説明

什器群の遠隔施解錠装置

【課題】 移動棚装置における各列の什器間に配線される通信ケーブルの劣化を防ぐとともに、制御手段と施解錠手段に接続される通信ケーブルとの接続部の接触不良や破損、それらの要因により生じる通信エラーの発生等を未然に防ぐことで、遠隔操作器による操作により各什器すべての施解錠を確実に行えるようにした什器群の遠隔施解錠装置を提供すること。
【解決手段】 固定棚6、7、8、と移動棚11、12間に配線される通信ケーブル5を屈曲式の配線支持部材37、37’内に配線させることで、通信ケーブル5が外部から保護され、配線支持部材37、37’の屈曲自在性により移動棚11、12の左右方向への移動が繰り返し行われても、通信ケーブル5に無理な力が掛からず制御手段31と、通信ケーブル5と制御手段31との接続部の接触不良や破損、それらの要因により生じる通信エラーの発生等を未然に防ぐことができるので、遠隔操作器15からの操作により、什器9、10、13、14のすべての施解錠を確実に行えるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも内部に収容部を有するとともに、該収容部へのアプローチを規制する規制部材と、該規制部材の開放を抑止又は該抑止を解除する施解錠手段と、を備えた複数の什器からなる什器群の施解錠を、遠隔操作器から送信される旋錠或いは解錠信号に基づいて作動する制御手段を介して、遠隔にて実施可能な遠隔施解錠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上下複数段で左右方向に並設され、複数の什器からなる什器群の施解錠を、遠隔操作器より遠隔にて実施可能な什器群の遠隔施解錠装置が開示されおり、上下複数段の什器の最下段下方に設けた台枠内に制御ユニットを設けることで、複数の什器からなる什器群の施解錠を遠隔操作器により操作し、制御ユニットを介して各什器の全ての施解錠を行っていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような従来の什器群の遠隔施解錠装置にあっては、什器群が固定配置されているため、制御ユニットが台枠内に安定支持されているが、近年、後列を固定棚にし、前列を移動棚とした棚装置が既に開発され、固定棚の什器の収容部に物品等の出し入れを行うには移動棚を左右方向いずれか一方側に移動させることで、収容部へのアプローチが可能な構成になっていた。
【0004】
【特許文献1】特許第2906283号公報(第2頁右欄2行−第3頁左欄21行、第1−2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した棚装置では前列の移動棚を左右方向のいずれかに移動させた際に、移動棚の下方に設けられた台枠も同方向に移動してしまうため、各列の台枠内の制御ユニットをそれぞれ通信ケーブルで配線した場合には、移動棚の移動時に通信ケーブルが引っ張られたり、棚を構成する部材と接触したりして、通信ケーブルを早期に劣化させ断線を生じさせたり、施解錠手段や制御手段と通信ケーブルとの接続部の接触不良や破損、それらの要因により生じる通信エラーの発生等を招く恐れがあり、移動棚を用いた什器群の施解錠を遠隔操作器より遠隔にて実施可能な什器群の遠隔施解錠装置を採用することは難しかった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、移動棚装置における各列の什器間に配線される通信ケーブルの劣化を防ぐとともに、制御手段と施解錠手段に接続される通信ケーブルとの接続部の接触不良や破損、それらの要因により生じる通信エラーの発生等を未然に防ぐことで、遠隔操作器による操作により各什器すべての施解錠を確実に行えるようにした什器群の遠隔施解錠装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の什器群の遠隔施解錠装置は、少なくとも内部に収容部を有するとともに、該収容部へのアプローチを規制する規制部材と、該規制部材の開放を抑止又は該抑止を解除する施解錠手段と、を備えた複数の什器からなる什器群の施解錠を、遠隔操作器から送信される旋錠或いは解錠信号に基づいて作動する制御手段を介して、遠隔にて実施可能な遠隔施解錠装置であって、前記什器群は前後に整列した複数列の棚からなり、最後列の棚は固定棚として構成され、前記固定棚前方の複数列の棚は左右方向に移動可能な移動棚として構成され、前記移動棚は什器毎に区分けされ、前記各列の前後に重なり合う什器間に配線する通信ケーブルを、最上部となる2台の什器の上面に両端が枢着され、前記両什器が重なり合う時は屈曲し、離間した時には伸長する配線支持部材内に配線したことを特徴としている。
この特徴によれば、各列の什器間に配線される通信ケーブルを配線支持部材内に配線させることで、通信ケーブルが外部から保護されるとともに、配線支持部材の屈曲自在性により移動棚の左右方向への移動が繰り返し行われても、通信ケーブルに無理な力が掛からず通信ケーブルと制御手段との接続部の接触不良や破損、それらの要因により生じる通信エラーの発生等を未然に防ぐことができる。
【0008】
本発明の請求項2に記載の什器群の遠隔施解錠装置は、請求項1に記載の什器群の遠隔施解錠装置であって、前記配線支持部材の上方を開口させたことを特徴としている。
この特徴によれば、配線支持部材の開口から通信ケーブルを容易に設置できるとともに、通信ケーブルに伴うメンテナンスを容易に行える。
【0009】
本発明の請求項3に記載の什器群の遠隔施解錠装置は、請求項1または2に記載の什器群の遠隔施解錠装置であって、前記両配線ダクトはそれぞれ少なくとも底板と2つの側板とから成り、該側板の内、屈曲側と反対側の側板の枢着部近傍は切り欠かれて空隙部が形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、2つの配線ダクトの端部同士を枢着したパンタグラフ式とすることで、配線支持部材の構成を簡素化し、移動棚を移動させた際には、互いの配線ダクトが伸長或いは中央の枢着部で屈曲され、配線ダクトの動きが常に一定となるので、配線ダクト内の通信ケーブルに無理な外圧が加わりにくく長期の使用が可能となる。
【0010】
本発明の請求項4に記載の什器群の遠隔施解錠装置は、請求項3に記載の什器群の遠隔施解錠装置であって、前記両配線ダクトはそれぞれ少なくとも底板と2つの側板とから成り、該側板の内、屈曲側と反対側の側板の枢着部近傍は切り欠かれて空隙部が形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、両配線ダクトの屈曲時に枢着部に配線される通信ケーブルを枢着部近傍に形成された空隙部から外方へと逃がすことができるので、配線ダクトの側板と干渉による損傷が未然に防止される。
【0011】
本発明の請求項5に記載の什器群の遠隔施解錠装置は、請求項1乃至4のいずれかに記載の什器群の遠隔施解錠装置であって、前記配線支持部材の両端部は、上下方向に延設される枢着部材を介して、前記2台の什器の上面から上方に離間され架設されることを特徴としている。
この特徴によれば、配線支持部材が2台の什器の上面から上方に離間されることから、什器の上面に配設される通信ケーブルとの当接や絡みが未然に防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例】
【0013】
図1(a)は、本発明の実施例における什器群の遠隔施解錠装置の全体像を示す斜視図であり、図1(b)は、前方列の移動棚を図1(a)の状態から移動させた斜視図であり、図2は、遠隔操作器から表示ランプまでの配線状態を示す概略斜視図であり、図3は、制御ユニットと配線の構造を示す平面図であり、図4は、遠隔施解錠装置の平面図であり、図5(a)は、移動棚の移動時におけるパンタグラフ式支持部材の可動および配線の状態を示す平面図であり、図5(b)は、移動棚の移動終了におけるパンタグラフ式支持部材と配線の状態を示す平面図である。
【0014】
この遠隔施解錠装置は、主に企業の各種書類の管理室や倉庫に設置されており、各棚を構成する多段の什器毎に設けられた旋解錠手段を、後述において説明する遠隔操作器により制御可能になっている。
【0015】
図1(a)に示されるように、遠隔施解錠装置1は主に複数の棚装置(本実施例では5つ)と遠隔操作器15により構成されており、これらは載置台2に設置されている。載置台2の前方には左右方向に2本の移動レール3が敷設され、2つの棚装置である移動棚11、12が移動レール3に沿って移動可能に載置されており、図1(b)に示されるように移動棚11、12が左右方向に移動できるようになっている。
【0016】
載置台2の後方には、3つの棚装置である固定棚6、7、8が位置固定され、固定棚6の左側方には遠隔操作器15が位置固定されている。遠隔操作器15の正面の中間部には、施解錠確認ランプ16と施解錠釦17が設けられ、下部には電源表示ランプ18と電源キースイッチ19が設けられている。遠隔施解錠装置1の起動または終了は、電源キースイッチ19の押操作により制御を行うことができ、電源キースイッチ19のON状態の場合には電源表示ランプ18が点灯され、電源キースイッチ19のOFF状態の場合には電源表示ランプ18が消灯される。
【0017】
移動棚11、12は上下段にそれぞれ設けられた上段什器13と下段什器14から構成され、各什器毎に収容部へのアプローチが規制できる従来公知の両開き式扉や引出し(規制部材)が備えられている。同様に固定棚6、7、8も上段什器9と下段什器10から構成され、各什器毎に収容部へのアプローチが規制できる従来公知の引戸(規制部材)が備えられている。規制部材にアプローチの規制がされていない場合には、各什器9、10、13、14の扉に形成された手掛部から扉を開放して、収容部にアプローチでき書類・書籍やファイル等の格納を行えるようになっている。しかも、固定棚6、7、8の扉は引戸構造となっているので、移動棚11、12を左右方向に繰り返し移動させた場合でも当接して破損させることはない。
【0018】
移動棚11の前端上部には表示板23が立設されており、後述において詳述する後列左方上段什器用ランプ24と後列左方下段什器用ランプ25を上下に設けており、同様に移動棚12の前端上部には表示板23が立設され、中央部の上下に後列中央上段什器用ランプ24’と後列中央下段什器用ランプ25’、右端部の上下に後列右方上段什器用ランプ24’’と後列右方下段什器用ランプ25’’がそれぞれ設けられている。固定棚6,7,8の上段什器9の上部前面には転倒防止レール4が左右方向に設けられ、移動棚11、12の上部背面に設けられた図示しない転倒防止突条が転倒防止レール4に摺動可能に係合され地震等による転倒が防止されている。
【0019】
固定棚6、7、8および移動棚11、12の上段什器9、13には、それぞれ上段什器ランプ26と、電子錠機能を備えた上段施解錠装置(施解錠手段)27が設けられており、同様に、固定棚6、7、8および移動棚11、12の下段什器10、14には、それぞれ下段什器ランプ28と、電子錠機能を備えた下段施解錠装置(施解錠手段)29が設けられている。これら上下段施解錠装置27,29は扉の開放を抑止又は抑止の解除を行う係止部材47(図1において破線で表示)を含み、施解錠装置が施開錠信号を受けるか、マニュアルキーで施開錠操作されることにより、係止部材47を作動して扉の開放を抑止又は抑止の解除を行うことができる。
【0020】
固定棚6の上面6aには後述において詳述する制御ユニット31’が設置され、固定棚7、8の上面7a、8aには後述において詳述する制御ユニット31、31’がそれぞれ設置されている。固定棚7の上面7aから移動棚11の上面11aに後述する配線支持部材であるパンタグラフ式支持部材37が架設されており、固定棚8の上面8aから移動棚12の上面12aにも同様のパンタグラフ式支持部材37’が架設されている。
【0021】
上段施解錠装置27および下段施解錠装置29が旋錠されると、それぞれ対応する係止部材47が係止作用して、各々の扉の開扉が不能となり(扉の開放が抑止・・・規制部材へのアプローチが規制される)、上段施解錠装置27および下段施解錠装置29が解錠されると、それぞれ対応する係止部材47の係止作用が解除され(扉の開放の抑止の解除)、各々の扉の開扉が可能となる。扉の開扉不能状態においては、上段什器ランプ26および下段什器ランプ28が消灯され、扉の開扉可能状態においては、上段什器ランプ26および下段什器ランプ28が点灯された状態になる。
【0022】
上段施解錠装置27および下段施解錠装置29は、手動の鍵操作によって外部から施解錠を行うこともできるが、一斉に行う場合には、遠隔操作器15の施解錠釦17の操作による旋錠信号に基づいて、上段施解錠装置27および下段施解錠装置29の旋錠が行われ、扉の開扉を可能にするには再度、施解錠釦17の操作による解錠信号に基づいて、上段施解錠装置27および下段施解錠装置29が解錠される。
【0023】
上記において説明した各固定棚6、7、8および移動棚11、12に設けられた上段什器ランプ26、下段什器ランプ28、上段施解錠装置27、下段施解錠装置29、後列上段什器ランプ24、24’、24’’、後列下段什器ランプ25、25’、25’’、制御ユニット31、31’と、遠隔操作器15の施解錠確認ランプ16、施解錠釦17、電源表示ランプ18、電源キースイッチ19の配線接続について以下に説明する。
【0024】
図2に示されるように、固定棚6、7、8に設けられた上段什器ランプ26、下段什器ランプ28、上段施解錠装置27、下段施解錠装置29には、旋錠信号および解錠信号等の各種信号の送受信を行う信号ケーブルと、電力を供給する給電ケーブルと、を含む通信ケーブル5が各々接続され什器内に内部配線されており、配線孔9cを介して各固定棚6、7、8の上面6a、7a、8aに設けられた制御ユニット31’に接続され、固定棚7、8の制御ユニット31’と隣接する制御ユニット31も通信ケーブル5で接続されている。
【0025】
同様に、移動棚11、12に設けられた上段什器ランプ26、下段什器ランプ28、上段施解錠装置27、下段施解錠装置29には、通信ケーブル5が各々接続され什器内に内部配線されており、配線孔13cを介してパンタグラフ式支持部材37、37’に配線され、固定棚7、8各上面7a、8aに設けられた制御ユニット31に接続されている。
【0026】
同じく、移動棚11の表示板23に設けられた後列左方上段什器用ランプ24と後列左方下段什器用ランプ25にも通信ケーブル5が各々接続されており、パンタグラフ式支持部材37を介して制御ユニット31に接続され、移動棚12の表示板23に設けられた後列上段什器ランプ24’、24’’と後列下段什器ランプ25’、25’’にも通信ケーブル5が各々接続されており、パンタグラフ式支持部材37’を介して、制御ユニット31に接続されている。
【0027】
固定棚8の制御ユニット31と固定棚7の制御ユニット31’は通信ケーブル5で接続され、固定棚7の制御ユニット31と固定棚6の制御ユニット31’は通信ケーブル5で接続されている。固定棚6の制御ユニット31’には別途通信ケーブル5が接続され、遠隔操作器15に設けられた後述のコントローラユニット20に接続されている。
【0028】
遠隔操作器15の施解錠確認ランプ16、施解錠釦17、電源表示ランプ18、電源キースイッチ19には、通信ケーブル5が接続され内部配線されて、内部に設けられたコントローラユニット20に接続されている。遠隔操作器15の下部には電源供給用のACアダプター21が設置されコントローラユニット20に接続されている。つまり、施解錠確認ランプ16、施解錠釦17、電源表示ランプ18、電源キースイッチ19からの旋錠信号および解錠信号等の各種信号の制御およびACアダプター21からの給電制御がコントローラユニット20により行われる構成となっている。
【0029】
なお、固定棚6、7、8および移動棚11、12の上部の外周には、遮蔽板22が上方に立設され取り付けられており、制御ユニット31、31’や通信ケーブル5の配線、パンタグラフ式支持部材37、37’を外部から露見させない構成になっており、外部からの見栄えが良くなるだけでなく、制御ユニット31、31’や通信ケーブル5を外部から保護できる(図1参照)。
【0030】
次いで、制御ユニット31、31’について詳細に説明すると、まず図3に示される制御ユニット31、31’は、基板32に旋錠信号および解錠信号等の各種信号の制御が行われるMPU33、各什器毎9、10、13、14に対応して固有に番号(ID)が設定される設定スイッチ34、左右に2箇所に通信ケーブル5が接続される接続コネクタ35、36がそれぞれ設けられ、図示しない透明プラスチック製の保護カバーで保護されている。
【0031】
制御ユニット31の左方の接続コネクタ35には、移動棚11、12の上段什器13に設けられた上段什器ランプ26、上段施解錠装置27、表示板23に設けられた後列上段什器用ランプ24、24’、24’’、後列下段什器用ランプ25、25’、25’’、からの通信ケーブル5がそれぞれ接続されている。右方の接続コネクタ35には、移動棚11、12の下段什器14に設けられた下段什器ランプ28、下段施解錠装置29、からの通信ケーブル5がそれぞれ接続されている。
【0032】
制御ユニット31’の右方の接続コネクタ35には、固定棚6、7、8の各上段什器9に設けられた上段什器ランプ26、上段施解錠装置27からの通信ケーブル5、がそれぞれ接続されており、左方の接続コネクタ35には、固定棚6、7、8の下段什器10に設けられた下段什器ランプ28、下段施解錠装置29からの通信ケーブル5、がそれぞれ接続されている。
【0033】
制御ユニット31の左方の接続コネクタ36に接続される通信ケーブル5は、制御ユニット31’の右方の接続コネクタ36に接続されおり、制御ユニット31の右方の接続コネクタ36に接続される通信ケーブル5は、隣接する制御ユニット31’の左方の接続コネクタ36に接続される。
【0034】
したがって、固定棚7に載置した制御ユニット31によって移動棚11の上段什器ランプ26、上段施解錠装置27、下段什器ランプ28、下段施解錠装置29、後列左方上段什器用ランプ24、後列左方下段什器用ランプ25の制御が行われ、固定棚8に載置した制御ユニット31によって移動棚12の上段什器ランプ26、上段施解錠装置27、下段什器ランプ28、下段施解錠装置29、後列の中央と右方上段什器用ランプ24’、24’’、後列の中央と右方下段什器用ランプ25’、25’’の制御が行われる。そして、各固定棚6、7、8毎に設けられた制御ユニット31’によって、それぞれ対応する固定棚の什器の上段什器ランプ26、上段施解錠装置27、下段什器ランプ28、下段施解錠装置29、の制御が行われる。
【0035】
このように、1台の制御ユニット31で一つの移動棚の上下に重なる上段什器13と下段什器14の制御を行うことができ、1台の制御ユニット31’で一つの固定棚の上下に重なる上段什器9と下段什器10の制御を行うことができるので、固定棚の上面の省スペース化が図れる。
【0036】
また、制御ユニット31、31’を固定棚6、7、8の最上部に位置する上段什器9の上面6a、7a、8aに設けたことにより、制御ユニット31、31’の着脱を固定棚6、7、8の最上部から簡便に行えるとともに、制御ユニット31、31’や、その周囲の通信ケーブル5等のメンテナンスも容易に行える。
【0037】
次に、パンタグラフ式支持部材37、37’について具体的に説明する。図4に示されるように、パンタグラフ式支持部材37、37’は、配線支持部材である2本の配線ダクト38、39から主に構成されている。配線ダクト38、39には図示しない軸孔を設けた枢着部38a、39aが形成され、軸40で互いの枢着部38a、39aが回動可能に軸支されており、軸40を中心に互いの配線ダクト38、39を屈曲させ、または伸長させることが可能な屈曲自在性を有している。配線ダクト38、39の他端内側には上下に延設された枢着部材41、42の上部がそれぞれ溶接されている。
【0038】
配線ダクト38、39は、金属スチール材の折り曲げ加工で底板38x、39xと2つの側板38y、39yを形成させ上方に開口するように構成されているので、配線ダクト38、39の開口から通信ケーブル5を容易に設置して配線を行えるとともに、通信ケーブル5に伴うメンテナンスを容易に行える。
【0039】
配線ダクト38、39の枢着部38a、39aの近傍であって、屈曲部外方の側板38y、39yは切り欠かれて空隙部38b、39bが形成されており、配線ダクトの屈曲時に、配線ダクト38、39内の枢着部38a、39a近傍に配線される通信ケーブル5を空隙部38b、39bから外方へと逃がすことができるので、配線ダクト38、39の側板との干渉による通信ケーブル5の損傷が未然に防止さる。
【0040】
パンタグラフ式支持部材37、37’の固定棚7、8と移動棚11、12への架設について以下に説明すると、パンタグラフ式支持部材37、37’の枢着部材41の下部を上面7a、8aにそれぞれ設けた取付部材9bに回動可能に支軸させ、枢着部材42の下部を上面11a、12aにそれぞれ設けた取付部材13dに回動可能に支軸させることで、パンタグラフ式支持部材37を固定棚7と移動棚11に上面「く」字状に屈曲された状態で架設させ、パンタグラフ式支持部材37’を固定棚8と移動棚12に上面「く」字状に屈曲された状態で架設させている。
【0041】
なお、パンタグラフ式支持部材37、37’の配線ダクト38、39は枢着部材41、42の上部に溶接されているので、上面7a、8a、11a、12aよりも上方に離間させることができ、制御ユニット31、31’との当接や、通信ケーブル5との絡みが未然に防止される。
【0042】
次いで、移動棚11、12の移動におけるパンタグラフ式支持部材37、37’の可動状態について説明する。図5(a)に示されるように、固定棚7の前方に位置する移動棚11を左方に移動させていくと、パンタグラフ式支持部材37の枢着部材41、42が回動されていき、パンタグラフ式支持部材37の中央の枢着部38a、39aに位置する軸40を中心に配線ダクト38と配線ダクト39の屈曲の間隔が徐々に離間されていく。さらに、移動棚11を固定棚6の前方位置に重なるように移動させると、配線ダクト38と配線ダクト39が略一本のダクトとなるように伸長された状態となる。
【0043】
再度、移動棚11を元の位置である固定棚7の前方位置に重なるように移動させると、配線ダクト38と配線ダクト39の互いの枢着部38a、39aの軸40を中心に回動され、パンタグラフ式支持部材37が上面「く」字状に屈曲される。同様にパンタグラフ式支持部材37’についても、図5(b)に示されるように移動棚12を固定棚8の前方位置から固定棚7の前方位置に重なるように移動させることで、配線ダクト38と配線ダクト39が上面「く」字状の屈曲状態から略一本のダクトとなるように伸長された状態となる。
【0044】
このように、2つの配線ダクト38、39の枢着部38a、39a同士を軸支したパンタグラフ式支持部材37、37’により、移動棚11、12を左右方向に移動させた際には、互いの配線ダクト38、39が伸長或いは中央の枢着部38a、39aで屈曲され、配線ダクト38、39の動きが常に一定となるので、配線ダクト38、39内に配設された通信ケーブル5に無理な外圧が加わりにくく長期の使用が可能となる。
【0045】
しかも、固定棚7、8に移動棚11、12の上段什器13および下段什器14を制御する制御ユニット31を設けることで、移動棚11、12の移動による衝撃や振動による影響を制御ユニット31に生じさせることはなく、常に安定した制御を行わせることができるとともに、制御ユニット31は制御ユニット31’の近傍に設置されるので、接続される通信ケーブル5の配線処理も複雑にならず、什器群の施解錠のすべてを遠隔操作器15の施解錠釦17より操作可能であり、且つ制御ユニット31、31’のメンテナンス等をすべて固定棚側で行うことができるので作業効率が高められる。
【0046】
したがって、通信ケーブル5をパンタグラフ式支持部材37、37’内に配線させることで、通信ケーブル5が外部から保護されるとともに、パンタグラフ式支持部材37、37’の屈曲性により移動棚11、12の左右方向への移動が繰り返し行われても、通信ケーブル5と制御手段である制御ユニット31との接続部の接触不良や破損、それらの要因により生じる通信エラーの発生等を未然に防ぐことができるので、遠隔操作器15の施解錠釦17の操作により、移動棚11、12側の什器群の施解錠も確実に行える。
【0047】
以上の説明により上記の実施例では、通信ケーブル5をパンタグラフ式支持部材37、37’内に配線させることで、通信ケーブル5が外部から保護されるとともに、パンタグラフ式支持部材37、37’の屈曲性により移動棚11、12の左右方向への移動が繰り返し行われても、通信ケーブル5と制御手段である制御ユニット31との接続部の接触不良や破損、それらの要因により生じる通信エラーの発生等を未然に防ぐことができるので、遠隔操作器15の施解錠釦17の操作により、移動棚11、12側の什器群の施解錠も確実に行える。
【0048】
なお、パンタグラフ式支持部材37、37’の枢着部材41の下部を上面7a、8aにそれぞれに設けた取付部材9bよりも更に後方に回動可能に支軸させ、枢着部材42の下部を上面11a、12aにそれぞれに設けた取付部材13dよりも更に前方に回動可能に支軸させることで、パンタグラフ式支持部材37、37’の上面「く」字状の内側の屈曲角度を拡大させた状態で固定棚7、8と移動棚11、12に架設させることができ、このようにすれば、移動棚11を固定棚7の前方に重なる位置に移動させた場合や、移動棚12を固定棚8の前方に重なる位置に移動させた場合に、パンタグラフ式支持部材37、37’の上面「く」字状の屈曲度合をなるべく生じさせない構成にできるので、パンタグラフ式支持部材37、37’内に配線される通信ケーブル5を殆ど屈曲させることなく、長期に渡って通信ケーブル5の耐久性を維持させることが可能となる。
【0049】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれ、例えば上記実施例では、配線支持部材を2本の配線ダクト38、39からなるパンタグラフ37を用いることで、配線ダクト38、39内の通信ケーブル5の耐久性を高めていることから好ましいが、本発明はこれに限定されるものではなく、配線支持部材に耐久性に優れた屈曲性のコイル状金属パイプや、屈曲性の蛇腹管を用いて、通信ケーブル5を内設するようにしても良い。
【0050】
また、上記実施例では、パンタグラフ37の配線ダクト38、39の上方を開口させるように形成することで、通信ケーブル5の配設に伴うメンテナンスを容易に行えることから好ましいが、配線ダクト38、39のそれぞれの上部に簡便に着脱可能な保護カバーを設けて外部からのホコリ等を防ぐようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】(a)は、本発明の実施例における什器群の遠隔施解錠装置の全体像を示す斜視図であり、(b)は、前方列の移動棚を図1(a)の状態から移動させた斜視図である。
【図2】遠隔操作器から表示ランプまでの配線状態を示す概略斜視図である。
【図3】制御ユニットと配線の構造を示す平面図である。
【図4】遠隔施解錠装置の平面図である。
【図5】(a)は、移動棚の移動時におけるパンタグラフ式支持部材の可動および配線の状態を示す平面図であり、(b)は、移動棚の移動終了におけるパンタグラフ式支持部材と配線の状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 遠隔施解錠装置
5 通信ケーブル(給電ケーブル及び信号ケーブルを含む)
6、7、8 固定棚
6a、7a、8a 上面
9 上段什器
9c 配線孔
10 下段什器
11、12 移動棚
11a、12a 上面
13 上段什器
13c 配線孔
14 下段什器
15 遠隔操作器
16 施解錠確認ランプ
17 施解錠釦
18 電源表示ランプ
19 電源キースイッチ
20 コントローラユニット
22 遮蔽板
23 表示板
24、24’、24’’ 後列上段什器用ランプ
25、25’、25’’ 後列下段什器用ランプ
26 上段什器ランプ
27 上段施解錠装置(施解錠手段)
28 下段什器ランプ
29 下段施解錠装置(施解錠手段)
30 収容部
31、31’ 制御ユニット(制御手段)
37、37’ パンタグラフ式支持部材(配線支持部材)
38、39 配線ダクト
38a、39a 枢着部
38x、39x 底板
38y、39y 側板
40 軸
41,42 枢着部材
47 係止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも内部に収容部を有するとともに、該収容部へのアプローチを規制する規制部材と、該規制部材の開放を抑止又は該抑止を解除する施解錠手段と、を備えた複数の什器からなる什器群の施解錠を、遠隔操作器から送信される旋錠或いは解錠信号に基づいて作動する制御手段を介して、遠隔にて実施可能な遠隔施解錠装置であって、
前記什器群は前後に整列した複数列の棚からなり、最後列の棚は固定棚として構成され、前記固定棚前方の複数列の棚は左右方向に移動可能な移動棚として構成され、前記移動棚は什器毎に区分けされ、前記各列の前後に重なり合う什器間に配線する通信ケーブルを、最上部となる2台の什器の上面に両端が枢着され、前記両什器が重なり合う時は屈曲し、離間した時には伸長する配線支持部材内に配線したことを特徴とする什器群の遠隔施解錠装置。
【請求項2】
前記配線支持部材の上方を開口させた請求項1に記載の什器群の遠隔施解錠装置。
【請求項3】
前記配線支持部材が2つの配線ダクトの端部同士を枢着したものであり、前記固定棚および移動棚の位置が互いに重なった時には、中央の枢着部で屈曲するパンタグラフ式とした請求項1または2に記載の什器群の遠隔施解錠装置。
【請求項4】
前記両配線ダクトはそれぞれ少なくとも底板と2つの側板とから成り、該側板の内、屈曲側と反対側の側板の枢着部近傍は切り欠かれて空隙部が形成されている請求項3に記載の什器群の遠隔施解錠装置。
【請求項5】
前記配線支持部材の両端部は、上下方向に延設される枢着部材を介して、前記2台の什器の上面から上方に離間され架設される請求項1乃至4のいずれかに記載の什器群の遠隔施解錠装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−14839(P2006−14839A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194118(P2004−194118)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】