説明

交流型プラズマディスプレイパネル用背面板

【課題】白色の色バランスが良好で、高画質のAC型PDPを提供する。
【解決手段】基板の上に、フッ素を0.01〜10質量%の範囲で含有する、酸化マグネシウム純度が99.8質量%以上(但し、酸化マグネシウム純度は、含まれるフッ素を除いた総量中の酸化マグネシウム含有量である)で、かつBET比表面積が0.1〜30m2/gの範囲にあるフッ素含有酸化マグネシウムからなる波長変換層を介して、波長が2
20〜270nmの範囲にある紫外線に励起されて発光を示す蛍光体からなる蛍光体層が形成されている背面板を備えたAC型PDP。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流型プラズマディスプレイパネル用背面板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
交流型プラズマディスプレイパネル(以下、AC型PDPともいう)は、一般に、Xe(キセノン)ガスを含む放電ガスが充填された放電空間を介して、放電電極が形成されている前面板と、真空紫外線に励起されるとそれぞれ青色、緑色又は赤色の発光を示す蛍光体からなる蛍光体層が形成されている背面板とを、放電電極と蛍光体層とが互いに対向するように配置した構造となっている。このような構造のAC型PDPでは、前面板の放電電極の放電によって発生したXeの共鳴線(波長147nm付近)とXe2の分子線(波長172nm)を各々の蛍光体層に照射して、各蛍光体を励起させることにより青色、緑色、赤色の可視光を発光させて、その各色の発光の組み合わせにより画像を表示する。
【0003】
AC型PDPにおいて用いられている青色、緑色及び赤色の各色の発光を示す蛍光体は、それぞれ発光輝度が異なるため、各々の蛍光体層を同一の条件で発光させると得られる白色の色バランスが悪くなるなどの問題が生じることがある。AC型PDPにおいて、青色発光蛍光体として広く用いられているBaMgAl1017:Eu2+(通常、BAM:Eu2+と云われる)は、赤色発光蛍光体(例えば、(Y,Gd)BO3:Eu3+)や緑色発光蛍光体(例えば、Zn2SiO4:Mn2+)と比較すると発光輝度が低い傾向がある。
【0004】
AC型PDPにて白色の色バランスを調整する方法としては、同一の条件下では相対的に高い発光輝度を示す蛍光体層の発光輝度を電気的に低く抑えることによって、各色蛍光体層の発光輝度を均一化させる方法がある。しかし、この方法では発光輝度を下げた色に対する階調数が減少することになるため、画質低下の要因となるという問題がある。このため、蛍光体層の発光量を低く抑えないで、各色の蛍光体層の発光輝度を均一化させることが検討されている。
【0005】
特許文献1には、使用する青色、緑色及び赤色の蛍光体の発光輝度に応じて、各色の蛍光体層の面積を変えることにより、各色の蛍光体層の発光輝度を均一化させたAC型PDPが開示されている。
【0006】
特許文献2には、発光輝度が相対的に低い青色発光蛍光体層の基板側の面にのみ白色反射層を介在させて青色発光蛍光体層の発光輝度を向上させることによって、各色の蛍光体層の発光輝度を均一化させたAC型PDPが開示されている。
【特許文献1】特開平11−54047号公報
【特許文献2】特開2006−31949号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、蛍光体層の発光量を低く抑えることなく、工業的に安価に製造することができる材料を用いて、各色の蛍光体層の発光輝度を高い値で均一化させることのできる簡便な技術を開発して、白色の色バランスが良好で、高画質のAC型PDPを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基板の上に、フッ素を0.01〜10質量%の範囲で含有する、酸化マグネシウム純度が99.8質量%以上(但し、酸化マグネシウム純度は、含まれるフッ素を除いた総量中の酸化マグネシウム含有量である)で、かつBET比表面積が0.1〜30m2/gの範囲にあるフッ素含有酸化マグネシウムからなる波長変換層を介して、波長が220〜270nmの範囲にある紫外線に励起されて発光を示す蛍光体からなる蛍光体層が形成されている交流型プラズマディスプレイパネル用背面板にある。
【0009】
本発明の背面板の好ましい態様は、次の通りである。
(1)波長変換層の厚みが1〜10μmの範囲にある。
(2)蛍光体層の厚みが1〜30μmの範囲にある。
(3)蛍光体層が、基本組成式がBaMgAl1017:Eu2+で表される青色発光蛍光体からなる青色発光蛍光体層である。
(4)蛍光体層が、基本組成式が(Y,Gd)BO3:Eu3+で表される赤色発光蛍光体からなる赤色発光蛍光体層である。
(5)蛍光体層が、基本組成式がZn2SiO4:Mn2+で表される緑色発光蛍光体からなる緑色発光蛍光体層である。
(6)フッ素含有酸化マグネシウムのフッ素含有量が0.03〜5質量%の範囲にある。(7)フッ素含有酸化マグネシウムの酸化マグネシウム純度が99.9質量%以上である。
(8)フッ素含有酸化マグネシウムのBET比表面積が0.1〜12m2/gの範囲にある。
(9)基板の上に、アドレス電極が形成されていて、アドレス電極の上に波長変換層を介して蛍光体層が形成されている。
(10)基板の上に、アドレス電極と、アドレス電極を被覆する誘電体層とが形成されていて、誘電体層の上に波長変換層を介して蛍光体層が形成されている。
(11)基板の上に、隔壁が形成されていて、隔壁の壁面にも波長変換層を介して蛍光体層が形成されている。
【0010】
本発明はまた、Xeガスを含む放電ガスが充填された放電空間を介して、放電電極が形成されている前面板と、上記本発明の背面板とが、放電電極と蛍光体層とが互いに対向するように配置されてなる交流型プラズマディスプレイパネルにもある。
【0011】
本発明はさらに、波長が220〜270nmの範囲にある紫外線に励起されて発光を示す蛍光体からなる蛍光体層と、その層の下に形成された、フッ素を0.01〜10質量%の範囲で含有する、酸化マグネシウム純度が99.8質量%以上(但し、酸化マグネシウム純度は、含まれるフッ素を除いた総量中の酸化マグネシウム含有量である)で、かつBET比表面積が0.1〜30m2/gの範囲にあるフッ素含有酸化マグネシウムからなる波長変換層とからなる発光性積層体にもある。
【発明の効果】
【0012】
本発明の背面板を用いたAC型PDPは、各色の蛍光体層の発光輝度が高い値で均一化するので、白色の色バランスが良好で、かつ高画質なものとなる。
また、本発明では、蛍光体層の発光量を電気的に低く抑えることなく、容易に入手可能であって工業的に安価に製造できる材料を用いることにより、各色の蛍光体層の発光輝度を高い値で均一化させることができる。このため、白色の色バランスが良好で、かつ高画質のAC型PDPを経済的にも有利に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
添付図面の図1は、本発明に従うAC型PDPの一例の斜視図である。図2は、図1に示したAC型PDPのA−A線断面図である。
図1において、AC型PDPは、Xeガスを含む放電ガスが充填された放電空間10を介して、対向配置された前面板20と背面板30とからなる。
【0014】
放電空間10に充填される放電ガスとしては、通常はXeガスとNeガスとの混合ガスが用いられる。放電ガス中のXeガスの濃度は、一般に5〜20体積%の範囲である。
【0015】
前面板20は、透明ガラス基板21、透明ガラス基板21の背面板側の表面に形成された二つの列電極24a、24bからなる放電電極25、放電電極25を被覆する誘電体層26、誘電体層26の背面板側の表面に形成された誘電体保護層27からなる。
【0016】
放電電極25を構成する二つの列電極24a、24bは、それぞれ幅の広い透明電極22と幅の狭いバス電極23とからなる。透明電極22は、一般にITO(インジウムスズ酸化物)膜や酸化スズ膜などの導電性金属酸化物膜からなる。透明電極22は、CVD法やスパッタ法などの成膜法により形成した導電性金属酸化物膜をエッチング法やリフトオフ法などのパターンニング法によりパターンニングする方法により形成することができる。透明電極22の厚みは、一般に0.1〜0.2μmの範囲にある。バス電極23は、アルミニウム、銅及び銀などの単層金属膜、もしくはクロム/銅/クロムなどの積層金属膜からなる。バス電極23は、金属ペースト(銀ペースト)をスクリーン印刷法により塗布する方法、あるいはスパッタ法などの成膜法により形成した金属膜をエッチング法やリフトオフ法などのパターンニング法によりパターンニングする方法により形成することができる。バス電極23の厚みは、一般に1〜10μmの範囲にある。
【0017】
前面板の誘電体層26は、一般に低融点ガラスからなる。前面板誘電体層26は、誘電体ペーストをスクリーン印刷法、あるいはリバースコータ、カーテンコータ、ダイコータ、スロットコータなどの各種コータを用いたコーティング法により塗布し、塗布膜を乾燥、焼成することにより形成することができる。前面板誘電体層26の厚みは、一般に5〜20μmの範囲にある。
【0018】
誘電体保護層27は、一般に酸化マグネシウムからなる。酸化マグネシウムからなる誘電体保護層は、EB蒸着法により形成することができる。誘電体保護層27の厚みは、一般に0.5〜1.0μmの範囲にある。
【0019】
背面板30は、基板31、基板31の前面板20側の表面に形成されたアドレス電極32、アドレス電極32を被覆する誘電体層33、誘電体層33の前面板側の表面に間隔を開けてストライプ状に形成された隔壁34、隔壁34の間に充填された青色発光蛍光体層35B、緑色発光蛍光体層35G及び赤色発光蛍光体層35R、そして青色発光蛍光体層35Bと誘電体層33及び隔壁34との間に挿入された波長変換層36からなる。
【0020】
背面板の基板31は、一般に透明ガラス基板からなる。
アドレス電極(行電極とも云う)32は、前面板20の放電電極25と直交する方向に配置される。アドレス電極32は、一般にアルミニウム、銅及び銀などの単層金属膜、もしくはクロム/銅/クロムなどの積層金属膜からなる。アドレス電極32は、金属ペースト(銀ペースト)をスクリーン印刷法により塗布する方法、あるいはスパッタ法などの成膜法により形成した金属膜をエッチング法やリフトオフ法などのパターンニング法によりパターンニングする方法により形成することができる。アドレス電極32の厚みは、一般に1〜10μmの範囲にある。
【0021】
背面板の誘電体層33は、一般に低融点ガラスからなる。背面板誘電体層33は、誘電体ペーストをスクリーン印刷法、あるいはリバースコータ、カーテンコータ、ダイコータ、スロットコータなどの各種コータを用いたコーティング法により塗布し、塗布膜を乾燥、焼成することにより形成することができる。背面板誘電体層33の厚みは、一般に5〜20μmの範囲にある。背面板誘電体層33には白色反射材として、酸化チタンなどの白色顔料を分散させてもよい。
【0022】
隔壁34は、一般に低融点ガラスからなる。隔壁34は、サンドブラスト法、アディティブ法、感光性隔壁形成法(フォト法)、積層印刷法、型押し法、転写法などの方法を用いて形成することができる。隔壁34のサイズは、一般に高さが100〜150μmの範囲、幅が50〜80μmの範囲にある。隔壁34のピッチは、通常は110〜360μmの範囲である。
【0023】
青色発光蛍光体層35Bを形成する青色発光蛍光体としては、BAM:Eu2+青色発光蛍光体を挙げることができる。BAM:Eu2+青色発光蛍光体は、一般に緑色発光蛍光体層35Gを形成する緑色発光蛍光体や赤色発光蛍光体層35Rを形成する赤色発光蛍光体と比較して発光輝度が低い傾向にある。BAM:Eu2+青色発光蛍光体は、波長が220〜270nmの範囲にある紫外線に励起されると青色の発光を示す。緑色発光蛍光体層35Gを形成する緑色発光蛍光体の例としては、基本組成式がZn2SiO4:Mn2+、(Ba,Sr,Mg)O・αAl23:Mn2+、YBO3:Tb3+、(Y,Gd)BO3:Tb3+、BaAl1219:Mn2+及びBaMgAl1017:Eu2+,Mn2+で表される蛍光体を挙げることができる。赤色発光蛍光体層35Rを形成する赤色発光蛍光体の例としては、基本組成式がYBO3:Eu3+、(Y,Gd)BO3:Eu3+、Y23:Eu3+及び(Y,Gd)23:Eu3+で表される蛍光体を挙げることができる。
【0024】
波長変換層36はフッ素を0.01〜10質量%の範囲で含有する、酸化マグネシウム純度が99.8質量%以上(但し、酸化マグネシウム純度は、含まれるフッ素を除いた総量中の酸化マグネシウム含有量である)で、かつBET比表面積が0.1〜30m2/gの範囲にあるフッ素含有酸化マグネシウムからなる。フッ素含有酸化マグネシウムは、フッ素の含有量が0.03〜5質量%の範囲にあることが好ましく、酸化マグネシウム純度が99.9質量%以上であることが好ましく、BET比表面積が0.1〜12m2/gの範囲にあることが好ましい。なお、酸化マグネシウム純度は、フッ素含有酸化マグネシウム粉末の全体量に対して0.001質量%以上含まれる、フッ素とマグネシウムとを除いた元素の総含有量を100から減じた値である。
【0025】
フッ素含有酸化マグネシウムからなる波長変換層36は、前面板20の放電電極25の放電により発生するXeの共鳴線(波長147nm付近)及びXe2の分子線(波長172nm)によって励起されると波長220〜270nmの範囲に最大ピークをもつ発光パターンを示す紫外線を生成する。すなわち、波長変換層36はBAM:Eu2+青色発光蛍光体に吸収されずに青色発光蛍光体層35Bを通過したXeの共鳴線及びXe2の分子線を波長220〜270nmの紫外線に変換して、青色発光蛍光体層35Bに照射し、青色発光蛍光体層35Bを励起させて青色の光を発光させる機能がある。この波長変換層36の機能によって、相対的に発光輝度の低い青色発光蛍光体層(BAM:Eu2+青色発光蛍光体層)35Bの発光輝度を向上させることにより、各色の蛍光体層の発光輝度が高い値で均一化する。
【0026】
図1及び図2に示したAC型PDPにおいては、波長変換層36が青色発光蛍光体層35Bと誘電体層33及び隔壁34との間にのみ挿入されているが、青色、緑色及び赤色の各色の蛍光体層を形成する蛍光体のそれぞれが波長220〜270nmの範囲の紫外線により励起されて発光する場合は、全ての蛍光体層と誘電体層33及び隔壁34との間に波長変換層を設けてもよい。また、各色の蛍光体層のうちの一色又は二色の蛍光体層の発光輝度が相対的に他の蛍光体層の発光輝度よりも低いために、各色の蛍光体層の発光輝度が不均一となるときは、それらの相対的に発光輝度が低い蛍光体層と誘電体層33及び隔壁34との間に波長変換層を設けてもよい。波長220〜270nmの範囲の紫外線に励起されて赤色光を発光する赤色発光蛍光体としては、組成式が(Y,Gd)BO3:Eu3+で表される化合物が挙げられ、緑色光を発光する蛍光体としては、Zn2SiO4:Mn2+緑色発光蛍光体が挙げられる。
【0027】
波長変換層36は、フッ素含有酸化マグネシウムが分散されているペーストをスクリーン印刷法あるいはリバースコータ、カーテンコータ、ダイコータ、スロットコータなどの各種コータを用いたコーティング法により塗布し、塗布膜を乾燥することにより形成することができる。波長変換層36の厚みは、一般に1〜10μmの範囲、好ましくは2〜8μmの範囲にある。
【0028】
波長変換層36を形成するフッ素含有酸化マグネシウムは、純度が99.95質量%以上で、BET比表面積が5〜150m2/gの範囲、好ましくは7〜50m2/gの範囲にある酸化マグネシウム原料粉末を、フッ素源の存在下、もしくはフッ素含有気体の雰囲気下にて焼成することからなる方法により製造することができる。
【0029】
フッ素含有酸化マグネシウムの製造に用いる酸化マグネシウム原料粉末としては、気相合成酸化法により製造された酸化マグネシウム粉末であることが好ましい。気相合成酸化法とは、金属マグネシウム蒸気と酸素含有気体とを気相中にて接触させ、金属マグネシウム蒸気を酸化させて酸化マグネシウム粉末を製造する方法である。
【0030】
フッ素源としては、フッ化マグネシウム粉末を用いることが好ましい。フッ素源として用いるフッ化マグネシウム粉末は、純度が99質量%以上あることが好ましい。フッ素源の存在下にて、酸化マグネシウム原料粉末の焼成を行なう場合は、焼成を行なう前に酸化マグネシウム原料粉末とフッ素源とを混合しておくことが好ましい。
【0031】
フッ素含有気体としては、フッ化水素ガス、あるいはフッ化マグネシウム粉末を加熱して気化させたガスを用いることが好ましい。
【0032】
酸化マグネシウム原料粉末を、フッ素源の存在下、もしくはフッ素含有気体の雰囲気下にて、850℃以上の温度で10分以上焼成すると、酸化マグネシウム原料粉末の一次粒子がフッ素を結晶内に取り込みながら粒成長する。このため、得られるフッ素含有酸化マグネシウム粉末は、酸化マグネシウム原料粉末よりもBET比表面積が低減する。得られるフッ素含有酸化マグネシウム粉末のBET比表面積は、酸化マグネシウム原料粉末に対して、好ましくは1〜50%の範囲、特に好ましくは3〜30%の範囲にある。
【0033】
フッ素源の存在下、もしくはフッ素含有気体の雰囲気下にて酸化マグネシウム原料粉末を焼成する際の焼成温度は、850℃以上、好ましくは900〜1500℃の範囲、特に好ましくは1000〜1500℃の範囲にある。焼成時間は、10分以上、好ましくは20分〜1時間の範囲にある。
【0034】
図1及び図2においては、波長変換層36が青色発光蛍光体層35Bと誘電体層33及び隔壁34との間に挿入されているAC型PDPの例を示したが、本発明においては、波長変換層が蛍光体層と基板との間に介在していればよく、例えば、アドレス電極の上に波長変換層を設けてもよい。アドレス電極の上に波長変換層を設けた、本発明に従うAC型PDPの一例の断面図を図3に示す。なお、図3において、図1及び図2に示したAC型PDPと同一の構成構成部分については、図1及び図2と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0035】
図3に示したAC型PDPは、図1及び図2に示したAC型PDPのアドレス電極の上に形成した誘電体層を波長変換層とし、青色発光蛍光体層と誘電体層及び隔壁との間に挿入した波長変換層を省略した構成となっている。図3に示したAC型PDPにおいて、アドレス電極を覆う形で形成されたフッ素含有酸化マグネシウムからなる波長変換層40は、フッ素含有酸化マグネシウム単独で形成してもよいし、フッ素含有酸化マグネシウムと酸化チタンなどの白色顔料との混合物として形成してもよい。また、波長変換層40をフッ素含有酸化マグネシウムを低融点ガラスに分散した形で形成してもよい。フッ素含有酸化マグネシウムを低融点ガラスに分散させて波長変換層を形成する場合、波長変換層中のフッ素含有酸化マグネシウムの含有量は、一般に1〜30質量%の範囲、好ましくは5〜20質量%の範囲にある。
【0036】
波長変換層40は、フッ素含有酸化マグネシウムが分散されているペーストをスクリーン印刷法あるいはリバースコータ、カーテンコータ、ダイコータ、スロットコータなどの各種コータを用いたコーティング法により塗布し、塗布膜を乾燥することにより形成することができる。波長変換層40の厚みは、一般に5〜20μmの範囲にある。
【0037】
本発明の波長が220〜270nmの範囲にある紫外線に励起されて発光を示す蛍光体からなる蛍光体層と、その層の下に形成された、フッ素を0.01〜10質量%の範囲で含有する、酸化マグネシウム純度が99.8質量%以上(但し、酸化マグネシウム純度は、含まれるフッ素を除いた総量中の酸化マグネシウム含有量である)で、かつBET比表面積が0.1〜30m2/gの範囲にあるフッ素含有酸化マグネシウムからなる波長変換層とからなる発光性積層体は、AC型PDPの背面板以外の用途、例えば、Xeランプなどの真空紫外線励起による蛍光体の発光を利用した発光装置にも利用することができる。
【実施例】
【0038】
[実施例1]
(1)フッ素含有酸化マグネシウムペーストの製造
気相合成酸化法により製造された酸化マグネシウム(2000A、宇部マテリアルズ(株)製、純度:99.98質量%、BET比表面積:8.7m2/g)5gとフッ化マグネシウム(純度:99.1質量%、BET比表面積:6.4m2/g)0.05gとを混合して、粉末混合物を得た。得られた粉末混合物を容量25mLのアルミナ坩堝に投入し、蓋をして電気炉に入れ、240℃/時間の昇温速度で1200℃まで上昇させ、ついで該温度で30分間焼成した。その後、炉内温度を240℃/時間の降温速度で室温まで冷却した。得られた焼成物は、BET比表面積が1.81m2/g、フッ素含有量が0.0496質量%、酸化マグネシウムの純度が99.9質量%以上のフッ素含有酸化マグネシウムであった。
【0039】
上記のようにして得られたフッ素含有酸化マグネシウム2.5gを、イソプロピルアルコール300mLにエチルセルロース21gを加え、マグネチックスターラーにて15時間撹拌して調製したペーストに添加し、脱泡機を用いて7分間混合して、フッ素含有酸化マグネシウムペーストを調製した。
【0040】
(2)BAM:Eu2+青色発光蛍光体ペーストの製造
BAM:Eu2+青色発光蛍光体2.5gを、イソプロピルアルコール300mLにエチルセルロース21gを加え、マグネチックスターラーにて15時間撹拌して調製したペーストに添加し、脱泡機を用いて7分間混合して、BAM:Eu2+青色発光蛍光体ペーストを調製した。
【0041】
(3)基板の上に、フッ素含有酸化マグネシウム層を介してBAM:Eu2+青色発光蛍光体層が形成された積層板の製造
直径19.8mm、厚さ2.0mmの石英基板に、フッ素含有酸化マグネシウムペーストをスクリーン印刷機にて塗布し、70℃の温度で乾燥した後、580℃の温度で1時間アニールして、厚さ4μmのフッ素含有酸化マグネシウム層を形成した。次いで、このフッ素含有酸化マグネシウム層の上に、BAM:Eu2+青色発光蛍光体ペーストをスクリーン印刷機にて塗布し、70℃の温度で乾燥した後、580℃の温度で1時間アニールして、厚さ6μmのBAM:Eu2+青色発光蛍光体層を形成した(フッ素含有酸化マグネシウム層とBAM:Eu2+青色発光蛍光体層との合計層厚は10μm)。
【0042】
[比較例1]
直径19.8mm、厚さ2.0mmの石英基板に、実施例1にて調製したBAM:Eu2+青色発光蛍光体ペーストをスクリーン印刷機にて塗布し、70℃の温度で乾燥した後、580℃の温度で1時間アニールして、基板の上に厚さ10μmのBAM:Eu2+青色発光蛍光体層が形成された積層板を製造した。
【0043】
[評価]
実施例1及び比較例1にて製造した積層板について、それぞれBAM:Eu2+青色発光蛍光体層の上から、波長146nmと波長172nmの真空紫外線とを照射して、分光蛍光光度計を用いて波長146nmと波長172nmの真空紫外線励起による青色光の発光スペクトルを測定した。実施例1で製造した積層板の発光スペクトルの最大ピーク値(最大輝度)は、比較例1で製造した積層板の最大輝度をそれぞれ100とすると、波長146nmで111、波長172nmで120であり、フッ素含有酸化マグネシウム層を介在させることによって、発光輝度が向上することが確認された。
【0044】
[実施例2]
(Y,Gd)BO3:Eu3+赤色発光蛍光体2.5gを、イソプロピルアルコール300mLにエチルセルロース21gを加え、マグネチックスターラーにて15時間撹拌して調製したペーストに添加し、脱泡機を用いて7分間混合して、(Y,Gd)BO3:Eu3+赤色発光蛍光体ペーストを調製した。
直径19.8mm、厚さ2.0mmの石英基板に、実施例1にて調製したフッ素含有酸化マグネシウムペーストをスクリーン印刷機にて塗布し、70℃の温度で乾燥した後、580℃の温度で1時間アニールして、厚さ4μmのフッ素含有酸化マグネシウム層を形成した。次いで、このフッ素含有酸化マグネシウム層の上に、(Y,Gd)BO3:Eu3+赤色発光蛍光体ペーストをスクリーン印刷機にて塗布し、70℃の温度で乾燥した後、580℃の温度で1時間アニールして、厚さ6μmの(Y,Gd)BO3:Eu3+赤色発光蛍光体層を形成した(フッ素含有酸化マグネシウム層と(Y,Gd)BO3:Eu3+赤色発光蛍光体層との合計層厚は10μm)。
【0045】
[比較例2]
直径19.8mm、厚さ2.0mmの石英基板に、実施例2で調製した(Y,Gd)BO3:Eu3+赤色発光蛍光体ペーストをスクリーン印刷機にて塗布し、70℃の温度で乾燥した後、580℃の温度で1時間アニールして、基板の上に厚さ10μmの(Y,Gd)BO3:Eu3+赤色発光蛍光体層が形成された積層板を製造した。
【0046】
[評価]
実施例2及び比較例2にて製造した積層板について、それぞれ(Y,Gd)BO3:Eu3+赤色発光蛍光体層の上から、波長146nmと波長172nmの真空紫外線とを照射して、分光蛍光光度計を用いて波長146nmと波長172nmの真空紫外線励起による赤色光の発光スペクトルを測定した。実施例2で製造した積層板の発光スペクトルの最大ピーク値(最大輝度)は、比較例2で製造した積層板の最大輝度をそれぞれ100とすると、波長146nmで136、波長172nmで129であり、フッ素含有酸化マグネシウム層を介在させることによって、発光輝度が向上することが確認された。
【0047】
[実施例3]
Zn2SiO4:Mn2+緑色発光蛍光体2.5gを、イソプロピルアルコール300mLにエチルセルロース21gを加え、マグネチックスターラーにて15時間撹拌して調製したペーストに添加し、脱泡機を用いて7分間混合して、Zn2SiO4:Mn2+緑色発光蛍光体ペーストを調製した。
直径19.8mm、厚さ2.0mmの石英基板に、実施例1にて調製したフッ素含有酸化マグネシウムペーストをスクリーン印刷機にて塗布し、70℃の温度で乾燥した後、580℃の温度で1時間アニールして、厚さ4μmのフッ素含有酸化マグネシウム層を形成した。次いで、このフッ素含有酸化マグネシウム層の上に、Zn2SiO4:Mn2+緑色発光蛍光体ペーストをスクリーン印刷機にて塗布し、70℃の温度で乾燥した後、580℃の温度で1時間アニールして、厚さ6μmのZn2SiO4:Mn2+緑色発光蛍光体層を形成した(フッ素含有酸化マグネシウム層とZn2SiO4:Mn2+緑色発光蛍光体層との合計層厚は10μm)。
【0048】
[比較例3]
直径19.8mm、厚さ2.0mmの石英基板に、実施例3で調製したZn2SiO4:Mn2+緑色発光蛍光体ペーストをスクリーン印刷機にて塗布し、70℃の温度で乾燥した後、580℃の温度で1時間アニールして、基板の上に厚さ10μmのZn2SiO4:Mn2+緑色発光蛍光体層が形成された積層板を製造した。
【0049】
[評価]
実施例3及び比較例3にて製造した積層板について、それぞれZn2SiO4:Mn2+緑色発光蛍光体層の上から、波長146nmと波長172nmの真空紫外線とを照射して、分光蛍光光度計を用いて波長146nmと波長172nmの真空紫外線励起による緑色光の発光スペクトルを測定した。実施例3で製造した積層板の発光スペクトルの最大ピーク値(最大輝度)は、比較例3で製造した積層板の最大輝度をそれぞれ100とすると、波長146nmで115、波長172nmで123であり、フッ素含有酸化マグネシウム層を介在させることによって、発光輝度が向上することが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に従うAC型PDPの一例の斜視図である。
【図2】図1に示したAC型PDPのA−A線断面図である。
【図3】本発明に従うAC型PDPの別の一例の断面図である。
【符号の説明】
【0051】
10 放電空間
20 前面板
21 透明ガラス基板
22 透明電極
23 バス電極
24a、24b 列電極
25 放電電極
26 誘電体層
27 誘電体保護層
30 背面板
31 基板
32 アドレス電極
33 誘電体層
34 隔壁
35B 青色発光蛍光体層
35G 緑色発光蛍光体層
35R 赤色発光蛍光体層
36 波長変換層
40 波長変換層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に、フッ素を0.01〜10質量%の範囲で含有する、酸化マグネシウム純度が99.8質量%以上(但し、酸化マグネシウム純度は、含まれるフッ素を除いた総量中の酸化マグネシウム含有量である)で、かつBET比表面積が0.1〜30m2/gの範囲にあるフッ素含有酸化マグネシウムからなる波長変換層を介して、波長が220〜270nmの範囲にある紫外線に励起されて発光を示す蛍光体からなる蛍光体層が形成されている交流型プラズマディスプレイパネル用背面板。
【請求項2】
波長変換層の厚みが1〜10μmの範囲にある請求項1に記載の背面板。
【請求項3】
蛍光体層の厚みが1〜30μmの範囲にある請求項1に記載の背面板。
【請求項4】
蛍光体層が、基本組成式がBaMgAl1017:Eu2+で表される青色発光蛍光体からなる青色発光蛍光体層である請求項1に記載の背面板。
【請求項5】
蛍光体層が、基本組成式が(Y,Gd)BO3:Eu3+で表される赤色発光蛍光体からなる赤色発光蛍光体層である請求項1に記載の背面板。
【請求項6】
蛍光体層が、基本組成式がZn2SiO4:Mn2+で表される緑色発光蛍光体からなる緑色発光蛍光体層である請求項1に記載の背面板。
【請求項7】
フッ素含有酸化マグネシウムのフッ素含有量が0.03〜5質量%の範囲にある請求項1に記載の背面板。
【請求項8】
フッ素含有酸化マグネシウムの酸化マグネシウム純度が99.9質量%以上である請求項1に記載の背面板。
【請求項9】
フッ素含有酸化マグネシウムのBET比表面積が0.1〜12m2/gの範囲にある請求項1に記載の背面板。
【請求項10】
基板の上に、アドレス電極が形成されていて、アドレス電極の上に波長変換層を介して蛍光体層が形成されている請求項1に記載の背面板。
【請求項11】
基板の上に、アドレス電極と、アドレス電極を被覆する誘電体層とが形成されていて、誘電体層の上に波長変換層を介して蛍光体層が形成されている請求項1に記載の背面板。
【請求項12】
基板の上に、隔壁が形成されていて、隔壁の壁面にも波長変換層を介して蛍光体層が形成されている請求項1に記載の背面板。
【請求項13】
Xeガスを含む放電ガスが充填された放電空間を介して、放電電極が形成されている前面板と、請求項1乃至12のうちのいずれかの項に記載の背面板とが、放電電極と蛍光体層とが互いに対向するように配置されてなる交流型プラズマディスプレイパネル。
【請求項14】
波長が220〜270nmの範囲にある紫外線に励起されて発光を示す蛍光体からなる蛍光体層と、その層の下に形成された、フッ素を0.01〜10質量%の範囲で含有する、酸化マグネシウム純度が99.8質量%以上(但し、酸化マグネシウム純度は、含まれるフッ素を除いた総量中の酸化マグネシウム含有量である)で、かつBET比表面積が0.1〜30m2/gの範囲にあるフッ素含有酸化マグネシウムからなる波長変換層とからなる発光性積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−10403(P2008−10403A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−137028(P2007−137028)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(000119988)宇部マテリアルズ株式会社 (120)
【Fターム(参考)】