交通流計測装置
【課題】特にトンネルなどの囲まれている箇所における車両の交通流の計測を効率的に行うことのできる交通流計測装置を提供する。
【解決手段】所定の周期で画像を撮像する画像撮像部10と、画像から車両を検出する車両検出部11とを備え車両の検出データから交通情報を作成する交通流計測装置において、車両検出部111は、撮影箇所の背景画像と車両の影の輝度とから車両の影の中心点を検出して上記車両の検出を行うものである。
【解決手段】所定の周期で画像を撮像する画像撮像部10と、画像から車両を検出する車両検出部11とを備え車両の検出データから交通情報を作成する交通流計測装置において、車両検出部111は、撮影箇所の背景画像と車両の影の輝度とから車両の影の中心点を検出して上記車両の検出を行うものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、特にトンネルなどの囲まれた箇所における車両の交通流の計測を効率的に行う交通流計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の交通流計測装置は、様々な手法を用いて個別車両を検出・追跡・速度計測を行っていた。例えば車両に発生するエッジ分散量とその対称性に注目し車両検出を行っていた(例えば、特許文献1参照)。また、他の従来の場合は、レンズ絞りを調整して所望な撮像画像を得る手法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−358595号公報
【特許文献2】特開平07−210795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の交通流計測装置は、先の従来の場合には、トンネル等の囲まれた箇所における対向車線を有する路線で車両検出を行う場合、対向車両のヘッドライトが非常に高い輝度を持っているため高感度カメラで、かつ、レンズ絞りを開いた状態で撮像すると、撮像面において輝度が飽和した状態(以後、当該現象を「ハレーション」と呼ぶ)となり、人間の目から見ても車両物体形状が認識できない状態となる。よってこのような状態では車両検出を行うことができないという問題点があった。後の従来の場合には、対向車のハレーションが抑制でき、車両物体形状が認識可能になると、相対的に順行車両の輝度レベルが下がり車両物体形状が認識できなくなるという問題点があった。これは順行車両と対向車両とが発生する光量が異なるため、どちらか一方車線の車両を検知しやすい映像にカメラ絞りを変更するともう一方車線の車両が見えなくなる、もしくはハレーションを起こして車両形状が特定できなくなってしまうという問題点があった。さらに、レンズ絞りを調整するためには絞りを制御する機構が必要であるが、遠隔監視を目的とする道路監視システムにおいては撮像地点と画像処理地点とが隣接しておらず、カメラ制御信号を敷設する必要が発生しコストが高くなるという問題点があった。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、ハレーションなどがおこりやすいトンネルなどの囲まれた箇所における車両の交通流の計測を効率的かつ低コストにて行う交通流計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、所定の周期で画像を撮像する画像撮像部と、画像から車両を検出する車両検出部とを備え、車両の検出データから交通情報を作成する交通流計測装置において、車両検出部は、撮影箇所の背景画像と車両の影の輝度とから車両の影の中心点を検出して車両の検出を行うものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明の交通流計測装置は、所定の周期で画像を撮像する画像撮像部と、画像から車両を検出する車両検出部とを備え、車両の検出データから交通情報を作成する交通流計測装置において、車両検出部は、撮影箇所の背景画像と車両の影の輝度とから車両の影の中心点を検出して車両の検出を行うので、ハレーションなどがおこりやすいトンネルなどの囲まれた箇所における車両の検出が可能となり、延いては車両の交通流の計測を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1における交通流計測装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1における対向車のライト光のハレーションが発生した状況図である。
【図3】この発明の実施の形態1における対向車線のラスタスキャンを行い輝度分布を算出し、輝度飽和中心点列を求めている状況図である。
【図4】この発明の実施の形態1における輝度飽和中心点列から光源中心点を求めている状況図である。
【図5】この発明の実施の形態2における交通流計測装置の構成を示すブロック図である。
【図6】この発明の実施の形態2における対向車線車両のライト光の路面への移り込みを表す状況図である。
【図7】この発明の実施の形態2における車両判定評価結果を説明するための状況図である。
【図8】図5に示した交通流計測装置の車両検出部の動作を説明するためのフローチャートである。
【図9】この発明の実施の形態3における交通流計測装置の構成を示すブロック図である。
【図10】この発明の実施の形態3における輝度飽和車両を表す状況図である。
【図11】この発明の実施の形態3における輝度飽和車両の検出を表す状況図である。
【図12】この発明の実施の形態4における車両計測時刻と計測位置との関係を表す分布グラフと最小自乗和による一次近似直線の図である。
【図13】この発明の実施の形態5における交通流計測装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下、本願発明の実施の形態について説明する。図1はこの発明の実施の形態1における交通流計測装置の構成を示すブロック図、図2は実施の形態1における対向車線の車両がハレーションを起こし車両形状が特定不可能となる状況図、図3はこの発明の実施の形態1における対向車線のラスタスキャンを行い輝度分布を算出し、輝度飽和中心点列を求めている状況図、図4はこの発明の実施の形態1における輝度飽和中心点列から光源中心点を求めている状況図である。図において、交通流計測装置は以下のものにて構成されている。画像撮像部10は、例えば監視用ITVカメラなどの撮像素子により所定の周期で画像を撮像し、その画像をデジタルデータとして記憶するものである。
【0010】
車両検出部11は、撮像画像上の監視を必要とする車線上に存在する車両を、車両のライト光の輝度の飽和値に達している場合、そのライト光の光源中心点を検出して車両の検出を行うものである。車両追跡部12は、車両検出部11で検出した車両を時間軸に対して追跡し、個別車両毎の追跡情報を算出するものである。車両速度算出部13は、車両追跡部12において追跡を行っている個別車両に対して移動速度情報を算出するものである。交通流計測部14は、車両速度算出部13によって計測された個別車両の情報から交通事象の判定を行うもので、停止、低速、速度超過の個別車両単体において発生する事象や、渋滞や避走走行・車両同士の車間警告という複数車両間において発生する事象を統合検出するものである。
【0011】
次に上記のように構成された実施の形態1の交通流計測装置の動作について説明する。まず、画像撮像部10が所定の周期で画像を撮像し、その画像をデジタルデータとして記憶する。次に、車両検出部11は、画像撮像部10にて撮像された撮像画像から監視を必要とする車線上に存在する車両を検出する。この際、画像撮像部10の撮像画像として図2に示すように、道路が囲まれた箇所にて撮像された例えばトンネル内にて撮像された場合、車両のライト光がハレーション部分A1を発生する可能性がある。よって、このようにハレーション部分A1が発生した車両は、図2で示すように車両の存在する周辺の輝度が飽和してしまい、車両の形状そのものが見えず、全く映っていない状態となる。この場合、撮像画像から直接的に車両を検出することができない。
【0012】
そこで、本発明ではこのライト光の輝度が飽和することを利用して車両の検出を行う。図3に示すように、対向車線領域の周辺におけるY軸の任意の点にて、X軸方向にラスタスキャンを行う。次に、輝度勾配分析を行う。すると、ハレーション部分A1では輝度の頭打ち(飽和値)が発生している。尚、輝度の飽和値の値とは、画像撮像部の例えばカメラなどのAD変換特性に依存しており、通常の場合には図3にて示した235という値が飽和値を採ることが多い。よって、飽和値はその周辺の値を用いることとする。次に、この現象を利用してX軸の右側からの輝度勾配探索と左側からの輝度勾配探索とを同時に行い、輝度が飽和値に達しているX1、X2をそれぞれ検出する。次に、その輝度が飽和値に達しているX1とX2とのX軸の中心点X3を決定する。そして、この作業をY軸の任意の点に対して繰り返し行っていく。そして、X軸方向のラスタスキャンにより決定された飽和値の中心点列a1が検出される。そして、この中心点列a1からY軸に対して並行な、すなわち図4で示すような、傾き0の1次近似直線B1を求める。
【0013】
次に、求められた近似直線B1に属し、X軸の中心点X3が一定数以上連続する部分の中心点列a1のY軸方向に対するY軸の中心点Y1を決定する。そして、図で示すように、ハレーションを発生させた車両の光源中心点C1(X3、Y1)が求められる。また、後続の車両のハレーション部分A2に対しても上記に示した同様の処理を行い、中心点列a2を求め、光源中心点C2を検出する。次に、車両追跡部12にて車両検出部11で検出した車両すなわち光源中心点C1、C2を時間軸に対してそれぞれ追跡し、個別車両毎の追跡情報を算出する。例えば、車両検出部にて検出された車両の位置の経時的変化を追跡する。次に、車両速度算出部13にて車両追跡部12において追跡を行っている個別車両に対して移動速度情報を算出する。次に、交通流計測部14にて車両速度算出部13によって計測された個別車両の情報から交通事象の判定を行う。これにより、停止、低速、速度超過の個別車両単体において発生する事象や、渋滞や避走走行・車両同士の車間警告という複数車両間において発生する事象を統合検出することができる。
【0014】
上記のように構成された実施の形態1の交通流計測装置によれば、車両形状の特定不可能なハレーションを発生させた車両に対する車両検出処理を、ライト光の輝度の飽和値の光源中心点を検出することにより車両の検出を可能としているため、効率よく、かつ、低コスト、かつ、精度の高い交通流の計測を行うことが可能となる。また、車両追跡部において、車両検出部にて検出された車両の位置の経時的変化を追跡して後処理を行うようにしているため、正確な速度、延いては、正確な交通事情の判定を行うことができる。
【0015】
尚、上記の実施の形態1にて示した交通流量計測装置によれば、車両検出部において、車両のライト光の輝度の飽和値の光源中心点を検出して車両の検出を行う例を示したが、当然のことながら、撮像画像において車両の形状そのものが見えるような場合などは、撮像画像の車両の形状そのものから車両を検出し、上記実施の形態1にて示した場合と交えて車両の検出を行い以下の他の処理を行うことは言うまでもなく。以下の実施の形態においても同様のことが言えるためその説明は適宜省略する。
【0016】
実施の形態2.
図5はこの発明の実施の形態2における交通流計測装置の構成を示すブロック図、図6はこの発明の実施の形態2における対向車線車両のライト光の路面への移り込みを表す状況図、図7はこの発明の実施の形態2における車両判定評価結果を説明するための状況図、図8は図5に示した交通流計測装置の車両検出部の動作を説明するためのフローチャートである。図において、上記実施の形態1と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。車両検出部110は、撮像画像上の監視を必要とする車線上に存在する車両を、車両のライト光の輝度の飽和値に達している場合、そのライト光の光源中心点を検出して車両の検出を行い、さらにその際、車両のライト光の内の反射光を車両の検出の対象から除去するものである。
【0017】
次に上記のように構成された実施の形態2の交通流計測装置の動作について説明する。まず、上記実施の形態1と同様に、画像撮像部10が所定の周期で画像を撮像し、車両検出部110は、画像撮像部10にて撮像された撮像画像から監視を必要とする車両を検出する。この際、上記実施の形態1と同様に、画像撮像部10の撮像画像として図6に示すように、道路が囲まれた箇所にて撮像された例えばトンネル内にて撮像された場合、車両のライト光がハレーション部分A1、A2を発生する可能性がある。さらに、雨天等により路面の光反射率が上昇した場合、ハレーションを伴うライト光の移り込みが発生する。発生する状況は様々あり、左右のライト光が個別に路面に移り込みハレーション部分A4、A5を発生する現象や、同一化して大きく路面に移り込みハレーション部分A3などを発生する現象がある。よって、まず車両検出部110では上記実施の形態1にて示した場合と路面への移り込みに関しても同様に光源中心点C3、C4、C5がそれぞれ検出される。
【0018】
そして、これら移り込みも含むハレーション部分A1、A2、A3、A4、A5により発生した輝度飽和の光源中心点C1、C2、C3、C4、C5の全てが車両候補として検出される。そこで以下に示す評価方法、すなわち車両検出部110で以下に示す二次元情報と三次元情報とを用いて車両候補から反射光を除去し真に車両であるか否かの評価を行う。
(条件1)同一車線上のX座標±α画素以内に複数の車両候補は存在しない。
(条件2)同一車線上のY座標±β画素以内に複数の車両候補は存在しない。
(条件3)車両候補は車線中央から位置誤差が小さいものほど真の車両とする。
このような条件1、2、3の評価を行うことで、反射光は除去され真の車両が検出される。
【0019】
以上の条件における処理の具体例を図7および図8のフローチャートに基づいて説明する。まず、車両候補Aの判定処理を開始する(図8のステップS1)。そして、任意の車両仮候補Aをとして例えば光源中心点C3を選択する(図8のステップS2)。次に、仮候補A(光源中心点C3)を除く同一車線上の車両仮候補Bとして例えば光源中心点C1を選択する(図8のステップS3)。次に、仮候補A(光源中心点C3)と仮候補B(光源中心点C1)とのX座標が±α画素以内であるか否かを判断する(図8のステップS4)。この場合、1次近似直線群がB1、B3であるため、±α画素以内であると判断される。次に、仮候補の車線中央からのX座標誤差をAD%、仮候補Bの車線中央からのX座標誤差BD%をそれぞれ算出する(図8のステップS6)。次に、この算出されたAD%>BD%が成立して、仮候補Bの方が車線中央に近いか否かを判断する(図8のステップS7)。ここでは仮候補Bの方が車線中央に近いため、車両仮候補Aを車両候補から除外される(図8のステップS9)。そして、光源中心点C3は車両候補ではないと判断されて、光源中心点C3の車両候補Aとしての判定の処理を終了する。
【0020】
次に、任意の車両仮候補Aをとして例えば光源中心点C4を選択する(図8のステップS2)。次に、仮候補A(光源中心点C4)を除く同一車線上の車両仮候補Bとして例えば光源中心点C2を選択する(図8のステップS3)。次に、仮候補A(光源中心点C4)と仮候補B(光源中心点C2)とのX座標が±α画素以内であるか否かを判断する(図8のステップS4)。この場合、1次近似直線群がB4、B2であるため、±α画素以内でないと判断される。次に、仮候補A(光源中心点C4)と仮候補B(光源中心点C2)とのY座標が±β画素以内であるか否かを判断する(図8のステップS5)。この場合、仮候補A(光源中心点C4)と仮候補B(光源中心点C2)とはY座標方向において近似しているため、±β画素以内であると判断される。次に、仮候補Aの車線中央からのX座標誤差をAD%、仮候補Bの車線中央からのX座標誤差BD%をそれぞれ算出する(図8のステップS6)。次に、この算出されたAD%>BD%が成立して、仮候補Bの方が車線中央に近いか否かを判断する(図8のステップS7)。次に、ここでは仮候補Bの方が車線中央に近いため、車線仮候補Aを車両候補から除外する(図8のステップS9)。そして、光源中心点C4は車両候補ではないと判断されて、光源中心点C4の車両候補Aとしての判定の処理を終了する。また、光源中心点C5においても光源中心点C4と同様に車両候補から除去される。
【0021】
次に、任意の車両仮候補Aをとして例えば光源中心点C1を選択する(図8のステップS2)。次に、仮候補A(光源中心点C1)を除く同一車線上の車両仮候補Bとして例えば光源中心点C2を選択する(図8のステップS3)。次に、仮候補A(光源中心点C1)と仮候補B(光源中心点C2)とのX座標が±α画素以内であるか否かを判断する(図8のステップS4)。この場合、1次近似直線群がB1、B2であるため、±α画素以内でないと判断される。次に、仮候補A(光源中心点C1)と仮候補B(光源中心点C2)とのY座標が±β画素以内であるか否かを判断する(図8のステップS5)。この場合、仮候補A(光源中心点C2)と仮候補B(光源中心点C1)とはY座標方向において近似していないため、±β画素以内でないと判断される。次に、同一車線上の全仮候補Bに対して処理を行ったか否かを判断する(図8のステップS8)。ここでは、他の光源中心点C3、C4、C5は上記判定にて車両候補からすでに全て除去されているため、車線仮候補Aを車両候補として決定する(図8のステップS10)。そして、光源中心点C1の車両候補Aとしての判定の処理を終了する。そして、光源中心点C2においても同様に車両候補として判定される。このようにして車両の検出が行われた後は、上記実施の形態1と同様に行い、交通流の計測を行う。
【0022】
上記のように構成された実施の形態2の交通流計測装置によれば、上記実施の形態1と同様の効果を奏するのはもちろんのこと、車両の誤検出結果、すなわち反射光を除外して車両を検出することが可能となり、より精度の高い交通流を計測することができる。
【0023】
実施の形態3.
図9はこの発明の実施の形態3における交通流計測装置の構成を示すブロック図、図10はこの発明の実施の形態3における輝度飽和車両を表す状況図、図11はこの発明の実施の形態3における輝度飽和車両の検出を表す状況図である。上記各実施の形態においては、車両が対向車線にあり、そのことにより車両のライト光がハレーションを発生しており、車両のライト光の輝度の飽和値の光源中心点により車両を検出する場合において示した。しかしながら、逆に、順行車線を走行中の車両では、道路が囲まれた箇所、例えばトンネル内において照明が非常に明るく、かつ、撮像画像の画像も明るい状況では、明度の高い車両が進入すると、例えば図10に示すように、車両1のテールランプはもちろん、車両1の後端形状周辺の輝度が飽和してしまい、輝度勾配が現れなくなってしまい輝度飽和車両となる。この現象は、主に画像撮像部の映像を画像処理だけではなく他用途にも用いることを考えた場合、撮像される映像の明度は全体的に明るめに設定されていることにより顕著に発生する。そして、このような車両1の後端形状周辺の輝度勾配は路面や路面構造物の輝度勾配に対して非常に小さな変化しかないため車両1の検出が困難となっていた。
【0024】
この発明の実施の形態3においては、このことを解消して車両の検出を行う場合について説明する。図において、上記各実施の形態と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。車両検出部111は画像撮像部10が撮像した撮像画像から、撮像箇所の背景画像と車両1の影2の輝度とから車両1の影2の中心点を検出して車両1の検出を行うものである。上記に示したように、車両1の検出に関しては撮像画像一部ではなく全体が明るいため上記実施の形態1で提案した手法、さらには、撮像画像に映し出されている車両1の形状から車両を検出する手法では車両1の検出を行うことはできない。
【0025】
次に上記のように構成された実施の形態3の交通流計測装置の動作について説明する。まず、上記各実施の形態と同様に、画像撮像部10が所定の周期で画像を撮像し、車両検出部111は、画像撮像部10にて図10に示すような撮像画像が撮像され、この撮像画像から監視を必要とする車両1を検出する。この際、各車線すなわち順行第1車線、順行第2車線毎にX軸方向にラスタスキャンを行う。そして、撮像画像の輝度と同座標の背景画像の輝度との差分の累積加算:pixelvalueを下記式(1)の算出にて行う。そしてこの処理をY軸方向の所定の点に対して行う。
【0026】
pixelvalue[i][y]=Σabs(背景輝度値(x,y)−撮像画像輝度値(x,y)) ・・・(1)
※Σの範囲は(車線i左端X座標−α<x<車線i右端X座標+β)
i:車線番号
y:Y座標
【0027】
そして、図11に示すように、この累積を行った結果、すなわち、撮像画像における背景画像のX軸方向に対して輝度差累積を行ったY軸の各点に対する輝度差累積が検出される。このように、例えばトンネル内の照度が高く、また車両自体の明度も高い場合であっても、その路面に移り込む車両1の影2は十分に暗く、背景画像の輝度から大きくかけ離れている。その性質を利用しX軸方向で輝度差の累積加算を行うことで、車線内に存在する車両1下端の影2のピークを検出し、車両1下端のY軸方向の位置を特定することができる。次に、X軸においてピークが検出したY座標に対してその中心点を下記式(2)により算出する。
【0028】
【数1】
【0029】
以上のように算出された結果、車両1の下端中央の座標を特定し、車両1を検出する。そして、上記各実施の形態と同様に、次に、車両追跡部12にて車両検出部11で検出した車両1すなわち影2の中心点を時間軸に対して追跡し、個別車両毎の追跡情報を算出する。例えば、車両検出部111にて検出された車両1の位置の経時的変化を追跡する。次に、車両速度算出部13にて車両追跡部12において追跡を行っている個別車両に対して移動速度情報を算出する。次に、交通流計測部14にて車両計測部13によって計測された個別車両の情報から交通事象の判定を行う。これにより、停止、低速、速度超過の個別車両単体において発生する事象や、渋滞や避走走行・車両同士の車間警告という複数車両間において発生する事象を統合検出することができる。
【0030】
上記のように構成された実施の形態3の交通流計測装置によれば、車両自体の検出が困難な輝度飽和車両に対して、その下端に広がる影から車両の下端の影の中心点を検出し、その情報を用いて車両検出を行っているため、従来までは検出が不可能であった車両に関しても車両検出が可能となる。またこのような手法により検出しているため、カメラレンズ絞りを制御する必要もなく低コスト、かつ、効率よく車両検出が可能となる。また、車両追跡部において、車両検出部にて検出された車両の位置の経時的変化を追跡して後処理を行うようにしているため、正確な速度、延いては、正確な交通事情の判定を行うことができる。尚、上記各実施の形態と併用することにより、従来よりもさらに低コストで、かつ、効率よく、かつ、精度の高い交通流計測装置を提供することが可能になることは言うまでもない。
【0031】
実施の形態4.
図12はこの発明の実施の形態4における車両計測時刻と計測位置との関係を表す分布グラフと最小自乗和による一次近似直線の図である。上記各実施の形態においては車両を検出した後の車両の速度検出について特に示さなかったが、この実施の形態においては検出された車両の速度検出について説明する。よって、他の部分の構成などは上記各実施の形態と同様であるため説明を適宜省略する。
【0032】
上記のように構成された実施の形態4における車両速度算出部13の動作について説明する。まず、従来の車両速度計測は直近の車両位置からの速度計測を行う、瞬時速度計測を用いていた。そのため車両位置計測誤差が発生しやすく、その瞬時速度は実際の車両速度から大きく異なる値が計測されていた。この問題解消するため、指数平滑化手法などを用いて、速度の安定化を図るものがあるが、平滑の元となる値が真の車両速度からかけ離れている場合が多いため、車両の速度計測の誤差に問題があった。そこで本実施の形態4においては、車両速度算出部13において、車両追跡部12にて検出された車両の追跡データから車両の位置の分布を取得し、この車両の位置の分布に基づいて次に示す最小自乗和の式(3)を用いて計測誤差の少ない車両速度を計測する。
【0033】
【数2】
【0034】
上記に示した式(3)により、aが近似された車両速度、bが車両計測初期位置となる。車両速度計測区間nの値を大きく設定すればより誤差の少ない近似速度が求められる。またこの場合、車両速度計測区間nの間は一定速度走行していることを前提にして速度近似を行うため、急加減速や停止などの車両に関する応答速度精度も確保するためには車両速度計測区間nの値は小さい方が望ましい。よって、必要とする速度の用途に応じて車両速度計測区間nは適宜設定する必要がある。
【0035】
上記のように構成された実施の形態4の交通流計測装置によれば、上記各実施の形態と同様の効果を奏するのはもちろんのこと、車両の速度を、車両の追跡データから車両の位置の分布を取得して一次近似最小自乗和手法を用いて算出することで、より正確な車両の速度値を求めることが可能となる。
【0036】
実施の形態5.
図13はこの発明の実施の形態5における交通流計測装置の構成を示すブロック図である。図において、上記各実施の形態と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。車両位置予測部17は、車両速度算出部13の車両の速度値の結果を用いて、次に撮像した撮像画像上でその追跡車両がどの位置に移動するかを予め予測し、その車両の予測位置を車両追跡部12に送信するものである。
【0037】
上記のように構成された実施の形態5の交通流計測装置では、車両位置予測部17にて車両の位置の予測を行い、それを車両追跡部12にて送信するようにしたため、車両追跡部12では、特にトンネル内の環境変化の影響により車両追跡が正常に行えなかった場合でも、予測位置を基にして車両位置を決定し追跡を行うことができる。
【0038】
上記のように構成された実施の形態5の交通流計測装置によれば、上記各実施の形態と同様の効果を奏するのはもちろんのこと、車両計測位置から次期予測位置をフィードバックすることで車両追跡の補助を行い、これまで追跡が困難であった環境下、例えば、路面環境の変化や後続車・先行車の影響により追跡車両の形状や見え方が極度に変化する場合などには車両追跡が継続できず、安定した車両追跡を行うことが困難な場合があったが、不安定な環境下でも安定した車両追跡情報を計測することが可能となり、追跡の安定化を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0039】
10 画像撮像部、11,110,111 車両検出部、12 車両追跡部、
13 車両速度算出部、14 交通流計測、17 車両位置予測部。
【技術分野】
【0001】
この発明は、特にトンネルなどの囲まれた箇所における車両の交通流の計測を効率的に行う交通流計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の交通流計測装置は、様々な手法を用いて個別車両を検出・追跡・速度計測を行っていた。例えば車両に発生するエッジ分散量とその対称性に注目し車両検出を行っていた(例えば、特許文献1参照)。また、他の従来の場合は、レンズ絞りを調整して所望な撮像画像を得る手法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−358595号公報
【特許文献2】特開平07−210795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の交通流計測装置は、先の従来の場合には、トンネル等の囲まれた箇所における対向車線を有する路線で車両検出を行う場合、対向車両のヘッドライトが非常に高い輝度を持っているため高感度カメラで、かつ、レンズ絞りを開いた状態で撮像すると、撮像面において輝度が飽和した状態(以後、当該現象を「ハレーション」と呼ぶ)となり、人間の目から見ても車両物体形状が認識できない状態となる。よってこのような状態では車両検出を行うことができないという問題点があった。後の従来の場合には、対向車のハレーションが抑制でき、車両物体形状が認識可能になると、相対的に順行車両の輝度レベルが下がり車両物体形状が認識できなくなるという問題点があった。これは順行車両と対向車両とが発生する光量が異なるため、どちらか一方車線の車両を検知しやすい映像にカメラ絞りを変更するともう一方車線の車両が見えなくなる、もしくはハレーションを起こして車両形状が特定できなくなってしまうという問題点があった。さらに、レンズ絞りを調整するためには絞りを制御する機構が必要であるが、遠隔監視を目的とする道路監視システムにおいては撮像地点と画像処理地点とが隣接しておらず、カメラ制御信号を敷設する必要が発生しコストが高くなるという問題点があった。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、ハレーションなどがおこりやすいトンネルなどの囲まれた箇所における車両の交通流の計測を効率的かつ低コストにて行う交通流計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、所定の周期で画像を撮像する画像撮像部と、画像から車両を検出する車両検出部とを備え、車両の検出データから交通情報を作成する交通流計測装置において、車両検出部は、撮影箇所の背景画像と車両の影の輝度とから車両の影の中心点を検出して車両の検出を行うものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明の交通流計測装置は、所定の周期で画像を撮像する画像撮像部と、画像から車両を検出する車両検出部とを備え、車両の検出データから交通情報を作成する交通流計測装置において、車両検出部は、撮影箇所の背景画像と車両の影の輝度とから車両の影の中心点を検出して車両の検出を行うので、ハレーションなどがおこりやすいトンネルなどの囲まれた箇所における車両の検出が可能となり、延いては車両の交通流の計測を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1における交通流計測装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1における対向車のライト光のハレーションが発生した状況図である。
【図3】この発明の実施の形態1における対向車線のラスタスキャンを行い輝度分布を算出し、輝度飽和中心点列を求めている状況図である。
【図4】この発明の実施の形態1における輝度飽和中心点列から光源中心点を求めている状況図である。
【図5】この発明の実施の形態2における交通流計測装置の構成を示すブロック図である。
【図6】この発明の実施の形態2における対向車線車両のライト光の路面への移り込みを表す状況図である。
【図7】この発明の実施の形態2における車両判定評価結果を説明するための状況図である。
【図8】図5に示した交通流計測装置の車両検出部の動作を説明するためのフローチャートである。
【図9】この発明の実施の形態3における交通流計測装置の構成を示すブロック図である。
【図10】この発明の実施の形態3における輝度飽和車両を表す状況図である。
【図11】この発明の実施の形態3における輝度飽和車両の検出を表す状況図である。
【図12】この発明の実施の形態4における車両計測時刻と計測位置との関係を表す分布グラフと最小自乗和による一次近似直線の図である。
【図13】この発明の実施の形態5における交通流計測装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下、本願発明の実施の形態について説明する。図1はこの発明の実施の形態1における交通流計測装置の構成を示すブロック図、図2は実施の形態1における対向車線の車両がハレーションを起こし車両形状が特定不可能となる状況図、図3はこの発明の実施の形態1における対向車線のラスタスキャンを行い輝度分布を算出し、輝度飽和中心点列を求めている状況図、図4はこの発明の実施の形態1における輝度飽和中心点列から光源中心点を求めている状況図である。図において、交通流計測装置は以下のものにて構成されている。画像撮像部10は、例えば監視用ITVカメラなどの撮像素子により所定の周期で画像を撮像し、その画像をデジタルデータとして記憶するものである。
【0010】
車両検出部11は、撮像画像上の監視を必要とする車線上に存在する車両を、車両のライト光の輝度の飽和値に達している場合、そのライト光の光源中心点を検出して車両の検出を行うものである。車両追跡部12は、車両検出部11で検出した車両を時間軸に対して追跡し、個別車両毎の追跡情報を算出するものである。車両速度算出部13は、車両追跡部12において追跡を行っている個別車両に対して移動速度情報を算出するものである。交通流計測部14は、車両速度算出部13によって計測された個別車両の情報から交通事象の判定を行うもので、停止、低速、速度超過の個別車両単体において発生する事象や、渋滞や避走走行・車両同士の車間警告という複数車両間において発生する事象を統合検出するものである。
【0011】
次に上記のように構成された実施の形態1の交通流計測装置の動作について説明する。まず、画像撮像部10が所定の周期で画像を撮像し、その画像をデジタルデータとして記憶する。次に、車両検出部11は、画像撮像部10にて撮像された撮像画像から監視を必要とする車線上に存在する車両を検出する。この際、画像撮像部10の撮像画像として図2に示すように、道路が囲まれた箇所にて撮像された例えばトンネル内にて撮像された場合、車両のライト光がハレーション部分A1を発生する可能性がある。よって、このようにハレーション部分A1が発生した車両は、図2で示すように車両の存在する周辺の輝度が飽和してしまい、車両の形状そのものが見えず、全く映っていない状態となる。この場合、撮像画像から直接的に車両を検出することができない。
【0012】
そこで、本発明ではこのライト光の輝度が飽和することを利用して車両の検出を行う。図3に示すように、対向車線領域の周辺におけるY軸の任意の点にて、X軸方向にラスタスキャンを行う。次に、輝度勾配分析を行う。すると、ハレーション部分A1では輝度の頭打ち(飽和値)が発生している。尚、輝度の飽和値の値とは、画像撮像部の例えばカメラなどのAD変換特性に依存しており、通常の場合には図3にて示した235という値が飽和値を採ることが多い。よって、飽和値はその周辺の値を用いることとする。次に、この現象を利用してX軸の右側からの輝度勾配探索と左側からの輝度勾配探索とを同時に行い、輝度が飽和値に達しているX1、X2をそれぞれ検出する。次に、その輝度が飽和値に達しているX1とX2とのX軸の中心点X3を決定する。そして、この作業をY軸の任意の点に対して繰り返し行っていく。そして、X軸方向のラスタスキャンにより決定された飽和値の中心点列a1が検出される。そして、この中心点列a1からY軸に対して並行な、すなわち図4で示すような、傾き0の1次近似直線B1を求める。
【0013】
次に、求められた近似直線B1に属し、X軸の中心点X3が一定数以上連続する部分の中心点列a1のY軸方向に対するY軸の中心点Y1を決定する。そして、図で示すように、ハレーションを発生させた車両の光源中心点C1(X3、Y1)が求められる。また、後続の車両のハレーション部分A2に対しても上記に示した同様の処理を行い、中心点列a2を求め、光源中心点C2を検出する。次に、車両追跡部12にて車両検出部11で検出した車両すなわち光源中心点C1、C2を時間軸に対してそれぞれ追跡し、個別車両毎の追跡情報を算出する。例えば、車両検出部にて検出された車両の位置の経時的変化を追跡する。次に、車両速度算出部13にて車両追跡部12において追跡を行っている個別車両に対して移動速度情報を算出する。次に、交通流計測部14にて車両速度算出部13によって計測された個別車両の情報から交通事象の判定を行う。これにより、停止、低速、速度超過の個別車両単体において発生する事象や、渋滞や避走走行・車両同士の車間警告という複数車両間において発生する事象を統合検出することができる。
【0014】
上記のように構成された実施の形態1の交通流計測装置によれば、車両形状の特定不可能なハレーションを発生させた車両に対する車両検出処理を、ライト光の輝度の飽和値の光源中心点を検出することにより車両の検出を可能としているため、効率よく、かつ、低コスト、かつ、精度の高い交通流の計測を行うことが可能となる。また、車両追跡部において、車両検出部にて検出された車両の位置の経時的変化を追跡して後処理を行うようにしているため、正確な速度、延いては、正確な交通事情の判定を行うことができる。
【0015】
尚、上記の実施の形態1にて示した交通流量計測装置によれば、車両検出部において、車両のライト光の輝度の飽和値の光源中心点を検出して車両の検出を行う例を示したが、当然のことながら、撮像画像において車両の形状そのものが見えるような場合などは、撮像画像の車両の形状そのものから車両を検出し、上記実施の形態1にて示した場合と交えて車両の検出を行い以下の他の処理を行うことは言うまでもなく。以下の実施の形態においても同様のことが言えるためその説明は適宜省略する。
【0016】
実施の形態2.
図5はこの発明の実施の形態2における交通流計測装置の構成を示すブロック図、図6はこの発明の実施の形態2における対向車線車両のライト光の路面への移り込みを表す状況図、図7はこの発明の実施の形態2における車両判定評価結果を説明するための状況図、図8は図5に示した交通流計測装置の車両検出部の動作を説明するためのフローチャートである。図において、上記実施の形態1と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。車両検出部110は、撮像画像上の監視を必要とする車線上に存在する車両を、車両のライト光の輝度の飽和値に達している場合、そのライト光の光源中心点を検出して車両の検出を行い、さらにその際、車両のライト光の内の反射光を車両の検出の対象から除去するものである。
【0017】
次に上記のように構成された実施の形態2の交通流計測装置の動作について説明する。まず、上記実施の形態1と同様に、画像撮像部10が所定の周期で画像を撮像し、車両検出部110は、画像撮像部10にて撮像された撮像画像から監視を必要とする車両を検出する。この際、上記実施の形態1と同様に、画像撮像部10の撮像画像として図6に示すように、道路が囲まれた箇所にて撮像された例えばトンネル内にて撮像された場合、車両のライト光がハレーション部分A1、A2を発生する可能性がある。さらに、雨天等により路面の光反射率が上昇した場合、ハレーションを伴うライト光の移り込みが発生する。発生する状況は様々あり、左右のライト光が個別に路面に移り込みハレーション部分A4、A5を発生する現象や、同一化して大きく路面に移り込みハレーション部分A3などを発生する現象がある。よって、まず車両検出部110では上記実施の形態1にて示した場合と路面への移り込みに関しても同様に光源中心点C3、C4、C5がそれぞれ検出される。
【0018】
そして、これら移り込みも含むハレーション部分A1、A2、A3、A4、A5により発生した輝度飽和の光源中心点C1、C2、C3、C4、C5の全てが車両候補として検出される。そこで以下に示す評価方法、すなわち車両検出部110で以下に示す二次元情報と三次元情報とを用いて車両候補から反射光を除去し真に車両であるか否かの評価を行う。
(条件1)同一車線上のX座標±α画素以内に複数の車両候補は存在しない。
(条件2)同一車線上のY座標±β画素以内に複数の車両候補は存在しない。
(条件3)車両候補は車線中央から位置誤差が小さいものほど真の車両とする。
このような条件1、2、3の評価を行うことで、反射光は除去され真の車両が検出される。
【0019】
以上の条件における処理の具体例を図7および図8のフローチャートに基づいて説明する。まず、車両候補Aの判定処理を開始する(図8のステップS1)。そして、任意の車両仮候補Aをとして例えば光源中心点C3を選択する(図8のステップS2)。次に、仮候補A(光源中心点C3)を除く同一車線上の車両仮候補Bとして例えば光源中心点C1を選択する(図8のステップS3)。次に、仮候補A(光源中心点C3)と仮候補B(光源中心点C1)とのX座標が±α画素以内であるか否かを判断する(図8のステップS4)。この場合、1次近似直線群がB1、B3であるため、±α画素以内であると判断される。次に、仮候補の車線中央からのX座標誤差をAD%、仮候補Bの車線中央からのX座標誤差BD%をそれぞれ算出する(図8のステップS6)。次に、この算出されたAD%>BD%が成立して、仮候補Bの方が車線中央に近いか否かを判断する(図8のステップS7)。ここでは仮候補Bの方が車線中央に近いため、車両仮候補Aを車両候補から除外される(図8のステップS9)。そして、光源中心点C3は車両候補ではないと判断されて、光源中心点C3の車両候補Aとしての判定の処理を終了する。
【0020】
次に、任意の車両仮候補Aをとして例えば光源中心点C4を選択する(図8のステップS2)。次に、仮候補A(光源中心点C4)を除く同一車線上の車両仮候補Bとして例えば光源中心点C2を選択する(図8のステップS3)。次に、仮候補A(光源中心点C4)と仮候補B(光源中心点C2)とのX座標が±α画素以内であるか否かを判断する(図8のステップS4)。この場合、1次近似直線群がB4、B2であるため、±α画素以内でないと判断される。次に、仮候補A(光源中心点C4)と仮候補B(光源中心点C2)とのY座標が±β画素以内であるか否かを判断する(図8のステップS5)。この場合、仮候補A(光源中心点C4)と仮候補B(光源中心点C2)とはY座標方向において近似しているため、±β画素以内であると判断される。次に、仮候補Aの車線中央からのX座標誤差をAD%、仮候補Bの車線中央からのX座標誤差BD%をそれぞれ算出する(図8のステップS6)。次に、この算出されたAD%>BD%が成立して、仮候補Bの方が車線中央に近いか否かを判断する(図8のステップS7)。次に、ここでは仮候補Bの方が車線中央に近いため、車線仮候補Aを車両候補から除外する(図8のステップS9)。そして、光源中心点C4は車両候補ではないと判断されて、光源中心点C4の車両候補Aとしての判定の処理を終了する。また、光源中心点C5においても光源中心点C4と同様に車両候補から除去される。
【0021】
次に、任意の車両仮候補Aをとして例えば光源中心点C1を選択する(図8のステップS2)。次に、仮候補A(光源中心点C1)を除く同一車線上の車両仮候補Bとして例えば光源中心点C2を選択する(図8のステップS3)。次に、仮候補A(光源中心点C1)と仮候補B(光源中心点C2)とのX座標が±α画素以内であるか否かを判断する(図8のステップS4)。この場合、1次近似直線群がB1、B2であるため、±α画素以内でないと判断される。次に、仮候補A(光源中心点C1)と仮候補B(光源中心点C2)とのY座標が±β画素以内であるか否かを判断する(図8のステップS5)。この場合、仮候補A(光源中心点C2)と仮候補B(光源中心点C1)とはY座標方向において近似していないため、±β画素以内でないと判断される。次に、同一車線上の全仮候補Bに対して処理を行ったか否かを判断する(図8のステップS8)。ここでは、他の光源中心点C3、C4、C5は上記判定にて車両候補からすでに全て除去されているため、車線仮候補Aを車両候補として決定する(図8のステップS10)。そして、光源中心点C1の車両候補Aとしての判定の処理を終了する。そして、光源中心点C2においても同様に車両候補として判定される。このようにして車両の検出が行われた後は、上記実施の形態1と同様に行い、交通流の計測を行う。
【0022】
上記のように構成された実施の形態2の交通流計測装置によれば、上記実施の形態1と同様の効果を奏するのはもちろんのこと、車両の誤検出結果、すなわち反射光を除外して車両を検出することが可能となり、より精度の高い交通流を計測することができる。
【0023】
実施の形態3.
図9はこの発明の実施の形態3における交通流計測装置の構成を示すブロック図、図10はこの発明の実施の形態3における輝度飽和車両を表す状況図、図11はこの発明の実施の形態3における輝度飽和車両の検出を表す状況図である。上記各実施の形態においては、車両が対向車線にあり、そのことにより車両のライト光がハレーションを発生しており、車両のライト光の輝度の飽和値の光源中心点により車両を検出する場合において示した。しかしながら、逆に、順行車線を走行中の車両では、道路が囲まれた箇所、例えばトンネル内において照明が非常に明るく、かつ、撮像画像の画像も明るい状況では、明度の高い車両が進入すると、例えば図10に示すように、車両1のテールランプはもちろん、車両1の後端形状周辺の輝度が飽和してしまい、輝度勾配が現れなくなってしまい輝度飽和車両となる。この現象は、主に画像撮像部の映像を画像処理だけではなく他用途にも用いることを考えた場合、撮像される映像の明度は全体的に明るめに設定されていることにより顕著に発生する。そして、このような車両1の後端形状周辺の輝度勾配は路面や路面構造物の輝度勾配に対して非常に小さな変化しかないため車両1の検出が困難となっていた。
【0024】
この発明の実施の形態3においては、このことを解消して車両の検出を行う場合について説明する。図において、上記各実施の形態と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。車両検出部111は画像撮像部10が撮像した撮像画像から、撮像箇所の背景画像と車両1の影2の輝度とから車両1の影2の中心点を検出して車両1の検出を行うものである。上記に示したように、車両1の検出に関しては撮像画像一部ではなく全体が明るいため上記実施の形態1で提案した手法、さらには、撮像画像に映し出されている車両1の形状から車両を検出する手法では車両1の検出を行うことはできない。
【0025】
次に上記のように構成された実施の形態3の交通流計測装置の動作について説明する。まず、上記各実施の形態と同様に、画像撮像部10が所定の周期で画像を撮像し、車両検出部111は、画像撮像部10にて図10に示すような撮像画像が撮像され、この撮像画像から監視を必要とする車両1を検出する。この際、各車線すなわち順行第1車線、順行第2車線毎にX軸方向にラスタスキャンを行う。そして、撮像画像の輝度と同座標の背景画像の輝度との差分の累積加算:pixelvalueを下記式(1)の算出にて行う。そしてこの処理をY軸方向の所定の点に対して行う。
【0026】
pixelvalue[i][y]=Σabs(背景輝度値(x,y)−撮像画像輝度値(x,y)) ・・・(1)
※Σの範囲は(車線i左端X座標−α<x<車線i右端X座標+β)
i:車線番号
y:Y座標
【0027】
そして、図11に示すように、この累積を行った結果、すなわち、撮像画像における背景画像のX軸方向に対して輝度差累積を行ったY軸の各点に対する輝度差累積が検出される。このように、例えばトンネル内の照度が高く、また車両自体の明度も高い場合であっても、その路面に移り込む車両1の影2は十分に暗く、背景画像の輝度から大きくかけ離れている。その性質を利用しX軸方向で輝度差の累積加算を行うことで、車線内に存在する車両1下端の影2のピークを検出し、車両1下端のY軸方向の位置を特定することができる。次に、X軸においてピークが検出したY座標に対してその中心点を下記式(2)により算出する。
【0028】
【数1】
【0029】
以上のように算出された結果、車両1の下端中央の座標を特定し、車両1を検出する。そして、上記各実施の形態と同様に、次に、車両追跡部12にて車両検出部11で検出した車両1すなわち影2の中心点を時間軸に対して追跡し、個別車両毎の追跡情報を算出する。例えば、車両検出部111にて検出された車両1の位置の経時的変化を追跡する。次に、車両速度算出部13にて車両追跡部12において追跡を行っている個別車両に対して移動速度情報を算出する。次に、交通流計測部14にて車両計測部13によって計測された個別車両の情報から交通事象の判定を行う。これにより、停止、低速、速度超過の個別車両単体において発生する事象や、渋滞や避走走行・車両同士の車間警告という複数車両間において発生する事象を統合検出することができる。
【0030】
上記のように構成された実施の形態3の交通流計測装置によれば、車両自体の検出が困難な輝度飽和車両に対して、その下端に広がる影から車両の下端の影の中心点を検出し、その情報を用いて車両検出を行っているため、従来までは検出が不可能であった車両に関しても車両検出が可能となる。またこのような手法により検出しているため、カメラレンズ絞りを制御する必要もなく低コスト、かつ、効率よく車両検出が可能となる。また、車両追跡部において、車両検出部にて検出された車両の位置の経時的変化を追跡して後処理を行うようにしているため、正確な速度、延いては、正確な交通事情の判定を行うことができる。尚、上記各実施の形態と併用することにより、従来よりもさらに低コストで、かつ、効率よく、かつ、精度の高い交通流計測装置を提供することが可能になることは言うまでもない。
【0031】
実施の形態4.
図12はこの発明の実施の形態4における車両計測時刻と計測位置との関係を表す分布グラフと最小自乗和による一次近似直線の図である。上記各実施の形態においては車両を検出した後の車両の速度検出について特に示さなかったが、この実施の形態においては検出された車両の速度検出について説明する。よって、他の部分の構成などは上記各実施の形態と同様であるため説明を適宜省略する。
【0032】
上記のように構成された実施の形態4における車両速度算出部13の動作について説明する。まず、従来の車両速度計測は直近の車両位置からの速度計測を行う、瞬時速度計測を用いていた。そのため車両位置計測誤差が発生しやすく、その瞬時速度は実際の車両速度から大きく異なる値が計測されていた。この問題解消するため、指数平滑化手法などを用いて、速度の安定化を図るものがあるが、平滑の元となる値が真の車両速度からかけ離れている場合が多いため、車両の速度計測の誤差に問題があった。そこで本実施の形態4においては、車両速度算出部13において、車両追跡部12にて検出された車両の追跡データから車両の位置の分布を取得し、この車両の位置の分布に基づいて次に示す最小自乗和の式(3)を用いて計測誤差の少ない車両速度を計測する。
【0033】
【数2】
【0034】
上記に示した式(3)により、aが近似された車両速度、bが車両計測初期位置となる。車両速度計測区間nの値を大きく設定すればより誤差の少ない近似速度が求められる。またこの場合、車両速度計測区間nの間は一定速度走行していることを前提にして速度近似を行うため、急加減速や停止などの車両に関する応答速度精度も確保するためには車両速度計測区間nの値は小さい方が望ましい。よって、必要とする速度の用途に応じて車両速度計測区間nは適宜設定する必要がある。
【0035】
上記のように構成された実施の形態4の交通流計測装置によれば、上記各実施の形態と同様の効果を奏するのはもちろんのこと、車両の速度を、車両の追跡データから車両の位置の分布を取得して一次近似最小自乗和手法を用いて算出することで、より正確な車両の速度値を求めることが可能となる。
【0036】
実施の形態5.
図13はこの発明の実施の形態5における交通流計測装置の構成を示すブロック図である。図において、上記各実施の形態と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。車両位置予測部17は、車両速度算出部13の車両の速度値の結果を用いて、次に撮像した撮像画像上でその追跡車両がどの位置に移動するかを予め予測し、その車両の予測位置を車両追跡部12に送信するものである。
【0037】
上記のように構成された実施の形態5の交通流計測装置では、車両位置予測部17にて車両の位置の予測を行い、それを車両追跡部12にて送信するようにしたため、車両追跡部12では、特にトンネル内の環境変化の影響により車両追跡が正常に行えなかった場合でも、予測位置を基にして車両位置を決定し追跡を行うことができる。
【0038】
上記のように構成された実施の形態5の交通流計測装置によれば、上記各実施の形態と同様の効果を奏するのはもちろんのこと、車両計測位置から次期予測位置をフィードバックすることで車両追跡の補助を行い、これまで追跡が困難であった環境下、例えば、路面環境の変化や後続車・先行車の影響により追跡車両の形状や見え方が極度に変化する場合などには車両追跡が継続できず、安定した車両追跡を行うことが困難な場合があったが、不安定な環境下でも安定した車両追跡情報を計測することが可能となり、追跡の安定化を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0039】
10 画像撮像部、11,110,111 車両検出部、12 車両追跡部、
13 車両速度算出部、14 交通流計測、17 車両位置予測部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周期で画像を撮像する画像撮像部と、上記画像から車両を検出する車両検出部とを備え、上記車両の検出データから交通情報を作成する交通流計測装置において、上記車両検出部は、撮影箇所の背景画像と上記車両の影の輝度とから上記車両の影の中心点を検出して上記車両の検出を行うことを特徴とする交通流計測装置。
【請求項2】
上記車両検出部にて検出された上記車両の位置の経時的変化を追跡する車両追跡部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の交通流計測装置。
【請求項3】
上記車両追跡部にて検出された上記車両の追跡データから上記車両の位置の分布を取り上記車両の速度を算出する車両速度算出部を備えたことを特徴とする請求項2に記載の交通流計測装置。
【請求項4】
上記車両速度算出部にて算出された上記車両の速度から上記車両の予測位置を予測して上記車両の予測位置データを上記車両追跡部に送信する車両位置予測部を備え、上記車両追跡部は上記車両の予測位置データを上記車両の追跡データの検出に利用することを特徴とする請求項3に記載の交通流計測装置。
【請求項1】
所定の周期で画像を撮像する画像撮像部と、上記画像から車両を検出する車両検出部とを備え、上記車両の検出データから交通情報を作成する交通流計測装置において、上記車両検出部は、撮影箇所の背景画像と上記車両の影の輝度とから上記車両の影の中心点を検出して上記車両の検出を行うことを特徴とする交通流計測装置。
【請求項2】
上記車両検出部にて検出された上記車両の位置の経時的変化を追跡する車両追跡部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の交通流計測装置。
【請求項3】
上記車両追跡部にて検出された上記車両の追跡データから上記車両の位置の分布を取り上記車両の速度を算出する車両速度算出部を備えたことを特徴とする請求項2に記載の交通流計測装置。
【請求項4】
上記車両速度算出部にて算出された上記車両の速度から上記車両の予測位置を予測して上記車両の予測位置データを上記車両追跡部に送信する車両位置予測部を備え、上記車両追跡部は上記車両の予測位置データを上記車両の追跡データの検出に利用することを特徴とする請求項3に記載の交通流計測装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−55628(P2010−55628A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271084(P2009−271084)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【分割の表示】特願2005−285752(P2005−285752)の分割
【原出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【分割の表示】特願2005−285752(P2005−285752)の分割
【原出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]