースの内部で前記端子部材に設けられ,電池の状態値が予め決めた作動閾値を超えた場合に,前記端子部材を,前記発電要素側の部分と前記外部端子側の部分とに分割して導通を遮断する電流遮断機構とを有し,
前記端子部材には,前記電流遮断機構によって導通が遮断された場合に前記発電要素側となる部分から前記安全弁の直下の位置まで延びる導電性の凸部が形成されていることを特徴とする二次電池。
【請求項2】
請求項1に記載の二次電池において,
前記状態値が前記電池ケース内の圧力値であることを特徴とする二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−98108(P2013−98108A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241903(P2011−241903)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】