説明

互いに対して回転する二つのパーツを密閉するパッキンエレメント

本発明は、永久弾性素材から作られ、互いに対して回転する二つのパーツ(2,3)の一方に設置され、かつ、少なくとも一つのエッジシール(21)を備えた少なくとも一つの第一パッキンリング(11)と、互いに対して回転する該二つのパーツ(2,3)のもう一方に取り付けられ、その周囲に沿って、第一パッキンリングの少なくとも一つのエッジシールと接触するように配置された、素材の異なるバンド(19)を保持する少なくとも一つの第二パッキンリング(12)を備えた、互いに対して回転する二つのパーツ(2,3)を密閉するパッキンエレメント(10)に係る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに対して回転する二つのパーツの一方に設置され、少なくとも一つのエッジシールを備え、かつ永久弾性素材から作られている少なくとも一つの第一パッキンリングを備えた、互いに対して回転する二つのパーツを密閉するパッキンエレメントに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に市販されているパッキンリングの多くは、互いに対して回転する二つのパーツの一方に取り付けられた弾力性に富む素材から成るリングと、互いに対して回転する二つの該パーツのもう一方の面に強く押し付けられて密閉するエッジシールを備えている。このエッジシールの早期の磨耗を防止するため、接触面は極力平滑化しておく必要がある。そのため関係する回転パーツの表面は研削加工および研磨処理もしくはその一方が施されるか、あるいはさらにオイルフィルムで保護し腐食を防止する処理を施すのが通例である。しかし、こうした方法には次のような問題がある。
【0003】
大型のベアリングの場合、特に風力発電設備のブレードベアリングなどのプラント設備、あるいは各種医療機器の場合にも、関係する回転パーツが大型化するため、不腐食性の鋼材を使用することは経済的には見合わない。しかし、腐食性の鋼材を使用すれば外気や風雨にさらされるベアリングは比較的早期に腐食する。保護用のオイルフィルムは雨に弱くすぐ浸潤し、特に海岸部(風力発電設備)や沖合の海上(船舶)などでは海水のため空気の腐食性はきわめて強い。一度腐食が発生するとパッキンリングは腐食した表面から損傷を受け最終的には破損する。
【0004】
一方、医療機器のような他の分野では、オイルフィルムにとどまらず、油脂が流出することがそもそも認められておらず、そのため、この分野でもオイルフィルムは防食対策にはならず、関係する医療機器に充分対応する不腐食性の鋼材を使用しなければ、腐食を防止することはできない。
【0005】
また、ベアリングによってはメンテナンスに多額のコストを要するものもあり、そうしたベアリングの場合、プラントに設置する場合でも20年間メンテナンスが不要な特殊なパッキンエレメントが要求されるのも当然である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような状況を踏まえ本発明では、厳しいないし過酷な環境条件下であっても、または保護用オイルフィルムを使用しなくとも、あるいは該両者の状況下であっても、きわめて長期に渡り極力磨耗しないパッキンリングを創出することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、この種のパッキンリングに、互いに対して回転する二つのパーツの一方に取り付けられ、かつそれ自身の周囲を取り囲むように一周し、少なくとも一つの第一パッキンリングのエッジシールと接触するように配置された、別な素材から成るバンドを保持する少なくとも一つの第二パッキンリングを設置することによって、この課題を解決している。
【0008】
この第二パッキンリングは、向かい合うエッジシールに対する接触面となるバンドを保持するステイとしての機能しか果たしておらず、そのため、その素材に関しては、その機能に適したものを選択することができる。具体的には、構造パーツの誤差を充分カバーできるよう、パッキンリングバンドより弾力性に優れた素材を使用することができる。パッキンリングバンドの取り付けや固定が大幅に容易となり、またこの点は、バンド表面の連続性にとってもきわめて重要である。また、パッキンリングバンドの厚さも0.5mm〜2mmと比較的薄くすることができ、きわめて軽量化できるため、耐磨耗性に優れた高額な素材でも充分使用できるようになっている。
【0009】
第二パッキンリングの素材の比抵抗ρが、該第二パッキンリングによって保持されているバンドの比抵抗より高いことも長所となっている。第二パッキンリングは特に絶縁素材からできており、具体的には比抵抗ρが10Ωmより大きく、特に10Ωmより大きい素材から作られている。そのため、本発明のバンドは、関係する回転パーツと局部的な化学反応を起こすようなこともない。
【0010】
特に、第一パッキンリングと第二パッキンリングは同じ素材で作られている点はきわめて重要な長所となっている。そのために本発明では、加硫硬化ゴムなどの加硫処理を施した素材を使用しており、その理由として、硫化処理した素材は、硫化処理を施さない素材と異なり分子が互いに網状にネットワーク化しているため、単に弾力性だけでなく弾力性を維持する効果も優れているからである。ネットワーク化していないゴムの場合、当初は弾力性を発揮するが、次第に弾力性が失われ、最終的にはまったく元に戻らない状態になることも加硫処理した素材を選択する要因となっている。
【0011】
該バンドを、金属、特にステンレスなどの耐食性ないし耐食処理を施した金属で製造している点も長所となっている。金属は他の素材に比べ相対的に硬度が高く磨耗も少ない。素材を破壊する局部的な化学変化は、ステイとして機能する第二パッキンリングに固定し絶縁することで防止することができる。耐食性ないし耐食処理を施した金属は腐食することはない。
【0012】
該バンドの素材の摩擦抵抗μが、第二パッキンリングより低くなっている点もきわめて重要な長所となっている。そのため、オイルフィルムが欠落してもエッジシールは保護され、結果的には長期の稼動を実現できる点もメリットとなっている。摩擦係数μを減らす方法は、第一パッキンリングのエッジシールが接触する面となる、該バンドの表面を研磨処理などの方法で平滑化する方法である。
【0013】
本発明のバンドに沿って配置されているエッジシールが滑らかに滑るようにするため、第一パッキンリングのエッジシールが接触する面となるバンドの表面がほぼ回転面、特に円筒形の外表面になっている。そのため、エッジシールの圧縮力が周囲全体に均等に分散され、特に摩擦が大きい箇所が生じないようになっている。
【0014】
該バンドをリング状にすることで、該バンドを取り巻くように一周するエッジシールの磨耗を削減するために必要な回転対称を得られるだけにとどまらず、第二パッキンリングに該バンドを取り付ける際にもリング状の構造はメリットが多い。リング状の構造、すなわち二つのパーツを合わせた構造は、該バンドの前面側の、特に二つの端部を突き合わせて溶接ないし接着し、場合によってはその後、接合面、特に溶接継ぎ目や接着ポイントに平滑処理や研磨処理を施すことによって実現することができる。バンドの端部の接合は、必要に応じて関係するパッキンリングを設置する前または後で行うことができ、本発明の場合には、関係するパッキンリングを取り付ける前、もしくは該パッキンリングを設置する前にバンドの端部を接合する方が適している。
【0015】
同様の目的、すなわち理想的な回転対称を得るために、該バンドの断面は、該バンドの周囲全体ですべて均一になっている。本発明の場合、特にその断面がほぼ四角形になっており、またその場合、反対側の回転パーツのエッジシールにとっては、こうしたバンドの最も広い周辺面の一つが最適な接触面となっている一方で、該面と直角な位置関係にある厚さは極力薄くし、該バンドが一定の柔軟性を確保できるようになっている。
【0016】
バンドが自動的に固定されるよう、バンドは、第二パッキンリングを使用している間、特に関係する回転パーツのほぼ円筒形をした該表面に取り付けるようにするとよく、その場合には、形状面の特性から自動的に固定され、接着剤は不要となる。
【0017】
この場合、関係する回転パーツの外表面を凹状に湾曲させると良く、その湾曲した表面に本発明のバンドを、該湾曲面と該バンドとの間に入れた第二パッキンリングと一緒にベルトのように巻き付けると、非常に効果的な保持効果が得られる。
【0018】
本発明のメタルバンドと、同じく金属製の回転パーツの間に、接触するポイントがごくわずかでもあると、局部的な化学反応が生じる可能性があるため、取り囲むように一周する該バンドを第二パッキンリングに取り付ける際は、互いに対して回転する二つのパーツのいずれにも接触しないようにする必要がある。
【0019】
本発明のバンドは、移動しないように、第二パッキンリングを取り囲むように一周する溝状の凹部内に入っている。
【0020】
本発明のバンドを受け止めている第二パッキンリングの該凹部は、そこに挿入されている該バンドに対応する断面の高さ、すなわち該バンドの厚さより小さくなっている場合には、もう一方の回転パーツのエッジシールと接触する本来の接触面として使われる、本発明のリングの表面は、第二パッキンリングに接触している表面部分より高くなる。そのため、互いに対して回転する二つのパーツ間の遊びが少ない場合でも、第一パッキンリングのエッジシールは第二パッキンリングと常に接触し、結果的に該両回転パーツの、摩擦による損傷を排除することができるようになっている。
【0021】
エッジシールから本発明のバンドに作用する圧縮力は、場合によってはリング状のバンド自体によって生み出される固定する力も加わって、該バンドを保持している、第二パッキンリングの凹部の底面に作用する。圧縮力をそこからさらに関係する回転パーツに伝達できるようにするため、取り囲むように一周する該バンドを保持する、第二パッキンリングの該凹部の底は、第二パッキンリングが取り付けられている回転パーツの表面とほぼ平行になっている。
【0022】
本発明のバンドは第二パッキンリングの凹部に通されるため、第二パッキンリング自体にも、本来の回転パーツとの調整ないし固定具が必要となる。この調整ないし固定具は、該凹部と反対の位置にある、第二パッキンリングの断面の周囲部分に設けられた延長部ないし同種のもので実現されており、またその場合、該延長部は、該回転パーツの関係する表面に設けられた、対応する形状の溝状の凹部に挿入されている。
【0023】
第二パッキンリングの該固定用延長部の、半径方向内側および外側の表面もしくはその一方には、断面で見て突起した部分が設けられており、この突起した部分によって、該延長部の弾力性が向上し、また該回転パーツの溝状の凹部に完全にかつ確実に収納できるようになっている。この突起した部分は、波や鋸歯状の断面をした、取り囲むように一周するエッジシール状の形状にすることも可能である。
【0024】
また第二パッキンリングには、少なくとも取り囲むように周囲に形成されたエッジシールを設置することも可能である。第二パッキンリングに、加硫処理した、すなわちネットワーク化した素材(硬化ゴム)を使用すると、エッジシールに求められるのと同様の永久弾性が得られる。したがって、第二パッキンリングにもエッジシールを取り付け、二重ないし多重の密閉処理を低コストで実現できるようになっている。
【0025】
第二パッキンリングのこうしたエッジシールは、対抗する回転パーツの表面に接触するように取り付けてもよい。本発明でもバリエーションで提示しているが、さらに別のエッジシールを第二パッキンリングに設置することもでき、その場合、別のエッジシールは、最初のエッジシールから離し、特にグリスや潤滑油で充填した中空スペースに入れて置くようにすると、第二のエッジシールとの関連で発生する、該回転パーツの表面部分の腐食を防止でき、防食対策を別途施さなくとも第二パッキンリングの損傷を防止できる。
【0026】
第二パッキンリングに設置する追加のエッジシールに替えて、または追加したエッジシールに加えて、もしくは該両者の方法で、第二パッキンリングの一周する周囲の表面を、さらに別のエッジシールの接触面として形成することも可能である。このような第三のパッキンリングは、本発明のバンドおよび該バンドと接触している、第一のエッジシールを形成しているメインパッキンリングの外に設け、該メインパッキンリングを衝撃などの機械的な影響から保護することも可能である。
【0027】
第二パッキンリングの接触面に接触するエッジシールに第一パッキンリングに設ければ、構造はきわめて簡素化される。
【0028】
第一パッキンリングの、該バンドに接触するエッジシールとは反対側にある裏面を、外側に向けて配置するか、関係するリングの表面の方へ向けるようにすると優れた効果が得られる。この裏面が、関係するリングの表面に面するようにすると、そこで保持できることになり、その場合には、該エッジシール自体、疲労した後も該バンドと密着したままの状態を維持できるようになる。一方、該裏面が外側を向いている場合には、前面でエッジシールを保持している部分をスプリングエレメントで容易に保持し、外からアクセスできるよう、いつでも弛緩または交換できる状態に維持できるようになっており、また該裏面は、メンテナンス作業では少なくとも目で検査でき、場合によっては手で元の形状に戻すことができるようになっている。これに対し、エッジシールの裏面が、パッキンリングの別のパーツ、場合によってはパッキンリングの他の部分に覆われてしまう場合には、メンテナンス作業でエッジシールの位置を調整することは難しく、修正することなどはほとんど不可能となる。
【0029】
また本発明は、第一パッキンリングのエッジシールを、第二パッキンリングのバンドに押し付けておくスプリングエレメントを備えている点も特徴となっている。そのためメインパッキンリングのエッジシールの圧縮力、しいてはメインパッキンリングの密閉効果も、大幅に高めることが可能となる。
【0030】
スプリングエレメントには、取り囲むように一周するワイヤーや同種のものなどが適している。そうしたワイヤーであれば高い張力に対応でき、エッジシールの半径方向の圧縮力も、エッジシール単独の場合に比べてきわめて高い圧縮力が得られる。スプリングエレメントは、厳しい環境条件下にあっても永久にその機能を果たせるよう、不腐食性の鋼材や同種の素材製にし、腐食しないようにする必要がある。スプリングエレメントが密閉されていない場所に設置される場合には、その素材がとりわけ重要になる。
【0031】
パッキンリング設置時の問題を避けるため、スプリングエレメントの断面はほぼ円形になっており、誤ってドリルでスプリングエレメントに穴を開けた場合でも、力が均一に作用する効果に影響が出ないようになっている。
【0032】
該スプリングエレメントは、特にバンドに接触している第一パッキンエレメントのエッジシールの裏面に取り付けられている。そこからは、半径方向内側に作用する圧縮力を、エッジシールの空いているエッジの方向へ正確に作用させることができ、その結果、該エッジ部分に作用する力がシンメトリーとなり、エッジシールの変形も最小限に抑えることが可能となっている。
【0033】
スプリングエレメントは、同じ場所で永久に保持できるよう、第一パッキンエレメントの、一周するほぼ溝状の凹部の中に入れておく必要がある。そうすることでスプリングエレメントは滑ることもなく、きわめて長期の使用後もエッジシールの圧縮力を維持できる。このような溝状の凹部が密閉されたエリアの外に設けられていれば、外部からスプリングエレメントにアクセスでき、他のパッキンエレメントを取り付けた後でも容易に設置でき、また後でメンテナンス用に取り外すことも可能となり、場合によっては交換および調整もしくはその一方なども行うことができる。
【0034】
本発明の場合、安全上の理由から、スプリングエレメントを保持する第一パッキンエレメントに設けられている溝の断面は円形にするとよく、特に断面の周囲に沿って180度の角度を超えていることが望ましい。そのようになっていれば、スプリングエレメントが激しく振動しても緩み溝から出ることもない。
【0035】
スプリングエレメントを、エッジシールの自由端のエッジと共通する一つの面に配置した場合、該スプリングエレメントを保持する溝状の凹部の両エッジは、該面の両サイドにくる。第一パッキンエレメントに設けられている溝状凹部の両エッジの少なくとも一方は、断面で見ると第一エッジシールから突出した延長部になっているため、第一パッキンリングを取り付けるのに適している。このような場合、後方に向かって盛り上がっているエッジ部分の自由端部に延長部や同種のものを設置でき、またその場合、そうした延長部や同種のものは、第一パッキンリングを固定するため、回転パーツの関係する表面に設けられた、形状がほぼ対応する溝状の凹部の中に入っている。この種の延長部を保持する溝は、関係する回転パーツの外表面上に設ける必要はなく、むしろ回転パーツの面に窪みを設けておくことが可能である。
【0036】
第二パッキンリングに設けられている固定用延長部と同様、第一パッキンリングの固定用延長部にも、断面で見ると突起している部分、特に波や釣り針状に盛り上がっている部分を設け、弾力性を高めることも可能である。
【0037】
本発明の構造に関しては、第一パッキンエレメントの、バンドに接触しているエッジシールの断面の先端が、一方の該バンドともう一方の該スプリングエレメントをそれぞれ保持している両溝状の凹部の中心点を結ぶ直線上に来るようにすると、より一層優れた効果を発揮する。このような構造にした場合、圧縮力は唯一の面内でスプリングエレメントからエッジシールの空いているエッジを介して本発明のバンドの中央部分へ伝達され、しかもエッジシールおよび第二パッキンリングもしくはその一方が非対称的に変形することもない。
【0038】
本発明の範囲内では、第一パッキンエレメントの、バンドに接触しているエッジシールの先端部の断面が鈍角になっている場合も存在する。このように先端を鈍角にすると、悪影響を及ぼす変形にも強く、そのため長期間に渡り高い圧縮力に耐え、本発明のバンドに伝達することが可能となる。
【0039】
最後に、本発明は、第三のパッキンリングを備えている点も特徴となっており、この第三のパッキンリングは、互いに対して回転する二つのパーツの一方に取り付けられ、また互いに対して回転する二つのパーツのもう一方のエッジシールと接触するエッジシールを備えている。この第三パッキンリングの場合も、断面で見るとエッジシールと反対側の延長部や同種のものを備えることができ、その場合、この延長部や同種のものは、第三パッキンリングを固定するため、回転パーツの関係する表面に設けられた形状がほぼ対応する溝状の凹部の中に入るようになっている。この固定用延長部にも、断面で見ると突起している部分、特にフックや釣り針状に盛り上がっている部分を設けてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
図1のボールベアリンング1は、互いに対して相対回転する同軸の二つのリングから構成されている。図1では、左側にアウターリング2、右にインナーリング3が見て取れる。該両リング2,3には、設置用のホール4,5が回転軸と平行に設けられている。該両リング2,3の間にある隙間6の部分には、少なくとも一列の球状のローリングエレメント7が取り付けられており、またこのローリングエレメントが存在することにより、該両リング2,3は、唯一の自由度が確保されている方向として互いに対して回転できるようになっている。図1で提示したボールベアリンング1の場合、該図の上部に位置する上面8,9が外気にさらされることになる。そのため、該両上面8,9の間にある隙間6は、本発明のパッキンリング10によって密閉されている。
【0041】
図2からわかるように、パッキンリング10は第一のパッキンリング11と第二のパッキンリング12から構成されており、該両パッキンリングはそれぞれ、加硫硬化ゴムなどの硫化素材から作られている。第一パッキンリング11はアウターリング2に、第二パッキンリング12はインナーリング3にそれぞれ取り付けられている。このように該両パッキンリングを各リングに取り付けるため、アウターリング1の上面1には、溝状の窪み13が一周するように設けられ、この溝状の窪みの中には、第一パッキンリング11のリング状の延長部14が入り込んでおり、また同様にインナーリング3の、隙間6側の表面15にも溝状の窪み16が一周するように設けられ、リング状の延長部17を第二パッキンリング12に固定する機能を果たしている。
【0042】
上記のような方法でインナーリング3に固定されている第二パッキンリング12の、該延長部17とは反対側の面には、断面が溝状などになっている、比較的平坦なリング型のすり鉢状の凹部18が設けられている。この凹部18の中には一周するメタルバンド19が挿入されており、その場合、該メタルバンドは該凹部18の周縁によって取り囲まれているため、ボールベアリンング1の回転軸と平行にスライドしないよう保持されている。
【0043】
凹部18と反対側に位置する、メタルバンド19の外面20には、第一パッキンリング11のエッジシール21が接触する状態で設置されている。このエッジシール21は、その一つのエッジの角度が鈍角、すなわち90度〜150度になる構造にすることができる。第一パッキンリング11の弾力性が脆弱化した場合にも、エッジシール21がメタルバンド19の接触面20に強く押し付けられているようにするため、エッジシール21は、外側の第一パッキンリング11のほぼスリーブ形になっている部分23の内面22に配置されている。このスリーブ形部分23の半径方向外側に位置する外表面24、すなわちエッジシール21と反対側の位置にある、第一パッキンリング11の裏面24は、図1および図2の実施例では外側に向いており、そのためエッジシール21の正確なポジションが、該エッジシールの裏面24のポジションで容易に点検できるようになっている。
【0044】
第一パッキンリング11の、半径方向外側に位置する該表面24には、取り囲むように一周する凹部25を備えたスリーブ形の部分23が設けられており、その場合、該凹部には金属スプリング26が挿入されており、またこの金属スプリングによって、スリーブ形部分23および該スリーブ形部分に取り付けられたエッジシール21は、常にメタルバンド19へ押し付けられている。この金属スプリング26は、特にテンションスプリングになっており、また場合によってはその両端を連結するボルトニップルが取り付けられている。このようにリング状に閉じられたテンションスプリングからはきわめて強力な張力が得られる。
【0045】
一周している取り付け用の延長部14は、凹部25の、アウターリング2の上面8に近いエッジ27と連結している。このように連結できるようにするため、凹部25のエッジ27は上面8に向かって湾曲している。側面の反対位置にある二つの突起28,29は、上面8に設けられている溝状の窪み13のエッジ上でそれぞれ保持されているのに対し、該延長部14は溝状の該窪み13の中に完全に埋まっている。該凹部25のエッジ27と該延長部14の間にある湾曲部30が、金属スプリング26を半径方向外側から包み込む構造にすることにより、該湾曲部は該金属スプリング26にセンタリング作用を生じさせることができ、結果的にはその作用はメインパッキンリング19,21のエッジシール21にも及ぶことになる。金属スプリング26の挿入や張力調整および交換もしくはその一方が行えるよう、該凹部25は、第一パッキンリング11の裏面24と共に外に開いており、また該凹部25は、特に第一パッキンリング11の他の部分によって覆われていないため、金属スプリング26は外から容易にアクセスできるようになっている。金属スプリング26の素材は、腐食を防止するため不腐食性の素材にすることが望ましい。
【0046】
第一パッキンリング11の、外気にさらされる前面の部分には、第二のエッジシール31が設置されており、この第二エッジシールは、メインパッキンリングであるメタルバンド19を外側および上から取り囲み、またその反対側は、内側の第二パッキンリング12と密着し、降雨や衝撃などその他の影響からメインパッキンリング19,21を保護する機能を果たしている。
【0047】
さらに、内側の第二パッキンリング12の内側、すなわちメタルバンド19を挿入する凹部18の下には、ほぼ半径方向外側に突出したエッジシール32が取り付けられており、この場合、該エッジシールは、アウターリング2の、該隙間6に面している外表面33上で保持されている。場合によっては、この内側にあるエッジシール32よりもさらに内側に第三のエッジシール34が取り付けられており、該エッジシール32は、そうした第三のエッジシールと共に、隙間6の内側の潤滑油を維持する機能を担っている。
【0048】
図3による実施例10’では第一パッキンリング11の固定用延長部14が、アウターリング2の上面8に設けられた、取り囲むように一周する溝状の窪み13の中に挿入されており、また該延長部は、該上面8に近い位置にある、金属スプリング26用の凹部25のエッジ27とは連結しておらず、むしろ該上面8から離れた位置にある凹部のエッジ35と湾曲部36を介して連結しており、これらの点が図1および図2の実施例と大きく異なっている。その結果、金属スプリング26は、メインパッキンリング19,21によって密閉された中空スペースに設置されることとなり、外部からの影響を受けることもない。また、エッジシール21の裏面24の向きは、外側でもアウターリング2の上面8の方向にもなっていない。この実施例では、金属スプリング26の交換は必ず第一パッキンリング11と一緒に行うことになる。一方、図1および図2の実施例の場合は、第一パッキンリング11と関係なく金属スプリングを交換できるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、本発明のパッキンリングを備えたボールベアリンングの断面図である。
【図2】図2は、図1のパッキンリングの拡大図である。
【図3】図3は、図2で提示した本発明の別の実施例を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾力性がある素材、特に永久弾性素材から作られ、互いに対して回転する二つのパーツ(2,3)の一方に設置され、且つ少なくとも一つのエッジシール(21)を備えた少なくとも一つの第一パッキンリング(11)と、互いに対して回転する二つの該パーツ(2,3)のもう一方に取り付けられ、その周囲に沿って、第一パッキンリング(11)の少なくとも一つのエッジシール(21)と接触するように配置され、且つ別な素材から成るバンド(19)を有する少なくとも一つの第二パッキンリング(12)とを備えていることを特徴とする、互いに対して回転する二つのパーツ(2,3)を密閉するためのパッキンエレメント(10;10’)。
【請求項2】
第二パッキンリング(12)の素材の比抵抗ρは、該第二パッキンリングが保持しているバンド(19)の比抵抗より高いことを特徴とする請求項1のパッキンエレメント。
【請求項3】
第二パッキンリング(12)の素材の比抵抗ρは、10Ωmより大きく、特に10Ωmより大きいことを特徴とする請求項1または2のパッキンエレメント。
【請求項4】
該バンド(19)は、金属、特に防食性ないし防食処理された金属、特にステンレス製であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つのパッキンエレメント。
【請求項5】
該バンド(19)の素材の摩擦係数μは、第二パッキンリング(12)の摩擦係数より低いことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つのパッキンエレメント。
【請求項6】
第一パッキンリング(11)のエッジシール(21)が接触する面となる、該バンド(19)の表面部分(20)は、研磨処理などによって平滑化されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つのパッキンエレメント。
【請求項7】
第一パッキンリング(11)のエッジシール(21)が接触する面となる、該バンド(19)の表面部分(20)は、ほぼ回転面、特に円筒形の外表面状になっていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つのパッキンエレメント。
【請求項8】
取り囲むように一周している該バンド(19)は、閉じたリングになっていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つのパッキンエレメント。
【請求項9】
取り囲むように一周している該バンド(19)の断面は均一になっていることを特徴とする請求項8のパッキンエレメント。
【請求項10】
該バンド(19)の断面はほぼ四角形になっていることを特徴とする請求項9のパッキンエレメント。
【請求項11】
取り囲むように一周している該バンド(19)は、互いに対して回転する二つのパーツ(2,3)のどこにも接触しないよう第二パッキンリング(12)に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一つのパッキンエレメント。
【請求項12】
取り囲むように一周している該バンド(19)は、第二パッキンリング(12)の、取り囲むように一周している溝状の凹部(18)の中で保持されていることを特徴とする請求項11のパッキンエレメント。
【請求項13】
取り囲むように一周している該バンド(19)を保持する第二パッキンリング(12)の凹部(18)の深さは、該凹部に挿入される該バンド(19)の対応する厚さより浅くなっていることを特徴とする請求項12のパッキンエレメント。
【請求項14】
取り囲むように一周している該バンド(19)保持する第二パッキンリング(12)の凹部(18)の底面は、第二パッキンリング(12)が取り付けられている回転パーツ(3)の表面部分(15)とほぼ平行になっていることを特徴とする請求項12または13のパッキンエレメント。
【請求項15】
断面で見た第二パッキンリング(12)の、該凹部(18)とは反対側にある部分が突起部(17)ないし同種のものになっており、またこの延長部ないし同種のものは、第二パッキンリング(12)を固定するため、回転パーツ(3)の関係する表面(15)に設けられ、かつ該延長部ないし同種のものの形状に対応するほぼ溝状の凹部(16)の中に挿入されていることを特徴とする請求項12〜14のいずれか一つのパッキンエレメント。
【請求項16】
断面で見た第二パッキンリング(12)の、該凹部(18)とは反対側にある突起部(17)は、断面で見ると盛り上がった部分、特に波、歯、鋸歯、フック、釣り針状の盛り上がりを備えていることを特徴とする請求項15のパッキンエレメント。
【請求項17】
第二パッキンリング(12)の、取り囲むように一周している少なくとも一つの表面には、少なくとも一つのエッジシール(28)が形成されていることを特徴とする請求項1〜16のいずれか一つのパッキンエレメント。
【請求項18】
第二パッキンリング(12)の少なくとも一つのエッジシール(32)は、反対側の回転パーツの表面(33)に接触していることを特徴とする請求項17のパッキンエレメント。
【請求項19】
第二パッキンリング(12)の、取り囲むように一周している少なくとも一つの表面は、さらに別なもう一つのエッジシール(31)の接触面となっていることを特徴とする請求項1〜18のいずれか一つのパッキンエレメント。
【請求項20】
第二パッキンリング(12)の接触面に接触するエッジシール(31)は、第一パッキンリング(11)に形成されていることを特徴とする請求項19のパッキンエレメント。
【請求項21】
該バンド(19)に接触するように配置されているエッジシール(21)とは反対側に位置する、第一パッキンリング(11)の裏面(24,25)は、外からアクセスできるようになっているか、または関係するアウターリング(2)の表面(8)の方に向いていることを特徴とする請求項1〜20のいずれか一つのパッキンエレメント。
【請求項22】
第一パッキンリング(11)のエッジシール(21)を第二パッキンリング(12)の該バンド(19)に押し付けているスプリングエレメント(26)が取り付けられていることを特徴とする請求項1〜21のいずれか一つのパッキンエレメント。
【請求項23】
該スプリングエレメント(26)は、第一パッキンリング(11)の、該バンド(19)に接触しているエッジシール(21)に取り付けられていることを特徴とする請求項22のパッキンエレメント。
【請求項24】
該スプリングエレメント(26)は、取り巻くように一周しているワイヤーまたは同種のものとして形成されていることを特徴とする請求項22または23のパッキンエレメント。
【請求項25】
該スプリングエレメント(26)の断面は、円形になっていることを特徴とする請求項22〜24のいずれか一つのパッキンエレメント。
【請求項26】
該スプリングエレメント(26)は、第一パッキンリング(11)のほぼ溝状になっている凹部(25)の中に挿入されていることを特徴とする請求項22〜25のいずれか一つのパッキンエレメント。
【請求項27】
該スプリングエレメント(26)を保持する、第一パッキンリング(11)に設けられた凹部(25)の断面は、円形、特に断面で見て円周に沿う角度が180度を超えることを特徴とする請求項26のパッキンエレメント。
【請求項28】
第一パッキンリング(11)に設けられている凹部の両エッジ(27,35)は、断面で見た場合、第一エッジシール(21)から延伸していることを特徴とする請求項26または27のパッキンエレメント。
【請求項29】
断面で見た場合、該第一エッジシールから延伸している該凹部の両エッジ(27,35)の自由端部には、延長部(14)または同種のものが形成されており、またこの延長部ないし同種のものは、第一パッキンリング(11)を固定するため、回転パーツ(2)の関係する表面(8)に設けられ、該突起部ないし同種のものの形状に対応するほぼ溝状の凹部(13)の中に挿入されていることを特徴とする請求項28のパッキンエレメント。
【請求項30】
第一パッキンリング(11)に設けられている延長部(14)は、断面で見ると盛り上がった部分、特に波、歯、鋸歯、フック、釣り針状に盛り上がった部分を備えていることを特徴とする請求項29のパッキンエレメント。
【請求項31】
第一パッキンリング(11)の、バンド(19)と接触しているエッジシール(21)の断面の先端は、一方の該バンド(19)と、もう一方の該スプリングエレメント(26)をそれぞれ保持している両凹部(18,25)の中心点を結ぶ直線上にほぼ位置していることを特徴とする請求項26〜30のいずれか一つのパッキンエレメント。
【請求項32】
第一パッキンリング(11)の、該バンド(19)に接触しているエッジシール(21)の先端は、断面が鈍角になっていることを特徴とする請求項1〜31のいずれか一つのパッキンエレメント。
【請求項33】
第三のパッキンリング(34)が設置されており、その場合、第三パッキンリングは、互いに対して回転するパーツ(2,3)の一方に取り付けられており、また、互いに対して回転する該パーツ(2,3)のもう一方に接触するエッジシールを備えていることを特徴とする請求項1〜32のいずれか一つのパッキンエレメント。
【請求項34】
断面で見た第三パッキンリング(34)の、該エッジシールとは反対側にある部分が、延長部ないし同種のものとして形成されており、またこの延長部ないし同種のものは、第三パッキンリングを取り付けるため、回転パーツの関係する表面に設けられ、かつ該延長部ないし同種のものの形状に対応するほぼ溝状の凹部の中に挿入されていることを特徴とする請求項33のパッキンエレメント。
【請求項35】
第三パッキンリング(34)に設けられている固定用の延長部は、断面で見ると盛り上がった部分、特に波、歯、鋸歯、フック、釣り針状に盛り上がっている部分を備えていることを特徴とする請求項34のパッキンエレメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−507185(P2009−507185A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−528394(P2008−528394)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【国際出願番号】PCT/EP2006/008373
【国際公開番号】WO2007/025683
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(507395245)アイエムオー ホールディング ジーエムビーエイチ (3)
【Fターム(参考)】