説明

人物検出装置、人物検出プログラム、作動制御装置、および衝突緩和装置

【課題】対象物が人物であるか否かを精度よく識別できるようにする技術を提供する。
【解決手段】衝突緩和装置は作動判定処理において、画像センサから取得した画像に基づいて検出された対象物の外観に関するパラメータと人物に関する比較用パラメータとが一致する度合いに応じて、対象物が人物である確率を表す人物確率を演算し(S210:S310〜S330)、人物確率が予め設定された人物閾値以上である場合に対象物が人物であると判定する(S230)。ただし、対象物を検出する際の検出環境に対応する人物の存在確率に応じた補正値を利用して、人物閾値を補正する(S220)。この補正の際には、人物の存在確率が高くなるにつれて対象物が人物であると判定されやすくなるようする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出された対象物が人物であることを検出する人物検出装置および人物検出プログラム、並びにこれらの機能を有する作動制御装置および衝突緩和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記の衝突緩和装置として、車両が人物と衝突する際に、車両のボンネットを持ち上げて、ボンネットとボンネット内容物との間に隙間を形成したり、車両の外部にてエアバッグを開かせたりすることによって、衝撃を緩和する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−226211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、車両のボンネットを持ち上げたり、車両の外部にてエアバッグを開かせたりする作動は、車両が人物と衝突する場合のみに必要であって、車両同士が衝突するとき等、車両が人物以外と衝突する際の作動は不要である。特に、エアバッグは、一度開いてしまうと再度利用することができないため、車両が人物以外と衝突する際にエアバッグが開かないようにすることが求められる。
【0005】
つまり、車両が衝突する対象物が人物であるかを精度よく識別し、この識別結果に応じてエアバッグ等を作動するか否かを判定できるようにすればよい。そこで、本発明においては、対象物が人物であるか否かを精度よく識別できるようにする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために成された請求項1に記載の人物検出装置において、人物確率演算手段は、パラメータ検出手段から取得したパラメータ検出結果と人物に関する比較用パラメータとが一致する度合いに応じて、対象物が人物である確率を表す人物確率を演算する。そして、人物判定手段は、人物確率が予め設定された人物閾値以上である場合に対象物が人物であると判定する。
【0007】
なお、本発明において、対象物を検出する処理は、パラメータ検出手段がパラメータを検出する処理を兼ねて実施してもよいし、パラメータ検出手段または他の手段がパラメータを検出する処理の前に実施してもよい。また、本発明において、「外観に関するパラメータ」とは、例えば、対象物の大きさ(幅、高さ)、形状、大きさおよび形状の変化等、対象物の外観から導出できる値が該当する。
【0008】
さらに、本発明において、「存在確率が高くなるにつれて…(略)…前記人物確率または前記人物閾値を補正する」とは、存在確率に応じて段階的(少なくとも2段階)或いは連続的に人物確率または人物閾値を変化させることを意味する。ところで、環境取得手段および補正手段の作動タイミングは、人物判定手段が1度のみ作動する場合には人物判定手段の作動前に設定されればよく、人物判定手段が繰り返し作動する場合には任意のタイミング(繰り返してもよい)に設定されていればよい。
【0009】
さらに、本発明の人物検出装置において、人物確率演算手段は、対象物が存在する対象領域を撮像する撮像手段による撮像画像を画像処理することによって対象物の形状を検出する画像処理手段と、対象領域に向けて送信波を出力し、該送信波が対象物によって反射された反射波を検出することによって前記対象物までの距離を検出する距離検出手段と、による検出結果をそれぞれ取得し、各検出結果に基づいて、人物確率を演算するように構成されている。特に、距離検出手段による検出結果に基づいて撮像画像中の対象物の大きさを特定し、該対象物の幅が予め設定された幅基準値から外れるに従って、或いは該対象物の高さが予め設定された高さ基準値から外れるに従って、徐々に人物確率を低く設定することで、人物確率を演算する。
【0010】
このような人物検出装置によれば、対象物までの距離を検出することができるので、この距離に基づいて撮像画像中の人物の大きさを推定することができる。よって、人物の検出精度を向上させることができる。
【0011】
なお、人物確率演算手段は、撮像手段による撮像画像を画像処理する手法や、レーダ等による形状認識機能のうちの少なくとも1つを利用していればよい。
【0012】
ところで、請求項1に記載の人物検出装置においては、請求項2に記載のように、人物確率演算手段は、撮像画像中において人物とはかけ離れた大きさである対象物を人物としては除外してもよい。
【0013】
また、請求項3に記載のように、人物確率演算手段は、高さ基準値として予め設定された上限値および下限値で規定される範囲を有する値を利用するようにしてもよい。特に、請求項4に記載のように、人物確率演算手段は、幅基準値として0.5mを利用し、高さ基準値の上限値として1.8m、下限値として1.0mを利用するようにしてもよい。
【0014】
また、請求項5に記載の人物検出プログラムは、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の人物検出装置を構成する各手段としての機能をコンピュータにて実行するためのプログラムであることを特徴としている。
【0015】
このような人物検出プログラムによれば、少なくとも請求項1に記載の効果と同様の効果を享受することができる。
【0016】
次に、上記目的を達成するために成された請求項6に記載の作動制御装置において、人物検出手段は、車両が衝突する虞がある対象物が人物であることを検出し、作動制御手段は、対象物が人物であることが検出された場合に緩和手段の作動を許可し、対象物が人物であることが検出されなかった場合に緩和手段の作動を禁止する。そして、人物検出手段は請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の人物検出装置として構成されている。
【0017】
このような作動制御装置によれば、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の人物検出装置を備えているので、少なくとも請求項1に記載の効果と同様の効果を享受することができる。また、本発明の作動制御装置では、対象物が人物であるか否かの出力結果に応じて緩和手段を作動させるか否かという異なる処理を実施することができる。
【0018】
なお、本発明において、複数の緩和手段を備えている場合には、少なくとも1つの緩和手段に対して作動を許可または禁止する作動を実施すればよい。
【0019】
さらに、上記目的を達成するために成された請求項7に記載の作動制御装置において、衝突演算手段は、車両が対象物に衝突するまでの予想時間である衝突時間を演算し、作動設定手段は、対象物が人物であるか否かを判定し、この判定結果に応じて、当該車両と人物とが衝突する際の衝撃を緩和する緩和手段の作動を許可するか否かを設定する。そして、緩和制御手段は、作動設定手段によって緩和手段の作動が許可され、かつ衝突時間が衝突を回避することができる限界時間未満である場合に、緩和手段を作動させる。ただし、作動設定手段は、請求項6に記載の作動制御装置として構成されている。
【0020】
従って、このような衝突緩和装置によれば、請求項6に記載の作動制御装置を備えているので、請求項6に記載の効果と同様の効果を享受することができる。また、人物との衝突が避けられない場合のみに緩和手段を作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明が適用されたPCS1の概略構成を示すブロック図である。
【図2】衝突緩和処理を示すフローチャートであり
【図3】衝突緩和処理のうちの作動設定処理を示すフローチャート(a)および作動設定処理のうちの人物確率演算処理を示すフローチャート(b)である。
【図4】作動設定処理のうちの閾値演算処理を示すフローチャート(a)、および人対車両昼夜別事故件数を示す表(b)である。
【図5】対象物の幅および高さと、人物確率を演算する際に利用する係数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明にかかる実施の形態を図面と共に説明する。
【0023】
[本実施形態の構成]
図1は、本発明が適用されたプリクラッシュセーフティシステム(以下、PCSという。衝突緩和装置。)1の概略構成を示すブロック図である。
【0024】
PCS1は、例えば、乗用車等の車両に搭載され、当該車両(以下、「自車両」ともいう。)が衝突することを検出し、自車両が衝突する際にその被害を緩和させるシステムである。特に、本実施形態のPCS1においては、歩行者や自転車の乗員等の人物が自車両の車体に直接衝突する際に、この人物への衝撃を緩和する機能も有する。
【0025】
具体的には、図1に示すように、PCS1は、衝突緩和コントローラ10と、各種センサ30と、ナビゲーション装置35(道路種別検出手段、環境検出手段)と、被制御対象40(緩和手段)とを備えている。
【0026】
各種センサ30としては、例えば、歩行者、路上障害物や他車両等の対象物を、その位置(自車両に対する相対位置)とともに検出するレーダセンサ31(位置検出手段、距離検出手段、パラメータ検出手段)、車両の旋回角速度を検出するヨーレートセンサ32(環境検出手段)、車輪の回転速度を検出する車輪速センサ33(速度検出手段)、車両の前方を撮像するカメラとして構成された画像センサ34(位置検出手段、撮像手段、パラメータ検出手段)等を備えている。これらの各種センサ30による検出結果は、衝突緩和コントローラ10によって取得される。
【0027】
なお、レーダセンサ31は、例えば周知のレーザレーダとして構成されており、予め設定された所定の周期(例えば100ms)毎に車両の進行方向に位置する対象物の検出を実施する。この際、レーザセンサ31は、対象物の大きさ(幅および高さ)とともにその形状を検出する。
【0028】
ナビゲーション装置35は、自車両の現在地や自車両の走行環境等を検出し、これらの検出結果に対応する地図画像を図示しない自身の表示部に表示させる周知の機能を備えている。また、ナビゲーション装置35は、衝突緩和コントローラ10等の他の装置からの要求を受けると、要求に応じたデータを要求元の装置に送信する。特に本実施形態においては、衝突緩和コントローラ10から走行環境の要求を受けると、走行環境の情報を衝突緩和コントローラ10に送信する。
【0029】
衝突緩和コントローラ10は、CPU11,ROM12,RAM13等を備えた周知のマイクロコンピュータとして構成されている。そして、衝突緩和コントローラ10は、各種センサ30による検出結果等に基づいてROM12に格納されたプログラムを実行することによって、後述する衝突緩和処理等の各種処理を実施する。
【0030】
衝突緩和コントローラ10は、このような処理を実施し、これらの処理による処理結果に応じて被制御対象40を作動させる。この結果、車両が衝突する際の被害を緩和させることができる。
【0031】
なお、被制御対象40としては、例えば、ブレーキや、ステアリング、シートベルト、アクティブフード、外部エアバッグ等を駆動するアクチュエータが挙げられる。ただし、アクティブフードとは、例えば車両のボンネットとボンネットの内容物との間に隙間を形成するためにボンネットを持ち上げる装置を示す。
【0032】
また、外部エアバッグとは、人物が車両に衝突する際の衝撃を吸収するために車両の外部に向かってエアバッグを膨張させる装置を示す。以下、本実施形態においては、被制御対象40がアクティブフードやエアバッグ等、人物が車両に衝突する際の衝撃を吸収する装置である場合について説明する。
【0033】
[本実施形態の処理]
ここで、被制御対象40を作動させる際の処理である衝突緩和処理について図2、図3(a)、図3(b)および図4(a)を用いて説明する。
【0034】
図2は衝突緩和コントローラ10(人物検出装置、作動制御装置)のCPU11が実行する衝突緩和処理を示すフローチャートであり、図3(a)は衝突緩和処理のうちの作動設定処理を示すフローチャートである。また、図3(b)は作動設定処理のうちの人物確率演算処理を示すフローチャートであり、図4(a)は作動設定処理のうちの閾値演算処理を示すフローチャートである。
【0035】
衝突緩和処理は、例えば、イグニッションスイッチ等の車両の電源がON状態にされると開始され、以後、予め設定された所定周期(例えば約50ms)毎に起動される処理である。具体的には図2に示すように、衝突緩和処理においては、対象物選択処理(S110:画像処理手段)、作動設定処理(S120:作動設定手段)、作動判定処理(S130:衝突演算手段、緩和制御手段)、作動制御処理(S140:緩和制御手段)、を順に実施する。
【0036】
対象物選択処理(S110)では、自車両の進路上に位置する歩行者や路上障害物等の対象物を検出する。なお、この対象物選択処理では、レーダセンサ31による検出結果や画像センサ34による検出結果を取得し、この検出結果に基づいて対象物を特定し、対象物の進路を推定する処理や、対象物との相対速度の演算する処理等を実施する。そして、これらの処理に基づいて、自車両と衝突する可能性がある対象物を選択する。
【0037】
作動設定処理(S120)では、各種センサ30によって検出された対象物が人物であるか否かを判定し、対象物が人物であると判定するとアクチュエータの作動許可をRAM13に記録する。また、対象物が人物でないと判定すると、アクチュエータの作動不許可をRAM13に記録する。なお、作動設定処理については後に詳述する。
【0038】
作動判定処理(S130)では、被制御対象40を作動させるタイミングであるか否かを(被制御対象40が複数の場合はそれぞれ)判定し、被制御対象40を作動させるタイミングであれば作動指令を生成し、RAM13に記録する。より詳細には、対象物選択処理によって推定された対象物の進路、対象物との相対速度等に基づいて、自車両が対象物に衝突するまでの予想時間である衝突時間を演算し、この衝突時間が衝突を回避することができる限界時間未満である場合(つまり、対象物との衝突を回避できない場合)に、被制御対象40を作動させるタイミングであると判断する。
【0039】
続いて、作動制御処理(S140)では、生成された作動指令に基づいて、被制御対象40に対応する作動指令を被制御対象40に対して(被制御対象40が複数の場合にはそれぞれの被制御対象40に対して)送信する。ただし、作動指令を被制御対象40に送信するのは、S120の処理にて、アクチュエータの作動許可がRAM13に記録されている場合に限られ、アクチュエータの作動許可がRAM13に記録されていない場合には、作動指令を被制御対象40に対して送信することはない。
【0040】
次に、作動設定処理の詳細について説明する。なお、作動設定処理においてS210〜S230の処理は、本発明でいう人物検出手段に相当する。
【0041】
作動設定処理では、図3(a)に示すように、まず、人物確率演算処理を実施する(S210)。この人物確率演算処理は、図3(b)に示すように、まず、画像センサ34による撮像画像を取得し(S310)、取得した撮像画像中の対象物(の形状)と、予めROM12等のメモリに格納されたパターンマッチング用データである人物テンプレートとを比較する(S320)。
【0042】
そして、撮像画像中の対象物と人物テンプレートとの一致度を算出する(S330)。この際には、S110の処理にて取得したレーダセンサ31による検出結果(即ち、対象物までの距離)を利用して、撮像画像中の対象物の大きさを特定することによって、人物とはかけ離れた大きさを有する対象物を人物としては除外する。
【0043】
また、この処理にて算出される一致度は、人物である確率が高くなるにつれて大きな数値が設定され、この数値は例えば、0〜1の範囲内の数値に設定される。このようなS330の処理が終了すると、人物確率演算処理を終了する。
【0044】
このような人物確率演算処理が終了すると、図3(a)に戻り、閾値演算処理を実施する(S220)。閾値演算処理は、対象物が人物であると判定する際の閾値を演算する処理である。なお、閾値演算処理においてS430〜S480の処理は、本発明でいう補正手段に相当する。具体的には、図4(a)に示すように、まず、車両の走行環境を取得する(S410:環境取得手段)。
【0045】
ここで、走行環境とは、車両が走行している時間帯、曜日、日付、道路種別、道路幅員、昼夜の区別、天候、道路状態、道路線形等の情報が該当する。これらの情報は、ナビゲーション装置35から取得される。なお、この処理にて演算する閾値は、上記走行環境として取得される情報に基づいて設定されればよいが、ここでは説明を簡単にするために、走行環境として道路種別の情報(自動車専用道路であるか否かの情報)および昼夜の区別の情報(現在、昼であるか夜であるかの情報)を取得し、これらの情報に応じて閾値を設定する例について説明する。
【0046】
なお、道路種別の情報および昼夜の区別の情報に対応する補正値(閾値に乗ずる数値)の情報(対応付けデータ)は、予めROM12に格納されている。
【0047】
S410の処理が終了すると、閾値を初期値として0.5に設定し、RAM13に記録する(S420)。そして、道路種別が自動車専用道路であるか否かを判定する(S430)。
【0048】
自動車専用道路であれば(S430:YES)、RAM13に記録された閾値を1.5倍し、RAM13に上書き記録する(S440)。また、自動車専用道路でなければ(S430:NO)、RAM13に記録された閾値を0.8倍し、RAM13に上書きする(S450)。
【0049】
続いて、昼夜の区別を判定する(S460)。現在、昼であれば(S460:YES)、RAM13に記録された閾値を0.8倍し、RAM13に上書きし(S470)、閾値演算処理を終了する。また、夜であれば(S460:NO)、RAM13に記録された閾値を1.2倍し、RAM13に上書きし(S480)、閾値演算処理を終了する。
【0050】
このような閾値演算処理が終了すると、図3(a)に戻り、人物確率演算処理(S210:人物確率演算手段)にて演算した人物確率と閾値演算処理(S220)にて演算した閾値とを比較する(S230:人物判定手段)。人物確率が閾値以上であれば(S230:YES)、アクチュエータ(被制御対象40)の作動許可をRAM13に記録し(S240:作動制御手段)、作動設定処理を終了する。
【0051】
また、人物確率が閾値未満であれば(S230:NO)、アクチュエータの作動不許可をRAM13に記録し(S250:作動制御手段)、作動設定処理を終了する。
【0052】
ここで、閾値演算処理において設定される閾値は、図4(b)に示すように、人対車両昼夜別事故件数に基づいて設定(補正)されている。即ち、昼または夜の区別が昼の場合に、歩行者等の人物が道路上に存在する確率が高い時間帯であるものとして、対象物が人物であると判定されやすくなるように、閾値を低く設定している。また、自動車専用道路は車両に乗車しない人物の侵入が禁止されているので、人物が存在する確率は低いものと推定し、対象物が人物であると判定されにくくなるようにしている。
【0053】
[本実施形態の効果]
以上のように詳述したPCS1において、衝突緩和コントローラ10のCPU11は、衝突緩和処理にて、車両が対象物に衝突するまでの予想時間である衝突時間を演算する。そして、対象物が人物であるか否かを判定し、この判定結果に応じて、当該車両と人物とが衝突する際の衝撃を緩和する被制御対象40の作動を許可するか否かを設定する。そして、CPU11は、被制御対象40の作動が許可され、かつ衝突時間が衝突を回避することができる限界時間未満である場合に、被制御対象40を作動させる。
【0054】
ここで、被制御対象40の作動を許可するか否かの処理は、車両が衝突する虞がある対象物が人物であることを検出し、対象物が人物であることが検出された場合に被制御対象40の作動を許可し、対象物が人物であることが検出されなかった場合に被制御対象40の作動を禁止することによって行う。
【0055】
特に、対象物が人物であることを検出する際には、CPU11は、レーダセンサ31や画像センサ34から取得したパラメータ検出結果と人物に関する比較用パラメータとが一致する度合いに応じて、対象物が人物である確率を表す人物確率を演算する。そして、CPU11は、人物確率が予め設定された人物閾値以上である場合に対象物が人物であると判定する。また、CPU11は、パラメータの検出環境を検出するヨーレートセンサ32,ナビゲーション装置35による検出結果を取得し、各検出環境と人物の存在確率または存在確率に基づく補正値とを対応付けた対応付けデータを参照することによって、検出した検出環境に対応する存在確率または補正値を選択し、選択した存在確率または補正値を利用して、人物確率または人物閾値を補正する。ただし、この補正の際には、人物の存在確率が高くなるにつれて対象物が人物であると判定されやすくなるようにしている。
【0056】
従って、このようなPCS1によれば、対象物を検出する際の環境(検出環境)において歩行者等の人物が存在する可能性が高いか低いか(存在確率)を考慮して、人物確率または人物閾値を補正することができる。よって、検出環境対象物が人物であるか否かを精度よく識別することができる。また、人物との衝突が避けられない場合のみに被制御対象40を作動させることができる。
【0057】
また、PCS1において、CPU11は、対象物として当該車両の進行方向に位置する物体に関するパラメータを検出するレーダセンサ31や画像センサ34による検出結果に基づいて人物確率を演算し、さらに当該車両の走行環境を検出するヨーレートセンサ32,ナビゲーション装置35による検出結果を取得し、取得した走行環境に対応する補正値を選択し、該選択した値を利用して閾値の補正を行う。
【0058】
このようなPCS1によれば、通常の車両に搭載されたヨーレートセンサ32,ナビゲーション装置35を利用して走行環境を容易に検出することができるので、車両の進行方向に人物が存在する確率についても容易に特定することができる。
【0059】
さらに、CPU11は、取得した走行環境に類似する環境において過去に発生した人対車両の事故の多さに対応する補正値に基づいて閾値を補正する。即ち、現在の走行環境が過去に人対車両の事故が多く発生している走行環境であれば、当該車両の走行環境にて人物が存在する確率が高いと判定する。
【0060】
このようなPCS1によれば、過去の事故の多さ(事故数や事故頻度等のパラメータ)に応じて人物が存在する確率を選択するので、該選択された値に応じて人物確率または人物閾値を的確に補正することができる。
【0061】
また、PCS1においてCPU11は、当該車両が走行している道路種別を検出するナビゲーション装置35による検出結果を取得し、道路種別が自動車専用道路である場合の補正値は、道路種別が自動車専用道路でない場合の補正値よりも、衝突緩和コントローラ10のCPU11は、対象物が人物であると判定されにくくなるような値に設定されている。
【0062】
このような衝突緩和コントローラ10によれば、特に、人物が存在するはずがない自動車専用道路では、対象物を人物として検出しにくくすることができるので、自動車専用道路において人物以外の対象物を誤って人物として検出する誤検出を防止することができる。
【0063】
さらに、CPU11は、対象物が存在する対象領域を撮像する画像センサ34による撮像画像を画像処理することによって対象物の形状を検出する手法と、レーダセンサ31によって対象物までの距離を検出する手法とを併用し、各検出結果に基づいて、人物確率を演算する。
【0064】
このような衝突緩和コントローラ10によれば、対象物までの距離を検出することができるので、この距離に基づいて撮像画像中の人物の大きさを推定することができる。よって、人物の検出精度を向上させることができる。
【0065】
[その他の実施形態の構成]
本発明の実施の形態は、上記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0066】
例えば、上記実施形態において、人物確率演算処理は、主に画像センサ34による撮像画像を利用する画像処理としたが、レーダセンサ31のみからなる処理としてもよい。この場合には、レーダセンサ31によって検出可能な対象物の幅および高さに着目する。
【0067】
ここで、図5は、対象物の幅および高さと、人物確率を演算する際に利用する係数との関係を示すグラフである。レーダセンサ31が対象物を人物であると判定する際には、例えば、図5に示すように、対象物の幅が0.5m、かつ対象物の高さが1.0m〜1.8mの範囲内の物体が、最も人物である確率(ここでは係数)が高いものする。そして、これらの範囲内から外れるにしたがって、徐々に人物である確率が低いものとする。
【0068】
人物確率は、対象物の幅によって得られる幅係数(図5(a)参照)と対象物の高さによって得られる高さ係数(図5(b)参照)とにそれぞれ定数(例えば0.5)を乗じたものを足し合わせることによって得られる。このようにしても、人物確率を演算することができる。
【0069】
なお、レーダセンサ31を利用した人物確率演算処理と、前述の画像処理を利用した人物確率演算処理とを併用するようにしてもよい。この場合には、それぞれの処理にて演算された人物確率に所定の係数を乗じて(例えばそれぞれ0.5ずつ乗じて)、これらを足し合わせるようにすればよい。
【0070】
また、人物確率は、対象物を人物として検出している継続時間や、異なる複数の手法で人物を検出する際において複数の手法で人物を検出できているか否か等の条件によって、補正するようにしてもよい。さらに、上記実施形態においては、走行環境に応じて閾値を補正するようにしたが、閾値をそのままの値にして、閾値と比較される値である人物確率を補正するようにしてもよい。
【0071】
さらに、上記実施形態においては、走行環境と人物の存在確率に応じた補正値とを対応させてROMに記録させ、走行環境に応じた補正値を選択するよう構成したが、人物等の対象物を検出する際の検出環境と、人物の存在確率またはこの存在確率に基づく値とを対応させてROMに記録させていてもよい。この場合には、存在確率等に基づいて補正値を演算するようにすればよく、存在確率に応じて連続的に閾値が変化されることになる。
【符号の説明】
【0072】
1…PCS、10…衝突緩和コントローラ、11…CPU、12…ROM、13…RAM、31…レーダセンサ、32…ヨーレートセンサ、33…車輪速センサ、34…画像センサ、35…ナビゲーション装置、40…被制御対象。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出された対象物が人物であることを検出する人物検出装置であって、
少なくとも対象物の外観に関するパラメータを検出するパラメータ検出手段による検出結果を取得し、該パラメータ検出結果と人物に関する比較用パラメータとが一致する度合いに応じて、前記対象物が人物である確率を表す人物確率を演算する人物確率演算手段と、
前記人物確率が予め設定された人物閾値以上である場合に前記対象物が人物であると判定する人物判定手段と、
を備え、
前記人物確率演算手段は、
対象物が存在する対象領域を撮像する撮像手段による撮像画像を画像処理することによって対象物の形状を検出する画像処理手段と、
前記対象領域に向けて送信波を出力し、該送信波が対象物によって反射された反射波を検出することによって前記対象物までの距離を検出する距離検出手段と、
による検出結果をそれぞれ取得し、前記距離検出手段による検出結果に基づいて前記撮像画像中の対象物の大きさを特定し、該対象物の幅が予め設定された幅基準値から外れるに従って、或いは該対象物の高さが予め設定された高さ基準値から外れるに従って、徐々に人物確率を低く設定することで、前記人物確率を演算すること
を特徴とする人物検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の人物検出装置において、
前記人物確率演算手段は、前記撮像画像中において人物とはかけ離れた大きさである対象物を人物としては除外すること
を特徴とする人物検出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の人物検出装置において、
前記人物確率演算手段は、前記高さ基準値として予め設定された上限値および下限値で規定される範囲を有する値を利用すること
を特徴とする人物検出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の人物検出装置において、
前記人物確率演算手段は、前記幅基準値として0.5mを利用し、前記高さ基準値の上限値として1.8m、下限値として1.0mを利用すること
を特徴とする人物検出装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の人物検出装置を構成する各手段としての機能をコンピュータにて実行するための人物検出プログラム。
【請求項6】
車両に搭載され、当該車両が人物と衝突する際の衝撃を緩和する緩和手段の作動を制御する作動制御装置であって、
当該車両が衝突する虞がある対象物が人物であることを検出する人物検出手段と、
前記人物検出手段により対象物が人物であることが検出された場合に前記緩和手段の作動を許可し、前記人物検出手段により対象物が人物であることが検出されなかった場合に前記緩和手段の作動を禁止する作動制御手段と、
を備え、
前記人物検出手段は請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の人物検出装置として構成されていること
を特徴とする作動制御装置。
【請求項7】
車両に搭載され、当該車両が人物と衝突する際の衝撃を緩和する衝突緩和装置であって、
少なくとも当該車両の進行方向に存在する対象物の位置を検出する位置検出手段による検出結果、および当該車両の走行速度を検出する速度検出手段による検出結果を取得し、該各検出結果に基づいて、当該車両が前記対象物に衝突するまでの予想時間である衝突時間を演算する衝突演算手段と、
前記対象物が人物であるか否かを判定し、該判定結果に応じて、当該車両と人物とが衝突する際の衝撃を緩和する緩和手段の作動を許可するか否かを設定する作動設定手段と、
前記作動設定手段によって前記緩和手段の作動が許可され、かつ前記衝突時間が衝突を回避することができる限界時間未満である場合に、前記緩和手段を作動させる緩和制御手段と、
を備え、
前記作動設定手段は、請求項6に記載の作動制御装置として構成されていること
を特徴とする衝突緩和装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−146049(P2011−146049A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22643(P2011−22643)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【分割の表示】特願2008−230031(P2008−230031)の分割
【原出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】