説明

二軸型破砕機及び二軸型破砕機の制御方法

【課題】破砕処理の効率を向上させることができるようにする。
【解決手段】本発明の二軸型破砕機1は、複数枚の刃体12が設けられた一対の回転軸2L、2Rと、この回転軸2L、2Rを正転して刃体12を破砕方向に回転させると共に逆転して破砕方向とは逆方向に回転させる駆動モータ4と、この駆動モータ4の制御を行う制御装置5とを備え、制御装置5は、回転軸2L、2Rの正転時において駆動モータ4が過負荷であるか否かを判定する第1過負荷判定手段20と、この第1過負荷判定手段20で過負荷であると判定したときに駆動モータ4の回転数を低減する第1回転数低減手段21と、この第1回転数低減手段21で駆動モータ4の回転数の低減後に駆動モータ4が過負荷であるか否かを判定する第2過負荷判定手段22と、この第2過負荷判定手段22で過負荷でないと判定したときに駆動モータ4の回転数を上昇させる回転数上昇手段24とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の刃体が設けられた一対の回転軸を電動式の駆動モータによって回転して破砕物の破砕を行う二軸型破砕機及び二軸型破砕機の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属や合成樹脂などから構成された様々な不要品(破砕物)を破砕処理するために破砕機が用いられている。このうち二軸型破砕機では、複数枚の刃体が設けられた一対の回転軸を正転して刃体を破砕方向に回転することにより不要品を破砕したり、破砕中に不要品が互いに交差する刃体の間に詰まったときは、回転軸を逆転して刃体を破砕方向とは逆方向に回転することにより不要品(破砕物)の詰まりを解消している。このような破砕機において、安定的な運転や効率よい運転ができるものとして、特許文献1に示すような破砕機が開発されている。
【0003】
特許文献1では、モータで駆動されて回転する回転刃で破砕物を破砕する機構を有する破砕機において、回転刃の回転数を測定し、この測定値を基に回転刃の回転数の減少率を演算し、該減少率と予め設定されている減少率とを比較し、該減少率が予め設定されている減少率の範囲内で破砕負荷が過大になったときは、運転中の回転刃の回転を逆転に切替え、その後に正転させて破砕運転を続行させている。また、特許文献1では、運転中の回転刃を正転中に減少率が大きいときはモータを停止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−320875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の破砕機では、回転刃を正転させている状態において破砕物中に回転刃の回転の減少率が大きくなったときは、モータにかかる負荷に関係なく直ちにモータを停止している。そのため、モータに過負荷がかかっていない場合(モータに余裕がある)にもモータを停止させてしまう虞があった。即ち、特許文献1では、不用意にモータが停止してしまうことがあり、これにより破砕効率が低下していた。
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、破砕処理の効率を向上させることができる二軸型破砕機及び二軸型破砕機の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は次の技術的手段を講じている。
即ち、本発明の二軸型破砕機は、複数枚の刃体が設けられた一対の回転軸と、この回転軸を正転して刃体を破砕方向に回転させると共に逆転して破砕方向とは逆方向に回転させる駆動モータと、この駆動モータの制御を行う制御装置とを備え、前記制御装置は、前記回転軸の正転時において前記駆動モータが過負荷であるか否かを判定する第1過負荷判定手段と、この第1過負荷判定手段で過負荷であると判定したときに駆動モータの回転数を低減する第1回転数低減手段と、この第1回転数低減手段で駆動モータの回転数の低減後に駆動モータが過負荷であるか否かを判定する第2過負荷判定手段と、この第2過負荷判定手段で過負荷でないと判定したときに前記駆動モータの回転数を上昇させる回転数上昇手段とを備えている点にある。
【0008】
前記第2過負荷判定手段で過負荷であると判定したときに、前記第1回転数低減手段よりもさらに前記駆動モータの回転数を低減する第2回転数低減手段を備えていることが好ましい。
前記第1回転数低減手段又は第2回転数低減手段で駆動モータの回転数の低減後に、当該駆動モータの回転数が下限値に達したときに駆動モータに正転の回転指令を停止する正転指令停止手段を備えていることが好ましい。
【0009】
本発明の二軸型破砕機の制御方法は、複数枚の刃体が設けられた一対の回転軸を駆動モータによって正転して破砕物の破砕を行う二軸型破砕機の制御方法において、前記回転軸の正転時において前記駆動モータが過負荷であるか否かを判定する第1ステップと、第1ステップで過負荷であると判定したときに駆動モータの回転数を低減する第2ステップと、前記駆動モータの回転数の低減後に駆動モータの過負荷であるか否かを判定する第3ステップと、第3ステップで過負荷でないと判定したときに前記駆動モータの回転数を上昇させる第4ステップとを備えている点にある。
【0010】
前記第3ステップで過負荷であると判定したときに、さらに駆動モータの回転数を低減する第5ステップを備えていることが好ましい。
第2ステップ又は第5ステップで駆動モータの回転数の低減後に当該駆動モータの回転数が下限値に達すると駆動モータに正転の回転指令を停止する第6ステップを備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、破砕処理の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】破砕機の全体概略図である。
【図2】第1実施形態における破砕機の制御ブロック図である。
【図3】第1実施形態における二軸型破砕機の動作のフローチャートである。
【図4】第2実施形態における破砕機の制御ブロック図である。
【図5】第2実施形態における二軸型破砕機の動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
[第1実施形態]
図1に示すように、二軸型破砕機1は、左右一対の回転軸2L、2Rと、この左右各回転軸2L、2Rを回転自在に支持するケーシング3と、回転軸2L、2Rに回転駆動力を付与する駆動モータ4と、制御装置5と、電力供給装置6とを備えている。
【0014】
ケーシング3は、上下に貫通状となった箱形に形成されたもので、上部に破砕する物(破砕物)Aを投入する投入口10が形成され、下部に破砕された破砕物Aが排出される排出口11が形成されている。
各回転軸2L、2Rは、互いに左右に並ぶようにケーシング3内に配置されて当該ケーシング3に回転自在に支持されており、各回転軸2L、2Rの外周部に複数枚の刃体12が設けられている。
【0015】
詳しくは、刃体12は破砕物Aを引っ掛けて挟み切るもの(剪断力により破砕したり切断するもの)であって各回転軸2L、2Rの軸芯方向に沿って所定の間隔を空けて配置され、回転軸2L、2Rに固着されている。刃体12の外周部には破砕物Aを引っ掛けたり破砕するための刃部12aが設けられている。左回転軸2Lの刃体12と右回転軸2Rの刃体12とは、正面視(軸芯方向から見る)で互いに重なり合うように配置されている。
【0016】
各回転軸2L、2Rは、刃体12の刃部12aが投入口10側(上側)から排出口11側(下側)へ向けて移動するように正転したり、刃体12の刃部12aが排出側から投入口10側へ向けて移動するように逆転する。この実施形態では、各回転軸2L、2Rは、減速機等を介して1つの駆動モータ4で回転するようになっている。
駆動モータ4は、各回転軸2L、2Rが正転又は逆転するように当該各回転軸2L、2Rに回転駆動力を付与するもので、この実施形態ではサーボモータで構成されている。制御装置5は、サーボモータの回転やロータ位置などを制御したり、電力供給装置6を制御するものであって、電子電気回路、CPU等から構成されている。この制御装置5には、駆動モータ4(回転軸2L、2R)の回転を判定するエンコーダ13からの判定データ(判定した回転数)が入力される。
【0017】
なお、制御装置5には、外部から駆動モータ4の正転したり逆転したりするための指令を行ったり、駆動モータ4を強制的に停止するための操作盤17が接続されており、操作盤17に設けられた操作スイッチ18を操作することによって、駆動モータ4の正転、逆転、停止が行えるようになっている。
電力供給装置6は、工場などに設置された商用電源に接続されていて、駆動モータ4や制御装置5にも接続されており、これら駆動モータ4や制御装置5に電力を供給するものである。電力供給装置6への電力供給は、当該電力供給装置6に設けられたオン・オフスイッチにより行われるようになっている。
【0018】
このような二軸型破砕機1では、金属やプラスチックなどで構成された破砕物Aをケーシング3の投入口10へ投入し、駆動モータ4を介して各回転軸2L、2Rを正転して刃体12を破砕方向に回転させることにより破砕物Aを小さく破砕することができる。
このような二軸型破砕機1は、様々なものを破砕するライン上に設置されることが多く、シュレッダーなどに比べて不特定の破砕物Aが投入される。そのため、破砕物Aの形状や種類が代わると、破砕時に回転軸2L、2R(刃体12)にかかる力が変化し、その結果、駆動モータ4の負荷も変化し易い。
【0019】
本発明では、特に、各回転軸2L、2Rが正転しているときに駆動モータ4の負荷状況を監視して、駆動モータ4の負荷の変化が、刃体12に破砕物Aが挟み込まれたことによるものなのか、刃体12の間に破砕物Aが詰まったことによるものなのかを判断することにより、不要に駆動モータ4を止めることを防止して破砕処理の効率を向上させている。
なお、二軸型破砕機1では、例えば、多くの破砕物Aが各回転軸2L、2R内に入るなどをして、各回転軸2L、2Rが正転している際に互いに対向する刃体12の間に破砕物Aが詰まり各回転軸2L、2Rが停止してしまった場合、各回転軸2L、2Rを逆転して刃体12を破砕方向とは反対方向に逆転することにより、刃体12の間に詰まりを解消することができる。
【0020】
以下、本発明について詳しく説明する。
まず、制御装置5について説明する。
図2に示すように、制御装置5は、第1過負荷判定手段20と、第1回転数低減手段21と、第2過負荷判定手段22と、第2回転数低減手段23と、回転数上昇手段24と、回転数判定手段25と、正転指令停止手段26とを備えている。
【0021】
これら第1過負荷判定手段20、第1回転数低減手段21、第2過負荷判定手段22、回転数上昇手段24、第2回転数低減手段23、回転数判定手段25及び正転指令停止手段26は電気電子回路やプログラム等から構成されている。
第1過負荷判定手段20は、駆動モータ4に対して正転指令(正転のための制御電流)を出力して回転軸を正転している状態において、駆動モータ4が過負荷になっているか否かを電流値によって判定するものである。
【0022】
具体的には、第1過負荷判定手段20は、駆動モータ4に正転指令を出力しているときに、駆動モータ4への電流やトルク(駆動モータ4にかかる電流やトルク)を検知し、検知した電流値(トルク)が予め定められた閾値(例えば、最大トルクの70%に相当)を超えているか否かを判定する。そして、第1過負荷判定手段20は、閾値以上になっていれば駆動モータ4が過負荷となっていると判定する。また、第1過負荷判定手段20は、正転指令を駆動モータ4に出力しているときに駆動モータ4にかかる電流値やトルクが閾値未満であれば、駆動モータ4は過負荷ではないと判定する。
【0023】
ここで、第1過負荷判定手段20に定められた閾値又は過負荷は、このまま駆動モータ4の回転を継続すると当該駆動モータ4に多大な負荷が掛かると推定される値又はその状態のことである。過負荷の判定基準となる閾値は、トルクで見た場合、最大トルクの30%以上80%以下であることが好ましい。
第1回転数低減手段21は、第1過負荷判定手段20で駆動モータ4が過負荷であると判定されたときに駆動モータ4の回転数を低減する。具体的には、この第1回転数低減手段21は、駆動モータ4へ出力する正転指令を当該駆動モータ4の回転数が低減するように調整する。
【0024】
第1回転数低減手段21では、例えば、駆動モータ4の電流やトルクが閾値よりも大幅に大きくなっている場合は回転数を大きく下げ、駆動モータ4の電流やトルクが閾値から少しだけ大きくなっているときは少しだけ回転数を下げる。即ち、第1回転数低減手段21では、駆動モータ4の電流やトルクにおける外れ度合い(閾値から外れた度合い)に応じて回転数を下げるようになっている。
【0025】
なお、第1回転数低減手段21は、低減後の駆動モータ4の回転数が予め定められた目標回転数よりも低くなるよう正転指令を調整したり、過負荷と判定される前の回転数を基準として、その回転数よりも低い回転数になるように正転指令を調整してもよい。
第2過負荷判定手段22は、駆動モータ4の回転数の低減後の負荷を確認するためのものである。具体的には、この第2過負荷判定手段22は、第1回転数低減手段21によって駆動モータ4の回転数の低減後に、再び、駆動モータ4に加わる電流やトルクを検知し、検知した電流値やトルクが閾値以上になっていれば駆動モータ4が過負荷となっていると判定する。また、第2過負荷判定手段22は、駆動モータ4の回転数の低減後に、駆動モータ4に加わる電流やトルクが閾値未満であれば駆動モータ4は過負荷でないと判定する。なお、第2過負荷判定手段22における閾値は、第1負荷判定手段にて用いた閾値と同じ値である。
【0026】
回転数上昇手段24は、第2過負荷判定手段22で過負荷でないと判定されたときに駆動モータ4へ出力する正転指令を調整することによって駆動モータ4の回転数を上昇させる。
具体的には、この回転数上昇手段24は、第2過負荷判定手段22で過負荷でないと判定されると、上昇後の駆動モータ4の回転数が目標回転数になるよう正転指令を調整したり、上昇後の駆動モータ4の回転数が過負荷と判定される前の回転数に戻るよう(復帰するよう)正転指令を調整する。
【0027】
第2回転数低減手段23は、第2過負荷判定手段22で過負荷であると判定されたときに駆動モータ4の回転数を低減させるものである。具体的には、この第2回転数低減手段23は、第1回転数低減手段21によって低減された駆動モータ4の回転数よりも低くなるようにさらに駆動モータ4の回転数を下げる。
即ち、第2回転数低減手段23は、第1過負荷判定手段20によって過負荷であると判定されて駆動モータ4の回転数が下げられた後、回転数を下げてもなお駆動モータ4に過負荷がかかっている場合に一段と駆動モータ4を下げるために正転指令を調整するものである。
【0028】
第2回転数低減手段23によって低減する駆動モータ4の回転数は限定されないが、第1回転数低減手段21によって低減した回転数よりも低くなるようにする。第2回転数低減手段23でも、駆動モータ4の電流やトルクにおける外れ度合い(閾値から外れた度合い)に応じて回転数を下げるようにしてもよい。
さて、第1回転数低減手段21や第2回転数低減手段23によって駆動モータ4の回転数を低減させる制御(低減制御ということがある)を行ったとしても、例えば、刃体12間に破砕物Aが詰まることにより、極端に駆動モータ4の回転数が低下してしまうという状況が考えられる。そのため、本発明では、回転数判定手段25によって駆動モータ4の回転数の指令後も駆動モータ4の回転数を確認することとしている。
【0029】
即ち、回転数判定手段25は、低減制御後の実際の駆動モータ4の回転数(実回転数)をエンコーダ13から読み込み、エンコーダ13によって検知された実回転数が予め設定された下限値(最低回転数)よりも低いか否かを判定する。言い換えれば、回転数判定手段25は、回転軸2L、2Rが破砕物Aを破砕出来る程度に回転しているか否かを判定するものである。そのため、回転数判定手段25における最低回転数は、刃体12によって破砕物Aを破砕出来る程度に回転軸2L、2Rが回転しておらず回転軸2L、2Rが停止の状態と略同じとみなされる値に設定されている。例えば、回転数判定手段25における下限値は、1rpm以下(零を除く)に設定されている。
【0030】
回転数判定手段25では、第1回転数低減手段21や第2回転数低減手段23によって回転数低減後でも駆動モータ4の回転数が最低回転数以上であれば、処理を第2過負荷判定手段22に進める。
正転指令停止手段26は、回転数判定手段25で駆動モータ4の回転数が最低回転数よりも低いと判定されたときに駆動モータ4への正転の回転指令を停止するものである。即ち、この正転指令停止手段26は、第1回転数低減手段21又は第2回転数低減手段23によって駆動モータ4の回転数の低減後に回転数判定手段25によって駆動モータ4の回転数が最低回転数よりも下回っていると駆動モータ4を停止する。
【0031】
以上のような制御装置5では、回転軸2L、2Rを正転して破砕物Aを破砕している状況において、まず、第1過負荷判定手段20によって駆動モータ4の過負荷の判定を行い、過負荷であれば第1回転数低減手段21によって、一旦、駆動モータ4の回転数を下げる制御を行うことによって過負荷の解消を試みる。
そして、第1回転数低減手段21によって回転数を下げた後も第2過負荷判定手段22によって駆動モータ4の過負荷の判定を行い、駆動モータ4の回転数を下げることによって過負荷が解消していれば、再び、回転数上昇手段24によって駆動モータ4の回転数を上げる。駆動モータ4の回転数を下げてもなお、過負荷状態であれば、第2回転数低減手段23によってさらに駆動モータ4の回転数を下げるように制御を行う。
【0032】
一方、第1回転数低減手段21によって駆動モータ4の回転数を下げた後や第2回転数低減手段23によって駆動モータ4の回転数を下げる制御を行った後(低減制御後)でも、過負荷が解消されず駆動モータ4の回転数が極端に減少している場合(回転数判定手段25にて回転数が最低回転数以下の場合)は、正転指令停止手段26によって駆動モータ4の正転の停止する。
【0033】
正転指令停止手段26によって駆動モータ4への正転指令を停止し、駆動モータ4の回転が止まると、制御装置5は次のように駆動モータ4の制御を行う。
制御装置5は、正転指令の停止後、エンコーダ13が検知した回転数が零となり駆動モータ4が止まったこと(正転終了)を確認すると、駆動モータ4を逆転させる逆転指令を出力して駆動モータ4を逆転させる。
【0034】
駆動モータ4の逆転後は、駆動モータ4の逆回転数が予め定められた回数になると逆転指令を停止する。なお、逆転指令の停止を行った場合、破砕物Aの詰まりが解消されていれば、駆動モータ4は慣性力によって回転する。制御装置5は、逆転指令の停止後、エンコーダ13が検知した回転数が零となり駆動モータ4が止まったこと(逆転が終了)を確認すると、再び、正転指令を出力して駆動モータ4を正転させる。駆動モータ4の正転後は、上述したように、駆動モータ4に対して正転指令を出力している状態において、第1過負荷判定手段20によって過負荷の判定を行う。
【0035】
図3は、第1実施形態における二軸型破砕機1の動作をまとめたものである。
まず、電力供給装置6の主電源をオンして制御装置5や駆動モータ4に電力を供給する。そして、破砕物Aを投入口10に入れ、回転軸2L、2Rが停止している状態から操作盤17の操作スイッチ18を押して駆動モータ4の正転の開始を制御装置5に指令する(S1:破砕機運転指令)。制御装置5は駆動モータ4に正転指令を出力し駆動モータ4を正転させる(S2:駆動モータ正転指令)。
【0036】
次に、駆動モータ4が正転中であるとき、第1過負荷判定手段20によって駆動モータ4に過負荷がかかっているか否かを判定する(S3:第1過負荷判定)。駆動モータ4に過負荷がかかっていなければ(S3、No)、正転指令を継続する。
第1過負荷判定手段20によって駆動モータ4に過負荷がかかっていると判定した場合、第1回転数低減手段21によって駆動モータ4の回転数を下げる方向に制御する(S4:回転数低減)。
【0037】
駆動モータ4の回転数の低減後(低減制御後)は、実回転数が最低回転数以下であるか否かを回転数判定手段25によって判定する(S5:回転数下限値判定)。回転数判定手段25によって実回転数が最低回転数を下回ってない場合(S5、No)と判定すると、第2過負荷判定手段22によって駆動モータ4に過負荷がかかっているか否かを判定する(S6:第2過負荷判定)。
【0038】
ここで、第2過負荷判定手段22によって過負荷がかかっていると判定した場合(S6、Yes)、第2回転数低減手段23によってさらに駆動モータ4の回転数を下げる(S4)。なお、図3のフローチャートでは、第1回転数低減手段21と第2回転数判定手段25とにおいて駆動モータ4の回転数を低減するという処理は同じであるが、低減後の回転数が異なっている。
【0039】
第2過負荷判定手段22によって駆動モータ4に過負荷がかかっていないと判定した場合(S6、No)、回転数上昇手段24によって一旦低減した駆動モータ4の回転数を上げる(S7:回転数上昇)。駆動モータ4の回転数を上げた後は、第1過負荷判定手段20による過負荷判定S3に戻る。
回転数下限値判定S5において、駆動モータ4の回転数が最低回転数未満であれば(S5、Yes)、正転指令停止手段26によって駆動モータ4への正転指令を停止する(S8)。
【0040】
次に、制御装置5によって駆動モータ4が停止しているか否かをエンコーダ13で判定した回転数によって確認し、エンコーダ13で判定した回転数が零となり停止すると(S9、Yes)、逆転指令を駆動モータ4に出力し(S10:駆動モータ逆転指令)、回転軸2L、2Rを破砕方向とは逆方向に回転させる。
こうすると、刃体12の刃部12aは投入口10側から排出口11側に移動するのではなく、排出口11側から投入口10側に向けて移動して刃体12への破砕物Aの引っかかりが無くなり、詰まりが次第に解消される。即ち、刃体12を逆転させると、刃部12aが下側から上側へ破砕物Aを押し上げて、破砕物Aの姿勢が変わることにより詰まりが解消される。
【0041】
回転軸2L、2Rの逆転をするにあたっては、刃体12への破砕物Aの引っかかりを無くし詰まりを解消すればよいため、回転軸2L、2Rの逆転の回転は数回〜数十回程度でよく、制御装置5はエンコーダ13で判定した逆転の回数が予め定められた回数(数回〜数十回)になると(S11、Yes)と、自動的に逆転指令の停止を行う(S12:駆動モータ逆転指令停止)。そして、エンコーダ13で判定した回転数が零になり駆動モータ4の逆回転が停止すると(S13、Yes)、制御装置5は、再び、正転指令を駆動モータ4に出力する。
【0042】
以上、本発明によれば、駆動モータ4を正転して刃体12によって破砕物Aを破断することにより投入口10から投入した破砕物Aを小さく破砕することができる。破砕物Aの破砕中(駆動モータ4の正転中)に、例えば、刃体12間に破砕物Aが引っかかり、駆動モータ4への負荷が上昇する(過負荷状態)と、駆動モータ4の回転数を下げる低減制御を行い当該駆動モータ4の過負荷の解消を進め、それでもなお、低減制御後に駆動モータ4が過負荷状態であれば、さらに駆動モータ4の低減制御を行い駆動モータ4の過負荷の解消を進めつつ、破砕物Aの破砕処理を、この時点では停止しないようにしている。
【0043】
即ち、本発明では、段階的に駆動モータ4の回転数を下げながら破砕物Aを破砕している。しかも、段階的に駆動モータ4の回転数を下げながら破砕物Aを破砕しているときに、刃体12に引っかかっていた破砕物Aが刃体12により破砕され、駆動モータ4への過負荷が解消された場合には、再び、駆動モータ4の回転数を上昇させて、過負荷が無い状況で破砕物Aを破砕することができる。
【0044】
一方で、駆動モータ4に過負荷が掛かり、極端に駆動モータ4の回転数が低下した場合(駆動モータ4の回転数が下限値より下回る)は、即座に駆動モータ4への正転指令を停止しているため、長時間に亘り大きな負荷が駆動モータ4に掛かることを防止することもできる。
しかも、駆動モータ4の正転停止後、駆動モータ4を逆転させているので、破砕物Aが刃体12間に詰まった状況をすぐに解消することができる。
【0045】
[第2実施形態]
第2実施形態では、第1実施形態に加え、省電力で二軸型破砕機を動作させる構成を追加したものである。第1実施形態と異なる構成を説明する。第1実施形態と同じ構成である場合は同符号を付して説明を省略する。
図4に示すように、制御装置5は、電力供給装置6に充電指令や放電指令を出力する。具体的には、電力供給装置6において初期起動(電力供給装置6の電源を入れて駆動モータ4を最初に回転させるとき)に充電指令を出力したり、駆動モータ4が逆転していて回生電流が発生しているときに充電指令を出力する。また、電力供給装置6において電力が蓄えられた後は、駆動モータ4を逆転から正転に切り換えるときに、駆動モータ4の正転時に放電指令を出力する。
【0046】
また、電力供給装置6は、一時的に電力を蓄えたり蓄えた電力を放出するための充放電部28を有している。この充放電部28は、初期起動時や駆動モータ4の逆転時に電力を蓄えて、駆動モータ4を正転させるときに電力を放出するためのもので、駆動モータ4の回生電流が入力されると共に充電した電力を主電源側に供給するように構成されている。
なお、説明の便宜上、電力供給装置6によって電力を供給する側を主電源P側といい、後述するコンデンサ29から供給される電力とは区別することとする。
【0047】
詳しくは、充放電部28は、コンデンサ29と、第1スイッチ30と、第2スイッチ31とを備えている。第1スイッチ30は、コンデンサ29と主電源側との間に配置されてコンデンサ29と主電源とを接続するためのもので、制御装置5から充電指令や放電指令が入力されている間はオンし、充電指令や放電指令が入力されていないときはオフする。
第2スイッチ31は、コンデンサ29と回生電流の入力側との間に配置されてコンデンサ29に回生電流を充電させるタイミングを決定するものであり、制御装置5からの充電指令が入力されている間はオンし、充電指令が入力されていないときはオフする。
【0048】
図5は、第2実施形態における二軸型破砕機1の動作をまとめたものである。なお、図3の動作と同じ部分は同符号を付して説明を省略する。
電力供給装置6の主電源をオンして、回転軸2L、2Rが停止している状態から操作盤17の操作スイッチ18を押して駆動モータ4の正転の開始を制御装置5に指令する(S1:破砕機運転指令)。
【0049】
そうすると、まず、制御装置5が充電指令を間欠的に第1スイッチ30に出力し、第1スイッチ30がオンになることによってコンデンサ29に主電源P側の電力が蓄えられる(S20:コンデンサ充電)。そして、制御装置5において、充電指令のオン・オフの繰り返しを数秒間(例えば、2秒程度)行った後は、コンデンサの充電が完了したとする(S21、Yes)。或いは、コンデンサ29への電圧が下がると充電が完了したとする。
【0050】
コンデンサ29の充電が完了後、制御装置5が駆動モータ4に正転指令を出力して駆動モータ4を正転させる際(S2:駆動モータ正転指令)に、まず、第1スイッチ30をオンしてコンデンサ29に蓄電した電力を放出し、一度蓄えた電力を駆動モータ4の回転するときに使用する。
さて、駆動モータ正転指令S2後は、第1実施形態と同様に処理を進め、駆動モータ逆転指令停止S12(制御装置5が逆転指令の停止を行った)後は、破砕物Aの詰まりも解消されているため、駆動モータ4は慣性力によって回ることになり、この慣性力によって駆動モータ4に回生電流が発生することになる。
【0051】
制御装置5は、逆転指令の停止を行ったときに電力供給装置6の充放電部28に充電指令を出力し、第2スイッチ31をオンしてコンデンサ29に回生電流を充電する(S22:コンデンサ充電)。駆動モータ4が停止しているか否かをエンコーダ13で検出した回転数によって確認し、エンコーダ13で検出した回転数が零でなければ(S23、No)、制御装置5は充放電部28への充電指令を継続する。即ち、駆動モータ4が慣性力によって回転している間(回生電流が発生している間)は、コンデンサ29に回生電流を充電することとしている。
【0052】
そして、エンコーダ13で検出した回転数が零になり停止すると(S23、Yes)、制御装置5は、第1スイッチ30をオンしてコンデンサ29に蓄電した電力を放出する(S24:コンデンサ放電)と共に、駆動モータ4に対して正転指令(S2)を出力する。即ち、制御装置5は、放電指令と略同時に正転を行うため、コンデンサ29の電力が正転時の起動に消費されることになる。
【0053】
以上、本発明によれば、駆動モータ4を停止後、当該駆動モータ4が止まるまでに発生した回生電流を充電し、充電した回生電流を正転時に使用しているため、逆転したときのエネルギーを利用することができ、その結果、省電力で動かすことができる。また、破砕物Aの詰まりが発生しなくても操作盤17の操作スイッチ18等を用いて手動で駆動モータ4を逆転することによって破砕物Aを刃体12(ケーシング内)へ向けて案内し、その後、駆動モータ4を正転させることも可能である。
【0054】
このように、駆動モータ4の正転や逆転を比較的頻繁に繰り返し行う二軸型破砕機1において、逆転時に発生する回生電流を無駄にせず充電して充電した電力を正転時に使用すれば、消費電力を抑えることができ、省電力の効果も高い。また、駆動モータ4を正転から逆転に切り換えるときに、主電源Pからの電力よりも先に最初にコンデンサ29に蓄えた電力を使用しているために、電力供給部等にかかる電気的な負荷を抑えることができる。
【0055】
本発明は、上記の実施形態に限定されない。上記の実施形態では、制御装置5の制御によって、回転軸2L、2Rが正転時に停止したときに自動的に逆転を行うようにしていたが、操作盤17の操作スイッチ18等を用いて手動で正転や逆転を切り換えることができるようにしてもよい。上記の実施形態では、1つの駆動モータ4によって2つの回転軸2L、2Rを駆動していたが、これに代え、2つの回転軸2L、2Rをそれぞれ独立した駆動モータ4によって駆動させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 二軸型破砕機
2L、2R 回転軸
4 駆動モータ
5 制御装置
20 第1過負荷判定手段
21 第1回転数低減手段
22 第2過負荷判定手段
23 第2回転数低減手段
24 回転数上昇手段
26 正転指令停止手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の刃体が設けられた一対の回転軸と、この回転軸を正転して刃体を破砕方向に回転させると共に逆転して破砕方向とは逆方向に回転させる駆動モータと、この駆動モータの制御を行う制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記回転軸の正転時において前記駆動モータが過負荷であるか否かを判定する第1過負荷判定手段と、この第1過負荷判定手段で過負荷であると判定したときに駆動モータの回転数を低減する第1回転数低減手段と、この第1回転数低減手段で駆動モータの回転数の低減後に駆動モータが過負荷であるか否かを判定する第2過負荷判定手段と、この第2過負荷判定手段で過負荷でないと判定したときに前記駆動モータの回転数を上昇させる回転数上昇手段とを備えていることを特徴とする二軸型破砕機。
【請求項2】
前記第2過負荷判定手段で過負荷であると判定したときに、前記第1回転数低減手段よりもさらに前記駆動モータの回転数を低減する第2回転数低減手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の二軸型破砕機。
【請求項3】
前記第1回転数低減手段又は第2回転数低減手段で駆動モータの回転数の低減後に、当該駆動モータの回転数が下限値に達したときに駆動モータに正転の回転指令を停止する正転指令停止手段を備えていることを特徴とすることを特徴とする請求項2に記載の二軸型破砕機。
【請求項4】
複数枚の刃体が設けられた一対の回転軸を駆動モータによって正転して破砕物の破砕を行う二軸型破砕機の制御方法において、
前記回転軸の正転時において前記駆動モータが過負荷であるか否かを判定する第1ステップと、第1ステップで過負荷であると判定したときに駆動モータの回転数を低減する第2ステップと、前記駆動モータの回転数の低減後に駆動モータの過負荷であるか否かを判定する第3ステップと、第3ステップで過負荷でないと判定したときに前記駆動モータの回転数を上昇させる第4ステップとを備えていることを特徴とする二軸型破砕機の制御方法。
【請求項5】
前記第3ステップで過負荷であると判定したときに、さらに駆動モータの回転数を低減する第5ステップを備えていることを特徴とする請求項4に記載の二軸型破砕機の制御方法。
【請求項6】
第2ステップ又は第5ステップで駆動モータの回転数の低減後に当該駆動モータの回転数が下限値に達すると駆動モータに正転の回転指令を停止する第6ステップを備えていることを特徴とする請求項5に記載の二軸型破砕機の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−110846(P2012−110846A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262566(P2010−262566)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(390013745)株式会社ホーライ (5)
【Fターム(参考)】