説明

人工浮島

【課題】 従来の人工浮島は強風や高波で転覆したり、折れ曲がる破損が生じので、本発明は、高波の際に波の下を潜り抜けるように、蛇のようにうねる連結式構造に加えて外側枠体を外側下方に突出する斜度をつけて構成している。また、ネットを利用して浮島の下に集まる稚魚や幼虫に隠れ場所を提供し、水底にマットを設置して水草や藻を植生し、遠赤外線や光触媒反応を利用して水質浄化に役立つ人工浮島を提供する。
【解決手段】 天然ヤシ繊維からなる不織布を巻着した合成樹脂発泡体で外側枠体と内側枠体を形成し、外側枠体は外辺を斜め下向に15度から30度までの範囲の鋭角で突出させる。更に、人工浮島の上部一面に張ったネットを外側枠体の外周より水中に重りを付けて垂下する。ネットに天然ヤシ繊維マットを装着し、水底に設置して植生に役立てる。また、遠赤外線を発生させる鉱物や光触媒反応を行う金属を粉末化し、水中に垂下したネットに塗布する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、池、湖沼、河川、海辺等において水質浄化、植生、稚魚や幼虫の育成を行い、転覆を防止する構造を有する人工浮島に関している。
【背景技術】
【0002】
池、湖沼、河川、海辺等において自然にできる浮島は水草などの塊が浮上し島のように見えるものであり、池底の枯死した植物が浮上した上にミズゴケやスゲ類が生えたものもある。
浮島の価値は、浮島を一定場所に固定する垂下根が魚やエビ類に生息場所を提供することであり、浮島のヨシ群落等が魚や小鳥の産卵場所や隠れ場所にもなっている。
自然が浮島を形成しない水面に、人工的に形成した浮島を浮かべ、植生を行っている。しかし、風波の激しい時は、高価な人工浮島が破損や転覆をすることがある。従来の人工浮島が植生を主体とし、重りを付けた鎖で水底に固定する方法であるため、水中における人工浮島の効果を追求していない。このため、魚の産卵場所や隠れ家の提供のために別途漁礁を設けている。水質浄化にはフィルターや活性炭で水を濾過するような大掛かりな装置を使用したり、木炭を埋めて水の濾過を試みている場所もある。水底に植生するために種を付着させたシートを張る作業を行うこともある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の人工浮島は強風や高波で転覆したり、折れ曲がる破損が生じ、莫大な損失を蒙っている。これは、合成樹脂で作成し、水上に浮遊する人工浮島が強風や高波に耐えることができない溝造であるためである。
本発明は、高波の際に波の下を潜り抜けるように、蛇のようにうねる連結式構造に加えて外側枠体を外側下方に突出する斜度をつけて構成している。このため、強風や高波にも枠体の先端が水中に沈みこみ、波が人工浮島を乗り越えるので転覆や破損の被害が少なくなる。
従来の人工浮島が上部での植生のみを対象としているため、自然にできた浮島よりも効果が少ない。本発明においては、浮島の垂下根の効果に加え、浮島の下に集まる稚魚や幼虫に隠れ場所を提供し、更に、水底に天然ヤシ繊維マットを設置して水草や藻を植生し、遠赤外線を発生する鉱物や光触媒反応を起こす金属をネットに付着させて水質浄化に役立つ人工浮島を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明では、外側枠体と内側枠体をスプリングのように伸縮する素材で連結して、外側枠体と内側枠体が波に対して別々な動きをするようにしている。この動きが生ずる構造に加え、人工浮島が高波の際に波の下を潜るように外側枠体の形状を独特のものにしている。天然ヤシ繊維からなる不織布を巻着した合成樹脂発泡体で外側枠体と内側枠体を形成しているが、外側枠体は外辺を斜め下向に15度から30度までの範囲の鋭角で突出するように形成している。このように斜め下方に各辺を突出させることで、外側枠体の外辺は水中に没し、高波が人工浮島を押し上げるのではなく、上から被さるようになる。
更に、人工浮島の上部一面に張ったネットを外側枠体の外周より水中に重りを付けて垂下しているので、外側枠体の先端は常に水中に没する状態に保持される。
人工浮島の下には魚や各種の生物が集合してくる。本発明の垂下したネットの網目の大きさで通り抜けることのできる魚や生物の大きさを規制することができる。稚魚や幼虫に隠れ家を与え、保護することが魚や生物の育成に重要である。
【0005】
天然ヤシ繊維マットは水草の植生に最適である。人工浮島の上部に植生させるだけでなく、水底に水草や藻を植生させるとプランクトンの発生、魚への食餌の提供、水質浄化等各種の利点が生ずる。特に、水底が植生に適していない地層であるときは効果がある。植生中の植物が成長前に草魚に食べられることが多いので、ネットの内側に植生すると草魚が侵入できないため、水草や藻は充分に育つことができる。
【0006】
遠赤外線や光線が水質を浄化させ、生物の育成に影響を与えることは知られている。鉱物の中には強く遠赤外線を発生させる種類があり、金属には光触媒反応を行う種類がある。例えば、アルカリカンラン石は多くの元素を含有し、遠赤外線の強力な電磁波を放射し続けている。この電磁波が水質浄化に作用し、弱アルカリ水を造りだし、水の腐敗を防ぐ性能を有している。酸化チタンは光触媒反応をする材料として代表的な素材であり、太陽の紫外線やブラックライトなどを酸化チタンが受光すると、活性酸素を出す。このような遠赤外線を発生させる鉱物や光触媒反応を行う金属を粉末化し、水中に垂下したネットに塗布する方法、編み込む方法、接着する方法等の手段でネットを加工することで水質浄化を行い、環境保全に寄与することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の効果は下記の通りである。
【イ】
強風や高波に転覆したり、折れ曲がったりしない。
【ロ】
ネットで大型魚の侵入を防御し、稚魚や幼虫に隠れ場所を提供する。
【ハ】
人工浮島の上部に植生できるので自然環境の保全に役立つ。
【ニ】
人工浮島の水底のネット内に水草や藻を植生できるので草魚の被害を受けない。
【ホ】
製造コストが安価であり、破損しないので維持費用が少なくて済む。
【ヘ】
ネットに遠赤外線を発生させる鉱物や光触媒反応を行う金属を接着することで水中に電磁波と活性酸素を供給し、水質浄化を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0009】
本発明になる人工浮島は、図1に示す通り、外側枠体(1)と内側枠体(2)をスプリング(3)で連結し、外側枠体(1)と内側枠体(2)が波に対して別々な動きをするようにしている。
図2の断面図に示す通り、外側枠体(1)と内側枠体(2)は天然ヤシ繊維からなる不織布(5)を巻着した合成樹脂発泡体(4)で形成され、外側枠体(1)の外辺(6)を下向に15度から30度までの範囲の鋭角で突出するように形成している。
図3では、外側枠体(1)と内側枠体(2)をスプリング(3)で連結した人工浮島の上部一面にネット(7)を張り、そのネット(7)を外側枠体(1)の外周より水中に重り(8)を付けて垂下している状態であり、一部を切欠した説明図である。
水上における人工浮島に浮力を与えるように外側枠体(1)と内側枠体(2)の芯材には合成樹脂発泡体(4)が適している。この合成樹脂発泡体(4)を天然ヤシ繊維からなる不織布(5)で巻着して植物を植生する効果を求めている。
外側枠体(1)と内側枠体(2)の連結は伸縮性のある素材であればよく、スプリング(3)の働きで、外側枠体(1)と内側枠体(2)の動きは均一にならず、波のうねりに順応し、転覆しにくくなる。
図4に示すように外側枠体(1)の外辺(6)を斜め下向に20度の鋭角で突出させていて、外辺は水面下に没している。このため、水圧は外側枠体(1))の上部にかかり、高波が来ても人工浮島を水面から持ち上げず、人工浮島の上に被さり、人工浮島は高波の下を潜り抜ける状態になるので転覆することがない。
【実施例2】
【0010】
図5はネットの下部に天然ヤシ繊維マットを装着した人工浮島の説明図である。水上に浮かべた人工浮島にアシ、ヨシ、その他の植物を植生することで稚魚や幼虫に隠れ場所を提供すると共に、鳥や他の生物に憩いの場所を提供している。
外側枠体(1)の側面より重り(8)を付けたネット(7)を垂下し、ネット(7)の下部に天然ヤシ繊維マット(9)を装着している。天然ヤシ繊維マット(9)にアマモを植生することで、ヘドロに覆われた水底でもアマモを育成することができる。アマモはネット(7)内部で成長するので船舶の通行や養殖事業の妨害にならず、水質浄化に役立ち、稚魚や幼虫に隠れ場所と餌を提供するので、従来の人工浮島にない利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明になる人工浮島の枠体を示す平面図である。
【図2】図1のA−A’線に沿った断面図である。
【図3】ネットを装着した人工浮島の説明図である。
【図4】人工浮島の説明図である。
【図5】ネットの下部に天然ヤシ繊維マットを装着した人工浮島の説明図である。
【符号の説明】
【0012】
1 外側枠体
2 内側枠体
3 スプリング
4 合成樹脂発泡体
5 天然ヤシ繊維からなる不織布
6 外辺
7 ネット
8 重り
9 天然ヤシ繊維マット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ヤシ繊維からなる不織布を巻着した合成樹脂発泡体で外側枠体と内側枠体を形成し、外側枠体の外辺を斜め下向きに15度から30度までの範囲の鋭角で突出するように形成し、外側枠体と内側枠体を伸縮性材料で連結し、上部に張ったネットを大型枠体の外周より水中に重りを付けて垂下した転覆を防止する構造であり、植生、稚魚、幼虫保護作用を有することを特徴とする人工浮島。
【請求項2】
水中に垂下するネットの下部に天然ヤシ繊維マットを装着して水底における水草の植生を行うことを特徴とする請求項1に記載の人工浮島。
【請求項3】
ネットに遠赤外線を発生させる鉱物と光触媒反応を行う金属より選択される少なくとも一種を接着して水質浄化を行うことを特徴とする請求項1及び2に記載の人工浮島。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−246868(P2006−246868A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−110309(P2005−110309)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(591163373)
【Fターム(参考)】