説明

仕切弁

【課題】部材を回転させて締め付ける作業を必要とせず、上蓋の固定や解体を手軽な作業で行うことができる仕切弁を提供する。
【解決手段】管路の一部を構成する弁箱と、弁箱内の流路を遮断する閉位置と該流路を開放する開位置との間で変位する弁体と、弁体の変位を操作可能な弁軸23と、弁軸23を回転自在に支持する弁蓋25とを有する仕切弁において、弁蓋25が、弁蓋25の頂面に設けられた開口部に嵌入されて弁軸23を頂面側から支持するブッシュ16と、ブッシュ16を覆って開口部を遮蔽する上蓋17とを備える。ブッシュ16は、バヨネット機構により開口部に係止される。上蓋17に形成されている貫通孔17aにブッシュ16に設けられたかしめ突起16cを挿通し、かしめ突起16cをかしめることにより、上蓋17がブッシュ16に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道などの流体管路に使用される仕切弁に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水道管などの既設流体管の途中に分岐管を設ける分岐管接続工事では、管路を上流側で止水することなく不断水の状態を維持したまま、流体管の周壁を穿孔し、分岐管を接続する工法が採用されている。かかる工法では、弁軸の操作に応じて弁箱内の流路を開閉自在に変位する弁体を内蔵した仕切弁と、流体管の穿孔箇所を取り囲んで装着される分岐ケースとを備えた分岐管接続装置が用いられ、その分岐ケースに仕切弁を介在させて分岐管が接続される。
【0003】
本出願人による特許文献1には、図21に示すような、上下二つ割りの分岐ケース91と、その分岐ケース91の分割面に端部を挟み込んで接続される仕切弁92とを備えた分岐管接続装置が開示されている。この装置では、分岐ケース91の分割面90が略水平方向に位置し、その分割面90の締結により分岐ケース91と仕切弁92とが接続されるため、地盤変動などにより管軸方向の大負荷が作用したとしても、締結具98のボルトが伸長する方向に負荷が作用しにくく、分岐ケース91の開口を抑えて流体の漏出を効果的に防止できる。
【0004】
施工の際には、図21のように仕切弁92に穿孔装置96を接続し、弁体93を上昇させてから、カッター97を前進させて水道管Kの周壁を穿孔する。穿孔が完了したら、カッター97を後退させ、弁体93を下降して仕切弁92の内部を遮断する。続いて、仕切弁92から穿孔装置96を取り外し、代わりに分岐管(不図示)を接続する。その後、弁体93を上昇させて仕切弁92の内部を開放すれば、水道管Kから分岐管へと水が流れる。かかる工法によれば、断水することなく既設の水道管に分岐管を接続できるため、利便性に優れる。
【0005】
仕切弁92は、管路の一部を構成する弁箱94と、弁箱94内の流路を遮断する閉位置(図21参照)と該流路を開放する開位置との間で変位する弁体93と、弁体93の変位を操作可能な弁軸95と、弁軸95を内蔵する弁蓋99とを有する。この弁体93は、箱状をなすボディ93aの全面に肉厚のシールゴムをライニングして形成されており、管軸方向における厚みT9が大きくなりがちであるため、仕切弁92の面間寸法L9が大きく確保されている。
【0006】
ところで、上記のようなソフトシール仕切弁92では、弁蓋99が弁軸95を回転自在に支持しており、その弁軸95の回転操作に伴って弁体93を変位できるように構成されている。弁蓋99の頂面には開口部が設けられていて、弁軸95の頂部を突出させた状態で、その開口部を遮蔽するように上蓋が取り付けられている。従来、上蓋の固定には、特許文献2,3に開示されているような複数本のボルトで締結する方式が採用されるが、ボルトの締め付け作業に手間がかかるという問題があった。
【0007】
特許文献4に記載の仕切弁では、複数本のボルトで締結する方式に代えて、弁軸を回転自在に支持するパッキン箱を内蔵し、そのパッキン箱を上蓋や押え蓋に螺着する方式を採用している。しかし、この仕切弁においても、やはり部材を回転させて締め付ける作業が必要となり、それ相応に手間がかかってしまう。加えて、パッキン箱の外周面や、上蓋と押え蓋の内周面にネジ切り加工を施さねばならないため、製造コストが高くなる傾向にある。
【0008】
特許文献5に記載の遮断アーマチュア(仕切弁に相当)では、スピンドルに突設した軸受カラーを軸受フランジとシール支持体とで挟み込み、そのシール支持体をバヨネット機構により係止してネックリング(上蓋に相当)で包囲するように構成している。しかし、この装置では、フック形状のばねアームでネックリングを係止するため、ネックリングの解体作業が煩雑になりやすい。また、スピンドルの回転に伴ってシール支持体が共廻りする恐れがあり、解体時の安全性にも問題があると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−309474号公報
【特許文献2】特開2008−95795号公報
【特許文献3】実開昭55−127169号公報
【特許文献4】実開平04−117264号公報
【特許文献5】特表2005−535839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、部材を回転させて締め付ける作業を必要とせず、上蓋の固定や解体を手軽な作業で行うことができる仕切弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。即ち、本発明に係る仕切弁は、管路の一部を構成する弁箱と、前記弁箱内の流路を遮断する閉位置と該流路を開放する開位置との間で変位する弁体と、前記弁体の変位を操作可能な弁軸と、前記弁軸を回転自在に支持する弁蓋とを有する仕切弁において、前記弁蓋が、前記弁蓋の頂面に設けられた開口部に嵌入されて前記弁軸を頂面側から支持するブッシュと、前記ブッシュを覆って前記開口部を遮蔽する上蓋とを備え、前記ブッシュが、バヨネット機構により前記開口部に係止され、前記上蓋に形成されている貫通孔に前記ブッシュに設けられたかしめ突起を挿通し、前記かしめ突起をかしめることにより、前記上蓋が前記ブッシュに固定されているものである。
【0012】
この仕切弁では、弁軸を頂面側から支持するブッシュがバヨネット機構により弁蓋の開口部に係止され、そのブッシュのかしめ突起をかしめることにより上蓋がブッシュに固定されることから、上蓋を固定するに際し、部材を回転させて締め付ける作業を必要としない。加えて、ネジ切り加工を施さなくて済み、製造コストが抑えられる。また、上蓋を解体するに際しては、かしめ突起のかしめた部分をグラインダーなどで研削するだけでよく、手軽な作業で行うことができる。
【0013】
本発明の仕切弁では、前記バヨネット機構が、前記開口部の内周面に形成された第1張出部と、前記ブッシュの外周面に形成された第2張出部とを係止させるものであり、前記開口部の内周面には、前記第2張出部の侵入を許容する切欠部が形成され、前記上蓋に設けられた回転防止突起を前記切欠部に挿入することにより前記ブッシュの回転を防止可能に構成されているものが好ましい。
【0014】
これにより、弁軸の回転に伴うブッシュの共廻りを防止して、上蓋を解体したときの安全性を確保することができる。即ち、ブッシュの共廻りを許容する構造であると、気付かない間にバヨネット機構によるブッシュの係止が解除されてしまい、上蓋の解体時に弁軸が不意に抜け出して危険であるのに対し、本発明の上記構成によれば、そのような事態を未然に防いで、解体作業を手軽に行うことができる。
【0015】
本発明の仕切弁では、前記開口部に筒状のカラーが嵌入され、前記弁軸に設けられた鍔部を前記ブッシュと前記カラーとで挟み込んで前記弁軸を回転自在に支持しているものが好ましい。かかる構成により、弁軸を安定して且つ円滑に回転するように支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る仕切弁を備えた分岐管接続装置の一例を示す縦断面図
【図2】閉位置にある弁体を示す要部断面図
【図3】弁軸を支持する弁蓋の頂面周辺を示す縦断面図
【図4】図3のX−X矢視断面図
【図5】弁蓋の頂面周辺を示す(a)平面図と(b)縦断面図
【図6】ブッシュの(a)平面図と(b)正面視半断面図
【図7】上蓋の(a)正面視半断面図と(b)底面図
【図8】上蓋を固定する前の状態を示す縦断面図
【図9】仕切弁の側面図とロックピンの平面図
【図10】弁蓋の正面図
【図11】弁箱と弁蓋との接合部位を示す仕切弁の縦断面図
【図12】弁箱と弁蓋との接合部位の変形例を示す縦断面図
【図13】図12のシール材の圧縮前の状態を示す図
【図14】弁体の(a)正面図、(b)背面図、及び、(c)縦断面図
【図15】弁体の閉位置への(a)移行完了直前と(b)移行完了の状態を示す断面図
【図16】切欠きに入り込んだ突起を示す要部断面図
【図17】開位置へ移行するときの弁体を示す要部断面図
【図18】仕切弁に穿孔装置を接続した状態を示す図
【図19】本発明の別実施形態に係る仕切弁を示す要部断面図
【図20】図19に示した弁体の(a)正面図、(b)背面図、及び、(c)縦断面図
【図21】上記特許文献1に開示されている分岐管接続装置を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る仕切弁の実施形態について、既設の水道管(流体管の一例)に分岐管を接続する場合を例に挙げ、図面を参照しながら説明する。図1に示した分岐管接続装置は、既設管である水道管Kを取り囲んで装着され、その水道管Kの周方向で複数に分割された分岐ケース1と、分岐ケース1の分割面10に端部を挟み込んで接続された仕切弁2とを備える。
【0018】
仕切弁2は、管路の一部を構成する弁箱21と、弁箱21内の流路を遮断する閉位置と該流路を開放する開位置との間で変位する弁体22と、弁体22の変位を操作可能な弁軸23と、弁軸23を回転自在に支持する弁蓋25とを有する。弁箱21は、両端部の間が連通可能な管状体により形成され、水道管Kから分岐して設けられる管路の一部を構成する。この仕切弁2では、図1右側の分岐管側端部にフランジを形成しているが、端部の形状は特に制約されず、例えば分岐管の挿口端部を接続可能な受口形状にしても構わない。
【0019】
弁箱21の上方には挿通口24が貫通形成されており、この挿通口24を通じて弁体22が弁箱21の内外を出入りできる。図1では、弁体22が上昇して開位置にある状態を示しており、この弁体22が下降すると、図2に示した閉位置に移行して弁箱21内の流路を遮断する。弁蓋25は、弁箱21から管径方向外側に突き出して設けられ、挿通口24を覆いつつ、弁軸23と開位置にある弁体22とを収容している。弁蓋25の頂面から突出した弁軸23の頂部23aには、必要に応じて治具(不図示)が取り付けられる。
【0020】
図3〜5に拡大して示すように、弁蓋25の頂面には、弁軸23が通過する開口部25bが設けられている。弁蓋25は、開口部25bに嵌入されて弁軸23を頂面側から支持するブッシュ16と、そのブッシュ16を覆って開口部25bを遮蔽する上蓋17とを備える。ブッシュ16は、図6に示すような筒状の部材であって、挿通孔16aに弁軸23を挿通した状態で、弁軸23に設けられた鍔部23bを上方から受け止め、開口部25bから弁軸23が抜け出さないように支持する。
【0021】
ブッシュ16は、バヨネット機構によって開口部25bに係止される。本実施形態では、バヨネット機構が、開口部25bの内周面に形成された一対の張出部25c(第1張出部)に、ブッシュ16の外周面に形成された一対の張出部16b(第2張出部)を係止させるように構成されている。張出部25cは、開口部25bの内周面に内鍔状に設けられ、その一対の張出部25cの間に、ブッシュ16の張出部16bの侵入を許容する一対の切欠部25dが形成されている。
【0022】
つまり、このバヨネット機構では、開口部25bに嵌入したブッシュ16の張出部16bを切欠部25dに侵入させた後、そのブッシュ16を軸芯周りに変位させて、張出部16bを張出部25cに対面させることで、ブッシュ16が開口部25bに係止される状態となる。また、係止状態にあるブッシュ16を軸芯周りに変位させて、張出部16bと張出部25cとが対面しないようになると、開口部25bからブッシュ16が外れる状態になる。
【0023】
ブッシュ16の上面には、図6に示すように一対のかしめ突起16cが設けられ、上蓋17には、図7に示すように一対の貫通孔17aが形成されている。かしめ突起16cは、ブッシュ16を覆う上蓋17の貫通孔17aに挿通され、そのかしめ突起16cをかしめることにより上蓋17がブッシュ16に固定されている。図8は、上蓋17を固定する前の状態であり、かしめ突起16cの出代をハンマー等で叩いてかしめることで、図3の状態となる。ブッシュ16は、例えば砲金により作製されるが、これに限定されない。
【0024】
このように、仕切弁2では、ブッシュ16をバヨネット機構により開口部25bに係止した後、上蓋17で覆ったブッシュ16のかしめ突起16cをかしめることで、上蓋17が弁蓋25に固定される。したがって、部材を回転させて締め付ける作業を必要とせず、ブッシュ16や上蓋17にネジ切り加工を施さなくて済む。それでいて、何らかの事情により上蓋17を解体する場合には、かしめ突起16cのかしめた部分をグラインダーなどで研削するだけでよく、手軽な作業で行うことができる。
【0025】
本実施形態では、上蓋17に一対の回転防止突起17bを設けており、それらを図4のように切欠部25dに挿入することで、ブッシュ16の回転を防止している。これにより、弁軸23の回転に伴ってブッシュ16が共廻りすることなく、気付かない間にバヨネット機構によるブッシュ16の係止が解除されることを防いで、上蓋17を解体したときの安全性を確保できる。回転防止突起17bは、切欠部25dに対応した湾曲形状をしており、ブッシュ16を上蓋17で覆う際に切欠部25dに挿入される。
【0026】
また、本実施形態では、開口部25bに筒状のカラー18を嵌入し、鍔部23bをブッシュ16とカラー18とで挟み込んで弁軸23を回転自在に支持している。かかる構成により、弁軸23を安定して且つ円滑に回転するように支持することができる。カラー18は、弁軸23との摩擦抵抗が小さい材料で形成されることが好ましく、例えばジュラコン(登録商標)などの樹脂で作製されるが、これに限定されない。
【0027】
本実施形態では、弁箱21と弁蓋25が別体であり、図9に示すように、一組のロックピン4を用いて弁箱21と弁蓋25とを接合する例を示す。図10は、弁蓋25の正面図であり、図11は、弁箱21と弁蓋25との接合部位を示す仕切弁2の縦断面図である。図1,2の断面は図10のA−A矢視に対応し、図11の断面は図10のB−B矢視に対応している。弁箱21の外周面には上方が開口した箱状部21aが設けられ、そこに弁蓋25の下端部を差し込んでいる。
【0028】
ロックピン4は、一対の挿入軸4aを備えたU字状をなし、弁箱21と弁蓋25との接合部位に形成された孔に挿入されている(図9で描かれない反対側においても同様)。この孔は、箱状部21aの内壁に形成された凹溝21bと、弁蓋25の下端部に形成された凹溝25aとが、互いに向かい合うことにより構成される。ロックピン4を挿入した状態では、弁蓋25が挿入軸4aを介して弁箱21と係合し、弁箱21と弁蓋25とが堅固に接合される。
【0029】
シール材21cは、箱状部21aの内壁に形成された窪みに嵌め込まれており、弁箱21と弁蓋25との間で圧縮されて、それらの隙間を密封している。かかる構成によれば、弁箱21に弁蓋25を接合する際に、シール材21cを取り付けた箱状部21aに弁蓋25の下端部を差し込んで、ロックピン4を差し込むだけでよいため、ボルトとナットで締結する構造(図21参照)に比べて、弁蓋25の着脱時の作業性を格段に向上できる。
【0030】
図12に示す変形例では、弁蓋25の下端部に形成された窪みにシール材20が嵌め込まれている。図11の構造では、弁箱21に弁蓋25を接合する際に、シール材21cが弁蓋25に押されて窪みから外れるという不具合が懸念されるのに対し、図12の構造であれば、シール材20を取り付けた弁蓋25の下端部を箱状部21aに差し込むことになるため、そのような不具合の発生を回避することができる。
【0031】
弁蓋25の下端部に取り付けられるシール材20は、圧縮される前の状態において、図13に例示するような形状をしている。これらシール材20の先端部20aは、断面略円形状をなして膨出形成されている。弁箱21に弁蓋25を接合した際には、箱状部21aの内壁に設けられている傾斜面21dに、シール材20の先端部20aが押し当たって十分に圧縮され、密封状態が的確に得られるように構成されている。
【0032】
弁体22は、開位置にて管軸方向(図1における左右方向)の片側から弁軸23に対向する板状体により形成され、詳しくは図14に示す通りである。かかる構造により、従来のソフトシール仕切弁が備える弁体と比べて、弁体22の厚みを大幅に低減できており、仕切弁2の面間寸法Lが短縮されたものとなっている。本例のように分岐管側端部にフランジを形成した場合、面間寸法Lは、管径に関わらず、例えば230mm以下に設定できる。本実施形態では、弁体22の厚みT(後述するボディ22aの厚み)が弁軸23の太さ(ネジ径)よりも小さく、シール材3の厚みtが弁体22の厚みTよりも小さい。
【0033】
また、仕切弁2は、分岐管側となる正面に薄膜状のシール材3を有しており、閉位置にある弁体22と弁箱21との間を、管軸方向に圧縮されるシール材3により密封するように構成してある。具体的には、弁箱21の内周面に形成された周溝26に、閉位置にある弁体22の周縁部が入り込み、その周溝26の溝壁面26aにシール材3が管軸方向から押し当たって圧縮される。このため、弁箱21の内周面に弁体22を強く押し付けて径方向に密着させる必要がなく、弁体22の厚みを低減しながらもシール機能を適切に確保できる。
【0034】
この仕切弁2では、弁体22を径方向に密着させる必要がないことから、水道管Kの穿孔時に発生した切粉が周溝26の溝底に溜まっていても、それによってシール機能が阻害されることがない。尚、本実施形態の弁箱21では、周溝26や弁体22に切粉が付着しないように、図2に示すように周溝26よりも既設管側に窪み36を形成し、そこに切粉が溜まるように対策している。窪み36の周辺にある切粉は、ドレン37を通じて外部に排出できる。
【0035】
図14のように、弁体22は、円板状のボディ22aと、そのボディ22aから上方に突出したヘッド22bと、ボディ22aの正面に接着された薄膜状のシール材3とを有する。ボディ22aは、止水に適した剛性の高い材料、例えばスチールなどの金属により形成され、シール材3は、ゴムなどの弾性材料により形成される。本実施形態では、シール材3がボディ22aの分岐管側に設けられているため、閉位置にある仕切弁2に水道管Kからの水圧が作用すると、シール材3の管軸方向への圧縮を促して密封性能が高められる。
【0036】
本実施形態のシール材3は円形に形成されているが、弁体22と弁箱21との間の密封に実質的に寄与するのは、弁体22の周縁部に沿って環状に延びた部分である。シール材3は、その環状の部分に、管軸方向に隆起して弁体22の周縁部に沿って延びるリップ部30を有している。リップ部30は、外側リップ31と、外側リップ31の内周側に凹溝33を介して形成され、外側リップ31よりも隆起高さの小さい内側リップ32とからなる。リップ部30は、溝壁面26aに対向して、後述するような圧縮作用を発現する。
【0037】
弁体22のヘッド22bには弁軸23が連結され、その弁軸23に対して、開位置にある弁体22が図1左側となる既設管側から対向する。弁軸23は、弁体22の変位方向に沿って延在する雄ねじ部材であり、この弁軸23に螺合した雌ねじこま27が、管軸方向に遊びをもった状態でヘッド22bに嵌め込まれている。頂部23aに取り付けたハンドルなどの治具(不図示)を介して弁軸23を回転操作すると、雌ねじこま27が上下動し、それに連動して弁体22が昇降する。
【0038】
既述のように、この仕切弁2では、弁体22の周縁部が周溝26に入り込むことで、シール材3による密封状態が得られる。このとき、周溝26の溝幅を弁体22の厚みTよりも適度に大きく設定しておくことで、弁体22の周縁部が周溝26に円滑に入り込み、仕切弁2を遮断する際のトルクが軽減される。しかし、その反面、シール材3が管軸方向に圧縮されにくくなるため、この仕切弁2では、図15に示すように弁箱21の内周面に突起5を設けている。
【0039】
図15は、図2の右方向から仕切弁2を見た図であり、周溝26の中央で弁箱21及び弁体22を切断した断面を描いている。周溝26の溝壁面26bには、複数の突起5が周方向に間隔を置いて設けられており、これらが弁体22の周縁部の背面を管軸方向に(本実施形態では分岐管側に)押圧して、シール材3の圧縮を促すように構成されている。かかる構成によれば、シール材3による密封状態を円滑に発現して、シール機能を良好に向上することができる。
【0040】
また、弁体22の周縁部が周溝26に入り始めてから閉位置への移行が完了するまで、弁体22は幾分か下降することになるが、この間にシール材3が溝壁面26aに押圧されると、シール材3が引きずられて損傷したり、トルクが増大したりする恐れがある。そこで、この仕切弁2では、弁箱21の内周面に突起5を設けるだけでなく、弁体22の突起5と対向する箇所に、傾斜面を有する切欠き6を形成している。切欠き6には、弁体22の閉位置への移行に伴って、突起5が入り込むようになっている。
【0041】
弁体22が閉位置へ移行するに際し、図15(a)から図15(b)の状態に至る過程では、図16に示すように、切欠き6に入り込んだ突起5が傾斜面に擦れるように接触する。このように、突起5が切欠き6の傾斜面に摺接して弁体22を徐々に押圧することで、シール材3の引きずりを抑えて少しずつ圧縮できるため、シール材3の損傷やトルクの増大を防止できる。本実施形態では、閉位置への移行が完了した図15(b)の状態で、切欠き6の上側に突起5が位置し、切欠き6から脱した突起5が弁体22を安定して押圧する。
【0042】
弁体22の閉位置への移行が完了すると、シール材3によって弁体22と弁箱21との間が密封される。このとき、溝壁面26aにはリップ部30が押し当たり、図14(c)のように、外側リップ31が凹溝33に入り込むようにして内周側に倒れ変形し、シール材3の圧縮作用が高められる。また、その倒れ変形した外側リップ31を内側リップ32で支えることで、シール材3の切れや剥がれを防止できる。更に、図17のようにリップ部30が挿通口24を通過する際には、外側リップ31よりも先に内側リップ32が弁箱21の内周面に当接しうるため、衝撃を和らげてシール材3の切れを防止できる。
【0043】
これに対し、内側リップ32を形成していない場合には、倒れ変形した外側リップ31を支えられないことでリップ部30が全体的に内周側に引っ張られ、シール材3がボディ22aから剥がれてしまう懸念がある。また、リップ部30が凹溝33を具備せずに単なる山状に隆起している場合には、上述した圧縮作用の向上が得られないうえ、付け根から切れてしまう懸念がある。凹溝33は、本実施形態のようなU字状溝であることが好ましく、それによって外側リップ31が内周側に倒れやすくなる。
【0044】
図14(b)に示すように、弁体22の背面には、上側と左右両側の三箇所に、管軸方向に突出したガイド部7が形成されている。ガイド部7の外面は、弁体22の変位方向に沿って傾斜しており、弁箱21におけるガイド部7との接触部位には、ガイド部7の外面と合致した傾斜を持つ傾斜面28が形成されている。これによって、弁体22を閉位置に移行する際には、ガイド部7と傾斜面28との接触により弁体22を案内して適切に位置決めできる。
【0045】
本実施形態では、仕切弁2の外周面に位置決め突起29を形成しており、これらは分岐ケース1との接続に利用される。分岐ケース1は、水道管Kに水密に装着可能な分割体1A,1Bにより構成され、図1にて上下2つ割となる割T字管形状をしている。分岐ケース1の分割面10では、分割体1A,1Bのフランジ同士が、ボルトとナットで構成した締結具11により締結される。この締結具11の締め付けにより、パッキン12,13を介して分割面10が水密に閉じられ、分岐ケース1に仕切弁2が接続される。
【0046】
分岐ケース1の分割面10が略水平方向に位置するため、地盤変動や経年変化などによる大負荷が発生しても、締結具11のボルトが伸長する方向に負荷が作用しにくく、分割面10の不意の開口を抑えて漏水を効果的に防止できる。仕切弁2の位置決め突起29は、分岐ケース1に形成した延出部15の凹部に嵌め込まれ、それによって仕切弁2が周方向に位置決めされる。かかる分岐ケースとしては、上記特許文献1のほか、本出願人による特開2009−127686号公報や特開2009−299826号公報に開示される構造も適用可能である。
【0047】
この分岐管接続装置を用いて既設の水道管Kに分岐管を接続する手順の一例について、簡単に説明する。まず、図1に示すように、分岐ケース1を水道管Kに外嵌して装着し、分割面10に仕切弁2の端部を挟み込んで水密に接続する。次に、図18に示すように、仕切弁2に穿孔装置8を接続し、カッター80で水道管Kの周壁を穿孔する。穿孔が完了したら、カッター80を後退させて、図2のように弁体22を閉位置に移行させる。
【0048】
この仕切弁2では面間寸法が抑えられるため、水道管Kの周壁を穿孔するに際してカッター80の移動ストロークが短くて済み、小型の穿孔装置を利用可能となる。本例のように分岐管側端部にフランジを形成した場合であれば、該フランジから水道管Kの周壁までの管軸方向距離は、仕切弁2の管径に関わらず、例えば240mm以下に設定することが可能である。
【0049】
本実施形態では、弁体22が弁軸23に対して分岐ケース寄り(即ち、水道管K側)に配置されているため、後退位置にあるカッター80に対して、閉位置にある弁体22を管軸方向に遠ざけて干渉を回避できるとともに、分岐ケース1から弁軸23を管軸方向に遠ざけることができるため、仕切弁2の面間寸法を巧みに短縮して、穿孔ストロークを有効に短くできる。仕切弁2から穿孔装置8を取り外して、代わりに分岐管(不図示)を接続し、弁体22を開位置に変位させれば、水道管Kからの分水が行われ、分岐管を利用できる状態となる。
【0050】
前述の実施形態では、分岐管側となる弁体の正面にシール材を設け、既設管側となる弁体の背面に切欠きやガイド部を設けた例を示したが、本発明では、図19のように、それらを逆に配置しても構わない。図19に示した弁体22では、中央のガイド部7が弁軸23に干渉することを防ぐため、図20に示すように中央のガイド部7に縦溝72を設けている。尚、錆止めなどを目的として、弁体の両面にゴムライニングを施しても構わない。
【0051】
本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。したがって、仕切弁の構造に関し、例えば弁箱と弁蓋を一体化に作製したり、ねじこまを使わずに弁軸に弁体を直接螺合したりしても構わない。或いは、前述の実施形態とは逆に、分岐管側となる弁体の正面にシール材を設け、弁体の背面に切欠きやガイド部を設けてもよく、開位置にある弁体を弁軸の分岐管側に配置しても構わない。
【0052】
前述の実施形態では、本発明に係る仕切弁を、既設水道管に分岐管を接続するための分岐管接続工事に用いる例を示したが、これに限定されるものではなく、上水道や下水道、農業用水、工業用水などの各種流体管路に使用される仕切弁において、特に制約なく適用できる。
【符号の説明】
【0053】
2 仕切弁
3 シール材
4 ロックピン
16 ブッシュ
16b 張出部(第2張出部)
16c かしめ突起
17 上蓋
17a 貫通孔
17b 回転防止突起
18 カラー
21 弁箱
21a 箱状部
21b 凹溝
21c シール材
21d 傾斜面
22 弁体
23 弁軸
23b 鍔部
25 弁蓋
25a 凹溝
25b 開口部
25c 張出部(第1張出部)
25d 切欠部
K 水道管(流体管の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路の一部を構成する弁箱と、前記弁箱内の流路を遮断する閉位置と該流路を開放する開位置との間で変位する弁体と、前記弁体の変位を操作可能な弁軸と、前記弁軸を回転自在に支持する弁蓋とを有する仕切弁において、
前記弁蓋が、前記弁蓋の頂面に設けられた開口部に嵌入されて前記弁軸を頂面側から支持するブッシュと、前記ブッシュを覆って前記開口部を遮蔽する上蓋とを備え、
前記ブッシュが、バヨネット機構により前記開口部に係止され、
前記上蓋に形成されている貫通孔に前記ブッシュに設けられたかしめ突起を挿通し、前記かしめ突起をかしめることにより、前記上蓋が前記ブッシュに固定されていることを特徴とする仕切弁。
【請求項2】
前記バヨネット機構が、前記開口部の内周面に形成された第1張出部と、前記ブッシュの外周面に形成された第2張出部とを係止させるものであり、
前記開口部の内周面には、前記第2張出部の侵入を許容する切欠部が形成され、前記上蓋に設けられた回転防止突起を前記切欠部に挿入することにより前記ブッシュの回転を防止可能に構成されている請求項1に記載の仕切弁。
【請求項3】
前記開口部に筒状のカラーが嵌入され、前記弁軸に設けられた鍔部を前記ブッシュと前記カラーとで挟み込んで前記弁軸を回転自在に支持している請求項1又は2に記載の仕切弁。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公開番号】特開2012−172731(P2012−172731A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33555(P2011−33555)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(396020361)株式会社水道技術開発機構 (113)
【Fターム(参考)】