説明

亜硝酸塩及び硝酸塩及びこれらを含む組成物の新規使用

無機陰イオン硝酸塩及び亜硝酸塩が、代謝速度及びグルコースホメオスタシスに影響を与える。亜硝酸塩を静注することにより、安静時エネルギー消費量(酸素消費量)が急激に低下し、硝酸塩を経口で与えた場合、運動中の酸素消費量が低下し、グルコース経口負荷試験後に観察される血糖の増加が抑えられるようになる。硝酸塩及び亜硝酸塩の投与が、血液のメトヘモグロビンレベルに検出可能な変化をもたらすことはなかった。また、硝酸塩及び亜硝酸塩が血液の乳酸塩レベルを変化させることもなかった。この発見から、無機亜硝酸塩及び/又は硝酸塩の投与により哺乳類のエネルギー消費量及びグルコースホメオスタシスを調節するための有用な治療法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤及び調合薬の分野に関し、詳細には、ヒト患者又は別の哺乳類に硝酸塩及び/又は亜硝酸塩を投与することに基づき、前記患者又は哺乳類における代謝速度、酸素消費量及び/又はグルコースホメオスタシスを低下させるための調合薬及び治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硝酸塩(NO3-)及び亜硝酸塩(NO2-)は、一般に、食物連鎖における有害性を伴う恐れのある望ましくない残留物と考えられている(合同食品添加物専門家委員会(JECFA)「特定食品添加物の安全性評価」WHO、1970年、ISBN 9241660503;TANNENBAUM,S.R.ら「ヒト唾液中の亜硝酸塩及びそのニトロソアミン形成との考えられる関係」J cancer Ins.1974年第53巻79〜84頁;BARTSCH,H.ら「内因性ニトロソ化の阻害剤:ヒト癌予防におけるメカニズムと関係」Mutation Res.1988年第202巻307〜324頁)。提唱されるこれらの陰イオンの有害な作用には、胃癌及びその他の悪性腫瘍の促進及び乳児におけるメトヘモグロビン血症の発症が含まれる。このため、食品及び飲料水中の硝酸塩/亜硝酸塩のレベルは厳密に規制されている。
【0003】
近年の研究では、硝酸塩及び亜硝酸塩は、体内において重要な生物学的効果を有する可能性があり、またこれらの効果が有用である可能性があることが示されている(LUNDBERG,Jon O.ら「硝酸塩、細菌及びヒトの健康」Nat Rev Microbiol.2004年第2号593〜602頁)。例えば、亜硝酸塩の陰イオンは、インビトロで試験する(MODIN,A.ら「亜硝酸塩由来一酸化窒素:「酸代謝性」血管拡張の考えられるメディエータ」Acta Physiol Scand.2001年第171巻9〜16頁)か、或いは動脈内投与でヒトに注入した(COSBY,K.ら「デオキシヘモグロビンにより亜硝酸塩が一酸化窒素に還元されるとヒト循環系を血管拡張させる」Nat Med.2003年第9号1498〜505頁)場合、生理的濃度近くで血管拡張を引き起こすことができる。硝酸塩は、共生細菌に依存した過程においてインビボで亜硝酸塩に変換することができる(SPIEGELHALDER,B.ら「ヒト唾液の亜硝酸塩含量に関する食事中の硝酸塩の影響:N−ニトロソ化合物がインビボ形成に関連する可能性」Food Cosmet Toxicol.1976年第14号545〜548頁)。硝酸塩は、摂取されると急速に血中に吸収され、その後唾液に蓄積される。口腔内では、細菌により食事中の硝酸塩の一部が亜硝酸塩に還元され、その後亜硝酸塩は体循環に入ることができる(LUNDBERG,Jon O.ら「無機硝酸塩は、一酸化窒素を全身に発生させる有力源である」Free Radic Biol Med.2004年37巻395〜400頁)。
【0004】
今日まで、亜硝酸塩がインビボで血管拡張性の一酸化窒素(NO)に還元された後の心血管作用が研究者の間で焦点となってきた(COSBYら(上記);DURANSKI,M.R.ら「心臓及び肝臓のインビボ虚血−再灌流の間の亜硝酸塩の細胞保護作用」J Clin Invest.2005年第115巻1232〜1240頁;GLADWIN,M.T.ら「亜硝酸陰イオンの新興生物学」Nat Chem Biol.2005年第1号308〜14頁;LARSEN,F.J.ら「健常ボランティアの血圧に対する食事中の硝酸塩の作用」N Engl J Med.2006年第355巻2792〜3頁)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2005/004884A
【特許文献2】WO2005/007173A
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】合同食品添加物専門家委員会(JECFA)「特定食品添加物の安全性評価」WHO、1970年、ISBN 9241660503
【非特許文献2】TANNENBAUM,S.R.ら「ヒト唾液中の亜硝酸塩及びそのニトロソアミン形成との考えられる関係」J cancer Ins.1974年第53巻79〜84頁
【非特許文献3】BARTSCH,H.ら「内因性ニトロソ化の阻害剤:ヒト癌予防におけるメカニズムと関係」Mutation Res.1988年第202巻307〜324頁
【非特許文献4】LUNDBERG,Jon O.ら「硝酸塩、細菌及びヒトの健康」Nat Rev Microbiol.2004年第2号593〜602頁
【非特許文献5】MODIN,A.ら「亜硝酸塩由来一酸化窒素:「酸代謝性」血管拡張の考えられるメディエータ」Acta Physiol Scand.2001年第171巻9〜16頁
【非特許文献6】COSBY,K.ら「デオキシヘモグロビンにより亜硝酸塩が一酸化窒素に還元されるとヒト循環系を血管拡張させる」Nat Med.2003年第9号1498〜505頁
【非特許文献7】SPIEGELHALDER,B.ら「ヒト唾液の亜硝酸塩含量に関する食事中の硝酸塩の影響:N−ニトロソ化合物がインビボ形成に関連する可能性」Food Cosmet Toxicol.1976年第14号545〜548頁
【非特許文献8】LUNDBERG,Jon O.ら「無機硝酸塩は、一酸化窒素を全身に発生させる有力源である」Free Radic Biol Med.2004年37巻395〜400頁
【非特許文献9】DURANSKI,M.R.ら「心臓及び肝臓のインビボ虚血−再灌流の間の亜硝酸塩の細胞保護作用」J Clin Invest.2005年第115巻1232〜1240頁
【非特許文献10】GLADWIN,M.T.ら「亜硝酸陰イオンの新興生物学」Nat Chem Biol.2005年第1号308〜14頁
【非特許文献11】LARSEN,F.J.ら「健常ボランティアの血圧に対する食事中の硝酸塩の作用」N Engl J Med.2006年第355巻2792〜3頁
【非特許文献12】BORG,G.「身体ストレスの指標としての主観的運動」Scand J Rehabil Med.1970年第2巻第2号92〜8頁
【非特許文献13】ASTRAND,P−Oら、「作業生理機能のテキスト」McGraw−Hill、1970年ISBN 0070024065、619頁
【非特許文献14】LUNDBERG,JOら「無機硝酸塩は、一酸化窒素を全身に発生させる有力源である」Free Rad Bio Med.2004年第37巻第3号395〜400頁
【非特許文献15】BROUWER,E.「ガス交換(酸素摂取及び炭酸排出)及び尿−Nから熱消費量及びヒト及び動物の代謝で酸化された炭水化物及び脂肪の量を計算するための単純な公式について」Acta Physiol Pharmacol Neerl.1957年第6号795〜802頁
【非特許文献16】GAESSER,GAら「定常運動中の筋効率:速度及び作業量の影響」J Appl Physiol.1975年第38号1132〜1139頁
【非特許文献17】LARSEN,FJら「食事中の硝酸塩が健常ボランティアの血圧に与える影響」N Engl J Med.2006年第355巻第26号2792〜3頁
【発明の概要】
【0007】
2005年1月20日のWO2005/004884A(米国政府ら)、及び2005年1月27日のWO2005/007173A(米国政府ら)には、特に被験者の血管を拡張させるために亜硝酸塩を投与する方法が記載されている。エネルギー消費量又はグルコースホメオスタシスに対する少量の硝酸塩/亜硝酸塩の効果については記載されていない。
【0008】
驚くべきことに、本発明者らは、酸素消費量を減少させるのに十分な亜硝酸塩及び/又は硝酸塩の量で無機亜硝酸塩(NO2-)及び/又は硝酸塩(NO3-)を哺乳類に投与することにより、前記哺乳類の代謝速度及び/又は酸素消費量に(単一の組織又は臓器に局所的に又は身体全体に全身的に)影響を与えることができることを示した。酸素消費量は、重篤な低血圧を引き起こすことなく減少し、前記哺乳類のメトヘモグロビンレベルを著しく増加させることもない。
【0009】
本発明はまた、無機亜硝酸塩(NO2-)及び硝酸塩(NO3-)を含む医薬組成物を、酸素消費量を減少させるのに十分な亜硝酸塩及び硝酸塩の量で哺乳類に投与することにより前記哺乳類の代謝速度を低下させる方法も提供する。酸素消費量は、重篤な低血圧を引き起こすことなく減少する。
【0010】
詳細には、本発明は、無機亜硝酸塩(NO2-)を含む医薬組成物を、酸素消費量を減少させるのに十分な亜硝酸塩の量で哺乳類に投与することにより前記哺乳類の代謝速度を低下させる方法を提供する。酸素消費量は、重篤な低血圧を引き起こすことなく減少する。亜硝酸塩は、経口又は非経口で投与することができる。前記亜硝酸塩は、非経口で投与する場合、約0.01〜約10 000ナノモル/kg/分の用量で静脈内に投与することができる。
【0011】
本発明はまた、哺乳類の酸素消費量を減少させるのには十分であるが、メトヘモグロビンレベルを増加させない硝酸塩の量で無機硝酸塩(NO3-)を含む医薬組成物を前記哺乳類に投与し、前記硝酸塩を、約0.01〜約100ミリモル/kg/24hの用量の硝酸塩の形で経口投与することにより前記哺乳類の代謝速度を低下させる方法も提供する。経口で与える場合、硝酸塩を亜硝酸塩の前駆体とみなすことができる。
【0012】
本発明はまた、無機亜硝酸塩及び/又は硝酸塩をポリフェノールと組み合わせた組成物、使用及び方法も提供する。
【0013】
代謝ストレスを際立った特徴とする病理的又は生理的状態の治療、予防又は改善のステップとして、代謝速度及び/又は酸素消費量に対する影響、又はこれらの調整を利用することができる。このようなストレスは、例えば集中治療患者、手術を受ける患者、栄養失調の患者、癌及び食欲不振の患者、火傷を負った患者、外傷患者、新生児及び早産児、神経性食欲不振の患者、固形臓器移植予定の患者又は固形臓器移植を受けた患者などに存在することがある。また、組織内での酸素の必要性の低下による酸素消費量の減少は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息などの炎症性気道疾患、肺高血圧、鬱血性心疾患、間質性肺疾患、肺塞栓症、虚血性心疾患、末梢動脈疾患、睡眠時無呼吸症候群を含む、低い酸素利用性を特徴とするあらゆる病的状態において望ましい。
【0014】
また、本発明による知見を、1型及び2型糖尿病、前糖尿病、集中治療患者、外科的外傷、代謝症候群、肥満、火傷、薬物誘発性糖尿病を含むグルコースホメオスタシスが乱れた状態の治療、予防又は改善(グルコース調節)におけるステップとして代謝速度の調節に適用することもできる。多くの理由から血糖値の安定化が重要であるとともに多くの患者群のみならず健常被験者にも関係することが知られているため、「グルコース調節」という用語は、その最も広い意味で使用される。糖尿病患者が、神経障害、心筋症、血管疾患、創傷治癒不良及び盲目などの合併症にかかりやすいことは常識である。単純な低血糖症にかかっている患者でさえもグルコース調節の恩恵を受けるであろう。さらに、糖尿病以外の多くの一般的な健康状態には、不十分な、又は乱れたグルコース調節という要素が存在すると仮定される。例えば、肥満はグルコース及びインシュリンと密接な関係がある。また、集中力欠如及び躁鬱などの情緒障害は、グルコース調節が上手くいっていないことに関連があることも示唆されている。高血糖並びに低血糖による悪影響には十分な裏付けがあるため、糖尿病及び非糖尿病患者/被験者の両方において適切なグルコース調節を維持することが重要である。
【0015】
本発明はまた、臨床症状を治療、緩和及び/又は予防するための方法も提供し、この方法は、このような状態を治療、緩和及び/又は予防するのに十分な有効量の硝酸塩及び/又は亜硝酸塩を、これを必要とする患者に投与するステップを含む。
【0016】
本発明による知見及び本発明者らが到達した結論として、本発明は、運動選手などの健常者、又は説明で例示した1又はそれ以上の病気に苦しむ患者の両方に投与するための医薬品、経腸又は非経口栄養液、又は栄養補助食品を製造するための、亜硝酸塩及び/又は硝酸塩の新規使用も提供する。
【0017】
引用により本明細書に組み入れる図、説明及び実施例、並びに添付の特許請求の範囲を検討することにより、当業者にはさらなる実施形態が明らかになるであろう。
【0018】
添付の図面を参照しながら、以下の説明、限定的でない実施例及び特許請求の範囲において本発明についてさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】硝酸塩とポリフェノールとの組み合わせが相乗的に作用して、一酸化窒素の生体利用性を高めると同時に、酸素ラジカル及びニトロソアミンなどの有害な化合物の形成を減少させる数多くの方法を示すグラフを示す図である。詳細な説明は本文を参照されたい。
【図2】ナトリウム亜硝酸塩を次第に用量を増加させて静脈内に注入した後の酸素消費量(VO2)の変化を示すグラフである。亜硝酸塩は、10分間にわたって非喫煙健常男性ボランティア(30〜70歳)に注入した。
【図3】9人の健常男性ボランティアにおける、安静時及び運動直後に測定した亜硝酸塩の血漿濃度に対する硝酸ナトリウム又は塩化ナトリウム(プラセボ)を含む食事補給の効果を示すグラフである。
【図4】硝酸ナトリウム(0.1mmol/kg/分、NIT)又は等量の塩化ナトリウム(CON)を3日食事補給した後に6つの異なる作業量で測定した酸素消費量(VO2)及び心拍数(HR)を示す棒グラフである。この調査は、試験間の休薬期間が少なくとも10日の無作為化二重盲検クロスオーバー法で行った。*p<0.05、**p<0.01。
【図5】9人の健常男性ボランティアにおけるVO2peakが80%の自転車エクササイズ中の酸素消費量を示すグラフである。測定は、硝酸ナトリウム(0.1mmol/kg/日)又は等量の塩化ナトリウム(プラセボ)を3日食事補給した後に行った。硝酸塩期間とプラセボ期間との差は顕著であった(p<0.01)。
【図6】硝酸ナトリウム(0.1mmol/kg/日を3日間、塗りつぶした棒)又は等量の塩化ナトリウム(プラセボ、白い棒)を食事補給した後に6つの異なる作業量で測定した血漿乳酸塩濃度を示す棒グラフである。
【図7a】二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験で3人の被験者にグルコースを経口負荷した後の血糖値の変化を示す3つのグラフの1つである。標準的なグルコース経口負荷試験を行った。被験者(健常非喫煙ボランティア)は、用量0.1mmol/kg/日の塩化ナトリウム(プラセボ)又は硝酸ナトリウム(硝酸塩)のいずれかを含む食事を3日間補給した。
【図7b】二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験で3人の被験者にグルコースを経口負荷した後の血糖値の変化を示す3つのグラフの1つである。標準的なグルコース経口負荷試験を行った。被験者(健常非喫煙ボランティア)は、用量0.1mmol/kg/日の塩化ナトリウム(プラセボ)又は硝酸ナトリウム(硝酸塩)のいずれかを含む食事を3日間補給した。
【図7c】二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験で3人の被験者にグルコースを経口負荷した後の血糖値の変化を示す3つのグラフの1つである。標準的なグルコース経口負荷試験を行った。被験者(健常非喫煙ボランティア)は、用量0.1mmol/kg/日の塩化ナトリウム(プラセボ)又は硝酸ナトリウム(硝酸塩)のいずれかを含む食事を3日間補給した。
【図8】8人の追加被験者に二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験でグルコースを経口負荷した後の血糖値の変化を示すグラフである。標準的なグルコース経口負荷試験を行った。被験者(健常非喫煙ボランティア)は、用量0.1mmol/kg/日の塩化ナトリウム(プラセボ)又は硝酸ナトリウム(硝酸塩)のいずれかを含む食事を3日間補給した。標準±SEMでデータを示す。
【図9】ビートルートジュース(生ジュース3〜4dl/日)による2週間の診療が、43歳の高血圧を伴う男性の最高、最低及び平均動脈(MAP)血圧に与える効果を示すグラフである。
【図10】硝酸塩または亜硝酸塩に関して静脈内注入した後の血漿中濃度を示す図であって、“a”は硝酸塩を静脈内注入した後の血漿中硝酸塩濃度を示し、“b”硝酸塩を静脈内注入した後の血漿中亜硝酸塩濃度を示し、“c”は硝酸塩を静脈内注入した後の、野生種(C57BL/6)無菌及びノックアウト(eNOS)マウスにおける血漿中亜硝酸塩濃度を示す。
【図11】硝酸塩注入後に高まった虚血後血流を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
定義
本方法及び組成物について実施形態の形で説明する前に、本明細書で開示する特定の構成、方法ステップ、及び材料は、若干変化させることができるため、本発明はこのような構成、方法ステップ及び材料に限定されるものではないことを理解されたい。また、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその同等物によってのみ限定されるものであるため、本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を説明する目的でのみ使用され、本発明を限定することを意図したものではないことも理解されたい。
【0021】
また、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する場合、「1つの(英文不定冠詞)」及び「その(英文定冠詞)」という単数形は、文脈において単数であることをはっきりと示していない限り複数形の意味を含むことに留意されたい。
【0022】
「約」という用語は、数値との関連において使用する場合、当業者が熟知し、受け入れることのできる正確さの間隔を表す。前記間隔は、適用した場合、所定の値の±2%とすることができ、好ましくは数値の±5%、最も好ましくは±10%とすることができる。
【0023】
「哺乳類」という用語は、全ての哺乳類、詳細にはヒト、ペット及び農業的に重要な動物、並びに馬及び犬などの競技に使用する動物を含むことが意図される。
【0024】
「重篤な低血圧」という用語は、本明細書では、めまい、嘔気、顔面蒼白、意識喪失などの低血圧の臨床症状を伴う最高及び/又は最低血圧の急激な低下を意味する。前記症状は、様々な程度で起こる可能性があり、完全に避けられ、最低限に抑えられ、或いは可能な限り又は少なくとも臨床的に重篤でなくなる範囲まで取り除かれることが好ましい。
【0025】
「代謝症候群」という用語は、本明細書では、ヒトにおける心疾患及び糖尿病のリスクを増加させる内科的疾患の組み合わせと定義される。症状及び特徴として、空腹時高血糖、2型糖尿病又は空腹時グルコース異常、耐糖能異常又はインシュリン耐性異常、高血圧、中心型肥満、HDLコレステロールの減少、トリグリセリドの上昇及び尿酸レベルの上昇が挙げられる。
【0026】
「インシュリン耐性」という用語は、本明細書では、通常のインシュリン量が、脂肪、筋肉及び肝臓細胞から正常なインシュリン反応を得るには不十分な状態と定義される。
【0027】
「代謝」という用語は、生体細胞で起こる完全な化学反応の組を定義するのに使用され、「代謝速度」は、哺乳類の代謝のスピードと定義される。「エネルギー消費量」という用語は、本明細書では、特定の代謝速度に費やすエネルギーの量と定義される。
【0028】
「酸素消費量」という用語は、哺乳類が消費する酸素(O2)の量と定義され、通常、消費する純酸素であるml/分で表わされる。「酸素消費量」は、哺乳類が全体として消費する酸素の量に関するものであるが、以下に限定されるわけではないが、虚血にさらされた心臓、肝臓、脳又はその他の組織のような単一の組織又は臓器における酸素消費量にも関する。
【0029】
メトヘモグロビンは、ヘム基の鉄がFe3+の状態であり、正常ヘモグロビンのFe2+ではないヘモグロビンの形のことである。メトヘモグロビンは酸素を運搬することができない。メトヘモグロビン血症は、血液中に正常レベルよりも高いレベルのメトヘモグロビンが存在することを特徴とする血液障害と定義される。
【0030】
「異化」という用語は、分子をより小さな単位に分解する代謝過程と定義される。この代謝過程は、生体細胞における分解化学反応で構成される。
【0031】
「機能性食品」という用語は、栄養素の補給という基本的な栄養機能を超える健康促進特性及び/又は疾患予防特性を有すると主張されるあらゆる生鮮食品又は加工食品に関する。機能性食品は栄養補給食品と呼ばれることもある。この一般的なカテゴリーには、機能性食品の原料で作られた、或いは「ビタミン強化」製品のような健康促進添加物で栄養強化された加工食品が含まれ、また特定の宣伝文句が添えられた(野菜などの)生鮮食品も含まれる。また、生きた培養菌を含む発酵食品もプロバイオテックな利点を有する機能性食品とみなされることが多い。
【0032】
驚くべきことに、本発明者らは、酸素消費量を減少させるのに十分な亜硝酸塩及び/又は硝酸塩の量で無機亜硝酸塩(NO2-)及び/又は硝酸塩(NO3-)を哺乳類に投与することにより、前記哺乳類の代謝速度及び/又は酸素消費量に(局所的に又は全身的に)影響を与えることができることを示した。酸素消費量の減少が、前記哺乳類に重篤な低血圧を引き起こすことなく、及びメトヘモグロビンレベルを著しく増加させることもなく実現される。代謝速度が局所的に減少する場合、虚血(血流、従って酸素が身体の一部に制限された状態)にさらされた単一の組織又は心臓、肝臓、脳又はその他の組織のような臓器において酸素消費量が減少する。このような場合、亜硝酸塩及び/又は硝酸塩の反応生成物(NOを含む)とミトコンドリア呼吸鎖の酵素との相互作用及びその後の呼吸阻害により酸素必要量が低下することになり、これが虚血性組織に有益となる。この作用は冬眠に類似する。活性亜硝酸塩及び/又は硝酸塩反応生成物の生成は虚血性組織において最大化するため、酸素消費量の影響は、この部位で最も顕著となる。1つの特定の実施形態では、酸素消費量が心臓で低下する。
【0033】
亜硝酸塩及びその前駆体である硝酸塩が、代謝速度及び/又は酸素消費量のような生体の生理的過程に影響を及ぼすという驚くべき知見を、いくつかの病気の予防、緩和又は治療などに治療的に利用することができる。全身の亜硝酸塩レベルを増加させるために、亜硝酸塩及び/又は硝酸塩を経腸投与により(液体、半固体、又はチューインガム、錠剤、菓子錠剤、ウエハース、ケーキ、バーなどの固体製剤の形で経口的に)、或いは非経口投与(静脈内、経真皮的、経皮的、吸入、直腸内、経膣的、局所的、腹腔内、筋肉内、皮下、舌下又はあらゆる他の非経口投与法)により与えることができる。本明細書で説明する組成物及び考えられる別の組み合わせを含む亜硝酸塩及び/又は硝酸塩を連続して、或いは1回の注射の形で投与することができる。
【0034】
原理上、他の追加的方法により全身的又は局所的亜硝酸塩レベルを増加させることもできる。従って、最も明らかなことは、亜硝酸塩又はその前駆体である硝酸塩を投与することであるが、(例えばプロトンポンプ阻害薬又はHb受容体拮抗剤又は制酸薬などの酸抑制薬によって)胃のpHを増加させて胃内の亜硝酸塩の残存、従って亜硝酸塩の全身送達を最大化することにより、上記投与を補い、或いは促進することができる。或いは、硝酸塩還元種の数を最大にするために口腔ミクロフローラを妨げることにより、亜硝酸塩又は硝酸塩の投与を補い、或いは促進することができる。「プロバイオテック」硝酸塩還元細菌を送出し、或いは抗生物質で選択的に治療を行って硝酸塩還元種を助けることにより、上記を実現ことができる。
【0035】
最適な投与間隔が存在すると思われ、すなわち亜硝酸塩が特定の血漿レベルよりも低ければ効果は不十分であり、同様に特定のレベルを超えると効果が下がり、副作用を伴う可能性もある。静脈内投与により、亜硝酸塩を約0.01〜約10000ナノモル/kg/分、好ましくは約0.01〜約1000ナノモル/kg/分、さらに好ましくは約0.1〜約100ナノモル/kg/分、最も好ましくは約1〜約20ナノモル/kg/分の間の用量で投与することが好ましい。最も好ましい用量は、約15ナノモル/kg/分未満であることが現在のところ企図される。ちなみに、シアン化物中毒の治療に使用される亜硝酸塩用量は、1回の用量で約100000ナノモル/kg、又は約300〜400mgである。また、好ましくは0.01〜100umol/kg体重、より好ましくは0.1〜10umol/kg体重、さらに好ましくは0.1〜2umol/kg体重の亜硝酸塩を1回又はそれ以上の注射の形で投与することもできる。
【0036】
硝酸塩を経口で使用する場合、現在のところ約0.01〜100mmol/kg/24hの用量が好まれており、約0.01〜10mmol/kg/24hの用量がより好ましく、0.1〜1mmol/kg/24hがさらに好ましい。
【0037】
硝酸塩又は亜硝酸塩の投与量が、約10%を超えるメトヘモグロビン、好ましくは約5%を超えるメトヘモグロビン、さらに好ましくは約2%を超えるメトヘモグロビンの生成を誘発しないことが重要である。処方量に従って投与又は摂取した場合、硝酸塩又は亜硝酸塩の投与が被験者のメトヘモグロビンに測定可能な変化を誘発しないことが最も好ましい。
【0038】
また、硝酸塩及び亜硝酸塩の組み合わせを使用することもできる。1つの実施形態によれば、硝酸塩及び亜硝酸塩は、約5:1〜約100:1(硝酸塩:亜硝酸塩)の間の用量比で、例えば5:1、10:1、30:1、50:1、70:1及び100:1で経口的に与えられる。用量比は約10:1であることが好ましい。この用量比により、亜硝酸塩が吸収されてからすぐの急性効果が確実となり、その後、亜硝酸塩に生物変換された後の硝酸塩の持続作用が生じるようになる。
【0039】
1つの実施形態では、無機亜硝酸塩及び/又は硝酸塩を含む組成物は、所定の用量で被験者に投与した場合、酸素消費量を減少させるのには十分であるが、前記被験者のメトヘモグロビンレベルを増加させない量の無機亜硝酸塩及び/又は硝酸塩を含む医薬組成物である。組成物は任意に別の医薬活性化合物を含む。
【0040】
或いは、亜硝酸塩及び/又は硝酸塩を含む組成物は、被験者が所定の用量を摂取した場合、前記被験者の酸素消費量を減少させるのには十分であるが、重篤な低血圧を引き起こさない量の無機亜硝酸塩及び/又は硝酸塩を含む栄養補助食品、経腸栄養液、乳児用調合乳、スナック製品又は非経口栄養液である。
【0041】
医薬的に容認可能な硝酸塩及び亜硝酸塩として、以下に限定されるわけではないが、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、アルギニン及びアンモニウムが挙げられる。ナトリウム及びカリウム塩が現在のところ最も好ましい。亜硝酸塩及び硝酸塩は合成起源のものであってもよいが、緑色葉野菜などの天然硝酸塩含有植物のような自然源から単離することもでき、例として、以下に限定されるわけではないが、ホウレンソウ、レタス、フェンネル、キャベツ、白菜及びビートルートが含まれる。本発明による食品(機能性食品を含む)又は栄養補助食品を製造するために、上記の及びその他の硝酸塩に富む野菜又は果物のジュース又は乾燥濃縮物のような濃縮物が適切に使用される。
【0042】
ポリフェノールは、植物に見られる化学物質の群であり、1分子あたり2以上のフェノール基が存在することを特徴とする。ポリフェノールは、一般に、グルコース及びその他の糖質の没食子酸エステルである加水分解型タンニンと、リグニン、フラボノイド、及び縮合型タンニンなどのフェニルプロパノイドとにさらに再分割される。本発明の1つの実施形態では、無機亜硝酸塩及び/又は硝酸塩が、高レベルのポリフェノールを含む化合物と混合される。この組み合わせにより、NOの生体利用性の相乗作用を通じて健康促進効果を得るようになることが企図される。ポリフェノールは、図1で強調しているいくつかの別個のメカニズムによりNOの生成を促進する。第1に、このような物質は、NOシンターゼ酵素(図1の1)から内生的NO形成に直接刺激を与えることができる。第2に、フェノール環に還元OH基が存在するため(図1の2)、これらの化合物が亜硝酸塩の生物活性NOへの還元を促進することが企図される。第3に、超酸化物のようなフリーラジカルのスカベンジャーとして機能することにより、これらのラジカルがNOと相互作用(及び破壊)しないようにすることによって、NOをさらに長寿命にする(図1の3)。これに加えて、亜硝酸塩又はその反応生成物がポリフェノール自体と相互作用し、ニトロ化又はニトロソ化反応を通じてポリフェノールを化学的に修飾することができる(図1の4a)。結果として得られる化合物は、長寿命NO供与体(図1の4b)として機能することができる。追加の効果として、ポリフェノールの存在により、潜在的に発癌性であるニトロソアミンが形成されないように化学反応が変化する(図1の5)。硝酸塩反応生成物である亜硝酸塩は、アミンと反応してニトロソアミンを形成することができるが、ポリフェノールは、二重のメカニズムによってこの反応を阻害する。第1に、ポリフェノールは、HNO2を急速に直接NOに還元することにより、ニトロソ化種(N23、HNO2)の形成を最低限に抑えるのに役立つ。第2に、ポリフェノールは、自身がニトロソ化されることにより、アミンのニトロソ化と直接争うことができる。
【0043】
本発明の1つの実施形態では、無機亜硝酸塩及び/又は硝酸塩が、高ポリフェノール化合物又は生成物との併用で投与又は使用される。亜硝酸塩/硝酸塩含有組成物:高ポリフェノール化合物の比は、硝酸塩が十分に供給されるように選択すべきである。従って、亜硝酸塩/硝酸塩含有組成物は、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約30%、さらに好ましくは少なくとも約40%及び最も好ましくは少なくとも約50%又はそれ以上とすべきである。亜硝酸塩/硝酸塩と高ポリフェノール化合物又は生成物との組み合わせが相乗的に作用して、ニトロソアミンのような有害化合物を犠牲にして体内におけるNO形成を促進すると考えられる。この作用の有益な効果として、血圧及び血小板凝集の減少、アテローム性動脈硬化症の軽減、心筋梗塞、卒中及びその他の心疾患のリスクの低下、あらゆる形の癌のリスクの低下が挙げられる。ポリフェノールが豊富な果物又はそのジュースの例として、以下に限定されるわけではないが、リンゴ、ナシ、ブドウ、レモン、オレンジ、ライム、モモ、ザクロ、グレープフルーツ、キウィ、ショウガ及びパイナップルが挙げられる。また、ブラックベリー、ブラックラズベリー、ブルーベリー、クランベリー、レッドラズベリー、チェリー、クロマメノキ、コケモモ、ブラックエルダーベリー、ブラックチョコベリー、ブラックカラント、ブルーベリー、クラウドベリー及びストロベリーを含むベリー類から得たジュースも使用可能である。その他のポリフェノールの自然源としては、ニンジン、チリ、ルバーブ、タマネギなどの野菜が挙げられる。また、カカオ製品(フラボノールが豊富)、グリーン又はブラックティー、ナッツ、イエルバマテ及びコーヒーは全てポリフェノールが豊富である。1つの好ましい実施形態では、本発明の組成物における硝酸塩は、1又はいくつかのポリフェノールに富む化合物又は製品とブレンドしたビートルート(例えばビートルートジュース)に由来する。ビートルートジュース:高ポリフェノール化合物の比は、硝酸塩が十分に供給されるように選択すべきであり、従って、ビートルートジュース側を、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約30%、さらに好ましくは少なくとも約40%及び最も好ましくは少なくとも約50%とすべきである。
【0044】
本発明の1つの実施形態によれば、1回分の亜硝酸塩及び/又は硝酸塩、又はポリフェノールを含む亜硝酸塩及び/又は硝酸塩が、任意に生きた非病原性細菌も含むチューインガム、薬用キャンデー又はトローチ、ウェハース、ケーキ、バーなどの形で投与又は製造される。また、これを機能性食品として又は機能性食品の一部として投与又は製造することもできる。
【0045】
また、亜硝酸塩及び/又は硝酸塩、又は硝酸塩及び/又は亜硝酸塩とポリフェノールとの組み合わせを使用することにより、血圧に有益な効果を有することもできる。従って、1つの実施形態では、本発明は、血圧を好ましくは正常レベル(約140/80mmHg)まで降下させる方法に関する。亜硝酸塩及び/又は硝酸塩源の例としては、(上述した野菜又はそのジュースなどの)硝酸塩の自然源又は亜硝酸塩及び/又は硝酸塩の塩がある。1つの特定の実施形態では、哺乳類の血圧を降下させるためにビートルート又はそのジュースが投与される。
【0046】
非病原性生細菌と組み合わせる目的は、NO、ニトロソ付加物又は化学的に関連する化合物などの生物活性化合物の生成をさらに強化することにある。この強化は、硝酸塩及び亜硝酸塩のNO及びその他の生物活性酸化窒素への細菌依存した還元を通じて、消化管において局所的に行われる。具体的には、この組み合わせは、胃、十二指腸、空腸、盲腸及び結腸/直腸の潰瘍などの消化管疾患を治療して予防するのに効果的となる。また、この組み合わせ製品は、潰瘍性大腸炎、クローン病、顕微鏡的大腸炎及びその他の形を含む炎症性腸疾患を治療及び予防するのに効果的であることが企図される。過敏性腸疾患(IBS)は、前記製品で治療することができる別の病気である。また、形成された化合物は全身的に吸収され、例えば、血圧を低下させる上で、及びアテローム性動脈硬化症、癌、又は上述のようなNO放出の促進に関するあらゆる他の作用を予防する上で持続的な生物学的効果を有することができる。適当な細菌はいわゆるプロバイオテック細菌であり、以下に限定されるわけではないが、(例えばアシドフィルス菌、デルブリュッキ菌、ヘルベティカス菌、サリバリウス菌、カゼイ菌、カルバタス菌、プランタラム菌、サケイ菌、ブレビス菌、ブフネリ菌、ファーメンタム菌、ロイテリ菌などの)ラクトバチルス属と、ブレベ菌、ビフィダム菌及びラクティス菌などのビフィドバクテリウム属と、サッカロマイセスボウラディなどのプロバイオテック酵母菌とを含む。硝酸塩還元又は亜硝酸塩還元を促進する他の適当な非病原細菌には、例えばベイヨネラ属、ブドウ球菌属、放線菌属又はロチア属が含まれる。また、これらの微生物を「乾燥型」の、例えば錠剤、カプセル、バーなどに含めることもできる。
【0047】
1つの実施形態では、無機亜硝酸塩及び/又は硝酸塩組成物に低濃度エタノールを加える。1つの実施形態では、エタノールを無機亜硝酸塩及び/又は硝酸塩組成物との併用で使用し、或いはこれらとともに投与する。驚くべきことに、極めて低濃度のエタノールでも、生理量の亜硝酸塩と反応させることにより強力な血管拡張性エチル亜硝酸塩を生成できることが判明している。この反応は、胃管腔内のような酸性の状態で促進される。硝酸塩の摂取により唾液中に亜硝酸塩が蓄積し、亜硝酸塩が胃内のエタノールと反応することによりエチル亜硝酸塩を形成することが企図される。例えば、本発明の組成物が液体の形である場合、エタノール含量は、約5%(v/v)未満、さらに好ましくは約2%(v/v)未満、最も好ましくは約0.5〜1.5%(v/v)の間とすべきである。
【0048】
本発明の1つの実施形態では、フラバノールに富むダークチョコレートなどのカカオ製品を硝酸塩に富む天然化合物と飲料又はチョコレートバーの形で組み合わせる。この実施形態における硝酸塩に富む1つの好ましい化合物はルバーブである。この場合も、上述するとともに図1に示すようにNO形成を促進することにより、硝酸塩がフラバノールの効果を高めることになる。
【0049】
硝酸塩含有食品又は飲料が不要な細菌で汚染されると、硝酸塩還元細菌酵素が原因で亜硝酸塩が大量に蓄積する可能性がある。高レベルの亜硝酸塩の摂取は、重篤なメトヘモグロビン血症を引き起こすことがある。1つの実施形態では、硝酸塩に富む組成物が、不要な細菌の繁殖を阻害する化合物と混合される。このような化合物は、製品の風味に悪影響を及ぼさないように選択すべきである。理想的には、このような化合物は、風味を向上させると同時に製品の生物活性も増加させるべきである。1つの選択肢としては、最終的なpHが約5未満、最も好ましくはpH約2〜4の間になるように本発明の組成物を酸性にすることである。これにより、細菌の繁殖が阻害及び/又は根絶される。適当な酸性化剤は、pHを低下させるとともに、人工化合物のほかに、以下に限定されるわけではないが、レモン又はライム、アスコルビン酸、酢酸又は(リンゴ、ブドウ又は他の果物由来の)食酢などから得た天然ジュースを含むあらゆる薬剤であってもよい。天然製品を使用することにより、二重の効果が得られることが企図される。抗菌作用を有することに加え、これらがポリフェノールに富むことにより、野菜飲料における硝酸塩/亜硝酸塩から生物活性NOの生成が促進される。1つの特定の実施形態では、(ビートルートジュースなどの)硝酸塩に富む野菜ジュースが、不要な細菌の繁殖を阻害する化合物と混合される。
【0050】
本発明の1つの実施形態によれば、硝酸塩及び亜硝酸塩が、以下に限定されるわけではないが、抗糖尿病薬(インシュリン、及びビグアニド、スルホンウレイド、αグリコシダーゼ阻害剤、チアゾリジンジオン、グリニドを含む経口抗糖尿病薬)、心血管薬(スタチン、ACE阻害剤、β受容体拮抗剤、利尿剤、アンジオテンシン2受容体拮抗剤、有機硝酸塩、カルシウムチャネル遮断薬)酸分泌阻害剤(プロトンポンプ阻害剤、ヒスタミン2受容体遮断薬)、プロスタサイクリン類似物、エンドセリン受容体拮抗剤及びシルデナフィルを含む肺高血圧治療薬を含むその他の薬剤と組み合わせられる。
【0051】
1つの実施形態によれば、ニトログリセリン又は一/二硝酸イソソルビドを含む有機硝酸塩による経口治療を通じて、亜硝酸塩が全身的に送達される。ニトログリセリンは、臨床的には狭心症の治療に使用され、血管拡張性の一酸化窒素を全身に放出することによって作用する。しかしながら、この薬物は、肝臓の初回通過代謝がかなり大きいため非経口で与える必要がある。興味深いことに、ニトログリセリンが肝臓で代謝されると、主成分として亜硝酸塩を生じることが判明している。従って、本明細書で説明する亜硝酸塩の新規の生物学的作用について考慮すると、ニトログリセリンを亜硝酸塩の「プロドラッグ」として使用することができる。この薬物を(肝臓代謝を伴う)経腸経路で与えて亜硝酸塩の生成を最大化すると同時に、ニトログリセリンの静注又は舌下投与に伴う急激な血管拡張及び全身血圧の低下を避けることが好ましい。ニトログリセリンを経口で与える際の適当な用量範囲は、約0.001〜10mol/kg/24時間、好ましくは約0.001〜1mol/kg/24時間、さらに好ましくは0.01〜約0.1mmol/kg/24時間である。錠剤をコーティングして口腔吸収を避けることが好ましい。
【0052】
1つの実施形態によれば、亜硝酸塩及び/又は硝酸塩を非経口及び経腸栄養法/栄養液に加えて、大人、小児、新生児及び早産児に使用する。本発明者らが行った測定で示すように、今日このような溶液は、一般に硝酸塩及び亜硝酸塩が極めて少ない(図示せず)。非経口的栄養法を伴う挿管式人工呼吸器装着患者は、硝酸塩/亜硝酸塩が特に欠乏している。第1に、これらの患者は正しく唾液を生成して飲み込まないため、1つの大きな硝酸塩/亜硝酸塩源が途絶する。第2に、上述したように、患者が受ける栄養補給に硝酸塩/亜硝酸塩がほとんど含まれていない。多くの集中治療患者は、ストレス及び外傷が原因で代謝障害、特に異化に苦しんでおり、これらの患者の代謝速度は増加することが多い。さらに、インシュリン耐性がよく見られ、グルコースホメオスタシスが乱れている。これらの患者には、インシュリンを投与することによって血漿グルコースを厳格に制御することが推奨されている。また、乳児などの健常被験者、又はその他の理由で経腸液を摂取する被験者も本発明の組成物及び方法の恩恵を受けることができる。従って、経腸栄養法は、乳児用調合乳及びその他の経腸製品も含むことが意図される。
【0053】
1つの実施形態では、医薬品、経腸又は非経口栄養液、術前組成物、栄養補助食品、又は運動選手などの健常者又は本明細書で例示した病気のうちの1又はそれ以上に苦しむ患者の両方に投与するための機能性食品を製造するための亜硝酸塩及び/又は硝酸塩の使用を本明細書で提供する。この実施形態には、亜硝酸塩及び/又は硝酸塩と上述した他の化合物との組み合わせを含めることも可能である。
【0054】
1つの実施形態では、臨床症状を治療、緩和及び/又は予防する方法が提供され、この方法は、このような病気を治療、緩和及び/又は予防するのに十分な有効量の硝酸塩及び/又は亜硝酸塩を、これを必要とする患者に投与するステップを含む。
【0055】
本発明による硝酸塩及び/又は亜硝酸塩を使用してこのような治療、緩和及び/又は予防が行われる可能性のある多くの臨床症状が存在する。
・糖尿病/前糖尿病のグルコース調節
・代謝症候群
【0056】
本発明による方法及び組成物はまた、代謝ストレスの患者における一般治療的な、緩和的な、及び/又は予防的な効果も有する。例として、以下に限定されるわけではないが、
・集中治療患者
・手術を受ける患者
・様々な起源による栄養失調の患者
・食欲不振を伴う癌
・火傷
・外傷
・新生児/早産児
・神経性食欲不振
・甲状腺障害(例えば甲状腺機能亢進症)
・心筋梗塞、心停止
・異化状態の主な全身性疾患
・ストレス潰瘍(胃)
・外科的腸管吻合不全
・発熱
・心筋梗塞及び心停止
・虚血−再灌流傷害(Ml、卒中、動脈不全又はあらゆる他の臓器虚血)
・睡眠時無呼吸症候群
・敗血症ショック
・腸潅流不全
が挙げられる。
【0057】
ICU(集中治療室)で治療される患者は、外傷、感染、疼痛及び他の病理過程が原因で重篤な代謝ストレスを受けることが多い。このような患者は、以下に限定されるわけではないが、術後観察、外傷、出血、火傷、脳損傷、卒中、糖尿病、敗血症、敗血症ショック、心筋梗塞、心停止、動脈不全又はあらゆる他の臓器虚血、慢性閉塞性肺疾患、喘息及び他の重篤な炎症状態、肺高血圧、鬱血性心不全、肺塞栓症を含むいくつかの理由によって治療を受ける。これにより、様々な程度の異化、及びグルコース処理が乱されることに伴うインシュリン耐性が生じる。また、このような患者は、微小循環障害に至る血管内皮機能不全に苦しむことも多い。上述したように、これらの患者は、経腸及び非経口的栄養補給では微量の硝酸塩/亜硝酸塩しか与えられず、いくつかの理由(鎮静剤の使用、挿管)に起因して、健常者に比べて硝酸塩/亜硝酸塩の腸唾液線循環が乱れている。
【0058】
集中治療室で治療を受ける患者に非経口及び/又は経腸栄養補給の形で十分な量の亜硝酸塩及び/又は硝酸塩を加えることにより、代謝速度が減少し、血糖ホメオスタシスが向上し、微小循環が改善することによって前述の代謝性及び循環性障害を緩和又は予防できることが企図される。
【0059】
手術を受ける患者は様々な程度の外科的外傷を受ける。これが、コルチゾール、グルカゴン及びアドレナリンなどの異化ホルモンを誘発し、このような患者は一過性のインシュリン耐性を患うことがある。麻酔中に患者が嘔吐又は逆流させた場合、誤って気道に吸引される恐れのある胃内容物を減少させるために、通常の臨床手順には絶食が含まれる。このような絶食により硝酸塩/亜硝酸塩の摂取が無くなり、絶食後には硝酸塩及び亜硝酸塩の全身レベルが減少することが示されている。手術前、手術中又は手術後に亜硝酸塩及び/又は硝酸塩を投与することにより、外科患者の代謝状態が改善(代謝速度の減少、血糖ホメオスタシスの向上)することが企図される。さらに、周術期全体の間、患者は、低血圧、低酸素症及び微小循環障害による虚血イベントのリスクが高い状態にある。このようなイベントが、身体内のいくつかの臓器系を損傷する可能性のある虚血−再灌流過程を起こすことになる。硝酸塩及び/又は亜硝酸塩陰イオンを含む術前飲料として、限定的な意味ではないがビートルートジュースのような適当な野菜ジュースとして、或いは非経口経路を介して硝酸塩及び/又は亜硝酸塩を与えることによって亜硝酸塩及び/又は硝酸塩を予防的に投与することにより、限定的な意味ではないが、脳、心臓、肺、肝臓、腎臓及び骨格筋を含むいくつかの臓器において手術中に虚血−再灌流イベントの悪影響が減少することが企図される。
【0060】
心筋梗塞中の虚血−再灌流損傷が、臨床ケアにおける主な問題である。心筋梗塞の最先端治療として、血栓溶解剤による薬理学的手段及び/又は経皮冠動脈インターベンションにより、閉塞した冠状血管を再開することが挙げられる。本発明による方法及び組成物は、血流を増加させるとともにミトコンドリア機能を変化させることにより虚血−再灌流損傷を減少させることが企図される。本出願における実験から、場合によってはミトコンドリアに対する「冬眠」効果により、虚血−再灌流中に硝酸塩及び亜硝酸塩が酸素消費量を減少させることができるとも考えられる。硝酸塩及び亜硝酸塩が虚血−再灌流損傷を改善できる別のメカニズムに、酸素ラジカル形成及びミトコンドリアからのチトクロームCの放出を減少させることによるものがある。硝酸塩及び亜硝酸塩がミトコンドリア機能に及ぼす影響は、一酸化窒素(NO)がミトコンドリア呼吸鎖におけるタンパク質複合体の酸化的リン酸化及び/又はs−ニトロシル化と相互作用することにより媒介される可能性が最も高い。心筋梗塞誘発性虚血−再灌流損傷に関して硝酸塩及び/又は亜硝酸塩を投与する時点は、損傷前、損傷中又は損傷後のいずれにおいても効果があると予想される。硝酸塩及び/又は亜硝酸塩の調整前及び調整後作用の両方が考えられ、このことは、患者が病院に搬送される途中に既に救急車内で、冠循環の再灌流の前後に病院で、及び病棟でも治療を受けることができることを意味する。また、(狭心症、鬱血性心不全などの)心筋梗塞発症のリスクが高い患者については、本発明による方法及び組成物での予防的治療を検討することができる。心停止及び蘇生後、脳を含むいくつかの主要臓器システムに関連する全身性の虚血−再灌流損傷が生じる。硝酸塩及び/又は亜硝酸塩は、心停止のリスクが高い患者に予防的に与えても、また蘇生行為中に与えても有益であることが企図される。
【0061】
好ましい実施形態によれば、硝酸塩及び/又は亜硝酸塩、又は本明細書で述べるあらゆる組み合わせが、手術又は実質的な侵襲的検査手順を受ける予定の患者にも術前に与えられる。1つの特定の実施形態では、無機亜硝酸塩及び/又は硝酸塩が炭水化物と組み合わせられる。従って、このような組み合わせには、以下に限定されるわけではないが、硝酸塩単独、硝酸塩と亜硝酸塩、硝酸塩と亜硝酸塩と炭水化物、硝酸塩と炭水化物、亜硝酸塩単独、及び亜硝酸塩と炭水化物が含まれる。また、前述の組み合わせのいずれにもポリフェノールを添加することができる。あらゆるこのような組み合わせを、手術前に術前飲料などの形で、或いは手術前又は手術中に静脈内に(1回の又は反復投与で)投与することができる。このような術前飲料を投与するのに適した時間は、手術前の72時間と2時間の間である。亜硝酸塩及び/又は硝酸塩と炭水化物との組み合わせは、インシュリン耐性、及び術前及び術後期間によく見られる虚血/再灌流損傷を改善することもできる。炭水化物の例として、以下に限定されるわけではないが、グルコース、フルクトース、マルトデキストリン、ショ糖、乳糖、ガラクトース及びマンノースが挙げられる。術前に与える場合、飲料中の炭水化物の量は、好ましくは約200kcal、さらに好ましくは約100kcal及び最も好ましくは約50kcalが患者に供給される。硝酸塩を経口で使用する場合、現在のところ約0.01〜100mmol/kg/24hの用量が好まれており、約0.01〜10mmol/kg/24hがより好ましく、0.1〜1mmol/kg/24hの用量がさらに好ましい。
【0062】
術前及び/又は術中の静脈内投与により、約0.01〜約10 000ナノモル/kg/分の間の、好ましくは約0.01〜約1000ナノモル/kg/分の間の、さらに好ましくは約0.1〜約100ナノモル/kg/分の間の、最も好ましくは約1〜約20ナノモル/kg/分の間の用量の亜硝酸塩を投与することが好ましい。現在のところ、最も好ましい用量は約15ナノモル/kg/分未満であることが企図される。
【0063】
限定的な意味ではないが、間欠性跛行を含む動脈不全に苦しむ患者においては、薬物治療は、(単複の)患肢の血流を改善すること、及び血管形成を刺激して新しい血管の形成を促進することを目的とする。臨床試験ではホスホジエステラーゼ阻害剤及び成長因子が試験されているが、結果は様々である。同様に、有機硝酸塩などの従来のNO供与体を用いた試験もあまり成功していない。本発明の方法及び組成物は、血流及び血管形成の両方を確実に刺激することにより、これらの患者の状態を改善することが企図される。硝酸塩/亜硝酸塩による治療は、ほとんどの血管床で非選択的に拡張を起こす有機硝酸塩を使用する際のリスクである低血圧などの厄介な全身的作用を引き起こすことなく虚血領域の血流を優先的に増加させるという理由で魅力的である。また上述したように、亜硝酸塩はミトコンドリア機能に影響を与え、この結果、虚血性組織の酸素必要量が少なくなる。
【0064】
限定的な意味ではないが、食欲不振を伴う癌、神経性食欲不振、胃腸疾患を含む栄養失調に悩む患者においては、本発明による方法及び組成物が同化作用を有し、酸素消費量を減少させることが企図される。ミトコンドリア効率を改善するとともにミトコンドリア脱共役を減衰させることにより、この作用が実現されることが企図される。
【0065】
本発明による方法及び組成物はまた、勃起不全の患者にも一般的な治療効果を有する。この病気では、内因性NO系が衰えている。亜硝酸塩及び/又は硝酸塩(及び上記概説した考えられる組み合わせ)を投与することにより、海綿体において局所的にNO形成が促進され、この結果勃起が促進されるようになる。
【0066】
本発明による方法及び組成物は、ヘリコバクターピロリ感染、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)の使用などの薬物治療からくるストレス又は副作用による胃炎及び胃潰瘍の患者において、一般的な治療的、緩和的及び/又は予防的効果を有することが企図される。胃粘膜血流、粘液生成を改善することにより、及び抗菌及び抗炎症特性により、この方法及び組成物は、これらの患者に有益な効果を与えるようになる。また、胃腸管(十二指腸、小腸及び大腸)の他の部分におけるアセチルサリチル酸、NSAID又はあらゆる他の潰瘍誘発薬による治療の厄介な副作用が、前記方法及び組成物により防がれる。
【0067】
手術で懸念される問題に、腸吻合不全及び腸潅流不全がある。吻合における微小循環を改善するための新規方法が常に研究されている。本発明による方法及び組成物が吻合における微小循環を改善し、これが治癒過程を促進することが企図される。また、本発明が腸潅流不全の状態における循環を改善するとも考えられる。
【0068】
睡眠時無呼吸症候群の患者は、高血圧及びその他の心疾患を発症するリスクが高い。さらに、これらの患者は、睡眠中に低酸素症の時間がある。本発明による方法及び組成物は、循環を改善し、場合によってはミトコンドリアの「冬眠」効果によって酸素消費量を減少させることにより、低酸素症誘発性損傷から保護することが企図される。前記方法及び組成物が保護作用を有することができる他のメカニズムに、酸素ラジカル形成及びミトコンドリアからのチトクロームC放出を減少させることによるものがある。硝酸塩及び亜硝酸塩がミトコンドリア機能に及ぼす影響は、一酸化窒素(NO)がミトコンドリア呼吸鎖における複合体の酸化的リン酸化及び/又はs−ニトロシル化と相互作用することにより媒介される可能性が最も高い。
【0069】
本発明による方法及び組成物は、以下に限定されるわけではないが、慢性閉塞性気道疾患(COPD)、喘息などの炎症性気道疾患、肺高血圧、鬱血性心疾患、間質性肺疾患、肺塞栓症、虚血性心疾患、末梢動脈疾患、睡眠時無呼吸症候群、心筋梗塞及び全身性炎症疾患を含む、低酸素利用性を特徴とする病的状態の患者にも、一般的な治療的、緩和的及び/又は予防的効果を有する。これらの病気では、酸素を付加することにより動脈血酸素化及び全身酸素送達が急速に改善する。技術的及び安全性の理由により、病院設備外で酸素を投与することは困難である。これらの患者の状態を改善する別の方法は、酸素の必要性を減少させることである。本発明による方法及び組成物により、行う身体的作業に関する酸素使用量が減少するようになる。酸素利用性は身体活動の制限要因であるため、この非常に驚くべき知見は前述の病気の患者に特に関連性がある。本発明による方法及び組成物は、これらの患者群の身体活動を手助けすることが予想される。
【0070】
1つの好ましい実施形態では、低酸素利用性を特徴とする病的状態の患者に硝酸塩及び/又は亜硝酸塩が与えられる。このような状態では、組織の酸素必要量を減少させて、低酸素症に伴う続発症及び症状を防ぐことが望ましい。例として、肺の酸素摂取量に重大な欠陥がある可能性のあるCOPD患者及び組織への酸素送達が減少している末梢動脈疾患患者が挙げられる。
【0071】
本発明の方法及び組成物はまた、運動選手などの健常被験者にも有用である。本発明の方法及び組成物は、特定の作業負荷における酸素必要量を減少させ、同化作用を向上させる。この方法及び組成物はまた、高所での酸素の節約、例えば、以下に限定されるわけではないが、救助活動、消火活動、軍事活動、ダイビング、登山、高空飛行、及び宇宙探査などの低酸素環境で行われる作業及びスポーツにも有用である。
【0072】
本方法及び組成物はまた、移植前の提供臓器の代謝要求を最小限に抑える目的で、及び移植後の移植臓器又は組織の活着を向上させる目的で、固形臓器又は組織の移植にも有用である。亜硝酸塩及び/又は硝酸塩又は本明細書で述べるあらゆる組み合わせが、移植前に臓器又は組織に局所的に及び/又は提供者に全身的に潅流することにより臓器又は組織に、及び移植後に臓器又は組織に局所的に及び/又は受容者に全身的に潅流することにより臓器又は組織に与えられる。
【0073】
1つの好ましい実施形態では、硝酸塩及び/又は亜硝酸塩又は本明細書で述べるあらゆる組み合わせが、重篤な代謝ストレスを生じるリスクのある患者に与えられる。このような状態には、手術ストレス及び外傷を含む上記に掲載した状態の多くが含まれる。ストレス期間中、酸素必要量及び消費量は劇的に増加する。従って、これらの患者の酸素必要量を減少させることにより状態の改善が得られる。1つの好ましい実施形態によれば、生理的又は外傷性ストレスに伴う続発症を防ぐために硝酸塩及び/又は亜硝酸塩が患者に与えられる。例として、外傷後に救急処置室に来た患者又は大きな手術を受ける患者が挙げられる。
【0074】
本発明者らの知る限り、これは、食事中の硝酸塩が運動に対する心肺反応及び代謝反応に及ぼす影響を調べるための第1の研究である。重篤な低血圧を引き起こさず、メトヘモグロビン及び血漿乳酸塩を著しく増加させない量で無機硝酸塩を食事補給した結果、最大下作業中のVO2が減少し、筋効率が著しく増大するということが主な知見であった。これらの効果は、VO2ピーク値又は最大達成可能作業量を全く変化させることなく発生した。
【0075】
理論に縛られることを望むわけではないが、本発明者らは、観察された効果は、初期に硝酸塩が亜硝酸塩に還元されることに関連があると確信する理由があると考えている。硝酸塩自体は生物学的に不活性であると考えられており、哺乳類細胞はこれを代謝することができない。しかしながら、摂取後に唾液線を介して硝酸塩が再び口に入ると、共生細菌によって効果的に還元されることにより亜硝酸塩が形成される。硝酸塩とは対照的に、亜硝酸イオンは幅広い生物活性を有することが近年示されている。この研究において、本発明者らは、硝酸塩治療期間後に血漿亜硝酸塩が増加することに実際に気付き、この結果、前述したように硝酸塩がインビボで還元されることを確認した。亜硝酸塩が生物活性であることを支持する別の知見は、血漿硝酸塩のレベルが変化しないのとは対照的に、運動中に亜硝酸塩が効果的に消費されることであった。結局、亜硝酸塩の生物活性は、それがさらにNOに還元されること、及び場合によっては他の密接に関連する窒素媒介物に関連があるようである。また、細胞の情報伝達経路に亜硝酸塩自身が直接影響を及ぼす可能性があることが近年示唆されている。可能性は低いが、現段階では、硝酸イオン自体の作用を除外することはできない。酸化窒素の生物学的作用を伝えることができるいくつかの原理的方法が存在し、これには、cGMPの活性化、ニトロ(シル)化/ニトロ化によるタンパク質機能の変性、又はNOによるグアニリルシクラーゼの原型活性化におけるもののような、いくつかのタンパク質のタンパク質ヘム成分への直接結合が含まれる。また、亜硝酸塩自体が細胞の情報伝達経路に直接影響を及ぼす可能性もある。
【0076】
この作用が、硝酸塩の亜硝酸塩への還元、そしてNOの形成を介して進むとすれば、この結果をどのように説明できるであろう。NOS阻害剤を使用して内因性NO生成を阻害する以前の研究にいくつかの指摘がある。NOS阻害では、血流の減少とは無関係に、運動中のイヌの最大下VO2が増加することが示されている。NOS阻害中におけるこのVO2の増加は、呼吸酵素チトクロームCオキシダーゼの可逆阻害により、NOがインビトロで組織呼吸に影響を及ぼすという事実と関連がある。NOS阻害中におけるVO2の増加を、相当量のプロトンがミトコンドリア内膜へ漏れだすミトコンドリア透過性転移ポア(mPTP)によるプロトンの漏れに対するNOの阻害効果と関連付ける者もいる。硝酸塩の作用が、チトクロームCオキシダーゼの阻害(従って酸化的リン酸化反応の阻害)のみによるものであるとすれば、運動中の嫌気的代謝の増加、及び乳酸塩の大量蓄積が予測される。しかしながら、結果から判断すると、硝酸塩の補給後も血漿乳酸塩濃度がプラセボと比較してほぼ同じであったため、これは事実とは異なるものであった。
【0077】
所定の作業量における酸素パルスが硝酸塩を補給することによって減少するという知見は、その作業量における低い酸素必要量が直接作用したものである。しかしながら、所定の絶対酸素摂取量における酸素パルスには差がない。硝酸塩がVE/VO2又は酸素パルスに及ぼす影響が存在しないということは、心臓又は肺における中枢適応ではなく筋肉又はミトコンドリア適応に起因して効率が向上したことを示す。
【実施例】
【0078】
本発明者らは、インビボでの血圧、グルコース代謝及びエネルギー消費量を含む様々な生理的機能に対する硝酸塩及び亜硝酸塩の効果について研究してきている。以下の実施例では、硝酸塩を経口で投与し、亜硝酸塩を静脈内に(iv)投与した。間接熱量測定法を使用して酸素消費量を測定した。「間接熱量測定法」という用語は、本明細書では、生物が自身の二酸化炭素及び窒素廃棄物の生成及び自身の酸素消費量から生成する熱を計算するための方法と定義され、当業者には周知である。
【0079】
1.静脈内亜硝酸ナトリウム及び安静時エネルギー消費量
ナトリウム亜硝酸塩の静脈内注入の10分後、(間接熱量測定法により測定した)安静時エネルギー消費量が10〜25%減少する(n=4、図3)。試験前、試験者は硝酸塩が少ない食事を1日取り、少なくとも8時間絶食した。10nmol/kg/分の濃度で亜硝酸塩を10分間注入したときに主なエネルギー消費量の低下が見られた。1nmol/kg/分では、10分間の観察期間中に明らかな効果は示されず、100nmol/kg/分の後には、10nmolの投与に比較して酸素消費量のさらなる減少は示されなかった。別の実験では(n=2)、本発明者らは、10nmol/kg/分注入(10分注入)後に血漿亜硝酸塩が140〜165nMから370〜480nMに増加したことに気付いた。メトヘモグロビンの基本レベルは1.1〜1.3mmol/lであり、亜硝酸塩(1.1〜1.4mmol/l)を注入した後に大きな変化はなかった。図2を参照されたい。
【0080】
2.経口硝酸ナトリウム及び運動中の酸素消費量
方法
被験者:試験に志願した9人の健常な十分に訓練された(VO2peak55±3.7ml×kg-1×min-1)男性(28±6歳)。全ての被験者は、訓練されたサイクリスト又はトライアスロン選手であり、試験手順にはよく慣れていた。最大下運動中にVO2peakが向上したり、或いは機械効率が良くなったりするような、試験から得られる訓練効果を避けるために、十分に訓練された被験者を使用することを選択した。ストックホルムの地域倫理委員会によって手順が承認され、全ての被験者が参加前に承諾書を提出した。
【0081】
硝酸塩の食事補給:この試験の目的は、硝酸塩摂取量が通常より高いものと、低いものとの2つの異なる食事パターンの効果を調べることであった。調査は、二重盲検プラセボ対照クロスオーバー法で行った。10日の休薬間隔で分離した2回の3日間の間、硝酸塩含有量が中程度又は高度の食品(全ての野菜、全ての塩漬け肉、いちご、ぶどう、及びお茶)を全て避けるように被験者に指示した。また、被験者にはアルコール及びタバコ製品を控えるように伝えた。その他の点では、被験者は3日間の食事制限中、好きな食品を自由に食べた。被験者は、水に溶解した0.1mmol硝酸ナトリウム/kg体重/日、又は等量の塩化ナトリウム(プラセボ)の摂取のいずれかにより、ランダムに試験が開始された。1日の用量を分割し、毎日3回摂取した。味又は外観により異なる溶液を見分けることはできなかった。1日の硝酸塩用量は、ホウレンソウ、レタス又はビートルートなどの硝酸塩が豊富な野菜150〜250グラムに通常含有される量に相当した。硝酸塩又はプラセボの最後の用量は、測定日の朝に摂取した(以下の本試験を参照されたい)。硝酸塩補給期間(NIT)とプラセボ期間(CON)との間の順序はバランスが保たれた。休薬期間の間、被験者は特定の食事療法には従わなかった。
【0082】
実験手順:被験者がトレーニングで慣れた競技用サドル及びペダルシステムで改造した電気ブレーキ式自転車エルゴメータ(Monark 839E、ヴァールベリ、スウェーデン)で測定を行った。自転車エルゴメータはコンピュータ制御されており、被験者がペダルを漕ぐのに選択したリズムに関係なく一定の作業量が可能であった。ペダルを漕ぐリズムは、70〜90rpmの範囲で個々に選択したが、試験中は一定に保持されて、筋動員パターンの変化による作業出力の差を最小にした。
【0083】
被験者の呼吸がマウスピース及びプラスチックチューブを介して通過する流量計に連結されたコンピュータガス分析器(AMIS2001、オーデンセ、デンマーク)により、肺換気量(VE)、酸素摂取量(VO2)、CO2排出量(VCO2)及び呼吸交換率(RER)を10秒間隔で測定した。携帯型心拍数モニタ(Polar S610、Polar、ケンペレ、フィンランド)で試験中連続的に心拍数(HR)を記録した。毛細血液サンプル(20μl)を指先から収集し、Biosen C−Line Sport Analyser(EKF diagnostics、マグデブルク、ドイツ)を使用して乳酸塩([Hla])を分析した。毛細血液を指先から採ってHb測定装置(Hemocue、エンゲルホルム、スウェーデン)で分析し、安静時ヘモグロビン濃度([Hb])を求めた。毛細血液を12000rpmで3分間遠心分離することによりヘマトクリット(Hct)を求めた。
【0084】
予備試験:各被験者は、第1の本試験の前の2週間内に2回実験室を訪れた。被験者に自転車エルゴメータ及び試験手順に慣れてもらうために第1の予備試験を行った。被験者は、各レベルが5分間継続する5つの最大下レベルで予備試験を受けた。異なる最大下レベルの間に休憩はなかった。AMIS 2001でVO2を連続的に測定した。各最大下レベルの最後に指先から毛細血液を採り、後に[Hla]を分析した。各作業量において、被験者は、ボルグのRPEスケール(BORG,G.「身体ストレスの指標としての主観的運動」Scand J Rehabil Med.1970年第2巻第2号92〜8頁)における主観的運動強度を示し、中枢性及び筋肉性運動強度の両方を示した。8分間の回復時間後、被験者は、個々の計算した最大酸素摂取量に相当する作業量で可能な限り長く自転車を漕ぐように指示された(ASTRAND,P−Oら、「作業生理機能のテキスト」McGraw−Hill、1970年ISBN 0070024065、619頁)。この試験中、被験者の実際のVO2peakを測定し、被験者が7分よりも長く漕げる場合には、疲労するまで毎分20〜30ワットの追加出力を加えた。最大試験の1分後及び3分後に指先から毛細血液を採取し、[Hla]を分析した。
【0085】
第2の予備試験前に、最大下レベルが、VO2peakの45、60、70、80及び85%と一致するように調整した。また、必要に応じて、時間対疲労度が4分と7分の間に維持されるように最大作業量も調整した。
【0086】
本試験:被験者は、本試験の前3日間は激しい運動を控え、試験前日は全ての運動を避けた。また、試験開始の少なくとも3時間前に最後の軽食を摂るように被験者に伝えた。被験者は、実験室にくるとプラセボ又は硝酸塩のいずれかの最後の投与を受け、試験開始前に60分間仰向けで休憩することが許された。
【0087】
全ての被験者は、100ワットで5分間自転車を漕ぐという標準的なウォームアップ手順を使用し、その後5分間休憩した。異なるレベルの間に休憩を挟むことなく、各々が5分間継続する5つの最大下作業量で第2の予備試験と同じ方法で最大下及び最大試験を行った。2つの本試験中は同じ作業量を使用した。最後の硝酸塩/プラセボ投与を摂取した45分後の休憩時に静脈血液(9ml)を採り、VO2peak試験の直後に再び静脈血液(9ml)を採った。この血液を氷浴に入れ、1300rpm及び4°Cで5分以内の遠心分離を行った。血漿を分離し、前述したような化学発光分析により硝酸塩及び亜硝酸塩濃度が分析されるまで−80℃に保持した(LUNDBERG,JOら「無機硝酸塩は、一酸化窒素を全身に発生させる有力源である」Free Rad Bio Med.2004年第37巻第3号395〜400頁)。
【0088】
統計及び計算:結果を平均±標準偏差(平均±SD)の形で表す。対応のあるt検定を使用して硝酸塩試験とプラセボ試験との間の差を評価した。有意レベルをp=<0.05に設定した。
【0089】
総効率(GE)は、作業量を実際のエネルギー消費量(EE)で割ったものと定義した。次に、Brouwer方程式でEEを計算した(BROUWER,E.「ガス交換(酸素摂取及び炭酸排出)及び尿−Nから熱消費量及びヒト及び動物の代謝で酸化された炭水化物及び脂肪の量を計算するための単純な公式について」Acta Physiol Pharmacol Neerl.1957年第6号795〜802頁)。デルタ効率(DE)は、作業量の増加をEEで割ったものと定義した(GAESSER,GAら「定常運動中の筋効率:速度及び作業量の影響」J Appl Physiol.1975年第38号1132〜1139頁)。DEは最低から4つの作業量に基づくものであり、線形回帰で分析した。酸素パルスはVO2/HRと定義される。
【0090】
結果
安静時血圧:硝酸塩補給剤(112±8mmHg)後は、平均安静時最高血圧がプラセボ(120±5.9、p<0.01)よりも低かった。硝酸塩(68±5.5mmHg)後は、最低血圧もプラセボ(74±6.8mmHg、p<0.01)より低かった。これらの知見の一部は、別の文書(Larsenら2006年)として出版されている。
【0091】
血液値:[Hb]は安静時(NIT 152±11、CON 153±11g×l-1、p=0.87)又はVO2peak試験直後(NIT 163±13、CON 161±13g×l-1、p=0.27)で変化が観察されなかった。ヘマトクリット値も安静時(NIT 42±4、CON 43±3%、p=0.19)又はVO2peak試験後(NIT 46±4、CON 47±4%、p=0.6)で変化がなかった。
【0092】
安静時の硝酸塩の血漿レベルはCONで27±6.9μM、NITで182±55(p=<0.01)であった。最大作業試験直後の硝酸塩レベルは、CONで29±6.1、NITで175±61μM(p=<0.01)であった。血漿硝酸塩は、運動中にNITでもCONでも変化しなかった(p=0.8)。安静時の亜硝酸塩レベルは、CONで124±28、NITで226±87nM(p=<0.01)であった。最大作業試験直後では、亜硝酸塩レベルは、CONで111±29、NITで137±48(p=0.17)であった。
【0093】
運動中の亜硝酸塩濃度の減少は、CONよりもNITの方において顕著であった(図6)。最大作業後のc−GMP濃度の増加は、安静時と比較すると、CONよりもNITの方が高い傾向にあった(p=0.08)。
【0094】
血圧:平均安静時最高血圧は、NIT後の120±5.9からCON後の112±8mmHgに減少した(p=0.003)。最低血圧は、それぞれCON及びNIT群の74±6.8から68±5.5mmHgに減少した(p=0.005)。これらの知見の一部は、別の文書(LARSEN,FJら「食事中の硝酸塩が健常ボランティアの血圧に与える影響」N Engl J Med.2006年第355巻第26号2792〜3頁)として出版されている。
【0095】
最大下作業パラメータ:硝酸塩投与後、プラセボ期間と比較して、VO2が45〜80%VO2peakに相当する4つの作業量の間に著しく低かった(図5)。VO2peakの80%で最も顕著な差が見られた(NIT 3.44±0.31l×min-1対CON 3.61±0.31l×min-1、p=0.003、図5)。平均すると、VO2は、4つの最大下作業量にわたるNIT試験で0.15l×min-1低かった。NIT試験とCON試験との間で心拍数(HR)に差はなかった(図6参照)。酸素パルスは、CON中の21.0±2.0から20.3±1.9ml×心拍数-1に減少する傾向にあった(p=0.08)。最大下作業量のいずれの最中にもNITとCONとの間で[Hla](図6)、VE、VE/VO2又は呼吸交換率(RER)に大きな差の変化は見られなかった。平均総効率(GE)は、作業量を実際のエネルギー消費量(EE)で割ったものと定義される。次に、Brouwer方程式(Brouwer、上記)でEEを計算した。GE総効率は、CON中の19.7%からNIT中の21.1%まで改善した(p=0.02)。デルタ効率(DE)は、作業負荷の増加量をEEの増加量で割ったものである(Gaesser & Brooks、上記)。この場合、DEは、線形回帰分析で分析した最低から4つの作業量に基づく。DEデルタ効率(DE)は、NIT中の22.9±1.9%に比較して、CON中の22.1±1.6%から著しく増加した(p=0.04)。
【0096】
最大作業能力:NIT試験とCON試験との間でVO2peakに大きな差はなかった(それぞれ4.49±0.44及び4.61±0.28l×min-1、p=0.29)。これらの値は、予備試験中に達成されたVO2peakとも大きな差はなかった(4.54±0.32l×min-1)。同様に、VEmax(NIT 182±21.4対CON 186±21.7l×min-1、p=0.5)、HRmax(NIT 189.8±7.0対CON 190.3±7.5拍動×min-1、p=0.94)又は最大作業量(NIT 360.6±32.8対CON 358.9±32.3ワット、p=0.35)のいずれにおいても大きな差はみられなかった。あらゆる作業負荷(最大下又は最大)における主観的運動強度(ボルグRPEスケール)ではNITとCONとの間に差はなかった。
【0097】
結果に対する解説:この試験では、最低から4つの作業負荷において硝酸塩投与が確認された後、最大下作業負荷における酸素必要量が著しく減少することが確認された。ほぼ85%VO2peakの第5の作業量では、数人の被験者における乳酸塩しきい値よりも遥かに高く、従って嫌気性エネルギーの生成がさらに顕著となった。これが副筋群を巻き込み、運動パターンが著しく変化する。この作業量では、VO2は安定した定常状態レベルに到達せず、従って、筋効率の計算には適さなかった。この第5の作業量を手順に含めた理由は、乳酸塩しきい値を超える乳酸塩値を得ることにより、乳酸塩曲線の上部の変化の兆候を得るためであった。
【0098】
3.経口硝酸ナトリウム及びグルコースホメオスタシス
標準的なグルコース経口負荷試験(250mlの水に入れた75gのグルコース)後の血漿グルコースの増加は、硝酸塩予備治療(1mmol/kgのNaNO)後に測定した場合、プラセボ(NaCl)に比較して低い。二重盲検試験で3人の健常被験者に試験を行った。硝酸塩摂取の60分後にグルコース摂取を開始した。グルコース負荷後120分間にわたって血糖値を測定した(n=3)。30分後には、平均血漿グルコースは、プラセボで8.2mmol/lであり、同じ被験者で硝酸塩補給後には6.5mmol/lであった。結果を図7a、図7b、及び図7cに示す。
【0099】
8人の健常非喫煙被験者に塩化ナトリウム又は硝酸ナトリウムのいずれかを等モル量(0.1mmol/kg/日)で3日間補給した後に標準的なグルコース経口負荷試験(75gグルコース)を行うさらなる調査において、硝酸塩予備治療後に血漿グルコースの増加が少ないことが実証された。この調査は、二重盲検プラセボ対照クロスオーバー法で行われた。グルコース採取前に2回(−10及び0分)及びグルコース採取後15、30、45、60、75、90、105及び120分後に血糖値を測定した(n=8)。被験者が硝酸塩を服用した場合、血糖を表す曲線の下の面積が、プラセボを摂取した時と比べて小さかった。結果を図8に平均±SEMとして示す。
【0100】
4.ビートルートの摂取が血圧に及ぼす影響
高血圧の43歳非喫煙被験者が、生ビートルートジュース(300〜400ml/日)を14日間摂取した。血圧を毎日2回14日間測定し、その後(治療の第1日めから数えて)20日目に2度測定した。実験開始日の基礎血圧は142/99であった。
【0101】
ビートルートジュースの摂取から得られた結果を図9に示す。毎日の2回の測定の平均をバーの形で示している。ビートルートジュースを摂取した場合(1〜14日間)、15mmHgの最高血圧の平均低下、及び16mmHgの最低血圧の平均低下が見られた。ビートルートジュース治療を中止して6日後(20日目)に再び測定したところ、血圧は基本レベル(140/100)に上昇していた。脈拍数は、実験期間を通じて変化しなかった。MAP=平均動脈圧。
【0102】
5.硝酸塩の静脈内注入後の血漿亜硝酸塩の濃度
方法
麻酔ラット(n=11)にNaNO3の注射(10mg/kg体重)を与え(□)、望ましい時点で血液サンプルを収集した。7匹の追加のラットをNaNO3注入の60分前に30mg/kg体重のアロプリノールを腹腔内に与えて予備処理し(▲)、望ましい時点で血液サンプルを収集した。アロプリノールは、哺乳類細胞で硝酸塩の亜硝酸塩への還元に関与すると示唆されている酵素であるキサンチンオキシダーゼを阻害する。血漿を抽出し、硝酸塩及び亜硝酸塩を分析した。
【0103】
3つの異なる系統のマウス−野生型(n=5 プラセボ、n=5 硝酸塩)、無菌(n=5 プラセボ、n=5 硝酸塩)及びeNOSノックアウトマウス(n=2 プラセボ、n=3 硝酸塩)に10mg/kg硝酸塩又はプラセボ(NaCl)を腹腔内投与し、1時間後に亜硝酸塩の血漿レベルを測定した。
【0104】
結果
硝酸塩を静脈内注入した結果を図10a〜図10cに示す。図10aは血漿硝酸塩濃度を示し、図10bは血漿亜硝酸塩濃度を示している。硝酸塩を与えたラット及び硝酸塩+アロプリノールを与えたラットの両方において、硝酸塩注入後の血漿硝酸塩の濃度が劇的に増加する(a)。血漿亜硝酸塩濃度は、硝酸塩を与えたラットだけでなく、硝酸塩+アロプリノールを与えたラットでも増加した(b)。しかし、硝酸塩のみを与えたラットにおける増加が著しく大きかった。*p<0.05。
【0105】
図10cは、硝酸塩が誘発する血漿亜硝酸塩の増加が、野生型(n=5 プラセボ、n=5 硝酸塩)、無菌(n=5 プラセボ、n=5 硝酸塩)及びeNOSノックアウトマウス(n=2 プラセボ、n=3 硝酸塩)で等しいことを示す図である。p=.05*
【0106】
以前は、細菌細胞のみが硝酸塩を亜硝酸塩に還元でき、哺乳類細胞はできないことが示唆されていた。驚くべきことに、これらの結果は、哺乳類細胞も硝酸塩を亜硝酸塩に代謝できることを示している。さらに、これらの結果は、キサンチンオキシダーゼ酵素が硝酸塩の亜硝酸塩への還元に関与することも示唆している。
【0107】
6.虚血後血流の増加
10mg/kg硝酸塩(NaNO3、n=4)又はプラセボ(NaCl、n=4))をPBS(pH7.4)に希釈した静脈内注射をラットに与え、その後3mg/kg/hで連続的に注入した。硝酸塩(□)又はプラセボ(●)を加えた60分後、L−NAME(50mg/kg)を与え、10分後に腹部大動脈の腎上部クランピングを行った。虚血の30分後、クランプを除去し、腹部大動脈血流を60分間モニタした。
【0108】
結果によると、硝酸塩治療ラットは、プラセボ治療ラットに比較して、初期(0〜10分)、並びに後期(10〜60分)の虚血後段階中にも高い血流を維持することがわかった(図11)。注目すべきことに、再灌流の60分後には、対照ラットでは血流が虚血前の値のわずか20%にまで減少したが、硝酸塩治療ラットでは血流が対照値のほぼ75%に維持された。これは、虚血イベント中に、硝酸塩−亜硝酸塩−NO経路が強力に拡張することを実証するものである。
【0109】
本明細者らが現在知る最良の形態を構成する本発明の好ましい実施形態に関連して本発明について説明したが、本明細書に添付した特許請求の範囲に記載する本発明の範囲から逸脱することなく、当業者にとって明らかであろう様々な変更及び修正を行うことができることを理解すべきである。
【0110】
参考文献
・WO2005/004884A(米国政府ら)2005年1月20日
・WO2005/007173A(米国政府ら)2005年1月27日
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類の代謝速度を減少させる方法であって、無機亜硝酸塩(NO2-)及び/又は硝酸塩(NO3-)を含む医薬組成物を、酸素消費量を減少させるのに十分な亜硝酸塩及び/又は硝酸塩の量で前記哺乳類に投与する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
無機亜硝酸塩及び硝酸塩を含む組成物を、酸素消費量を減少させるのに十分な亜硝酸塩及び硝酸塩の量で前記哺乳類に投与する、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記亜硝酸塩の量は、前記哺乳類のグルコース調節を改善するのに十分である、
ことを特徴とする請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記亜硝酸塩は、亜硝酸ナトリウム又は亜硝酸カリウムの形で投与される、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記硝酸塩は、硝酸ナトリウム又は硝酸カリウムの形で投与される、
ことを特徴とする請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記亜硝酸塩は、前駆体として硝酸ナトリウム及び硝酸カリウムから選択される硝酸塩の形で経口投与される、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物は静脈内に投与される、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記硝酸塩の供給源は、硝酸塩に富む植物、野菜又は果物である、
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物は、経口で、経皮に、吸入により、舌下に、直腸に、膣に、腹腔内に、筋肉内に、或いは皮下に投与される、
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物は別の医薬活性薬物との併用で投与される、
ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物はポリフェノールとの併用で投与される、
ことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記亜硝酸塩は、約0.01〜約10 000ナノモル/kg/分の用量で静脈内に投与される、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記硝酸塩は、約0.01〜約100mmol/kg/24hの用量で硝酸塩の形で経口投与される、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
集中治療患者、手術、栄養失調、食欲不振を伴う癌、火傷、又は外傷を被る患者、新生児、早産児、神経性食欲不振の患者、固形臓器移植予定の患者又は固形臓器移植を受けた患者、睡眠時無呼吸症候群に悩む患者の生理的及び代謝的ストレスの状態の治療、予防又は改善におけるステップとして前記代謝速度が影響を受ける、
ことを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
例えば集中治療患者、手術を受ける患者、栄養失調の患者、癌で食欲不振の患者、火傷患者、外傷患者、新生児及び早産児、神経性食欲不振の患者、固形臓器移植予定の患者又は固形臓器移植を受けた患者に存在する状態のような代謝ストレスを際立った特徴とする病的又は生理的状態の治療、予防又は改善におけるステップとして前記代謝速度が影響を受ける、
ことを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息などの炎症性気道疾患、肺高血圧、鬱血性心疾患、間質性肺疾患、肺塞栓症、虚血性心疾患、末梢動脈疾患、睡眠時無呼吸症候群を含む低酸素利用性を特徴とするあらゆる病的状態の治療、予防又は改善におけるステップとして前記代謝速度が影響を受ける、
ことを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
亜硝酸塩の供給源がニトログリセリンであり、薬物が経口投与される、
ことを特徴とする請求項15及び請求項16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
患者に与えられる経腸又は非経口的栄養補給又は栄養液に亜硝酸塩及び/又は硝酸塩が添加される、
ことを特徴とする請求項15及び請求項16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
代謝速度を低下させる医薬組成物を製造するための無機亜硝酸塩(NO2-)及び/又は硝酸塩(NO3-)の使用。
【請求項20】
前記無機亜硝酸塩(NO2-)及び/又は硝酸塩(NO3-)はポリフェノールとの併用で使用される、
ことを特徴とする請求項19に記載の使用。
【請求項21】
前記医薬組成物は、例えば集中治療患者、手術を受ける患者、栄養失調の患者、癌で食欲不振の患者、火傷患者、外傷患者、新生児及び早産児、神経性食欲不振の患者、固形臓器移植予定の患者又は固形臓器移植を受けた患者に存在する状態のような代謝ストレスを際立った特徴とする病的又は生理的状態の治療、予防又は改善におけるステップとして代謝速度を低下させるためのものである、
ことを特徴とする請求項19及び請求項20のいずれか1項に記載の使用。
【請求項22】
前記医薬組成物は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息などの炎症性気道疾患、肺高血圧、鬱血性心疾患、間質性肺疾患、肺塞栓症、虚血性心疾患、末梢動脈疾患、睡眠時無呼吸症候群を含む低酸素利用性を特徴とするあらゆる病的状態の治療、予防又は改善におけるステップとして代謝速度を低下させるためのものである、
ことを特徴とする請求項19及び請求項20のいずれか1項に記載の使用。
【請求項23】
前記医薬組成物は、1型及び2型糖尿病、前糖尿病、集中治療患者、外科的外傷、代謝症候群、肥満、火傷、薬物誘発性糖尿病、及びインシュリン耐性を含むグルコースホメオスタシスが乱れた状態の治療、予防又は改善(グルコース調節)におけるステップとして代謝速度を低下させるためのものである、
ことを特徴とする請求項19及び請求項20のいずれか1項に記載の使用。
【請求項24】
亜硝酸塩及び/又は硝酸塩の量が、これを投与した哺乳類の酸素消費量を減少させるのには十分であるが、メトヘモグロビンレベルを増加させない、
ことを特徴とする請求項21、請求項22又は請求項23のいずれか1項に記載の使用。
【請求項25】
被験者に所定の用量を投与した場合、前記被験者の酸素消費量を減少させるのには十分であるが、メトヘモグロビンレベルを増加させない量の無機亜硝酸塩(NO2-)及び/又は硝酸塩(NO3-)を含む、
ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項26】
別の医薬活性化合物をさらに含む、
ことを特徴とする請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
ポリフェノールをさらに含む、
ことを特徴とする請求項25及び請求項26のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
約5%(v/v)以下の濃度のエタノールをさらに含む、
ことを特徴とする請求項25から請求項27のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項29】
硝酸塩還元又は亜硝酸塩還元を促進する(乳酸菌又はビフィドバクテリウムを含む)適当なプロバイオテック細菌又は適当な非病原細菌をさらに含む、
ことを特徴とする請求項25から請求項28のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項30】
被験者が所定の用量で摂取した場合、被験者の酸素消費量を減少させるのに十分な量の無機亜硝酸塩(NO2-)及び/又は硝酸塩(NO3-)を含む、
ことを特徴とする栄養補助食品。
【請求項31】
硝酸塩還元又は亜硝酸塩還元を促進する(乳酸菌又はビフィドバクテリウムを含む)適当なプロバイオテック細菌又は適当な非病原細菌をさらに含む、
ことを特徴とする請求項30に記載の栄養補助食品。
【請求項32】
ポリフェノールをさらに含む、
ことを特徴とする請求項30及び請求項31のいずれか1項に記載の栄養補助食品。
【請求項33】
約5%(v/v)以下の濃度のエタノールをさらに含む、
ことを特徴とする請求項30から請求項32のいずれか1項に記載の栄養補助食品。
【請求項34】
被験者に所定の用量で投与した場合、前記被験者の酸素消費量を減少させるのに十分な量の無機亜硝酸塩(NO2-)及び/又は硝酸塩(NO3-)を含む、
ことを特徴とする経腸栄養液。
【請求項35】
別の医薬活性化合物をさらに含む、
ことを特徴とする請求項34に記載の経腸栄養液。
【請求項36】
ポリフェノールをさらに含む、
ことを特徴とする請求項34から請求項35のいずれか1項に記載の経腸栄養液。
【請求項37】
被験者が所定の用量で摂取した場合、前記被験者の酸素消費量を減少させるのに十分な量の無機亜硝酸塩(NO2-)及び/又は硝酸塩(NO3-)を含む、
ことを特徴とする乳児用調合乳。
【請求項38】
ポリフェノールをさらに含む、
ことを特徴とする請求項37に記載の乳児用調合乳。
【請求項39】
被験者が所定の用量で摂取した場合、前記被験者の酸素消費量を減少させるのに十分な量の無機亜硝酸塩(NO2-)及び/又は硝酸塩(NO3-)を含む、
ことを特徴とする糖尿病患者に適したスナック製品。
【請求項40】
ポリフェノールをさらに含む、
ことを特徴とする請求項39に記載のスナック製品。
【請求項41】
被験者に所定の用量で投与した場合、前記被験者の酸素消費量を減少させるのには十分であるが、トヘモグロビンレベルを増加させない量の無機亜硝酸塩(NO2-)及び/又は硝酸塩(NO2-)を含む、
ことを特徴とする非経口栄養液。
【請求項42】
別の医薬活性化合物をさらに含む、
ことを特徴とする請求項41に記載の非経口栄養液。
【請求項43】
ポリフェノールをさらに含む、
ことを特徴とする請求項41及び請求項42のいずれか1項に記載の非経口栄養液。
【請求項44】
約5%(v/v)以下の濃度のエタノールをさらに含む、
ことを特徴とする請求項41から請求項43のいずれか1項に記載の非経口栄養液。
【請求項45】
被験者に所定の用量で投与した場合、前記被験者の酸素消費量を減少させるのに十分な量の無機亜硝酸塩(NO2-)及び/又は硝酸塩(NO2-)を含む、
ことを特徴とする術前組成物。
【請求項46】
ポリフェノールをさらに含む、
ことを特徴とする請求項45に記載の術前組成物。
【請求項47】
炭水化物をさらに含む、
ことを特徴とする請求項45及び請求項46のいずれか1項に記載の術前組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2010−519336(P2010−519336A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551971(P2009−551971)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【国際出願番号】PCT/SE2008/050212
【国際公開番号】WO2008/105731
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(509240549)
【出願人】(509240538)
【Fターム(参考)】