説明

付香ニトリル

本発明は、2,6,6−トリメチル−シクロヘキサン−1−アセトニトリルのいくつかの不飽和誘導体の付香成分としての使用に関する。これらの化合物は、パチュリの匂い物質である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、香料の分野に関する。より詳述すれば、本発明は、シクロヘキサン−1−アセトニトリルの不飽和誘導体の付香成分としての使用に関する。本発明は、該化合物を含有する組成物又は物品にも関する。
【0002】
先行技術
式(I)の化合物の中で、2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセン−1−アセトニトリルは、先行技術から公知である。この化合物は、A.Murai et al. Chem.Lett.、1981、1125によって、又はT.Kato et al. Biorganic Chemistry、1975、188によって報告されている。該化合物2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−アセトニトリルは、文献(T.Kato et al.、及びA.F. Mateos et al.、J. Org. Chem.、1995、3580又はTetrahedron Lett.、1995、621を参照)においても報告されている。
【0003】
しかしながら、これらの先行技術文献は、それらの配合物のみを報告しており、かつ/又は他の化合物の配合物のための中間体として使用する。これらの文献は、式(I)の化合物のあらゆる官能的特性、又は香料の分野における前記化合物のあらゆる使用を報告又は示唆していない。
【0004】
香料における可能な使用に関して記載されている最密構造類似体は、2,2−ジメチル−3−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−プロピオニトリル(W.S. Brud et al. Int.Congr.Essent.Oils,第6版(1974),73,61頁、及びS.Arctander,Perfume and Flavor Chemicals,1969,Montclair,New Jersey,USA,N°1064を参照)である。しかしながら、前記構造だけではなく、この化合物の官能的特性もまた、本発明の物とは全く異なる。従って、先行技術の化合物は、本発明に先行しない。
【0005】
発明の説明
驚くべきことに、式
【化1】

[式中、Rは、水素原子又はメチル基を示し、1重の点線は、炭素−炭素二重結合を示し、かつ他の点線は、炭素−炭素一重結合を示す]
で示される2−シクロヘキサン−1−アセトニトリルの不飽和誘導体は、付香成分として、例えばパチュリタイプの匂いノートを付与するために使用されうることが、現在見出されている。
【0006】
本発明の特定の一実施態様によって、本発明は、Rが水素原子である化合物を使用してよい。
【0007】
本発明の他の特定の実施態様によって、本発明は、式
【化2】

[式中、1重の点線は、炭素−炭素二重結合を示し、かつ他の点線は、炭素−炭素一重結合を示す]で示される化合物を使用してよい。
【0008】
特に、本発明は、2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセン−1−アセトニトリルも使用してもよい。
【0009】
式(I)又は(II)の化合物は、あらゆる1つのその光学異性体(例えば、(+)−2−シクロヘキセン−1−アセトニトリル又は(−)−2−シクロヘキセン−1−アセトニトリル)、又はそれらの混合物の形成において使用されうる。
【0010】
さらに、式(I)及び/又は式(II)の種々の化合物の混合物(例えば、2−シクロヘキセン−1−アセトニトリルと1−シクロヘキセン−1−アセトニトリルとの混合物)を使用することもできる。
【0011】
本発明の化合物の特定の、及び制限されない例として、該化合物は、どういう訳かアーシーノートを有する非常に快適なウッディ−パチュリ特性によって特徴付けられる匂いを示す、2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセン−1−アセトニトリルを挙げてよい。その匂いは、ボトムに対して、非常に良いダマスコン及びタバコのアスペクトも生じる。
【0012】
ニトリルに関して、直ちにパチュリの匂いを連想させる強いウッディ−タバコノートを示すことは、極めて稀である。さらに、ダマスコンタイプのアスペクトの存在は、この化合物を、さらに調香師に関心を提供する。
【0013】
この化合物のパチュリ特性の質及び強度は、いくつかの適用において、(市場での入手のしやすさの問題の欠点を有する)天然パチュリの関心のある置換を達成する。
【0014】
他の例は、2,2,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−アセトニトリルである。
【0015】
本発明の化合物の匂いを、前記の先行技術の化合物の1つと比較する場合に、その時、本発明の化合物は、先行技術の化合物と異なり、パチュリノート及びダマスコン−タバコアスペクトを有することによって、それ自体を特徴付ける。さらに、本発明の化合物は、甘味、刺激性ノート、従って先行技術の化合物の特徴を欠く。
【0016】
前記のように、本発明は、付香成分として式(I)の化合物の使用に関する。言い換えれば、本発明は、付香組成物の又は着香物品の匂い特性を付与する、高める、改良する、又は改質する方法に関し、その際その方法は、該組成物又は物品に少なくとも1つの式(I)の化合物の有効量を付与することを含む。特に、本発明の化合物は、パチュリタイプの匂いノートを付与するために使用されうる。
【0017】
"式(I)の化合物の使用"に関しては、化合物(I)を含有し、かつ香料産業において活性成分として有利に使用されうるあらゆる組成物の使用も、本明細書で理解されるべきである。
【0018】
実際に付香成分として有利に使用されうる前記組成物は、本発明の目的でもある。
【0019】
従って、本発明の他の目的は、
i)付香成分として、少なくとも1つの前記で定義された本発明の化合物、
ii)香料キャリヤー及び香料基剤からなる群から選択される少なくとも1つの成分、並びに
iii)場合により、少なくとも1つの香料補助剤
を含有する付香組成物である。
【0020】
"香料キャリヤー"に関しては、本明細書で、実際に香料の観点から中立である、すなわち付香成分の官能的特性を著しく変質しない材料を意味する。該キャリヤーは、液体又は固体であってよい。
【0021】
液体キャリヤーとしては、制限されない例として、乳化系、すなわち溶剤及び界面活性剤系、又は香料において一般に使用される溶剤を挙げてよい。香料において一般に使用される溶剤の性質及びタイプの詳細な説明は、網羅されることができない。しかしながら、液体キャリヤーは、制限されない例として、最も一般的に使用される溶剤、例えばジプロピレングリコール、ジエチルフタレート、イソプロピルミリステート、ベンジルベンゾエート、2−(2−エトキシエトキシ)−1−エタノール又はエチルシトレートを挙げることができる。
【0022】
固体キャリヤーとしては、制限されない例として、吸収ゴムもしくはポリマー、又はさらに封入剤量を挙げてよい。
【0023】
かかる材料の例は、壁形成材料及び可塑材料、例えばモノ、ジ−もしくはトリサッカライド、天然もしくは化工デンプン、親水コロイド、セルロース誘導体、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、タンパク質もしくはペクチン、又はさらに引用文献、例えば H.Scherz,Hydrokolloids:Stabilisatoren,Dickungs− und Gehermittel in Lebensmittel,Band 2 der Schriftenreihe Lebensmittelchemie,Lebensmittelqualitaet,Behr’s VerlagGmbH & Co.,Hamburg,1996において挙げられる材料を含んでよい。封入は、当業者によく知られている方法であり、例えばスプレー乾燥、凝集もしくはさらに押出のような技術を使用して実施されてよく、又はコアセルベーション及び複合コアセルベーション技術を含む、被覆封入からなる。
【0024】
"香料基剤"に関しては、本明細書で、少なくとも1つの付香共成分を含む組成物を意味する。
【0025】
前記の付香共成分は、式(I)のものではない。さらに、"付香共成分"に関しては、本明細書で、快楽効果を付与するために付香調合物又は組成物において使用される化合物を意味する。言い換えれば、付香共成分であると考えられるべきかかる共成分は、当業者によって、積極的又は快適な方法で、組成物の匂いを付与又は改質することができ、ただ匂いを有するだけではないと、認識されなければならない。
【0026】
前記基剤に存在する付香共成分の性質及びタイプは、あらゆる場合において網羅的ではない、本明細書でのより詳細な記載を保証せず、その際当業者は、当業者の一般知識に基づいて、並びに意図された使用又は適用及び所望された官能的効果によって、それらを選択することができる。一般名で、それらの付香共成分は、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセテート、ニトリル、テルペン系炭化水素、窒素又は硫黄ヘテロ環式化合物、及び精油と同様に様々な化学分類に属し、かつ該付香共成分は、天然又は合成起源のものでありうる。該共成分の多くは、あらゆる場合において、参考文献、例えばS. Arctander,Perfume and Flavor Chemicals, 1969,Montclair,New Jersey,USAによる書物、もしくはその最新版、又は同様の種類の他の作品において、及び香料の分野における豊富な特許文献において記載されている。該共成分は、制御された方法で、付香化合物の種々のタイプを放出することが公知である化合物であってもよいことも理解する。
【0027】
香料キャリヤー及び香料基剤の双方を含む組成物のために、他の好適な香料キャリヤーは、前記と比べて、エタノール、水/エタノール混合物、リモネン又は他のテルペン、イソパラフィン、例えば商標Isopar(登録商標)(Exxon Chemical社製)下で公知のもの、又はグリコールエーテル及びグリコールエーテルエステル、例えば商標Dowanol(登録商標)(Dow Chemical Company社製)下で公知のものでもあってよい。
【0028】
"香料補助剤"に関して、本明細書で、追加の添加された利益、例えば色、特定の耐光性、化学安定性等を付与することが可能な成分を意味する。付香基剤において一般に使用される補助剤の性質及びタイプの詳細な説明は、網羅的であることができず、しかし前記成分が、当業者によく知られていることは言及されるべきである。
【0029】
少なくとも1つの式(I)の化合物及び少なくとも1つの香料キャリヤーからなる本発明の組成物は、本発明の特定の一実施態様、及び少なくとも1つの式(I)の化合物、少なくとも1つの香料キャリヤー、少なくとも1つの香料基剤、及び場合により少なくとも1つの香料補助剤を含有する付香組成物を示す。
【0030】
本発明の特定の一実施態様によって、特に興味深い付香組成物は、2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセン−1−アセトニトリル及び天然パチュリ(例えば相似量で)を含むもの、又は2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセン−1−アセトニトリル、2,6,10,10−テトラメチル−1−オキサスピロ[4,5]デカン−6−オール、及び4−tert−ブチル−1−シクロヘキサノールを含むものである。
【0031】
実際に、本発明の化合物、及び特に2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセン−1−アセトニトリルは、付香組成物におけるパチュリの全体又は一部を置き換えるために使用されうる。
【0032】
本明細書で、前述の組成物において、1つより多い式(I)の化合物を有する可能性は、調香師が、アコード、香料を製造すること、本発明の種々の化合物の匂い調性を有し、従ってそれらの研究のための新しい手段を作成することを可能にするために重要であることが挙げられるために有用である。
【0033】
有利には、本発明の化合物を、出発、中間及び最終生成物として含みうる、直接化学合成から、例えば適切な生成なしに得られたあらゆる混合物は、本発明による付香組成物としてみなすことができない。
【0034】
さらに、本発明の化合物は、前記化合物(I)を添加する消費製品の匂いを明確に付与又は改質するために、最新の香料の全ての分野において有利に使用されてもよい。従って、
i)付香成分として、前記で定義された、少なくとも1つの式(I)の化合物、又は本発明の付香組成物、及び
ii)消費製品基材
を含有する着香物品は、本発明の目的でもある。
【0035】
明瞭化のために、"消費製品基材"に関しては、本明細書で、付香成分と相容性である消費製品を意味することを言及するべきである。言い換えれば、本発明による着香物品は、機能性調合物、並びに場合により消費製品、例えば洗剤又はエアーフレッシュナーと比較して追加の利益のある作用剤、及び少なくとも1つの本発明の化合物の嗅覚の有効量を含む。
【0036】
消費製品の構成成分の性質及びタイプは、あらゆる場合において網羅的ではない、本明細書でのより詳細な記載を保証せず、その際当業者は、当業者の一般知識に基づいて、並びに該製品の性質及び所望された効果によって、それらを選択することができる。
【0037】
好適な消費製品基材の例は、固体又は液体洗剤及び織物柔軟剤、並びに香料における一般的な全ての他の物品、すなわち香料、コロンもしくはアフターシェイブローション、着香石鹸、シャワーもしくはバスソルト、ムース、オイルもしくはゲル、衛生製品又はヘアケア製品、例えばシャンプー、ボディケア製品、消臭剤もしくは制汗剤、エアーフレッシュナー及び化粧品もまた含む。洗剤として、それらは、家庭用又は産業用の使用を目的であろうと、食器洗いのためのもしくは種々の表面を洗浄するための洗剤組成物又は洗浄製品のような適用を意図し、例えば織物、皿又は舗装処理用である。他の着香物品は、織物回復剤、アイロン水、紙、ふき取りクロス又は漂白剤である。
【0038】
いくつかの前記の消費製品基材は、本発明の化合物のための刺激的な媒体を示してよく、従って早期の分解から、例えば封入によって本発明の化合物を保護することが必要であってよい。
【0039】
本発明による化合物を種々の前記の物品又は組成物中に取り入れることができる割合は、広い範囲内の値で変動する。これらの値は、本発明による化合物が一般に当業者に使用される付香共成分、溶剤又は添加剤と混合される場合に、着香されるべき物品の性質に、及び所望された官能的効果、並びに与えられた基材中の共成分の性質に依存している。
【0040】
例えば、付香組成物の場合において、典型的な濃度は、本発明の化合物が取り入れられた組成物の重さに対して、該化合物の0.1質量%〜40質量%、又はそれ以上の程度である。前記濃度より低い濃度、例えば1質量%〜25質量%の程度では、それら化合物が、着香物品中に取り入れられる場合に、物品の質量と比較した百分率で使用されうる。
【0041】
実施例
本発明は、次の実施例の方法によってさらに詳細に記載され、その際、略語は、当該技術分野において通常の意味を有し、温度を摂氏度(℃)で表す。NMRスペクトルデータを、CDCl3中で(別の方法で決められない場合に)360又は400MHz機械を用いて1H及び13Cを記録し、化学シフト(chemical displacement)δを、標準としてのTMSに関してppmで表し、結合定数Jを、Hzで表した。そのIRデータを、cm-1で示し、かつPerkin−Elmer 1600 FT−IR分光計で記録する。
【0042】
実施例1
付香組成物の製造
パチュリタイプの付香組成物を、次の成分を混合することによって製造した:
【表1】

【0043】
2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセン−1−アセトニトリル150質量部の、前記の組成物への添加は、驚くべきことに天然パチュリによって付与されうるものに近いパチュリ特性を付与することが可能な、2,6,10,10−テトラメチル−1−オキサスピロール[4,5]デカン−6−オール、4−tert−ブチル−1−シクロヘキサノール及び本発明の化合物の相乗効果をもたらした。
【0044】
実施例2
付香組成物の製造
男性用コロンを、次の成分を混合することによって製造した:
【表2】

1)4/3−(4−ヒドロキシ−4−メイルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルボアルデヒド;製造元:International Flavors&Fragrances社、米国在
2)メチルジヒドロジャスモネート;製造元:Firmenich SA、スイス、ジュネーブ在
3)プロピル(S)−2−(1,1−ジメチルプロポキシ)プロパノエート;製造元:Firmenich SA、スイス、ジュネーブ在
4)メチルセドリルケトン;製造元:International Flavors&Fragrances社、米国在
【0045】
2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセン−1−アセトニトリル700質量部の、前記組成物への添加は、アーシー/パチュリノートの、及びフルーティー/ダマスコニーノートの融合によって、驚くべき特有なコノテーション(connotation)を付与した。
【0046】
2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセン−1−アセトニトリル350質量部とパチュリ350質量部とを添加した場合に、パチュリ700質量部の添加によって得られたものと同様の嗅覚効果を得た。しかしながら、2つの付香化合物の添加によって得られた組成物は、パチュリのみを添加することによって得られたものよりも、強く、よりパチュリ/タバコのヘッドノートを有した。
【0047】
実施例3
トランス−(2,6,6トリメチル−3−シクロヘキセン−1−イル)アセトニトリルの製造
a)トランス−2,6,6−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−メタノールの製造
THF(50ml)中で、室温でLiAlH4の撹拌懸濁液(1.55g、41mmol)に、メチルトランス−2,6,6−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−カルボキシレート(10.0g、純度98%、54mmol)の溶液を、液滴で、THF(50ml)中で添加した。室温で2時間後、その混合物を、エーテル(150ml)で希釈し、アセトン(3ml)を液滴で添加し、そして1N NaOH水溶液(8ml)を添加し、そしてその混合物を、室温で30分間撹拌した。Na2SO4を添加し、その固形物を濾過し、そして濾過液を濃縮した。バルブ−トゥ−バルブ(Bulb−to−bulb)蒸留(160℃/16mbarを上回る)は、無色の液体としてトランス−2,6,6−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−メタノールをもたらした(8.40g、純度>99%、収率99%)。
【0048】

【0049】
b)トランス−(2,6,6−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−イル)アセトニトリルの製造
CH2Cl2(150ml)中でトランス−2,6,6−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−メタノールの撹拌溶液(37.3g、純度98%、237mmol)及びピリジン(150ml)を、0℃まで冷却し、そしてメタンスルホニルクロリド(33.2g、284mmol)を、液滴で15分以内で添加した。その混合物を、15分間室温まで撹拌し、氷水に注ぎ、そしてエーテル(300ml)を添加し、該混合物を、15分間室温まで撹拌し、その有機相を、H2O、10%HCl水溶液、H2O、NaHCO3飽和溶液、ブラインで洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、そして濃縮した。
【0050】
この粗製材料の撹拌溶液に、DMSO(500ml)中で、室温でNaCN(16.9g、346mmol)を添加し、その混合物を、60℃で48時間加熱した。冷却した該混合物を、エーテル及びH2Oで希釈し、その有機相を、H2Oで2回洗浄し、ブラインで洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、そして濃縮した。蒸留(10cm、Widmer塔)は、油(28.2g、純度98%、収率72%)、bp57℃/0.3mbarとして、トランス−(2,6,6−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−イル)アセトニトリルをもたらした。
【0051】
この化合物は、アルデヒド様のパチュリ(ルーティー(rooty)、アーシー)匂いノートを示した。
【0052】

【0053】
実施例4
トランス−(2,6,6トリメチルシクロヘキシル)アセトニトリルの製造
AcOEt(30ml)中で実施例3b)において得られたトランス−(2,6,6−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−イル)アセトニトリルの溶液(3.0g、純度98%、18mmol)に、10%Pd−Cを添加し、そしてその混合物をH2(1atm)下で、室温で3日間振盪した。その触媒を、セライトを介して濾過し、そしてその濾過液を濃縮した。バルブ−トゥ−バルブ蒸留(80℃/0.3mbarを上回る)は、トランス−(2,6,6,トリメチルシクロヘキシル)アセトニトリル(2.88g、純度99%、収率98%)をもたらした。
【0054】
この化合物は、ウッディー、ダマスコン、アーシー、及び樟脳様のノートを有するパチュリの匂いを示した。
【0055】

【0056】
実施例5
トランス−(2,5,6,6,テトラメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)アセトニトリルの製造
CH2Cl2(30ml)中でトランス−2,5,6,6−テトラメチル−2−シクロヘキセン−1−メタノールの撹拌溶液(9.66g、純度65%、37mmol)及びピリジン(30ml)を、0℃まで冷却し、そしてメタンスルホニルクロリド(7.81g、66.8mmol)を、液滴で15分以内で添加した。その混合物を、2時間室温まで撹拌し、そして氷水に注ぎ、そして最終的にエーテル(120ml)を添加し、該混合物を、30分間室温まで撹拌し、その有機相を、H2O、10%HCl水溶液、H2O、NaHCO3飽和溶液、ブラインで洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、そして濃縮した。
【0057】
この粗製材料を、DMSO(120ml)中で溶解し、NaCN(5.2g、106mmol)を添加し、そしてその混合物を、3日間60℃まで加熱した。室温で該混合物を、氷水及びエーテル(200ml)に注ぎ、その有機相を、H2O及びブラインで洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、そして濃縮した。バルブ−トゥ−バルブ蒸留(90℃/0.3mbarを上回る)は、ニトリルを生じ、それを、シリカ上で、溶出剤として9:1のシクロヘキサン−エーテルでフラッシュカラムクロマトグラフィーをして、続いてバルブ−トゥ−バルブ蒸留をして、油としてトランス−(2,5,6,6−テトラメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)アセトニトリル(2.49g、純度82%、収率31%)をもたらした。
【0058】
その化合物は、パチュリ、ウッディ−セダー及びニトリルタイプの匂いを示した。
【0059】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[式中、Rは、水素原子又はメチル基を示し、1重の点線は、炭素−炭素二重結合を示し、かつ他の点線は、炭素−炭素一重結合を示す]で示される化合物の付香成分としての使用であって、該化合物は、該化合物の光学異性体又はそれらの混合物のいずれか1つの形である使用。
【請求項2】
該化合物が、2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセン−1−アセトニトリルであることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
i)付香成分として、請求項1又は2で定義された、少なくとも1つの式(I)の化合物、
ii)香料キャリヤー及び香料基剤からなる群から選択される少なくとも1つの成分、並びに
iii)場合により、少なくとも1つの香料補助剤
を含有する、付香組成物。
【請求項4】
2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセン−1−アセトニトリル、及びパチュリ、又は2,6,10,10−テトラメチル−1−オキサスピロール[4,5]デカン−6−オール、並びに4−tert−ブチル−1−シクロヘキサノールを含有することを特徴とする、請求項4に記載の付香組成物。
【請求項5】
i)付香成分として、請求項1又は2で定義された、少なくとも1つの式(I)の化合物、及び
ii)消費製品基材
を含有する、着香物品。
【請求項6】
前記の消費製品基材が、固形もしくは液体の洗剤、織物柔軟剤、香水、コロンもしくはアフターシェイブローション、着香石鹸、シャワーもしくはバスソルト、ムース、オイルもしくはゲル、衛生製品、ヘアケア製品、シャンプー、ボディケア製品、消臭剤もしくは制汗剤、エアーフレッシュナー、化粧品、織物回復剤、アイロン水、紙、ふき取りクロス又は漂白剤であることを特徴とする、請求項5に記載の着香物品。

【公表番号】特表2010−522797(P2010−522797A)
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500415(P2010−500415)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際出願番号】PCT/IB2008/051152
【国際公開番号】WO2008/117254
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(390009287)フイルメニツヒ ソシエテ アノニム (146)
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
【住所又は居所原語表記】1,route des Jeunes, CH−1211 Geneve 8, Switzerland
【Fターム(参考)】