説明

人間型ハンド

【課題】実用性を高めた簡潔構造の人間型ハンドを提供することである。
【解決手段】手の骨格を有する人間型ハンド100において、前記人間型ハンド100の掌骨格に複数の掌部2、3、4を固定し、前記複数の掌部2、3、4のそれぞれが、シート部材21、31、41に弾性部材22、23、24、32、42を貼付して成り、前記人間型ハンド100によって対象物を掴む際に、前記複数のシート部材2、3、4同士が重なり合うとともに該シート部材21、31、41が撓んで、前記弾性部材22、23、24、32、42が前記対象物を支持することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量で操作を容易とし、ロボット用や、身体障害者などの義手用に適した簡潔構造の人間型ハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
人間型ハンドは、ロボットや義手に使用されるものであり、人の手の構造と動作は極めて複雑であるため、従来から一般的に知られている人間型ハンドは、多数のアクチュータを有し、また、センサ類などによる情報を得る必要があり、そのコントロールシステムも極めて複雑である。
【0003】
特に、人型ロボットや義手用の人間型ハンドは、例えば、1個の物体を掴むだけでも複雑な機構で複数のアクチエータを操作せねばならず、また、重量も重くならざるを得ないため、それを取り付ける装着者にとって操作も煩雑で負担も多いものとなっていた。
【0004】
これに対し、特許文献1では、軽量で操作を容易とし、ロボット用や、身体障害者などの義手用に適した簡潔構造の人間型ハンドを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4462742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の人間型ハンドでは、その骨格の作り、各指への駆動力の伝達に開示したが、さらに実用性を高める構造の検討が必要であった。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、実用性を高めた簡潔構造の人間型ハンドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、手の骨格を有する人間型ハンドにおいて、前記人間型ハンドの掌骨格に複数の掌部を固定し、前記複数の掌部のそれぞれが、シート部材に弾性部材を貼付して成り、前記人間型ハンドによって対象物を掴む際に、掌部の動きに連動して前記複数のシート部材同士が重なり合うとともに該シート部材が撓んで隆起ないしは屈曲することによって、前記弾性部材が指等の他部位と共に前記対象物を支持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、実用性を高めた簡潔構造の人間型ハンドを提供することができる。
【0010】
たとえば、本発明は、人間型ハンドが物を掴む際、シート部材上の弾性部材もまた指と連動して掴む対象物を適切に支持可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による人間型ハンドの一実施の形態を示す平面図であって、掌側を見た図である。
【図2】図1に示した人間型ハンド100において掌部2、3、4を外した状態を示す平面図である。
【図3】掌部3の斜視図である。
【図4】図1に示した人間型ハンド100において、図2の状態に対して掌部2を取り付けた状態を示す平面図である。
【図5】図1に示した人間型ハンド100において、図4の状態に対して掌部3を取り付けた状態を示す平面図である。
【図6】図1に示した人間型ハンド100において、小指機構20および薬指機構30を曲げた状態を、手の甲の側から見た概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、本発明による人間型ハンドの一実施の形態を示す平面図であって、掌側を見た図である。
【0014】
本実施の形態の人間型ハンド100は、指の各骨を例えば金属や樹脂等のロッド(棒状部材)で成し、指の関節を例えばユニバーサルジョイントで成し、これらを接続して成る。人間型ハンド100は、掌機構60と、中指機構10と、小指機構20と、薬指機構30と、人指し指機構40と、親指機構50とを有して成る。
【0015】
掌機構60は、掌骨格の所定箇所に、弾性部材を貼付したシート部材から成る掌部2、3および4を、固定して成る。
【0016】
掌機構60、中指機構10、小指機構20、薬指機構30、人指し指機構40および親指機構50の各機構は、例えばユニバーサルジョイントによって接続することで、人間の手の骨格と同様の動きを実現する。
【0017】
掌部2、3、4のそれぞれは、掌骨格の掌側の所定箇所1a、1b、1c、1d、1eに固定される。
【0018】
図2は、図1に示した人間型ハンド100において掌部2、3、4を外した状態を示す平面図である。
【0019】
人間型ハンド100において、中指機構10、小指機構20、薬指機構30、人指し指機構40および親指機構50の付け根には、例えばユニバーサルジョイントを介して各指の根元が接続される掌基板1fを有する。
【0020】
掌部2を構成するシート部材21、掌部3を構成するシート部材31、掌部4を構成するシート部材41のそれぞれは、可撓性を有する樹脂等をシート状(薄板状)に成形した部材であり、そのシート面が掌に応じた所定形状に成るように成形、裁断して成る。
【0021】
各シート部材21、31、41のそれぞれには、人間の掌の肉丘の形状に応じた形状の弾性部材22、23、24、32、42が、接着剤等によって例えば貼付され固定されている。弾性部材22、23、24、32、42は、ゴムやゲル状部材等の弾性を有するものであればよい。
【0022】
すなわち、シート部材21には、弾性部材22、23、24が貼付され、シート部材31には、弾性部材32が貼付され、シート部材41には、弾性部材42が貼付されている。各弾性部材22、23、24、32、42の高さは、人間の掌の肉丘の高さに応じて調節してもよいし、土台であるシート部材21、31、41が撓むことによって各弾性部材22、23、24、32、42の高さが変化するものであってもよい。掌部の代表例として、図3に掌部3の斜視図を示す。この例では、弾性部材32はほぼ一定の高さを有する。
【0023】
また、シート部材21には、貫通孔25、26、27、28を設けている。これにより、貫通孔25、26、27、28の周辺で幅が狭く撓みやすくなり、例えば指を曲げた際に連動して動く掌骨格が、土台であるシート部材21に作用する。シート部材21はこの作用により撓んで隆起ないしは溝状に湾曲し、これによって、貫通孔25、26上の弾性部材32や、貫通孔27、28上の弾性部材42が人間の掌の肉丘の形状に応じて隆起ないしは溝状に湾曲しつつ変形しながらハンドの指では接触できない位置において対象物に適切に接触する作用を担い、しっかりと把持する。すなわち対象物にフィットする。
【0024】
図4は、図1に示した人間型ハンド100において、図2の状態に対して掌部2を取り付けた状態を示す平面図である。
【0025】
図4に示すように、掌部2のシート部材21の裏面は、人指し指機構40の所定箇所1b(例えば指の付け根)、中指機構10の所定箇所1c(例えば指の付け根)および掌基板1fに、固定される。
【0026】
図5は、図1に示した人間型ハンド100において、図4の状態に対して掌部3を取り付けた状態を示す平面図である。
【0027】
図5に示すように、掌部3のシート部材31は、掌部2のシート部材21の上に載り、滑るように動くよう構成されている。また、掌部3のシート部材31の裏面は、シート部材21の貫通孔26を介して薬指機構30の所定箇所1d(例えば指の付け根)、シート部材21の貫通孔25を介して小指機構20の所定箇所1e(例えば指の付け根)に、固定される。
【0028】
さらに、図1に示したように、掌部4のシート部材41は、掌部2のシート部材21の上に載り、親指機構50の所定箇所1a(例えば指の付け根)に固定される。このとき、掌部4のシート部材41の図中左側は、シート部材21の上に載っており、親指機構50の動きに応じてシート部材21上を滑りつつ適宜撓むように盛り上がる。
【0029】
図6は、図1に示した人間型ハンド100において、小指機構20および薬指機構30を曲げた状態を、手の甲の側から見た概略斜視図である。
【0030】
小指機構20および薬指機構30を曲げると(中手骨を曲げると)、掌側のシート部材21も屈曲する。このとき、シート部材31は、小指、薬指の付け根に接合されているため、中手骨と一緒に屈曲してシート部材21を折り曲げる。この結果、シート部材21は撓み、掌において、盛り上がる部分とへこむ部分とが生じる。
【0031】
以上、説明した本発明によれば、指骨格を有するとともに掌骨格が屈曲する人間型ハンドにおいて適切な把持を実現することができる。
【0032】
以上、本発明による人間型ハンドを説明したが、本発明は、この説明に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で数々の変形および組み合わせが出来ることは勿論であり、各実施の形態の構成の各種組合せも本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0033】
100 人間型ハンド
10 中指機構
20 中指機構
30 薬指機構
40 人指し指機構
50 親指機構
60 掌機構
2、3、4 掌部
21、31、41 シート部材
22、23、24、32、42 弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手の骨格を有する人間型ハンドにおいて、
前記人間型ハンドの掌骨格に複数の掌部を固定し、
前記複数の掌部のそれぞれが、シート部材に弾性部材を貼付して成り、
前記人間型ハンドによって対象物を掴む際に、掌部の動きに連動して前記複数のシート部材同士が重なり合うとともに該シート部材が撓んで隆起ないしは屈曲することによって、前記弾性部材が指等の他部位と共に前記対象物を支持する
ことを特徴とする人間型ハンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−192496(P2012−192496A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58756(P2011−58756)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度経済産業省、戦略的基盤技術高度化支援事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(593058190)ダブル技研株式会社 (12)
【出願人】(305027401)公立大学法人首都大学東京 (385)
【Fターム(参考)】