説明

人造大理石模様の樹脂成形品の製造方法

【課題】大理石等の模様を安定して形成できるとともに、一定の品質の人造大理石模様の注型樹脂成形品を低コストで製造する方法を提供する。
【解決手段】注型金型内に着色熱可塑性樹脂フィルム1を配設し、該着色熱可塑性樹脂フィルム1の表側と裏側とに熱硬化性樹脂2、3を注入加熱するとともに、この熱硬化性樹脂2、3の硬化反応による反応熱と外部からの加熱とにより着色熱可塑性樹脂フィルム1を軟化変形させ、しかる後、熱硬化性樹脂2、3を硬化させてなる人造大理石模様の樹脂成形品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は樹脂成形品の製造方法に関し、さらに詳しくは、システムキッチンのカウンター等に用いられる人造大理石模様の樹脂成形品を金型により製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、熱硬化性樹脂に種々の色柄剤を混ぜ合わせて注型成形し、キッチンカウンター、洗面台、浴槽等に用いられる人造大理石を製造することが行われている。例えば、特開2000−210956号公報には、熱硬化性樹脂を主剤とし、同じく熱硬化性樹脂製の色柄剤を使用した人造大理石の製造方法が開示されている。
【0003】
すなわち、上記公報には、熱硬化性合成樹脂に熱硬化性合成樹脂製の鱗片状薄板柄材を混合して樹脂コンパウンドを調製するとともに、この樹脂コンパウンドの粘度を20.000〜100.000cps/25℃に調整し、上記樹脂コンパウンドを注型成形して人造大理石を形成する方法が開示されている。ここで、上記鱗片状薄板柄材として、柄材形成用樹脂コンパウンドを薄板シート状に成形して得た薄板シートを裁断したものが用いられている。
【0004】
そして、その効果として、天然の大理石に類似した商品価値の高い人造大理石が製造可能であり、また、成形後に研磨を必要とせず、さらに、高意匠の人造大理石を形成するに当たり、主材である熱硬化性合成樹脂に、同じく熱硬化性合成樹脂製の鱗片状薄板柄材を添加して混合するため、密着性よく、簡単に製造できる効果もあると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−210956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術においては、熱硬化性合成樹脂製の鱗片状薄板柄材を、主材である熱硬化性合成樹脂に混合して樹脂コンパウンドとする際、天然の大理石に類似した模様を出すためには、樹脂コンパウンドの粘度や、鱗片状薄板柄材の添加速度を微妙に調整する必要がある。そのため、増粘剤の添加等による粘度調整、温度管理、硬化時間の管理等が必要であり、必ずしも、作業性よく、人造大理石を製造できるものとは言えない場合があった。また、成形の際の樹脂の流れにより鱗片状薄板柄材が偏在する恐れがあり、この点から作業性が必ずしも良いとは言えない場合があった。
【0007】
本願発明は、上記背景技術に鑑みてなしたものであり、その目的は、鱗片状薄板柄材や粒状、粉状の柄剤等を樹脂コンパウンドに配合することなく、大理石等の模様を安定して形成できるとともに、一定の品質の人造大理石模様の樹脂成形品を低コストで製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本願請求項1に記載の発明に係る人造大理石模様の樹脂成形品の製造方法は、注型金型内に着色熱可塑性樹脂フィルムを配設し、該着色熱可塑性樹脂フィルムの表側と裏側とに透明熱硬化性樹脂を注入加熱するとともに、この熱硬化性樹脂の硬化反応による反応熱と外部からの加熱とにより着色熱可塑性樹脂フィルムを軟化変形させ、しかる後、熱硬化性樹脂を硬化させてなる製造方法である。
【0009】
上記着色とは、大理石調、御影石調、墨ぼかし調、幾何模様調等、各種の模様に着色したものを含む。
【0010】
上記着色熱可塑性樹脂フィルムに用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、等、容易にシート成形が可能であり、フィルム化できる公知の熱可塑性樹脂をあげることができる。
【0011】
上記着色熱可塑性樹脂フィルムの表側に注型される熱硬化性樹脂としては、透明ないしは半透明の樹脂層を形成する熱硬化性樹脂が用いられる。一方、着色熱可塑性樹脂フィルムの裏側に注型される熱硬化性樹脂としては、上記着色模様のバックグラウンドまたは自身が模様の一部を構成するように加工された裏側熱硬化性樹脂が用いられる。
【0012】
上記熱硬化性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、熱硬化型アクリル樹脂の単独あるいは、これらの2種類以上の混合系で用いることができる。
【0013】
ポリエステル樹脂としては、熱硬化性のものとして無水マレイン酸のような不飽和二塩基酸および無水フタル酸のような飽和二塩基酸とグリコール類とを縮合反応させて合成され、分子内に不飽和結合とエステル結合を有するものである。また通常、この樹脂には架橋剤としてスチレンモノマー、アクリルモノマー等が配合されていて、いわゆる、不飽和ポリエステル樹脂と称されるものを用いるが、その形態を特に限定されるものではない。
【0014】
ビニルエステル樹脂としては、ビスフェノール型ビニルエステル樹脂あるいはノボラック型ビニルエステル樹脂あるいはその両方を混合して用いることができる。ここで、ビスフェノール型ビニルエステル樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂と酸との付加反応物であって、いずれも両末端のみに反応性不飽和基を有するものである。また、ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールAD型、ビスフェノールS型、ビスフェノールF型等の各種のものを用いることができる。また通常、このビニルエステル樹脂には架橋剤としてスチレンモノマー、アクリルモノマー等が配合されているものであるが、その形態を特に限定されるものではない。
【0015】
熱硬化型アクリル樹脂としては、通常熱硬化型として、メチルメタアクリレートモノマーあるいは、多官能のアクリルモノマーあるいはプレポリマー、あるいはポリマーのそれぞれ2種以上の混合物で構成されたアクリルシロップと称されるものを用いるが、その形態を特に限定されるものではない。
【0016】
また、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、熱硬化型アクリル樹脂の2種類以上の混合系とする場合は、樹脂それぞれの特性および充填剤との相互作用あるいは、目的とする製品品質に合った最適配合が求められるが、その配合量は特に限定されるものではない。充填剤は水酸化アルミニウム、シリカ、ガラスパウダー、クレーなどのうちの1種類、あるいは2種類以上の混合物として用いることができる。
【0017】
また、本願請求項2に記載の発明においては、上記着色熱可塑性樹脂フィルムが熱可塑性樹脂フィルムに金属箔を貼着して形成したものである請求項1記載の人造大理石模様の樹脂成形品の製造方法である。
【0018】
上記金属箔としては、アルミ箔、真鍮箔、銅箔等の種々の金属箔が用いられる。通常、上記金属箔は、シート状の箔を細かく裁断して鱗片状として使用され、各種の模様を形成するように熱可塑性樹脂フィルム上にランダムに、あるいは規則的に散布し、熱融着または接着剤等を用いて貼着される。
【0019】
また、本願請求項3に記載の発明においては、上記請求項1記載の人造大理石模様の樹脂成形品の製造方法により製造してなる人造大理石模様の樹脂成形品である。
【0020】
着色熱可塑性樹脂フィルムは熱可塑性樹脂フィルムに着色部を部分的に形成しても良いものであり、着色模様としては、特に限定されず、大理石調、御影石調、墨ぼかし調、幾何模様調等となるように各種の模様に着色された模様をあげることができる。
【発明の効果】
【0021】
本願請求項1記載の発明に係る人造大理石模様の樹脂成形品の製造方法においては、注型金型内に着色熱可塑性樹脂フィルムを配設し、該着色熱可塑性樹脂フィルムの表側と裏側とに透明熱硬化性樹脂を注入加熱して製造するため、熱硬化性樹脂のコンパウンドを用いるときのように、粘度調整、温度管理、硬化時間の管理等を行う必要がなく、作業性よく、低コストで、人造大理石等の注型樹脂成形品を製造できる。
【0022】
また、熱硬化性樹脂の硬化反応による反応熱と外部からの加熱とにより着色熱可塑性樹脂フィルムを軟化変形させ、しかる後、熱硬化性樹脂を硬化させてなるため、予め、着色熱可塑性樹脂フィルムの加熱、軟化による伸長および、冷却、硬化による収縮を予測して模様付けすることにより、安定したデザイン形成が可能であり、一定の品質の注型樹脂成形品を生産効率よく製造することができる。また、熱可塑性樹脂フィルムの変形により人造大理石模様を現出させるために柄の偏在(柄材の不均一分散による)を防止できる利点がある。
【0023】
また、本願請求項2記載の発明においては、特に、上記着色熱可塑性樹脂フィルムが熱可塑性樹脂フィルムに金属箔を貼着して形成されているため、金属箔として鱗片状のものを貼着することができることにより、種々の模様を有する樹脂成形品を得ることができる。
【0024】
また、本願請求項3記載の発明においては、特に、上記着色熱可塑性樹脂フィルムを用いてなるために、人造大理石模様の樹脂成形品は柄が偏在する恐れが少ないものであり、着色熱可塑性樹脂フィルムは着色部を部分的に形成して模様を描くことができ、種々の模様を有する樹脂成形品とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】人造大理石模様の樹脂成形品の製造に用いる注型金型および製造方法の概略構成を模式的に示す断面図。
【図2】(イ)は注型金型内の着色熱可塑性樹脂フィルムの表側に表側熱硬化性樹脂を、裏側に裏側熱硬化性樹脂を注型し加熱する工程を模式的に示す断面図、(ロ)は外部加熱と硬化反応による内部熱とで、着色熱可塑性樹脂フィルムを加熱、軟化させ、伸長する工程を模式的に示す断面図。
【図3】(イ)は注型金型から取り外して得られた注型樹脂成形品を模式的に示す断面図、(ロ)は注型樹脂成形品としての人造大理石を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本願発明に係る人造大理石模様の樹脂成形品の製造方法の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
図1は、上記人造大理石模様の樹脂成形品の製造に用いる注型金型および製造方法の概略構成を模式的に示す断面図である。図1に示すように、上金型4と下金型5とからなる注型金型内には、着色熱可塑性樹脂フィルム1が配設され、上記上金型4と下金型5とには、それぞれ、上樹脂注型口41と下樹脂注型口51が設けられている。
【0028】
上樹脂注型口41からは、着色熱可塑性樹脂フィルム1の表側で、該着色熱可塑性樹脂フィルム1の着色模様が見えるように、透明ないしは半透明の樹脂層を形成する表側熱硬化性樹脂2が注型される。また、下樹脂注型口51からは、上記着色模様のバックグラウンドまたは自身が模様の一部を構成するように加工された裏側熱硬化性樹脂3が注型される。上記着色熱可塑性樹脂フィルム1の厚さは、通常、0.2〜1.0mmとされ、図示しない貫通孔が多数設けられている。
【0029】
図2(イ)は、上記着色熱可塑性樹脂フィルム1の表側に表側熱硬化性樹脂2を、裏側に裏側熱硬化性樹脂3を注型し、加熱する工程を模式的に示す断面図である。図2(イ)に示すように、上金型4と下金型5の内部に設けられた図示しない電気ヒーターによる加熱、または電気炉等による外部加熱で、上金型4と下金型5とを50℃〜100℃に保持することにより、外部からの熱は、図2(イ)に↓で示すように、表側熱硬化性樹脂2を加熱し、図2(イ)に↑で示すように、裏側熱硬化性樹脂3を加熱する。
【0030】
一方、上記加熱によって表側熱硬化性樹脂2、および裏側熱硬化性樹脂3の硬化反応は促進されて反応熱が発生するとともに、この反応熱と外部からの加熱とによって注型金型内の温度は90〜150℃に達し、硬化反応が進行する。
【0031】
図2(ロ)は、上記外部加熱と硬化反応による内部熱とで着色熱可塑性樹脂フィルム1を加熱、軟化させ、伸長又は収縮させる工程を模式的に示す断面図である。本工程においては、図2(ロ)に矢印で示すように、軟化した表側、裏側熱硬化性樹脂2、3においては、熱によって樹脂の対流が起こる。
【0032】
通常、着色熱可塑性樹脂フィルム1の軟化温度は50〜80℃であるため、上記90〜150℃では着色部分は伸長又は収縮してその一部は軟化し、溶融する。この工程で着色熱可塑性樹脂フィルム1の一部は溶融状態で裏側熱硬化性樹脂3と混ざり合い、模様を形成する。
【0033】
図3(イ)は、注型金型から取り外して得られた注型樹脂成形品を模式的に示す断面図である。このとき、着色熱可塑性樹脂フィルム1には、図2(ロ)に示す工程で伸長又は収縮した着色部分が大理石調となるように模様付けが行われている。
【0034】
図3(ロ)は、注型金型から取り出して冷却後、得られた人造大理石模様の樹脂成形品としての人造大理石Pを示す平面図である。図3(ロ)に示すように、加熱、軟化による伸長および、冷却、硬化による収縮を予測して大理石調に模様付けし、固化後はバックグラウンドを形成する裏側熱硬化性樹脂3とともに、透明または半透明の表側熱硬化性樹脂2を透かして模様が現出する。
【0035】
また、上記着色熱可塑性樹脂フィルム1に、模様の形成の障害とならないように、孔径が0.1mm〜0.5mmの貫通孔が多数設けられているため、着色熱可塑性樹脂フィルム1を介して表側熱硬化性樹脂2と裏側熱硬化性樹脂3との相溶性が増し、層間剥離することのない優れた人造大理石Pを得ることができる。そして、天然大理石類似の模様を有する人造大理石Pを一定の品質で安定して製造できる。
【0036】
なお、上記実施形態は人造大理石Pを製造する場合を例にとって説明したが、着色熱可塑性樹脂フィルム1の模様を御影石調、あるいは幾何模様等種々の模様にデザインすることができる。このように本願発明に係る注型樹脂成形品の製造方法は設計変更自在であり、特許請求の範囲を逸脱しない限り、いずれの場合も本願発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0037】
P 本願発明の方法によって製造された人造大理石
1 着色熱可塑性樹脂フィルム
2 表側熱硬化性樹脂
3 裏側熱硬化性樹脂
4 上金型
41 上樹脂注型口
5 下金型
51 下樹脂注型口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
注型金型内に着色熱可塑性樹脂フィルムを配設し、該着色熱可塑性樹脂フィルムの表側と裏側とに透明熱硬化性樹脂を注入加熱するとともに、この熱硬化性樹脂の硬化反応による反応熱と外部からの加熱とにより着色熱可塑性樹脂フィルムを軟化変形させ、しかる後、熱硬化性樹脂を硬化させてなる人造大理石模様の樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
上記着色熱可塑性樹脂フィルムが熱可塑性樹脂フィルムに金属箔を貼着して形成したものである請求項1記載の人造大理石模様の樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の人造大理石模様の樹脂成形品の製造方法により製造してなる人造大理石模様の樹脂成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−264706(P2010−264706A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119459(P2009−119459)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】