説明

二酸化炭素分離装置及びその方法

【課題】膜分離と吸収液を組み合わせて、コンパクトで二酸化炭素分離性能が高く、かつ、二酸化炭素吸収液の酸化劣化を防止することにより二酸化炭素吸収性能の低下を抑制した二酸化炭素分離装置及びその方法を提供する。
【解決手段】二酸化炭素選択分離膜3を備え被処理ガスが供給される二酸化炭素吸収器1と、疎水性膜4を備えた二酸化炭素分離器2と、前記二酸化炭素吸収器1と前記二酸化炭素分離器2との間を循環する二酸化炭素吸収液7と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化石燃料消費時に発生する二酸化炭素を分離・回収する二酸化炭素分離装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
気候変動問題は、現在、地球が直面している最も重大な事態の一つである。世界的に温暖化の傾向は特に1980年以降顕在化しており、二酸化炭素(CO2)の排出量と自然吸収量の収支を考えると、それほど遠くない将来には、地球全体での排出量を半分以下にしなければならないといわれている。
【0003】
現在、世界の一次エネルギーの8割が化石燃料で、化石燃料を燃焼させれば温室効果ガスの中心である二酸化炭素が発生する。そのため、化石燃料消費から排出する二酸化炭素を回収し、何らかの方法、例えば地中貯留という方式で大気に放出させずに貯留する技術、すなわち二酸化炭素の回収貯留技術(CCS:Carbon dioxide Capture and Storage)が注目されている。既存のCCS技術においては二酸化炭素分離回収にかかるコストが70%といわれており、低コスト(低エネルギー消費)での分離技術が求められている。
【0004】
二酸化炭素回収プロセスとしては例えば、図7に示す二酸化炭素回収システムが知られている(非特許文献1)。この二酸化炭素回収システムは、二酸化炭素吸収塔51、燃焼排ガス(被処理ガス)の供給口9、処理ガス(脱二酸化炭素燃焼排ガス)の排出口10、二酸化炭素分離済み吸収液26、二酸化炭素吸収済み吸収液7、二酸化炭素吸収済み吸収液移送ポンプ54、熱交換器55、吸収液再生塔52、再生加熱器56、還流ポンプ58、二酸化炭素分離器53、分離ガス(二酸化炭素)11、再生塔還流冷却器57から構成される。
【0005】
燃焼排ガスは供給口9から二酸化炭素吸収塔51に導入され、吸収塔51で燃焼排ガスは吸収液と向流接触させられ、燃焼排ガス中の二酸化炭素は吸収液により吸収除去され、脱二酸化炭素燃焼排ガスは上部へと向かい、排出口10から排出される。吸収塔51に供給される吸収液は二酸化炭素を吸収し、その吸収による反応熱のため、あるいは排ガスが有する顕熱によって、通常、供給される吸収液26よりも高温となり、吸収液移送ポンプ54により熱交換器55に送られて加熱され、吸収液再生塔52へ導かれる。
【0006】
再生された吸収液の温度調節は熱交換器55或いは必要に応じて熱交換器55と吸収塔51の吸収液供給口の間に設けられる冷却器59により行うことができる。再生塔52では、再生加熱器56による加熱により吸収液が再生され、熱交換器55及び必要に応じて冷却器59により冷却されて吸収塔51へ戻される。
【0007】
吸収液再生塔52の上部において、吸収液から分離された二酸化炭素は還流水と接触し、再生塔還流冷却器57により冷却され、二酸化炭素分離器53にて二酸化炭素に同伴した水蒸気が凝縮した還流水と分離され、分離ガス(二酸化炭素)は二酸化炭素回収工程へ導かれる。
【0008】
このようなシステムに用いられる二酸化炭素吸収液として、アミン化合物が数多く用いられている。例えば、特許文献1には立体障害アミンおよびスルホラン等の非水溶媒を含む酸性ガススクラッピング用組成物、立体障害第一モノアミノアルコールとして、2−アミノー2−メチルー1−プロパノール等を用いることが記載されている。
【0009】
また、特許文献2には、2−アミノー2−メチルー1−プロパノール、2−(メリルアミノ)−エタノール、2−(エチルアミノ)−エタノール、2−(ジエチルアミノ)−エタノール、2−(ヒドロキシエチル)−ピペリジンの群から選ばれるヒンダードアミンを代表例とする特定のヒンダードアミン水溶液を用いることが記載されている。
【0010】
また、特許文献3には、第2級アミン及び第3級アミンのそれぞれの濃度が10〜45重量%の範囲にあるアミン混合水溶液を用いることが記載されている。
【0011】
このように二酸化炭素吸収液として種々のアミン化合物を用いることが知られているが、これらはいずれも、吸収液と二酸化炭素を含む燃焼排ガスを直接接触させる方法により二酸化炭素を回収するものである。
【0012】
また、膜による分離と吸収液を組み合わせて、非処理ガス中の二酸化炭素を分離・回収するシステムも提案されている。
【0013】
例えば、特許文献4には、極性ガスを膜分離法によって連続的に分離する装置として、疎水性多孔質膜モジュール2基、極性ガスの吸収液、吸収液から極性ガスを放散させるキャリアガス及び極性ガスとキャリアガスを分離する分離膜モジュールを用い、疎水性多孔質膜1基を極性ガス吸収用の気液接触装置として利用し、極性ガスを含んだガスより極性ガスを吸収液に吸収分離し、疎水性多孔質膜の残る1基を極性ガスを吸収した溶液から極性ガスを放散させる気液接触器として使用し、放散部でキャリアガスを使用して極性ガスを吸収した溶液から極性ガスを放散させ、該ガスを分離膜モジュールを用いて極性ガスとキャリアガスを分離するように操作するシステムが開示されている。
【0014】
また、特許文献5には、化学吸収法の吸収工程において分離対象ガスを吸収液に吸収させる際に要するエネルギー、コストを低下させる目的で、膜モジュールからなる吸収装置の膜に対して一方の側に被分離ガスを導入し、他の側に吸収液を流し、膜を介して被分離ガス中の分離対象ガスを吸収液に吸収させ、吸収装置においてガスの流れと吸収液の流れの内少なくとも吸収液の流れを乱すようにし、分離対象ガスを吸収した液はポンプにより熱交換器を経由して再生塔に導入し、再生塔内では吸収液を加熱することにより分離対象ガスを放散させるとともに吸収液を再生し、放散した分離対象ガスは冷却して回収する一方、再生された吸収液は熱交換器を経由してポンプにより送り、冷却後に吸収装置に導入して循環使用する方法が開示されている。
【特許文献1】特開昭61−71819号公報
【特許文献2】特開平5−301023号公報
【特許文献3】特開平8−252430号公報
【特許文献4】特開平6−99018号公報
【特許文献5】特開2007−283267号公報
【非特許文献1】財団法人 地球環境産業技術研究機構「平成18年度 二酸化炭素固定化・有効利用技術等対策事業 低品位廃熱を利用する二酸化炭素分離回収技術開発 成果報告書」、平成19年3月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
図7に示された従来の二酸化炭素回収システムは、所定の二酸化炭素分離性能を維持するため、気液接触装置である吸収塔および再生塔内で気液接触部を十分に確保する必要があり、その結果、装置が大型化する課題がある。また、燃焼排ガスには二酸化炭素だけでなく、O、SOx、NOxが含まれている。吸収液と排ガスを直接接触すると、これらのO、SOx、NOxの存在により吸収液の性能低下、劣化が起こる課題がある。
【0016】
また、特許文献4に記載のシステムでは、疎水性多孔質膜を用いており、疎水性多孔質膜を介して吸収装置に供給されたガスの全成分が吸収液に接触することになり、燃焼排ガス中の二酸化炭素の分離に適用すると、燃焼排ガスに含有されるO、SOx、NOxにより吸収液の性能低下、劣化が起こる可能性がある。
【0017】
また、特許文献5に記載のシステムにおいても、疎水性多孔質膜を用いており、疎水性多孔質膜を介して吸収装置に供給されたガスの全成分が吸収液に接触することになり、燃焼排ガス中の二酸化炭素分離に適用すると、燃焼排ガスに含有されるO、SOx、NOxにより吸収液の性能低下、劣化が起こる可能性がある。
【0018】
本発明の目的は、上記課題を解決するために、膜分離と吸収液を組み合わせて、コンパクトで二酸化炭素分離性能が高く、かつ、二酸化炭素吸収液の酸化劣化を防止することにより二酸化炭素吸収性能の低下を抑制した二酸化炭素分離装置及びその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係る二酸化炭素分離装置及びその方法は、上記課題を解決するために、二酸化炭素選択分離膜を備え被処理ガスが供給される二酸化炭素吸収器と、疎水性膜を備えた二酸化炭素分離器と、前記二酸化炭素吸収器と前記二酸化炭素分離器との間を循環する二酸化炭素吸収液と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、コンパクトで二酸化炭素分離性能が高く、かつ、二酸化炭素吸収液の酸化劣化を防止することにより二酸化炭素吸収性能の低下を抑制した二酸化炭素分離装置及びその方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る二酸化炭素分離装置及びその方法の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る二酸化炭素分離装置のブロック図である。
この二酸化炭素分離装置は、内部に二酸化炭素選択分離膜3を備えた二酸化炭素吸収器1、内部に疎水性膜4を備えた二酸化炭素分離器2、二酸化炭素分離器2に供給する二酸化炭素吸収液の温度を制御する熱交換器5、及び二酸化炭素吸収器1に供給する二酸化炭素吸収液7の温度を制御する熱交換器6から構成される。
【0023】
二酸化炭素吸収器1の供給口9には、例えばボイラー燃焼排ガスのような処理対象ガス(被処理ガス)が供給され、二酸化炭素吸収器1の排出口10から処理済みのガスが排出される。
【0024】
二酸化炭素吸収器1に導入された二酸化炭素吸収液7は、二酸化炭素吸収器1内の二酸化炭素選択分離膜3で処理対象のガスから二酸化炭素を吸収した後、二酸化炭素吸収器1から排出され、熱交換器5で吸収液から二酸化炭素を放出しやすい温度に調整したのち、二酸化炭素分離器2に供給される。二酸化炭素分離器2では、疎水性膜4を透過して吸収液中の二酸化炭素が放出され、二酸化炭素分離器2のガスの排出口11から分離ガスが放出・回収される。
【0025】
一方、二酸化炭素吸収液7は二酸化炭素分離器2から排出され、熱交換機6で二酸化炭素を吸収しやすい温度に調整したのち、二酸化炭素吸収器1に戻される。このように二酸化炭素吸収液7は、熱交換機5、6を介して、二酸化炭素吸収器1と二酸化炭素分離器2の間を循環する。
【0026】
二酸化炭素吸収器1では、被処理ガスに含まれる二酸化炭素が二酸化炭素選択分離膜3を介して吸収液側に移動し、二酸化炭素吸収器1のガスの排出口10から排出される処理ガス中の二酸化炭素濃度は低減している。
【0027】
このように被処理ガス中の二酸化炭素は、二酸化炭素選択分離膜3の作用により選択的に分離膜を透過し吸収液に接触、吸収される。このため、吸収液に接触するガスは高二酸化炭素濃度となり、ガスから吸収液への二酸化炭素移動速度が増加し、二酸化炭素吸収器の小型化につながる。
【0028】
また、二酸化炭素吸収液は被処理ガスに含まれる酸素やSOx、NOxと直接接触することなく、被処理ガス中の二酸化炭素を吸収できるので、吸収液の酸化劣化や吸収性能の低下を抑制することができる。
【0029】
二酸化炭素吸収器1内に備えられた二酸化炭素選択分離膜3および二酸化炭素分離器に備えられた疎水性膜4として、非多孔質性の膜を用いることが望ましい。その材料として、ポリイミド、ポリエチレングリコール、アミン化合物、ゼオライト等を用いることができる。
【0030】
また、当該膜として中空糸膜を採用することで、単位体積あたりの気液接触面積を大きくすることができ、二酸化炭素吸収器1及び二酸化炭素分離器2の小型化が達成できる。
【0031】
なお、管状の中空糸膜を用いる場合、二酸化炭素吸収液を管内に、被処理ガスを管外に流すのが圧力損失の観点から望ましい。
【0032】
また、管状の中空糸膜を採用することで、特に二酸化炭素吸収器1において管内に流す吸収液の流速を大きくすることができ、二酸化炭素吸収速度及び吸収効率が向上することで二酸化炭素吸収器の高性能化及び小型化が可能となる。
【0033】
さらに、二酸化炭素吸収器1内での被処理ガスから二酸化炭素吸収液への二酸化炭素の移動は両相の温度差を駆動力とするため、被処理ガスと二酸化炭素吸収液を向流(二酸化炭素吸収液と処理対象ガスの流れの向きを逆にする)で接触させた方が並流(二酸化炭素吸収液と処理対象ガスの流れの向きを同じにする)で接触させるより吸収器全体でのガス相と液相の平均的な温度差が大きくなり、二酸化炭素吸収速度及び吸収効率が向上することで二酸化炭素吸収器の高性能化及び小型化が可能となる。
【0034】
また、二酸化炭素分離器2では、疎水性膜4を透過して吸収液中の二酸化炭素が放出されるが、二酸化炭素分離器2のガスの排出口を減圧系統に接続すれば吸収液からの二酸化炭素の放出がより促進される。
【0035】
本第1の実施形態に係る二酸化炭素分離装置によれば、二酸化炭素吸収器1に二酸化炭素選択透過膜3を、二酸化炭素分離器2に疎水性膜4を適用し、二酸化炭素吸収器1及び二酸化炭素分離器2間で吸収液を循環することにより、被処理ガスから二酸化炭素を効率的に分離することが可能となり、その結果、二酸化炭素分離性能が高く、コンパクトで、さらに二酸化炭素吸収液の酸化劣化を防止し、二酸化炭素吸収性能の低下を抑制することができる二酸化炭素分離装置又はその方法を提供することができる。
【0036】
(第2の実施形態)
図2を用いて第2の実施形態に係る二酸化炭素分離装置を説明する。なお、第1の実施形態と重複する部分は、同一の符号を用い、説明は省略する。
本第2の実施形態に係る二酸化炭素分離装置は、2基の二酸化炭素吸収器を直列に配置したことを特徴とする。
【0037】
第1の二酸化炭素吸収器1aに二酸化炭素分離器2から供給された二酸化炭素吸収液7を導入し、第1の二酸化炭素吸収器1aから排出された二酸化炭素吸収液35を第2の二酸化炭素吸収器1bに供給し、第2の二酸化炭素吸収器1bから排出された二酸化炭素吸収液7を二酸化炭素分離器2に供給する。
【0038】
被処理ガスは、第2の二酸化炭素吸収器1bのガスの供給口9−2に供給され、ガス排出口10−2から排出されたガス34を第1の二酸化炭素吸収器1aのガスの供給口9−1に供給し、ガス排出ロ10−1から処理ガスが排出される。
【0039】
なお、本第2の実施形態では二酸化炭素吸収器が2基設けられた例を説明したが、二酸化炭素吸収液のライン、被処理ガスのラインをそれぞれ順次接続することにより3基以上の構成としてもよい。
【0040】
本第2の実施形態によれば、二酸化炭素吸収器を直列に複数基配列することにより、二酸化炭素分離性能がさらに向上し、被処理ガスから二酸化炭素を高効率で分離することができる。また、複数の二酸化炭素吸収器は高さ方向にも平面方向にも自由にレイアウトすることが可能なので、二酸化炭素分離装置全体のコンパクト化を図ることができる。
【0041】
(第3の実施形態)
図3を用いて第3の実施形態に係る二酸化炭素分離装置を説明する。なお、第1及び第2の実施形態と重複する部分の説明は省略する。
【0042】
本第3の実施形態に係る二酸化炭素分離装置は、2基の二酸化炭素吸収器を並列に配置したもので、また、二酸化炭素吸収液と処理対象ガスの流量比に対応してラインを組み替えることを特徴とする。
【0043】
二酸化炭素吸収液7の流量を比較的多くする操作条件に対しては、各二酸化炭素吸収器1a、1bの二酸化炭素吸収液7の供給口9−1、9−2に二酸化炭素分離器11から排出された二酸化炭素吸収液7を分岐して供給し、各二酸化炭素吸収器1a、1bの二酸化炭素吸収液の排出口から排出された二酸化炭素吸収液を合流して二酸化炭素分離器11に供給する。
【0044】
一方、二酸化炭素吸収液の流量が小さく被処理ガスの流量が大きい操作条件に対しては、各二酸化炭素吸収器1a、1bのガスの供給口9−1、9−2に被処理ガスを分岐して供給し、各二酸化炭素吸収器1a、1bで被処理ガスを処理する。
【0045】
本第3の実施形態に係る二酸化炭素分離装置を具体的に説明する。
図3において、二酸化炭素吸収器1a、1bの二酸化炭素吸収液の供給口9−1、9−2に、二酸化炭素分離器2から排出された二酸化炭素吸収液7を分岐して供給し、二酸化炭素吸収器1a、1bから排出された二酸化炭素吸収液7を合流して二酸化炭素分離器2に供給する。
【0046】
二酸化炭素吸収器1a、1bのガス供給口9−1、9−2に被処理ガスを分岐配管41、42をとおして二酸化炭素吸収器1a、1bに供給する。処理ガスは排出口10−1及び排出口10−2を介して合流配管43,44から排出される。
【0047】
二酸化炭素吸収器1a、1bに出入する二酸化炭素吸収液の分岐配管、及び被処理ガスの分岐配管には開閉弁(図示せず)が設けられ、二酸化炭素吸収液7の流量及び被処理ガスの流量に応じて、適宜、開閉弁を操作して、操作条件に合わせて二酸化炭素分離装置を運転操作する。
なお、本第3の実施形態では二酸化炭素吸収器を2基設けた例を説明したが3基以上の構成としてもよい。
【0048】
本第3の実施形態によれば、二酸化炭素吸収器を並列に複数基配置したことにより、二酸化炭素吸収液の流量及び被処理ガスの流量に応じた運転が可能となるとともに、各二酸化炭素吸収器内でのガス側、吸収液側それぞれの濃度変化が小さくなり二酸化炭素吸収器の制御も容易となる。また、複数の二酸化炭素吸収器は高さ方向にも平面方向にも自由にレイアウトすることが可能なので、二酸化炭素分離装置全体のコンパクト化を図ることができる。
【0049】
また、本第3の実施形態は二酸化炭素吸収器を複数基並列で配置した例を示したが、第2の実施形態のように直列に二酸化炭素吸収器を複数基配置した群を各々並列で配置することによって、上述した本第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0050】
(第4の実施形態)
図4を用いて第4の実施形態に係る二酸化炭素分離装置を説明する。なお、第1乃至第3の実施形態と重複する部分の説明は省略する。
本第4の実施形態は、二酸化炭素吸収液7の循環路に溶質分離器を設けたことを特徴とする。
【0051】
図4において、二酸化炭素吸収器1と二酸化炭素分離器2間の移送経路上に二酸化炭素吸収液に含まれる溶質を分離する機能を有する溶質分離器21を設け、溶質分離器21から排出される濃縮吸収液24を二酸化炭素分離器2に供給し、溶質分離器21から排出される溶質分離吸収液25を二酸化炭素分離器2から排出される二酸化炭素分離済みの吸収液8と合流させて二酸化炭素吸収液26を二酸化炭素吸収器1に供給する。
【0052】
溶質分離器21としては、逆浸透膜やパーベーパレーション膜といった膜を用いた装置、蒸発濃縮のような熱を用いた装置が適用できる。本第4の実施形態では、溶質分離器21として逆浸透膜を用いた例を説明する。
【0053】
二酸化炭素吸収器1から排出された二酸化炭素吸収液7を加圧ポンプ22で昇圧して、逆浸透膜装置からなる溶質分離器21に供給する。二酸化炭素吸収液の圧力は二酸化炭素分離器2の下流に設けられた圧力調整器23で制御される。溶質分離器21では溶媒が逆浸透膜を透過して溶質分離吸収液25となって排出される。一方、二酸化炭素などの溶質は逆浸透膜を透過せず、濃縮吸収液24として排出される。
【0054】
これにより、溶質分離器21で二酸化炭素吸収液7から一部の溶媒が分離されるため二酸化炭素分離器2に供給される二酸化炭素吸収液7の量が減り、二酸化炭素吸収液7から二酸化炭素を分離する際に与える熱量を低減することができる。
【0055】
さらに、溶質分離器21から排出される濃縮吸収液24は加圧状態を保持したままの状態で二酸化炭素分離器2に供給される。そのため、二酸化炭素分離器2では疎水性膜4内部の二酸化炭素吸収液と疎水性膜4の外部のガス相との圧力差を大きくとることができ、二酸化炭素吸収液からの二酸化炭素の放出が促進される。
【0056】
本第4の実施形態によれば、二酸化炭素吸収器と二酸化炭素分離器間の移送経路上に溶質分離器を設けたことにより、二酸化炭素分離器における二酸化炭素の分離効率をさらに向上させることができる。
【0057】
(第5の実施形態)
図5を用いて第5の実施形態に係る二酸化炭素分離装置を説明する。
本実施形態は、溶質分離器を2基直列に配置したことを特徴とする。
【0058】
図5において、二酸化炭素吸収器1から排出された二酸化炭素吸収液7を溶質分離器21aに供給し、溶質分離器21aから排出される濃縮吸収液24を溶質分離器21bに供給し、溶質分離器21bから排出される濃縮吸収液28を二酸化炭素分離器2に供給し、溶質分離器21a、21bから排出される溶質分離吸収液25を二酸化炭素分離器2から排出される二酸化炭素分離済みの二酸化炭素吸収液7と合流させて、二酸化炭素吸収器1に供給する。
なお、上記説明では溶質分離器を2基設けた例を説明したが3基以上の構成としてもよい。
【0059】
本第5の実施形態によれば、溶質分離器を複数基設けたことにより、溶質分離性能をさらに高くすることができるので、二酸化炭素分離器における二酸化炭素の分離効率がさらに向上させることができる。また、溶質分離器を小型ユニット化し、処理量に対応してユニット数を増減することが可能で、装置レイアウトの自由度が増し、二酸化炭素分離装置全体のコンパクト化を図ることができる。
【0060】
(第6の実施形態)
図6を用いて第6の実施形態に係る二酸化炭素分離装置を説明する。
第6の実施形態では、逆浸透膜装置からなる溶質分離器21の溶質分離吸収液側に二酸化炭素分離器2から排出された二酸化炭素吸収液7を供給し、溶質分離吸収液とともに二酸化炭素吸収器1に供給する。
【0061】
溶質分離器21の逆浸透膜の溶媒が透過する側に二酸化炭素分離済みの吸収液7を流すことにより、逆浸透膜の溶媒透過側の汚れなどの付着を防止し、透過流束を確保することができる。
本第6の実施形態によれば、溶質分離器21に二酸化炭素分離器1から排出された二酸化炭素吸収液7を供給することにより、溶質分離器21の溶質分離性能をさらに向上させることができる。
【0062】
以上説明したように、本発明の第1乃至第6の実施形態によれば、膜分離と吸収液の組合せで、二酸化炭素吸収器に二酸化炭素選択透過膜、二酸化炭素分離器に疎水膜を適用し、二酸化炭素吸収器、二酸化炭素分離器間で吸収液を循環、二酸化炭素吸収器から二酸化炭素分離器に至る二酸化炭素吸収液の移送経路上に二酸化炭素吸収液に含まれる溶質を分離する特性を持つ溶質分離器を設けることにより、処理対象のガスから効率的に二酸化炭素を分離することが可能となり、以下の効果が得られる。
【0063】
(1)二酸化炭素分離性能が高くてコンパクトな二酸化炭素分離装置を実現できる。
(2)二酸化炭素吸収液の酸化劣化を防止し、二酸化炭素吸収性能の低下を抑制した二酸化炭素の回収方法を実現できる。
(3)二酸化炭素分離器に供給される二酸化炭素吸収液の量が減り、二酸化炭素吸収液から二酸化炭素を分離する際に与える熱量を低減できる。
【0064】
(4)二酸化炭素吸収液からの二酸化炭素の放出が促進され、二酸化炭素分離器を小型化することができる。
(5)溶質分離器を小型ユニット化し処理量に対応してユニット数を増減することで、高さ方向にも平面方向にもレイアウト可能なので、設置面積や高さの制約を受けても自由度の高い装置レイアウトが可能となる。
【0065】
なお、本実施形態については個別の特徴を各々説明したが、各実施形態を適宜組み合わせて実施することによって各々の効果を得ることができるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る二酸化炭素分離装置の全体構成図。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る二酸化炭素分離装置の構成図。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る二酸化炭素分離装置の構成図。
【図4】本発明の第4の実施形態に係る二酸化炭素分離装置の構成図。
【図5】本発明の第5の実施形態に係る二酸化炭素分離装置の構成図。
【図6】本発明の第6の実施形態に係る二酸化炭素分離装置の構成図。
【図7】従来の二酸化炭素分離装置の全体構成図。
【符号の説明】
【0067】
1,1a,1b…二酸化炭素吸収器、2…二酸化炭素分離器、3…二酸化炭素選択分離膜、4…疎水性膜、5,6…熱交換器、7,26…二酸化炭素吸収液、9,9−1,9−2…供給口、10,10−1,10−2…排出口、11…排出口、21,21a,21b…溶質分離器、22…加圧ポンプ、23…圧力調整器、24…濃縮吸収液、25…溶質分離吸収液、26…供給吸収液、28…濃縮吸収液、29…溶質分離吸収液、43,44…配管、51…吸収塔、52…再生塔、53…分離器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素選択分離膜を備え被処理ガスが供給される二酸化炭素吸収器と、疎水性膜を備えた二酸化炭素分離器と、前記二酸化炭素吸収器と前記二酸化炭素分離器との間を循環する二酸化炭素吸収液と、を有することを特徴とする二酸化炭素分離装置。
【請求項2】
前記二酸化炭素吸収器に供給する二酸化炭素吸収液の温度を制御する熱交換器と、前記二酸化炭素分離器に供給する二酸化炭素吸収液の温度を制御する熱交換器を、さらに具備することを特徴とすると請求項1記載の二酸化炭素分離装置。
【請求項3】
前記炭素選択分離膜及び前記疎水性膜が中空糸膜または管状膜であることを特徴とする請求項1又は2記載の二酸化炭素分離装置。
【請求項4】
前記中空糸膜または管状膜が非多孔質性であることを特徴とする請求項3記載の二酸化炭素分離装置。
【請求項5】
前記中空糸膜又は管状膜の内部に吸収液を供給し、外部に被処理ガスを供給することを特徴とする請求項3又は4記載の二酸化炭素分離装置。
【請求項6】
前記二酸化炭素吸収器内の二酸化炭素吸収液の流れの向きと被処理ガスの流れの向きが向流であることを特徴とする請求項1乃至5いずれか1項に記載の二酸化炭素分離装置。
【請求項7】
前記二酸化炭素吸収器を複数基直列に配置したことを特徴とする請求項1乃至6いずれか1項に記載の二酸化炭素分離装置。
【請求項8】
前記二酸化炭素吸収器を複数基並列に配置したことを特徴とする請求項1乃至7いずれか1項に記載の二酸化炭素分離装置。
【請求項9】
前記二酸化炭素吸収器と前記二酸化炭素分離器との間の循環路に溶質分離器を設け、前記溶質分離器から排出される溶質分離吸収液を前記二酸化炭素吸収器に供給することを特徴とする請求項1乃至8いずれか1項に記載の二酸化炭素分離装置。
【請求項10】
前記溶質分離器を複数基直列に配置したことを特徴とする請求項9記載の二酸化炭素分離装置。
【請求項11】
前記溶質分離器が逆浸透膜を利用した装置であることを特徴とする請求項9又は10記載の二酸化炭素分離装置。
【請求項12】
前記溶質分離器の溶質分離吸収液側に二酸化炭素分離器から排出された二酸化炭素吸収液を供給することを特徴とする請求項9乃至11いずれか1項に記載の二酸化炭素分離装置。
【請求項13】
前記請求項1乃至12記載の二酸化炭素分離装置を用いた二酸化炭素分離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−5509(P2010−5509A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165863(P2008−165863)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】