説明

二重管式杭頭構造

【課題】鋼管杭の頭部に外管を挿入した二重管式杭頭構造において、鋼管杭と外管の間に高ヤング率の物質を充填して鋼管杭の頭部と外管を一体化して水平耐力を向上するとともに、圧縮力と引抜力にも強い二重管式杭頭構造を提供すること。
【解決手段】鋼管杭11の頭部に外管12を挿入して鋼管杭11と外管12の間にグラウト材13を充填し、外管12の上端には定着板15を取付けてある。グラウト材13を充填した鋼管杭11と外管12の上部及び定着板15は、フーチング14のコンクリートに埋没してある。鋼管杭11と外管12は、グラウト材13により一体的に強固に結合するから、水平耐力が大幅に向上するとともに圧縮力や引抜力は定着板15から鋼管杭11へ伝達される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、基礎杭における二重管式杭頭構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来地震時の水平耐力を大きくするため、鋼管杭の頭部に鋼管杭より大径の外管(外側の管)を挿入し、鋼管杭と外管の間に充填材を充填した二重管式杭頭構造が提案されている(特許文献1参照)。
図2は、従来の二重管式杭頭構造の管軸方向の断面を示す。
二重管式杭頭構造は、鋼管杭31の頭部に外管32を挿入し、鋼管杭31と外管32の間に充填材33を充填してある。充填材33には、ヤング率がフーチング35のコンクリートよりも低い、ヤング率10〜10000N/mm2の物質(例えばヤング率70N/mm2のソイルセメント)を用いている。因みにフーチング35のコンクリートのヤング率は、25000N/mm2程度である。また鋼管杭31の頭部と外管32の頭部には、鉄筋341,342を取付けてある。外管32の頭部の一部、鉄筋341の全部、鉄筋342の一部は、フーチング35のコンクリート中に埋没し、鋼管杭31の頭部は、内部にフーチング35のコンクリートを充填してある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−46879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の二重管式杭頭構造は、地震による水平方向の力に対する耐力を高めるため、充填材33にヤング率10〜10000N/mm2程度のものを用いて、水平力が外管32、充填材33を介して鋼管杭31に伝わるように構成してあるが、充填材33のヤング率が小さいために、外管32と鋼管杭31は、結合度が小さく外力に対して別々に動き一体的に動かない。そのため従来の二重管式杭頭構造は、水平耐力が小さく、また上部構造物(図示せず)による圧縮力や引抜力が鋼管杭31に伝わり難いためフーチングが破損する恐れがある。
本願発明は、従来の二重管式杭頭構造の前記問題点に鑑み、水平耐力が大きく、圧縮力や引抜力にも強い二重管式杭頭構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明は、その目的を達成するため、請求項1に記載の二重管式杭頭構造は、外管を挿入した鋼管杭の頭部と外管の間に充填材を充填した二重管式杭頭構造において、鍔状部を有し外管の開口部を塞ぐ定着板を外管の上端に取付け、鋼管杭の頭部と外管の間にグラウト材を充填し、グラウト材を充填した鋼管杭の頭部と外管の上部及び定着板をフーチングのコンクリートに埋没してあることを特徴とする。
請求項2に記載の二重管式杭頭構造は、請求項1に記載の二重管式杭頭構造において、外管の下端部は鋼管杭側へ曲げてあることを特徴とする。
請求項3に記載の二重管式杭頭構造は、請求項1又は請求項2に記載の二重管式杭頭構造において、前記グラウト材は、前記定着板と鋼管杭の上端の間の空間にも充填してあることを特徴とする。
請求項4に記載の二重管式杭頭構造は、請求項3に記載の二重管式杭頭構造において、前記グラウト材は、鋼管杭の頭部の内部にも充填してあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本願発明は、鋼管杭の頭部と外管の間にグラウト材を充填して鋼管杭の頭部と外管を一体的に強固に結合してあるから、鋼管杭の頭部と外管は、水平方向の力が加わったとき一体的に動き、従来のように両者が別々に動くことがないから、杭頭の強度は大幅に向上する。また鋼管杭の頭部と外管をグラウト材により一体化したことにより、鋼管杭は、実質的に頭部の外径を大きくし(或いは頭部を太くし)、かつ肉厚にした構造と同じ構造になるから、頭部の強度が大幅に向上する。
本願発明は、グラウト材を充填した鋼管杭の頭部と外管の上部及び定着板をフーチングのコンクリート中に埋没してあるから、鋼管杭の頭部と外管は、フーチングとの結合強度が高くなるが、その結合強度は、鋼管杭の頭部と外管をグラウト材により一体化したことにより一層高くなる。
また外管12の上端には、定着板15を取付けてあるから、上部構造物の圧縮力は、定着板15の広い面積の上面に伝わり、引抜力は、定着板の周辺(鍔状部分)の下面の支圧力で対応できるから、フーチングは、圧縮力や引抜力により破損することがない。そして鋼管杭の頭部、外管及び定着板をグラント材により一体的に結合することにより、水平力、圧縮力、引抜力等の外力に対する強度は、一層向上する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本願発明の実施例に係る二重管式杭頭構造の構成を示す。
【図2】図2は、従来の二重管式杭頭構造の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本願発明者は、二重管式杭頭構造の充填材について種々実験した結果、充填材は、コンクリートよりもヤング率が高い物質を用いて結合すると、鋼管杭と外管が一体的に結合するため、二重管式杭頭構造の強度が、大幅に向上することを突き止めた。コンクリートよりもヤング率の高い物質としては、グラウト材(例えばモルタル)が適していることも分かった。因みにコンクリートのヤング率は、25000N/mm2程度である。グラウト材は、モルタル系の外に合成樹脂系も用いることができる。
本願発明の二重管式杭頭構造は、鋼管杭と外管の間にグラウト材を充填して両者を一体的に強固に結合するとともに、外管の上端には定着板を取付けてある。グラウト材によって鋼管杭と外管を一体的に結合したことにより、鋼管杭と外管に水平方向の力が加わると、両者は一体的に動き、従来のように別々に動くことがないから、杭頭の強度が大幅に向上する。そして鋼管杭は、鋼管杭の頭部と外管をグラウト材により一体化したことにより、実質的に頭部の外径を大きくし(或いは頭部を太くし)、かつ肉厚にした構造と同じ構造になるから強度が大幅に向上する。
【0009】
また上部構造物による圧縮力及び引抜力は、まず外管の上端に取付けた広い面積の定着板に伝わるが、外管と鋼管杭はグラウト材により一体的に結合してあるから、定着板から鋼管杭にも伝わる。即ち圧縮力及び引抜力は、広い面積の定着板、外管及び鋼管杭が一体的に受け止めるから、それらの力がフーチングの特定の箇所に集中的に加わることがない。したがってフーチングは、圧縮力及び引抜力によって破損することがない。
【実施例】
【0010】
図1は、実施例に係る二重管式杭頭構造の構成を示す。
鋼管杭11の頭部に内径が鋼管杭11の外径よりも大きい外管12を挿入し、両者の間にグラウト材13を注入し充填してある。外管12の上端には、溶接部16により外管12の開口部を塞ぐ定着板15を取付け、外管12の下端部121は、鋼管杭11側へ曲げて鋼管杭11外周に密着させてある。定着板15は、外管12の外径よりも大きく鍔状に突出し、グラウト材13を注入する孔部151を形成してある。また鋼管杭11の上端には、グラウト材13が鋼管杭11の内部に流れ込むのを防止するグラウト材の落下防止部材17を取付けてある。なおグラウト材の落下防止部材17は、設けなくてもよい。
【0011】
外管12の下端部121は、鋼管杭11側へ曲げて鋼管杭11外周に密着させてあるから、グラウト材13を注入したときグラウト材13が漏れ出すことがない。仮にグラウト材13が漏れ出す隙間があったとしても、外管12の下端部121は地中に打ち込まれているから周囲の土によりグラウト材13の流出は阻止される。また外管12の下端部121を鋼管杭11側へ曲げることにより、鋼管杭11と外管12の間隔は、その曲げ部分の大きさによって決まるから、外管12を打ち込む際、鋼管杭11と外管12の間隔を均一に保つことができ、したがって外管12の打ち込み作業が容易になり、かつ鋼管杭11と外管12の間のグラウト材13の厚みを均一にすることができる。
【0012】
鋼管杭11の頭部と外管12は、グラウト材13によって一体的に強固に結合するから、前記のように杭頭の水平耐力が大幅に向上するとともに、実質的に杭頭の外径を大きくしたのと同様の効果を奏する。またグラウト材13により一体化した鋼管杭11の頭部と外管12の上部及び定着板15は、フーチング14のコンクリート中に埋没するから、フーチング14との結合強度が向上するとともに、上部構造物(図示せず)の圧縮力は、定着板15の広い面積の上面に伝わり、引抜力は、定着板の周辺(鍔状部分)の下面152の支圧力で対応できるから、フーチング14は、圧縮力や引抜力によって破損することがない。
【0013】
なお図1において、鋼管杭11の上端を外管12の上端より低くして、空間18を所定の高さに設定し、その空間18を満たすようにグラウト材13を注入してもよいし、さらにグラウト材の落下防止部材17を鋼管杭11の上端から所定の深さ18の位置へ移して鋼管杭11の内部にもグラウト材13を注入するようにしてもよい。また定着板15の下面にボルトを取付け、そのボルトに沿って落下防止部材17の上下の位置を調整できるように構成してもよい。鋼管杭11の内部にもグラウト材を注入する場合には、定着板15、外管12及び鋼管杭11の頭部は、グラウト材13によって一体的に結合するから外力に対する強度が一層向上する。また外管12と定着板15は、外管12の頭部にボルトを取付け、定着板15にそのボルトの挿入孔を形成し、ボルトとナットで外管12と定着板15を結合してもよい。
【0014】
二重管式杭頭構造の施工は、まず鋼管杭11を地中に打ち込み、次に鋼管杭11の頭部に外管12を挿入して打ち込み、鋼管杭11の上端にグラウト材の落下防止部材17を取付ける。次に外管12の上端に定着板15を取り付ける。次に鋼管杭11と外管12の間に定着板15の孔部151からグラウト材13を注入して充填する。次に定着板15、鋼管杭11の頭部と外管12の上部が埋没するようにコンクリートを打設してフーチング14を構築する。
【符号の説明】
【0015】
11 鋼管杭
12 外管
121 外管の下端部
13 グラウト材(充填材)
14 フーチング
15 定着板
151 グラウト材の注入孔部
152 定着板の鍔状部の下面
16 溶接部
17 グラウト材の落下防止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外管を挿入した鋼管杭の頭部と外管の間に充填材を充填した二重管式杭頭構造において、鍔状部を有し外管の開口部を塞ぐ定着板を外管の上端に取付け、鋼管杭の頭部と外管の間にグラウト材を充填し、グラウト材を充填した鋼管杭の頭部と外管の上部及び定着板をフーチングのコンクリートに埋没してあることを特徴とする二重管式杭頭構造。
【請求項2】
請求項1に記載の二重管式杭頭構造において、外管の下端部は鋼管杭側へ曲げてあることを特徴とする二重管式杭頭構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の二重管式杭頭構造において、前記グラウト材は、前記定着板と鋼管杭の上端の間の空間にも充填してあることを特徴とする二重管式杭頭構造。
【請求項4】
請求項3に記載の二重管式杭頭構造において、前記グラウト材は、鋼管杭の頭部の内部にも充填してあることを特徴とする二重管式杭頭構造。

【図1】
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【図2】
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