説明

交通事故自動記録装置

【課題】機械的な駆動部を排除して故障が減少し、且つ信頼性が向上された交通事故自動記録装置を提供する。
【解決手段】交通事故自動記録装置は、外部から取り込んだ映像信号を圧縮したデジタルの映像データに変換し、且つ外部から取り込んだ音声信号を圧縮したデジタルの音声データに変換し、圧縮した映像データおよび音声データをフレーム毎に所定の期間リングメモリ記録回路に記録するとともに、時刻を発生する時刻発生回路と、リングメモリ記録回路から出力される映像データおよび音声データと時刻を書庫化して可搬型半導体記憶媒体に記録するデジタル記録装置と、音声信号を解析して衝突音を識別する衝突音識別部と、衝突音識別部が衝突音を識別したとき生成するトリガ信号が入力されたとき交通事故に関わる映像データおよび音声データをリングメモリ記録回路から読み出してデジタル記録装置に送出する記録制御回路と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、交通事故に関わる画像や音を記録する交通事故自動記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の交通事故状況記録装置は、交差点近傍に周囲音検出装置および撮像装置を設けるとともに、これらの装置から得られる音響信号および映像信号をエンドレス記録装置で常時連続的に記録する。そして、車両の衝突音が検出されるとエンドレス記録装置で一定時間再生動作を行わせるとともに磁気記録再生装置で一定時間記録動作を行わせる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平4−338900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、エンドレス記録装置および磁気記録再生装置としてビデオテープレコーダなどの磁気記録装置が使用されており、機械的な駆動部が設けられているために、振動や衝撃に弱く、定期的なメンテナンスが必要となるという問題がある。
また、磁気テープを繰り返し上書きで使用しているために、記録した映像の質が悪くなるという問題がある。
【0005】
この発明の目的は、機械的な駆動部を排除して故障が減少し、且つ信頼性が向上された交通事故自動記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る交通事故自動記録装置は、外部から取り込んだ映像信号をデジタルの映像データに変換する映像信号A/D回路と、上記デジタルの映像データを圧縮する映像データ圧縮回路と、外部から取り込んだ音声信号をデジタルの音声データに変換する音声信号A/D回路と、上記デジタルの音声データを圧縮する音声データ圧縮回路と、上記圧縮した映像データおよび音声データをフレーム毎に所定の期間記録するリングメモリ記録回路と、を備える交通事故自動記録装置において、時刻を発生する時刻発生回路と、上記リングメモリ記録回路から出力される映像データおよび音声データと上記時刻発生回路から発生される時刻を書庫化して可搬型半導体記憶媒体に記録するデジタル記録装置と、上記音声信号を解析して衝突音を識別する衝突音識別部と、上記衝突音識別部が衝突音を識別したとき生成するトリガ信号が入力されたとき交通事故に関わる映像データおよび音声データを上記リングメモリ記録回路から読み出して上記デジタル記録装置に送出する記録制御回路と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る交通事故自動記録装置の効果は、監視領域を常時撮影して得る映像信号をデジタル映像データに変換し、変換した映像データを圧縮し、圧縮した映像データを所定の時間に亘って記録し、交通事故が発生したとき発生前後の交通事故に関わる複数の映像データを1つの書庫に書庫化し、さらに所定の期間の交通事故の複数の書庫を1つの書庫に書庫化し、書庫化した所定の期間の交通事故の書庫を可搬型半導体記憶媒体に記録するので、機械的な駆動部を含まないので、故障が減少し、且つ信頼性が向上される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、この発明を実施するための最良の形態の交通事故自動記録装置の構成を示すブロック図である。
この発明に係る交通事故自動記録装置1は、例えば交差点を通過する車や人を撮影するカメラ2から映像信号を取り込んでデジタルの映像データに変換する映像信号A/D回路3、デジタルの映像データを例えばJPEG2000という方式で圧縮する映像データ圧縮回路4、交差点付近で発生する音声を集音したマイクロホン5から音声信号を取り込んでデジタルの音声データに変換する音声信号A/D回路6、デジタルの音声データを例えばMP3という方式で圧縮する音声データ圧縮回路7、および、圧縮した映像データおよび音声データをフレーム毎に所定の期間記録する大容量のFIFO半導体メモリからなるリングメモリ記録回路8を備える。
【0009】
また、この発明に係る交通事故自動記録装置1は、マイクロホン5からの音声信号を解析して衝突音を識別する衝突音識別部9、衝突音識別部9が衝突音を識別したとき生成するトリガ信号が入力されたとき交通事故に関わる映像データおよび音声データをリングメモリ記録回路8から読み出してデジタル記録装置10に送出する記録制御回路11、時刻を発生する時刻発生回路12、および、リングメモリ記録回路8から出力される例えば300フレーム分の映像データおよび音声データと時刻発生回路12から発生される時刻を書庫化して例えばコンパクトフラッシュ(登録商標)の規格のメモリカード13に記録するデジタル記録装置10を備える。
【0010】
なお、デジタルの映像データをJPEG2000という方式で圧縮しているが、必ずしもこの方式に限るものではなく、JPEG、GIFなどいずれの方式も適用できる。但し、JPEG2000という方式を用いると高い圧縮率にも関わらず比較的復元画像が良好である。
また、デジタルの音声データをMP3という方式で圧縮しているが、必ずしもこの方式に限るものではなく、TTA、FLACなどいずれの方式も適用できる。
また、カメラ2がNTSC方式の映像信号を発生しているが、必ずしもこれに限るものではなく、PAL方式の映像信号などであっても良い。
【0011】
また、メモリカード13としてコンパクトフラッシュ(登録商標)の規格のメモリカード13に記録する例を説明したが、必ずしもこの規格のメモリカード13に限るものではなく、SDメモリカード、スマートメディア、メモリスティックなどいずれの規格のメモリカード13を適用しても良い。
【0012】
次に、具体的な例を用いて交通事故の記録をコンパクトフラッシュ(登録商標)の規格のメモリカード13に記録する手順を説明する。カメラ2からは例えば1秒に30フレームの映像信号が交通事故自動記録装置1に送られている。そして、映像信号A/D回路3では、フレーム毎の映像信号をデジタルの映像データにアナログ/デジタル変換する。そして、映像データ圧縮回路4では、デジタルの映像データをJPEG2000という方式で圧縮し、フレーム毎のJPEG2000ファイル(****.jp2)に変換する。そして、JPEG2000ファイルはリングメモリ記録回路8に記録される。リングメモリ記録回路8は、例えば少なくともJPEG2000ファイルが300個記録することができる容量を有しており、新たなJPEG2000ファイルを記録するとき、過去に遡ること301個目のJPEG2000ファイルが記録されているフィールドに新たなJPEG2000ファイルを上書きするFIFOメモリである。また、音声データ圧縮回路7で音声データを圧縮して得たMP3ファイル(####.mp3)もJPEG2000ファイルに連関させてリングメモリ記録回路に記録する。すなわち、リングメモリ記録回路8には図2に示すように、JPEG2000ファイルとMP3ファイルとを一対として300対のJPEG2000ファイルおよびMP3ファイルが記録されている。なお、各JPEG2000ファイルにはタイムスタンプが施されており、交通事故が発生したときタイムスタンプを用いて、交通事故に関わるJPEG2000ファイルおよびMP3ファイルを特定する。
【0013】
衝突音を識別することにより交通事故が発生したことを検知したとき、トリガ信号が入力された記録制御回路11は、トリガ信号が入力された時刻を事故発生時刻とし、リングメモリ記録回路8に記録されたJPEG2000ファイルおよびMP3ファイルの中事故発生時刻を挟んで例えば前後5秒ずつのJPEG2000ファイルおよびMP3ファイルを取り出す。1秒間に30対のJPEG2000ファイルおよびMP3ファイルが記録されるので、10秒間での300対のJPEG2000ファイルおよびMP3ファイルを取り出すことになる。
【0014】
デジタル記録装置10では、300対のJPEG2000ファイルおよびMP3ファイルを1つのファイル、すなわち事故単位の書庫にまとめてメモリカード13に記録する。このとき300対のJPEG2000ファイルおよびMP3ファイルをまとめて記録される事故単位の書庫をさらに例えば50個まとめて1つのファイル、すなわち期間単位の書庫にまとめてメモリカード13に記録することができる。すなわち、15000対のJPEG2000ファイルおよびMP3ファイルが2段構成の書庫の中に記録される。
そして、図3に示すように、事故単位の書庫の先頭には時刻発生回路12が発生した時刻をメタデータとして記録するフィールドが設けられている。例えば、事故発生時刻が2007年1月10日午前1時20分15秒であれば、この時刻情報がメタデータとして記録される。
【0015】
また、期間単位の書庫の先頭には、期間単位の書庫に一番先に記録された事故単位の書庫のメタデータと最後に記録された事故単位の書庫のメタデータを期間開始のメタデータと期間終了のメタデータとして記録するフィールドが設けられている。例えば、この期間単位の書庫に一番先に記録した事故単位の書庫のメタデータが、2007年1月10日午前1時20分15秒であれば、期間単位の書庫の期間開始のメタデータとして2007年1月10日として記録し、この期間単位の書庫に最後に記録された事故単位の書庫のメタデータが、2007年3月20日午後1時45分12秒であれば、期間終了のメタデータとして2007年3月20日として記録する。
【0016】
次に、このように交通事故に関わる映像データおよび音声データが記録されたメモリカード13を交通事故自動記録装置1から抜き取り、メモリカード13に記録された映像データおよび音声データを再生するアプリケーションが実装されたパソコン14で交通事故に関わる映像および音声を確認する手順について説明する。
パソコン14に実装されているアプリケーションでは、図示しないPCカードスロットにメモリカード13を挿入すると、メモリカード13に記録されている期間単位の書庫の期間開始のメタデータおよび期間終了のメタデータ、事故単位の30個の書庫のメタデータを読み出し、図示しないモニタに表示する。図示しないマウスを操作してカーソルを所望の事故単位の書庫のメタデータに合わせてクリックすると、当該事故単位の書庫に記録されているJPEG2000ファイルおよびMP3ファイルに展開される。そして、展開された300個のJPEG2000ファイルおよびMP3ファイルをそれぞれ解凍して300個の映像データおよび10秒間の音声データに復元する。そして、300個の映像データおよび10秒間の音声データを用いてモニタに映像、スピーカから音声が再生される。
【0017】
この発明に係る交通事故自動記録装置1は、リングメモリ記録回路8としてFIFOの半導体メモリを用いるとともに、交通事故が発生したときには交通事故の前後それぞれ5秒間の映像および音声をメモリカード13に記録しているので、機械的駆動部が存在せず、故障が減少し、且つ信頼性が向上する。
また、映像データおよび音声データを事故毎の書庫に書庫化し、それから複数の事故毎の書庫をさらに新たな書庫に書庫化してメモリカード13に記録するので、メモリカード13に記録できる映像データおよび音声データの量が多くできる。
また、メモリカード13に記録されている書庫のメタデータから映像データおよび音声データが記録されている期間が分かり、次に事故毎の書庫のメタデータから事故の発生した時刻が特定することができるので、所望の交通事故に関する映像データを速やかに検索することができる。
【0018】
上述のデジタル記録装置10では、事故毎の複数の書庫をメモリカード13を1つの書庫と見なして記録しているが、メモリカード13に記録するときに事故毎の書庫を暗号化処理してから記録することもできる。このように暗号化処理が施された事故毎の書庫を展開しようとするときには、事故毎の書庫に復号化処理を施さないと展開できないので、交通事故に関する映像や音声を見たり聞いたりする権限がない人が見たり聞いたりされることが防げる。
また、万が一、メモリカード13を紛失しても、復号化処理するためのアプリケーションが一般的には出回っていないので、映像や音声が見たり聞いたりされることが防げる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明に係る交通事故自動記録装置の構成を示す構成図である。
【図2】JPEG2000ファイルおよびMP3ファイルが記録されているリングメモリ記録回路のフォーマットである。
【図3】映像データおよび音声データが記録されているメモリカードのフォーマットである。
【符号の説明】
【0020】
1 交通事故自動記録装置、2 カメラ、3 映像信号A/D回路、4 映像データ圧縮回路、5 マイクロホン、6 音声信号A/D回路、7 音声データ圧縮回路、8 リングメモリ記録回路、9 衝突音識別部、10 デジタル記録装置、11 記録制御回路、12 時刻発生回路、13 メモリカード、14 パソコン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から取り込んだ映像信号をデジタルの映像データに変換する映像信号A/D回路と、上記デジタルの映像データを圧縮する映像データ圧縮回路と、外部から取り込んだ音声信号をデジタルの音声データに変換する音声信号A/D回路と、上記デジタルの音声データを圧縮する音声データ圧縮回路と、上記圧縮した映像データおよび音声データをフレーム毎に所定の期間記録するリングメモリ記録回路と、を備える交通事故自動記録装置において、
時刻を発生する時刻発生回路と、
上記リングメモリ記録回路から出力される映像データおよび音声データと上記時刻発生回路から発生される時刻を書庫化して可搬型半導体記憶媒体に記録するデジタル記録装置と、
上記音声信号を解析して衝突音を識別する衝突音識別部と、
上記衝突音識別部が衝突音を識別したとき生成するトリガ信号が入力されたとき交通事故に関わる映像データおよび音声データを上記リングメモリ記録回路から読み出して上記デジタル記録装置に送出する記録制御回路と、
を備えることを特徴とする交通事故自動記録装置。
【請求項2】
上記デジタル記録装置は、暗号化して記録することを特徴とする請求項1に記載の交通事故自動記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−294691(P2009−294691A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144593(P2008−144593)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(591036457)三菱電機エンジニアリング株式会社 (419)
【Fターム(参考)】