説明

二重化システムにおける制御ユニット及び制御方法

【課題】 共有メモリ制御の高速化が可能な二重化システムにおける制御ユニット及び制御方法を提供すること。
【解決手段】 第一の制御ユニット10がアクティブ系、第二の制御ユニット20がスタンバイ系として動作する場合、コントローラ14は、第二の制御ユニット20へ転送すべきデータをFIFO方式のバッファメモリ16に出力する。バッファメモリ16は、入力されたデータを一時的に記憶し、第二の制御ユニット20へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方がアクティブ系、他方がスタンバイ系として動作し、各々共有化されたメモリを有する二つの制御ユニットを備えた二重化システムにおける制御ユニット及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、装置のMTBF(Mean Time Between Failure:平均故障間隔)の値を大きくし、その装置の信頼性を向上させるために、一方がアクティブ系、他方がスタンバイ系として動作する二つの制御ユニットを有する二重化システムがあった。
【0003】
二重化システムでは、一方のアクティブ系として動作している制御ユニットに異常が発生した場合、他方の制御ユニットがアクティブ系として動作することで、装置の信頼性を高めるものである。そして、このような二重化システムでは、各々の制御ユニットが共有メモリを有し、これらの共有メモリを同期させておく必要がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図5は、従来の二重化システムにおける共有メモリシステムの概略構成を示すブロック図である。図5に示すように、二重化システムは、制御ユニット110、120を備える。これらの制御ユニット110、120は、それぞれアクティブ系、スタンバイ系で動作するものとする。
【0005】
図5に示すように、制御ユニット110は、CPU112と、コントローラ114と、メモリ118とを備え、制御ユニット120は、コントローラ124と、CPU126と、メモリ128とを備える。
【0006】
このような共有メモリシステムは、スタンバイ系起動時等に、アクティブ系の制御ユニットのメモリに記憶されているデータをスタンバイ系の制御ユニットのメモリに転送する機能(以下、「合せ込み機能」という)、また通常運用時等にアクティブ系の制御ユニットのメモリヘの書き込みと同じ内容をスタンバイ系の制御ユニットのメモリへ書き込む機能(以下、「同時書き込み機能」)を実行することによって、アクティブ系及びスタンバイ系のメモリに記憶されている内容を同期させている。
【0007】
「合わせこみ機能」では、信号経路C32で示されるように、コントローラ114が、メモリ118に記憶されているデータをデータバス130を介して読み出し、データ転送バス131を経由してスタンバイ系の制御ユニット120のコントローラ124へ送信する。制御ユニット120のコントローラ124は、受信したデータをメモリ128へデータバス140を経由してメモリ128へ書き込む。これにより、メモリ118及びメモリ128が記憶している内容の同期を取ることができる。
【0008】
「同時書込み機能」では、信号経路C30にて示されるように、コントローラ114が、CPU112によって演算処理されたデータをデータバス137を介して受信し、データバス130を介してメモリ118に受信したデータを書き込む。更に、コントローラ114は、受信したデータを、データ転送バス131を介してスタンバイ系の制御ユニット120のコントローラ124へ送信する。制御ユニット120のコントローラ124は、受信したデータをメモリ128へデータバス140を経由してメモリ128へ書き込む。このように、アクティブ系の制御ユニット110のCPU112によって演算処理されたデータを、メモリ118及びメモリ128へ同時に書き込むことにより、メモリ118及びメモリ128が記憶している内容の同期を取ることができる。
【0009】
図6は、従来のハンドシェイク型共有メモリシステムを説明するためのブロック図である。図5と重複する部分については同一の符号を付す。このシステムの高速化共有メモリ冗長システムは、「合わせこみ機能」又は「同時書き込み機能」による動作時、アクティブ系の制御ユニット110のコントローラ114は、スタンバイ系の制御ユニットのコントローラ124へ向けてデータ送信要求141を出力し、転送すべきデータをスタンバイ系の制御ユニット120へ転送する。
【0010】
スタンバイ系の制御ユニット120のコントローラ124は、メモリ128へのデータ書き込みが完了すると、アクティブ系の制御ユニット110へ受信完了通知143を送信する。アクティブ系の制御ユニット110のコントローラ114は、受信完了通知を受信すると、CPU112に送信完了通知144を送信する。
【0011】
ここで、CPU112は、「合わせこみ機能」や「同時書き込み機能」により、スタンバイ系へデータを転送しているときには、コントローラ114の指示に基づき、待機状態となり、次の処理へ移行せず、送信完了通知144を受けてからウェイトが解除されて、次の処理を行う。このようにして、データ転送中にCPU112に対して、完全にデータ送信が終了するまでウェイトをかけることにより、メモリ118及び128に記憶されるデータの同期を確保している。
【特許文献1】特開2002−63047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来の二重化システムにあっては、データの送信確認が取れるまでCPUを待機状態にすることでシステムの信頼性を確保するものであるため、待機状態におけるCPU動作のウェイト数が増加することにより、CPUの処理量が減少してしまうといった事情があった。更に、スタンバイ系カードヘのデータ転送には、転送データの信頼性を上げるために転送時間がかかるため、データ転送時のメモリアクセス速度が極端に遅くなってしまう、といった事情があった。
【0013】
本発明は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであって、共有メモリ制御の高速化が可能な二重化システムにおける制御ユニット及び制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の制御ユニットは、一方がアクティブ系、他方がスタンバイ系として動作し、各々共有化されたメモリを有する二つの制御ユニットを備えた二重化システムにおける制御ユニットであって、自系がアクティブ系であるときに演算処理を行う演算処理手段と、前記演算処理手段から出力されたデータを記憶する記憶手段と、前記演算処理手段から出力された演算データ及び前記記憶手段に記憶されている記憶データのうち、他系の制御ユニットへ転送すべきデータを出力する制御手段と、前記制御手段から出力されたデータを一時的に記憶し、前記他系の制御ユニットへ出力するバッファ手段と、を備える。
【0015】
この構成により、演算処理手段の動作のウェイトを極力発生させないで共有メモリへの書き込み動作を行うことができるので、共有メモリの制御の高速化を図ることができる。
【0016】
また、本発明の制御ユニットは、前記バッファ手段の出力側に設けられ、前記他系の制御ユニットとの通信の方向及び接続状態のいずれか少なくとも一方を切り替える接続手段と、前記接続手段の切替時に所定のガードタイムを設けて制御する切替制御手段を更に備える。
【0017】
この構成により、アクティブ系からスタンバイ系に転送すべきデータの欠落が発生しないようにデータの送受信を行うことができる。
【0018】
また、本発明の制御ユニットは、前記制御手段の動作モードを制御する動作モード制御手段を更に備え、前記動作モードは、前記記憶手段に記憶されている記憶データを前記バッファ手段を介して前記他系の制御ユニットへ転送する第一の動作モードと、前記演算処理手段からの演算データを、前記記憶手段と、前記バッファを介して前記他系の制御ユニットとに転送する第二の動作モードと、を有し、前記制御手段は、前記第一の動作モード及び前記第二の動作モードの競合が発生した場合に、前記第一の動作モードによる動作を待機して前記第二の動作モードによる動作を行い、前記第二の動作モードの終了後に前記第一の動作モードによる動作を行う。
【0019】
この構成により、メモリへのデータ書き込みの競合が生じた場合において、適切なデータ書き込みを行うことができる。
【0020】
また、本発明の制御ユニットは、前記制御手段の動作モードを制御する動作モード制御手段を更に備え、前記動作モードは、前記記憶手段に記憶されている記憶データを前記バッファ手段を介して前記他系の制御ユニットへ転送する第一の動作モードと、前記演算処理手段からの演算データを、前記記憶手段と、前記バッファを介して前記他系の制御ユニットとに転送する第二の動作モードと、を有し、前記制御手段は、前記第一の動作モード及び前記第二の動作モードが競合することにより、前記記憶手段における同じ記憶領域へのアクセスが同時に発生した場合に、前記第一の動作モードによる動作を待機して前記第二の動作モードによる動作を行い、前記第二の動作モードの終了後に前記第一の動作モードによる動作を行う。
【0021】
この構成により、メモリへのデータ書き込みの競合が生じた場合において、効率よく適切なデータ書き込みを行うことができる。
【0022】
また、本発明の制御ユニットは、前記制御手段は前記記憶手段に記憶されている記憶データに対して誤り訂正符号検査を実行し、前記動作モード制御手段は、前記誤り訂正符号検査により誤りが検出された場合に、前記制御手段を前記第一の動作モードで動作させる。
【0023】
この構成により、記憶されているデータに誤りが検出された場合にデータの同期を取り直すので、記憶されているデータの信頼性を向上させることができる。
【0024】
本発明の基地局装置は、複数の移動端末装置と通信が可能な移動体通信網における基地局装置であって、前記移動端末装置と無線通信を行う無線通信手段と、上記の制御ユニットを有する二重化システムと、を備え、前記制御ユニットのうち、アクティブ系で動作している制御ユニットは、前記無線通信手段によって通信を行う移動端末装置に関連したデータを処理する。
【0025】
この構成により、高速で処理可能な二重化システムを有するので、基地局装置一台で収容可能な移動端末装置の数を増加させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、共有メモリ制御の高速化が可能な二重化システムにおける制御ユニット及び制御方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る二重化システムの制御ユニットの概略構成を示すブロック図である。図1に示すように、第1の実施形態の二重化システムは、第一の制御ユニット10及び第二の制御ユニット20を備える。本実施形態では、第一の制御ユニット10はアクティブ系、第二の制御ユニット20はスタンバイ系で動作するものとする。
【0028】
第一の制御ユニット10は、CPU12と、コントローラ14と、バッファメモリ16と、メモリ18とを備える。また、第二の制御ユニット20は、バッファメモリ22と、コントローラ24と、CPU26と、メモリ28とを備える。本実施形態の二重化システムにおいて、メモリ18とメモリ28とに記憶されているデータの同期を取ることにより、共有メモリシステムとして動作する。
【0029】
次に、本実施形態の二重化システムの動作について説明する。まず、第二の制御ユニット20の起動時等において行われる「合わせこみ機能」の動作について説明する。この合わせこみ機能による信号の経路は、図1における信号経路C2で示される。
【0030】
コントローラ14は、データバス30を経由してデータをメモリ18から読み出し、読み出したデータをバッファメモリ書込み制御バス32を経由してバッファメモリ16に出力する。バッファメモリ16は、FIFO(First-In First-Out)方式で一時的に蓄積記憶し、バッファメモリ16からデータ転送バス34を経由して、第二の制御ユニット20へ出力する。
【0031】
第二の制御ユニット20において、第一の制御ユニット10から出力されたデータは、FIFO方式のバッファメモリ22でいったん蓄積記憶し、制御バス36を経由し、コントローラ24へ出力する。コントローラ24は、バッファメモリ22から出力されたデータをメモリ28に書き込む。
【0032】
このようにして、第一の制御ユニット10のメモリ18に記憶されているデータを第二の制御ユニット20のメモリ28に転送することによりメモリの同期化を図ることができる。
【0033】
次に、第二の制御ユニット20の通常運用時等において行われる「同時書き込み機能」の動作について説明する。この同時書き込み機能による信号の経路は、図1における信号経路C1で示される。
【0034】
CPU12は、コントローラ14からの指示に従って、演算処理結果のデータを出力する。コントローラ14は、データバス37を経由してCPU12からのデータを受信すると、データバス30を介してメモリ18に受信したデータを書き込むと共に、バッファメモリ書込み制御バス32を経由してバッファメモリ16に出力する。
【0035】
バッファメモリ16は、FIFO(First-In First-Out)方式で一時的に蓄積記憶し、バッファメモリ16からデータ転送バス34を経由して、第二の制御ユニット20へ出力する。第二の制御ユニット20での動作は、「合わせこみ機能」時の動作と同様である。
【0036】
また、コントローラ14は、バッファメモリ16にデータの転送を終了すると、制御バス44を介してCPU12に送信終了を通知し、CPU12の待機状態を解除する。これにより、第二の制御ユニット20からの送信完了通知を待たずにCPU12の処理を開始するので、共有メモリ制御を高速化できると共に、CPUにかけられる動作のウェイト数が減少するので、制御ユニットの処理能力を向上することができる。
【0037】
このような本発明の第1の実施形態に係る二重化システムによれば、CPUの動作のウェイトを極力発生させないで共有メモリへの書き込み動作を行うので、共有メモリの制御の高速化を図ると共に、CPUの処理能力を向上させることができる。
【0038】
特に、移動体通信網における基地局装置では、複数の移動体端末装置との通信を行うにあたり、高い信頼性が求められるため、通常、その制御系として二重化システムが用いられる。
【0039】
このような基地局装置に本実施形態の二重化システムを用いることで、共有メモリの制御の高速化により、CPUの処理能力が向上するので、基地局装置一台で収容可能な移動端末装置の数を増加させることができる。なお、本実施形態の二重化システムが基地局装置に用いられた場合、アクティブ系で動作している制御ユニットは、前記無線通信手段によって通信を行う移動端末装置に関連したデータを処理する。
【0040】
また、この実施形態において、コントローラ14又は24は、バッファメモリ18及びメモリ28の内容が欠落、データ誤り、等のデータ破壊を生じないようにECC(Error Correcting Code:誤り訂正符号、以下ECCと称す)検査を実行してもよい。その結果、誤りが検出された場合は、「合わせこみ機能」を動作させ、同期を取り直してもよい。
【0041】
(第2の実施形態)
図2は、本発明の第2の実施形態に係る二重化システムの制御ユニットの概略構成を示すブロック図である。同図において、第1の実施形態で説明した図1と重複する部分には同一の符号を付す。
【0042】
図2に示すように、本実施形態の第一の制御ユニット10は、バッファメモリ16の第二の制御ユニット20側に設けられたゲートスイッチ56と、ゲートスイッチ56を制御するガードタイム制御部52とを備える。また、第二の制御ユニット20は、バッファメモリ16の第一の制御ユニット10側に設けられたゲートスイッチ54と、ゲートスイッチ54を制御するガードタイム制御部50とを備える。
【0043】
ガードタイム制御部50、52は互いにタイミングの同期を取って、それぞれゲートスイッチ56、54の切替を制御する。そして、そのゲートスイッチ56、54の切替時に所定のガードタイムを設けて制御するものである。
【0044】
このような第2の実施形態に係る二重化システムによれば、バッファメモリ16に蓄積されたデータを確実に送信するようにガードタイムを設けて制御ユニットを接続するので、確実にデータの転送を行うことが可能となり、送信データの欠落が発生しないように情報データの送受信の同期をとることができる。
【0045】
(第3の実施形態)
図3は、本発明の第3の実施形態に係る二重化システムの制御ユニットの概略構成を示すブロック図であり、図4は、本発明の第3の実施形態に係る二重化システムの動作を説明するブロック図である。図1と重複する部分については同一の符号を付す。また、図3及び図4では、制御ユニット10のみを示しているが、他方の制御ユニット(図1における制御ユニット20)も同様の構成を有するものとする。また、本実施形態では、制御ユニット10がアクティブ系、制御ユニット20がスタンバイ系として動作する場合について説明する。
【0046】
図3に示すように、第一の制御ユニット10は、合わせこみ制御部15と、コントローラ14及びメモリ制御部62から入力されるデータを一時的に記憶して出力するバッファメモリ60と、メモリ18の書き込み/読み出し制御を行うメモリ制御部62とを備える。
【0047】
コントローラ14は、CPU12からのライト要求(CPU12→メモリ18及びバッファメモリ16)、CPU12からのリード要求(CPU12→メモリ18→CPU12)、スタンバイ系の制御ユニット20のバッファメモリ22(図1参照)からのライト要求(バッファメモリ22→メモリ18)、合わせ込み制御部15からのリード要求(合わせ込み制御部15→メモリ18→バッファメモリ16)、のそれぞれの要求を調停する。
【0048】
バッファメモリ60は、FIFO方式で一時蓄積するものであり、複数のデータを連続挿入することが可能な構成を有する。
【0049】
合わせ込み制御部15は、アクティブ系のデータをスタンバイ系にコピーする際に、スタンバイ系からの合わせ込み開始の要求を受け付ける。そして、合わせ込み開始の要求を受けると、単位サイズ(例えば、32バイト)分のデータをアクティブ系メモリからリードし、リードしたデータを他系送信バッファメモリ(図3のアクティブ系のユニットの場合はバッファメモリ16)に転送するようにリクエストを出す。このリクエストは、メモリ全領域を読み出すように出し続けられる。
【0050】
まず、図3を用いて、同時書き込み時の制御について説明する。「同時書込み機能」時には、CPU12から出力されたデータは、コントローラ14に入力され、バッファメモリ16を介してスタンバイ系の第二の制御ユニット20へ送信される(信号経路C10)。また、コントローラ14に入力されたデータは、バッファメモリ60、メモリ制御部62を介してメモリ18に書込まれる(以下、自系書き込みという)(信号経路C12)。
【0051】
ところで、この「同時書込み機能」を実行中に、「合わせこみ機能」の実行する必要が生じた場合、すなわち、「同時書込み機能」と「合わせこみ機能」が競合した場合、その順序によっては、アクティブ系とスタンバイ系におけるメモリに記憶されたデータに不一致が生じてしまう場合がある。
【0052】
この「同時書込み機能」と「合わせこみ機能」とが競合した場合について、図7及び図8を参照して説明する。図7は、「同時書込み機能」と「合わせこみ機能」とが競合した場合によりアクティブ系とスタンバイ系とのメモリ内容に不一致が生じる場合を示す説明図である。
【0053】
上述したように、バッファメモリ60は、複数のデータ(メモリライトリクエスト)を連続挿入することが可能な構成を有しており、メモリ制御部62は連続挿入されたデータを挿入された順に処理する。なお、この構成により、スタンバイ系の制御ユニットのバッファメモリ22からのライトにおいて、メモリ18における書き込み終了を待たずに次の処理を行うことができるので、CPU12からのウェイトを極力減らすことができる。
【0054】
ここで、ライトとリードが競合した場合、例えば、CPU12からのリードであればソフトウェア順序処理からリード完了前に同じアドレスへのライト要求は来ないため問題はない。一方、合わせ込み制御部15からのリード要求によるメモリリード中に同時書き込みが発生した場合、同時書き込みデータが先にバッファメモリ16に挿入し、その後にメモリからリードした古いデータがバッファメモリ16に挿入されると、スタンバイ系でのデータに不一致が生じる。
【0055】
合わせ込み動作時には、合わせ込み制御部15から、順次リード要求が出されるものであるが、例えば、図7に示すように、リード要求R2が出されている間に、CPU12からライト要求W1、W3が出され、コントローラ14に入力されるタイミングは、ライト要求W1、リード要求R2、ライト要求W3の順番である場合について説明する。
【0056】
なお、この例では、ライト要求W1はメモリ18のアドレスAに、ライト要求W3はアドレスBにそれぞれデータを書き込む要求、リード要求R2はメモリ18のアドレスBからデータを読み出す要求とする。すなわち、リード要求R2に対応するデータが記憶されているメモリ18のアドレスと、ライト要求W3によってデータが書き込まれるメモリ18のアドレスとが同じものとする。
【0057】
コントローラ14において、入力された要求を全てそのままの順序で処理した場合、ライト要求W1、リード要求R2、ライト要求W3の順序で、バッファメモリ60の入力側メモリ60Wに入力する。また、コントローラ14は、同時書き込み動作として、CPU12からのライト要求W1、W3をバッファメモリ16の出力側メモリ16Rに挿入する。
【0058】
メモリ18では、まず、バッファメモリ60から出力されてきたライト要求W1に従ってデータをアドレスAに書き込む。次に入力されたリード要求R2に従ってアドレスBからデータR2をバッファメモリ60の出力側メモリ60Rに出力する。そして、入力されたライト要求W3に従ってデータをアドレスBに書き込む。この結果、アクティブ系メモリ(メモリ18)に書込まれた内容は、アドレスAにW1が、アドレスBにW3が書込まれている。
【0059】
ところで、合わせ込み動作として、リード要求R2によって、メモリ18から読み出されたデータはバッファメモリ60を介してコントローラ14に入力される。なお、コントローラ14は、バッファメモリ16にライト要求W1、W3を出力した後にリード要求に応じたデータR2を受け取ることになるので、バッファメモリ16に入力されたデータはW1、W3、R2の順番となる。
【0060】
したがって、スタンバイ系のメモリ(メモリ28)には、データW1、W3、R2の順でデータが書き込まれるので、最終的にスタンバイ系のメモリ内容はアドレスAにW1が、アドレスBにはR2が記憶されることとなる。
【0061】
これにより、アドレスBおいて、アクティブ系にはデータW3が、スタンバイ系にはデータR2が記憶され、不一致が生じてしまっている。
【0062】
そこで、本実施形態の制御ユニットでは、「同時書込み機能」と「合わせこみ機能」が競合した場合、「同時書き込み機能」の実行をウェイトさせ、「合わせこみ機能」を優先して実行するように、コントローラ14により共有メモリ制御を行う。
【0063】
図4に示すように、コントローラ14は「同時書込み機能」と「合わせこみ機能」とが競合することを監視し、競合が検出されると、「合わせこみ機能」、すなわち、メモリ18からのデータを読み出してスタンバイ系(第2の制御ユニット)へ送信する動作(図4における信号経路20)を優先し、「同時書き込み機能」を待機させる。そして、コントローラ14は、バッファメモリ16へのデータ転送を終了すると、「同時書き込み機能」、すなわち、図3を用いて説明した自系書き込み及びスタンバイ系への送信を行う。
【0064】
図8は、「同時書込み機能」と「合わせこみ機能」とが競合した場合における本実施形態の制御ユニットの動作を示す説明図である。
【0065】
図8に示すように、コントローラ14に、CPU12からのライト要求W1、合わせ込み制御部15からのリード要求R2、CPU12からのライト要求W3の順に入力されると、まず、コントローラ14は、ライト要求W1をバッファメモリ60、16にそれぞれ出力し、その後、合わせ込み制御部15からのリード要求R2をバッファメモリ60に出力する。そして、リード要求R2が入力され、メモリ18からリード要求R2に対応したデータR2が読み出されるまでに入力されたライト要求W3については、その同時書き込み動作にウェイトをかけてバッファメモリ16、60に対する出力を待機する。
【0066】
その後、メモリ18からリード要求R2に対応したデータR2が読み出されると、バッファメモリ16に出力し、その後、ウェイトがかけられているライト要求W3を、バッファメモリ60、16にそれぞれ出力する。
【0067】
その結果、メモリ18において、W1書き込み、R2読み出し、W3書き込みの順で処理され、図8に示すように、アドレスAにはデータW1が、アドレスBにはデータW3が書き込まれた状態となる。
【0068】
そして、スタンバイ系メモリ28では、書き込み要求W1、読み出しデータR2、書き込み要求W3の順に処理されるので、スタンバイ系のメモリ28には、アドレスAにはデータW1が、アドレスBにはデータW3がそれぞれ書き込まれた状態となる。すなわち、アクティブ系のメモリ内容と一致した状態とすることができる。
【0069】
このような第3の実施形態に係る実施形態によれば、「合わせこみ機能」と、「同時書込み機能」との競合が発生しても、適切なデータ書き込みを行うことができる。
【0070】
なお、コントローラ14が、「合わせこみ機能」による読み出すメモリ18のアドレスと、「同時書き込み機能」により書き込むメモリ18のアドレスとが一致するか否か、すなわち、両機能によりアクセスするメモリ18のアドレス(図7、8の例ではリード要求R2のアドレスとCPU12から入力されたライト要求W3のアドレス)が一致するか否かを判定し、その場合にのみ、その同時書き込み動作にウェイトをかけてバッファメモリ16、60に対する出力を、待機する構成としてもよい。
【0071】
これにより、メモリ18にアクセスするアドレスが一致した場合に「合わせこみ機能」を優先して動作させることにより、「合わせこみ機能」と「同時書き込み機能」とが競合した場合にも、効率よく共有メモリの制御を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の二重化システムにおける制御ユニット及び制御方法は、共有メモリ制御の高速化が可能な効果を有し、移動体通信網における基地局装置等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る二重化システムの制御ユニットの概略構成を示すブロック図
【図2】本発明の第2の実施形態に係る二重化システムの制御ユニットの概略構成を示すブロック図
【図3】本発明の第3の実施形態に係る二重化システムの制御ユニットの概略構成を示すブロック図
【図4】本発明の第3の実施形態に係る二重化システムの動作を説明するブロック図
【図5】従来の二重化システムにおける共有メモリシステムの概略構成を示すブロック図
【図6】従来のハンドシェイク型共有メモリシステムを説明するためのブロック図
【図7】「同時書込み機能」と「合わせこみ機能」とが競合した場合によりアクティブ系とスタンバイ系とのメモリ内容に不一致が生じる場合を示す説明図
【図8】「同時書込み機能」と「合わせこみ機能」とが競合した場合における本発明の実施形態の制御ユニットの動作を示す説明図
【符号の説明】
【0074】
10 第一の制御ユニット
12 CPU
14 コントローラ
15 合わせ込み制御部
16 バッファメモリ
18 メモリ
20 第二の制御ユニット
22 バッファメモリ
24 コントローラ
26 CPU
28 メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方がアクティブ系、他方がスタンバイ系として動作し、各々共有化されたメモリを有する二つの制御ユニットを備えた二重化システムにおける制御ユニットであって、
自系がアクティブ系であるときに演算処理を行う演算処理手段と、
前記演算処理手段から出力されたデータを記憶する記憶手段と、
前記演算処理手段から出力された演算データ及び前記記憶手段に記憶されている記憶データのうち、他系の制御ユニットへ転送すべきデータを出力する制御手段と、
前記制御手段から出力されたデータを一時的に記憶し、前記他系の制御ユニットへ出力するバッファ手段と、
を備える制御ユニット。
【請求項2】
請求項1記載の制御ユニットであって、
前記バッファ手段の出力側に設けられ、前記他系の制御ユニットとの通信の方向及び接続状態のいずれか少なくとも一方を切り替える接続手段と、
前記接続手段の切替時に所定のガードタイムを設けて制御する切替制御手段を更に備える制御ユニット。
【請求項3】
請求項1又は2記載の制御ユニットであって、
前記制御手段の動作モードを制御する動作モード制御手段を更に備え、
前記動作モードは、前記記憶手段に記憶されている記憶データを前記バッファ手段を介して前記他系の制御ユニットへ転送する第一の動作モードと、前記演算処理手段からの演算データを、前記記憶手段と、前記バッファを介して前記他系の制御ユニットとに転送する第二の動作モードと、を有し、
前記制御手段は、前記第一の動作モード及び前記第二の動作モードの競合が発生した場合に、前記第一の動作モードによる動作を待機して前記第二の動作モードによる動作を行い、前記第二の動作モードの終了後に前記第一の動作モードによる動作を行う制御ユニット。
【請求項4】
請求項1又は2記載の制御ユニットであって、
前記制御手段の動作モードを制御する動作モード制御手段を更に備え、
前記動作モードは、前記記憶手段に記憶されている記憶データを前記バッファ手段を介して前記他系の制御ユニットへ転送する第一の動作モードと、前記演算処理手段からの演算データを、前記記憶手段と、前記バッファを介して前記他系の制御ユニットとに転送する第二の動作モードと、を有し、
前記制御手段は、前記第一の動作モード及び前記第二の動作モードが競合することにより、前記記憶手段における同じ記憶領域へのアクセスが同時に発生した場合に、前記第一の動作モードによる動作を待機して前記第二の動作モードによる動作を行い、前記第二の動作モードの終了後に前記第一の動作モードによる動作を行う制御ユニット。
【請求項5】
請求項3又は4記載の制御ユニットであって、
前記制御手段は前記記憶手段に記憶されている記憶データに対して誤り訂正符号検査を実行し、
前記動作モード制御手段は、前記誤り訂正符号検査により誤りが検出された場合に、前記制御手段を前記第一の動作モードで動作させる制御ユニット。
【請求項6】
複数の移動端末装置と通信が可能な移動体通信網における基地局装置であって、
前記移動端末装置と無線通信を行う無線通信手段と、
請求項1ないし5のいずれか一項記載の制御ユニットを有する二重化システムと、
を備え、
前記制御ユニットのうち、アクティブ系で動作している制御ユニットは、前記無線通信手段によって通信を行う移動端末装置に関連したデータを処理する基地局装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−165642(P2006−165642A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−349662(P2004−349662)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】