説明

介在物及び亀裂の3次元構造観察方法

【課題】介在物を起点とする金属の破壊現象を解明するための介在物及び亀裂の3次元構造観察方法において、効率的で高精度な観察方法を提供する。
【解決手段】転動疲労を受けた部材の転動軌道直下において、転動体転がり方向Fに略平行な角度をなし、かつ転動面Pに略直角な角度をなす1次観察断面P1を切断・研磨して形成した後、この1次観察断面P1を観察して介在物3と亀裂4の位置を特定する1次観察工程と、更に収束イオンビームを用いて、前記転動体転がり方向Fに対して略直角な角度をなす2次観察断面P2を所定間隔で連続的に形成して、連続的な断層写真6を取得する2次観察工程と、前記断層写真6を3次元に再構築して3次元的な内部の介在物と亀裂の構造を評価する画像処理工程とを含む、介在物3及び亀裂4の3次元構造観察方法であって、前記2次観察断面P2を連続的に形成する所定間隔が0.05〜0.5μm、前記収束イオンビームの加速電圧が20〜35kV、ビーム電流が0.5〜10nAの範囲であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な介在物を起点として発生する金属の破壊現象を解明するために有用な介在物及び亀裂の観察技術に関し、特に、高強度鋼の疲労破壊が問題となる場合の解決方法につながる技術である。
【背景技術】
【0002】
介在物の形態を3次元的に観察するための最も基本的な方法としては、介在物の含まれた試料により、研磨と走査型電子顕微鏡(SEM)観察を相互に繰り返す方法がある(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
また、この様な3次元観察方法を改善した従来例1として、図10に示す如く、介在物を電解抽出した試料の表面に蒸着膜を形成(同図(a))した後、試料表面に導電性両面テープを密着させて、介在物を転写(同図(b))し、次いで、転写したテープをSEMの試料ホルダーにセット(同図(c))して、介在物の観察する方法が開示されている(特許文献1参照)。図10は、鋼中非金属介在物の抽出状況を示す工程後半図である。
【0004】
更に、収束イオンビーム(FIB)により形成した断面を、走査型イオン顕微鏡像もしくはSEMにより写真撮影を繰り返し、3次元に構築する従来例2に係る観察装置(特許文献2参照)や、FIBとSEMを用いた断面観察方法について、電荷のチャージを防止して安定した観察ができる様に、被観察物よりも深い溝を周囲に形成する従来例3(特許文献3参照)等が開示されている。
【0005】
しかしながら、研磨と写真撮影を手作業で繰り返す方法は膨大な時間と手間がかかる上、1μmより細かい間隔で断面加工することは実質的に困難なため、微細な介在物の3次元形態を効率的に観察する方法としては不向きであった。また、電解抽出して介在物を取り出す方法では、亀裂の観察が不可能であり、破壊現象の3次元的な観察に対しては不向きであった。
【0006】
一方、FIBとSEMの機能を併せて持っている、いわゆるデュアルビーム装置を用いることにより、介在物の観察は可能であるが、通常のFIB加工条件とSEM観察条件では、加工痕が発生して亀裂が確認できないか、著しく時間がかかる条件でしか観察ができず、効率的に亀裂発生状況を観察することは困難であった。また、亀裂の発生方向が分からない場合、亀裂面と平行な断面をFIB加工すると、亀裂の観察が実質的に困難となるが、適切な断面加工方向の選定に関する指針はなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−184537号公報
【特許文献2】特開平8−115699号公報
【特許文献3】特開2006−228593号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】周 世栄、外2名、「三次元観察に基づく非金属介在物の極値統計評価」、鉄と鋼、平成13年12月、第87巻、第12号、p.748−755
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
転動疲労はせん断応力下で発生する疲労現象であり、転動軌道直下の最大せん断応力位置付近に存在する非金属介在物を起点にして亀裂が発生し、剥離に至る現象であるが、亀裂発生などの現象の詳細やそのメカニズムには不明な点が多く、現在も多くの研究が継続されている。
【0010】
本発明の目的は、介在物を起点とする金属の破壊現象を解明するための介在物及び亀裂の3次元構造観察方法において、効率的で高精度な観察方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するに当り、本発明者等は、転動疲労における介在物起点の破壊について鋭意研究し、特に亀裂発生位置と進展方向に関して詳細に検討した結果、亀裂は、3次元的に見た場合に、転動体の転がり方向に対して介在物の前方と後方位置から夫々前方と後方に向かって発生し、転動面に対して平行から少し傾いた面状に進展することを発見したことから、これらの亀裂を観察する方法として本発明をなすに至ったものである。
【0012】
上記目的を達成するため、亀裂の観察は亀裂面に対してできるだけ垂直な断面で観察した方が亀裂を見逃しにくいので、予め推定される亀裂発生方向を考慮して観察を行うこと、また、亀裂観察のための断面形成にFIBを用いることとした。その結果、FIB加工条件を適切に制御することで、効率的かつ高品位な観察が可能となる。更に、同様にねじり疲労についても、せん断応力に起因する疲労破壊現象であり、一部には非金属介在物を起点として破壊する場合もあり、その場合には推定される亀裂発生方向から効率的な観察を行うことができる。
【0013】
即ち、本発明の請求項1に係る介在物及び亀裂の3次元構造観察方法が採用した手段は、転動体による転動疲労を受けた部材の転動軌道直下において、転動体転がり方向に対して略平行な角度をなし、かつ前記転動体が転がった転動面に対して略直角な角度をなす1次観察断面を切断・研磨して形成した後、この1次観察断面を観察して介在物または介在物と亀裂位置を特定する1次観察工程と、更に収束イオンビームを用いて、前記転動体転がり方向に対して略直角な角度をなす2次観察断面を、該転動体転がり方向に沿って所定間隔で連続的に形成して、連続的な断層写真を取得する2次観察工程とを含んでいる。
【0014】
同時に、請求項1に係る観察方法が採用した手段は、前記断層写真を3次元に再構築して3次元的な内部の介在物と亀裂の構造を評価する画像処理工程とを含む、介在物及びこの介在物を起点として発生する亀裂の3次元構造観察方法であって、前記2次観察断面を連続的に形成する所定間隔が0.05〜0.5μm、前記収束イオンビームの加速電圧が20〜35kV、ビーム電流が0.5〜10nAの範囲であることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の請求項2に係る介在物及び亀裂の3次元構造観察方法が採用した手段は、請求項1に記載の介在物及び亀裂の3次元構造観察方法において、前記1次観察断面が前記転動体転がり方向となす略平行な角度が−30度〜+30度の範囲であると共に、前記1次観察断面が前記転動面となす略直角な角度、及び前記2次観察断面が前記転動体転がり方向となす略直角な角度が60度〜120度の範囲であることを特徴とするものである。
【0016】
本発明の請求項3に係る介在物及び亀裂の3次元構造観察方法が採用した手段は、ねじり疲労を受けた部材において、この部材のねじり軸と略平行な角度をなし、かつ前記ねじり軸に直交する半径方向に対して略直角な角度をなす1次観察断面を切断・研磨して形成した後、この1次観察断面を観察して介在物または介在物と亀裂位置を特定する1次観察工程と、更に収束イオンビームを用いて、前記ねじり軸方向と略平行な角度をなし、かつ前記半径方向に略平行な角度をなす2次観察断面を、該ねじり軸方向に沿って所定間隔で連続的に形成して、連続的な断層写真を取得する2次観察工程とを含んでいる。
【0017】
同時に、請求項3に係る観察方法が採用した手段は、前記断層写真を3次元に再構築して3次元的な内部の介在物と亀裂の構造を評価する画像処理工程を含む、介在物及びこの介在物を起点として発生する亀裂の3次元構造観察方法であって、前記2次観察断面を連続的に形成する所定間隔が0.05〜0.5μm、前記収束イオンビームの加速電圧が20〜35kV、ビーム電流が0.5〜10nAの範囲であることを特徴とするものである。
【0018】
本発明の請求項4に係る介在物及び亀裂の3次元構造観察方法が採用した手段は、請求項3に記載の介在物及び亀裂の3次元構造観察方法において、前記1次観察断面が前記ねじり軸となす略平行な角度、前記2次観察断面が前記ねじり軸となす略平行な角度及び前記2次観察断面が前記半径方向となす略平行な角度が−30度〜+30度の範囲であると共に、前記1次観察断面が前記半径方向となす略直角な角度が60度〜120度の範囲であることを特徴とするものである。
【0019】
本発明の請求項5に係る介在物及び亀裂の3次元構造観察方法が採用した手段は、ねじり疲労を受け破断した部材において、破断によって生じた破面を1次観察断面とし、この1次観察断面に対して略法線方向から観察して介在物及び/または介在物と亀裂位置を特定する1次観察工程と、更に収束イオンビームを用いて、前記破面の法線方向に略平行な角度をなし、かつ前記破面の半径方向に略直角な角度をなす2次観察断面を、該破面の半径方向に沿って所定間隔で連続的に形成して、連続的な断層写真を取得する2次観察工程とを含んでいる。
【0020】
同時に、請求項5に係る観察方法が採用した手段は、前記断層写真を3次元に再構築して3次元的な内部の介在物と亀裂の構造を評価する画像処理工程を含む、介在物及びこの介在物を起点として発生する亀裂の3次元構造観察方法であって、前記2次観察断面を連続的に形成する所定間隔が0.05〜0.5μm、前記収束イオンビームの加速電圧が20〜35kV、ビーム電流が0.5〜10nAの範囲であることを特徴とするものである。
【0021】
本発明の請求項6に係る介在物及び亀裂の3次元構造観察方法が採用した手段は、請求項5に記載の介在物及び亀裂の3次元構造観察方法において、前記2次観察断面が破面半径方向となす略直角な角度が60度〜120度であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の請求項1に係る介在物及び亀裂の3次元構造観察方法によれば、転動体による転動疲労を受けた部材の転動軌道直下において、転動体転がり方向に対して略平行な角度をなし、かつ前記転動体が転がった転動面に対して略直角な角度をなす1次観察断面を切断・研磨して形成した後、この1次観察断面を観察して介在物または介在物と亀裂位置を特定する1次観察工程と、更に収束イオンビームを用いて、前記転動体転がり方向に対して略直角な角度をなす2次観察断面を、該転動体転がり方向に沿って所定間隔で連続的に形成して、連続的な断層写真を取得する2次観察工程とを含んでいる。
【0023】
同時に、請求項1に係る観察方法によれば、前記断層写真を3次元に再構築して3次元的な内部の介在物と亀裂の構造を評価する画像処理工程とを含む、介在物及びこの介在物を起点として発生する亀裂の3次元構造観察方法であって、前記2次観察断面を連続的に形成する所定間隔が0.05〜0.5μm、前記収束イオンビームの加速電圧が20〜35kV、ビーム電流が0.5〜10nAの範囲であるので、転動疲労を受けた被検体から介在物と亀裂の存在位置を同時に早く見出し得ると共に、介在物や亀裂の形状情報を粗くすることなく、高品位の3次元再構築画像が得られる。
【0024】
また、本発明の請求項2に係る介在物及び亀裂の3次元構造観察方法によれば、前記1次観察断面が前記転動体転がり方向となす略平行な角度が−30度〜+30度の範囲であると共に、前記1次観察断面が前記転動面となす略直角な角度、及び前記2次観察断面が前記転動体転がり方向となす略直角な角度が60度〜120度の範囲としたので、転動疲労を受けた部材の介在物と亀裂を、観察に支障なく同時に早く見つけるための設定条件を明確化した。
【0025】
更に、本発明の請求項3に係る介在物及び亀裂の3次元構造観察方法によれば、ねじり疲労を受けた部材において、この部材のねじり軸と略平行な角度をなし、かつ前記ねじり軸に直交する半径方向に対して略直角な角度をなす1次観察断面を切断・研磨して形成した後、この1次観察断面を観察して介在物または介在物と亀裂位置を特定する1次観察工程と、更に収束イオンビームを用いて、前記ねじり軸方向と略平行な角度をなし、かつ前記半径方向に略平行な角度をなす2次観察断面を、該ねじり軸方向に沿って所定間隔で連続的に形成して、連続的な断層写真を取得する2次観察工程とを含んでいる。
【0026】
同時に、請求項3に係る観察方法が採用した手段は、前記断層写真を3次元に再構築して3次元的な内部の介在物と亀裂の構造を評価する画像処理工程を含む、介在物及びこの介在物を起点として発生する亀裂の3次元構造観察方法であって、前記2次観察断面を連続的に形成する所定間隔が0.05〜0.5μm、前記収束イオンビームの加速電圧が20〜35kV、ビーム電流が0.5〜10nAの範囲であるので、ねじり疲労を受けた被検体からでも、介在物と亀裂の存在位置を同時に早く見出し得ると共に、介在物や亀裂の形状情報を粗くすることなく、高品位の3次元再構築画像が得られる。
【0027】
また更に、本発明の請求項4に係る介在物及び亀裂の3次元構造観察方法によれば、前記1次観察断面が前記ねじり軸となす略平行な角度、前記2次観察断面が前記ねじり軸となす略平行な角度及び前記2次観察断面が前記半径方向となす略平行な角度が−30度〜+30度の範囲であると共に、前記1次観察断面が前記半径方向となす略直角な角度が60度〜120度の範囲であるので、ねじり疲労を受けた部材の介在物と亀裂を、観察に支障なく同時に早く見つけるための設定条件を明確化した。
【0028】
一方、本発明の請求項5に係る介在物及び亀裂の3次元構造観察方法は、ねじり疲労を受け破断した部材において、破断によって生じた破面を1次観察断面とし、この1次観察断面に対して法線方向から観察して介在物及び/または介在物と亀裂位置を特定する1次観察工程と、更に収束イオンビームを用いて、前記破面の法線方向に略平行な角度をなし、かつ前記破面の半径方向に略直角な角度をなす2次観察断面を、該破面の半径方向に沿って所定間隔で連続的に形成して、連続的な断層写真を取得する2次観察工程とを含んでいる。
【0029】
同時に、請求項5に係る観察方法によれば、前記断層写真を3次元に再構築して3次元的な内部の介在物と亀裂の構造を評価する画像処理工程を含む、介在物及びこの介在物を起点として発生する亀裂の3次元構造観察方法であって、前記2次観察断面を連続的に形成する所定間隔が0.05〜0.5μm、前記収束イオンビームの加速電圧が20〜35kV、ビーム電流が0.5〜10nAの範囲であるので、ねじり疲労を受けた被検体からでも、介在物と亀裂の存在位置を同時に早く見出し得ると共に、介在物や亀裂の形状情報を粗くすることなく、高品位の3次元再構築画像が得られる。
【0030】
また、本発明の請求項6に係る介在物及び亀裂の3次元構造観察方法によれば、請求項5に記載の介在物及び亀裂の3次元構造観察方法において、前記2次観察断面が破面半径方向となす略直角な角度が60度〜120度であるので、ねじり疲労を受けた部材の介在物と亀裂を観察に支障なく同時に早く見つけるための設定条件を明確化した。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態1に係る係介在物及び亀裂の3次元構造観察方法の概略工程を示し、図(a)は1次観察工程、図(b)は2次観察工程及び図(c)は断層写真取得工程を示す。
【図2】本発明の実施の形態1に係る転動体転がり方向と各観察断面の関係を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る1次観察面が、転動体転がり方向及び転動面となす角度の定義を説明するための斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る2次観察面が、転動体転がり方向となす角度の定義を説明するための斜視図である。
【図5】本発明の実施例に係り、2次観察工程におけるFIBビーム電流値の違いによる断面加工品位の差異を示す図面代用写真であって、同図(a)はビーム電流3nAの実施例、同図(b)はビーム電流25nAの比較例を示す。
【図6】本発明の実施例に係り、2次観察工程により取得した図面代用断層写真の例を示す。
【図7】本発明の実施例に係り、3次元再構築した介在物と亀裂の画像のスケッチ例を示す。
【図8】本発明の実施の形態2に係り、ねじり軸方向と各観察断面の関係を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態3に係り、ねじり軸方向と各観察断面の関係を示す斜視図である。
【図10】従来例1に係り、鋼中非金属介在物の抽出状況を示す工程後半図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施の形態1に係る介在物及び亀裂の3次元構造観察方法に関し、転動疲労を受けた部材を被検体とする態様例につき、以下添付図1〜4を参照しながら説明する。図1は本発明の実施の形態1に係る係介在物及び亀裂の3次元構造観察方法の概略工程を示し、図(a)は1次観察工程、図(b)は2次観察工程及び図(c)は断層写真取得工程を示す。また、図2は本発明の実施の形態1に係る転動体転がり方向と各観察断面の関係を示す斜視図、図3は本発明の実施の形態1に係る1次観察面が、転動体転がり方向及び転動面となす角度の定義を説明するための斜視図、図4は本発明の実施の形態1に係る2次観察面が、転動体転がり方向となす角度の定義を説明するための斜視図である。
【0033】
先ず、収束イオンビーム(FIB)と走査型電子顕微鏡(SEM)を備えたFIB−SEM装置により、介在物と亀裂の断層写真を取得する前の準備として、三次元観察対象とする介在物と亀裂の存在位置を見出すため、転動体1による転動疲労の繰り返し負荷を受けた部材から、転動体1が転動した直下の転動軌道部分を切り出して被検体2とする。この被検体2の切り出しには、切断用砥石を用いた湿式切断機等を使用することができる。
【0034】
そして、図2,3に示す様に、転動体1が転がった転動体転がり方向Fに対して略平行な角度αをなし、かつ前記転動体1が転がった転動面Pに対して略直角な角度βをなす断面を切断する。次いで、この断面を樹脂埋めし、介在物と亀裂が見えるところまで研磨していき、図1(a)に示す如く、できる限り介在物3と亀裂4の一部が見えたところで中断して1次観察断面P1を形成し、次の工程に供する。
【0035】
ここでの1次観察断面P1は、介在物3から発生する亀裂4は、3次元的に見ると転動面に対して平行から少し傾いた面状に、転動体転がり方向Fに対して主に前方と後方に進展していることから、これらをできる限り真横から観察することにより、介在物3と亀裂4を同時に早く見つけるために設定するものである。そして、前記1次観察断面P1が前記転動体転がり方向Fとなす略平行な角度αはできるだけ0度に近く、前記1次観察断面P1が前記転動面Pとなす略直角な角度βはできるだけ90度に近いことが好ましいが、前記略平行な角度αは−30度〜+30度の範囲であり、前記略直角な角度βは60度〜120度の範囲であれば、観察に支障はない。
【0036】
より好ましくは、前記略平行な角度αは−10度〜+10度、前記略直角な角度βは80度〜100度が推奨される。但し、前記角度αが前記角度範囲から外れると、介在物3と亀裂4が現れるまで研磨していく際に、先に亀裂4だけが見え始めるため、亀裂4を発見し難い上、更に介在物3が現れるまで研磨を続けなければ2次観察面P1の観察視野範囲を絞ることができず、結果的に研磨されずに残った部分が少なくなって介在物3と亀裂4の3次元的な全体像が得られなくなってしまう。
【0037】
一方、前記角度βが前記角度範囲から外れると、3次元的には面状である亀裂4と1次観察面P1とがなす角度が平行に近づき、亀裂面の観察が困難になってくる。(亀裂面と平行な断面で亀裂4を観察することが難しいのは自明である)。そのため、上記α,βの角度範囲内において、SEMにより1次観察断面P1を観察して、介在物3または介在物3と亀裂4の位置を特定する(1次観察工程)。
【0038】
次に、FIB−SEM装置による三次元観察方法として、FIBを用いて、図1(b),4に示す様に、転動体転がり方向Fに対して略直角な角度θをなす2次観察断面P2を
、転動体転がり方向Fに沿って所定間隔で連続的に形成しつつ、各断面P2の断層写真6を取得する(2次観察工程)。
【0039】
ここで、前記2次観察断面P2を転動体転がり方向Fに対して略直角な角度θにするのは、前記2次観察断面P2での亀裂観察を容易とするためであり、転動体転がり方向Fに対して、介在物3の前方及び後方に向かって亀裂4が発生・進展することを予め推定して、前記転動体転がり方向Fに対して略直角な2次観察断面P2を得るために設定するものである。
【0040】
2次観察断面P2が転動体転がり方向Fとなす略直角な角度θは、できるだけ90度に近いことが好ましいが、60度〜120度であれば観察に支障はない。より好ましくは、前記略直角な角度θは80度〜100度が推奨される。但し、略直角な角度θが前記角度範囲から外れると、亀裂4に対して2次観察断面P2が平行に近づき、亀裂4の観察が困難になってくるため、上記範囲内とすることが肝要である。
【0041】
また、2次観察断面P2の断面形成のためのFIB加工条件としては、FIBの加速電圧が20〜40kVで、ビーム電流が0.5〜10nAの範囲とするのが良い。更に、ビーム加速電圧は25〜35kVとするのが良い。FIB加工条件を前記範囲に特定する理由は、上述した適切な加工条件を超えて大きなエネルギーで加工すると、形成した2次観察断面P2にFIBの加工痕が大きく残ってしまい、微細な介在物3や亀裂4の観察が困難になるためであり、また、適切な加工条件を下回ると、FIBで除去可能な深さが小さくなって十分な観察断面サイズが得られなくなり、膨大な加工時間が必要となるなどの問題が生じるためである。
【0042】
更に、FIBによる連続的な2次観察断面P2を形成するための所定間隔は、0.05〜0.5μmの範囲が適正であり、前記所定間隔を0.05μm未満に小さくした場合、観察時間が増えても三次元構築した際の画像品位は余り良くならず、前記所定間隔を0.5μmを越えて大きくすると、介在物3の形状情報が粗くなって三次元再構築画像の品位が低下する。
尚、上記の様な2次観察断面P2を連続的に形成するためには、予め図1(b)の如く、介在物3や亀裂4の大きさに合わせて、これらの周囲をFIBにより除去して溝部5を形成しておき、規定した2次観察断面P2を転動体転がり方向Fに沿って所定間隔で切り出しつつ、SEM観察を繰り返すのが好ましい。
【0043】
次いで、図1(c)に示す如く、前記2次観察工程で取得した断層写真6を任意の画像処理ソフトを用いて3次元再構築し、介在物3の3次元形状と亀裂4の3次元形状を評価する(画像処理工程)。その際、介在物3表面や亀裂4は、各断層写真上で色付け(マーキング)するなどして、分かり易く表現するなどを実施しても良い。
【0044】
以上説明した通り、本発明の実施の形態1に係る介在物及び亀裂の3次元構造観察方法によれば、転動疲労を受けた部材の3次元構造観察方法において、1次観察断面と2次観察断面とを適切に形成することによって、被観察部材から介在物と亀裂の存在位置を同時に早く見出し得ると共に、前記2次観察断面を加工するFIB加工条件を適正化することによって、介在物や亀裂の形状情報を粗くすることなく、高品位の3次元再構築画像が得られる。
【実施例1】
【0045】
観察対象とする鋼材としてJIS G4805のSUSJ2を用い、転動疲労を負荷された試験片を被検体とする実施例につき、以下添付図5〜7を参照しながら説明する。図5は実施例に係り、2次観察工程におけるFIBビーム電流値の違いによる断面加工品位の差異を示す図面代用写真であって、同図(a)はビーム電流3nAの実施例、同図(b)はビーム電流25nAの比較例を示す。また、図6は実施例に係り、2次観察工程により取得した図面代用断層写真の例、図7は実施例に係り、3次元再構築した介在物と亀裂の画像のスケッチ例を示す。
【0046】
直径3/8インチのボールを転動体として、3球式で総計3920Nの荷重条件でスラスト転動疲労試験を実施し、所定回数負荷後に停止した試験片の断面を種々の方向に切断・研磨して被検体とした。次いで、この被検体を光学顕微鏡により介在物と亀裂を特定し、種々の条件でFIB−SEM装置による断層写真を取得し、画像処理により3次元再構築を実施した。FIB−SEM装置はFEI(FEI Company)社製のHlicos600を、画像処理にはVSG(Visual Science Group)社製の画像解析ソフトAvizoを用いた。
【0047】
上記被検体の評価として、断面加工品は、加工痕の程度の大小で亀裂が識別できるかどうかを基準として、3次元再構築画像は、亀裂や介在物の形状が滑らかであるか、或いは不自然に屈曲しているかどうかを基準として、夫々の品位を判定した。また、亀裂の観察可否は、1次観察工程及び2次観察工程の両方で観察可能なものを良好と判定した。
【0048】
被検体の各観察断面の加工条件、断面加工品及び3次元再構築画像の品位判定結果、並びに亀裂の観察可否について表1にまとめた。実施例1〜6は、何れも本発明に係る介在物及び亀裂の3次元構造観察方法に適合する加工条件のものであって、FIB断面加工品位及び3次元画像品位の何れも良好な上、亀裂の観察も全て可能であった。
【0049】
これらの結果によれば、1次観察断面が転動体転がり方向となす角度αが0度(平行)、前記断面が転動面となす角度βが90度(直角)で、かつ2次観察断面が転動体転がり方向となす角度θも90度(直角)である場合、FIB加工条件を適切に選択すれば、3次元再構築画像は良好な品位が得られ、亀裂の観察も可能であることが分かる(実施例1〜3,6参照)。
【0050】
しかしながら、2次観察断面が転動体転がり方向となす角度θが略直角(60度)の場合(実施例4)や、1次観察断面が転動面となす角度βが必ずしも直角でない略直角(60度)で、かつ2次観察断面が転動体転がり方向となす角度θも略直角(120度)の場合(実施例5参照)でも、FIB加工条件を適切に選択すれば、3次元再構築画像は良好な品位が得られ、亀裂の観察も可能であることが分かる。
【0051】
【表1】

【0052】
また、2次観察断面を連続的に形成する所定間隔が0.05〜0.5μm、FIB加速電圧が20〜35kV、FIBビーム電流が0.5〜10nAの範囲であれば、2次観察断面の良好な加工品位が得られる。例えば、FIB加速電圧30kV、ビーム電流3nAで2次観察断面を形成した実施例1では、断面加工品位は図5(a)に示す如く高品位なものであったが、FIB加速電圧45kV、ビーム電流25nAで2次観察断面を形成した比較例12では、断面加工品位は図5(b)に示す如く低品位であった。
【0053】
1次観察断面及び2次観察断面を適切な加工条件で加工した実施例1の場合は、図6に示す如く良好な2次観察断面が得られ、3次元再構築画像には、図7に示す様に介在物3と亀裂4が明瞭に識別される。
【0054】
一方、1次観察断面が転動体転がり方向となす角度αを0度(平行)としても、前記断面が転動面となす角度βも0度(平行)とし場合は、1次観察断面の1次観察により介在物と亀裂を見出すことができなかった(比較例7参照)。また、1次観察断面が転動体転がり方向となす角度αを0度(平行)、前記断面が転動面となす角度βを90度(直角)としても、2次観察断面が転動体転がり方向となす角度θを0度(平行)や30度(略平行)とした場合は、2次観察断面の2次観察により亀裂を見出したり、識別するのが困難であった(比較例8,9参照)。
【0055】
更に、1次観察断面や2次観察断面を適正に形成したとしても、断面加工間隔が粗過ぎると、3次元再構築したときの画像が粗くなり(比較例10参照)、FIB加工のビーム電流または/及び加速電圧が大き過ぎると2次断面の加工品位が悪くなり、亀裂の観察が難しかった(比較例11,12参照)。一方、FIBビーム電流が小さ過ぎると、十分な範囲の観察視野が得られず、うまく観察ができなかった(比較例13参照)。
【0056】
次に、本発明の実施の形態2に係る介在物及び亀裂の3次元構造観察方法に関し、ねじり疲労を受けた部材を被検体とする態様例につき、以下添付図8を参照しながら説明する。図8は本発明の実施の形態2に係り、ねじり軸方向と各観察断面の関係を示す斜視図である。
尚、本発明の実施の形態2が上記実施の形態1と相違するところは、疲労の形態とそれに伴う観察断面の構成にあり、その他は全く同構成であるから、疲労の形態とそれに伴う観察断面の構成についての説明に止めるものとする。
【0057】
即ち、本発明の実施の形態1においては、転動疲労の繰り返し負荷を受けた部材から、転動体1が転動した直下の転動軌道部分を切り出して被検体2とし、転動体転がり方向Fに対して略平行な角度αをなし、かつ前記転動体1が転がった転動面Pに対して略直角な角度βをなす1次観察断面P1を形成して1次観察する一方、更にFIB−SEM装置を用いて、前記転動体転がり方向Fに対して略直角な角度θをなす2次観察断面P2を、転動体転がり方向Fに沿って所定間隔で連続的に形成して2次観察する。
【0058】
それに対し、本発明の形態2においては、ねじり疲労の繰り返し負荷を受けた部材から、ねじり軸7の周囲部分を切り出して被検体2とし、この被検体2のねじり軸7と略平行な角度γをなし、かつ前記被検体2の半径方向Rに対して略直角な角度δをなす断面を切断する。次いで、この断面を樹脂埋めし、介在物と亀裂が見えるところまで研磨していき、できる限り介在物と亀裂の一部が見えたところで中断して1次観察断面P1を形成し、1次観察を行なう。更にFIB−SEM装置を用いて、前記ねじり軸7方向と略平行な角度λをなし、かつ前記半径方向Rに略平行な角度νをなす2次観察断面P2を、ねじり軸7方向に沿って所定間隔で連続的に形成して2次観察する。
【0059】
ここで、1次観察断面P1がねじり軸7方向となす略平行な角度γ、2次観察断面P2がねじり軸7方向となす略平行な角度λ及び2次観察断面P1が半径方向Rとなす略平行な角度νが−30度〜+30度の範囲であると共に、前記1次観察断面P1が前記半径方向Rとなす略直角な角度δが60度〜120度の範囲であるのが好ましい。
【0060】
従って、ねじり疲労の繰り返し負荷を受けた部材に係る介在物及び亀裂の3次元構造観察方法においても、1次観察断面P1と2次観察断面P2とを適切に形成することによって、被検体2から介在物3と亀裂4の存在位置を同時に早く見出すと共に、前記2次観察断面P2を加工するFIB加工条件を適正化することによって、介在物3や亀裂4の形状情報を粗くすることなく、高品位の3次元再構築画像が得られる。
【0061】
以上の通り、本発明の実施の形態2に係る介在物及び亀裂の3次元構造観察方法によれば、ねじり疲労を受けた部材の3次元構造観察方法において、実施の形態2と同様、1次観察断面と2次観察断面とを適切に形成することによって、被観察部材から介在物と亀裂の存在位置を同時に早く見出し得ると共に、前記2次観察断面を加工するFIB加工条件を適正化することによって、介在物や亀裂の形状情報を粗くすることなく、高品位の3次元再構築画像が得られる。
【実施例2】
【0062】
転動疲労を負荷した試験片を被検体とし、本発明の実施の形態2に基づき実施した以外は前記実施の形態1と同様な条件により、1次観察断面及び2次観察断面の加工条件を変更して形成し、3次元再構築画像の取得を試みた。
その結果、表2に示す如く、1次観察断面がねじり軸方向となす角度γが0度(平行)、前記断面が半径方向となす角度δが90度(直角)、2次観察断面がねじり軸方向となす角度λ及び前記断面が半径方向となす角度νが0度(平行)で、前記2次観察断面を加工するFIB加工条件を適正化することによって、高品位の加工断面と3次元再構築画像が得られた(実施例21参照)。
【0063】
一方、1次観察断面が半径方向となす角度δが90度(直角)、2次観察断面が半径方向となす角度νが0度(平行)であるものの、前記1次観察断面がねじり軸方向となす角度γが90度(直角)であると、1次観察で介在物と亀裂を見出せず(比較例22参照)、前記2次観察断面がねじり軸方向となす角度λが90度(直角)であると、2次観察において亀裂の観察が困難であった(比較例23参照)。
【0064】
【表2】

【0065】
次に、本発明の実施の形態3に係る介在物及び亀裂の3次元構造観察に関し、ねじり疲労を受け破断した部材を被検体とする態様例につき、以下添付図9を参照しながら説明する。図9は本発明の実施の形態3に係り、ねじり軸方向と各観察断面の関係を示す斜視図である。
尚、本発明の実施の形態3が上記実施の形態1と相違するところは、疲労の形態とそれに伴う観察断面の構成にあり、その他は全く同構成であり、上記実施の形態2と相違するところは観察断面の構成にあるため、疲労の形態及び観察断面の構成についての説明に止めるものとする。
【0066】
即ち、本発明の実施の形態1においては、転動疲労の繰り返し負荷を受けた部材から、転動体1が転動した直下の転動軌道部分を切り出して被検体2とし、転動体転がり方向Fに対して略平行な角度αをなし、かつ前記転動体1が転がった転動面Pに対して略直角な角度βをなす1次観察断面P1を形成して1次観察する一方、更にFIB−SEM装置を用いて、前記転動体転がり方向Fに対して略直角な角度θをなす2次観察断面P2を、転動体転がり方向Fに沿って所定間隔で連続的に形成して2次観察する。
【0067】
また、本発明の形態2においては、ねじり疲労の繰り返し負荷を受けた部材から、ねじり軸7の周囲部分を切り出して被検体2とし、この被検体2のねじり軸7と略平行な角度γをなし、かつ前記被検体2の半径方向Rに対して略直角な角度δをなす断面を切断する。次いで、この断面を樹脂埋めし、介在物と亀裂が見えるところまで研磨していき、できる限り介在物と亀裂の一部が見えたところで中断して1次観察断面P1を形成し、1次観察を行う。更にFIB−SEM装置を用いて、前記ねじり軸7方向と略平行な角度λをなし、かつ前記半径方向Rに略平行な角度νをなす2次観察断面P2を、ねじり軸7方向に沿って所定間隔で連続的に形成して2次観察する。
【0068】
それらに対し、本発明に係る実施の形態3においては、ねじり疲労の繰返し負荷を受け破断した部材を被検体2とし、破断によって生じた破面を1次観察断面P1とし、1次観察を行う。更にFIB−SEM装置を用いて、破面法線8方向に略平行な角度Ψをなし、かつ破面半径方向R´に対して略直角な角度φをなす2次観察断面P2を、破面半径方向R´に沿って所定間隔で連続的に形成して2次観察する。
【0069】
ここで、2次観察断面P2が破面法線8方向となす略平行な角度Ψが-30度〜+30度の範囲であると共に、2次観察断面P2が破面半径方向R´となす略直角な角度φが60〜120度であることが好ましい。
【0070】
その結果、ねじり疲労の繰返し負荷を受け破断した部材に係る介在物及び亀裂の3次元構造観察方法においても、1次観察断面P1と2次観察断面とを適切に形成することによって、被検体2から介在物3と亀裂4の存在位置を同時に早く見出すと主に、前記2次観察断面を加工するFIB加工条件を適正化するとによって、介在物や亀裂の形状情報を粗くすることなく、高品位の3次元再構築画像が得られる。
【実施例3】
【0071】
ねじり疲労の繰返し負荷を受け破断した試験片を被検体とし、本発明の実施の形態3に基づき実施した以外は前記実施の形態2と同様な条件により、2次観察断面の加工条件を変更して形成し、3次元再構築画像の取得を試みた。
その結果、表3に示す如く、2次観察断面の破面法線方向となす角度Ψが0度(平行)、前記断面の破面半径方向となす角度φが90度(直角)で、前記2次観察断面を加工するFIB加工条件を適正化することによって、高品位の加工断面と3次元再構築画像が得られた(実施例24参照)。
【0072】
一方、2次観察断面の破面法線方向となす角度Ψが90度(直角)、前記断面の破面半径方向となす角度φが0度(平行)、或いは、前記2次観察断面の破面法線方向となす角度Ψが0度(平行)、前記断面の破面半径方向となす角度φが0度(平行)であると、何れの場合も2次観察において亀裂の観察が困難であった(比較例25,26参照)。
【0073】
【表3】

【符号の説明】
【0074】
F:転動体転がり方向,
P:転動面,
P1:1次観察断面,
P2:2次観察断面,
R:半径方向,
R´:破面半径方向
1:転動体,
2:被検体,
3:介在物,
4:亀裂,
5:溝部,
6:断層写真,
7:ねじり軸,
8:破断法線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転動体による転動疲労を受けた部材の転動軌道直下において、転動体転がり方向に対して略平行な角度をなし、かつ前記転動体が転がった転動面に対して略直角な角度をなす1次観察断面を切断・研磨して形成した後、この1次観察断面を観察して介在物または介在物と亀裂位置を特定する1次観察工程と、
更に収束イオンビームを用いて、前記転動体転がり方向に対して略直角な角度をなす2次観察断面を、該転動体転がり方向に沿って所定間隔で連続的に形成して、連続的な断層写真を取得する2次観察工程と、
前記断層写真を3次元に再構築して3次元的な内部の介在物と亀裂の構造を評価する画像処理工程とを含む、介在物及びこの介在物を起点として発生する亀裂の3次元構造観察方法であって、
前記2次観察断面を連続的に形成する所定間隔が0.05〜0.5μm、前記収束イオンビームの加速電圧が20〜35kV、ビーム電流が0.5〜10nAの範囲であることを特徴とする介在物及び亀裂の3次元構造観察方法。
【請求項2】
前記1次観察断面が前記転動体転がり方向となす略平行な角度が−30度〜+30度の範囲であると共に、前記1次観察断面が前記転動面となす略直角な角度、及び前記2次観察断面が前記転動体転がり方向となす略直角な角度が60度〜120度の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の介在物及び亀裂の3次元構造観察方法。
【請求項3】
ねじり疲労を受けた部材において、この部材のねじり軸と略平行な角度をなし、かつ前記ねじり軸に直交する半径方向に対して略直角な角度をなす1次観察断面を切断・研磨して形成した後、この1次観察断面を観察して介在物または介在物と亀裂位置を特定する1次観察工程と、
更に収束イオンビームを用いて、前記ねじり軸方向と略平行な角度をなし、かつ前記半径方向に略平行な角度をなす2次観察断面を、該ねじり軸方向に沿って所定間隔で連続的に形成して、連続的な断層写真を取得する2次観察工程と、
前記断層写真を3次元に再構築して3次元的な内部の介在物と亀裂の構造を評価する画像処理工程を含む、介在物及びこの介在物を起点として発生する亀裂の3次元構造観察方法であって、
前記2次観察断面を連続的に形成する所定間隔が0.05〜0.5μm、前記収束イオンビームの加速電圧が20〜35kV、ビーム電流が0.5〜10nAの範囲であることを特徴とする介在物及び亀裂の3次元構造観察方法。
【請求項4】
前記1次観察断面が前記ねじり軸となす略平行な角度、前記2次観察断面が前記ねじり軸となす略平行な角度及び前記2次観察断面が前記半径方向となす略平行な角度が−30度〜+30度の範囲であると共に、前記1次観察断面が前記半径方向となす略直角な角度が60度〜120度の範囲であることを特徴とする請求項3に記載の介在物及び亀裂の3次元構造観察方法。
【請求項5】
ねじり疲労を受け破断した部材において、破断によって生じた破面を1次観察断面とし、この1次観察断面に対して略法線方向から観察して介在物及び/または介在物と亀裂位置を特定する1次観察工程と、
更に収束イオンビームを用いて、前記破面の法線方向に略平行な角度をなし、かつ前記破面の半径方向に略直角な角度をなす2次観察断面を、該破面の半径方向に沿って所定間隔で連続的に形成して、連続的な断層写真を取得する2次観察工程と、
前記断層写真を3次元に再構築して3次元的な内部の介在物と亀裂の構造を評価する画像処理工程を含む、介在物及びこの介在物を起点として発生する亀裂の3次元構造観察方法であって、
前記2次観察断面を連続的に形成する所定間隔が0.05〜0.5μm、前記収束イオンビームの加速電圧が20〜35kV、ビーム電流が0.5〜10nAの範囲であることを特徴とする介在物及び亀裂の3次元構造観察方法。
【請求項6】
前記2次観察断面が前記破面の半径方向となす略直角な角度が60度〜120度であることを特徴とする請求項5に記載の介在物及び亀裂の3次元構造観察方法。












































【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−208110(P2012−208110A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249873(P2011−249873)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願〔平成19年度 独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの助成事業、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの〕
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】