人体局部洗浄装置
【課題】高齢者、身体的特徴を有する者等にとって負担が少ない人体局部洗浄装置を提供する。
【解決手段】腰掛け式の便器に装備される人体局部洗浄装置2である。人体局部洗浄装置2は、便器に対して回動可能に設けられ、使用者が着座する便座部221と機能部品を収容する本体部222とが一体的に構成された一体構成便座22を備える。一体構成便座22は第1の駆動装置によって回動開閉可能とされている。便蓋21は、一体構成便座22の内部に設けられた第2の駆動装置によって回動開閉可能とされていることが好ましい。
【解決手段】腰掛け式の便器に装備される人体局部洗浄装置2である。人体局部洗浄装置2は、便器に対して回動可能に設けられ、使用者が着座する便座部221と機能部品を収容する本体部222とが一体的に構成された一体構成便座22を備える。一体構成便座22は第1の駆動装置によって回動開閉可能とされている。便蓋21は、一体構成便座22の内部に設けられた第2の駆動装置によって回動開閉可能とされていることが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人体局部洗浄装置に関し、特に、使用者が着座する便座部と機能部品を収容する本体部とが一体的に構成された一体構成便座を有する人体局部洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
腰掛け式の便器に設置して用いる人体局部洗浄装置は、一般には使用者が座る便座部と、その後部に設けられ便座部に対して別体をなす本体部とから構成されている。本体部には、人体局部の洗浄を行う洗浄ノズル、温風乾燥を行う温風乾燥装置、これらの制御装置等の機能部品が収納される。また便座の上面には便蓋が便座を覆うように設けられている。便座の基端部と便蓋の基端部とは本体部に回動自在に取り付けられている。このような構成は一般的に多く見られる。
【0003】
しかしながら上記した従来の人体局部洗浄装置によれば、便蓋を本体部に回動可能に枢支させる構造上、便蓋と本体部との間、便座と本体部との間には、比較的大きな隙間が必要となる。このため、この隙間に汚れや挨が付着し易い。更に、雑巾等で汚れを拭き取る際にも、拭き残しが出来てしまう等の好ましくない点がある。さらにデザイン上においても、便座部と本体部とに分割されており、造形上の自由度が制限されてしまうということも事実であった。
【0004】
以上のことを改善しようとして、近年、便座部の後方に温水タンクを配置して便座と後部収納箱とを一体構成として一体構成便座を形成すると共に、その一体構成便座の後部に便蓋を回動自在に軸支させた新規な人体局部洗浄装置が提案されている(特許文献1)。
【0005】
また、特許文献2によれば、前述の特許文献1が有する一体構成便座であることが起因する生産組立時やメンテナンス時における分解・組付の煩雑さを解消を目的として、3個の外殻部材(便座ベース、便座部、本体ケース)を順に重ね合わせることで一体構造の筐体を形成する方式を採用すると共に、便座開方向に補助バネで付勢し且つ便座閉方向には急激に閉作動しないための回転減衰機構を有した人体局部洗浄装置が提案されている。
【特許文献1】特開平4−1336号公報
【特許文献2】特開2002−325701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した新規タイプの一体構成便座によれば、一体構成便座の閉鎖方向の動作が急激に行われないようにするため、回動減衰機構が設けられている。しかしながら高齢者、身体的特徴を有する者等が一体構成便座を開閉しようとすると、腰をかがめる等の動作が必要とされ、高齢者、身体的特徴を有する者等にとって身体的負担があった。
【0007】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、高齢者、身体的特徴を有する者等にとって負担が少ない人体局部洗浄装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)第1発明に係る人体局部洗浄装置は、腰掛け式の便器に装備される人体局部洗浄装置であって、便器に対して回動可能に設けられ、使用者が着座する便座部と機能部品を収容する本体部とが一体的に構成された一体構成便座を具備しており、一体構成便座は第1の駆動装置によって回動開閉可能とされていることを特徴とするものである。
【0009】
第1発明に係る人体局部洗浄装置によれば、第1の駆動装置が駆動すると、一体構成便座は回動開閉される。第1の駆動装置は一体構成便座の内部に配設されていることが好ましい。
【0010】
(2)第2発明に係る人体局部洗浄装置は、腰掛け式の便器に装備される人体局部洗浄装置であって、便器に対して回動可能に設けられ、使用者が着座する便座部と機能部品を収容する本体部とが一体的に構成された一体構成便座と、一体構成便座の後端部に回動開閉に設けられた便蓋とを具備しており、一体構成便座は第1の駆動装置によって回動開閉可能とされており、便蓋は、一体構成便座の内部に配設された第2の駆動装置によって回動開閉可能とされていることを特徴とするものである。
【0011】
第2発明に係る人体局部洗浄装置によれば、第1の駆動装置が駆動すると、一体構成便座は回動開閉される。第1の駆動装置は一体構成便座の内部に配設されていることが好ましい。第2の駆動装置が駆動すると、一体構成便座に対して便蓋は回動開閉される。第2の駆動装置は一体構成便座の内部に配設されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
第1発明に係る人体局部洗浄装置によれば、第1の駆動装置の駆動により一体構成便座を回動開閉させることができ、一般人はもとより、高齢者、身体的特徴を有する者等にとって負担が少なく、有効である。更に、第1の駆動装置の駆動により一体構成便座を自動的に回動させて閉鎖させることができるため、一体構成便座が全閉されるときの衝突音の低減にも貢献できる。
【0013】
第2発明に係る人体局部洗浄装置によれば、第1の駆動装置の駆動により一体構成便座を回動開閉させることができ、第2の駆動装置の駆動により一体構成便座に対して便蓋を回動開閉させることができ、一般人はもとより、高齢者、身体的特徴を有する者等にとって負担が少なく、有効である。更に、第1の駆動装置の駆動により一体構成便座を自動的に回動させて閉鎖させることができると共に、第2の駆動装置の駆動により便蓋を自動的に回動させて閉鎖させることができる。このため一体構成便座及び便蓋が全閉されるときの衝突音の低減にも貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る人体局部洗浄装置は、使用者が着座する便座部と機能部品を収容する本体部とが一体的に構成された一体構成便座を備える。更に、一体構成便座を便器に回動開閉可能に保持する固定部を備えている形態を採用できる。場合によっては、固定部としては、便座を回動開閉させるために従来から使用されている固定部を使用することもできる。
【0015】
一体構成便座は、使用者が着座する便座部と、機能部品を収容する本体部とが一体的に構成されている。この場合、一体構成便座の筐体は一体成形で形成されていても良いし、あるいは、螺子、溶着、融着等で機械的に接合されて一体化されていても良い。機能部品としては、例えば、電子部品、電気部品、洗浄ノズル等の洗浄部、温水を貯留するタンク等の温水貯留部、温水を生成するヒータ等の温水生成部、人体の局部を乾燥させる温風を生成する乾燥器等の少なくとも一つが挙げられる。温水を生成するヒータ等の温水生成部が設けられているときには、温水を貯留するタンク等の温水貯留部を簡略化または廃止することもできる。便座部と本体部とが一体的に形成されているため、便座部及び本体部は一緒に回動開閉する。
【0016】
本発明に係る人体局部洗浄装置は、一体構成便座は人体の局部に洗浄水を供給して局部を洗浄する洗浄部を有する形態にできる。洗浄部としては、人体の局部に水を噴出して局部を洗浄する洗浄ノズルを例示できる。洗浄する水である温水を供給する温水供給部を有することが好ましい。温水供給部としては、温水を貯蔵する温水タンクを有する方式でも良いし、あるいは、温水タンクを有せず、短時間で温水を生成できる加熱部を有する方式でも良い。
【0017】
本発明に係る人体局部洗浄装置によれば、便蓋及び一体構成便座の双方が開放されている状態で、一体構成便座を閉鎖方向に回動させるにあたり、便蓋を開放状態に維持させる便蓋開放維持手段が設けられている形態を採用できる。
【0018】
また、便蓋が開放状態にされた状態で一体構成便座を閉鎖状態から開放状態に回動させるにあたり、便蓋を開放状態に維持する便蓋開放維持手段が設けられている形態を採用できる。前記した便蓋開放維持手段としては、機械的係合によりあるいはソフトウェア処理により、便蓋の開放状態を維持させる形態を採用できる。一体構成便座を回動可能に保持すると共に便器に固定される固定部が設けられており、便蓋開放維持手段としては、一体構成便座の本体部に形成されている凹及び凸のうちの少なくとも一方と、便蓋に形成されている凸及び凹のうちの少なくとも一方とを係合可能に係合させる構成である形態を例示できる。この場合、凹凸による係合力としては、第2の駆動装置が便蓋を回動させて閉鎖させるときに係合力が外れる程度とすることができる。
【0019】
便蓋開放維持手段としては、便蓋及び一体構成便座の双方が開放されている状態で、一体構成便座を閉鎖方向に回動させるにあたり、便蓋を開放させる方向に回動させる指令を第2の駆動装置に出力する形態を採用できる。これにより一体構成便座の閉鎖方向の回動に追従しようとする便蓋の動作(便蓋の閉鎖方向の動作)と、便蓋に関する開放方向の動作とを相殺できる。このため便蓋を開放状態(起立状態)に維持させることができる。この場合、便蓋が開放状態(起立状態)に維持されている状態で、使用者は、一体構成便座の便座部に着座することができる。便蓋開放維持手段としては、便蓋が開放状態にされた状態で、一体構成便座を閉鎖状態から開放状態に回動させるにあたり、便蓋を閉鎖させる方向に回動させる指令を第2の駆動装置に出力する形態を採用できる。これにより一体構成便座の開放動作に追従する便蓋に関する開放動作と、便蓋に関する閉鎖方向の動作とを相殺できる。このため便蓋を開放状態(起立状態)に維持させることができる。この場合、便蓋及び一体構成便座の双方が開放状態(起立状態)に維持され、男性使用者の放尿に対処できる。なお、第1の駆動装置及び第2の駆動装置としてはモータ類、シリンダ類を例示できる。上記した便蓋開放維持手段としては、第1の駆動装置を便座開放方向に駆動させたら、第2の駆動装置を便蓋閉鎖方向に駆動させる形態を例示することができる。あるいは、上記した便蓋開放維持手段としては、第1の駆動装置を便座閉鎖方向に駆動させたら、第2の駆動装置を便蓋開放方向に駆動させる形態を例示することができる。
【実施例1】
【0020】
以下、本発明の実施例1について図面を参照しつつ具体的に説明する。まず、構造を図面に従って説明する。図1及び図2において、貯水機能をもつロータンク1sを装備する腰掛け式の便器1が設けられている。便器1の後部の取付部11には、人体局部洗浄機能を有する人体局部洗浄装置2が着脱可能に搭載されている。人体局部洗浄装置2は、樹脂を基材とする便蓋21と、便蓋21の後端部を上下方向(矢印Y1,Y2方向)に回動開閉可能に枢支する一体構成便座22と、一体構成便座22を便器1の後部の取付部11に上下方向(矢印Y1,Y2方向)に回動開閉可能に保持する固定部31とを備えている。
図1に示すように、固定部31の長さLCは、一体構成便座22の幅寸法の範囲内に設定されている。このため通常使用時には、人体局部洗浄装置2の外表面には便蓋21以外に駆動する部分がないので、安全対策上好ましい。なお本実施例では図1及び図2において前方を矢印X1方向とし、後方を矢印X2方向とする。
【0021】
図3〜図5において、一体構成便座22は、使用者が着座する樹脂を基材とする便座部221と、各種の機能部品を収容するように便座部221の後端部に一体的に延設された樹脂を基材とする本体部222とを一体的に構成している。便蓋21は左右にあるヒンジ部211をもつ。一体構成便座22の便座部221はこれの裏面に固定されているゴム脚223(脚)をもつ。便座部221は中央開口部224をもつ。本体部222はこれの裏面に装着されたゴム等の有機系弾性材料で形成された弾性体225をもつ。本体部222を閉鎖状態としたときに、弾性体225は便器1(図2参照)の取付部11の表面と接触できるようにされている。
【0022】
固定部31はL字形状をなしており、ネジ部32をもち水平に沿っている固定ベース311と、固定ベース311から立設された係止部312とを有する。係止部312は便蓋21を開放状態(起立状態)を保つためのものである。ネジ部32は、固定部31の固定ベース311を便器1の取付部11に締結する締結要素として機能する。
【0023】
図6は、便蓋21と共に一体構成便座22が閉鎖している状態を示す(人体局部洗浄装置2の不使用時)。図7は、便蓋21が開放していると共に一体構成便座22が閉鎖している状態を示す(人体局部洗浄装置2の排便使用時等)。図8は、便蓋21及び一体構成便座22が開放している状態を示す(人体局部洗浄装置2の小便使用時)。
【0024】
図9は人体局部洗浄装置2の要部の平面を示す。図9に示すように、便蓋21は一体構成便座22の本体部222の側面に回動可能に枢支されている。一体構成便座22の本体部222は、洗浄水を供給する給水口291を有する電磁給水弁292と、電磁給水弁292に連結された温水タンク293と、温水タンク293に連結された洗浄ノズル261(洗浄部)と、洗浄後の人体局部に温風を供給する温風乾燥装置271と、電子部品および電気部品等を搭載する電気制御基板294とを内蔵する。固定部31と本体部222との間には、複数個(2個)の嵌着部240a、240bが一体構成便座22の本体部222のほぼ中央部に配置されている。
【0025】
図15に示すように、一体構成便座22の筐体は、上下に2分割された上側の第1部品22fと下側の第2部品22sとを組み付けて形成されている。上側の第1部品22fは、便座上側となる上方部材221Uと、本体部上側となる上方部材222Uとを連設して有する。下側の第2部品22sは、便座下側となる下方部材221Lと、本体部下側となる下方部材222Lとを連設して有する。第1部品22f及び第2部品22sを組みけて筐体を一体化させる筐体一体化手段としては特に限定されず、溶着、融着、螺子止め等を必要に応じて選択できる。図15に示すように、一体構成便座22は、便座部221及び本体部222を連続させた筐体を構成する。このため一体構成便座22の内部空間は比較的大きなものとなる。換言すると、図15から理解できるように、一体構成便座22の前部を構成する便座部221は、上方部材221Uと下方部材221Lとに分割されている。一体構成便座22の後部を構成する本体部222は、上方部材222Uと下方部材222Lとに分割されている。図15に示すように、便座部221の下方部材221Lの後端部には洗浄ノズル用の第1シャッター232aと温風乾燥用の第2シャッター232bとが開閉可能に設けられている。
【0026】
本実施例によれば、図10に示すように、一体構成便座22の上方部材221Uには、遮熱要素としての遮熱板227が設けられている。遮熱板227は、便座部221と本体部222との境界領域に設けられており、遮熱性が高い材料(例えば熱伝達率が低い樹脂材料、遮熱性を有する気泡を有する発泡材料)で形成されている。図10に示すように、便蓋21の後端部には便蓋突起213d(便蓋第1係合部)が形成されている。固定部31の係止部312には係止凹部312a(便蓋第2係合部)が形成されている。図10に示すように、便蓋21が上方つまり矢印Y1方向に回動されて開放状態(起立状態)とされているとき、便蓋突起213dが固定部31の係止凹部312aに係脱可能に係合する。これにより便蓋21は開放状態つまり起立状態に維持される。従って、便蓋突起213d及び係止凹部312aは、便蓋21の開放状態(起立状態)を維持する便蓋開放維持手段を構成することができる。
【0027】
本体部222のほぼ中央部付近には、人体の局部に洗浄水である温水を噴出する洗浄ノズル261(洗浄部)が内蔵されている。洗浄ノズル261は先方に伸縮可能な伸縮ノズル262を有する。局部洗浄時には水圧などにより伸縮ノズル262はノズル開口2pから突き出し、便器1内に向けて矢印K1方向に伸張する。局部洗浄時でないときには、図略のリターンバネにより伸縮ノズル262は矢印K2方向に退避して本体部222内に隠蔽される。
【0028】
一体構成便座22の下方部材222Lの一部をなすシャッター232aが回転ヒンジ233aを軸として回動開閉するようにされている。シャッター232aは、一体構成便座22の開放時(起立時、図11参照)には閉鎖されると共に、一体構成便座22の閉鎖時(図10参照)には開放される。シャッター232aの開閉動作は、シャッター232aに作用する重力により行われる。シャッター232aの回動開閉により、伸縮ノズル262が矢印K1,K2方向に出入りすることができる。シャッター232aは、洗浄ノズル261の直下に配置されている直下部材226cに保持されている。シャッター232aの後方には、洗浄ノズル261からのドレイン水、あるいは、温水タンクからのドレイン水を仮保持する遮水壁として機能する囲い板236が設けられている。これによりドレイン水溜り235(水保持部)が形成されている。図10に示すように、一体構成便座22の閉鎖時にドレイン水溜り235は洗浄ノズル261の下方に位置しており、洗浄ノズル261から落下するドレイン水を受け止め得るようにされている。シャッター232aも洗浄ノズル261から落下するドレイン水を受け止め得るようにされている。
【0029】
図11に示すように、一体構成便座22が上方(矢印Y1方向)に回動開放して起立するときには、ドレイン水溜り235の排出口235fはシャッター232aで閉鎖される。これによりドレイン水溜り235に仮保持されているドレイン水が飛散しないようにされている。つまり、一体構成便座22が上方に回動して起立状態となったときには、囲い板236と直下部材226cとで囲まれたドレイン水溜り235にドレイン水が集約され、溜水237となるため、一体構成便座22内における水の飛散が抑制される。洗浄ノズル261から落下する水を受け止めるため、囲い板236の端226eは洗浄ノズル261に接近することが好ましい。図10に示すように、一体構成便座22が下方(矢印Y2方向)に回動して閉鎖されると、シャッター232aが重力により開放され、ドレイン水溜り235が水平に近い状態に寝るため、ドレイン水溜り235のドレイン水が重力により便器1内に自然に排出される。従って、一体構成便座22が下方に揺動し閉鎖されるごとに、ドレイン水溜り235に溜まっているドレイン水が便器1内に重力により自然に排出される。
【0030】
図12に示すように、便蓋21は、枢支部としてのヒンジ穴213dを有する右側板211aと、枢支部としてのヒンジ穴213bを有する左側板211bとを後部の両側に備える。ヒンジ穴213a,213bは実質的に同一軸心上に設定されている。一方のヒンジ穴213aは、本体部222の下方部材222Lからの枢支軸229と回動可能に嵌合する。他方のヒンジ穴213bは、便蓋開閉駆動装置255(第2の駆動装置)の便蓋出力軸256と一体回動するように便蓋出力軸256に嵌合されている。従って、便蓋開閉駆動装置255がオン駆動して便蓋出力軸256がこれの軸心回りで回動すると、便蓋出力軸256及び枢支軸229を中心として便蓋21は回動開閉される。便蓋出力軸256及び枢支軸229は同一軸線状に沿っており、便蓋21の回動中心である。なお、図12に示すように、便蓋開閉駆動装置255は、一体構成便座22の本体部222の下方部材222Lの側面に形成された固定枠257に組み込まれ、固定ネジ254で一体構成便座22の内部に固定されている。故に、一体構成便座22が回動すると、一体構成便座22に固定されている便蓋開閉駆動装置255も同方向に同角度開度する。上記したように便蓋開閉駆動装置255は、便器1に固定される固定部31ではなく、一体構成便座22に保持されているので、固定部31自体のスペースが小さくて済み、人体局部洗浄装置2全体の小型化に有利である。なお便蓋開閉駆動装置255はモータ類で形成されている。
【0031】
本実施例によれば、図14に示すように、一体構成便座22はこれの下方に臨む嵌着部240a,240bを有する。一方の嵌着部240aは、一体構成便座22の後端部の底部223bから上方に膨出する固定保持部241aと、固定保持部241aに連接された壁部238aと、固定保持部241aに保持された出力軸252と、出力軸252を載せてフロート状態に支持する浮遊支持部243Wと、浮遊支持部243Wを上方に付勢して待ち上げてフロート状態とする付勢力を有する付勢部材(コイルバネ)で形成された弾性体246aと、下方に開口する角筒形状の差込部241cを有する。図13に示すように、浮遊支持部243Wは、出力軸252を載せてフロート状態に支持する軸受け部243aと、フランジ部244aと、下方に延設された案内棒部245aと一体的に有する。
【0032】
同様に、図14に示すように、嵌着部240bは、一体構成便座22の後端部の底部223bから上方に膨出する固定保持部241bと、固定保持部241bに連接された壁部238bと、固定保持部241bに保持された断面円形の支持軸259と、支持軸259を載せてフロート状態に支持する浮遊支持部243Xと、浮遊支持部243Xを上方に付勢して待ち上げてフロート状態とする付勢力を有する付勢部材(コイルバネ)で形成された弾性体246bと、下方に開口する角筒形状の差込部241dを有する。図13に示すように、浮遊支持部243Xは、支持軸259を載せて支持する軸受け部243bと、フランジ部244bと、下方に延設された案内棒部245bとを一体的に有する。
【0033】
図13に示すように、軸受け部243a及び案内棒部245aは、嵌着部240aの縦長の保持孔241xに高さ方向に昇降可能に案内されており、一体構成便座22を上下方向に案内する案内要素として機能することができる。同様に、軸受け部243b及び案内棒部245bは、嵌着部240bの縦長の保持孔241xに高さ方向に昇降可能に案内されており、一体構成便座22を上下方向に案内する案内要素として機能することができる。
【0034】
図14に示すように、便器1の取付部11には、一体構成便座22の取付け用の固定部31が着脱可能に固定されている。固定部31は、締結要素としての便器固定ボルト315a,315bにより便器1の取付部11に固定された固定ベース311と、固定ベース311の両側において上向きに突出する断面でH形状の角筒形状をなす被差込部311a、311bとを有する。被差込部311a、311bは角筒空間状の被差込空間311xを有する。固定ベース311には便座部211の前後方向に延設された一対のボルト溝314a,314bが形成されている。図14に示すように、便器固定ボルト315a,315bの頭部をボルト溝314a,314bに嵌合した状態で、ゴムワッシヤ316aを介して便器1の取付部11に固定部31は着脱可能に固定されている。
【0035】
さて一体構成便座22を便器1に着脱可能に据え付けるときについて説明を加える。先ず、図14に示すように、一体構成便座22を固定部31の上方に配置する。その後、一体構成便座22を矢印DA方向に下降させる。この結果、一体構成便座22の嵌着部240aの角筒形状の差込部241cを、固定部31の角筒形状の被差込部311aに着脱可能に差し込む。同様に、一体構成便座22の嵌着部240bの角筒形状の差込部241dを、固定部31の角筒形状の被差込部311bに着脱可能に差し込む。角筒形状同士の差込みであるため、一体構成便座22を位置決めする位置決め精度は確保される。これにより一体構成便座22が位置決めされた状態で便器1に着脱可能に保持される。故に、嵌着部240a,240bは一体構成便座22を便器1に据え付ける際に、一体構成便座22を位置決めする位置決め要素として機能できる。なお、一体構成便座22を固定部31に係脱可能に係止させる係止解除選択機構が設けられているときには、係止解除選択機構を係止形態とすることが好ましい。本実施例によれば、前記したように案内棒部245a,245bとフランジ部244a,244bによって出力軸252、支持軸259等を所定の高さ位置にフロート状態に保持できるよう構成されている。また図13に示すように、出力軸252、支持軸259の上側表面と固定保持部241a,241bの上端との間には、軸スキマ247a,247bが設けられている。軸スキマ247a,247bにより、出力軸252および支持軸259のフロート変位性は確保されている。
【0036】
清掃等を行なうときには、便器1に便器固定ボルト315a,315bを締結したままの状態で、一体構成便座22を上方(図14に示す矢印DB方向)に持ち上げる。これにより一体構成便座22の嵌着部240aの角筒形状の差込部241cを、固定部31の角筒形状の被差込部311aから離脱させる。同様に、一体構成便座22の嵌着部240bの角筒形状の差込部241dを固定部31の角筒形状の被差込部311bから離脱させる。これにより一体構成便座22を持ち上げて便器1から容易に取り外すことができる。この場合、一体構成便座22を固定部31に係脱可能に係止させる係止解除選択機構が設けられているときには、係止解除選択機構を解除にした状態で、一体構成便座22を持ち上げることが好ましい。一体構成便座22を便器1から取り外さないときでも、一体構成便座22を矢印DB方向にある程度の高さまで持ち上げれば、固定部31と一体構成便座22との間に、清掃用の隙間を形成できる。同様に、便器1と一体構成便座22との間に、清掃用の隙間を形成できる。これらの隙間を介して使用者は清掃等を行なうことができる。なお、必要に応じて、便器1から便器固定ボルト315a,315bを外すことができる。
【0037】
ところで、前述したように便座開閉駆動装置251(第1の駆動装置)は一体構成便座22内に固定されており、一体構成便座22を回動開閉のために駆動させるものであり、モータ類で形成されている。図14に示すように、便座開閉駆動装置251は一体構成便座22の下方部材221Lに設けられた取付台座228に固定ネジ254xで押え板253を介して一体構成便座22の内部に固定されている。便座251の出力軸252は、一体構成便座22と一体的に回動できるように一体構成便座22に対して回り止めされている。具体的には、図13に示すように、出力軸252には平行面取り状のDカット部252d(2箇所)が形成されている。Dカット部252dは固定保持部241aの縦長の保持孔241xに嵌合されて、回り止めされている。
【0038】
従って図13から理解できるように、便座開閉駆動装置251がオン駆動するとき、出力軸252がこれの軸心の回りで回動する。このとき回り止めされている出力軸252はその位置に静止した状態で、つまり、便器1に対して非回転状態であり、便座開閉駆動装置251が一体構成便座22と共に回動することになる。このように一体構成便座22が回動開閉するときには、図13に示すように、一体構成便座22の後端部22rは、後端部22rの下側の空間22kに向けて出力軸252の軸心の回りで矢印Y5方向に回動する。出力軸252及び支持軸259は同一軸心上に配置されており、一体構成便座22は出力軸252及び支持軸259を中心として回動開閉する。但し、嵌着部240bについては、出力軸ではないため支持軸259は固定保持部241bに対して回動可能とされている。
【0039】
本実施例によれば、図15に示すように、便座部221を構成する上方部材221Uと、本体部222を構成する上方部材222Uとの間には、遮熱板227が形成されている。また図1に示すように遮熱板227は便座部221の幅方向に沿っているとともに、便座部221の上方部材221Uには電気式の便座ヒータ2h(図1参照)が配置されている。図10に示すように、上方部材221Uの裏面側に遮熱板227の上端部227uが密着されている。また、遮熱板227の下端部227dは、便座部221の下方部材221Lの後端上面部221mに係合する。なお、遮熱板227には、電気配線等を通す為に必要な最小限の孔またはスキマが必要に応じて形成されていても良い。
【0040】
前述したように、一体構成便座22は、便座部221及び本体部222を連続させた筐体を構成しており、一体構成便座22の内部空間は比較的大きな連続するものとなり易い。このため便座部221の暖房便座用の熱が内部空間を経て本体部222に移動する傾向があり、便座ヒータ2hの消費電力の低減には限界がある。更に本体部222内の温度上昇も誘発するため、本体部222に収容されている機能部品の信頼性を高めるには改善の余地がある。
【0041】
この点本実施例によれば、図10に示すように、一体構成便座22の便座部221と本体部222との間には、遮熱要素としての遮熱板227が隔壁状に設けられている。遮熱板227は、便座部221の内部空間と本体部222の内部空間との非連通性を高める。具体的には、便座部221の内部空間と本体部222の内部空間との連通を遮断させる。このため便座部221の便座ヒータ2hが加熱作動しているとき、暖められた便座部221の熱が内部空間等を介して本体部222に伝達されることは、遮熱板227により抑制される。従って、本体部222内の温度上昇が抑制され、本体部222内に収容されている各種機能部品(例えば電気制御基板294等の電子部品および電気部品、便蓋開閉駆動装置255、便座開閉駆動装置251、乾燥装置271等)の信頼性の向上、耐久性の向上、長寿命化に貢献できる。また暖房便座としての便座部221の熱が本体部222に伝達されることは遮熱板227により抑制されているため、便座部221の温度を確保するのにも有利であり、省エネルギ、節電に貢献でき、便座ヒータ2hの加熱能力の低下にも貢献できる。なお遮熱板227は一体構成便座22に一体成形で形成しても良いし、後付けで一体構成便座22に取り付けても良い。
【0042】
更に、図1に示すように、遮熱板227は一体構成便座22の便座部221と本体部222との間に使用者の尻部の輪郭にほぼ沿うように設けられている。このため、一体構成便座22の便座部221に使用者の尻部が着座したとき、遮熱板227は尻部付近に位置することになり、暖房便座である便座部221のうち尻部付近の領域の温度を高めに維持するのに貢献でき、冬期等における使用に適する。更に図10に示すように、便座部221と本体部222との間には、遮熱要素としての空気断熱層227aも形成されているため、便座部221の熱が本体部222に伝達されることは一層抑制される。なお、空気断熱層227aは空気で形成するばかりか、遮熱性が高いゲル状物質を空気断熱層227aに配置しても良い。更に本実施例によれば、図10に示すように、便座部221の上方部材221Uの裏面側に遮熱板227の上端部227uは密着されている。このため便座部221の内部空間と本体部222の内部空間とは空気遮断性が高められている。よって、便座部221の内部空間と本体部222の内部空間との間における空気の出入りが抑制される。このため、便座部221の暖房便座用の便座ヒータ2hで加熱された空気による対流が抑制される。これにより、便座部221の内部で最も温度が高く空気対流の起こり易い箇所の熱移動を防ぐことができる。また、同じく遮熱板227の下端部227dも、本体部222の便座部221の下方部材221Lの後端部と係合されているので、この意味においても、便座部221の内部空間と本体部222の内部空間とは遮断性が高められている。よって便座部221の内部空間と本体部222の内部空間との間における空気の出入りが抑制される。これにより便座ヒータ2hの熱を便座部221の加熱に効率よく使用することができ、便座ヒータ2hの省エネルギ化を図りつつ、暖房便座としての能力を維持することができる。
【0043】
便器1は工業的に生産される陶器製であり、便器1の取付部11の取付面は、厳密な意味では歪み等を有することがある。便器1が焼結工程を経るときには、なおさらである。従って、一体構成便座22の本体部222を便器1の取付部11にリジット(高剛性状態)に固定する場合には、出力軸252及び支持軸259等の支持もリジット(高剛性状態)になり易い。この場合、使用者が一体構成便座22の便座部221に着座すると、使用者の体重が一体構成便座22の便座部221に負荷されるとき、便器1の取付部11の取付面の歪等の影響で、ゴム脚223が便器1に部分的に着地せず、一体構成便座22に無用な応力が作用するおそれがある。この点本実施例によれば、一体構成便座22を便器1に搭載している状態では、前述したように付勢部材である弾性体246a,246bの付勢力で付勢されている軸受け部243a,243bによって、出力軸252及び支持軸259(一体構成便座2の回動中心軸に相当)が例えば0.1〜7ミリメートル程度浮遊してフロート状態とされている。これにより一体構成便座22の底部223bはΔt相当(図12参照)ぶん便器1から上方に浮遊している。即ち、一体構成便座22は微小量沈下可能なフロート状態で便器1に保持されている。そして、一体構成便座22の便座部221に使用者が着座すると、弾性体246a,246bの付勢力に抗して出力軸252及び支持軸259等が着座に伴い降下する。これにより一体構成便座22の裏面のゴム脚223が便器1に確実に接触することができる。このため出力軸252及び支持軸259等には大きなセン断力等の応力が作用することが抑制される。更に便座開閉駆動装置251に偏加重が加わることも抑制される。
【0044】
また逆に便器1の取付部11の取付面に凸部が存在しており、一体構成便座22の便座部221が持ち上がろうとする場合においても、フロート状態とされている出力軸252または支持軸259は上方に移動することができるので、前述と同様に大きな荷重が出力軸252または支持軸259や便座開閉駆動装置251に加わることが抑制される。なお、軸受け部243a,243bを浮遊させる付勢力を発揮する弾性体246a,246bを設けることなく、一体構成便座22が自重で垂下している構造のものでも、出力軸252または支持軸259等が適宜上下移動できる隙間を形成するものであれは良い。
【0045】
本実施例によれば、人体局部洗浄装置2の洗浄機能を使用するとき、図10に示すように、洗浄ノズル261の伸縮ノズル262が矢印K1方向に伸張し、伸縮ノズル262から洗浄水が人体の局部に向けて噴出される。洗浄が終了すると、リターンバネ等のリターン手段により洗浄ノズル261の伸縮ノズル262が矢印K2方向に退避する。洗浄の際に、洗浄ノズル261からドレイン水が落下することがある。このようなときであっても、そのドレイン水はドレイン水溜り235に集約される。また一体構成便座22が閉鎖されている状態のときには、図10に示すように、ドレイン水溜り235のドレイン水は、開放状態の第1シャッター232aと開放状態の第2シャッター232bとを通じて便器1内に排出されるようになっている。一体構成便座22が閉鎖されるとき、第1シャッター232aと第2シャッター232bは、図示しない錘のモーメント作用、または、重力作用によって自動的に開放され、ドレイン水溜り235のドレイン水を便器1内に排出できるようにされている。一体構成便座22が矢印Y1方向に回動開放されるとき、図11に示すように、第1シャッター232aと第2シャッター232bは図示しない錘のモーメント作用または重力作用によって自動的に閉鎖され、ドレイン水溜り235のドレイン水が一体構成便座22の内において飛散することが抑制されている。
【0046】
しかしながらドレイン水溜り235に集約されたドレイン水は表面張力や汚れ付着によって完全には排水されず残るおそれもある。このような場合、一体構成便座22を開放状態として起立させたとしても、囲い板236で内部に残留水が飛散しないようになっている。殊に、一体構成便座22を最大開放状態として起立させたとしても、囲い板236で内部に残留水が飛散しないようになっている。故に、一体構成便座22の内部の電気部品や電子部品等の機能部品に水が付着したりするおそれが抑制される。よって電気部品や電子部品等の機能部品に対する信頼性の高い人体局部洗浄装置を提供することができる。
【0047】
便蓋21を矢印Y1方向に回動開放させる場合には、便蓋開閉駆動装置255の便蓋出力軸256を開方向に回動させ、便蓋出力軸256が所定位置になったときに便蓋開閉駆動装置255を停止させる。このとき図10に示すように、固定部31の係止部312の背面に形成された係止凹部312aと便蓋突起213dとが係脱可能に係合し、両者は結合される。これにより便蓋21の起立状態が維持される。なお、便蓋21を開閉させるための便蓋開閉駆動装置255、一体構成便座22を開閉させるための便座開閉駆動装置251は、共に一体構成便座22の内部に固定されている。
【0048】
図16〜図18について説明を加える。図16は、便蓋21及び一体構成便座22が共に閉鎖されている状態を示す。一体構成便座22は閉鎖されているため、一体構成便座22の内部に設けられている便蓋開閉駆動装置255及び便座開閉駆動装置251は、共に正規の取付け位置とされており、便蓋開閉駆動装置255の面255r及び便座開閉駆動装置251の面251rは、横方向に指向している。図17は、一体構成便座22を閉鎖状態に維持しつつ、便蓋21を上方(矢印Y1方向)に回動させて開放(起立)させている状態を示す。図17に示す形態によれば、一体構成便座22が閉鎖されているため、一体構成便座22の内部に設けられている便蓋開閉駆動装置255及び便座開閉駆動装置251は共に正規の取付け位置のままであり、便蓋開閉駆動装置255の面255r及び便座開閉駆動装置251の面251rは横方向に指向している。図18は、便蓋21とともに一体構成便座22が上方(矢印Y1方向)に回動されて開放されている状態を示す。図18に示す形態によれば、便座開閉駆動装置251の駆動により一体構成便座22がほぼ90〜110度回動して起立状態(開放状態)とされているため、一体構成便座22の内部に配置されている便座開閉駆動装置251ばかりか、便蓋開閉駆動装置255も一体構成便座22の矢印Y1方向への回動と共に回動し、便蓋開閉駆動装置255の向きが変更(ほぼ90〜110度)されている。
【0049】
本実施例によれば、一体構成便座22の回転中心となる軸、即ち、出力軸252および支持軸259、便蓋21の回転中心となる枢支軸部229および便蓋出力軸256は、同一軸心上に、あるいは、実質的に同一軸心上に設定されている。故に、一体構成便座22および便蓋21の双方は同一軸心上に、あるいは、実質的に同一の軸心の回りを回動するように設定されている。このため一体構成便座22が回動開閉するときであっても、便蓋21の回動軌跡と一体構成便座2の回動軌跡とを同じような旋回円弧とすることができ、旋回スペースの小型化に有利であり、狭いトイレ室に据え付けるのに有利となる、更に、一体構成便座22および便蓋21は同一軸心上に、あるいは、実質的に同一の軸心の回りを回動するように設定されているため、一体構成便座22の回動開閉時に便蓋21に過剰な歪みがかかることが防止されている。
【0050】
図16に示す便蓋21及び一体構成便座22が共に閉鎖されている状態から、便蓋開閉駆動装置255を開放方向にオン駆動すると、図17に示すように便蓋21を上方(矢印Y1方向)に回動させて開放させることができる。この状態とすれば、清掃を容易に行うことができる。更に便座開閉駆動装置251を開放方向にオン駆動させることにより、図18に示すように、一体構成便座22を約90〜110度程度上方に回動させて開放状態(起立状態)にして清掃を行うことができる。
【0051】
ところで、図17及び図18に示すように、一体構成便座22を上方(矢印Y1方向)に回動開放させると、一体構成便座22の内部に保持されている便蓋開閉駆動装置255も便蓋出力軸256と共に同方向に同時に同角度回動してしまうことになる。便蓋開閉駆動装置255が一体構成便座22に配設されているためである。この場合、起立位置にある便蓋21が更に矢印Y3方向(図18参照)に過剰に開放することになりかねない。従って便蓋21を上方に回動開放(起立)させた状態で、閉鎖している一体構成便座22を回動開放させるときには、便蓋開閉駆動装置255がオフであるとき、便蓋21に固定された便蓋出力軸256は便蓋開閉駆動装置255に対して自由に回転できるように構成されている。このとき便蓋21が一体構成便座22の開放方向の動作に伴って更に開方向(図18に示す矢印Y3方向)に過剰に開放されることが防止されている。この場合、図10に示したように、固定部31の係止部312の背面に形成された係止凹部312aと便蓋突起213dとが係脱可能に係合される。これにより一体構成便座22の起立状態が維持される。従って、係止凹部312a及び便蓋突起213dは、機械的構造をもつ便蓋開放維持手段として機能することができる。
【0052】
次に、便蓋21及び一体構成便座22を起立状態に開放させたまま(図18参照)、一体構成便座22のみを矢印Y2方向に回動閉鎖させようとするときには、便座開閉駆動装置251を閉鎖方向にオン駆動させることにより、一体構成便座22を下方向つまり矢印Y2方向に回動閉鎖させる。この場合にも一体構成便座22の回動閉鎖に伴い、便蓋開閉駆動装置255がオフであるとき、便蓋開閉駆動装置255と便蓋出力軸256とは自由に回動するようになるので、係止部312の背面に形成された係止凹部312aと便蓋突起213dとの係合状態が良好に継続される。従って、便座開閉駆動装置251を閉鎖方向に駆動させたとしても、一体構成便座22の起立状態が維持される。
【0053】
起立している便蓋21を閉鎖させるときには、便蓋開閉駆動装置255が閉鎖方向にオン駆動し、一体構成便座22の便蓋出力軸256が閉鎖方向に駆動する。これにより前述の係止凹部312aと便蓋突起213dとの係合が相互の弾性変形で強制的に外れ、便蓋21を矢印Y2方向に回動閉鎖させることができる。
【実施例2】
【0054】
以下、本発明の実施例2について説明する。実施例2は基本的には実施例1と同様の構成であり、同様の作用効果を有する。実施例2は実施例1に係る図1〜図18を準用する。本実施例によれば、便蓋21を開放状態(起立状態)に維持させるために、マイコンのソフトウェア処理による便蓋開放維持手段が設けられている。これについて説明を加える。図18に示すように、便蓋21の現在の開閉状態を検出する便蓋開閉センサ21sは一体構成便座22付近に設けられている。便蓋開閉センサ21sからの信号は制御装置500に入力される。一体構成便座22の現在の開閉状態を検出する便座開閉センサ22sは一体構成便座22付近に設けられている。便座開閉センサ22sからの信号は制御装置500に入力される。制御装置500はマイコン、記憶媒体、インターフェース回路等を有しており、前記した一体構成便座22の本体部222内に装備される電気制御基板294に搭載されている。
【0055】
まず、便蓋21及び一体構成便座22の双方が開放されて起立されている状態(図18参照)において、便座開閉駆動装置251(第1の駆動装置)をオン駆動させて一体構成便座22を閉鎖方向(矢印Y2方向)に回動させるときについて説明する。この場合、一体構成便座22に便蓋開閉駆動装置255(第2の駆動装置)が固定されているため、一体構成便座22が閉鎖方向(矢印Y2方向)に回動すると、一体構成便座22と共に便蓋開閉駆動装置255も同じ回動角度相当、同じ方向に追従して回動してしまうおそれがある。この結果、本来的には、便蓋21を起立状態に維持させておきたいにも拘わらず、一体構成便座22が閉鎖方向(矢印Y2方向)に回動すると、便蓋21を閉鎖作動させていないにもかかわらず、便蓋21が閉鎖する方向(矢印Y2方向)に追従して回動してしまう不具合が生じる。そこで本実施例によれば、この場合、マイコンのソフトウェア処理で実行する便蓋開放維持手段は、便蓋21を開放させる方向(即ち、一体構成便座22の回動方向と逆方向)に回動させる指令を便蓋開閉駆動装置255に出力する。これにより便蓋開閉駆動装置255の便蓋出力軸256が逆方向に回動する。故に、便蓋21について、閉鎖方向の動作と開放方向の動作とを実質的に相殺できる。よって、便蓋21を起立状態(開放状態)に維持させることができ、使用者が一体構成便座22に着座することができる。
【0056】
また、便蓋21が起立状態(開放状態)にされていると共に一体構成便座22が閉鎖されている状態(図17参照)において、便座開閉駆動装置251(第1の駆動装置)の駆動により一体構成便座22を閉鎖状態から開放状態に矢印Y1方向に回動させるときについて説明する。この場合、前述のように一体構成便座22に便蓋開閉駆動装置255(第2の駆動装置)が固定されているため、一体構成便座22の回動と共に便蓋開閉駆動装置255も同じ回動角度相当、同じ方向に追従して回動してしまうおそれがある。この結果、本来的には、便蓋21を起立状態に維持させておきたいにもかかわらず、便蓋21が過剰開放する方向(図17に示す矢印Y3方向)に追従回動してしまうおそれがある。そこでマイコンのソフトウェア処理による便蓋開放維持手段は、便蓋21を閉鎖させる方向に回動させる指令を便蓋開閉駆動装置255に出力する。これにより便蓋21について、開放方向の動作と閉鎖方向の動作とを実質的に相殺でき、便蓋21を起立状態に維持させることができる。
【0057】
上記したソフトウェア処理による便蓋開放維持手段によれば、便蓋21を起立状態に維持するべく、便蓋開閉駆動装置255の駆動方向と便座開閉駆動装置251の駆動方向とを逆にできる。つまり、便蓋21が起立している状態で、便座開閉駆動装置251を便座開放方向に駆動させるときには、便蓋開閉駆動装置255を逆方向つまり便蓋閉鎖方向に駆動させる。あるいは、便蓋21が起立している状態で、便座開閉駆動装置251を便座閉鎖方向に駆動させるときには、便蓋開閉駆動装置255を逆方向つまり便蓋開放方向に駆動させる。この場合、便座の回動角度と便蓋の回動角度とを対応させることが好ましい。この場合、便座の回動角度背をθ1とし、便蓋の回動角度をθ2とすると、θ2/θ1=0.8〜1.2、または、0.9〜1.1、または1を例示できる。また必要に応じて便蓋開閉駆動装置255の駆動開始タイミングと便座開閉駆動装置251の駆動開始タイミングとを対応させることが好ましい。対応とは、タイミングが合致すること、または、タイミングが支障のない時間遅れを伴って作動することをいう。また必要に応じて、便蓋開閉駆動装置255の駆動終了タイミングと便座開閉駆動装置251の駆動終了タイミングとを対応させることが好ましい。
【0058】
上記したマイコンによるソフトウェア処理による便蓋開放維持手段について、図19を参照して説明を加える。図19に示すフローチャートはあくまでも一例であり、これに限定されるものではない。便蓋21の現在の開閉状態に関する便蓋開閉センサ21sの信号、一体構成便座22の現在の開閉状態に関する便座開閉センサ22sの信号を読み込む(ステップS102)。そして便蓋21が開放状態であるか否かを判定する(ステップS104)。便蓋21が閉鎖されていれば、メインルーチンに戻る。更に一体構成便座22が開放状態であるか否かを判定する(ステップS106)。
【0059】
便蓋21及び一体構成便座22の双方が開放されて起立されているとき(図18参照)には、制御則1で待機し、一体構成便座22の開閉動作の読み込みを継続する(ステップS110)。この制御則1において、一体構成便座22を閉鎖させる動作が行われていると判定されると(ステップS112)、便蓋21を開放させる方向に回動させる指令を便蓋開閉駆動装置255に出力する(ステップS114)。これにより便蓋開閉駆動装置255の駆動に起因する便蓋21の開放方向の動作と、一体構成便座22の閉鎖に起因する便蓋21の閉鎖方向の動作とが実質的に相殺される。よって便蓋21は起立状態に維持されたままとなる。制御則1がエンドであれば(ステップS116)、メインルーチンにリターンする。エンドでなければ、便蓋21を開放させる方向に回動させる指令を維持する。
【0060】
これに対して、便蓋21が開放されていると共に一体構成便座22が閉鎖されているときには(図17参照)、制御則2で待機し、一体構成便座22の開閉動作を読み込みを継続する(ステップS150)。この制御則2において、一体構成便座22を開放させる動作が行われていると判定されるときには(ステップS152)、便蓋21を閉鎖させる方向に回動させる指令を便蓋開閉駆動装置255に出力する(ステップS154)。これにより便蓋開閉駆動装置255の駆動に起因する便蓋21の閉鎖方向の動作と、一体構成便座22の開放に起因する便蓋21の開放方向の動作とが実質的に相殺される。よって便蓋21は起立状態に維持されたままとなる。制御則2がエンドであれば(ステップS116)、メインルーチンにリターンする。エンドでなければ、便蓋21を閉鎖させる方向に回動させる指令を維持する。
【実施例3】
【0061】
図20及び図21は実施例3を示す。本発明の実施例3は実施例2と基本的には同様の構成であり、同様の作用効果を有する。共通する部位には共通の符号を付する。以下、実施例1と相違する部分を中心として説明する。図20に示すように、固定部31の固定ベース311の左右の両側にはスライドガイド部319a,319bが形成されている。スライドガイド部319a,319bは一体構成便座22の前後方向(図1に示す矢印X1,X2方向)に沿って延設されている。図示しない係止着脱機構を操作することによって、これらのスライドガイド部319a,319bを移動させることが可能とされている。
【0062】
一体構成便座22に形成されている嵌着部240aはスライド部401を有する。嵌着部240bはスライド部402を有する。スライド部401,402は、一体構成便座22の前後方向(図1に示す矢印X1,X2方向)に沿って延設されている。一体構成便座22を固定部31に取付けるときには、一体構成便座22を便器1の前方に位置させた状態で、一体構成便座22を後方(矢印X2方向)に向けて水平方向に沿って移動させる。このとき、一体構成便座22を後方(矢印X2方向)押し込むことにより、一体構成便座22のスライド部401,402を固定ベース311のスライドガイド部319a,319bに沿ってスライド移動させる。一体構成便座22をある位置までスライド移動させると、一体構成便座22のスライド部401,402を固定ベース311に係脱可能に係合させる係止解除選択機構が設けられていることが好ましい。
【0063】
清掃等の際に一体構成便座22を便器1に対して移動させたり取り外したりするときには、一体構成便座22を逆方向つまり前方(矢印X1方向)に向けて水平方向に沿って移動させる。このようにすれば、便器1の他に一体構成便座22の裏面も容易に清掃できる。
【0064】
本実施例においても、便蓋21及び一体構成便座22の双方が開放されている状態で、一体構成便座22を閉鎖方向に回動させるにあたり、便蓋21を開放させる方向に回動させる指令を便蓋開閉駆動装置255に出力し、前述したように開放方向の動作と閉鎖方向の動作とを相殺させる。また便蓋21が開放状態にされた状態で一体構成便座22を閉鎖状態から開放状態に回動させるにあたり、便蓋21を閉鎖させる方向に回動させる指令を便蓋開閉駆動装置255に出力し、前述したように開放方向の動作と閉鎖方向の動作とを相殺させる。
【0065】
(他の例)
上記した実施例1によれば、温水タンク293、乾燥装置271が設けられているが、これらは廃止されていても良い。温水タンク293を廃止するときには、短時間で温水を生成する加熱部を設けることが好ましい。その他、本発明は上記し且つ図面に示した実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は人体の局部を洗浄する機能を有する人体局部洗浄装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】人体局部洗浄装置を腰掛け式便器に搭載した状態を示す平面図である。
【図2】人体局部洗浄装置を腰掛け式便器に搭載した状態を示す側面図である。
【図3】人体局部洗浄装置の平面図である。
【図4】人体局部洗浄装置の側面図である。
【図5】人体局部洗浄装置の裏面図である。
【図6】人体局部洗浄装置の使用状態を示し、一体構成便座および便蓋が閉鎖している通常の閉鎖状態を示す側面図である。
【図7】便蓋を回動開放させて起立させると共に一体構成便座を閉鎖させている状態を示す側面図である。
【図8】便蓋及び一体構成便座を開放させている状態を示す側面図である。
【図9】人体局部洗浄装置の本体部を示す部分平面図である。
【図10】図9のB−B線に沿った断面を示し、便蓋が開放されていると共に一体構成便座が閉鎖されている状態を示す構成図である。
【図11】図9のB−B線に沿った断面を示し、便蓋及び一体構成便座が開放されている状態を示す構成図である。
【図12】図9のC−C線に沿った一体構成便座の内部構造を示す構成図である。
【図13】図12におけるD1−D1線、D2−D2線に沿った構造を示す構成図である。
【図14】便器に固定した固定部に一体構成便座を上方から取り付ける直前の状態を示す構成図である。
【図15】一体構成便座の筐体を分解した状態を示す斜視図である。
【図16】便蓋及び便座が閉鎖されている状態を示す要部の側面図である。
【図17】便蓋が開放されていると共に一体構成便座が閉鎖されている状態を示す要部の側面図である。
【図18】便蓋及び一体構成便座が開放されて起立している状態を示す要部の側面図である。
【図19】実施例2に係り、マイコンが実行する処理のフローチャートの一例である。
【図20】実施例3に係り、一体構成便座の内部構造を示す構成図である。
【図21】実施例3に係り、図20のD3−D3線、D4−D4線に沿った構造を示す構成図である。
【符号の説明】
【0068】
図中、1は便器、11は取付部、2は人体局部洗浄装置、21は便蓋、22は一体構成便座、31は固定部、221は便座部、222は本体部、227は遮熱板、261は洗浄ノズル(洗浄部)、255は便蓋開閉駆動装置(第2の駆動装置)、251は便座開閉駆動装置(第1の駆動装置)を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は人体局部洗浄装置に関し、特に、使用者が着座する便座部と機能部品を収容する本体部とが一体的に構成された一体構成便座を有する人体局部洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
腰掛け式の便器に設置して用いる人体局部洗浄装置は、一般には使用者が座る便座部と、その後部に設けられ便座部に対して別体をなす本体部とから構成されている。本体部には、人体局部の洗浄を行う洗浄ノズル、温風乾燥を行う温風乾燥装置、これらの制御装置等の機能部品が収納される。また便座の上面には便蓋が便座を覆うように設けられている。便座の基端部と便蓋の基端部とは本体部に回動自在に取り付けられている。このような構成は一般的に多く見られる。
【0003】
しかしながら上記した従来の人体局部洗浄装置によれば、便蓋を本体部に回動可能に枢支させる構造上、便蓋と本体部との間、便座と本体部との間には、比較的大きな隙間が必要となる。このため、この隙間に汚れや挨が付着し易い。更に、雑巾等で汚れを拭き取る際にも、拭き残しが出来てしまう等の好ましくない点がある。さらにデザイン上においても、便座部と本体部とに分割されており、造形上の自由度が制限されてしまうということも事実であった。
【0004】
以上のことを改善しようとして、近年、便座部の後方に温水タンクを配置して便座と後部収納箱とを一体構成として一体構成便座を形成すると共に、その一体構成便座の後部に便蓋を回動自在に軸支させた新規な人体局部洗浄装置が提案されている(特許文献1)。
【0005】
また、特許文献2によれば、前述の特許文献1が有する一体構成便座であることが起因する生産組立時やメンテナンス時における分解・組付の煩雑さを解消を目的として、3個の外殻部材(便座ベース、便座部、本体ケース)を順に重ね合わせることで一体構造の筐体を形成する方式を採用すると共に、便座開方向に補助バネで付勢し且つ便座閉方向には急激に閉作動しないための回転減衰機構を有した人体局部洗浄装置が提案されている。
【特許文献1】特開平4−1336号公報
【特許文献2】特開2002−325701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した新規タイプの一体構成便座によれば、一体構成便座の閉鎖方向の動作が急激に行われないようにするため、回動減衰機構が設けられている。しかしながら高齢者、身体的特徴を有する者等が一体構成便座を開閉しようとすると、腰をかがめる等の動作が必要とされ、高齢者、身体的特徴を有する者等にとって身体的負担があった。
【0007】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、高齢者、身体的特徴を有する者等にとって負担が少ない人体局部洗浄装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)第1発明に係る人体局部洗浄装置は、腰掛け式の便器に装備される人体局部洗浄装置であって、便器に対して回動可能に設けられ、使用者が着座する便座部と機能部品を収容する本体部とが一体的に構成された一体構成便座を具備しており、一体構成便座は第1の駆動装置によって回動開閉可能とされていることを特徴とするものである。
【0009】
第1発明に係る人体局部洗浄装置によれば、第1の駆動装置が駆動すると、一体構成便座は回動開閉される。第1の駆動装置は一体構成便座の内部に配設されていることが好ましい。
【0010】
(2)第2発明に係る人体局部洗浄装置は、腰掛け式の便器に装備される人体局部洗浄装置であって、便器に対して回動可能に設けられ、使用者が着座する便座部と機能部品を収容する本体部とが一体的に構成された一体構成便座と、一体構成便座の後端部に回動開閉に設けられた便蓋とを具備しており、一体構成便座は第1の駆動装置によって回動開閉可能とされており、便蓋は、一体構成便座の内部に配設された第2の駆動装置によって回動開閉可能とされていることを特徴とするものである。
【0011】
第2発明に係る人体局部洗浄装置によれば、第1の駆動装置が駆動すると、一体構成便座は回動開閉される。第1の駆動装置は一体構成便座の内部に配設されていることが好ましい。第2の駆動装置が駆動すると、一体構成便座に対して便蓋は回動開閉される。第2の駆動装置は一体構成便座の内部に配設されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
第1発明に係る人体局部洗浄装置によれば、第1の駆動装置の駆動により一体構成便座を回動開閉させることができ、一般人はもとより、高齢者、身体的特徴を有する者等にとって負担が少なく、有効である。更に、第1の駆動装置の駆動により一体構成便座を自動的に回動させて閉鎖させることができるため、一体構成便座が全閉されるときの衝突音の低減にも貢献できる。
【0013】
第2発明に係る人体局部洗浄装置によれば、第1の駆動装置の駆動により一体構成便座を回動開閉させることができ、第2の駆動装置の駆動により一体構成便座に対して便蓋を回動開閉させることができ、一般人はもとより、高齢者、身体的特徴を有する者等にとって負担が少なく、有効である。更に、第1の駆動装置の駆動により一体構成便座を自動的に回動させて閉鎖させることができると共に、第2の駆動装置の駆動により便蓋を自動的に回動させて閉鎖させることができる。このため一体構成便座及び便蓋が全閉されるときの衝突音の低減にも貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る人体局部洗浄装置は、使用者が着座する便座部と機能部品を収容する本体部とが一体的に構成された一体構成便座を備える。更に、一体構成便座を便器に回動開閉可能に保持する固定部を備えている形態を採用できる。場合によっては、固定部としては、便座を回動開閉させるために従来から使用されている固定部を使用することもできる。
【0015】
一体構成便座は、使用者が着座する便座部と、機能部品を収容する本体部とが一体的に構成されている。この場合、一体構成便座の筐体は一体成形で形成されていても良いし、あるいは、螺子、溶着、融着等で機械的に接合されて一体化されていても良い。機能部品としては、例えば、電子部品、電気部品、洗浄ノズル等の洗浄部、温水を貯留するタンク等の温水貯留部、温水を生成するヒータ等の温水生成部、人体の局部を乾燥させる温風を生成する乾燥器等の少なくとも一つが挙げられる。温水を生成するヒータ等の温水生成部が設けられているときには、温水を貯留するタンク等の温水貯留部を簡略化または廃止することもできる。便座部と本体部とが一体的に形成されているため、便座部及び本体部は一緒に回動開閉する。
【0016】
本発明に係る人体局部洗浄装置は、一体構成便座は人体の局部に洗浄水を供給して局部を洗浄する洗浄部を有する形態にできる。洗浄部としては、人体の局部に水を噴出して局部を洗浄する洗浄ノズルを例示できる。洗浄する水である温水を供給する温水供給部を有することが好ましい。温水供給部としては、温水を貯蔵する温水タンクを有する方式でも良いし、あるいは、温水タンクを有せず、短時間で温水を生成できる加熱部を有する方式でも良い。
【0017】
本発明に係る人体局部洗浄装置によれば、便蓋及び一体構成便座の双方が開放されている状態で、一体構成便座を閉鎖方向に回動させるにあたり、便蓋を開放状態に維持させる便蓋開放維持手段が設けられている形態を採用できる。
【0018】
また、便蓋が開放状態にされた状態で一体構成便座を閉鎖状態から開放状態に回動させるにあたり、便蓋を開放状態に維持する便蓋開放維持手段が設けられている形態を採用できる。前記した便蓋開放維持手段としては、機械的係合によりあるいはソフトウェア処理により、便蓋の開放状態を維持させる形態を採用できる。一体構成便座を回動可能に保持すると共に便器に固定される固定部が設けられており、便蓋開放維持手段としては、一体構成便座の本体部に形成されている凹及び凸のうちの少なくとも一方と、便蓋に形成されている凸及び凹のうちの少なくとも一方とを係合可能に係合させる構成である形態を例示できる。この場合、凹凸による係合力としては、第2の駆動装置が便蓋を回動させて閉鎖させるときに係合力が外れる程度とすることができる。
【0019】
便蓋開放維持手段としては、便蓋及び一体構成便座の双方が開放されている状態で、一体構成便座を閉鎖方向に回動させるにあたり、便蓋を開放させる方向に回動させる指令を第2の駆動装置に出力する形態を採用できる。これにより一体構成便座の閉鎖方向の回動に追従しようとする便蓋の動作(便蓋の閉鎖方向の動作)と、便蓋に関する開放方向の動作とを相殺できる。このため便蓋を開放状態(起立状態)に維持させることができる。この場合、便蓋が開放状態(起立状態)に維持されている状態で、使用者は、一体構成便座の便座部に着座することができる。便蓋開放維持手段としては、便蓋が開放状態にされた状態で、一体構成便座を閉鎖状態から開放状態に回動させるにあたり、便蓋を閉鎖させる方向に回動させる指令を第2の駆動装置に出力する形態を採用できる。これにより一体構成便座の開放動作に追従する便蓋に関する開放動作と、便蓋に関する閉鎖方向の動作とを相殺できる。このため便蓋を開放状態(起立状態)に維持させることができる。この場合、便蓋及び一体構成便座の双方が開放状態(起立状態)に維持され、男性使用者の放尿に対処できる。なお、第1の駆動装置及び第2の駆動装置としてはモータ類、シリンダ類を例示できる。上記した便蓋開放維持手段としては、第1の駆動装置を便座開放方向に駆動させたら、第2の駆動装置を便蓋閉鎖方向に駆動させる形態を例示することができる。あるいは、上記した便蓋開放維持手段としては、第1の駆動装置を便座閉鎖方向に駆動させたら、第2の駆動装置を便蓋開放方向に駆動させる形態を例示することができる。
【実施例1】
【0020】
以下、本発明の実施例1について図面を参照しつつ具体的に説明する。まず、構造を図面に従って説明する。図1及び図2において、貯水機能をもつロータンク1sを装備する腰掛け式の便器1が設けられている。便器1の後部の取付部11には、人体局部洗浄機能を有する人体局部洗浄装置2が着脱可能に搭載されている。人体局部洗浄装置2は、樹脂を基材とする便蓋21と、便蓋21の後端部を上下方向(矢印Y1,Y2方向)に回動開閉可能に枢支する一体構成便座22と、一体構成便座22を便器1の後部の取付部11に上下方向(矢印Y1,Y2方向)に回動開閉可能に保持する固定部31とを備えている。
図1に示すように、固定部31の長さLCは、一体構成便座22の幅寸法の範囲内に設定されている。このため通常使用時には、人体局部洗浄装置2の外表面には便蓋21以外に駆動する部分がないので、安全対策上好ましい。なお本実施例では図1及び図2において前方を矢印X1方向とし、後方を矢印X2方向とする。
【0021】
図3〜図5において、一体構成便座22は、使用者が着座する樹脂を基材とする便座部221と、各種の機能部品を収容するように便座部221の後端部に一体的に延設された樹脂を基材とする本体部222とを一体的に構成している。便蓋21は左右にあるヒンジ部211をもつ。一体構成便座22の便座部221はこれの裏面に固定されているゴム脚223(脚)をもつ。便座部221は中央開口部224をもつ。本体部222はこれの裏面に装着されたゴム等の有機系弾性材料で形成された弾性体225をもつ。本体部222を閉鎖状態としたときに、弾性体225は便器1(図2参照)の取付部11の表面と接触できるようにされている。
【0022】
固定部31はL字形状をなしており、ネジ部32をもち水平に沿っている固定ベース311と、固定ベース311から立設された係止部312とを有する。係止部312は便蓋21を開放状態(起立状態)を保つためのものである。ネジ部32は、固定部31の固定ベース311を便器1の取付部11に締結する締結要素として機能する。
【0023】
図6は、便蓋21と共に一体構成便座22が閉鎖している状態を示す(人体局部洗浄装置2の不使用時)。図7は、便蓋21が開放していると共に一体構成便座22が閉鎖している状態を示す(人体局部洗浄装置2の排便使用時等)。図8は、便蓋21及び一体構成便座22が開放している状態を示す(人体局部洗浄装置2の小便使用時)。
【0024】
図9は人体局部洗浄装置2の要部の平面を示す。図9に示すように、便蓋21は一体構成便座22の本体部222の側面に回動可能に枢支されている。一体構成便座22の本体部222は、洗浄水を供給する給水口291を有する電磁給水弁292と、電磁給水弁292に連結された温水タンク293と、温水タンク293に連結された洗浄ノズル261(洗浄部)と、洗浄後の人体局部に温風を供給する温風乾燥装置271と、電子部品および電気部品等を搭載する電気制御基板294とを内蔵する。固定部31と本体部222との間には、複数個(2個)の嵌着部240a、240bが一体構成便座22の本体部222のほぼ中央部に配置されている。
【0025】
図15に示すように、一体構成便座22の筐体は、上下に2分割された上側の第1部品22fと下側の第2部品22sとを組み付けて形成されている。上側の第1部品22fは、便座上側となる上方部材221Uと、本体部上側となる上方部材222Uとを連設して有する。下側の第2部品22sは、便座下側となる下方部材221Lと、本体部下側となる下方部材222Lとを連設して有する。第1部品22f及び第2部品22sを組みけて筐体を一体化させる筐体一体化手段としては特に限定されず、溶着、融着、螺子止め等を必要に応じて選択できる。図15に示すように、一体構成便座22は、便座部221及び本体部222を連続させた筐体を構成する。このため一体構成便座22の内部空間は比較的大きなものとなる。換言すると、図15から理解できるように、一体構成便座22の前部を構成する便座部221は、上方部材221Uと下方部材221Lとに分割されている。一体構成便座22の後部を構成する本体部222は、上方部材222Uと下方部材222Lとに分割されている。図15に示すように、便座部221の下方部材221Lの後端部には洗浄ノズル用の第1シャッター232aと温風乾燥用の第2シャッター232bとが開閉可能に設けられている。
【0026】
本実施例によれば、図10に示すように、一体構成便座22の上方部材221Uには、遮熱要素としての遮熱板227が設けられている。遮熱板227は、便座部221と本体部222との境界領域に設けられており、遮熱性が高い材料(例えば熱伝達率が低い樹脂材料、遮熱性を有する気泡を有する発泡材料)で形成されている。図10に示すように、便蓋21の後端部には便蓋突起213d(便蓋第1係合部)が形成されている。固定部31の係止部312には係止凹部312a(便蓋第2係合部)が形成されている。図10に示すように、便蓋21が上方つまり矢印Y1方向に回動されて開放状態(起立状態)とされているとき、便蓋突起213dが固定部31の係止凹部312aに係脱可能に係合する。これにより便蓋21は開放状態つまり起立状態に維持される。従って、便蓋突起213d及び係止凹部312aは、便蓋21の開放状態(起立状態)を維持する便蓋開放維持手段を構成することができる。
【0027】
本体部222のほぼ中央部付近には、人体の局部に洗浄水である温水を噴出する洗浄ノズル261(洗浄部)が内蔵されている。洗浄ノズル261は先方に伸縮可能な伸縮ノズル262を有する。局部洗浄時には水圧などにより伸縮ノズル262はノズル開口2pから突き出し、便器1内に向けて矢印K1方向に伸張する。局部洗浄時でないときには、図略のリターンバネにより伸縮ノズル262は矢印K2方向に退避して本体部222内に隠蔽される。
【0028】
一体構成便座22の下方部材222Lの一部をなすシャッター232aが回転ヒンジ233aを軸として回動開閉するようにされている。シャッター232aは、一体構成便座22の開放時(起立時、図11参照)には閉鎖されると共に、一体構成便座22の閉鎖時(図10参照)には開放される。シャッター232aの開閉動作は、シャッター232aに作用する重力により行われる。シャッター232aの回動開閉により、伸縮ノズル262が矢印K1,K2方向に出入りすることができる。シャッター232aは、洗浄ノズル261の直下に配置されている直下部材226cに保持されている。シャッター232aの後方には、洗浄ノズル261からのドレイン水、あるいは、温水タンクからのドレイン水を仮保持する遮水壁として機能する囲い板236が設けられている。これによりドレイン水溜り235(水保持部)が形成されている。図10に示すように、一体構成便座22の閉鎖時にドレイン水溜り235は洗浄ノズル261の下方に位置しており、洗浄ノズル261から落下するドレイン水を受け止め得るようにされている。シャッター232aも洗浄ノズル261から落下するドレイン水を受け止め得るようにされている。
【0029】
図11に示すように、一体構成便座22が上方(矢印Y1方向)に回動開放して起立するときには、ドレイン水溜り235の排出口235fはシャッター232aで閉鎖される。これによりドレイン水溜り235に仮保持されているドレイン水が飛散しないようにされている。つまり、一体構成便座22が上方に回動して起立状態となったときには、囲い板236と直下部材226cとで囲まれたドレイン水溜り235にドレイン水が集約され、溜水237となるため、一体構成便座22内における水の飛散が抑制される。洗浄ノズル261から落下する水を受け止めるため、囲い板236の端226eは洗浄ノズル261に接近することが好ましい。図10に示すように、一体構成便座22が下方(矢印Y2方向)に回動して閉鎖されると、シャッター232aが重力により開放され、ドレイン水溜り235が水平に近い状態に寝るため、ドレイン水溜り235のドレイン水が重力により便器1内に自然に排出される。従って、一体構成便座22が下方に揺動し閉鎖されるごとに、ドレイン水溜り235に溜まっているドレイン水が便器1内に重力により自然に排出される。
【0030】
図12に示すように、便蓋21は、枢支部としてのヒンジ穴213dを有する右側板211aと、枢支部としてのヒンジ穴213bを有する左側板211bとを後部の両側に備える。ヒンジ穴213a,213bは実質的に同一軸心上に設定されている。一方のヒンジ穴213aは、本体部222の下方部材222Lからの枢支軸229と回動可能に嵌合する。他方のヒンジ穴213bは、便蓋開閉駆動装置255(第2の駆動装置)の便蓋出力軸256と一体回動するように便蓋出力軸256に嵌合されている。従って、便蓋開閉駆動装置255がオン駆動して便蓋出力軸256がこれの軸心回りで回動すると、便蓋出力軸256及び枢支軸229を中心として便蓋21は回動開閉される。便蓋出力軸256及び枢支軸229は同一軸線状に沿っており、便蓋21の回動中心である。なお、図12に示すように、便蓋開閉駆動装置255は、一体構成便座22の本体部222の下方部材222Lの側面に形成された固定枠257に組み込まれ、固定ネジ254で一体構成便座22の内部に固定されている。故に、一体構成便座22が回動すると、一体構成便座22に固定されている便蓋開閉駆動装置255も同方向に同角度開度する。上記したように便蓋開閉駆動装置255は、便器1に固定される固定部31ではなく、一体構成便座22に保持されているので、固定部31自体のスペースが小さくて済み、人体局部洗浄装置2全体の小型化に有利である。なお便蓋開閉駆動装置255はモータ類で形成されている。
【0031】
本実施例によれば、図14に示すように、一体構成便座22はこれの下方に臨む嵌着部240a,240bを有する。一方の嵌着部240aは、一体構成便座22の後端部の底部223bから上方に膨出する固定保持部241aと、固定保持部241aに連接された壁部238aと、固定保持部241aに保持された出力軸252と、出力軸252を載せてフロート状態に支持する浮遊支持部243Wと、浮遊支持部243Wを上方に付勢して待ち上げてフロート状態とする付勢力を有する付勢部材(コイルバネ)で形成された弾性体246aと、下方に開口する角筒形状の差込部241cを有する。図13に示すように、浮遊支持部243Wは、出力軸252を載せてフロート状態に支持する軸受け部243aと、フランジ部244aと、下方に延設された案内棒部245aと一体的に有する。
【0032】
同様に、図14に示すように、嵌着部240bは、一体構成便座22の後端部の底部223bから上方に膨出する固定保持部241bと、固定保持部241bに連接された壁部238bと、固定保持部241bに保持された断面円形の支持軸259と、支持軸259を載せてフロート状態に支持する浮遊支持部243Xと、浮遊支持部243Xを上方に付勢して待ち上げてフロート状態とする付勢力を有する付勢部材(コイルバネ)で形成された弾性体246bと、下方に開口する角筒形状の差込部241dを有する。図13に示すように、浮遊支持部243Xは、支持軸259を載せて支持する軸受け部243bと、フランジ部244bと、下方に延設された案内棒部245bとを一体的に有する。
【0033】
図13に示すように、軸受け部243a及び案内棒部245aは、嵌着部240aの縦長の保持孔241xに高さ方向に昇降可能に案内されており、一体構成便座22を上下方向に案内する案内要素として機能することができる。同様に、軸受け部243b及び案内棒部245bは、嵌着部240bの縦長の保持孔241xに高さ方向に昇降可能に案内されており、一体構成便座22を上下方向に案内する案内要素として機能することができる。
【0034】
図14に示すように、便器1の取付部11には、一体構成便座22の取付け用の固定部31が着脱可能に固定されている。固定部31は、締結要素としての便器固定ボルト315a,315bにより便器1の取付部11に固定された固定ベース311と、固定ベース311の両側において上向きに突出する断面でH形状の角筒形状をなす被差込部311a、311bとを有する。被差込部311a、311bは角筒空間状の被差込空間311xを有する。固定ベース311には便座部211の前後方向に延設された一対のボルト溝314a,314bが形成されている。図14に示すように、便器固定ボルト315a,315bの頭部をボルト溝314a,314bに嵌合した状態で、ゴムワッシヤ316aを介して便器1の取付部11に固定部31は着脱可能に固定されている。
【0035】
さて一体構成便座22を便器1に着脱可能に据え付けるときについて説明を加える。先ず、図14に示すように、一体構成便座22を固定部31の上方に配置する。その後、一体構成便座22を矢印DA方向に下降させる。この結果、一体構成便座22の嵌着部240aの角筒形状の差込部241cを、固定部31の角筒形状の被差込部311aに着脱可能に差し込む。同様に、一体構成便座22の嵌着部240bの角筒形状の差込部241dを、固定部31の角筒形状の被差込部311bに着脱可能に差し込む。角筒形状同士の差込みであるため、一体構成便座22を位置決めする位置決め精度は確保される。これにより一体構成便座22が位置決めされた状態で便器1に着脱可能に保持される。故に、嵌着部240a,240bは一体構成便座22を便器1に据え付ける際に、一体構成便座22を位置決めする位置決め要素として機能できる。なお、一体構成便座22を固定部31に係脱可能に係止させる係止解除選択機構が設けられているときには、係止解除選択機構を係止形態とすることが好ましい。本実施例によれば、前記したように案内棒部245a,245bとフランジ部244a,244bによって出力軸252、支持軸259等を所定の高さ位置にフロート状態に保持できるよう構成されている。また図13に示すように、出力軸252、支持軸259の上側表面と固定保持部241a,241bの上端との間には、軸スキマ247a,247bが設けられている。軸スキマ247a,247bにより、出力軸252および支持軸259のフロート変位性は確保されている。
【0036】
清掃等を行なうときには、便器1に便器固定ボルト315a,315bを締結したままの状態で、一体構成便座22を上方(図14に示す矢印DB方向)に持ち上げる。これにより一体構成便座22の嵌着部240aの角筒形状の差込部241cを、固定部31の角筒形状の被差込部311aから離脱させる。同様に、一体構成便座22の嵌着部240bの角筒形状の差込部241dを固定部31の角筒形状の被差込部311bから離脱させる。これにより一体構成便座22を持ち上げて便器1から容易に取り外すことができる。この場合、一体構成便座22を固定部31に係脱可能に係止させる係止解除選択機構が設けられているときには、係止解除選択機構を解除にした状態で、一体構成便座22を持ち上げることが好ましい。一体構成便座22を便器1から取り外さないときでも、一体構成便座22を矢印DB方向にある程度の高さまで持ち上げれば、固定部31と一体構成便座22との間に、清掃用の隙間を形成できる。同様に、便器1と一体構成便座22との間に、清掃用の隙間を形成できる。これらの隙間を介して使用者は清掃等を行なうことができる。なお、必要に応じて、便器1から便器固定ボルト315a,315bを外すことができる。
【0037】
ところで、前述したように便座開閉駆動装置251(第1の駆動装置)は一体構成便座22内に固定されており、一体構成便座22を回動開閉のために駆動させるものであり、モータ類で形成されている。図14に示すように、便座開閉駆動装置251は一体構成便座22の下方部材221Lに設けられた取付台座228に固定ネジ254xで押え板253を介して一体構成便座22の内部に固定されている。便座251の出力軸252は、一体構成便座22と一体的に回動できるように一体構成便座22に対して回り止めされている。具体的には、図13に示すように、出力軸252には平行面取り状のDカット部252d(2箇所)が形成されている。Dカット部252dは固定保持部241aの縦長の保持孔241xに嵌合されて、回り止めされている。
【0038】
従って図13から理解できるように、便座開閉駆動装置251がオン駆動するとき、出力軸252がこれの軸心の回りで回動する。このとき回り止めされている出力軸252はその位置に静止した状態で、つまり、便器1に対して非回転状態であり、便座開閉駆動装置251が一体構成便座22と共に回動することになる。このように一体構成便座22が回動開閉するときには、図13に示すように、一体構成便座22の後端部22rは、後端部22rの下側の空間22kに向けて出力軸252の軸心の回りで矢印Y5方向に回動する。出力軸252及び支持軸259は同一軸心上に配置されており、一体構成便座22は出力軸252及び支持軸259を中心として回動開閉する。但し、嵌着部240bについては、出力軸ではないため支持軸259は固定保持部241bに対して回動可能とされている。
【0039】
本実施例によれば、図15に示すように、便座部221を構成する上方部材221Uと、本体部222を構成する上方部材222Uとの間には、遮熱板227が形成されている。また図1に示すように遮熱板227は便座部221の幅方向に沿っているとともに、便座部221の上方部材221Uには電気式の便座ヒータ2h(図1参照)が配置されている。図10に示すように、上方部材221Uの裏面側に遮熱板227の上端部227uが密着されている。また、遮熱板227の下端部227dは、便座部221の下方部材221Lの後端上面部221mに係合する。なお、遮熱板227には、電気配線等を通す為に必要な最小限の孔またはスキマが必要に応じて形成されていても良い。
【0040】
前述したように、一体構成便座22は、便座部221及び本体部222を連続させた筐体を構成しており、一体構成便座22の内部空間は比較的大きな連続するものとなり易い。このため便座部221の暖房便座用の熱が内部空間を経て本体部222に移動する傾向があり、便座ヒータ2hの消費電力の低減には限界がある。更に本体部222内の温度上昇も誘発するため、本体部222に収容されている機能部品の信頼性を高めるには改善の余地がある。
【0041】
この点本実施例によれば、図10に示すように、一体構成便座22の便座部221と本体部222との間には、遮熱要素としての遮熱板227が隔壁状に設けられている。遮熱板227は、便座部221の内部空間と本体部222の内部空間との非連通性を高める。具体的には、便座部221の内部空間と本体部222の内部空間との連通を遮断させる。このため便座部221の便座ヒータ2hが加熱作動しているとき、暖められた便座部221の熱が内部空間等を介して本体部222に伝達されることは、遮熱板227により抑制される。従って、本体部222内の温度上昇が抑制され、本体部222内に収容されている各種機能部品(例えば電気制御基板294等の電子部品および電気部品、便蓋開閉駆動装置255、便座開閉駆動装置251、乾燥装置271等)の信頼性の向上、耐久性の向上、長寿命化に貢献できる。また暖房便座としての便座部221の熱が本体部222に伝達されることは遮熱板227により抑制されているため、便座部221の温度を確保するのにも有利であり、省エネルギ、節電に貢献でき、便座ヒータ2hの加熱能力の低下にも貢献できる。なお遮熱板227は一体構成便座22に一体成形で形成しても良いし、後付けで一体構成便座22に取り付けても良い。
【0042】
更に、図1に示すように、遮熱板227は一体構成便座22の便座部221と本体部222との間に使用者の尻部の輪郭にほぼ沿うように設けられている。このため、一体構成便座22の便座部221に使用者の尻部が着座したとき、遮熱板227は尻部付近に位置することになり、暖房便座である便座部221のうち尻部付近の領域の温度を高めに維持するのに貢献でき、冬期等における使用に適する。更に図10に示すように、便座部221と本体部222との間には、遮熱要素としての空気断熱層227aも形成されているため、便座部221の熱が本体部222に伝達されることは一層抑制される。なお、空気断熱層227aは空気で形成するばかりか、遮熱性が高いゲル状物質を空気断熱層227aに配置しても良い。更に本実施例によれば、図10に示すように、便座部221の上方部材221Uの裏面側に遮熱板227の上端部227uは密着されている。このため便座部221の内部空間と本体部222の内部空間とは空気遮断性が高められている。よって、便座部221の内部空間と本体部222の内部空間との間における空気の出入りが抑制される。このため、便座部221の暖房便座用の便座ヒータ2hで加熱された空気による対流が抑制される。これにより、便座部221の内部で最も温度が高く空気対流の起こり易い箇所の熱移動を防ぐことができる。また、同じく遮熱板227の下端部227dも、本体部222の便座部221の下方部材221Lの後端部と係合されているので、この意味においても、便座部221の内部空間と本体部222の内部空間とは遮断性が高められている。よって便座部221の内部空間と本体部222の内部空間との間における空気の出入りが抑制される。これにより便座ヒータ2hの熱を便座部221の加熱に効率よく使用することができ、便座ヒータ2hの省エネルギ化を図りつつ、暖房便座としての能力を維持することができる。
【0043】
便器1は工業的に生産される陶器製であり、便器1の取付部11の取付面は、厳密な意味では歪み等を有することがある。便器1が焼結工程を経るときには、なおさらである。従って、一体構成便座22の本体部222を便器1の取付部11にリジット(高剛性状態)に固定する場合には、出力軸252及び支持軸259等の支持もリジット(高剛性状態)になり易い。この場合、使用者が一体構成便座22の便座部221に着座すると、使用者の体重が一体構成便座22の便座部221に負荷されるとき、便器1の取付部11の取付面の歪等の影響で、ゴム脚223が便器1に部分的に着地せず、一体構成便座22に無用な応力が作用するおそれがある。この点本実施例によれば、一体構成便座22を便器1に搭載している状態では、前述したように付勢部材である弾性体246a,246bの付勢力で付勢されている軸受け部243a,243bによって、出力軸252及び支持軸259(一体構成便座2の回動中心軸に相当)が例えば0.1〜7ミリメートル程度浮遊してフロート状態とされている。これにより一体構成便座22の底部223bはΔt相当(図12参照)ぶん便器1から上方に浮遊している。即ち、一体構成便座22は微小量沈下可能なフロート状態で便器1に保持されている。そして、一体構成便座22の便座部221に使用者が着座すると、弾性体246a,246bの付勢力に抗して出力軸252及び支持軸259等が着座に伴い降下する。これにより一体構成便座22の裏面のゴム脚223が便器1に確実に接触することができる。このため出力軸252及び支持軸259等には大きなセン断力等の応力が作用することが抑制される。更に便座開閉駆動装置251に偏加重が加わることも抑制される。
【0044】
また逆に便器1の取付部11の取付面に凸部が存在しており、一体構成便座22の便座部221が持ち上がろうとする場合においても、フロート状態とされている出力軸252または支持軸259は上方に移動することができるので、前述と同様に大きな荷重が出力軸252または支持軸259や便座開閉駆動装置251に加わることが抑制される。なお、軸受け部243a,243bを浮遊させる付勢力を発揮する弾性体246a,246bを設けることなく、一体構成便座22が自重で垂下している構造のものでも、出力軸252または支持軸259等が適宜上下移動できる隙間を形成するものであれは良い。
【0045】
本実施例によれば、人体局部洗浄装置2の洗浄機能を使用するとき、図10に示すように、洗浄ノズル261の伸縮ノズル262が矢印K1方向に伸張し、伸縮ノズル262から洗浄水が人体の局部に向けて噴出される。洗浄が終了すると、リターンバネ等のリターン手段により洗浄ノズル261の伸縮ノズル262が矢印K2方向に退避する。洗浄の際に、洗浄ノズル261からドレイン水が落下することがある。このようなときであっても、そのドレイン水はドレイン水溜り235に集約される。また一体構成便座22が閉鎖されている状態のときには、図10に示すように、ドレイン水溜り235のドレイン水は、開放状態の第1シャッター232aと開放状態の第2シャッター232bとを通じて便器1内に排出されるようになっている。一体構成便座22が閉鎖されるとき、第1シャッター232aと第2シャッター232bは、図示しない錘のモーメント作用、または、重力作用によって自動的に開放され、ドレイン水溜り235のドレイン水を便器1内に排出できるようにされている。一体構成便座22が矢印Y1方向に回動開放されるとき、図11に示すように、第1シャッター232aと第2シャッター232bは図示しない錘のモーメント作用または重力作用によって自動的に閉鎖され、ドレイン水溜り235のドレイン水が一体構成便座22の内において飛散することが抑制されている。
【0046】
しかしながらドレイン水溜り235に集約されたドレイン水は表面張力や汚れ付着によって完全には排水されず残るおそれもある。このような場合、一体構成便座22を開放状態として起立させたとしても、囲い板236で内部に残留水が飛散しないようになっている。殊に、一体構成便座22を最大開放状態として起立させたとしても、囲い板236で内部に残留水が飛散しないようになっている。故に、一体構成便座22の内部の電気部品や電子部品等の機能部品に水が付着したりするおそれが抑制される。よって電気部品や電子部品等の機能部品に対する信頼性の高い人体局部洗浄装置を提供することができる。
【0047】
便蓋21を矢印Y1方向に回動開放させる場合には、便蓋開閉駆動装置255の便蓋出力軸256を開方向に回動させ、便蓋出力軸256が所定位置になったときに便蓋開閉駆動装置255を停止させる。このとき図10に示すように、固定部31の係止部312の背面に形成された係止凹部312aと便蓋突起213dとが係脱可能に係合し、両者は結合される。これにより便蓋21の起立状態が維持される。なお、便蓋21を開閉させるための便蓋開閉駆動装置255、一体構成便座22を開閉させるための便座開閉駆動装置251は、共に一体構成便座22の内部に固定されている。
【0048】
図16〜図18について説明を加える。図16は、便蓋21及び一体構成便座22が共に閉鎖されている状態を示す。一体構成便座22は閉鎖されているため、一体構成便座22の内部に設けられている便蓋開閉駆動装置255及び便座開閉駆動装置251は、共に正規の取付け位置とされており、便蓋開閉駆動装置255の面255r及び便座開閉駆動装置251の面251rは、横方向に指向している。図17は、一体構成便座22を閉鎖状態に維持しつつ、便蓋21を上方(矢印Y1方向)に回動させて開放(起立)させている状態を示す。図17に示す形態によれば、一体構成便座22が閉鎖されているため、一体構成便座22の内部に設けられている便蓋開閉駆動装置255及び便座開閉駆動装置251は共に正規の取付け位置のままであり、便蓋開閉駆動装置255の面255r及び便座開閉駆動装置251の面251rは横方向に指向している。図18は、便蓋21とともに一体構成便座22が上方(矢印Y1方向)に回動されて開放されている状態を示す。図18に示す形態によれば、便座開閉駆動装置251の駆動により一体構成便座22がほぼ90〜110度回動して起立状態(開放状態)とされているため、一体構成便座22の内部に配置されている便座開閉駆動装置251ばかりか、便蓋開閉駆動装置255も一体構成便座22の矢印Y1方向への回動と共に回動し、便蓋開閉駆動装置255の向きが変更(ほぼ90〜110度)されている。
【0049】
本実施例によれば、一体構成便座22の回転中心となる軸、即ち、出力軸252および支持軸259、便蓋21の回転中心となる枢支軸部229および便蓋出力軸256は、同一軸心上に、あるいは、実質的に同一軸心上に設定されている。故に、一体構成便座22および便蓋21の双方は同一軸心上に、あるいは、実質的に同一の軸心の回りを回動するように設定されている。このため一体構成便座22が回動開閉するときであっても、便蓋21の回動軌跡と一体構成便座2の回動軌跡とを同じような旋回円弧とすることができ、旋回スペースの小型化に有利であり、狭いトイレ室に据え付けるのに有利となる、更に、一体構成便座22および便蓋21は同一軸心上に、あるいは、実質的に同一の軸心の回りを回動するように設定されているため、一体構成便座22の回動開閉時に便蓋21に過剰な歪みがかかることが防止されている。
【0050】
図16に示す便蓋21及び一体構成便座22が共に閉鎖されている状態から、便蓋開閉駆動装置255を開放方向にオン駆動すると、図17に示すように便蓋21を上方(矢印Y1方向)に回動させて開放させることができる。この状態とすれば、清掃を容易に行うことができる。更に便座開閉駆動装置251を開放方向にオン駆動させることにより、図18に示すように、一体構成便座22を約90〜110度程度上方に回動させて開放状態(起立状態)にして清掃を行うことができる。
【0051】
ところで、図17及び図18に示すように、一体構成便座22を上方(矢印Y1方向)に回動開放させると、一体構成便座22の内部に保持されている便蓋開閉駆動装置255も便蓋出力軸256と共に同方向に同時に同角度回動してしまうことになる。便蓋開閉駆動装置255が一体構成便座22に配設されているためである。この場合、起立位置にある便蓋21が更に矢印Y3方向(図18参照)に過剰に開放することになりかねない。従って便蓋21を上方に回動開放(起立)させた状態で、閉鎖している一体構成便座22を回動開放させるときには、便蓋開閉駆動装置255がオフであるとき、便蓋21に固定された便蓋出力軸256は便蓋開閉駆動装置255に対して自由に回転できるように構成されている。このとき便蓋21が一体構成便座22の開放方向の動作に伴って更に開方向(図18に示す矢印Y3方向)に過剰に開放されることが防止されている。この場合、図10に示したように、固定部31の係止部312の背面に形成された係止凹部312aと便蓋突起213dとが係脱可能に係合される。これにより一体構成便座22の起立状態が維持される。従って、係止凹部312a及び便蓋突起213dは、機械的構造をもつ便蓋開放維持手段として機能することができる。
【0052】
次に、便蓋21及び一体構成便座22を起立状態に開放させたまま(図18参照)、一体構成便座22のみを矢印Y2方向に回動閉鎖させようとするときには、便座開閉駆動装置251を閉鎖方向にオン駆動させることにより、一体構成便座22を下方向つまり矢印Y2方向に回動閉鎖させる。この場合にも一体構成便座22の回動閉鎖に伴い、便蓋開閉駆動装置255がオフであるとき、便蓋開閉駆動装置255と便蓋出力軸256とは自由に回動するようになるので、係止部312の背面に形成された係止凹部312aと便蓋突起213dとの係合状態が良好に継続される。従って、便座開閉駆動装置251を閉鎖方向に駆動させたとしても、一体構成便座22の起立状態が維持される。
【0053】
起立している便蓋21を閉鎖させるときには、便蓋開閉駆動装置255が閉鎖方向にオン駆動し、一体構成便座22の便蓋出力軸256が閉鎖方向に駆動する。これにより前述の係止凹部312aと便蓋突起213dとの係合が相互の弾性変形で強制的に外れ、便蓋21を矢印Y2方向に回動閉鎖させることができる。
【実施例2】
【0054】
以下、本発明の実施例2について説明する。実施例2は基本的には実施例1と同様の構成であり、同様の作用効果を有する。実施例2は実施例1に係る図1〜図18を準用する。本実施例によれば、便蓋21を開放状態(起立状態)に維持させるために、マイコンのソフトウェア処理による便蓋開放維持手段が設けられている。これについて説明を加える。図18に示すように、便蓋21の現在の開閉状態を検出する便蓋開閉センサ21sは一体構成便座22付近に設けられている。便蓋開閉センサ21sからの信号は制御装置500に入力される。一体構成便座22の現在の開閉状態を検出する便座開閉センサ22sは一体構成便座22付近に設けられている。便座開閉センサ22sからの信号は制御装置500に入力される。制御装置500はマイコン、記憶媒体、インターフェース回路等を有しており、前記した一体構成便座22の本体部222内に装備される電気制御基板294に搭載されている。
【0055】
まず、便蓋21及び一体構成便座22の双方が開放されて起立されている状態(図18参照)において、便座開閉駆動装置251(第1の駆動装置)をオン駆動させて一体構成便座22を閉鎖方向(矢印Y2方向)に回動させるときについて説明する。この場合、一体構成便座22に便蓋開閉駆動装置255(第2の駆動装置)が固定されているため、一体構成便座22が閉鎖方向(矢印Y2方向)に回動すると、一体構成便座22と共に便蓋開閉駆動装置255も同じ回動角度相当、同じ方向に追従して回動してしまうおそれがある。この結果、本来的には、便蓋21を起立状態に維持させておきたいにも拘わらず、一体構成便座22が閉鎖方向(矢印Y2方向)に回動すると、便蓋21を閉鎖作動させていないにもかかわらず、便蓋21が閉鎖する方向(矢印Y2方向)に追従して回動してしまう不具合が生じる。そこで本実施例によれば、この場合、マイコンのソフトウェア処理で実行する便蓋開放維持手段は、便蓋21を開放させる方向(即ち、一体構成便座22の回動方向と逆方向)に回動させる指令を便蓋開閉駆動装置255に出力する。これにより便蓋開閉駆動装置255の便蓋出力軸256が逆方向に回動する。故に、便蓋21について、閉鎖方向の動作と開放方向の動作とを実質的に相殺できる。よって、便蓋21を起立状態(開放状態)に維持させることができ、使用者が一体構成便座22に着座することができる。
【0056】
また、便蓋21が起立状態(開放状態)にされていると共に一体構成便座22が閉鎖されている状態(図17参照)において、便座開閉駆動装置251(第1の駆動装置)の駆動により一体構成便座22を閉鎖状態から開放状態に矢印Y1方向に回動させるときについて説明する。この場合、前述のように一体構成便座22に便蓋開閉駆動装置255(第2の駆動装置)が固定されているため、一体構成便座22の回動と共に便蓋開閉駆動装置255も同じ回動角度相当、同じ方向に追従して回動してしまうおそれがある。この結果、本来的には、便蓋21を起立状態に維持させておきたいにもかかわらず、便蓋21が過剰開放する方向(図17に示す矢印Y3方向)に追従回動してしまうおそれがある。そこでマイコンのソフトウェア処理による便蓋開放維持手段は、便蓋21を閉鎖させる方向に回動させる指令を便蓋開閉駆動装置255に出力する。これにより便蓋21について、開放方向の動作と閉鎖方向の動作とを実質的に相殺でき、便蓋21を起立状態に維持させることができる。
【0057】
上記したソフトウェア処理による便蓋開放維持手段によれば、便蓋21を起立状態に維持するべく、便蓋開閉駆動装置255の駆動方向と便座開閉駆動装置251の駆動方向とを逆にできる。つまり、便蓋21が起立している状態で、便座開閉駆動装置251を便座開放方向に駆動させるときには、便蓋開閉駆動装置255を逆方向つまり便蓋閉鎖方向に駆動させる。あるいは、便蓋21が起立している状態で、便座開閉駆動装置251を便座閉鎖方向に駆動させるときには、便蓋開閉駆動装置255を逆方向つまり便蓋開放方向に駆動させる。この場合、便座の回動角度と便蓋の回動角度とを対応させることが好ましい。この場合、便座の回動角度背をθ1とし、便蓋の回動角度をθ2とすると、θ2/θ1=0.8〜1.2、または、0.9〜1.1、または1を例示できる。また必要に応じて便蓋開閉駆動装置255の駆動開始タイミングと便座開閉駆動装置251の駆動開始タイミングとを対応させることが好ましい。対応とは、タイミングが合致すること、または、タイミングが支障のない時間遅れを伴って作動することをいう。また必要に応じて、便蓋開閉駆動装置255の駆動終了タイミングと便座開閉駆動装置251の駆動終了タイミングとを対応させることが好ましい。
【0058】
上記したマイコンによるソフトウェア処理による便蓋開放維持手段について、図19を参照して説明を加える。図19に示すフローチャートはあくまでも一例であり、これに限定されるものではない。便蓋21の現在の開閉状態に関する便蓋開閉センサ21sの信号、一体構成便座22の現在の開閉状態に関する便座開閉センサ22sの信号を読み込む(ステップS102)。そして便蓋21が開放状態であるか否かを判定する(ステップS104)。便蓋21が閉鎖されていれば、メインルーチンに戻る。更に一体構成便座22が開放状態であるか否かを判定する(ステップS106)。
【0059】
便蓋21及び一体構成便座22の双方が開放されて起立されているとき(図18参照)には、制御則1で待機し、一体構成便座22の開閉動作の読み込みを継続する(ステップS110)。この制御則1において、一体構成便座22を閉鎖させる動作が行われていると判定されると(ステップS112)、便蓋21を開放させる方向に回動させる指令を便蓋開閉駆動装置255に出力する(ステップS114)。これにより便蓋開閉駆動装置255の駆動に起因する便蓋21の開放方向の動作と、一体構成便座22の閉鎖に起因する便蓋21の閉鎖方向の動作とが実質的に相殺される。よって便蓋21は起立状態に維持されたままとなる。制御則1がエンドであれば(ステップS116)、メインルーチンにリターンする。エンドでなければ、便蓋21を開放させる方向に回動させる指令を維持する。
【0060】
これに対して、便蓋21が開放されていると共に一体構成便座22が閉鎖されているときには(図17参照)、制御則2で待機し、一体構成便座22の開閉動作を読み込みを継続する(ステップS150)。この制御則2において、一体構成便座22を開放させる動作が行われていると判定されるときには(ステップS152)、便蓋21を閉鎖させる方向に回動させる指令を便蓋開閉駆動装置255に出力する(ステップS154)。これにより便蓋開閉駆動装置255の駆動に起因する便蓋21の閉鎖方向の動作と、一体構成便座22の開放に起因する便蓋21の開放方向の動作とが実質的に相殺される。よって便蓋21は起立状態に維持されたままとなる。制御則2がエンドであれば(ステップS116)、メインルーチンにリターンする。エンドでなければ、便蓋21を閉鎖させる方向に回動させる指令を維持する。
【実施例3】
【0061】
図20及び図21は実施例3を示す。本発明の実施例3は実施例2と基本的には同様の構成であり、同様の作用効果を有する。共通する部位には共通の符号を付する。以下、実施例1と相違する部分を中心として説明する。図20に示すように、固定部31の固定ベース311の左右の両側にはスライドガイド部319a,319bが形成されている。スライドガイド部319a,319bは一体構成便座22の前後方向(図1に示す矢印X1,X2方向)に沿って延設されている。図示しない係止着脱機構を操作することによって、これらのスライドガイド部319a,319bを移動させることが可能とされている。
【0062】
一体構成便座22に形成されている嵌着部240aはスライド部401を有する。嵌着部240bはスライド部402を有する。スライド部401,402は、一体構成便座22の前後方向(図1に示す矢印X1,X2方向)に沿って延設されている。一体構成便座22を固定部31に取付けるときには、一体構成便座22を便器1の前方に位置させた状態で、一体構成便座22を後方(矢印X2方向)に向けて水平方向に沿って移動させる。このとき、一体構成便座22を後方(矢印X2方向)押し込むことにより、一体構成便座22のスライド部401,402を固定ベース311のスライドガイド部319a,319bに沿ってスライド移動させる。一体構成便座22をある位置までスライド移動させると、一体構成便座22のスライド部401,402を固定ベース311に係脱可能に係合させる係止解除選択機構が設けられていることが好ましい。
【0063】
清掃等の際に一体構成便座22を便器1に対して移動させたり取り外したりするときには、一体構成便座22を逆方向つまり前方(矢印X1方向)に向けて水平方向に沿って移動させる。このようにすれば、便器1の他に一体構成便座22の裏面も容易に清掃できる。
【0064】
本実施例においても、便蓋21及び一体構成便座22の双方が開放されている状態で、一体構成便座22を閉鎖方向に回動させるにあたり、便蓋21を開放させる方向に回動させる指令を便蓋開閉駆動装置255に出力し、前述したように開放方向の動作と閉鎖方向の動作とを相殺させる。また便蓋21が開放状態にされた状態で一体構成便座22を閉鎖状態から開放状態に回動させるにあたり、便蓋21を閉鎖させる方向に回動させる指令を便蓋開閉駆動装置255に出力し、前述したように開放方向の動作と閉鎖方向の動作とを相殺させる。
【0065】
(他の例)
上記した実施例1によれば、温水タンク293、乾燥装置271が設けられているが、これらは廃止されていても良い。温水タンク293を廃止するときには、短時間で温水を生成する加熱部を設けることが好ましい。その他、本発明は上記し且つ図面に示した実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は人体の局部を洗浄する機能を有する人体局部洗浄装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】人体局部洗浄装置を腰掛け式便器に搭載した状態を示す平面図である。
【図2】人体局部洗浄装置を腰掛け式便器に搭載した状態を示す側面図である。
【図3】人体局部洗浄装置の平面図である。
【図4】人体局部洗浄装置の側面図である。
【図5】人体局部洗浄装置の裏面図である。
【図6】人体局部洗浄装置の使用状態を示し、一体構成便座および便蓋が閉鎖している通常の閉鎖状態を示す側面図である。
【図7】便蓋を回動開放させて起立させると共に一体構成便座を閉鎖させている状態を示す側面図である。
【図8】便蓋及び一体構成便座を開放させている状態を示す側面図である。
【図9】人体局部洗浄装置の本体部を示す部分平面図である。
【図10】図9のB−B線に沿った断面を示し、便蓋が開放されていると共に一体構成便座が閉鎖されている状態を示す構成図である。
【図11】図9のB−B線に沿った断面を示し、便蓋及び一体構成便座が開放されている状態を示す構成図である。
【図12】図9のC−C線に沿った一体構成便座の内部構造を示す構成図である。
【図13】図12におけるD1−D1線、D2−D2線に沿った構造を示す構成図である。
【図14】便器に固定した固定部に一体構成便座を上方から取り付ける直前の状態を示す構成図である。
【図15】一体構成便座の筐体を分解した状態を示す斜視図である。
【図16】便蓋及び便座が閉鎖されている状態を示す要部の側面図である。
【図17】便蓋が開放されていると共に一体構成便座が閉鎖されている状態を示す要部の側面図である。
【図18】便蓋及び一体構成便座が開放されて起立している状態を示す要部の側面図である。
【図19】実施例2に係り、マイコンが実行する処理のフローチャートの一例である。
【図20】実施例3に係り、一体構成便座の内部構造を示す構成図である。
【図21】実施例3に係り、図20のD3−D3線、D4−D4線に沿った構造を示す構成図である。
【符号の説明】
【0068】
図中、1は便器、11は取付部、2は人体局部洗浄装置、21は便蓋、22は一体構成便座、31は固定部、221は便座部、222は本体部、227は遮熱板、261は洗浄ノズル(洗浄部)、255は便蓋開閉駆動装置(第2の駆動装置)、251は便座開閉駆動装置(第1の駆動装置)を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腰掛け式の便器に装備される人体局部洗浄装置であって、
前記便器に対して回動可能に設けられ、使用者が着座する便座部と機能部品を収容する本体部とが一体的に構成された一体構成便座を具備しており、
前記一体構成便座は第1の駆動装置によって回動開閉可能とされていることを特徴とする人体局部洗浄装置。
【請求項2】
腰掛け式の便器に装備される人体局部洗浄装置であって、
前記便器に対して回動可能に設けられ、使用者が着座する便座部と機能部品を収容する本体部とが一体的に構成された一体構成便座と、
前記一体構成便座の後端部に回動開閉に設けられた便蓋とを具備しており、
前記一体構成便座は第1の駆動装置によって回動開閉可能とされており、
前記便蓋は、前記一体構成便座の内部に配設された第2の駆動装置によって回動開閉可能とされていることを特徴とする人体局部洗浄装置。
【請求項3】
請求項2において、前記便蓋及び前記一体構成便座の双方が開放されている状態で、前記一体構成便座を閉鎖方向に回動させるにあたり、前記便蓋を開放状態に維持させる便蓋開放維持手段が設けられていることを特徴とする人体局部洗浄装置。
【請求項4】
請求項2において、前記便蓋が開放状態にされた状態で前記一体構成便座を閉鎖状態から開放状態に回動させるにあたり、前記便蓋を開放状態に維持する便蓋開放維持手段が設けられていることを特徴とする人体局部洗浄装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4において、前記便蓋開放維持手段は、機械的係合によりあるいはソフトウェア処理により前記便蓋の開放状態を維持させることを特徴とする人体局部洗浄装置。
【請求項6】
請求項3において、前記便蓋及び前記一体構成便座の双方が開放されている状態で、前記一体構成便座を閉鎖方向に回動させるにあたり、前記便蓋開放維持手段は、前記便蓋を開放させる方向に回動させる指令を第2の駆動装置に出力し、前記一体構成便座の閉鎖方向への回動に追従しようとする前記便蓋の動作と、前記便蓋に関する開放方向の動作とを相殺させることを特徴とする人体局部洗浄装置。
【請求項7】
請求項4において、前記便蓋が開放状態にされた状態で前記一体構成便座を閉鎖状態から開放状態に回動させるにあたり、前記便蓋開放維持手段は、前記便蓋を閉鎖させる方向に回動させる指令を第2の駆動装置に出力し、前記便蓋に関する閉鎖方向の動作と、前記便蓋に関する開放方向の動作とを相殺させることを特徴とする人体局部洗浄装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のうちのいずれか一項において、前記一体構成便座を回動可能に保持すると共に便器に固定される固定部が設けられており、前記便蓋開放維持手段は、前記一体構成便座の前記本体部に形成されている凹及び凸のうちの少なくとも一方と、前記便蓋に形成されている凸及び凹のうちの少なくとも一方とを係合可能に係合させる構成であることを特徴とする人体局部洗浄装置。
【請求項1】
腰掛け式の便器に装備される人体局部洗浄装置であって、
前記便器に対して回動可能に設けられ、使用者が着座する便座部と機能部品を収容する本体部とが一体的に構成された一体構成便座を具備しており、
前記一体構成便座は第1の駆動装置によって回動開閉可能とされていることを特徴とする人体局部洗浄装置。
【請求項2】
腰掛け式の便器に装備される人体局部洗浄装置であって、
前記便器に対して回動可能に設けられ、使用者が着座する便座部と機能部品を収容する本体部とが一体的に構成された一体構成便座と、
前記一体構成便座の後端部に回動開閉に設けられた便蓋とを具備しており、
前記一体構成便座は第1の駆動装置によって回動開閉可能とされており、
前記便蓋は、前記一体構成便座の内部に配設された第2の駆動装置によって回動開閉可能とされていることを特徴とする人体局部洗浄装置。
【請求項3】
請求項2において、前記便蓋及び前記一体構成便座の双方が開放されている状態で、前記一体構成便座を閉鎖方向に回動させるにあたり、前記便蓋を開放状態に維持させる便蓋開放維持手段が設けられていることを特徴とする人体局部洗浄装置。
【請求項4】
請求項2において、前記便蓋が開放状態にされた状態で前記一体構成便座を閉鎖状態から開放状態に回動させるにあたり、前記便蓋を開放状態に維持する便蓋開放維持手段が設けられていることを特徴とする人体局部洗浄装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4において、前記便蓋開放維持手段は、機械的係合によりあるいはソフトウェア処理により前記便蓋の開放状態を維持させることを特徴とする人体局部洗浄装置。
【請求項6】
請求項3において、前記便蓋及び前記一体構成便座の双方が開放されている状態で、前記一体構成便座を閉鎖方向に回動させるにあたり、前記便蓋開放維持手段は、前記便蓋を開放させる方向に回動させる指令を第2の駆動装置に出力し、前記一体構成便座の閉鎖方向への回動に追従しようとする前記便蓋の動作と、前記便蓋に関する開放方向の動作とを相殺させることを特徴とする人体局部洗浄装置。
【請求項7】
請求項4において、前記便蓋が開放状態にされた状態で前記一体構成便座を閉鎖状態から開放状態に回動させるにあたり、前記便蓋開放維持手段は、前記便蓋を閉鎖させる方向に回動させる指令を第2の駆動装置に出力し、前記便蓋に関する閉鎖方向の動作と、前記便蓋に関する開放方向の動作とを相殺させることを特徴とする人体局部洗浄装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のうちのいずれか一項において、前記一体構成便座を回動可能に保持すると共に便器に固定される固定部が設けられており、前記便蓋開放維持手段は、前記一体構成便座の前記本体部に形成されている凹及び凸のうちの少なくとも一方と、前記便蓋に形成されている凸及び凹のうちの少なくとも一方とを係合可能に係合させる構成であることを特徴とする人体局部洗浄装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2006−37408(P2006−37408A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−216276(P2004−216276)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
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