説明

二連筒状織物及びその製造方法、多連筒状織物構造体並びに多連ホース

【課題】 筒状織物を四連以上に連結した多連筒状織物構造体及び、かかる多連筒状織物構造体を形成することのできる二連筒状織物を提供することを目的とする。
【解決手段】 環状に配置された複数のたて糸4に対してよこ糸5を螺旋状に織り込んでなる筒状織物2a、2bが二本並列され、当該二本の筒状織物2a、2bが互いに長さ方向に接結されていると共に、間欠的に接結されていない非接結部7を形成して二連筒状織物1とする。またこの二連筒状織物1を非接結部7において隣接する筒状織物2a、2bをベルト13で結束して多連筒状織物構造体12とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状織物を二本並列して一体に接結した二連筒状織物及びその製造方法、当該二連筒状織物を複数並設してなる多連筒状織物構造体並びに、当該多連筒状織物構造体の各筒状織物に内張りを形成してなる多連ホースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のホースを幅方向に連結した多連ホースは知られている。例えば特開昭52−43120号公報には、複数のホースを並設し、そのホースの接触部を一体に縫い合わせるなどにより接合した構造が記載されている。また同公報には、筒状織物を長さ方向に縫合して複数の区画に分割し、それぞれの区画に内張りを形成して各区画がそれぞれホースとして機能するものや、複数のホースを並設してその外側をカバー部材で囲繞して一体化した構造も示されている。
【0003】
しかしながら複数のホースを縫い合わせるためには、縫合するためのミシンを少なくとも一方のホース内に入れなければならず、事実上不可能である。また筒状織布を縫合して複数の区画に分割したものでは、その各区画内に圧力が作用するとよこ糸に替って縫合糸が耐圧力を負担することとなり、高い圧力に耐えることはできない。また複数のホースをカバー部材で囲繞するものでは、送水するためのホースのほかにカバー部材が必要であり、構造的に不経済である。
【0004】
また特開平8−159346号公報や特開2004−229709号公報には、柔軟な筒体内に複数の個別のホースを挿通し、前記筒体を前記個別ホースごとに区分するように融着した構造が示されている。
【0005】
しかしながらこの構造では先の特開昭52−43120号公報においてカバー部材を使用したものと同様に、送水のためのホースのほかに筒体が必要であり、構造的に不経済であってコストが高くなる。
【0006】
さらに実公昭44−5010号公報や前記特開2004−229709号公報には、多連ホースを構成する筒状織物を織成するに際し、筒状織物のよこ糸を隣接する筒状織物にまたがって織り込んで、多連ホースとした構造が示されている。
【0007】
しかしながらこの構造では、隣接する筒状織物のよこ糸が繋がっているため、各ホースに均等の圧力がかかった場合には良いが、一部のホースにのみ圧力がかかったり、ホースごとの圧力が異なった場合には、よこ糸が筒状織物間で移動して織り目がずれる可能性があり、耐圧力が極端に低下する恐れがある。
【0008】
このような事情に鑑み、二つのホースを確実に連結して各ホースがそれぞれホースとしての機能を確実に果たすことができる二連ホースを発明し、先に特願2008−124174号として特許出願している。
【0009】
このホースは、環状に配置された複数のたて糸に対してよこ糸を螺旋状に織り込んでなる筒状織物を二本並列し、当該二本の筒状織物を互いに長さ方向に連続的に接結してなる二連筒状織物に、各筒状織物に気密性の内張りを施したものであって、前記二連筒状織物は環状織機で織成した二重筒状織物の外側の筒状織物を裏返すことにより容易に形成することができると共に、各筒状織物はそれぞれ独立した構造を有しているのでそれぞれホースとして機能するのである。
【0010】
しかしながらこの構造においては、前述のように二連筒状織物は容易に製作することができるが、それを拡張して三連以上の構造を製作しようとしても、技術的に不可能であって製作することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭52−43120号公報
【特許文献2】特開平8−159346号公報
【特許文献3】特開2004−229709号公報
【特許文献4】実公昭44−5010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明はかかる事情に鑑みなされたものであって、筒状織物を四連以上に連結した多連筒状織物構造体及び、かかる多連筒状織物構造体を形成することのできる二連筒状織物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
而して本発明の二連筒状織物は、環状に配置された複数のたて糸に対してよこ糸を螺旋状に織り込んでなる筒状織物が二本並列され、当該二本の筒状織物が互いに長さ方向に接結されていると共に、間欠的に接結されていない非接結部を有することを特徴とするものである。
【0014】
本発明においては、前記二本の筒状織物のよこ糸が、互いに逆方向の螺旋状に織り込まれていることが好ましい。また前記二本の筒状織物は、接結たて糸により接結されていることが好ましい。さらに前記二本の筒状織物は、互いに接近した複数箇所において、互いに長さ方向に接結されているものとすることができる。
【0015】
また本発明の二連筒状織物の製造方法は、環状に配置された複数のたて糸に対してよこ糸を螺旋状に織り込んでなる筒状織物を内外二層に織成し、当該二層の筒状織物を互いに長さ方向に接結すると共に、間欠的に接結しない非接結部を形成し、前記二層のうちの外側の筒状織物の内外面を反転することにより内側の筒状織物を外側の筒状織物の外側に出し、二本の筒状織物を並列せしめることを特徴とするものである。
【0016】
また本発明の多連筒状織物構造体は、前記二連筒状織物を複数本並設し、当該二連筒状織物における非接結部において、隣接する二連筒状織物における筒状織物がベルトで結束されていることを特徴とするものである。
【0017】
また本発明の多連ホースは、前記多連筒状織物構造体の、各筒状織物の内面に水密性の内張りを施してなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、併設された複数の二連筒状織物を、各二連筒状織物における接結されていない個所を利用してベルトで結束することにより、複数の二連筒状織物を連結して四連以上の多連の筒状織物構造体を形成することができ、これらの多連筒状織物構造体における各筒状織物に内張りを施すことにより、四本以上のホースを並列した多連ホースとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の二連筒状織物の平面図
【図2】本発明の二連筒状織物の斜視図
【図3】図1におけるIII−III部の拡大断面図
【図4】図1におけるIV−IV部の拡大断面図
【図5】本発明の二連筒状織物の他の例を示すIII−III断面図
【図6】本発明の方法における二層の筒状織物の拡大横断面図
【図7】本発明の方法により二層の筒状織物を織成する状態を示す平面図
【図8】本発明の方法において外側の筒状織物を反転する状態を示す中央縦断面図
【図9】本発明の多連筒状織物構造体の平面図
【図10】本発明の多連筒状織物構造体の横断面図
【図11】本発明の多連筒状織物構造体の他の例を示す横断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下本発明を図面に基づいて説明する。図1、図2及び図3は本発明の二連筒状織物1を示すものであって、当該二連筒状織物1は、ほゞ同径の二本の筒状織物2a、2bが並列されてなり、その二本の筒状織物2a、2bは接結部3において接結糸により互いに一体に接結されている。
【0021】
各筒状織物2a、2bは図3に示すように、環状に配置された複数のたて糸4と、当該たて糸4に対して螺旋状に織り込まれたよこ糸5とよりなっており、接結部3においては接結たて糸6が両筒状織物2a、2bのよこ糸5に対して組織することにより筒状織物2a、2bが接結されている。
【0022】
なおこの図2においては、筒状織物2a、2bを構成するたて糸4とは別の接結たて糸6により接結しているが、筒状織物2a、2bを構成するたて糸4を相手方の筒状織物2b、2aのよこ糸5に組織することにより接結することもできる。
【0023】
本発明の二連筒状織物1においては、当該二連筒状織物1を構成する二つの筒状織物2a、2bは、それらを構成するよこ糸5が、互いに逆方向の螺旋方向に織り込まれていることが好ましい。
【0024】
後述するように、これらの筒状織物2a、2bにそれぞれ内張りを施して、ホースとして使用する場合には、通常のホースであれば内圧をかけたときによこ糸の螺旋の方向と逆方向に捩れが生じる。
【0025】
然るに前述のように筒状織物2a、2bのよこ糸5の螺旋の方向を互いに逆方向とすることにより、これらの筒状繊維材料2a、2bの捩れの方向が互いに打ち消しあい、捩れが生じるのを阻止することができるのである。
【0026】
そして本発明においては、二連筒状織物1における筒状織物2aと筒状織物2bとの接結部3は間欠的に形成されており、その接結部3の間に接結されていない非接結部7が形成されている。
【0027】
この非接結部7においては、接結たて糸6は図4に示すように筒状織物2a、2bのよこ糸5に対して組織されておらず、筒状織物2a、2bの間で筒状織物2a、2bから遊離した状態で伸びている。
【0028】
なおこの非接結部7における接結たて糸6は、図4においては筒状織物2a、2bの間に位置しているが、両筒状織物2a、2bを接結していなければ良いのであって、いずれか一方の筒状織物2a、2bの内部に位置していても良く、またいずれか一方の筒状織物2a、2bにおけるよこ糸5にのみ組織されていても差し支えない。また非接結部7の両端において接結たて糸6が切断されて除去されていても良い。
【0029】
以上の説明においては、二本の筒状織物2a、2bは周方向の一箇所において接結されているが、図5に示すように複数箇所において接結することも可能である。この場合には短い間隔で接結することが必要であり、両端の接結の間隔は筒状織物2a、2bの周長の30%以下とするべきである。接結した箇所においては図5に示すように両筒状織物2a、2bの円弧状が失われるので、30%を越えると筒状織物の形態が損なわれることとなり好ましくない。
【0030】
本発明の二連筒状織物1を製造する場合には、通常の力織機を使用して互いに接結された二つの縦口袋織物として織成することも可能ではあるが、筒状織物を織成するための環状織機を使用して織成するのが好ましい。
【0031】
図6は筒状織物2a、2bを内外二層に織成した二層筒状織物8を示すものであって、筒状織物2a内に筒状織物2bが挿通された状態となっており、当該筒状織物2aと筒状織物2bとが接結たて糸6により接結されている。
【0032】
図7はかかる二層筒状織物8を織成する状態を示すものであって、放射状に配置されて外方から内方に向かって供給されるたて糸4及び接結たて糸6を、当該たて糸4の外周に設けられたヘルド(図示せず)により所定の順序で開口しながら、当該開口内で4つのシャトル9a、9bを回転させ、当該シャトル9a、9bに搭載されたボビン10から供給されるよこ糸5を、前記たて糸4及び接結たて糸6に対して織り込むことにより、接結たて糸6により接結された筒状織物2a及び筒状織物2bよりなる二層筒状織物6を織成するのである。
【0033】
環状織機は通常、2つ又は4つのシャトルを備えており、これらのシャトルに搭載されたボビンから別個のよこ糸を繰り出すので、たて糸の開口順序を調整することにより、内外二層の筒状織物を織成することは容易である。また接結たて糸6の開口順序を調節することにより、接結部3及び非接結部7を形成することも容易である。
【0034】
そしてこの二層筒状織物6のうち、外側の筒状織物2aを内外反転して裏返すことにより、当該筒状織物2a内に挿通されていた内側の筒状織物2bが筒状織物2aの外側に出て、二連筒状織物1となるのである。
【0035】
図8はこの二層筒状織物6を裏返す状態を示すものであって、外側の筒状織物2aをその端末を外側に折り返し、当該折り返し部11において内側が外側となるように裏返すと、その当該外側の筒状織物2aに接結されている内側の筒状織物2bは外側の筒状織物2aに伴われて外側に反転し、外側の筒状織物2aが裏返った状態においては、当該筒状織物2aと筒状織物2bとが並列して接結たて糸3で接結された状態となり、図3に示す二連筒状織物1が得られるのである。非接結部7においてもその両端においては接結部3があるので、非接結部7において接結されていないことにより筒状織物2bの反転に支障が生じることはない。
【0036】
次に図9及び図10は、本発明の多連筒状織物構造体12の一例を示すものである。この多連筒状織物構造体12は、三本の二連筒状織物1を並設したものであって、当該二連筒状織物1における非接結部7において、隣接する二連筒状織物1における筒状織物2a、2bがベルト13で結束されて連結され、ベルト状の多連筒状織物構造体12が形成されている。図面においては二連筒状織物1は三本が連結されているが、同様の構造で二本又は四本以上を連結することも可能である。
【0037】
ベルト13は単純なベルトで筒状織物2a、2b同士を結束し、両端を接合することもできるが、図10に示すように、二連筒状織物1と同様の構造のものを所定の幅で輪切りにし、各筒状織物2a、2bに相当する部分を切り開いてそれぞれ筒状織物2a、2bに巻回し、その両端を接合テープ14で接合することもできる。
【0038】
また図11は本発明の多連筒状織物構造体12の他の例を示すものであって、二連筒状織物1を二段に重ね合わせ、下段の二連筒状織物1の筒状織物2a、2bをそれぞれ上段の二連筒状織物1の筒状織物2a、2bにベルト13で結束しており、四本の筒状織物2が纏まった状態で連結されている。またこの構造においても、二連筒状織物1を三段以上に重ねて連結することもできる。
【0039】
これらの多連筒状織物構造体12においては、個々の筒状織物2は隣接する筒状織物2に対して接結され又は結束されてはいるが、それぞれ独立した筒状織物としての構造を有している。
【0040】
従ってこれらの筒状織物2にそれぞれ内張りを施すことが可能であり、それによってそれぞれ独立したホースを複数連結した多連ホースとなる。そしてかかる多連ホースにおける個々のホースは、互いに連結されてはいるものの、それぞれ独立してホースとしての機能を有している。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明における多連筒状織物構造体12は、個々の筒状織物2に内張りを施すことにより多連ホースとして使用できるが、その多連筒状織物構造体12の用途は多連ホースのみに限られるものではなく、複数の筒状織物を使用する各種の用途においても使用することができる。
【0042】
例えば図9及び図10に示される多連筒状織物構造体12の各筒状織物2に内張りを施し、それらに圧縮空気を挿入して膨らませた状態でアーチ状に湾曲させることにより、イベント会場のアーチ型ゲートや、テントの支柱などとして使用することができる。これらの場合には、複数の筒状織物2が並列して連結されているので、アーチが倒れる方向には強い剛性を示し、安定したアーチを形成することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 二連筒状織物
2a、2b 筒状織物
3 接結部
4 たて糸
5 よこ糸
6 接結たて糸
7 非接結部
8 二層筒状織物
11 折り返し部
12 多連筒状織物構造体
13 ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に配置された複数のたて糸(4)に対してよこ糸(5)を螺旋状に織り込んでなる筒状織物(2a、2b)が二本並列され、当該二本の筒状織物(2a、2b)が互いに長さ方向に接結されていると共に、間欠的に接結されていない非接結部(7)を有することを特徴とする、二連筒状織物
【請求項2】
前記二本の筒状織物(2a、2b)のよこ糸(5)が、互いに逆方向の螺旋状に織り込まれていることを特徴とする、請求項1に記載の二連筒状織物
【請求項3】
前記二本の筒状織物(2a、2b)が、接結たて糸(6)により接結されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の二連筒状織物
【請求項4】
前記二本の筒状織物(2a、2b)が、互いに接近した複数箇所において、互いに長さ方向に接結されていることを特徴とする、請求項1、2又は3に記載の二連筒状織物
【請求項5】
環状に配置された複数のたて糸(4)に対してよこ糸(5)を螺旋状に織り込んでなる筒状織物(2a、2b)を内外二層に織成し、当該二層の筒状織物(2a、2b)を互いに長さ方向に接結すると共に、間欠的に接結しない非接結部(7)を形成し、前記二層のうちの外側の筒状織物(2a)の内外面を反転することにより内側の筒状織物(2b)を外側の筒状織物(2a)の外側に出し、二本の筒状織物(2a、2b)を並列せしめることを特徴とする、二連筒状織物の製造方法
【請求項6】
前記請求項1、2、3又は4に記載の二連筒状織物(1)を複数本並設し、当該二連筒状織物(1)における非接結部(7)において、隣接する二連筒状織物(1)における筒状織物(2a、2b)がベルト(13)で結束されていることを特徴とする、多連筒状織物構造体
【請求項7】
前記請求項6に記載の多連筒状織物構造体(12)の、各筒状織物(2a、2b)の内面に水密性の内張りを施してなることを特徴とする、多連ホース

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−189809(P2010−189809A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36409(P2009−36409)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【Fターム(参考)】