説明

二重層三元触媒

不活性ハニカム体上に直接設けられた触媒被覆及びその上にある触媒活性被覆から構成されていて、特にガソリンで駆動する内燃機関を備えた車両の排気ガスを浄化するために適した二重層三元触媒が記載されている。前記触媒は、両方の層中に、それぞれ、パラジウムで触媒活性化されている活性酸化アルミニウム及びセリウム/ジルコニウム混合酸化物を含有する。この第2のガス側の層は、パラジウムの他にロジウムを含有し、前記ロジウムはパラジウムに対して付加的に第2の層の活性酸化アルミニウム及びセリウム/ジルコニウム混合酸化物上に設けられている。第2の層のセリウム/ジルコニウム混合酸化物は、第1の層のセリウム/ジルコニウム混合酸化物よりも高い酸化ジルコニウム含有量を有する。前記触媒は、優れた劣化安定性で特に優れた活性を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気ガスの浄化のために適していてかつ非常に熱劣化安定性で優れた触媒活性を有する、相互に積層された2つの触媒活性層から構築されている三元触媒に関する。
【0002】
三元触媒は、主に理論空燃比で運転される内燃機関の排ガスの浄化のために大量に使用される。この三元触媒は、エンジンの3種の主なガス状の有害物質、つまり炭化水素、一酸化炭素及び窒素酸化物を同時に無害成分に変換することができる。この場合、異なる触媒事象を分離し、それにより2つの相中の触媒作用の最適な調整が可能となる二重層三元触媒を使用することが多い。この種の触媒は、例えば、EP 1 046 423、EP 0 885 650又はWO 95/35152に記載されている。このような二重層触媒が触媒活性貴金属としてパラジウムを含有する場合、その製造において一般に、パラジウムを同じく触媒活性成分として含まれるロジウムから空間的に分離して存在させることが配慮される。EP 0 885 650及びWO 95/35152に記載された触媒は、ロジウム(場合により白金の存在で)が常に外側の第2の層中に含まれ、パラジウム(場合により同じく白金の存在で)が常に内側の第1の層中に存在する。貴金属のロジウムとパラジウムとの空間的分離が大抵は極めて入念に実施されるという理由は、これらの両方の貴金属が相互に直接接触する場合、前記の両方の貴金属は三元触媒について典型的な高い温度で金属間相の形成により、その触媒活性を失うという仮定が今まで有効であると見なされていたためである。これは、触媒の不可逆な熱的失活と同義であるとされた。
【0003】
これとは異なり、EP 1 541 220は、有利な実施態様において存在するパラジウム及びロジウムの少なくとも70質量%は合金条件下で合金しない状態で存在する単一層のパラジウム富有の三元触媒を記載している。担体材料として、有利にジルコニウム富有のセリウム/ジルコニウム−酸素吸蔵材料及びγ−酸化アルミニウムが含まれる。被覆された触媒の製造のために、使用される全ての成分を懸濁液中で合わせ、キャリアボディ上に被覆する。生じた触媒中には、つまり全ての触媒活性材料が相互に空間的に近くに存在している。
【0004】
US 2003/0180197 A1は、触媒金属化合物及びマクロ孔の化合物を含有する触媒を開示し、その際、前記マクロ孔の化合物は酸素吸蔵材料及び酸化アルミニウムを有する。前記触媒は、酸素吸蔵材料及び/又は酸化アルミニウムのマクロ孔体積の少なくとも40%は120Åより大きな孔径を有する孔と関連していることを特徴とする。前記文献は、一方の層中にパラジウムを有しかつ他方の層中にロジウムを有する触媒の二層の実施態様の他に、基材をパラジウム含有ウォッシュコートで被覆し、引き続き前記被覆の上方の10マイクロメートルをロジウム化合物で浸透させることにより製造される単一層触媒も開示している。
【0005】
内燃機関の排出量の低減に関して絶え間なく高まる要求は、触媒を絶え間なく発展させることを必要とする。この場合、特に重要なのは、有害物質を変換するための触媒の始動温度及び触媒の温度安定性である。有害物質のための前記始動温度は、前記有害物質を例えば50%より多く変換する温度を表す。この温度が低くなればそれだけ、有害物質がコールドスタート後により早くに変換することができる。フルロード時には、エンジン出口直後で1150℃までの排気ガス温度が生じることがある。触媒の温度安定性が改善されればそれだけ、触媒をエンジンのより近くに配置することができる。これは、同様にコールドスタート後の排気ガス浄化を改善する。
【0006】
前記先行技術による触媒は、始動温度及び温度安定性に関して既に極めて良好な特性を有している。しかしながら、向上する法的基準により、さらに改善された触媒を探す必要がある。
【0007】
従って、本発明の課題は、先行技術の触媒に対してさらに低下された始動温度及び改善された温度安定性を有する触媒を提供することであった。
【0008】
前記課題は、セラミック又は金属からなる不活性触媒担体上に相互に積層された2つの触媒活性層を有する触媒により解決される。2つの触媒活性層は、それぞれ、活性酸化アルミニウム及びセリウム/ジルコニウム混合酸化物を含有し、これらはパラジウムで触媒活性化されている。第2の層中の前記の両方の酸化物材料は、付加的にロジウムで触媒活性化されている。さらに、本発明による触媒にとって、第2の層中のセリウム/ジルコニウム混合酸化物は、第1の層中のセリウム/ジルコニウム混合酸化物よりも高い酸化ジルコニウム含有量を示すことが重要である。
【0009】
この場合、「第1の層」の概念は、本願明細書の範囲内で、不活性触媒担体上に最初に設けられる被覆を意味し、つまり担体側の層を意味する。この担体側の層上に、次いで「第2の層」と言われる層が設けられ、前記第2の層は仕上がった触媒において浄化すべき排気ガスと直接接触する。
【0010】
独立形式請求項に記載された選択された前記層の組成によって、意外にも、先行技術による触媒と比べて本発明による触媒の始動温度及び温度安定性の明らかな改善か達成される。特にEP 1 541 220に記載された触媒に関して前記改善の原因は、恐らく、酸化物担体材料の空間的分離を維持とすることにある。本願発明者の研究は、ジルコニウム富有の酸化セリウム/酸化ジルコニウムにロジウム含浸させる場合が、一般にジルコニウム貧有の酸化セリウム/酸化ジルコニウムにロジウムを含浸させる場合よりも劣化安定性の触媒を生じることを示した。酸化物担体材料のこの空間的分離を厳守することにより、本発明による触媒を用いて特に、貴金属濃度の適切な選択時に、SULEV車両及びPZEV車両についての極めて厳しい排気ガス基準を満たすことができる(SULEV=Super Ultra-low Emission Vehicle;PZEV=Partial Zero Emission Vehicle)。先行技術による触媒を用いる場合にはこれは簡単に可能ではない。
【0011】
触媒不活性の触媒担体として、内燃機関の排気ガスのための平行の流動通路を有する、体積Vを有するセラミック又は金属からなるハニカム体が適している。前記流動通路の壁面は、本発明による両方の触媒層で被覆されている。前記触媒担体の被覆のために、それぞれの層のために用いられる固体を水中に懸濁させる。第1の層は、活性アルミニウム及び第1のセリウム/ジルコニウム混合酸化物である。この材料上に、有利に硝酸パラジウムから出発しUS 6,103,660に記載された方法により塩基として水酸化バリウム又は水酸化ストロンチウムの使用下でパラジウムを析出させる。こうして得られた懸濁液を用いて前記触媒担体は直ちに被覆することができる。設けられた層を引き続き乾燥し、場合によりか焼する。その後で、第2の被覆が設けられる。このために、また活性酸化アルミニウム及び第2のセリウム/ジルコニウム酸化物を水中に懸濁させ、その上に、硝酸パラジウム及び硝酸ロジウムの供給によりパラジウム及びロジウムを析出させ、その際、前記貴金属の析出は、1つの作業工程で同時にか又は連続する異なる作業工程で行うことができる。
【0012】
全体として、本発明による触媒中には、ハニカム体の体積に対してパラジウム0.1〜10g/Lが導入される。この場合、前記被覆工程における硝酸パラジウムの量は、第2の層中のパラジウムの濃度が、第1の層中のパラジウムの濃度よりも低くなるように選択される。有利に、それぞれハニカム体の体積に対する第2の層中のパラジウム濃度対第1の層中のパラジウム濃度の比は、0.001〜0.9、特に有利に0.01〜0.7である。特に有利な実施態様は、前記のパラジウム濃度の比が0.1〜0.5にある場合に得られる。
【0013】
第1の層における硝酸パラジウムの沈殿のための塩基としての水酸化バリウム又は水酸化ストロンチウムの使用により、か焼の完了後に、活性酸化アルミニウム及びセリウム/ジルコニウム混合酸化物の表面上に析出される酸化バリウム又は酸化ストロンチウムが残留する。
【0014】
本発明による触媒の第2の層中でのロジウム濃度は、ハニカム体の体積に対してロジウム0.01〜1g/Lである。
【0015】
前記の措置とは別に、貴金属を触媒のそれぞれの固体成分上に別個に析出させてもよい。その後に初めて、例えばパラジウムで活性化された酸化アルミニウム及びパラジウムで活性化されたセリウム/ジルコニウム混合酸化物を一緒に水中に懸濁させ、前記触媒担体に塗布する。このような措置により、一方で酸化アルミニウム上の触媒活性貴金属の濃度と、他方でセリウム/ジルコニウム混合酸化物上の触媒活性貴金属の濃度を適切に調節することが可能となる。有利に、酸化アルミニウム及びセリウム/ジルコニウム混合酸化物上に貴金属を別個に析出させるためにEP 957 064に記載された方法が使用される。
【0016】
実際に適用すべき貴金属濃度は、所望の有害物質の変換に依存する。ここに記載された最高の濃度値は、SULEV車両及びPZEV車両のための厳格な排気ガス基準の遵守のために必要である。前記活性に関する特別な要求の場合に、前記触媒は特別な実施態様において、パラジウム及びロジウムの他に白金も含有することができる。特に、第2の層中の活性酸化アルミニウム及び/又はセリウム/ジルコニウム混合酸化物を付加的に白金で触媒活性化することで、第2の層はパラジウム、ロジウム及び白金を含有する。ハニカム体の体積に対して白金の濃度は、有利に0.01〜1g/Lである。
【0017】
第1の層及び第2の層の活性酸化アルミニウムは、有利に、酸化アルミニウムの全体の質量に対して酸化ランタン1〜10質量%でドープすることにより安定化される。このドーピングは、触媒の温度安定性を改善する。
【0018】
この温度安定性に関してさらなる改善効果を達成するために、セリウム/ジルコニウム混合酸化物は両方の層中で鉄、マンガン、チタン、ケイ素、イットリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム、サマリウム及びこれらの混合物からなるグループから選択される金属の少なくとも1種の酸化物で安定化されていてもよい。ドーピングのために使用される遷移金属酸化物の量は、安定化される混合酸化物の全体の質量に対して有利に1〜15質量%、特に有利に5〜10質量%である。
【0019】
この場合、本発明により、第2の層のセリウム/ジルコニウム混合酸化物は、第1の層のセリウム/ジルコニウム混合酸化物よりも高い酸化ジルコニウム含有量を有する。有利に、第1の層中のセリウム/ジルコニウム混合酸化物において、酸化セリウム対酸化ジルコニウムの質量比は0.8〜1.2である。第2の層のセリウム/ジルコニウム混合酸化物は、有利に酸化セリウム対酸化ジルコニウムの質量比0.5〜0.1を有する。前記材料の比表面積は、有利に50〜100m2/gの範囲にある。前記触媒の始動温度に関する特別な要求の場合に、さらに第1の層中で0.5〜0.1の酸化セリウム対酸化ジルコニウムの質量比を有する付加的なセリウム/ジルコニウム混合酸化物も存在することができる。
【0020】
高い温度負荷の下での前記触媒の寿命に関する特別な要求を満たすために、本発明による触媒の第2の層にさらに酸化ジルコニウムを添加することができる。有利に、この酸化ジルコニウムはその全体の質量に対して希土類金属酸化物1〜30質量%で安定化され、その際、特に適した実施態様の場合には、安定化される酸化ジルコニウムの全体の質量に対して酸化セリウムは10質量%以下で材料中に含まれている。
【0021】
さらに、酸化ランタン又は酸化ネオジムを本発明による触媒の第1の層に添加することも有利である。
【0022】
ここに示された技術的教示に基づき製造された触媒は、ガソリンエンジンを搭載した自動車の排気ガスの浄化のための三元触媒として特に適している。前記触媒は、エンジンに近いスタート触媒として又は車両のアンダーボディ領域におけるメイン触媒として同等に使用することができる。この場合、車両の適用に応じて、相応するエンジンに近いスタート触媒を、他の種類の触媒、例えば窒素酸化物吸蔵触媒と組み合わせることも、本発明によるスタート触媒を本発明によるメイン触媒と組み合わせることも適している。
【0023】
次に、本発明を、いくつかの実施例及び図面を用いて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による触媒(#1)と先行技術による二重層触媒(VK1)との始動温度の比較、この場合、目標転化率の50%が達成された温度(T50)が記載されている。
【図2】本発明による触媒(#1)と先行技術による二重層触媒(VK1)との始動温度の比較、この場合、目標転化率の90%が達成された温度(T90)が記載されている。
【図3】400℃の排気ガス温度でかつ±1/2A/Fの振幅を有する1Hzの周期でのλ変化での先行技術の二重層触媒(VK1)と比較した本発明による触媒#1のラムダ交点/CO/NOx交点。転化率曲線(CO/NOx)の交点でのCO及びNOxについての転化率値、及びTHC3と表された、CO/NOx交点での測定された炭化水素転化率(プロパンと見なされる)が記載されている。
【図4】基準値として先行技術の二重層触媒VK1の排出値と比較した、NEDC車両試験中での本発明による触媒#1の相対的排出率。
【図5】本発明による触媒(#2)とEP 1 541 220による二重層触媒(VK2)との始動温度の比較、この場合、目標転化率の50%が達成された温度(T50)が記載されている。
【図6】本発明による触媒(#2)とEP 1 541 220による二重層触媒(VK2)との始動温度の比較、この場合、目標転化率の90%が達成された温度(T90)が記載されている。
【図7】400℃の排気ガス温度でかつ±1/2A/Fの振幅を有する1Hzの周期でのλ変化でのEP 1 541 220による触媒(VK2)と比較した本発明による触媒#2のラムダ交点/CO/NOx交点。転化率曲線(CO/NOx)の交点でのCO及びNOxについての転化率値、及びTHC3と表された、CO/NOx交点での測定された炭化水素転化率(プロパンと見なされる)が記載されている。
【0025】
実施例及び比較例の中で記載される触媒の製造及び試験:
実施例及び比較例中に記載された触媒の製造のために、直径10.16cm及び長さ10.16cmのコーディエライト−ハニカム体を被覆した。前記ハニカム体は、0.11mmのセル壁厚さで、1平方センチメートル当たり93個のセルのセル密度を有していた。
【0026】
このハニカム体上に順番に2つの異なる被覆懸濁液を塗布した。第1の被覆懸濁液の塗布後に、前記部材を乾燥しかつか焼した。次いで、第2の被覆懸濁液で被覆を行い、同様に乾燥及びか焼した。
【0027】
こうして得られた全ての触媒は、劣化試験の前に19時間にわたりフューエルカットオフを備えた慣用のガソリンエンジンを備えたエンジンテストベンチにさらした。劣化の間の触媒入口前の排気ガス温度は950℃であった。
【0028】
劣化後に、エンジンテストベンチで、始動温度及びCO/NOx交点の調査を、通常の当業者に公知の試験法により行った。この始動挙動の調査を、わずかにリッチな排気ガスで、つまり排気ガスの空気過剰率λ0.999で触媒入口前の排気ガス温度450℃まで実施した。CO/NOx交点の測定は、400℃の排気ガス温度で、1Hzの周期でかつ1/2A/Fの振幅でのλ変化で行った。空間速度は両方の場合に約100000h-1であった。
【0029】
比較例1:
第1の層の作製:
酸化ランタン3質量%により安定化された酸化アルミニウム(比表面積140m2/g)及び50質量%の酸化ジルコニウム含有量を有するセリウム/ジルコニウム混合酸化物を、US 6,103,660に従って、塩基としての水酸化ストロンチウムの使用下で硝酸パラジウムから出発するパラジウムと一緒に活性化した。得られた懸濁液をハニカム体の被覆のために直接使用した。被覆後に前記ハニカム体を乾燥し、か焼した。完成した第1の層は以下の被覆量を含んでいた:
80g/l ランタンにより安定化された酸化アルミニウム
55g/l ZrO2 50質量%を有するセリウム/ジルコニウム混合酸化物
10g/l 酸化ストロンチウム(全ての成分に対して)
3.32g/l パラジウム(全ての成分に対して)
第2の層の作製:
酸化ランタンで安定化された酸化アルミニウム及び70質量%の酸化ジルコニウム含有量を有するセリウム/ジルコニウム混合酸化物を水中に懸濁させた。その後、前記懸濁液に硝酸ロジウムの水溶液を常に撹拌しながら供給し、すでに第1の層が設けられたハニカム体を第2の被覆懸濁液で被覆し、乾燥し、か焼した。完成した第2の層は以下の被覆量を含んでいた:
70g/l ランタンにより安定化された酸化アルミニウム
65g/l ZrO2 70質量%を有するセリウム/ジルコニウム混合酸化物
0.21g/l ロジウム(全ての成分に対して)
得られた触媒VK1の全体の貴金属負荷量は、ハニカム体の体積に対して3.53g/lであった。
【0030】
実施例1
第1の層の作製:
酸化ランタン3質量%により安定化された酸化アルミニウム(比表面積140m2/g)及び50質量%の酸化ジルコニウム含有量を有するセリウム/ジルコニウム混合酸化物を、US 6,103,660に従って、塩基としての水酸化ストロンチウムの使用下で硝酸パラジウムから出発するパラジウムと一緒に活性化した。得られた懸濁液をハニカム体の被覆のために直接使用した。被覆後に前記ハニカム体を乾燥し、か焼した。完成した第1の層は以下の被覆量を含んでいた:
76g/l ランタンにより安定化された酸化アルミニウム
50g/l ZrO2 50質量%を有するセリウム/ジルコニウム混合酸化物
2g/l 酸化ストロンチウム(全ての成分に対して)
2.83g/l パラジウム(全ての成分に対して)
第2の層の作製:
酸化ランタンで安定化された酸化アルミニウム及び70質量%の酸化ジルコニウム含有量を有するセリウム/ジルコニウム混合酸化物を水中に懸濁させた。その後、前記懸濁液に硝酸ロジウム及び硝酸パラジウムの水溶液を常に撹拌しながら供給し、すでに第1の層が設けられたハニカム体を第2の被覆懸濁液で被覆し、乾燥し、か焼した。完成した第2の層は以下の被覆量を含んでいた:
65g/l ランタンにより安定化された酸化アルミニウム
65g/l ZrO2 70質量%を有するセリウム/ジルコニウム混合酸化物
0.49g/l パラジウム(全ての成分に対して)
0.21g/l ロジウム(全ての成分に対して)
こうして得られた触媒#1の全体の貴金属負荷量は、ハニカム体の体積に対して3.53g/lであった。それぞれハニカム体の体積に対して、第2の層中のパラジウム濃度対第1の層中のパラジウム濃度の比は、0.173であった。
【0031】
触媒試験の結果:
本発明による触媒#1を、同様の比較例1からの先行技術による二重層触媒(VK1)と比較して試験した。両方の触媒をまず前記された劣化にさらし、引き続きエンジンテストベンチ及びローラテストベンチ上の車両において試験した。
【0032】
図1及び2は始動温度の比較を示し、その際、図1では目標転化率の50%に達する温度(T50)を記載し、図2は目標転化率の90%に達する温度(T90)を示す。本発明による触媒#1は、明らかに低い始動温度を示す。特に#1のT90値は、先行技術による比較触媒VK1の値よりも20℃〜30℃低い。
【0033】
ラムダ交点(図3)において比較例と比べて本発明による触媒の性能の利点は明らかに際立っている。図3では、転化率曲線(CO/NOx)の交点でのCO及びNOxについての転化率値、及びTHC3と表された、CO/NOx交点での測定された炭化水素転化率(プロパンと見なされる)が示されている。それぞれ、リッチ/リーン移行期及びリーン/リッチ移行期の平均値が記載されている。本発明による触媒の利点は、第2の層中での活性酸化アルミニウム及びジルコニウム富有のセリウム/ジルコニウム混合酸化物のパラジウムによる活性化に起因することができる。
【0034】
エンジンテストベンチで観察された、先行技術による二重層の比較触媒VK1と比較した本発明による触媒#1の利点は、NEDC車両試験において確認することができた。図4中に測定された排出値を相互に比較して示されている。比較触媒VK1の全排出値を100として、かつ基準点にした。得られたバッグ結果は、特にコールドスタート期(バッグ1)における本発明による触媒#1の著しい利点を証明する。しかしながら、この試験サイクル(バッグ2及び3)の他の期間でも#1については、VK1よりもわずかな排出率が観察される。
【0035】
比較例2
EP 1 541 220による構造を有する触媒の製造のために、同じ被覆懸濁液から2つの層を設けた。被覆懸濁液の製造のために、酸化ランタンで安定化された酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム含有量50質量%のセリウム/ジルコニウム混合酸化物及び酸化ジルコニウム含有量70質量%のセリウム/ジルコニウム混合酸化物を水に懸濁させた。その後で、前記懸濁液に硝酸ロジウム及び硝酸パラジウムの水溶液を撹拌しながら添加し、ハニカム体を被覆し、乾燥し、か焼した。それぞれの完成した層は次の組成を有していた:
70g/l ランタンにより安定化された酸化アルミニウム
25g/l ZrO2 50質量%を有するセリウム/ジルコニウム混合酸化物
32.5g/l ZrO2 70質量%を有するセリウム/ジルコニウム混合酸化物
1g/l 酸化ストロンチウム(全ての成分に対して)
0.07g/l ロジウム(全ての成分に対して)
0.37g/l パラジウム(全ての成分に対して)
得られた触媒VK2の全体の貴金属負荷量は、ハニカム体の体積に対して0.88g/lであった。
【0036】
実施例2
第1の層の作製:
第1の層は、実施例1中に記載されたと同様に製造した。前記の第1の層は、完成後に次の被覆量を有していた:
76g/l ランタンにより安定化された酸化アルミニウム
50g/l ZrO2 50質量%を有するセリウム/ジルコニウム混合酸化物
2g/l 酸化ストロンチウム(全ての成分に対して)
0.56g/l パラジウム(全ての成分に対して)
第2の層の作製:
第2の層の製造も、実施例1に記載された方法で行った。完成した第2の層は以下の被覆量を含んでいた:
65g/l ランタンにより安定化された酸化アルミニウム
65g/l ZrO2 70質量%を有するセリウム/ジルコニウム混合酸化物
0.18g/l パラジウム(全ての成分に対して)
0.14g/l ロジウム(全ての成分に対して)
得られた触媒#2の全体の貴金属負荷量は、ハニカム体の体積に対して0.88g/lであった。それぞれハニカム体の体積に対して、第2の層中のパラジウム濃度対第1の層中のパラジウム濃度の比は、0.316であった。
【0037】
触媒試験の結果:
実施例2からの本発明による触媒#2を、比較例2からのEP 1 541 220により製造されたVK2と比較して調査した。より良好な比較を保証するために、同じ材料を使用し、両方の触媒を二重層触媒として構成し、その際、VK2は完成後に2つの同じ層を有していた。前記触媒をエンジンテストベンチでの記載されたように実施する劣化により試験した。
【0038】
図5及び6は始動温度の比較を示し、その際、図5では目標転化率の50%に達する温度(T50)をプロットし、図6は目標転化率の90%に達する温度(T90)を示す。本発明による触媒#2の始動温度T50を、観察される有害ガスに応じて、比較触媒VK2の始動温度よりも25℃〜30℃低い。T90値の場合には、本発明による触媒#2について、有害ガスに応じて430〜450℃の範囲内の値を測定した。比較触媒において、NOx及びHCについて450℃(測定範囲最終温度)のT90値が測定された。COについてのT90値は測定できなかった:COの90%の目標転化率は、試験された温度範囲では達成できなかった。
【0039】
ラムダ交点(図7)においても、EP 1 541 220による触媒(VK2)と比べた本発明による触媒#2の性能の利点は明らかに認識できる。
【0040】
これらの測定されたデータは、所定の酸化物の担体材料の一貫した空間的分離及びロジウムと第1の層のジルコニウム貧有のセリウム/ジルコニウム混合酸化物との接触を回避することにより、特に劣化後に、生じる触媒の活性の利点が生じることを証明する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気ガスを浄化するためのセラミック又は金属からなる不活性触媒担体上の二重層三元触媒において、両方の層はそれぞれ活性酸化アルミニウム及びセリウム/ジルコニウム混合酸化物を含有し、前記の両方の層はパラジウムで触媒活性化されていて、その際、第2の層の両方の酸化物材料はさらにロジウムで触媒活性化されていて、第2の層のセリウム/ジルコニウム混合酸化物は、第1の層のセリウム/ジルコニウム混合酸化物よりも高い酸化ジルコニウム含有量を有することを特徴とする、二重層三元触媒。
【請求項2】
触媒担体が体積Vを有するセラミック又は金属からなるハニカム体であり、前記ハニカム体は内燃機関の排気ガスのための平行の流動通路を有し、その際、前記流動通路の壁面は前記の両方の触媒層で被覆されていて、前記ハニカム体の体積に対するパラジウムの濃度は0.1〜10g/Lであることを特徴とする、請求項1記載の三元触媒。
【請求項3】
それぞれハニカム体の体積に対して、第2の層中のパラジウムの濃度は、第1の層中のパラジウムの濃度よりも低いことを特徴とする、請求項2記載の三元触媒。
【請求項4】
ハニカム体の体積に対する第2の層中のパラジウムの濃度対ハニカム体の体積に対する第1の層のパラジウムの濃度の比は0.001〜0.9であることを特徴とする、請求項3記載の三元触媒。
【請求項5】
第1の層の活性酸化アルミニウム及びセリウム/ジルコニウム混合酸化物の表面は、さらに酸化ストロンチウム又は酸化バリウムで被覆されていることを特徴とする、請求項4記載の三元触媒。
【請求項6】
ハニカム体の体積に対する第2の層中のロジウムの濃度は0.01〜1g/Lであることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の三元触媒。
【請求項7】
第2の層中で前記活性酸化アルミニウム及び/又はセリウム/ジルコニウム混合酸化物はさらに白金で触媒活性化されていて、ハニカム体の体積に対する白金の濃度は0.01〜1g/Lであることを特徴とする、請求項6記載の三元触媒。
【請求項8】
第1の層及び第2の層の活性酸化アルミニウムは、それぞれ前記酸化アルミニウムの全質量に対して酸化ランタン1〜10質量%で安定化されていることを特徴とする、請求項1記載の三元触媒。
【請求項9】
両方の層のセリウム/ジルコニウム混合酸化物は、それぞれ前記混合酸化物の全質量に対して金属酸化物1〜15質量%で安定化されていて、その際、前記金属酸化物は鉄、マンガン、チタン、ケイ素、イットリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム、サマリウム及びそれらの混合物からなるグループから選択される金属酸化物であることを特徴とする、請求項1記載の三元触媒。
【請求項10】
第1の層のセリウム/ジルコニウム混合酸化物は、0.8〜1.2の酸化セリウム対酸化ジルコニウムの質量比を有し、第2の層のセリウム/ジルコニウム混合酸化物は、0.5〜0.1の酸化セリウム対酸化ジルコニウムの質量比を有することを特徴とする、請求項9記載の三元触媒。
【請求項11】
前記第1の層は、さらに0.5〜0.1の酸化セリウム対酸化ジルコニウムの質量比を有するセリウム/ジルコニウム混合酸化物を有することを特徴とする、請求項10記載の三元触媒。
【請求項12】
第2の層はさらに酸化ジルコニウムを含有することを特徴とする、請求項11記載の三元触媒。
【請求項13】
前記酸化ジルコニウムは、前記酸化ジルコニウムの全質量に対して希土類金属酸化物1〜30質量%で安定化されていることを特徴とする、請求項12記載の三元触媒。
【請求項14】
前記酸化ジルコニウムは、安定化された酸化ジルコニウムの全質量に対して酸化セリウム10質量%以下を含有することを特徴とする、請求項13記載の三元触媒。
【請求項15】
第1の層はさらに酸化ランタン又は酸化ネオジムを含有することを特徴とする、請求項1記載の三元触媒。
【請求項16】
エンジンの排気ガスを浄化するための、ガソリンエンジンを搭載した車両のエンジンに近いスタート触媒として又はアンダーボディ領域でのメイン触媒としての請求項1から15までのいずれか1項記載の三元触媒の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−521301(P2010−521301A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500093(P2010−500093)
【出願日】平成20年2月16日(2008.2.16)
【国際出願番号】PCT/EP2008/001216
【国際公開番号】WO2008/113445
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(501399500)ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (139)
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D−63457 Hanau,Germany
【Fターム(参考)】