説明

人体用エアゾール製品

【課題】エアゾール組成物中の液化ガスの配合量を減らしても、ソフトな噴射状態が得られ、噴射面への付着性が高く、噴射途中での噴射量の変動を抑え、噴射面での液垂れを防止することができ、アフタードロー現象を防ぐことができるエアゾール製品を提供する。
【解決手段】本発明は、原液と噴射剤とからなり、該噴射剤が液化ガスと圧縮ガスとを含むエアゾール組成物と、耐圧容器にエアゾールバルブを固着し、内部に当該エアゾール組成物が充填されたエアゾール容器と、エアゾールバルブに装着された噴射部材とを有する。さらに、前記エアゾール組成物が液化ガスを10〜40重量%含有し、圧縮ガスによって0.4〜0.7MPa(25℃)に加圧されており、前記エアゾールバルブの導入孔から噴射部材の噴射孔までの噴射通路に多孔質部材を設けており、エアゾールバルブを開放したときに多孔質部材を通過した液化ガスの少なくとも一部が噴射通路内で気化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体用エアゾール製品に関する。さらに詳しくは、原液、液化ガス、圧縮ガスを含むエアゾール組成物と、耐圧容器にエアゾールバルブを固着し、内部に当該エアゾール組成物が充填されたエアゾール容器と、エアゾールバルブに装着された噴射部材とを有する人体用エアゾール製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エアゾール製品は、原液と噴射剤とからなるエアゾール組成物を、有底筒状の耐圧容器の開口部にエアゾールバルブ(以下、バルブ)を固着したエアゾール容器に充填し、使用者がバルブに装着した噴射部材を操作することでエアゾール組成物が大気中に放出され、噴射剤の蒸気圧や液体から気体に変化する状態変化などを利用して霧や泡などの形態で吐出するものであり、化粧品や医薬品などの人体用製品、殺虫剤や消臭剤などの家庭用製品、工業用製品、などに幅広く使用されている。
【0003】
現在、噴射剤としては液化石油ガスやジメチルエーテルなどの液化ガス、窒素ガスや炭酸ガスなどの圧縮ガスが用いられている。液化ガスは、エアゾール容器内では蒸気圧を有する液体であるが、大気中に放出されると瞬時に気化してその容積が膨張するものである。噴射剤のこのような特徴を利用して、微細な霧を得る、霧が広範囲に拡がって均一に塗布できる、気化熱による優れた冷却感が得られる、などの優れた性能を得ることができる。
【0004】
また、エアゾール容器を構成するバルブには、ハウジング内部とエアゾール容器内の気相部とを連通する連通孔であるベーパータップ孔がバルブのハウジングの側面に設けられ、噴射時に、ハウジング内に流入する液体のエアゾール組成物中に液化ガスのガスを混合する。これにより、噴射物の比重が小さくなり噴射量が抑制されて液垂れしにくくなる、噴射の勢いが弱くなってソフトに噴射できる、などの効果が得られる。
【0005】
特許文献1には、直径が0.2〜0.3mmである半径方向排出路(ステム孔)と同じ直径の絞り通路を設けた絞り部材をステムに挿入し、絞り通路と噴射孔の間の空間で液化ガスを気化させるエアゾール容器が開示されている。前記空間で液化ガスを気化させることで噴射物の比重は小さくなり、噴射量が抑制されて液垂れを防止することができる。
【0006】
また、エアゾール容器内の内部通路で液化ガスを気化させ、気化したガスと共に液体のエアゾール組成物を噴射する手段を備えたエアゾールバルブが開示されている(特許文献2〜4)。特許文献2は液化ガスを気化させる小室をディップチューブに設けており、特許文献3は小室をハウジングとディップチューブとの間に設けている。特許文献4はディップチューブ内にチューブ内通路の断面積を小さくするインサートチップを2個挿入しており、インサートチップ間が小室となって液化ガスを気化させている。
【0007】
特許文献5、6には、噴射通路の一箇所に連続気泡を有する焼結樹脂(焼結体)を設けたエアゾール容器が開示されている。特許文献5は噴射した霧の粒子を細かくすることを目的としており、特許文献6は流量の抑制、スプレーパターンのソフト化、詰まりを防止することを目的としており、内部に充填するエアゾール組成物の組成とエアゾール容器との関係については言及していない。
【0008】
【特許文献1】特公昭58−50540号公報
【特許文献2】実公昭56−39580号公報
【特許文献3】実公昭56−43413号公報
【特許文献4】実公昭59−33483号公報
【特許文献5】特公昭60−18464号公報
【特許文献6】特開平10−329879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、近年、液化ガスは揮発性有機溶剤であるため環境への負荷が問題視されており、液化ガスの量を低減させたエアゾール製品の開発が進められている。その一方で、液化ガスの量を少なくすると前述の優れた効果が得られにくくなり性能が低下するという問題がある。とくに、液化ガスの配合量をエアゾール組成物中の40重量%以下にした場合には、エアゾール容器内の気相部とバルブのハウジング内とを連通するベーパータップ孔を備えたバルブを使いにくくなるという問題があった。すなわち、ベーパータップ孔を備えたバルブは原液に溶解している液化ガスだけでなく、エアゾール容器内にある液化ガスのガスも噴射するため、液化ガスの消費量が多く、液化ガスの含有量が少ないエアゾール組成物の場合には噴射状態が変化しやすく、原液のみが残って最後まで噴射できなくなる。一方、ベーパータップ孔を備えていないバルブを用いるとエアゾール組成物の液体部分のみを噴射するため、単位時間当たりの噴射量(g/秒、以下、噴射量)が多くなり、噴射面で液垂れしやすい、さらには噴射の勢いが強いため噴射面での跳ね返りが多くなり付着性が悪いなどの問題が生じる。
【0010】
液垂れを防止する手段としては、バルブのステム孔や噴射部材の噴射孔を小さくして噴射量を抑制する方法が考えられるが、製造過程でごみ等の不純物が混入すると詰まりやすくなる。また加工が微細になるため、安定した性能での供給が困難になるという問題がある。
【0011】
加えて、特許文献1の技術では、前記効果を充分得るためには、絞り通路を小さくする必要があり(0.2〜0.25mm程度)、絞り部材はステム孔から噴射孔までの外部通路に設けているため、利用者が噴射操作を終了し、ステム孔が閉じられてもステム孔から絞り部材までの間にエアゾール組成物が残りやすく、アフタードローが生じやすい。一方、アフタードローを防止するために絞り部材の通路を大きくすると、前記空間で液化ガスが気化しにくくなり、噴射量の抑制効果が得られにくくなる。
【0012】
また、特許文献2〜特許文献4の技術では、これらの方法では内部通路内で液化ガスが気化するためアフタードローを防止することは可能であるが、液化ガス量が少ない場合は、小室の断面積(空間)が大きいと小室内で滞留して連続的に噴射されない息継ぎ現象が生じやすく、噴射量が変化しやすい。一方、小室の断面積が小さいと液化ガスが気化しにくく、噴射量を抑制する効果が得られない。
【0013】
本発明は、上記従来の問題を鑑みたものであり、エアゾール製品に充填するエアゾール組成物中の液化ガスの配合量を減らしても、ソフトな噴射状態が得られ、噴射面への付着性が高く、噴射途中での噴射量の変動を抑え、噴射面での液垂れを防止することができ、さらにアフタードロー現象を防ぐことができるエアゾール製品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の人体用エアゾール製品は、原液と噴射剤とからなり、該噴射剤が液化ガスと圧縮ガスとを含むエアゾール組成物と、耐圧容器にエアゾールバルブを固着し、内部に前記エアゾール組成物が充填されたエアゾール容器と、エアゾールバルブに装着された噴射部材とを有する人体用エアゾール製品であって、前記エアゾール組成物が液化ガスを10〜40重量%含有し、圧縮ガスによって0.4〜0.7MPa(25℃)に加圧されており、前記エアゾールバルブの導入孔から噴射部材の噴射孔までの噴射通路に多孔質部材を設けており、エアゾールバルブを開放したときに多孔質部材を通過した液化ガスの少なくとも一部が噴射通路内で気化することにより、上記目的が達成される。
【0015】
さらに、本発明の人体用エアゾール製品は、前記原液が水を20〜80重量%含有しており、前記液化ガスがジメチルエーテルであり、原液とジメチルエーテルとが溶解した均一なエアゾール組成物であることが好ましい。
【0016】
また、本発明の人体用エアゾール製品は、前記原液が炭素数2〜5個の1価のアルコールを10〜70重量%含有することが好ましい。
【0017】
また、本発明の人体用エアゾール製品は、前記エアゾールバルブがエアゾール容器内の気相部と連通する気相連通孔を備えていないことが好ましい。
【0018】
また、本発明の人体用エアゾール製品は、前記多孔質部材は、孔径が0.5〜50μmであり、多孔質部材の断面積が0.2〜80mm2であることが好ましい。
【0019】
また、本発明の人体用エアゾール製品は、前記噴射通路が、エアゾールバルブの導入孔からステム孔までの内部通路と、前記ステム孔から噴射部材の噴射孔までの外部通路とからなり、前記内部通路に多孔質部材が設けられ、前記外部通路に外部通路内の空間を小さくするブッシュを備えてなることが好ましい。
【0020】
また、本発明の人体用エアゾール製品は、前記噴射通路が、エアゾールバルブの導入孔からステム孔までの内部通路と、前記ステム孔から噴射部材の噴射孔までの外部通路とからなり、前記内部通路および外部通路に多孔質部材を設けていることが好ましい。
【0021】
また、本発明の人体用エアゾール製品は、前記噴射通路が、エアゾールバルブの導入孔からステム孔までの内部通路と、前記ステム孔から噴射部材の噴射孔までの外部通路とからなり、前記内部通路の下部に錘部材を装着し、前記外部通路に多孔質部材を設けてなることが好ましい。
【0022】
また、本発明の人体用エアゾール製品は、前記エアゾール容器の内部圧力が0.6MPaであるときの単位時間当たりの噴射量が、0.01〜0.7g/秒であることが好ましい。
【0023】
また、本発明の人体用エアゾール製品は、前記エアゾール容器の内部圧力が0.6MPaであるときの噴射到達距離が、10〜80cmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、原液と噴射剤とからなり、該噴射剤が液化ガスと圧縮ガスとを含み、液化ガスが10〜40重量%と少なく、さらに圧縮ガスで0.4〜0.7MPaに加圧したエアゾール組成物を、噴射通路の一部に多孔質部材を設けたエアゾール容器に充填することにより、エアゾールバルブを開放したときに多孔質部材を通過した液化ガスの少なくとも一部が噴射通路内で気化し、エアゾール組成物中の液化ガスの配合量を減らしても、ソフトな噴射状態が得られ、噴射面への付着性が高く、噴射途中での噴射量の変動を抑え、噴射面での液垂れを防止することができ、さらにアフタードロー現象を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の人体用エアゾール製品は、原液と噴射剤とからなり、該噴射剤が液化ガスと圧縮ガスとを含むエアゾール組成物と、耐圧容器にエアゾールバルブを固着し、内部に当該エアゾール組成物が充填されたエアゾール容器と、エアゾールバルブに装着された噴射部材とを有する人体用エアゾール製品であって、前記エアゾール組成物が液化ガスを10〜40重量%含有し、圧縮ガスによって0.4〜0.7MPa(25℃)に加圧されており、前記エアゾールバルブの導入孔から噴射部材の噴射孔までの噴射通路に多孔質部材を設けており、エアゾールバルブを開放したときに多孔質部材を通過した液化ガスの少なくとも一部が噴射通路内で気化することを特徴としている。
【0026】
以下で、添付図面を参照して本発明の内容を詳細に説明する。
【0027】
図1(a)は、実施の形態1の人体用エアゾール製品の縦断面を示す図、図1(b)は、実施の形態1の人体用エアゾール製品の噴射操作時における縦断面を示す図、図2(a)〜(b)は、ブッシュに形成された溝の形状を説明するための斜視図、図3は、実施の形態2の人体用エアゾール製品の縦断面を示す図、図4は、実施の形態3の人体用エアゾール製品の縦断面を示す図、図5は、実施の形態4の人体用エアゾール製品の縦断面を示す図、図6(a)は、実施の形態5の人体用エアゾール製品の縦断面を示す図、図7は、実施の形態6の人体用エアゾール製品の縦断面を示す図、図8は、実施の形態7の人体用エアゾール製品の縦断面を示す図、図9は、実施の形態8の人体用エアゾール製品の縦断面を示す図、図10は、実施の形態9の人体用エアゾール製品の縦断面を示す図である。
【0028】
実施の形態1
図1(a)および図1(b)に示されるように、本実施の形態の人体用エアゾール製品100は、エアゾール容器2と、エアゾール容器2のエアゾールバルブ22に装着した噴射部材3と、エアゾール容器2内部に充填されるエアゾール組成物6とから構成されている。
【0029】
エアゾール容器2は、耐圧性を有する有底筒状の容器本体21と、該容器本体21の開口部に固着されるエアゾールバルブ22とから構成されている。
【0030】
容器本体21は、アルミニウムやブリキなどの金属板や円盤状のものをインパクト加工または絞りしごき加工などによって有底筒状に形成し、さらにネッキング加工、カーリング加工によって肩部、ビード部を形成している。なお、ブリキや錫−ニッケル系鋼板などの金属板を円筒状にした胴部に、底部と、ビード部を形成した目金とを二重巻き締めにより固着した3ピース缶、あるいは2ピース缶を用いても良い。さらに、耐圧ガラスや合成樹脂など、耐圧性を有する他の材質であってもよい。
【0031】
エアゾールバルブ22は、容器本体21のビード部にガスケットを介して固着されるマウンティングカップ220と、マウンティングカップ220の中央部に保持されるハウジング223と、ハウジング223内にスプリング225と共に収容されスプリング225により常時上方に付勢されるステム221と、その内径面にステム221を挿入し、ステム221がスプリング225の反発力により上向きに付勢されている状態でステム221のステム孔221aを覆うあるいはステム孔221aより下方の外周面全体を覆いエアゾール容器2内部を密封するステムラバー222と、ハウジング223のチューブ装着部224に装着されるチューブ226とからなる。
【0032】
マウンティングカップ220としては、とくに限定されないが、通常、エアゾール容器に用いるものとして一般的なものを使用することができる。たとえば、容器本体21の材質に合わせてアルミニウムやブリキ、ステンレススチールなどを使用することができる。
【0033】
ハウジング223は有底筒状であり、底部にハウジング223内部とチューブ226とを連通する下孔223aが設けられている。また、本発明に用いるハウジング223としては、円筒状の胴部にはハウジング223内部とエアゾール容器2の気相部Gとを連通する気相連通孔(ベーパータップ孔)を形成していない。また、ハウジング223の底部から下方に円筒状のチューブ装着部224が設けられており、チューブ装着部224の外周にチューブ226の上端部を装着しており、チューブ装着部224の内部に多孔質部材4を挿入している。なお、チューブ226の下端(自由端)は容器本体21の内底面付近で開口しており、バルブを開放したときエアゾール組成物を導入する導入孔226aになる。
【0034】
ステム221は、上部に円筒部分を有し、その側面にステム孔221aが形成されている。円筒部分の内部はステム孔と連通するステム内通路221bであり、ステム内通路221bにはステム内通路221bの容積を小さくするための円柱状で、その側面に軸方向に伸びる切り欠き状の溝5aが形成されたブッシュ5が挿入されている。図2は、ブッシュ5に形成される溝5aの一例を示したものであり、図2(a)は、ブッシュ5の長手方向に直線状に溝を形成したものであり、図2(b)は、ブッシュ5の側面に螺旋状に溝を形成したものである。ブッシュ5をステム内通路221bに挿入することにより、ステム内通路の容積が小さくなってステム孔を閉鎖したときにステム内通路に残留するエアゾール組成物が少なくなってアフタドローを防止できる。さらにステム内通路を通過するエアゾール組成物の流量(流速)が抑制されるため、未使用時(ステム孔閉鎖時)にハウジング223内に充填されている液体のエアゾール組成物Lが、ステム孔221aを開放した直後に多孔質部材4を通過して気化した気体と混合されること無く、液体のエアゾール組成物のみが噴射されて噴射量が多くなることを防止する効果がある。特に孔径の小さい多孔質部材4を用いて噴射量を小さくした場合、噴射開始直後の噴射量と、しばらく経過したとき(たとえば1〜2秒後)の噴射量との差が大きくなり噴射量が変動しやすくなるが、ブッシュ5を挿入することで噴射量の変動を小さくすることができる。
【0035】
なお、ステム内通路221bとブッシュ5との隙間、あるいはステム内通路221bとブッシュ5の側面に設けた軸方向に伸びる切り欠き状の溝5aにより形成された隙間がエアゾール組成物の通路になる。該通路(溝5a)の横断面積は0.05〜0.5mm2、さらには0.07〜0.3mm2であることが好ましい。通路の横断面積が0.05mm2より小さい場合はゴミや埃などが詰まりやすくなり、0.5mm2よりも大きい場合はバルブ開放直後にハウジング内にある液体のエアゾール組成物Lが噴射されやすく、噴射量が変動しやすくなる。ここで、通路(溝5a)の横断面積とは、溝の長手方向に対して垂直に切断した場合の面積を指している。
【0036】
ブッシュ5としては、ポリアセタール、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンなどの合成樹脂を用いて成型したものなどを用いることができる。
【0037】
また、ステム孔221aの断面積は、0.05〜0.3mm2、さらには0.07〜0.2mm2であることが好ましい。ステム孔221aの断面積が、0.05mm2よりも小さい場合は製造の途中で混入したゴミや埃などで詰まりやすくなり、また加工が微細になるため精度が悪く性能が安定しない。一方、ステム孔221aの断面積が、0.3mm2より大きくなると噴射量が大きくなって液垂れしやすく使用感が低下しやすい。
【0038】
ステムラバー222は、とくに限定されないが、通常、エアゾールバルブ22に用いるものとして一般的なものを使用することができる。たとえば、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、フッ素ゴム、ブチルゴム(IIR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソブチレンゴム、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、シリコーンゴムなどの合成ゴムや、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、シリコーン系エラストマーなどの熱可塑性エラストマーなどを用いて板状のリング形状に成型されたものなどを用いることができる。
【0039】
チューブ226は、中空体でその一方の端にはハウジング223のチューブ装着部224を中空体の内部に嵌入させ、他方の端(導入孔226a)は容器本体の底部を向くように取り付けられている。チューブ226の材質としては、とくに限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロンなどの合成樹脂などを用いることが好ましい。また、本実施の形態では、多孔質部材4(焼結体)を、チューブ226が外側に装着されたチューブ装着部224内に取り付ける。
【0040】
多孔質部材4は、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンビニルアセテート、メチルメタアクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリサルホンなどの樹脂を金型内で加圧、賦形した後、融点以下あるいは部分溶解する温度に加熱することにより成型した網目構造の合成樹脂焼結体を用いることができる。
【0041】
多孔質部材4の孔径は0.5〜50μm、さらには1〜30μmであることが好ましい。孔径が0.5μmよりも小さい場合は液体のエアゾール組成物Lが通過する速度が遅くなり、液化ガスが気化し始めるのに時間がかかり、ステム孔221a開放直後の噴射量が多くなりやすい。一方、孔径が50μmよりも大きい場合は液体のエアゾール組成物Lが通過しても液化ガスが気化しにくく、噴射量が抑制されにくい。
【0042】
また、多孔質部材4の断面積は0.2〜80mm2、さらには0.5〜50mm2であることが好ましい。断面積が0.2mm2よりも小さい場合は液化ガスが気化しにくく、噴射量が抑制されにくい。一方、断面積が80mm2よりも大きい場合は液化ガスの気化が多くなりすぎて液体のエアゾール組成物が噴射孔側へ移動しにくくなり、液体のエアゾール組成物と液化ガスが気化した気体とが繰り返し噴射される息継ぎ現象が生じやすくなる。ここで、多孔質部材4の断面積とは、チューブ226の長手方向に垂直に切断した場合の切断面の面積を指している。
【0043】
噴射部材3は、バルブのステム221に装着するステム装着部31と、エアゾール組成物を外部に噴射する噴射孔3aと、ステム装着部31と噴射孔3aとを連通するボタン内通路3bとを有する。噴射孔3aは噴射部材3本体に装着されるノズルの底部中央に設けられており、ノズルの裏面にはスプレーパターンを大きくするためのメカニカルブレークアップ機構32を設けている。噴射孔3aの断面積は0.05〜0.3mm2、さらには0.07〜0.2mm2であることが好ましい。噴射孔3aの断面積が0.05mm2未満であると、ステム孔221aを閉じた直後にボタン内通路3bにエアゾール組成物が滞留しやすくアフタードローが生じやすい。一方、0.3mm2をこえると、メカニカルブレークアップ機構32の効果が得られにくく、スプレーパターンが拡がりにくい。
【0044】
本発明では、液体のエアゾール組成物Lが導入される、チューブ226の容器本体21底面側の端の導入孔226aから、エアゾール組成物が外部に噴射される噴射部材3の噴射孔3aに至る通路を噴射通路といい、該噴射通路のうち、導入孔226aからステム孔221aまでの通路を内部通路、ステム孔221aから噴射孔3aまでを外部通路といい、本実施の形態では、内部通路の一部に多孔質部材4、外部通路の一部にブッシュ5を設けている。
【0045】
エアゾール容器2に充填されるエアゾール組成物は、原液と、液化ガスと、圧縮ガスとを含有している。
【0046】
原液は噴射時に微細化されて霧状となり、皮膚や頭髪などの人体の一部に有効成分を付与する。原液は特に限定されないが、火気に対する安全性、環境への負荷などの点から水を含有する水性溶媒に有効成分を配合したものを用いることが好ましい。
【0047】
水は、たとえば精製水、イオン交換水、海洋深層水、生理食塩水などを用いることができ、その配合量は原液中20〜80重量%、さらには30〜70重量%であることが好ましい。前記水の配合量が20重量%より少ない場合は噴射した霧(以下、噴霧粒子)に引火しやすく、火気に対する安全性が低くなる。特に本発明のエアゾール製品は噴射の勢いが弱くソフトな噴射状態が得られる特徴を有するが、噴霧粒子に引火すると噴射孔に炎が逆流する逆火現象が起こりやすい。一方、水の配合量が80重量%を超えると乾燥性が悪くなり、噴射面で液垂れが生じやすく使用感が低下しやすい。
【0048】
原液には、乾燥性を良くし使用感を向上させる、水に溶解しない有効成分を配合する、噴霧粒子を細かくする、温度上昇に伴う圧力上昇を小さくする、などの目的で、溶媒の一部として炭素数が2〜5個の1価の脂肪族アルコールを配合することが好ましい。前記脂肪族アルコールとしては、たとえば、エタノール、イソプロパノールなどが挙げられる。 脂肪族アルコールの配合量は原液中10〜70重量%、さらには20〜60重量%であることが好ましい。脂肪族アルコールの配合量が10重量%よりも小さい場合は前記効果が得られにくく、70重量%を超えると噴霧粒子に引火しやすくなり、火気に対する安全性が低下しやすい。
【0049】
有効成分はエアゾール製品の用途や目的などに応じて適宜選択することができ、たとえば、茶エキス、ラウリル酸メタクリレート、安息香酸メチル、フェニル酢酸メチル、ゲラニルクロトレート、ミリスチン酸アセトフェノン、酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジルなどの消臭成分;パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、フェノキシエタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化クロルヘキシジン、感光素、パラクロルメタクレゾールなど殺菌成分;l−メントール、カンフルなどの清涼成分;クロロヒドロキシアルミニウムなどの制汗成分;アラントインヒドロキシアルミニウム、クエン酸、乳酸、タンニン酸などの収斂成分;アラントイン、グリチルレチン酸、アズレンなどの抗炎症成分;塩酸ジブカイン、塩酸テトラカイン、塩酸リドカインなどの局所麻酔成分;塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェミラミンなどの抗ヒスタミン成分;サリチル酸メチル、ケトプロフェン、インドメタシン、フェルビナク、ピロキシカム、クロタミトンなどの消炎鎮痛成分;N,N−ジエチル−m−トルアミド(ディート)、カプリル酸ジエチルアミドなどの害虫忌避成分;パラアミノ安息香酸エステル、サリチル酸オクチル、サリチル酸フェニル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、2、4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどの紫外線吸収成分;グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニントリプトファン、シスチン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸などのアミノ酸;レチノール、パルミチン酸レチノール、塩化ピリドキシン、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸アミド、ニコチン酸dl−α−トコフェロール、ビタミンD2(エルゴカシフェロール)、dl−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、パントテン酸、ビオチンなどのビタミン類;α−トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールなどの酸化防止成分;ドクダミエキス、オウバクエキス、シャクヤクエキス、ヘチマエキス、キナエキス、サクラソウエキス、バラエキス、レモンエキス、アロエエキス、ショウブ根エキス、ユーカリエキス、セージエキス、茶エキス、海藻エキス、プラセンタエキス、シルク抽出液などの抽出液;合成香料、天然香料などの香料などがあげられる。
【0050】
有効成分の配合量は、原液中0.1〜20重量%、さらには0.5〜10重量%であることが好ましい。前記有効成分の配合量が0.1重量%未満の場合は噴射物中の有効成分濃度が低くなり、所望の効果を得るためには多く噴射する必要がある。一方、20重量%を越えると噴射物中の有効成分濃度が高くなり、使用上限を超えて噴射しやすくなる。
【0051】
さらに、原液には、艶を出す、肌触りを良くする、すべりや櫛通りを良くする、保湿性を向上させるなど、使用感を向上させる目的で、油性成分、多価アルコール、界面活性剤などの補助成分を配合することができる。
【0052】
油性成分としては、たとえば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコールなどの高級アルコール;スクワラン、スクワレン、流動パラフィン、イソパラフィンなどの高級炭化水素;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などの高級脂肪酸;メチルポリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのシリコーンオイル;ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジエトキシエチル、コハク酸ジエトキシエチルなどのエステル油;ミツロウ、ラノリン、カンデリラロウ、パラフィンワックスなどのロウ(ワックス類);ツバキ油、トウモロコシ油、オリーブ油、ヒマシ油、サフラワー油、ホホバ油、ヤシ油などの油脂;などがあげられる。
【0053】
界面活性剤としては、たとえば、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリ(ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、デカなど)グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、脂肪酸アルキロールアミド、アルキルポリグルコシド、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリオキシプロピレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)・メチルポリシロキサン共重合体などが挙げられる。
【0054】
多価アルコールとしては、たとえば、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリンなどがあげられる。
【0055】
補助成分を配合する場合の配合量は、原液中0.1〜20重量%、さらには0.5〜10重量%であることが好ましい。前記補助成分の配合量が0.1重量%未満の場合は、補助成分を配合する効果が得られにくく、20重量%をこえるとべたつき感が強くなる、乾燥性が悪くなるなど、使用感が低下しやすい。また、均一なエアゾール組成物が得られにくくなる。
【0056】
液化ガスは原液を霧状に噴射する噴射剤として作用する。液化ガスはエアゾール容器内では液体であるが、ステム孔が開放されて大気とエアゾール容器内とが連通し多孔質部材を通過するときに少なくとも一部が気化する。
【0057】
液化ガスとしては、たとえば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、およびこれらの混合物である液化石油ガス、ジメチルエーテルおよび液化石油ガスとジメチルエーテルの混合物などがあげられる。なお、液化ガスに、ノルマルペンタンやイソペンタンなどの低沸点溶剤を配合してもよい。液化ガスのうち、均一なエアゾール組成物が得られやすい点からジメチルエーテルを用いることが好ましい。
【0058】
液化ガスの配合量は、エアゾール組成物中10〜40重量%、さらには20〜35重量%であることが好ましい。液化ガスの配合量が10重量%未満の場合は多孔質部材を通過するときに気化する量が少なくなって本発明の効果が得られにくい。さらに多孔質部材を通過したエアゾール組成物が噴射通路内で滞留しやすく息継ぎ現象が生じやすい。一方、40重量%を越えると噴射の勢いが強くなって使用感が低下しやすい。
【0059】
圧縮ガスは一部が液体のエアゾール組成物L中に溶解するものの、大部分がエアゾール容器内の気相部にあり、液体のエアゾール組成物Lを加圧する加圧剤として作用し、ステム孔221aを開放したときにエアゾール組成物Lを多孔質部材4へ安定に供給して息継ぎ現象を生じさせない効果がある。
【0060】
圧縮ガスとしては、たとえば、窒素ガス、炭酸ガス、亜酸化窒素ガス、圧縮空気などがあげられる。また、圧縮ガスによりエアゾール容器2内部の圧力が25℃において0.4〜0.7MPa、さらには0.45〜0.65MPaとなるように充填することが好ましい。エアゾール容器2内部の圧力が0.4MPaより小さい場合は低温時に息継ぎ現象が生じやすくなり、0.7MPaよりも大きくなると高温時に圧力が高くなりすぎ安全性の面から好ましくない。
【0061】
以下で、本実施の形態のエアゾール製品100の噴射動作について説明する。
【0062】
上記のように構成される本発明のエアゾール製品100は、図1(b)に示すように、使用者が、噴射部材3の天面を指などで押し下げるなどの噴射操作を行うことによりステム221が押し下げられてステム孔221aが開放され、エアゾール容器2内部と大気とが連通する。このとき、チューブ226内にある液体のエアゾール組成物Lが多孔質部材4を通過して液化ガスの少なくとも一部が気化し、ハウジング223内では液体と気体とが混在したエアゾール組成物となり、ステム孔221aを通ってステム内通路221bに流れ、さらにボタン内通路3bを通って噴射孔3aから噴射される。噴射孔3aまでの噴射通路内で液化ガスが気化することにより噴射物の密度は小さくなり噴射量が抑制される。さらに、エアゾール組成物が多孔質部材4を通過するときに流速が抑制され、噴射の勢いが弱くなりソフトな噴射状態になる。
【0063】
なお、エアゾール容器2内部の圧力が0.6MPaであるときの噴射量は0.01〜0.7g/秒、さらには0.05〜0.5g/秒であることが好ましい。噴射量が0.01g/秒より少なくなるとステム孔221aを解放した直後の噴射量と、しばらく経過(たとえば1〜2秒後)したときの噴射量の差が大きくなって噴射状態が変化しやすく、0.7g/秒よりも大きくなると噴射面で液垂れしやすくなる、噴射の勢いが強くなるなど、使用感が低下しやすい。
【0064】
また、エアゾール容器2内部の圧力が0.6MPaであるときの噴霧粒子が到達する噴射距離は10〜80cm、さらには15〜70cmであることが好ましい。噴射距離が10cmよりも短い場合は使用する周囲の状況に噴霧粒子が影響されやすく付着量が低下しやすくなり、80cmよりも長くなると噴射の勢いが強く付着量が低下しやすい。本発明のエアゾール製品は、エアゾール容器内部の圧力が0.4〜0.8MPaと高いにもかかわらず、ソフトな噴射状態となり、液垂れしにくく付着量が高い。
【0065】
実施の形態2
本発明の他の実施の形態について、図3を用いて説明する。なお、実施の形態1と同一の機能を果たす部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0066】
実施の形態2のエアゾール容器2は、エアゾールバルブ22において、ハウジング223のチューブ装着部224の外周がチューブ226の内周に内接するようにチューブ226の一端を取り付けており、さらに、チューブ226内に多孔質部材4がハウジング223のチューブ装着部224の端面に当接するように(内部通路に)設けられているものである。多孔質部材4の設置位置以外は、実施の形態1と同様の構成であるので、その説明を省略する。
【0067】
また、エアゾールバルブ22に装着した噴射部材3およびエアゾール容器2内部に充填されるエアゾール組成物については、実施の形態1と同様の構成であるので、その説明を省略する。
【0068】
実施の形態3
本発明の他の実施の形態について、図4を用いて説明する。なお、実施の形態1と同一の機能を果たす部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0069】
実施の形態3のエアゾール容器2は、エアゾールバルブ22において、ハウジング223のチューブ装着部224の内周に内接するように、チューブ226の一端が取り付けられており、さらに、ハウジング223のチューブ装着部226の内周に内接した部分のチューブ226内(内部通路)に多孔質部材4が設けられているものである。チューブ226の取り付け位置と多孔質部材4の設置位置以外は、実施の形態1と同様の構成であるので、その説明を省略する。
【0070】
また、エアゾールバルブ22に装着した噴射部材3およびエアゾール容器2内部に充填されるエアゾール組成物については、実施の形態1と同様の構成であるので、その説明を省略する。
【0071】
実施の形態4
本発明の他の実施の形態について、図5を用いて説明する。なお、実施の形態1と同一の機能を果たす部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0072】
実施の形態4のエアゾール容器2は、エアゾールバルブ22において、ハウジング223のチューブ装着部224の外周がチューブ226の内周に内接するようにチューブ226の一端を取り付けており、さらに、多孔質部材4が、チューブ226の他端すなわち導入孔226aの側(内部通路)に設けられているものである。多孔質部材4の設置位置以外は、実施の形態1と同様の構成であるので、その説明を省略する。この実施の形態4では多孔質部材4の下面が導入孔226aとなり、多孔質部材4を通過して気化した気体がチューブ226内で液体のエアゾール組成物と混合される。なお、ステム孔閉鎖時はチューブ内およびハウジング内は液体のエアゾール組成物で満たされているが、ブッシュ5の溝によりエアゾール組成物の流量(流速)が抑制されるためステム孔解放直後に噴射量が多くなる問題は生じない。
【0073】
エアゾールバルブ22に装着した噴射部材3およびエアゾール容器2内部に充填されるエアゾール組成物については、実施の形態1と同様の構成であるので、その説明を省略する。
【0074】
なお、実施の形態4では圧縮ガスをステム221から充填するときに、多孔質部材4を通過した圧縮ガスが微細な気泡となるため液体のエアゾール組成物Lへの溶解が速く、飽和状態になる時間が短くなり充填効率が高いという利点がある。
【0075】
実施の形態5
本発明の他の実施の形態について、図6を用いて説明する。なお、実施の形態1と同一の機能を果たす部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0076】
実施の形態5のエアゾール容器2は、エアゾールバルブ22において、ステム内通路221b(外部通路)のブッシュ5の代わりに第二多孔質部材4aを設けたこと以外は実施の形態2と同様の構成であるので、その説明を省略する。
【0077】
エアゾールバルブ22に装着した噴射部材3およびエアゾール容器2内部に充填されるエアゾール組成物については、実施の形態1と同様の構成であるので、その説明を省略する。
【0078】
実施の形態5では外部通路に第二多孔質部材4aを設けており、第二多孔質部材により流量(流速)がさらに抑制されるだけでなく、ステム孔閉鎖時にハウジング内にある液体のエアゾール組成物が、ステム孔を開放した直後に第二多孔質部材4aを通過して液化ガスの一部が気化するため、噴射量をたとえば0.01〜0.3(g/秒)、好ましくは0.01〜0.2(g/秒)と小さくしても、噴射直後と噴射後しばらく経過したときの噴射状態に変化がない。さらに、この形態では噴射孔への流量を極めて少なくすることができるため、断面積が0.007〜0.05mm2と非常に小さい噴射孔を備えた噴射ノズルを用いてもアフタードローを防止できる。なお、図6bに示すように、ボタン内通路を短くすることでアフタードローをよりなくすことができる。
【0079】
実施の形態6
本発明の他の実施の形態について、図7を用いて説明する。なお、実施の形態1と同一の機能を果たす部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0080】
実施の形態6では、図5と同様にチューブの下端に多孔質部材4を設け、さらに噴射部材3にはボタン内通路3b(外部通路)に第二多孔質部材4aが設けられているものである。多孔質部材4および第二多孔質部材4aの設置位置以外は、実施の形態5と同様の構成であるので、その説明を省略する。
【0081】
エアゾールバルブ22に装着した噴射部材3およびエアゾール容器2内部に充填されるエアゾール組成物については、実施の形態1と同様の構成であるので、その説明を省略する。
【0082】
実施の形態6においても、ステム孔閉鎖時にチューブ内およびハウジング内にある液体のエアゾール組成物が、ステム孔解放直後に第二多孔質部材4aを通過して液化ガスの一部が気化するため、噴射量の変動がない。
【0083】
実施の形態7
本発明の他の実施の形態について、図8を用いて説明する。なお、実施の形態1と同一の機能を果たす部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0084】
実施の形態7のエアゾール容器2は、図8に示されるように、エアゾールバルブ22に可撓性のチューブ226を用いて、チューブ226の下部(自由端の側)に錘部材7を装着している。錘部材7はナイロン、ポリアセタール、ポリエステルなどの合成樹脂により円筒状に成型したものであり、内部にチューブ226を挿入する空間を設けており、さらに錘部材7の下端に多孔質部材4が装着されている。
【0085】
チューブ226の取り付け位置、多孔質部材4の設置位置および錘部材7を設けたこと以外は実施の形態1と同様の構成であるので、その説明を省略する。
【0086】
エアゾールバルブ22に装着した噴射部材3およびエアゾール容器2内部に充填されるエアゾール組成物については、実施の形態1と同様の構成であるので、その説明を省略する。
【0087】
実施の形態7によれば、錘部材7をチューブ226の自由端側に取り付けることにより、エアゾール容器2を傾けた状態で噴射しても、錘部材7によりチューブ226が撓み、導入孔226aが傾けた方向に位置するため、エアゾール容器2の気相部にある圧縮ガスGが誤って噴射されないので圧縮ガスの抜けを防止することができるという利点がある。
【0088】
実施の形態8
本発明の他の実施の形態について、図9を用いて説明する。なお、実施の形態1と同一の機能を果たす部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0089】
実施の形態8では、図9に示されるように、錘部材に多孔質部材を設けず、ステム内通路のブッシュの代わりに多孔質部材を設けたこと以外は、実施の形態7と同様の構成であるので、その説明を省略する。
【0090】
エアゾールバルブ22に装着した噴射部材3およびエアゾール容器2内部に充填されるエアゾール組成物については、実施の形態1と同様の構成であるので、その説明を省略する。
【0091】
実施の形態9
本発明の他の実施の形態について、図10を用いて説明する。なお、実施の形態1と同一の機能を果たす部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0092】
実施の形態9では、図10に示されるように、多孔質部材4としてメンブランフィルター41を用いたものであり、錘部材7の取付部71に装着している。メンブランフィルター41を用いたこと以外は、実施の形態7と同様の構成であるので、その説明を省略する。
【0093】
エアゾールバルブ22に装着した噴射部材3およびエアゾール容器2内部に充填されるエアゾール組成物については、実施の形態1と同様の構成であるので、その説明を省略する。
【0094】
本発明によれば、原液と噴射剤とからなり、該噴射剤が液化ガスと圧縮ガスとを含み、液化ガスが10〜40重量%と少なく、さらに圧縮ガスで0.4〜0.7MPaに加圧したエアゾール組成物を、噴射通路の一部に多孔質部材を設けたエアゾール容器に充填することにより、エアゾールバルブ22を開放したときに多孔質部材4を通過した液化ガスの少なくとも一部が噴射通路内で気化し、エアゾール製品に充填するエアゾール組成物中の液化ガスの配合量を減らしても、ソフトな噴射状態が得られ、噴射面への付着性が高く、噴射途中での噴射量の変動を抑え、噴射面での液垂れを防止することができ、さらにアフタードロー現象を防ぐことができる。
【実施例】
【0095】
実施例にもとづいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0096】
実施例1
アルミニウム製耐圧容器(満注量140ml)と、エアゾールバルブと、噴射部材とからなるエアゾール装置に、表1に示す原液56gと、ジメチルエーテル24gとを充填し、さらにステムから窒素ガスを充填し、害虫忌避用エアゾール製品を製造した。以下で、エアゾールバルブの構造、噴射部材の構造、原液の配合量およびエアゾール組成物の配合量を説明する。
【0097】
<エアゾールバルブ>
ステム孔:φ0.3(断面積0.07mm2
ステム内通路:円柱状のブッシュ(直径2mm×長さ5mm、軸方向に幅0.4mm×深さ0.3mmの溝を備えている)を挿入
ハウジング:下孔φ0.3(断面積0.07mm2)、ベーパータップ孔なし
多孔質部材:円柱状の樹脂焼結体(直径3.2mm×長さ7mm、断面積8.0mm2、孔径5μm)、図3に示されるようにチューブ上部に挿入
【0098】
<噴射部材>
噴射孔:φ0.4(断面積0.13mm2)、メカニカルブレークアップ機構付き。
【0099】
<原液>
表1に実施例1の原液の配合処方を示す。
【0100】
【表1】

【0101】
<エアゾール組成物>
表2に実施例1のエアゾール組成物の配合処方を示す。
【0102】
【表2】

【0103】
また、エアゾール容器内部の圧力は、窒素ガスにて0.6MPaに加圧(25℃)した。
【0104】
実施例2
樹脂焼結体を図5に示すようにチューブ下端に装着した以外は実施例1と同じ害虫忌避用エアゾール製品を製造した。
【0105】
実施例3
孔径が10μmである樹脂焼結体を用いた以外は実施例1と同じ害虫忌避用エアゾール製品を製造した。
【0106】
実施例4
孔径が20μmである樹脂焼結体を用いた以外は実施例1と同じ害虫忌避用エアゾール製品を製造した。
【0107】
実施例5
ステム内通路にブッシュを挿入しなかったこと以外は実施例1と同様にして害虫忌避用エアゾール製品を製造した。
【0108】
実施例6
ステム内通路にブッシュを挿入しなかったこと以外は実施例2と同様にして害虫忌避用エアゾール製品を製造した。
【0109】
実施例7
図6に示すように、ブッシュの代わりに、ステム内通路に直径2mm×長さ5mmである円柱状の樹脂焼結体(孔径5μm)を挿入したこと以外は、実施例1と同様にして害虫忌避用エアゾール製品を製造した。
【0110】
実施例8
噴射孔がφ0.15(断面積0.018mm2)である噴射部材を用いた以外は実施例7と同様にして害虫忌避用エアゾール製品を製造した。
【0111】
実施例9
図9に示すように、可撓性を有するチューブの先端に錘部材を装着したバルブを用い、ステム内通路に直径2mm×長さ5mmである円柱状の焼結体(孔径5μm)を挿入したこと以外は、実施例1と同様にして害虫忌避用エアゾール製品を製造した。
【0112】
実施例10
表3に示す原液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして害虫忌避用エアゾール製品を製造した。
【0113】
【表3】

【0114】
実施例11
表3に示す原液を用いたこと以外は、実施例7と同様にして害虫忌避用エアゾール製品を製造した。
【0115】
実施例12
表4に示す原液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして収斂化粧用エアゾール製品を製造した。
【0116】
【表4】

【0117】
実施例13
表4に示す原液を用いたこと以外は、実施例7と同様にして収斂化粧用エアゾール製品を製造した。
【0118】
実施例14
表5に示す原液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして消炎鎮痛用エアゾール製品を製造した。
【0119】
【表5】

【0120】
実施例15
表5に示す原液を用いたこと以外は、実施例7と同様にして消炎鎮痛用エアゾール製品を製造した。
【0121】
比較例1
樹脂焼結体を用いないこと以外は実施例1と同じ害虫忌避用エアゾール製品を製造した。
【0122】
比較例2
圧縮ガスを充填しないこと以外は実施例1と同じ害虫忌避用エアゾール製品を製造した。
【0123】
比較例3
樹脂焼結体を用いず、ステムの上端を塞ぎφ0.15の連通孔を空けたエアゾールバルブを用いた以外は実施例1と同様にして害虫忌避用エアゾール製品を製造した。
【0124】
比較例4
樹脂焼結体を用いず、噴射孔がφ0.15である噴射部材を用いた以外は実施例1と同様にして害虫忌避用エアゾール製品を製造した。
【0125】
比較例5
表1に示す原液を76g、ジメチルエーテル4gを充填した以外は実施例1と同様にして害虫忌避用エアゾール製品を製造した。
【0126】
試験方法
得られたエアゾール製品を25℃に調整した恒温水槽中に1時間保持したものを試験検体として用い、下記の試験を行った。
【0127】
(噴射量)
5秒間噴射したときの重量を測定し、1秒間あたりの噴射量(g/sec)を算出した。
【0128】
(スプレーパターンの拡がり)
垂直に立てたガラス板にろ紙を貼り付け、20cm離れた位置からガラス板に垂直に当たるように3秒間噴射したときのスプレーパターンの拡がりを測定した。表中、◎はスプレーパターンの拡がりが7cm以上であることを示し、○はスプレーパターンの拡がりが5〜7cmであることを示し、×はスプレーパターンの拡がりが5cm以下であることを示している。
【0129】
(噴射の勢い)
エアゾール製品を試験台に載置し、試験台の載置面に対して水平方向に噴射して噴霧粒子が到達する距離を測定した。表中、◎は噴霧粒子が到達する距離が70cm未満であったことを示し、○は70〜80cmの間であったことを示し、×は80cm以上であったことを示している。
【0130】
(液垂れ)
噴射対象物(腕)まで20cm離れた位置から3秒間噴射したときの噴射状態を目視で評価した。表中、○は噴射面での液垂れがほとんど認められなかったことを示し、△は噴射面での液垂れがややあるものの、噴射対象物(腕)からの垂れ落ちはないことを示し、×は噴射面での液垂れが多く、噴射対象物(腕)から垂れ落ちたことを示している。
【0131】
(噴射状態の安定性)
5秒間噴射したときの状態を目視で評価した。表中、◎は変化が全く認められなかったことを示し、○は変化がほとんど認められなかったことを示し、△は噴射開始直後の噴射量がやや多いことを示し、×は息継ぎ現象が生じ、噴射量に増減があったことを示している。
【0132】
(アフタードロー)
噴射操作を停止した後に噴射されるアフタードローの有無を目視で評価した。表中、○はアフタードローが認められなかったことを示し、×はアフタードローが多く確認されたことを示している。
【0133】
上記試験の評価結果を表6〜9に示す。
【0134】
【表6】

【0135】
【表7】

【0136】
【表8】

【0137】
【表9】

【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1(a)】実施の形態1の人体用エアゾール製品の縦断面を示す図である。
【図1(b)】実施の形態1の人体用エアゾール製品の噴射操作時における縦断面を示す図である。
【図2】(a)〜(b)は、ブッシュに形成された溝の形状を説明するための斜視図である。
【図3】実施の形態2の人体用エアゾール製品の縦断面を示す図である。
【図4】実施の形態3の人体用エアゾール製品の縦断面を示す図である。
【図5】実施の形態4の人体用エアゾール製品の縦断面を示す図である。
【図6(a)】実施の形態5の人体用エアゾール製品の縦断面を示す図である。
【図6(b)】実施の形態5の人体用エアゾール製品の縦断面を示す図である。
【図7】実施の形態6の人体用エアゾール製品の縦断面を示す図である。
【図8】実施の形態7の人体用エアゾール製品の縦断面を示す図である。
【図9】実施の形態8の人体用エアゾール製品の縦断面を示す図である。
【図10】実施の形態9の人体用エアゾール製品の縦断面を示す図である。
【符号の説明】
【0139】
100、110、120、130、140、150、160、170、180 人体用エアゾール製品
2 エアゾール容器
21 耐圧容器(容器本体)
22 エアゾールバルブ
3 噴射部材
3a 噴射孔
4 多孔質部材
5 ブッシュ
6 エアゾール組成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原液と噴射剤とからなり、該噴射剤が液化ガスと圧縮ガスとを含むエアゾール組成物と、
耐圧容器にエアゾールバルブを固着し、内部に前記エアゾール組成物が充填されたエアゾール容器と、
エアゾールバルブに装着された噴射部材とを有する人体用エアゾール製品であって、
前記エアゾール組成物が液化ガスを10〜40重量%含有し、
圧縮ガスによって0.4〜0.7MPa(25℃)に加圧されており、
前記エアゾールバルブの導入孔から噴射部材の噴射孔までの噴射通路に多孔質部材を設けており、
エアゾールバルブを開放したときに多孔質部材を通過した液化ガスの少なくとも一部が噴射通路内で気化することを特徴とする人体用エアゾール製品。
【請求項2】
前記原液が水を20〜80重量%含有しており、
前記液化ガスがジメチルエーテルであり、
原液とジメチルエーテルとが溶解した均一なエアゾール組成物であることを特徴とする請求項1記載の人体用エアゾール製品。
【請求項3】
前記原液が炭素数2〜5個の1価のアルコールを10〜70重量%含有する請求項1または2記載の人体用エアゾール製品。
【請求項4】
前記エアゾールバルブがエアゾール容器内の気相部と連通する気相連通孔を備えていない請求項1〜3のいずれか1項に記載の人体用エアゾール製品。
【請求項5】
前記多孔質部材は、孔径が0.5〜50μmであり、
多孔質部材の断面積が0.2〜80mm2である請求項1〜4のいずれか1項に記載の人体用エアゾール製品。
【請求項6】
前記噴射通路が、エアゾールバルブの導入孔からステム孔までの内部通路と、
前記ステム孔から噴射部材の噴射孔までの外部通路とからなり、
前記内部通路に多孔質部材が設けられ、
前記外部通路に外部通路内の空間を小さくするブッシュを備えてなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の人体用エアゾール製品。
【請求項7】
前記噴射通路が、エアゾールバルブの導入孔からステム孔までの内部通路と、
前記ステム孔から噴射部材の噴射孔までの外部通路とからなり、
前記内部通路および外部通路に多孔質部材を設けている
請求項1〜5のいずれか1項に記載の人体用エアゾール製品。
【請求項8】
前記噴射通路が、エアゾールバルブの導入孔からステム孔までの内部通路と、
前記ステム孔から噴射部材の噴射孔までの外部通路とからなり、
前記内部通路の下部に錘部材を装着しており、
前記外部通路に多孔質部材を設けている
請求項1〜5のいずれか1項に記載の人体用エアゾール製品。
【請求項9】
前記エアゾール容器の内部圧力が0.6MPaであるときの単位時間当たりの噴射量が、0.01〜0.7g/秒である請求項1〜8のいずれか1項に記載の人体用エアゾール製品。
【請求項10】
前記エアゾール容器の内部圧力が0.6MPaであるときの噴射到達距離が、10〜80cmである請求項1〜9のいずれか1項に記載の人体用エアゾール製品。

【図1(a)】
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【図1(b)】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−320639(P2007−320639A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−155282(P2006−155282)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(391021031)株式会社ダイゾー (130)
【Fターム(参考)】