説明

交通流制御システム

【課題】 進行方向ごとの交通量の変化に柔軟に対応することのできる交通流制御システムを提供する。
【解決手段】 交通流制御システム1は、2車線の道路RMの下流の交差点Xにおいて、各車線における車両の現在の待ち行列の長さを測定する車両感知装置2と、各車線の行列長から求めた混雑度に基づいて、各車線を走行する車両が交差点X内において進行できる許可進行方向を決定する中央制御装置5と、その許可進行方向の情報を各車線を走行する車両に表示する情報表示板4を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通量の変化に対する柔軟性を向上した交通流制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、道路を走行する車両の交通量に変化があったときに、交通量の変化に応じて道路の通行区分の変更を行う通行区分の制御方式が知られている。この従来の制御方式では、道路上に配置されたセンサによって交通状況を検知する。そして、検出した交通状況に応じて、LEDで構成された車線区分(例えばセンターライン等)を変更し、道路の車線数を増減させる(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭63−124200号公報(第2−3頁、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の制御方式においては、道路の一部の区間でセンターラインを移動させて車線数を増加させているので、その区間の終端では車線数が減少する(もとの車線数に戻る)こととなる。そのため、その区間の終端にできたボトルネック(車線が減少している部分)で渋滞が発生しやすくなるという問題があった。また、センターラインを移動させて本線車線の車線数を増加させると、それに伴って対向車線の車線数が減少してしまうので、対向車線の車両走行が阻害され、渋滞発生等の原因になることがあるという問題があった。
【0004】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたもので、交通量の変化に柔軟に対応することのできる交通流制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の交通流制御システムは、複数の車線を有する道路の下流の交差点に設けられ、前記交差点の上流の道路の各車線における車両の待ち行列の長さを測定し、各車線の行列長情報を入手する行列長情報入手手段と、前記各車線の行列長情報に基づいて、前記各車線における混雑度を決定する混雑度決定手段と、前記各車線の混雑度と前記各車線に隣接する車線の混雑度とを比較して、前記各車線を走行する車両が前記交差点内において進行することができる許可進行方向を決定する許可進行方向決定手段と、前記各車線の許可進行方向の情報を、前記各車線を走行する車両に向けて表示する情報表示手段とを備えた構成を有している。
【0006】
この構成により、交差点における各車線の現在の待ち行列の長さから車線ごとの混雑度を求め、各車線の混雑度と隣接する車線の混雑度を比較して、交差点内で現在進行できる許可進行方向が決定される。そして、その許可進行方向の情報が各車線を走行する車両に対して表示される。例えば、複数の車線を有する道路において、進行方向(例えば、直進、右折、左折など)ごとの交通量に変化が生じたときには、道路の下流の交差点における各車線ごとの待ち行列の長さが変化する。本発明では、交差点における各車線の現在の待ち行列の長さから求めた混雑度に基づいて、現在の各車線の許可進行方向を決定することにより、交通量の変化に柔軟に対応することができる。また本発明では、交通量の変化に応じて、各車線の許可進行方向が変化したときには、その情報の表示が変更されるだけである。したがって、従来のようにセンターラインを移動して車線数を増減させることがなく、対向車線の車両走行を阻害することもないので、渋滞の発生が抑えられる。
【0007】
また、本発明の交通流制御システムは、前記道路の上流において、各車線を走行する車両の台数を計測し、各車線の交通量情報を入手する交通量情報入手手段を備え、前記混雑度決定手段は、前記各車線の行列長情報および交通量情報に基づいて、前記各車線における混雑度を決定する構成を有している。
【0008】
この構成により、道路の下流側の交差点における各車線の行列長情報から求められる現状の混雑度と、道路の上流側の各車線の交通量情報から予測される将来の混雑度とから、各車線の混雑度が求められる。このようにして求めた混雑度に基づいて各車線の許可進行方向を決定することにより、将来予測される交通量の変化を考慮しながら、現在の交通量の変化に柔軟に対応することができる。
【0009】
また、本発明の交通流制御システムでは、前記許可進行方向決定手段は、前記各車線の混雑度が前記各車線に隣接する車線の混雑度よりも大きいときに、前記各車線の許可進行方向と前記隣接する車線の許可進行方向のいずれにも存在する進行方向を、前記各車線の許可進行方向から除外する構成を有している。
【0010】
この構成により、一の車線の混雑度が隣接する車線の混雑度よりも大きいとき、すなわち、一の車線が隣接する車線よりも混雑しているときに、両方の車線に共通する進行方向が、一の車線の許可進行方向から除外される。これにより、一の車線の許可進行方向から除外された進行方向へ進行する予定の車両は、一の車線から隣接する車線へ移るように促され、一の車線の混雑を軽減することができる。
【0011】
また、本発明の交通流制御システムでは、前記許可進行方向決定手段は、前記各車線の混雑度が前記各車線に隣接する車線の混雑度よりも大きいときに、前記各車線の許可進行方向に存在しかつ前記隣接する車線の許可進行方向に存在しない進行方向を、前記隣接する車線の許可進行方向に追加する構成を有している。
【0012】
この構成により、一の車線の混雑度が隣接する車線の混雑度よりも大きいとき、すなわち、一の車線が隣接する車線よりも混雑しているときに、一の車線に存在しかつ隣接する車線には存在しない進行方向が、隣接する車線の許可進行方向に追加される。これにより、隣接する車線の許可進行方向に追加された進行方向へ進行する予定の車両は、一の車線から隣接する車線へ移るように促され、一の車線の混雑を軽減することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、交差点における各車線の行列長情報から求めた混雑度に基づいて各車線の許可進行方向を決定する許可進行方向決定手段と、その許可進行方向の情報を表示する進行方向示手段を設けることにより、交通量の変化に柔軟に対応することができるという効果を有する交通流制御システムを提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態の交通流制御システムについて、図面を用いて説明する。本実施の形態では、片側2車線の道路における車両の流れ(交通流)を一日中(24時間)継続して制御する交通流制御システムの場合を例示する。
【0015】
本発明の実施の形態の交通流制御システムを図1〜図9を用いて説明する。図1は、本実施の形態の交通流制御システムの概略を示す平面図であり、図2は、交通流制御システムの概略を示す斜視図である。また、図3は、交通流制御システムの構成を説明するためのブロック図である。
【0016】
図1および図2に示すように、本実施の形態の交通流制御システム1は、片側2車線の主道路RMの下流の交差点Xに設置される画像式の車両感知装置2と、主道路RMの上流に設置される超音波式の車両感知器3と、主道路RMに設置される情報表示板4と、これらの車両感知装置2、車両感知器3、情報表示板4と通信可能に接続されている中央制御装置5とを備えている。
【0017】
画像式の車両感知装置2は、例えば、交差点Xで信号待ちをしている車両の行列を撮影することができるように、交差点X付近の高所に設置されている。本実施の形態の画像式の車両感知装置2は、CCD等の撮像素子を備えており、撮影した画像をコンピュータで画像処理することにより、各車線の車両の待ち行列の長さと先頭位置を測定し、各車線の行列長情報と先頭位置情報を入手できるように構成されている。ここでは、画像式の車両感知装置2が、本発明の行列長情報入手手段に相当する。
【0018】
本実施の形態では、図3に示すように、車両の待ち行列の先頭位置が、交差点Xの停止位置から所定距離(Lm)以上離れているときには、その車両の待ち行列を、車線変更のための割り込み待ちとして取り扱い、信号待ち行列としては取り扱わない。すなわち、車両の待ち行列の先頭位置が、交差点Xの停止位置(例えば、停止線の位置)から所定の距離より近いときのみ、その車両の待ち行列の長さを、信号待ち行列として取り扱う。これにより、車線変更のための割り込み待ち行列を、誤って信号待ち行列として取り扱うことが低減される。
【0019】
超音波式の車両感知器3は、主道路RMを走行する車両の台数を計測できるように、主道路RMの上流の所定箇所に配置されている。本実施の形態の超音波式の車両感知器3は、超音波送受器を備えており、超音波送受器から超音波を路面に向けて間欠的に発射し、車両からの反射波と路面からの反射波を比較して、車両の存在を感知することができるように構成されている。
【0020】
本実施の形態では、図1および図2に示すように、主道路RMの上流の地点において、従道路RSが主道路RMに合流している。そして、超音波式の車両感知器3は、主道路RMと従道路RSの合流地点の少し下流に設置されており、主道路RMに流入する車両の台数を計測し、各車線の交通量情報を入手できるように構成されている。ここでは、超音波式の車両感知器3が、本発明の交通量情報入手手段に相当する。
【0021】
情報表示板4は、例えばLED等を用いた道路標示板であり、表示する道路標示パタンを変更することができるように構成されている。情報表示板4には、各車線を走行する車両が交差点X内において進行できる許可進行方向(直進・右折・左折など)を示す道路標示パタンが表示される。
【0022】
本実施の形態では、図4に示すように、情報表示板4には、主道路RMの各車線の交通量の状況に応じて、パタン1からパタン5までの5種類の道路標示パタンのいずれかが表示される。ここでは、情報表示板4に、右車線と左車線の2車線分の進行方向を示す道路標示が表示されている。
【0023】
そして、例えば、右車線と左車線の交通量が同程度の場合(例えば、直進車両が多い場合)には、情報表示板4にパタン1の道路標示パタンが表示される。すなわち、この場合には、情報表示板4の道路標示パタンは変更されない。
【0024】
情報表示板4にパタン1が表示されている状態で、右車線の交通量が左車線の交通量よりも多い場合(例えば、右折車両が多い場合)には、情報表示板4に表示される道路標示パタンはパタン1からパタン2に変更される。そして、情報表示板4にパタン2が表示されている状態でも、右車線の交通量が左車線の交通量より多い場合(例えば、右折車両が非常に多い場合)には、情報表示板4に表示される道路標示パタンはパタン2からパタン3に変更される。
【0025】
一方、情報表示板4にパタン1が表示されている状態で、左車線の交通量が右車線の交通量よりも多い場合(例えば、左折車両が多い場合)には、情報表示板4に表示される道路標示パタンはパタン1からパタン4に変更される。そして、情報表示板4にパタン4が表示されている状態でも、左車線の交通量が右車線の交通量より多い場合(例えば、左折車両が非常に多い場合)には、情報表示板4に表示される道路標示パタンはパタン4からパタン5に変更される。
【0026】
図5に示すように、中央制御装置5は、画像式の車両感知装置2から各車線の行列長情報と先頭位置情報を受け取るとともに、超音波式の車両感知器3から各車線の交通量情報を受け取る情報収集部6を備えている。また、中央制御装置5は、情報収集部6が受け取った行列長情報が登録される行列長テーブル7と、情報収集部6が受け取った先頭位置情報が登録される受け取った先頭位置テーブル8と、情報収集部6が受け取った交通量情報が登録される交通量テーブル9を備えている。
【0027】
また、図5に示すように、中央制御装置5は、各車線の車両の行列長(待ち行列の長さ)から各車線の現状混雑度を決定する現状混雑度決定部10と、各車線の交通量(流入台数)から各車線の予測混雑度を決定する予測混雑度決定部11と、現状混雑度と予測混雑度に重み付け処理を行い各車線の混雑度を算出する混雑度算出部12と、右車線の混雑度と左車線の混雑度を比較して情報表示板4に表示する道路標示パタンを決定するパタン決定部13と、決定した道路標示パタンの情報が記憶されるパタンテーブル14と、決定した道路標示パタンの情報を情報表示板4に送信する情報送信部15を備えている。
【0028】
ここでは、中央制御装置5の現状混雑度決定部10、予測混雑度決定部11、混雑度算出部12が、本発明の混雑度決定部に相当する。また、中央制御装置5のパタン決定部13が、本発明の許可進行方向決定手段に相当する。
【0029】
以上のように構成された交通流制御システム1について、図6〜図9を用いてその動作を説明する。
【0030】
本発明の実施の形態の交通流制御システム1を用いて、交差点Xに流入する片側2車線の主道路RMの車両の流れ(交通流)を制御するときには、まず、交差点Xに設置された画像式の車両感知装置2によって、交差点Xで信号待ちしている各車線の車両の待ち行列の長さと先頭位置の測定が行われ、各車線の行列長情報と先頭位置情報が求められる(S1)。この画像式の車両感知器3による測定は、例えば5秒毎または1秒毎に行われる。そして、各車線の行列長情報と先頭位置情報は、画像式の車両感知装置2から中央制御装置5の情報収集部6へ送信される。
【0031】
また、主道路RMの上流に設置された超音波式の車両感知器3によって、主道路RMに流入する各車線の車両の台数の計測が行われ、各車線の交通量情報が求められる(S2)。そして、各車線の交通量情報は、超音波式の車両感知器3から中央制御装置5の情報収集部6へ送信される。
【0032】
また、中央制御装置5では、主道路RMの情報表示板4に現在表示されている道路標示パタンの内容の確認が行われる(S3)。情報表示板4に現在表示されている道路標示パタンの情報は、中央制御装置5のパタンテーブル14に記憶されている。
【0033】
そして、中央制御装置5の現状混雑度決定部10では、各車線の行列長情報と先頭位置情報に基づいて、各車線の現状混雑度の決定が行われる(S4)。
【0034】
図7は、現状混雑度の決定処理の流れを示すフロー図である。図7に示すように、各車線における現状混雑度を決定するときには、まず、その車線における行列長が所定の第1しきい行列長A1よりも短いか、または、先頭位置が所定のしきい先頭位置Sよりも交差点Xに近いか否かの判断が行われる(S401)。
【0035】
そして、その車線における行列長が所定の第1しきい行列長A1よりも短いか、または、先頭位置が所定のしきい先頭位置Sよりも交差点Xに近い場合には、現状混雑度が「1」に決定される(S402)。
【0036】
一方、行列長が所定の第1しきい行列長A1以上であり、先頭位置が所定のしきい先頭位置S以上であった場合には、行列長が所定の第2しきい行列長A2(ただし、A2>A1)よりも短いか否かの判断が行われる(S403)。
【0037】
そして、その車線における行列長が所定の第2しきい行列長A2より短い場合には、現状混雑度が「2」に決定される(S404)。一方、その車線における行列長が所定の第2しきい行列長A2以上である場合には、現状混雑度が「3」に決定される(S405)。
【0038】
以上のように現状混雑度の決定が行われた後、中央制御装置5の予測混雑度決定部11では、各車線の交通量情報に基づいて、各車線の予測混雑度の決定が行われる(S5)。
【0039】
図8は、予測混雑度の決定処理の流れを示すフロー図である。図8に示すように、各車線における予測混雑度を決定するときには、まず、その車線の流入台数が所定の第1しきい流入台数N1よりも少ないか否かの判断が行われる(S501)。
【0040】
そして、その車線の流入台数が所定の第1しきい流入台数N1よりも少ない場合には、予測混雑度が「1」に決定される(S502)。
【0041】
一方、流入台数が所定の第1しきい流入台数N1以上であった場合には、流入台数が所定の第2しきい流入台数N2(ただし、N2>N1)よりも少ないか否かの判断が行われる(S503)。
【0042】
そして、その車線の流入台数が所定の第2しきい流入台数N2より少ない場合には、予測混雑度が「2」に決定される(S504)。一方、その車線の流入台数が所定の第2しきい流入台数N2以上である場合には、予測混雑度が「3」に決定される(S505)。
【0043】
以上のように予測混雑度の決定が行われた後、中央制御装置5の混雑度算出部12では、下記の式1を用いて、各車線の現状混雑度と予測混雑度に重み付け処理を施して、各車線の混雑度Cを算出する(S6)。
【0044】
混雑度C={α×現状混雑度}+{(1−α)×予測混雑度)} (式1)
ここで、αは、0≦α≦1の範囲で予め設定される所定の重み付け係数である。
【0045】
つぎに、中央制御装置5のパタン決定部13では、上記のようにして算出された右車線と左車線の混雑度Cを比較して、道路標示パタンの決定が行われる(S7)。
【0046】
図9は、道路標示パタンの決定処理の流れを示すフロー図である。図9に示すように、道路標示パタンを決定するときには、まず、右車線と左車線の混雑度の差ΔCを算出する(S701)。そして、右車線と左車線の混雑度の差ΔCが1よりも小さいか否かの判断が行われる(S702)。
【0047】
右車線と左車線の混雑度の差ΔCが1よりも小さい場合には、現在表示されている道路標示パタンからパタンのシフトを行わない(S703)。すなわち、現在表示されている道路標示パタンは変更されない。
【0048】
一方、右車線と左車線の混雑度の差ΔCが1以上である場合には、右車線と左車線の混雑度の差ΔCが2よりも小さいか否かの判断が行われる(S704)。
【0049】
その結果、右車線と左車線の混雑度の差ΔCが2よりも小さい場合には、現在表示されている道路標示パタンから1段階のパタンシフトが行なわれる(S705)。例えば、現在表示されている道路標示パタンがパタン1であり、右車線の混雑度のほうが左車線よりも大きい場合には、パタン1からパタン2へ右方向へ1段階のパタンシフトが行われる(図4参照)。このとき、パタン1とパタン2を比較すると、パタン1の右車線と左車線に共通する「直進」の許可進行方向が、パタン2の右車線の許可進行方向から除外されている。
【0050】
このように情報表示板4に表示される道路標示パタンがパタン1からパタン2に変更されると、右車線を走行している直進車両(交差点Xを直進しようと予定している車両)は、右車線から左車線へと車線変更するように促される。
【0051】
そして、右車線と左車線の混雑度の差ΔCが2以上であった場合には、現在表示されている道路標示パタンから2段階のパタンシフトが行われる(S706)。例えば、現在表示されている道路標示パタンがパタン1であり、右車線の混雑度のほうが左車線よりも大きい場合には、パタン1からパタン3へ右方向へ2段階のパタンシフトが行われる(図4参照)。このとき、パタン1とパタン3を比較すると、パタン1の右車線と左車線に共通する「直進」の許可進行方向が、パタン3の右車線の許可進行方向から除外されており、また、パタン1の右車線に存在しかつ左車線には存在しない「右折」の許可進行方向が、パタン3の左車線の許可進行方向に追加されている。
【0052】
このように情報表示板4に表示される道路標示パタンがパタン1からパタン3に変更されると、右車線を走行している直進車両(交差点Xを直進しようと予定している車両)は、右車線から左車線へと車線変更するように促され、また、右車線を走行している右折車両(交差点Xを右折しようと予定している車両)も、右車線から左車線へと車線変更するように促される。
【0053】
このようなパタンシフトは、例えば5分毎または2.5分事に行われる。なお、図4に示すように、現在表示されている道路標示パタンがパタン3である場合には、それより右方向へのパタンシフトは行われない。また、現在表示されている道路標示パタンがパタン5である場合には、それより左方向へのパタンシフトは行われない。
【0054】
そして、上記のようにして道路標示パタンが、中央制御装置5の情報配信部から情報表示場板へ送信され、情報表示板4の表示が各車線の混雑度に応じて即座にリアルタイムで変更される(S8)。
【0055】
このような発明の実施の形態の交通流制御システム1によれば、交差点Xにおける各車線の待ち行列の長さを測定して行列長情報を入手する画像式の車両感知装置2と、各車線の行列長情報から求めた混雑度に基づいて各車線の許可進行方向を決定する中央制御装置5と、その許可進行方向の情報を表示する情報表示板4を設けることにより、進行方向ごとの交通量の変化にリアルタイムで柔軟に対応することができる。
【0056】
すなわち、本実施の形態の交通流制御システム1では、交差点Xにおける各車線の現在の待ち行列の長さから車線ごとの現状混雑度を決定し、その現状混雑度を用いて各車線の混雑度が求められる。そして、右車線と左車線の混雑度を比較して、交差点X内で現在進行できる許可進行方向が決定され、その許可進行方向の情報が各車線を走行する車両に対して表示される。
【0057】
例えば、片側2複数の主道路MSにおいて、進行方向(例えば、直進、右折、左折など)ごとの交通量に変化が生じたときには、主道路MSの下流の交差点Xにおける右車線と左車線の待ち行列の長さが変化する。本実施の形態では、交差点Xにおける各車線の現在の待ち行列の長さから求めた混雑度に基づいて、情報表示板4に表示する道路標示パタンを決定する、すなわち、現在の各車線の許可進行方向を決定する。これにより、進行方向ごとの交通量の変化に柔軟に対応することができる。
【0058】
また本実施の形態では、進行方向ごとの交通量の変化に応じて、各車線の許可進行方向が変化したときには、情報表示板4に表示される道路標示パタンが変更されるだけである。したがって、従来のようにセンターラインを移動して車線数を増減させることがなく、対向車線の車両走行を阻害することもないので、渋滞の発生が抑えられる。
【0059】
また、本実施の形態の交通流制御システム1では、主道路MSの上流における(従道路RSからの流入台数も含めた)各車線の車両の流入台数を計測することにより、主道路MSの上流の各車線の交通量情報が求められる。これにより、主道路MSの下流の交差点Xにおける各車線の行列長情報から求められる現状混雑度と、主道路MSの上流の各車線の交通量情報から予測される予測混雑度とから、各車線の混雑度が求められる。このようにして求めた混雑度に基づいて各車線の許可進行方向を決定することにより、将来予測される交通量の変化を考慮しながら、現在の進行方向ごとの交通量の変化に柔軟に対応することができる。
【0060】
また、本実施の形態の交通流制御システム1では、例えば、右車線の混雑度が左車線の混雑度よりも大きいとき、すなわち、右車線が左車線よりも混雑しているときに、両方の車線に共通する進行方向(例えば、直進表示)が、右車線の許可進行方向から除外される。これにより、右車線の許可進行方向から除外された進行方向へ進行する予定の車両(例えば、直進車両)は、右車線から左車線へ移るように促され、右車線の混雑を軽減することができる。
【0061】
また、本実施の形態の交通流制御システム1では、例えば、右車線の混雑度が左車線の混雑度よりも大きいとき、すなわち、右車線が左車線よりも混雑しているときに、右車線に存在しかつ左車線には存在しない進行方向(例えば、右折表示)が、左車線の許可進行方向に追加される。これにより、左車線の許可進行方向に追加された進行方向へ進行する予定の車両(例えば、右折車両)は、右車線から左車線へ移るように促され、右車線の混雑を軽減することができる。
【0062】
以上、本発明の実施の形態を例示により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。
【0063】
例えば、以上の説明では、主道路RMの車線数が2車線の場合について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、本線車線の車線数は3車線以上であってもよい。
【0064】
例えば、以上の説明では、本発明の交通流制御システム1を用いて、一日中(24時間)継続して交通流の制御を行う場合を例示したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、例えば、朝夕のラッシュ時のみ車両の流れを制御してもよい。
【0065】
また、以上の説明では、行列長情報入手手段として、画像式の車両感知装置2を用いた例について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、行列長情報入手手段は、各車線における車両の現在の待ち行列の長さを測定することができるものであればよい。
【0066】
また、以上の説明では、交通量情報入手手段として、超音波式の車両感知器3を用いた例について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、交通量情報入手手段は、各車線を走行する車両の台数を計測できるものであればよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上のように、本発明にかかる交通流制御システムは、進行方向ごとの交通量の変化にリアルタイムで柔軟に対応することができるという効果を有し、交通量の変化に対する柔軟性を向上した交通流制御システム等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施の形態における交通流制御システムの概略を示す平面図
【図2】本発明の実施の形態における交通流制御システムの概略を示す斜視図
【図3】本発明の実施の形態において、車両感知装置で測定する待ち行列の長さと先頭位置を説明するための平面図
【図4】本発明の実施の形態において、情報表示板に表示される道路標示パタンを説明するための図
【図5】本発明の実施の形態における交通流制御システムの構成を示すブロック図
【図6】本発明の実施の形態における交通流制御の流れを示すフロー図
【図7】本発明の実施の形態における行列長比較処理の流れを示すフロー図
【図8】本発明の実施の形態における流入台数比較処理の流れを示すフロー図
【図9】本発明の実施の形態における情報板の表示変更処理の流れを示すフロー図
【符号の説明】
【0069】
1 交通流制御システム
2 画像式の車両感知装置
3 超音波式の車両感知器
4 情報表示板
5 中央制御装置
6 情報収集部
10 現状混雑度決定部
11 予測混雑度決定部
12 混雑度算出部
13 パタン決定部
15 情報送信部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車線を有する道路の交差点に設けられ、前記交差点の上流の道路の各車線における車両の待ち行列の長さを測定し、各車線の行列長情報を入手する行列長情報入手手段と、
前記各車線の行列長情報に基づいて、前記各車線における混雑度を決定する混雑度決定手段と、
前記各車線の混雑度と前記各車線に隣接する車線の混雑度とを比較して、前記各車線を走行する車両が前記交差点内において進行することができる許可進行方向を決定する許可進行方向決定手段と、
前記各車線の許可進行方向の情報を、前記各車線を走行する車両に向けて表示する情報表示手段と、
を備えたことを特徴とする交通流制御システム。
【請求項2】
前記道路の上流において、各車線を走行する車両の台数を計測し、各車線の交通量情報を入手する交通量情報入手手段を備え、
前記混雑度決定手段は、前記各車線の行列長情報および交通量情報に基づいて、前記各車線における混雑度を決定することを特徴とする請求項1に記載の交通流制御システム。
【請求項3】
前記許可進行方向決定手段は、
前記各車線の混雑度が前記各車線に隣接する車線の混雑度よりも大きいときに、前記各車線の許可進行方向と前記隣接する車線の許可進行方向のいずれにも存在する進行方向を、前記各車線の許可進行方向から除外することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の交通流制御システム。
【請求項4】
前記許可進行方向決定手段は、
前記各車線の混雑度が前記各車線に隣接する車線の混雑度よりも大きいときに、前記各車線の許可進行方向に存在しかつ前記隣接する車線の許可進行方向に存在しない進行方向を、前記隣接する車線の許可進行方向に追加することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の交通流制御システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−179430(P2007−179430A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−379236(P2005−379236)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】