説明

代謝症候群および関連障害の処置のための可溶性エポキシドヒドロラーゼ阻害剤

代謝症候群の発症の阻害、および関連する障害の処置を必要とする被験体において、代謝症候群の発症を阻害するため、および関連する障害を処置するための化合物、組成物および方法が開示される。1つの局面において、本発明は、代謝症候群を罹患しやすい被験体に有効量のsEH阻害剤を投与することによって、この被験体における代謝症候群の発症を阻害するための方法を提供する。別の局面は、被験体において、代謝症候群に関連する1つ以上の状態、または好ましくは、2つ以上の状態、または別の局面においては、3つ以上の状態を処置するための方法を提供し、これらの状態は、初期糖尿病、肥満症、グルコース不耐性、高血圧症、高血圧、上昇した血清中コレステロール、低下した高密度リポタンパク質、および上昇したトリグリセリドから選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(背景)
(関連出願の引用)
本願は、米国特許法のもとで、2007年1月29日に出願された米国仮特許出願番号887,124の利益を主張する。これらの仮特許出願は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般に、代謝症候群の発症を防止または阻害するため、および代謝症候群に関連する状態を処置するために有用な、化合物および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
代謝症候群とは、多数の健康上の問題(肥満症、高血圧、異常な脂質レベルおよび高血糖が挙げられる)により特徴付けられる障害である。代謝症候群は、代謝症候群X、心血管代謝症候群(cardiometabolic syndrome)、インスリン抵抗性症候群、および糖尿肥満(diabesity)などの、他の名称を有する。この症候群は、米国の現在の人口の20%もにおいて存在すると推定されている。処置されないままである場合、代謝症候群は、心臓発作、脳卒中、末梢血管疾患およびII型糖尿病(インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)の増加した危険性を提示する。
【0004】
代謝症候群は、多数の危険因子(遺伝的素因によりもたらされる因子、ならびに外因的な後天性要因から生じる因子(例えば、過剰な体脂肪、乏しい食事、および身体の不活発)が挙げられる)に関連する。特に、インスリン抵抗性は、遺伝的素因に関連する。後天性要因(例えば、(特に腹部領域における)過剰な体脂肪、および身体の不活発)は、この状態に遺伝的に罹患しやすい人において、インスリン抵抗性および代謝症候群を惹起し得る。インスリン抵抗性と代謝危険因子との間の、分子レベルでの生物学的機構は、完全には明らかにされておらず、複雑であるようである。
【0005】
代謝症候群は、現在、この症候群に影響を与え得る外因的な後天性要因を突き止めることにより、処置されている。代謝症候群を患う患者は、身体活動を増加させること、脂肪およびコレステロールの摂取を減少させること、ならびに喫煙しないことによって、より健康的な生活様式を採用することを奨励される。生活様式の変化が成功しない場合、高血圧、高コレステロールおよび糖尿病の個々の成分についての処方が適用され得る。不運なことに、これらの個々の処置は、患者に存在する他の状態を悪化させるように作用し得る。例えば、インスリン感作物質は、体重増加を引き起こし得、従って、危険因子の要素のうちの1つを増加させ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、代謝症候群に関連する多数の状態に対するポジティブな影響を有する、公知の薬物が存在しない。従って、代謝症候群およびこの障害に関連する多数の状態を処置するか、またはこれらの発症を阻害するための、有効な方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、代謝症候群の発症を阻害する際、ならびに代謝症候群に関連する複数の状態(例えば、初期糖尿病、グルコース不耐性、肥満症、高血圧症、高血圧、上昇した血清中コレステロール、低下した高密度リポタンパク質および上昇したトリグリセリドレベルのうちの2つ以上)を処置する際に有用な、可溶性エポキシドヒドロラーゼ(sEH)阻害剤化合物および組成物を提供する。
【0008】
1つの局面において、本発明は、代謝症候群を罹患しやすい被験体に有効量のsEH阻害剤を投与することによって、この被験体における代謝症候群の発症を阻害するための方法を提供する。
【0009】
別の局面は、被験体において、代謝症候群に関連する1つ以上の状態、または好ましくは、2つ以上の状態、または別の局面においては、3つ以上の状態を処置するための方法を提供し、これらの状態は、初期糖尿病、肥満症、グルコース不耐性、高血圧症、高血圧、上昇した血清中コレステロール、低下した高密度リポタンパク質、および上昇したトリグリセリドから選択される。この方法は、この被験体において症状発現した状態を処置するために有効な量のsEH阻害剤を、この被験体に投与する工程を包含する。
【0010】
なお別の局面は、被験体において代謝状態を処置する方法を提供し、この方法は、この被験体に、有効量のsEH阻害剤を投与する工程を包含する。この代謝状態は、肥満症、グルコース不耐性、初期糖尿病、高血圧症、高血圧、上昇した血清中コレステロール、低下した高密度リポタンパク質、および上昇したトリグリセリド、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0011】
本明細書中に記載される方法は、好ましくは、有効量の式(I)、式(II)、または式II(a)のsEH阻害剤、あるいはその薬学的に受容可能な塩の投与を包含する。
【0012】
従って、本明細書中で、式(I)のsEH阻害剤またはその薬学的に受容可能な塩:
NHC(=Q)NHR (I)
が提供され、式(I)において、
Qは、OおよびSからなる群より選択され;そして
およびRは独立して、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキルおよび置換ヘテロシクロアルキルからなる群より選択される。
【0013】
式(II)のsEH阻害剤またはその薬学的に受容可能な塩:
【0014】
【化1】

もまた提供され、式(II)において、
Qは、OおよびSからなる群より選択され;
は、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキルおよび置換ヘテロシクロアルキルからなる群より選択され;
Xは、CまたはNであり;ただし、XがCである場合、環Aはフェニルであり、そしてXがNである場合、環Aはピペリジニルであり;
Yは、COおよびSOからなる群より選択され;
は、アルキル、置換アルキル、またはへテロシクロアルキルからなる群より選択され;そして
mは、0、1、および2からなる群より選択される。
【0015】
式(IIa)のsEH阻害剤またはその薬学的に受容可能な塩:
【0016】
【化2】

もまた提供され、式(IIa)において、
Qは、OおよびSからなる群より選択され;
は、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキルおよび置換ヘテロシクロアルキルからなる群より選択され;
Xは、CまたはNであり;ただし、XがCである場合、環Aはフェニルであり、そしてXがNである場合、環Aはピペリジニルであり;
Yは、COおよびSOからなる群より選択され;そして
は、アルキル、置換アルキル、またはへテロシクロアルキルからなる群より選択される。
【0017】
本発明の特定の局面において、投与されるべき化合物は、
1−[1−(メチルスルホニル)ピペリジン−4−イル]−3−(アダマンタ−1−イル)尿素;
1−[1−(アセチル)ピペリジン−4−イル]−3−(アダマンタ−1−イル)尿素;
1−[1−(アセチル)ピペリジン−4−イル]−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)尿素;
1−[1−(メチルスルホニル)ピペリジン−4−イル]−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)尿素;および
1−[3−(モルホリノ−4−カルボニル)フェニル]−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)尿素、
からなる群より選択される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、高脂肪、高フルクトースの食餌を、20mg/kgの化合物5、60mg/kgの化合物5、またはビヒクル(コントロール)と一緒に、経口栄養により1日に2回投与されたマウスについての、経時的な体重増加のグラフを示す。1日目に、動物に高脂肪、高フルクトースの食餌を与えた。5週目に、これらの動物を、20mg/kgおよび60mg/kgのビヒクルまたは化合物5で、1日2回経口栄養によって処置し始めた。
【図2A】図2Aは、高脂肪、高フルクトースの食餌を20mg/kgの化合物5と一緒に経口栄養により1日2回、続いて投薬の開始の3週間後または5.5週間後のいずれかに投与されたマウスについての、投与前および投与後のグルコース耐性試験(GTT)測定についてのグラフによる群内比較を示す。
【図2B】図2Bは、高脂肪、高フルクトースの食餌を60mg/kgの化合物5と一緒に経口栄養により1日2回、続いて投与の開始の3週間後または5.5週間後のいずれかに投与されたマウスについての、投与前および投与後のGTT測定についてのグラフによる群内比較を示す。
【図2C】図2Cは、高脂肪、高フルクトースの食餌をビヒクル単独(コントロール)で投与されたマウスについての、投与前および投与後のGTT測定についてのグラフによる群内比較を示す。
【図2D】図2Dは、高脂肪、高フルクトースの食餌を20mg/kgの化合物、60mg/kgの化合物、またはビヒクルと一緒に、経口栄養により1日2回投与されたマウスについての、投与前および投与後のグルコースの曲線下面積(AUC)測定についてのグラフによる比較を示す。
【図3A】図3Aは、高脂肪、高フルクトースの食餌を20mg/kgの化合物5、60mg/kgの化合物5、またはビヒクル単独(コントロール)と一緒に、経口栄養により1日2回3週間投与されたマウスについての、8週間目のGTT測定についてのグラフによる比較を示す。X軸は、投与後の時間を分で示し、一方で、Y軸は、血清中グルコースレベルをmg/dLで示す。
【図3B】図3Bは、高脂肪、高フルクトースの食餌を、20mg/kgの化合物5、60mg/kgの化合物5、またはビヒクル単独(コントロール)と一緒に、経口栄養により1日2回5.5週間投与された、10.5週間目におけるマウスについてのGTT測定についてのグラフによる比較を示す。
【図4A】図4Aは、高脂肪、高フルクトースの食餌を20mg/kgの化合物5、60mg/kgの化合物5、またはビヒクル(コントロール)と一緒に、経口栄養により1日2回投与されて8週間後のマウスについての、心収縮期の血圧の測定値の棒グラフを示す。
【図4B】図4Bは、高脂肪、高フルクトースの食餌を20mg/kgの化合物5、60mg/kgの化合物5、またはビヒクル(コントロール)と一緒に、経口栄養により1日2回投与されて8週間後のマウスについての、拡張期の血圧の測定値の棒グラフを示す。
【図4C】図4Cは、高脂肪、高フルクトースの食餌を20mg/kgの化合物5、60mg/kgの化合物5、またはビヒクル(コントロール)と一緒に、経口栄養により1日2回投与されて8週間後のマウスについての、平均血圧の測定値の棒グラフを示す。
【図4D】図4Dは、高脂肪、高フルクトースの食餌を20mg/kgの化合物5、60mg/kgの化合物5、またはビヒクル(コントロール)と一緒に、経口栄養により1日2回投与されて8週間後のマウスについての、心拍数の棒グラフを示す。
【図5】図5は、高脂肪、高フルクトースの食餌を20mg/kgの化合物5、60mg/kgの化合物5、またはビヒクル(コントロール)経口栄養により1日2回投与されて5週間後または10週間後(このうちの5週間は、指定された化合物を投与される)のマウスについての、血清中コレステロールレベルの棒グラフを示す。
【図6】図6では、標準的な飼料および水の食餌(NC)、または高脂肪、高フルクトースの食餌(HF)のいずれかの給餌と、その後の、ビヒクル(CMC−Tween)、飲用水中10mg/kg/日のロサルタン、または、1日2回の経口栄養による、60mg/kgの化合物3、化合物4もしくは化合物5の投与を行った。マウスについての、8週目から開始した経時的な体重変化のグラフを示す。
【図7】図7は、標準的な飼料および水の食餌(NC)、または高脂肪、高フルクトースの食餌(HF)のいずれかを与え、その後、ビヒクル(CMC−Tween)、飲用水中10mg/kg/日のロサルタン、または、1日2回の経口栄養による、60mg/kgの化合物3、化合物4もしくは化合物5の4週間にわたる投与を行ったマウスについてのグルコース耐性試験(GTT)の図式的な比較を示す。X軸は投与後の時間(分)を示し、そして、Y軸は、グルコース血清レベル(mg/dL)を示す。
【図8】図8は、標準的な飼料および水の食餌(NC)、または高脂肪、高フルクトースの食餌(HF)のいずれかを与え、その後、ビヒクル(CMC−Tween)、飲用水中10mg/kg/日のロサルタン、または、1日2回の経口栄養による、60mg/kgの化合物3、化合物4もしくは化合物5の4週間にわたる投与を行ったマウスについての血清コレステロールレベルの図式的な比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(詳細な説明)
本開示全体にわたって、種々の刊行物、特許および特許出願公開は、引用を識別することにより参照される。これらの刊行物、特許および特許出願公開は、本発明が属する分野の技術水準をより完全に説明するために、その全体が本開示に参考として援用される。
【0020】
本明細書中で使用される場合、特定の用語は、以下の定義された意味を有する。
【0021】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、その文脈が明らかに違うことを示さない限り、複数の言及を含む。
【0022】
「シス−エポキシエイコサトリエン酸」(「EET」)は、シトクロムP450エポキシゲナーゼによって合成されるバイオメディエーターである。
【0023】
「エポキシドヒドロラーゼ」(「EH」;EC3.3.2.3)は、水をエポキシドと呼ばれる3員の環状エーテルに付加するα/βヒドロラーゼフォールドファミリーにおける酵素である。
【0024】
「可溶性エポキシドヒドロラーゼ」(「sEH」)は、内皮、平滑筋および他の細胞型において、EETをジヒドロキシエイコサトリエン酸(「DHET」)と呼ばれるジヒドロキシ誘導体に転換する酵素である。マウスのsEHのクローニングおよび配列は、Grantら、J.Biol.Chem.268(23):17628〜17633頁(1993年)に示されている。ヒトsEH配列のクローニング、配列および登録番号は、Beethamら、Arch.Biochem.Biophys.305(1):197〜201頁(1993年)に示されている。ヒトsEHのアミノ酸配列はまた、米国特許第5,445,956号の配列番号2として示されており;ヒトsEHをコードする核酸配列は、その特許の配列番号1のヌクレオチド42〜1703として示されている。この遺伝子の進化および命名は、Beethamら、DNA Cell Biol.14(1):61〜71頁(1995年)において検討されている。可溶性エポキシドヒドロラーゼは、齧歯動物とヒトとの間に90%を超える相同性を有する高度に保存された単一の遺伝子産物を表す(Arandら、FEBS Lett.、338:251〜256頁(1994年))。
【0025】
「sEH阻害剤」とは、約500μM未満の濃度にて、エポキシドの加水分解におけるsEHの活性を50%まで阻害する阻害剤を指し、好ましくは、阻害剤は、約100μM未満の濃度にて、エポキシドの加水分解におけるsEHの活性を50%まで阻害し、なおより好ましくは、阻害剤は、約100nM未満の濃度にて、エポキシドの加水分解におけるsEHの活性を50%まで阻害し、そして、最も好ましくは、阻害剤は、約50nM未満の濃度にて、エポキシドの加水分解におけるsEHの活性を50%まで阻害する。
【0026】
「アルキル」は、1から10個の炭素原子、好ましくは1から6個の炭素原子を有する一価の飽和脂肪族ヒドロカルビル基をいう。この用語には、例として、直鎖および分枝鎖のヒドロカルビル基、例えば、メチル(CH−)、エチル(CHCH−)、n−プロピル(CHCHCH−)、イソプロピル((CHCH−)、n−ブチル(CHCHCHCH−)、イソブチル((CHCHCH−)、sec−ブチル((CH)(CHCH)CH−)、t−ブチル((CHC−)、n−ペンチル(CHCHCHCHCH−)、およびネオペンチル((CHCCH−)が含まれる。
【0027】
「アルケニル」は、2から6個の炭素原子、好ましくは2から4個の炭素原子を有し、かつ少なくとも1個、好ましくは1から2個のビニル(>C=C<)不飽和の部位を有する直鎖または分枝鎖のヒドロカルビル基をいう。このような基は、例えば、ビニル、アリル、およびブタ−3−エン−1−イルによって例示される。この用語の範囲内には、シスおよびトランス異性体またはこれらの異性体の混合物が含まれる。
【0028】
「アルキニル」は、2から6個の炭素原子、好ましくは2から3個の炭素原子を有し、かつ少なくとも1個、好ましくは1から2個のアセチレン性(−C≡C−)不飽和の部位を有する直鎖または分枝鎖の一価ヒドロカルビル基をいう。このようなアルキニル基の例には、アセチレニル(−C≡CH)、およびプロパルギル(−CHC≡CH)が含まれる。
【0029】
「置換アルキル」は、アルコキシ、置換アルコキシ、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノカルボニル、アミノチオカルボニル、アミノカルボニルアミノ、アミノチオカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、アミノスルホニル、アミノスルホニルオキシ、アミノスルホニルアミノ、アミジノ、アリール、置換アリール、アリールオキシ、置換アリールオキシ、アリールチオ、置換アリールチオ、カルボキシル、カルボキシルエステル、(カルボキシルエステル)アミノ、(カルボキシルエステル)オキシ、シアノ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルキルオキシ、置換シクロアルキルオキシ、シクロアルキルチオ、置換シクロアルキルチオ、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、シクロアルケニルオキシ、置換シクロアルケニルオキシ、シクロアルケニルチオ、置換シクロアルケニルチオ、グアニジノ、置換グアニジノ、ハロ、ヒドロキシ、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、置換ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールチオ、置換ヘテロアリールチオ、複素環式、置換複素環式、ヘテロシクリルオキシ、置換ヘテロシクリルオキシ、ヘテロシクリルチオ、置換ヘテロシクリルチオ、ニトロ、SOH、置換スルホニル、スルホニルオキシ、チオアシル、チオール、アルキルチオ、および置換アルキルチオからなる群から選択される1から5個、好ましくは1から3個、またはより好ましくは1から2個の置換基を有するアルキル基を指し、ここで、該置換基は本明細書に定義されている。
【0030】
「置換アルケニル」は、アルコキシ、置換アルコキシ、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノカルボニル、アミノチオカルボニル、アミノカルボニルアミノ、アミノチオカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、アミノスルホニル、アミノスルホニルオキシ、アミノスルホニルアミノ、アミジノ、アリール、置換アリール、アリールオキシ、置換アリールオキシ、アリールチオ、置換アリールチオ、カルボキシル、カルボキシルエステル、(カルボキシルエステル)アミノ、(カルボキシルエステル)オキシ、シアノ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルキルオキシ、置換シクロアルキルオキシ、シクロアルキルチオ、置換シクロアルキルチオ、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、シクロアルケニルオキシ、置換シクロアルケニルオキシ、シクロアルケニルチオ、置換シクロアルケニルチオ、グアニジノ、置換グアニジノ、ハロ、ヒドロキシ、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、置換ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールチオ、置換ヘテロアリールチオ、複素環式、置換複素環式、ヘテロシクリルオキシ、置換ヘテロシクリルオキシ、ヘテロシクリルチオ、置換ヘテロシクリルチオ、ニトロ、SOH、置換スルホニル、スルホニルオキシ、チオアシル、チオール、アルキルチオ、および置換アルキルチオからなる群から選択される、1から3個の置換基、好ましくは1から2個の置換基を有するアルケニル基を指し、ここで、該置換基は本明細書に定義されており、但し、いずれのヒドロキシ置換もチオール置換もビニル(不飽和)炭素原子に結合していないことを条件とする。
【0031】
「置換アルキニル」は、アルコキシ、置換アルコキシ、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノカルボニル、アミノチオカルボニル、アミノカルボニルアミノ、アミノチオカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、アミノスルホニル、アミノスルホニルオキシ、アミノスルホニルアミノ、アミジノ、アリール、置換アリール、アリールオキシ、置換アリールオキシ、アリールチオ、置換アリールチオ、カルボキシル、カルボキシルエステル、(カルボキシルエステル)アミノ、(カルボキシルエステル)オキシ、シアノ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルキルオキシ、置換シクロアルキルオキシ、シクロアルキルチオ、置換シクロアルキルチオ、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、シクロアルケニルオキシ、置換シクロアルケニルオキシ、シクロアルケニルチオ、置換シクロアルケニルチオ、グアニジノ、置換グアニジノ、ハロ、ヒドロキシ、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、置換ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールチオ、置換ヘテロアリールチオ、複素環式、置換複素環式、ヘテロシクリルオキシ、置換ヘテロシクリルオキシ、ヘテロシクリルチオ、置換ヘテロシクリルチオ、ニトロ、SOH、置換スルホニル、スルホニルオキシ、チオアシル、チオール、アルキルチオ、および置換アルキルチオからなる群から選択される、1から3個の置換基、好ましくは1から2個の置換基を有するアルキニル基を指し、ここで、該置換基は本明細書に定義されており、但し、いずれのヒドロキシ置換もチオール置換もアセチレン性炭素原子に結合していないことを条件とする。
【0032】
「アルコキシ」は、アルキルが本明細書に定義されている基−O−アルキルをいう。アルコキシには、例として、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、t−ブトキシ、sec−ブトキシ、およびn−ペントキシが含まれる。
【0033】
「置換アルコキシ」は、置換アルキルが本明細書に定義されている基−O−(置換アルキル)をいう。
【0034】
「アシル」は、基H−C(O)−、アルキル−C(O)−、置換アルキル−C(O)−、アルケニル−C(O)−、置換アルケニル−C(O)−、アルキニル−C(O)−、置換アルキニル−C(O)−、シクロアルキル−C(O)−、置換シクロアルキル−C(O)−、シクロアルケニル−C(O)−、置換シクロアルケニル−C(O)−、アリール−C(O)−、置換アリール−C(O)−、ヘテロアリール−C(O)−、置換ヘテロアリール−C(O)−、複素環式−C(O)−、および置換複素環式−C(O)−を指し、ここで、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、および置換複素環式は、本明細書に定義されたとおりである。アシルには、「アセチル」基CHC(O)−が含まれる。
【0035】
「アシルアミノ」は、基−NR20C(O)アルキル、−NR20C(O)置換アルキル、−NR20C(O)シクロアルキル、−NR20C(O)置換シクロアルキル、−NR20C(O)シクロアルケニル、−NR20C(O)置換シクロアルケニル、−NR20C(O)アルケニル、−NR20C(O)置換アルケニル、−NR20C(O)アルキニル、−NR20C(O)置換アルキニル、−NR20C(O)アリール、−NR20C(O)置換アリール、−NR20C(O)ヘテロアリール、−NR20C(O)置換ヘテロアリール、−NR20C(O)複素環式、および−NR20C(O)置換複素環式を指し、ここで、R20は水素またはアルキルであり、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、および置換複素環式は、本明細書に定義されたとおりである。
【0036】
「アシルオキシ」は、基アルキル−C(O)O−、置換アルキル−C(O)O−、アルケニル−C(O)O−、置換アルケニル−C(O)O−、アルキニル−C(O)O−、置換アルキニル−C(O)O−、アリール−C(O)O−、置換アリール−C(O)O−、シクロアルキル−C(O)O−、置換シクロアルキル−C(O)O−、シクロアルケニル−C(O)O−、置換シクロアルケニル−C(O)O−、ヘテロアリール−C(O)O−、置換ヘテロアリール−C(O)O−、複素環式−C(O)O−、および置換複素環式−C(O)O−を指し、ここで、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、および置換複素環式は、本明細書に定義されたとおりである。
【0037】
「アミノ」は、基−NHをいう。
【0038】
「置換アミノ」は、R21およびR22が、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、置換複素環式、−SO−アルキル、−SO−置換アルキル、−SO−アルケニル、−SO−置換アルケニル、−SO−シクロアルキル、−SO−置換シクロアルキル、−SO−シクロアルケニル、−SO−置換シクロアルケニル、−SO−アリール、−SO−置換アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO−置換ヘテロアリール、−SO−複素環式、および−SO−置換複素環式からなる群から独立に選択される基−NR2122を指し、ここで、R21およびR22は、それらに結合した窒素と一緒になって場合により連結されて、複素環式基または置換複素環式基を形成し、但し、R21およびR22は、両方が水素であることはないことを条件とし、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、および置換複素環式は、本明細書に定義されたとおりである。R21が水素であり、R22がアルキルである場合、該置換アミノ基は本明細書においてアルキルアミノといわれることもある。R21およびR22がアルキルである場合、該置換アミノ基は本明細書においてジアルキルアミノといわれることもある。一置換アミノをいう場合、R21またはR22のいずれかが水素であるが、両方ではないことが意味される。二置換アミノをいう場合、R21またはR22のいずれも水素でないことが意味される。
【0039】
「アミノカルボニル」は、R10およびR11が、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、および置換複素環式からなる群から独立に選択され、R10およびR11が、それらに結合した窒素と一緒になって場合により連結されて複素環式基または置換複素環式基を形成する基−C(O)NR1011を指し、ここで、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、および置換複素環式は、本明細書に定義されたとおりである。
【0040】
「アミノチオカルボニル」は、R10およびR11が、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、および置換複素環式からなる群から独立に選択され、R10およびR11が、それらに結合した窒素と一緒になって場合により連結されて複素環式基または置換複素環式基を形成する基−C(S)NR1011を指し、ここで、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、および置換複素環式は、本明細書に定義されたとおりである。
【0041】
「アミノカルボニルアミノ」は、R20が水素またはアルキルであり、R10およびR11が、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、および置換複素環式からなる群から独立に選択され、R10およびR11が、それらに結合した窒素と一緒になって場合により連結されて複素環式基または置換複素環式基を形成する基−NR20C(O)NR1011を指し、ここで、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、および置換複素環式は、本明細書に定義されたとおりである。
【0042】
「アミノチオカルボニルアミノ」は、R20が水素またはアルキルであり、R10およびR11が、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、および置換複素環式からなる群から独立に選択され、R10およびR11が、それらに結合した窒素と一緒になって場合により連結されて複素環式基または置換複素環式基を形成する基−NR20C(S)NR1011を指し、ここで、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、および置換複素環式は、本明細書に定義されたとおりである。
【0043】
「アミノカルボニルオキシ」は、R10およびR11が、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、および置換複素環式からなる群から独立に選択され、R10およびR11は、それらに結合した窒素と一緒になって場合により連結されて複素環式基または置換複素環式基を形成する基−O−C(O)NR1011を指し、ここで、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、および置換複素環式は、本明細書において定義されたとおりである。
【0044】
「アミノスルホニル」は、R10およびR11が、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、および置換複素環式からなる群から独立に選択され、R10およびR11が、それらに結合した窒素と一緒になって場合により連結されて複素環式基または置換複素環式基を形成する基−SONR1011を指し、ここで、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、および置換複素環式は、本明細書に定義されたとおりである。
【0045】
「アミノスルホニルオキシ」は、R10およびR11が、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、および置換複素環式からなる群から独立に選択され、R10およびR11は、それらに結合した窒素と一緒になって場合により連結されて複素環式基または置換複素環式基を形成する基−O−SONR1011を指し、ここで、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、および置換複素環式は、本明細書に定義されたとおりである。
【0046】
「アミノスルホニルアミノ」は、R20が水素またはアルキルであり、R10およびR11が、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、および置換複素環式からなる群から独立に選択され、R10およびR11が、それらに結合した窒素と一緒になって場合により連結されて複素環式基または置換複素環式基を形成する基−NR20−SONR1011を指し、ここで、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、および置換複素環式は、本明細書に定義されたとおりである。
【0047】
「アミジノ」は、R10、R11、およびR12が、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、および置換複素環式からなる群から独立に選択され、R10およびR11が、それらに結合した窒素と一緒になって場合により連結されて複素環式基または置換複素環式基を形成する基−C(=NR12)NR1011を指し、ここで、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、および置換複素環式は、本明細書に定義されたとおりである。
【0048】
「アリール」または「Ar」は、単一の環(例えば、フェニル)または縮合環が芳香族であってもなくてもよい(例えば、2−ベンゾオキサゾリノン、2H−1,4−ベンゾオキサジン−3(4H)−オン−7−イルなど)複数の縮合した環(例えば、ナフチルまたはアントリル)を有する6から14個の炭素原子の一価芳香族炭素環式基を指し、但し、その結合点は芳香族炭素原子にあることを条件とする。好ましいアリール基にはフェニルおよびナフチルが含まれる。
【0049】
「置換アリール」は、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アルコキシ、置換アルコキシ、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノカルボニル、アミノチオカルボニル、アミノカルボニルアミノ、アミノチオカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、アミノスルホニル、アミノスルホニルオキシ、アミノスルホニルアミノ、アミジノ、アリール、置換アリール、アリールオキシ、置換アリールオキシ、アリールチオ、置換アリールチオ、カルボキシル、カルボキシルエステル、(カルボキシルエステル)アミノ、(カルボキシルエステル)オキシ、シアノ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルキルオキシ、置換シクロアルキルオキシ、シクロアルキルチオ、置換シクロアルキルチオ、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、シクロアルケニルオキシ、置換シクロアルケニルオキシ、シクロアルケニルチオ、置換シクロアルケニルチオ、グアニジノ、置換グアニジノ、ハロ、ヒドロキシ、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、置換ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールチオ、置換ヘテロアリールチオ、複素環式、置換複素環式、ヘテロシクリルオキシ、置換ヘテロシクリルオキシ、ヘテロシクリルチオ、置換ヘテロシクリルチオ、ニトロ、SOH、置換スルホニル、スルホニルオキシ、チオアシル、チオール、アルキルチオ、および置換アルキルチオからなる群から選択される1から5個、好ましくは1から3個、またはより好ましくは1から2個の置換基で置換されているアリール基を指し、ここで、該置換基は本明細書に定義されている。
【0050】
「アリールオキシ」は、アリールが本明細書に定義されたとおりである基−O−アリールをいう。これには、例として、フェノキシおよびナフトキシが含まれる。
【0051】
「置換アリールオキシ」は、置換アリールが本明細書に定義されたとおりである基−O−(置換アリール)をいう。
【0052】
「アリールチオ」は、アリールが本明細書に定義されたとおりである基−S−アリールをいう。
【0053】
「置換アリールチオ」は、置換アリールが本明細書に定義されたとおりである基−S−(置換アリール)をいう。
【0054】
「カルボニル」は、−C(=O)−と同等である二価の基−C(O)−をいう。
【0055】
「カルボキシ」または「カルボキシル」は、−COOHまたはその塩をいう。
【0056】
「カルボキシルエステル」または「カルボキシエステル」は、基−C(O)O−アルキル、−C(O)O−置換アルキル、−C(O)O−アルケニル、−C(O)O−置換アルケニル、−C(O)O−アルキニル、−C(O)O−置換アルキニル、−C(O)O−アリール、−C(O)O−置換アリール、−C(O)O−シクロアルキル、−C(O)O−置換シクロアルキル、−C(O)O−シクロアルケニル、−C(O)O−置換シクロアルケニル、−C(O)O−ヘテロアリール、−C(O)O−置換ヘテロアリール、−C(O)O−複素環式、および−C(O)O−置換複素環式を指し、ここで、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、および置換複素環式は、本明細書に定義されたとおりである。
【0057】
「(カルボキシルエステル)アミノ」は、基−NR20−C(O)O−アルキル、−NR20−C(O)O−置換アルキル、−NR20−C(O)O−アルケニル、−NR20−C(O)O−置換アルケニル、−NR20−C(O)O−アルキニル、−NR20−C(O)O−置換アルキニル、−NR20−C(O)O−アリール、−NR20−C(O)O−置換アリール、−NR20−C(O)O−シクロアルキル、−NR20−C(O)O−置換シクロアルキル、−NR20−C(O)O−シクロアルケニル、−NR20−C(O)O−置換シクロアルケニル、−NR20−C(O)O−ヘテロアリール、−NR20−C(O)O−置換ヘテロアリール、−NR20−C(O)O−複素環式、および−NR20−C(O)O−置換複素環式を指し、ここで、Rはアルキルまたは水素であり、かつアルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、および置換複素環式は、本明細書に定義されたとおりである。
【0058】
「(カルボキシルエステル)オキシ」は、基−O−C(O)O−アルキル、O−C(O)O−置換アルキル、−O−C(O)O−アルケニル、−O−C(O)O−置換アルケニル、−O−C(O)O−アルキニル、−O−C(O)O−置換アルキニル、−O−C(O)O−アリール、−O−C(O)O−置換アリール、−O−C(O)O−シクロアルキル、−O−C(O)O−置換シクロアルキル、−O−C(O)O−シクロアルケニル、−O−C(O)O−置換シクロアルケニル、−O−C(O)O−ヘテロアリール、−O−C(O)O−置換ヘテロアリール、−O−C(O)O−複素環式、および−O−C(O)O−置換複素環式を指し、ここで、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、および置換複素環式は、本明細書に定義されたとおりである。
【0059】
「シアノ」は基−CNをいう。
【0060】
「シクロアルキル」は、単一の環または複数の環式環(縮合環系、架橋環系、およびスピロ環系を含む)を有する3から10個の炭素原子の環式アルキル基をいう。環のうちの1個または複数は、アリール、ヘテロアリール、または複素環式であることができ、但し、その結合点が、非芳香族の、非複素環式環である炭素環式環を介することを条件とする。好適なシクロアルキル基の例には、例えば、アダマンチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロオクチルが含まれる。シクロアルキル基の他の例には、ビシクロ[2,2,2]オクタニル基、ノルボルニル基、およびスピロ[4,5]デク−8−イル:
【0061】
【化3】

などのスピロ基が含まれる。
【0062】
「シクロアルケニル」は、単環または多環式環を有し、かつ少なくとも1個の>C=C<の環不飽和、好ましくは1から2個の>C=C<の環不飽和の部位を有する3から10個の炭素原子の非芳香族環式アルキル基をいう。
【0063】
「置換シクロアルキル」および「置換シクロアルケニル」は、オキソ、チオン、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アルコキシ、置換アルコキシ、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノカルボニル、アミノチオカルボニル、アミノカルボニルアミノ、アミノチオカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、アミノスルホニル、アミノスルホニルオキシ、アミノスルホニルアミノ、アミジノ、アリール、置換アリール、アリールオキシ、置換アリールオキシ、アリールチオ、置換アリールチオ、カルボキシル、カルボキシルエステル、(カルボキシルエステル)アミノ、(カルボキシルエステル)オキシ、シアノ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルキルオキシ、置換シクロアルキルオキシ、シクロアルキルチオ、置換シクロアルキルチオ、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、シクロアルケニルオキシ、置換シクロアルケニルオキシ、シクロアルケニルチオ、置換シクロアルケニルチオ、グアニジノ、置換グアニジノ、ハロ、ヒドロキシ、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、置換ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールチオ、置換ヘテロアリールチオ、複素環式、置換複素環式、ヘテロシクリルオキシ、置換ヘテロシクリルオキシ、ヘテロシクリルチオ、置換ヘテロシクリルチオ、ニトロ、SOH、置換スルホニル、スルホニルオキシ、チオアシル、チオール、アルキルチオ、および置換アルキルチオからなる群から選択される1から5個、好ましくは1から3個の置換基を有するシクロアルキル基またはシクロアルケニル基を指し、ここで、該置換基は本明細書に定義されている。
【0064】
「シクロアルキルオキシ」は−O−シクロアルキルをいう。
【0065】
「置換シクロアルキルオキシ」は、−O−(置換シクロアルキル)をいう。
【0066】
「シクロアルキルチオ」は、−S−シクロアルキルをいう。
【0067】
「置換シクロアルキルチオ」は、−S−(置換シクロアルキル)をいう。
【0068】
「シクロアルケニルオキシ」は、−O−シクロアルケニルをいう。
【0069】
「置換シクロアルケニルオキシ」は、−O−(置換シクロアルケニル)をいう。
【0070】
「シクロアルケニルチオ」は−S−シクロアルケニルをいう。
【0071】
「置換シクロアルケニルチオ」は−S−(置換シクロアルケニル)をいう。
【0072】
「グアニジノ」は、基−NHC(=NH)NHをいう。
【0073】
「置換グアニジノ」は、それぞれのR13が、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、および置換複素環式からなる群から独立に選択され、かつ共通のグアニジノ窒素原子に結合した2個のR13基が、それらに結合した窒素と一緒になって場合により連結されて複素環式基または置換複素環式基を形成する−NR13C(=NR13)N(R13を指し、但し、少なくとも1個のR13は水素でないことを条件とし、ここで該置換基は本明細書に定義されたとおりである。
【0074】
「ハロ」または「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを指し、好ましくはフルオロまたはクロロである。
【0075】
「ハロアルキル」は、1から5個、1から3個、または1から2個のハロ基で置換されたアルキル基を指し、ここで、アルキルおよびハロは本明細書に定義されたとおりである。
【0076】
「ハロアルコキシ」は、1から5個、1から3個、または1から2個のハロ基で置換されたアルコキシ基を指し、ここで、アルコキシおよびハロは本明細書に定義されたとおりである。
【0077】
「ハロアルキルチオ」は、1から5個、1から3個、または1から2個のハロ基で置換されたアルキルチオ基を指し、ここで、アルキルチオおよびハロは本明細書に定義されたとおりである。
【0078】
「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」は、基−OHをいう。
【0079】
「ヘテロアリール」は、環内に1から10個の炭素原子、および酸素、窒素および硫黄からなる群から選択される1から4個のヘテロ原子を有する芳香族基をいう。このようなヘテロアリール基は、単一の環(例えば、ピリジニルまたはフリル)または複数の縮合した環(例えば、インドリジニルまたはベンゾチエニル)を有することができ、ここで、該縮合環は芳香族であってもなくてもよく、かつ/またはヘテロ原子を含んでも含まなくてもよく、但し、その結合点が芳香族ヘテロアリール基の原子を介することを条件とする。1つの実施形態において、ヘテロアリール基の窒素および/または硫黄の環原子(複数可)は、場合により酸化されて、N−オキシド部分(N→O)、スルフィニル部分、またはスルホニル部分を与える。好ましいヘテロアリールには、ピリジニル、ピロリル、インドリル、チオフェニル、およびフラニルが含まれる。
【0080】
「置換ヘテロアリール」は、置換アリールについて定義された置換基の同じ基からなる群から選択される1から5個、好ましくは1から3個、またはより好ましくは1から2個の置換基で置換されているヘテロアリール基をいう。
【0081】
「ヘテロアリールオキシ」は−O−ヘテロアリールをいう。
【0082】
「置換ヘテロアリールオキシ」は、基−O−(置換ヘテロアリール)をいう。
【0083】
「ヘテロアリールチオ」は基−S−ヘテロアリールをいう。
【0084】
「置換ヘテロアリールチオ」は、基−S−(置換ヘテロアリール)をいう。
【0085】
「複素環」または「複素環式」または「ヘテロシクロアルキル」または「ヘテロシクリル」は、1から10個の環炭素原子、および窒素、硫黄、または酸素からなる群から選択される1から4個の環ヘテロ原子を有する飽和または部分的に飽和であるが芳香族ではない基をいう。複素環は、単一の環または複数の縮合した環(縮合環系、架橋環系およびスピロ環系を含む)を包含する。縮合環系において、1個または複数の環は、シクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであることができ、但し、その結合点が非芳香族環を介することを条件とする。1つの実施形態において、複素環式基の窒素原子および/または硫黄原子(複数可)は、場合により酸化されてN−オキシド部分、スルフィニル部分、またはスルホニル部分を与える。
【0086】
「置換複素環式」または「置換ヘテロシクロアルキル」または「置換ヘテロシクリル」は、1から5個または好ましくは1から3個の、置換シクロアルキルについて定義された置換基と同じ置換基で置換されているヘテロシクリル基をいう。
【0087】
「ヘテロシクリルオキシ」は、基−O−ヘテロシクリルをいう。
【0088】
「置換ヘテロシクリルオキシ」は、基−O−(置換ヘテロシクリル)をいう。
【0089】
「ヘテロシクリルチオ」は、基−S−ヘテロシクリルをいう。
【0090】
「置換ヘテロシクリルチオ」は、基−S−(置換ヘテロシクリル)をいう。
【0091】
複素環およびヘテロアリールの例には、限定されないが、アゼチジン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、ジヒドロインドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチルピリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、イソチアゾール、フェナジン、イソオキサゾール、フェノキサジン、フェノチアジン、イミダゾリジン、イミダゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドリン、フタルイミド、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、4,5,6,7−テトラヒドロベンゾ[b]チオフェン、チアゾール、チアゾリジン、チオフェン、ベンゾ[b]チオフェン、モルホリニル、チオモルホリニル(チアモルホリニルとも呼ばれる)、1,1−ジオキソチオモルホリニル、ピペリジニル、ピロリジン、およびテトラヒドロフラニルが含まれる。
【0092】
「ニトロ」は、基−NOをいう。
【0093】
「オキソ」は、原子(=O)または(−O)をいう。
【0094】
「スピロ環系」は、両環に共通の一個の環炭素原子を有する二環式環系をいう。
【0095】
「スルホニル」は、二価の基−S(O)−をいう。
【0096】
「置換スルホニル」は、基−SO−アルキル、−SO−置換アルキル、−SO−アルケニル、−SO−置換アルケニル、−SO−シクロアルキル、−SO−置換シクロアルキル、−SO−シクロアルケニル、−SO−置換シクロアルケニル、−SO−アリール、−SO−置換アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO−置換ヘテロアリール、−SO−複素環式、−SO−置換複素環式を指し、ここで、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、および置換複素環式は、本明細書に定義されたとおりである。置換スルホニルには、メチル−SO−、フェニル−SO−、および4−メチルフェニル−SO−などの基が含まれる。「アルキルスルホニル」という用語は、−SO−アルキルをいう。「(置換スルホニル)アミノ」という用語は、−NH(置換スルホニル)を指し、ここで、置換スルホニルは本明細書に定義されたとおりである。
【0097】
「スルホニルオキシ」は、基−OSO−アルキル、−OSO−置換アルキル、−OSO−アルケニル、−OSO−置換アルケニル、−OSO−シクロアルキル、−OSO−置換シクロアルキル、−OSO−シクロアルケニル、−OSO−置換シクロアルケニル、−OSO−アリール、−OSO−置換アリール、−OSO−ヘテロアリール、−OSO−置換ヘテロアリール、−OSO−複素環式、−OSO−置換複素環式を指し、ここで、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、および置換複素環式は、本明細書に定義されたとおりである。
【0098】
「チオアシル」は、基H−C(S)−、アルキル−C(S)−、置換アルキル−C(S)−、アルケニル−C(S)−、置換アルケニル−C(S)−、アルキニル−C(S)−、置換アルキニル−C(S)−、シクロアルキル−C(S)−、置換シクロアルキル−C(S)−、シクロアルケニル−C(S)−、置換シクロアルケニル−C(S)−、アリール−C(S)−、置換アリール−C(S)−、ヘテロアリール−C(S)−、置換ヘテロアリール−C(S)−、複素環式−C(S)−、および置換複素環式−C(S)−を指し、ここで、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、および置換複素環式は、本明細書に定義されたとおりである。
【0099】
「チオール」は、基−SHをいう。
【0100】
「チオカルボニル」は、−C(=S)−と同等である二価の基−C(S)−をいう。
【0101】
「チオン」は、原子(=S)をいう。
【0102】
「アルキルチオ」は、基−S−アルキルを指し、ここで、アルキルは本明細書に定義されたとおりである。
【0103】
「置換アルキルチオ」は、基−S−(置換アルキル)を指し、ここで、置換アルキルは本明細書に定義されたとおりである。
【0104】
特に断りのない限り、本明細書において明示的に定義されていない置換基の命名は、その結合点の方向に官能基の末端部分に続けて隣接する官能基を命名することによって導き出される。例えば、「アリールアルキルオキシカルボニル」という置換基は、基(アリール)−(アルキル)−O−C(O)−をいう。
【0105】
上記に定義された置換された基の全てにおいて、それらに対するさらなる置換基で置換基を定義することによって導き出されるポリマー(例えば、置換アリール基でそれ自体置換されている置換基として置換アリール基を有する置換アリール、これが置換アリール基によってさらに置換されている、など)は、本明細書において含めることを意図されないことが理解される。このような場合、このような置換の最大数は3である。例えば、2個の他の置換アリール基での置換アリール基の一連の置換は、−置換アリール−(置換アリール)−置換アリールに限られる。
【0106】
同様に、上記定義は、許されない置換様式(例えば、5個のフルオロ基で置換されたメチル)を含むことは意図されないことが理解される。このような許されない置換様式は、当業者に周知である。
【0107】
「立体異性体(単数または複数)」は、1つ以上の立体中心のキラリティーが異なる化合物をいう。立体異性体には、エナンチオマーおよびジアステレオマーが含まれる。
【0108】
「互変異性体」は、エノール−ケト互変異性体およびイミン−エナミン互変異性体などの、プロトンの位置が異なる化合物の交互型、またはピラゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、およびテトラゾールなどの、環−NH−部分および環=N−部分の両方に結合した環原子を含むヘテロアリール基の互変異性型をいう。
【0109】
「薬学的に受容可能な塩」は、化合物の薬学的に受容可能な塩を指し、その塩は当該分野で周知である様々な有機および無機の対イオンから誘導され、そして、例のみとして、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、およびテトラアルキルアンモニウムの塩;ならびに該分子が塩基性の官能基を含む場合、塩酸塩、臭化水素酸塩、酒石酸塩、メシレート、酢酸塩、マレイン酸塩、およびシュウ酸塩などの有機または無機酸の塩を含む。
【0110】
「薬学的組成物」は、活性薬剤とキャリアとの組合せを包含することが意図される。このキャリアは、不活性または活性であり、この組成物を、インビトロ、インビボまたはエキソビボでの診断的使用または治療的使用のために適切にする。
【0111】
本明細書中で使用される場合、用語「薬学的に受容可能なキャリア」は、標準的な薬学的キャリア(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水、水、およびエマルジョン(例えば、油/水エマルジョンまたは水/油エマルジョン)、ならびに種々の型の湿潤剤)のうちの任意のものを包含する。これらの組成物はまた、安定剤および防腐剤を含有し得る。キャリア、安定剤およびアジュバントの例については、Martin,Remington’s Pharm.Sci.,第15版(Mack Publ.Co.,Easton(1975))を参照のこと。
【0112】
「賦形剤」は、活性成分のより容易な投与のために薬学的組成物に添加される不活性物質をいう。
【0113】
「被験体」、「個体」または「患者」は、本明細書中で交換可能に使用され、そして脊椎動物(例えば、哺乳動物または好ましくはヒト)をいう。哺乳動物としては、マウス、ラット、サル、ヒト、家畜動物、スポーツ用動物およびペットが挙げられるが、これらに限定されない。
【0114】
「有効量」は、「治療有効量」と同義であり、そして有利な結果または所望の結果をもたらすために充分な量を意図する。有効量は、1回以上の投与、適用または投薬で投与され得る。これはまた、以下の効果のうちの1つ以上を惹起する量をいう:赤み、熱、水腫、膨潤および疼痛の、全身性および/または局所的な減少により示されるように、自己免疫誘導炎症を減少させること、炎症性サイトカインのレベルを低下させること、ならびに抗炎症性サイトカインのレベルを増加させること。
【0115】
疾患または状態の「処置する」または「処置」は、処置されるべき疾患または状態、および処置されるべき個体に依存する。一般に、処置は、(1)臨床パラメータまたは臨床未満パラメータにより測定される場合に、症状発現した疾患または状態の進行を阻害すること(ここで用語「阻害する」または「阻害」とは、「処置する」または「処置」の部分集合であることが意図される)、(2)臨床パラメータまたは臨床未満パラメータにより測定される場合に、疾患の発生を止めること、(3)臨床パラメータまたは臨床未満パラメータにより測定される場合に、疾患または状態を軽減するかまたは後退を引き起こすこと、あるいは(4)臨床パラメータにより測定される場合に、被験体に対する疼痛または不快を減少させることのうちの1つ以上を意図する。「処置」は、疾患または状態の発症を予防することを包含しない。
【0116】
疾患もしくは状態を「予防する」または疾患もしくは状態の「予防」とは、被験体が疾患もしくは状態を発症しないように、その疾患もしくは状態の素因がある被験体におけるその疾患もしくは状態の発症が、予防されることを意味する。
【0117】
(治療法)
本発明は、代謝症候群および代謝症候群に関連する状態を処置、予防または阻害するためのsEH阻害剤の使用に関する。本発明はさらに、sEH阻害剤の使用が、有利なことに、被験体における代謝症候群に関連する1または複数の状態の発症またはさらなる発症の危険性を低減し得るという驚くべきかつ予測できない発見に関する。このような状態としては、一例として、グルコース不耐性、上昇した血清中コレステロールまたはトリグリセリドレベル、初期糖尿病、肥満症、高血圧などが挙げられる。これらの状態が未処置のままにされると、糖尿病、脂質異常症および心臓血管疾患のような重篤な障害につながり得る。本明細書中に記載される方法による早期の介入は、1以上のこれらの状態の発症を予防または阻害するだけでなく、多くの場合、有害な状態または関連する障害の実際の逆転が達成され得る。
【0118】
sEH阻害剤は高血圧症を低減させ得ることがこれまでに示されている。例えば、米国特許第6,351,506号を参照のこと。しかしながら、本発明以前には、sEH阻害剤が、代謝症候群を予防または阻害するため、そして、代謝症候群に関連する多数の状態を処置するために使用され得ることは知られていなかった。
【0119】
代謝症候群は、一般に、一人の被験体における以下の臨床症状発現のうちの3つ以上の存在に基づいて、診断され得る:
a)男性において40インチ(102cm)以上、および女性において35インチ(88cm)以上の、増加した腰周り寸法により特徴付けられる、腹の肥満、または25以上のボディマスインデックス(BMI)、もしくは、別の局面では、30以上のBMI、もしくは別の局面では、35以上のBMI、もしくはなお別の局面では、40以上のBMIによって特徴付けられる肥満症;
b)150mg/dL以上、または、一局面では、200mg/dL以上、もしくは別の局面では、215mg/dL以上、もしくは別の局面では、150mg/dL以上であるが、200mg/dL未満、もしくはなお別の局面では、150mg/dL以上であるが、215mg/dL未満の上昇したトリグリセリド;
c)女性において40mg/dL未満および男性において50mg/dL未満あるいは、女性において35mg/dL未満および男性において45mg/dL未満、あるいは、女性において30mg/dL未満および男性において40mg/dL未満、あるいは、女性において10mg/dL〜40mg/dLおよび男性において10mg/dL〜50mg/dL、あるいは、女性において15mg/dL〜40mg/dLおよび男性において15mg/dL〜50mg/dL、あるいは、女性において20mg/dL〜40mg/dLおよび男性において20mg/dL〜50mg/dL、あるいは、女性および男性の両方について40mg/dL〜50mg/dLの、低下したレベルの高密度リポタンパク質(HDL);
d)130/85mmHg以上、あるいは、140/90mmHg以上、あるいは、150/90mmHg以上、あるいは、140/100mmHg以上、あるいは、150/100mmHg以上の高い血圧;ならびに
e)100mg/dL以上、あるいは、110mg/dL以上、あるいは、120mg/dL以上、あるいは、100mg/dL以上であるが全ての場合において125mg/dL未満の上昇した空腹時グルコース。
【0120】
代謝症候群の発生を予防して、この症候群によりもたらされる医学的合併症を回避するために、初期の介入を提供することが望ましい。代謝症候群の予防または阻害とは、代謝症候群に罹患しやすいがまだ発症していない被験体における、初期の介入をいう。これらの被験体は、代謝症候群に関連する遺伝的素因を有し得、そして/またはこれらの被験体は、代謝症候群に関連する特定の外的に獲得される要因(例えば、過剰な体脂、乏しい食餌、および身体的不活発)を有し得る。さらに、これらの被験体は、代謝症候群に関連する状態のうちの1つ以上を示し得る。これらの状態は、その初期の形態であり得る。
【0121】
したがって、1つの局面において、本発明は、代謝症候群に罹患しやすい被験体に有効量のsEH阻害剤を投与することによる、代謝症候群の発生を阻害するための方法を提供する。
【0122】
別の局面では、本発明は、本明細書中に記載される1以上の化合物の有効量の投与によって、代謝症候群を罹患する哺乳動物被験体を処置するための方法を提供し、ここで、代謝症候群とは、上記されたように、肥満、上昇したトリグリセリドおよび高血圧といった臨床上の症状発現の存在によって特徴付けられる。あるいは、臨床上の症状発現は、上記されたように、上昇したトリグリセリド、低下したレベルの高密度リポタンパク質および高血圧である。別の局面では、臨床上の症状発現は、上記されたように、肥満、高血圧および低下した高密度リポタンパク質である。なお別の局面では、臨床上の症状発現は、上記されたように、上昇したトリグリセリド、肥満症および低下した高密度リポタンパク質である。なお別の局面では、臨床上の症状発現は、上記されたように、低下したレベルの高密度リポタンパク質、高血圧および上昇した絶食時グルコースである。
【0123】
別の局面では、本発明は、本明細書中に記載される1以上の化合物の有効量の投与によって代謝症候群を罹患する哺乳動物被験体を処置するための方法を提供し、ここで、代謝症候群とは、上記されたように、以下:
a)腹部肥満;
b)上昇したトリグリセリド;
c)低下したレベルの高密度リポタンパク質(HDL);
d)高血圧;および
e)上昇した空腹時グルコース
から選択される、表1に記載される任意の組み合わせの存在によって特徴付けられる。
【0124】
【表1】

別の局面は、被験体における1つ以上の代謝症候群に関連する状態を処置するための方法を提供し、ここでこれらの状態は、初期糖尿病、肥満症、グルコース不耐性、高い血圧、上昇した血清中コレステロール、低下した高密度リポタンパク質、および上昇したトリグリセリドから選択される。この方法は、この被験体に、この被験体に発症している状態を処置するために有効な量のsEH阻害剤を投与する工程を包含する。この局面の1つの実施形態において、上記状態のうちの2つ以上が、この被験体に有効量sEH阻害剤を投与することにより処置される。この局面において、処置されるべき状態としては、高血圧症の処置が挙げられる。別の局面では、本発明の方法は、低密度リポタンパク質(LDL)および/または高密度リポタンパク質(HDL)の血清中レベルを改善するために有用である。さらなる局面では、本発明の方法は、血清中LDLを低下させるために有用である。なおさらなる局面では、本発明の方法は、血清中HDLを増加させるために有用である。
【0125】
sEH阻害はまた、被験体が代謝症候群に罹患しやすいか代謝症候群を発症しているかにかかわらず、代謝状態(肥満症、グルコース不耐性、低下した高密度リポタンパク質、高血圧症、高い血圧、上昇したレベルの血清中コレステロール、および上昇したレベルのトリグリセリド、またはこれらの組み合わせが挙げられる)を処置する際に有用である。
【0126】
したがって、本発明の別の局面は、被験体における代謝状態を処置するための方法を提供し、この方法は、この被験体に、有効量のsEH阻害剤を投与する工程を包含し、この代謝状態は、肥満症、グルコース不耐性、高い血圧、上昇した血清中コレステロール、低下した高密度リポタンパク質,および上昇したトリグリセリド、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる状態からなる群より選択される。
【0127】
上記実施形態のさらなる局面では、代謝症候群または代謝状態を罹患している哺乳動物被験体は、ネフロパシーを罹患していない。さらなる局面では、上記実施形態の哺乳動物被験体は、代謝症候群または糖尿病に伴うネフロパシーを有していない。なおさらなる局面では、本発明の化合物は、ネフロパシーの発症または進行を阻害するためのものではない。
【0128】
一般に、グルコース、血清中コレステロール、トリグリセリド、肥満症、および血圧のレベルは、周知のパラメータであり、そして当該分野において公知である方法を使用して容易に決定される。
【0129】
グルコース不耐性の数種の異なるカテゴリーが存在し、これらのカテゴリーとしては例えば、1型真性糖尿病、2型真性糖尿病、妊娠糖尿病(GDM)、耐糖能障害(IGT)、および空腹時耐糖能障害(IFG)が挙げられる。IGTおよびIFGは、通常の血糖症の状態から糖尿病への移行段階である。IGTは、75g経口耐糖能試験(OGTT)において1dLあたり140mg〜199mg(7.8mmol〜11.0mmol)の2時間グルコースレベルとして定義され、そしてIFGは、空腹時の患者における、1dLあたり100mg〜125mg(1Lあたり5.6mmol〜6.9mmol)の空腹時血漿中グルコース(FG)値として定義される。これらのグルコースレベルは、正常より高いが、糖尿病であるとの診断レベルより低い。Raoら,Amer.Fam.Phys.69:1961−1968(2004)。
【0130】
現在の知識は、グルコース不耐性または糖尿病の発症が、インスリン抵抗性により開始され、そして代償性高インスリン血症により悪化することを示唆する。2型糖尿病への進行は、遺伝的特質、および環境要因または後天性要因(例えば、座っていることが多い生活習慣および肥満症を促進する乏しい食習慣が挙げられる)により影響を受ける。2型糖尿病の患者は、通常、肥満症であるので、肥満症はまた、インスリン抵抗性に関連する。
【0131】
「初期糖尿病」とは、被験体が上昇したレベルのグルコース、あるいは上昇したレベルのグリコシル化ヘモグロビンを有するが、糖尿病を発症していない状態をいう。患者における糖尿病の長期間の重篤度および進行の標準的な尺度は、グリコシル化タンパク質(代表的に、グリコシル化ヘモグロビン)の濃度である。グリコシル化タンパク質は、グルコースとタンパク質の遊離アミノ基(代表的に、N末端アミノ基)との自発的反応により形成される。HbA1cは、グリコシル化ヘモグロビン(Hb)のうちの1つの特定の型であり、約80%の全てグリコシル化されたヘモグロビンからなり、ここで、Hb Aβ鎖のN末端アミノ基が、グリコシル化されている。
【0132】
HbA1cの形成は、非可逆的であるので、その血中レベルは、赤血球の寿命(平均120日間)と、血中グルコース濃度との両方に依存する。赤血球中でのグリコシル化ヘモグロビンの蓄積は、この細胞がその生活環中に曝露されたグルコースの平均レベルを反映する。したがって、グリコシル化ヘモグロビンの量は、長期間の血清グルコース調節を監視することにより、治療の有効性の指標であり得る。HbA1cレベルは、4週間〜3ヶ月前の平均血中グルコース濃度に比例する。したがって、HbA1cは、時間平均した血中グルコース値を表し、そして血中グルコース値において観察される広い摂動(糖尿病を制御するための候補薬物の臨床治験と最も代表的に組み合わせられる尺度)を受けにくい。一実施形態では、6より大きく7未満のHbA1cレベルは、代表的に、初期糖尿病に関連している。
【0133】
肥満は、被験体の体重を測定すること、または被験体のボディマス指数(BMI)を測定することによって、監視され得るas described in “Clinical Guidelines on the Identification Evaluation and Treatment of overweight and obesity in Adults” The Evidence Report, NIH Publication No. 98−4083, September 1998。BMIは、被験体の体重(kg)を、その被験体の身長(m)の二乗で割ることにより決定される(BMI=kg/m)。あるいは、肥満は、体脂の百分率を測定することにより監視され得る。体脂の百分率は、当該分野において公知である方法(被験体の体重を水中で測定することによる方法、皮下脂肪試験による方法(この方法において、ひとつまみの皮膚が正確に測定されて、皮下脂肪層の厚さが決定される)または生物電気的インピーダンス分析による方法が挙げられる)により測定され得る。
【0134】
(sEH阻害剤)
上記実施形態の各々において、有効量のsEH阻害剤、またはsEH阻害剤を含む組成物は、必要のある被験体に投与される。好ましくは、sEH阻害剤は、式(I)、式(II)、または式(IIa)に示される以下の一般式または特定の式のうちの少なくとも1つによって記載される。
【0135】
1つの局面において、この化合物は、式(I)
NHC(=Q)NHR (I)
の群のメンバーであり、式(I)において、
Qは、OおよびSからなる群より選択され;そして
およびRは独立して、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキルおよび置換ヘテロシクロアルキルからなる群より選択される。
【0136】
1つの局面において、この化合物は、式(II)
【0137】
【化4】

の群のメンバーであり、式(II)において、
Qは、OおよびSからなる群より選択され;
は、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキルおよび置換ヘテロシクロアルキルからなる群より選択され;
Xは、CまたはNであり;ただし、XがCである場合、環Aはフェニルであり、そしてXがNである場合、環Aはピペリジニルであり;
Yは、COおよびSOからなる群より選択され;
は、アルキル、置換アルキル、またはへテロシクロアルキルからなる群より選択され;そして
mは、0、1、および2からなる群より選択される。
【0138】
1つの局面において、この化合物は、式(IIa)
【0139】
【化5】

の群のメンバーであり、式(IIa)において、
Qは、OおよびSからなる群より選択され;
は、置換アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキルおよび置換ヘテロシクロアルキルからなる群より選択され;
Xは、CまたはNであり;ただし、XがCである場合、環Aはフェニルであり、そしてXがNである場合、環Aはピペリジニルであり;
Yは、COおよびSOからなる群より選択され;そして
は、アルキル、置換アルキル、またはへテロシクロアルキルからなる群より選択される。
【0140】
いくつかの局面において、QはOである。
【0141】
いくつかの局面において、Rは、1個〜3個の基で必要に応じて置換されたフェニルであり、この置換基は、ハロ、アルキル、アシル、アシルオキシ、カルボキシルエステル、アシルアミノ、アミノカルボニル、アミノカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、アミノスルホニルアミノ、(カルボキシルエステル)アミノ、アミノスルホニル、(置換スルホニル)アミノ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ハロアルキルチオ、シアノ、およびアルキルスルホニルから独立して選択される。
【0142】
いくつかの局面において、Rは、4−トリフルオロメチルフェニルまたは4−トリフルオロメトキシフェニルからなる群より選択される。
【0143】
いくつかの局面において、Rはシクロアルキルである。いくつかのこのような局面において、Rはアダマンチルである。
【0144】
他の局面において、Rはアルキルである。いくつかのこのような局面において、Rはメチルである。
【0145】
他の局面において、Rはヘテロシクロアルキルである。いくつかのこのような局面において、Rはモルホリノである。
【0146】
別の実施形態において、投与されるべき化合物は、表2から選択される化合物の、化合物、立体異性体、またはその薬学的に受容可能な塩である。
【0147】
【表2】

本発明の別の局面において、式(I)、(II)、または(IIa)の化合物、あるいはその薬学的に受容可能な塩のうちの1種以上が、代謝症候群、あるいは初期糖尿病、肥満症、グルコース不耐性、高血圧、上昇した血清中コレステロール、低下した高密度リポタンパク質、または上昇したトリグリセリドのうちの1つ以上から選択される代謝状態の処置のための医薬の調製において使用され得る。
【0148】
(組成物および製剤)
これらの組成物は、一般に、少なくとも1種の薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤と組み合わせたsEH阻害剤からなる。受容可能なキャリアは当該分野において公知であり、そして上に記載されている。受容可能な賦形剤は、非毒性であり、投薬を補助し、該化合物の治療利点に悪影響を及ぼさない。このような賦形剤は、当業者に一般に利用可能な、固体、液体、半固体のいずれかの賦形剤、またはエアロゾル組成物の場合には、ガス状賦形剤であってもよい。
【0149】
固体医薬賦形剤には、デンプン、セルロース、タルク、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルクなどが含まれる。液体および半固体の賦形剤は、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールおよび(石油、動物、植物または合成起源の油、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などを含む)様々な油から選択される。特に注射用液のために好ましい液体キャリアには、水、生理食塩水、水性デキストロース、およびグリコールが含まれる。
【0150】
これらのsEH阻害剤は、任意の適切な製剤(例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、半固体、ゲル、経皮パッチまたは液剤、散剤、徐放製剤、溶液、懸濁剤、エリキシル剤またはエアロゾル)として投与され得る。最も適切な製剤は、処置されるべき疾患または障害、および処置されるべき個体により決定される。
【0151】
圧縮ガスは、sEH阻害剤をエアロゾル形態で分散するために使用され得る。この目的のために適切な不活性気体は、窒素、二酸化炭素などである。他の適切な薬学的賦形剤およびそれらの処方は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,E.W.Martin編(Mack Publishing Company,第l8版,l990)に記載されている。
【0152】
以下は、本発明のsEH阻害剤を含む代表的医薬製剤である。
【0153】
(錠剤製剤)
以下の成分を十分に混合し、割線が一本入った錠剤に押圧する
【0154】
【表4】

(カプセル製剤)
以下の成分を十分に混合し、ハードシェルゼラチンカプセルに充填する
【0155】
【表5】

(懸濁液製剤)
以下の成分を混合して、経口投与用懸濁液を生成する(q.s.=十分量)
【0156】
【表6】

(注射製剤)
以下の成分を混合して、注射製剤を生成する
【0157】
【表7】

(坐薬製剤)
本発明の化合物とWitepsol(登録商標)H−15(飽和植物性脂肪酸のトリグリセリド;Riches−Nelson,Inc.、New York)を混合することによって総重量2.5gの坐薬を調製し、以下の組成を有する:
【0158】
【表8】

また、上記されたような疾患または障害(任意の1以上の臨床上または準臨床的なパラメーターに注目することによって同定され得る)の処置において使用するための、本明細書中に記載されるような化合物または組成物を含む医薬が提供される。
【0159】
(併用療法)
代謝症候群そのものの性質に起因して、代謝症候群はしばしば、各々が疾患の一局面に対して影響を及ぼすことが意図された因子の組み合わせを用いて処置される。より一般化された治療目的のために、しばしば、併用療法が望ましい。併用療法としては、sEH阻害剤と1以上のさらなる活性因子とを含む単一の薬学的投薬処方物の投与、または、熱、光などのような治療、ならびに、個別の薬学的投薬処方物中にあるsEH阻害剤および各々の活性因子の投与が挙げられる。例えば、本発明の化合物と、血圧を低下させることが知られるアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤(例えば、カプトプリルまたはエナラプリル)など、および、血漿中コレステロールを低下させるHMG−CoA還元酵素阻害剤もしくはスタチン(例えば、アトルバスタチンもしくはフルバスタチン)とは、錠剤もしくはカプセルのような単一の経口投薬組成物において一緒にヒト被験体に投与され得るか、または、各々の因子が、別個の経口投薬処方物において投与され得る。代謝症候群の個々の構成要素の処置において有用な他の因子としては、グリタゾンとしても知られるチオゾリジノン(例:ロシグリタゾン、ピオグリタゾン)およびメトフォルミンのようなインシュリン感作物質が挙げられる。血圧を低下させる因子としては、ACE阻害剤(例:カプトプリル、キナプリル)、アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト(例:ロサルタン、カンデサルタン、オルメサルタン)、βブロッカー(例:プロプラノロール、メトプロロール(metaprolol)、アテノロール)、利尿薬(例:フロセミド(furosamide)、ヒドロクロロチアジド)およびカルシウムチャネルブロッカー(例:ニトレンジピン、ニカルジピン(nicardapine)、フェロジピン、ベラパミル、ジリチアゼム)が挙げられる。高脂質血症に影響を及ぼすことが知られる因子としては、フィブラート(例:クロロフィブラート、ゲムフィブラート)が挙げられる。血漿中コレステロールを低下させることが知られる因子としては、スタチン(例:アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、シンバスタチン)およびナイアシンが挙げられる。併用療法は、これら全てのレジメンを含むものと理解される。
【0160】
(投薬および投与)
本発明は、一般に、投与を必要とする被験体に、本明細書中に記載される有効量のsEH阻害剤を投与する工程を包含する治療法を提供する。このような投与の用量、頻度およびタイミングは、大部分、選択される治療剤、処置される状態の性質、被験体の状態(年齢、体重および他の状態もしくは障害の存在を含む)、治療剤の処方、および主治医の方針に依存する。本明細書中に記載されるsEH阻害剤および組成物、ならびにその薬学的に受容可能な塩は、経口経路、非経口経路、皮下経路、筋肉内経路、静脈内経路または局所経路を介して投与される。一般に、sEH阻害剤は、約0.10ミリグラム(mg)〜約1000mg/日の範囲の投薬量で投与されるべきであると意図されているが、上述したように、標的組織、被験体および投与経路に依存して、必要に応じてバリエーションが生じる。好ましい実施形態では、sEH阻害剤は、1日に1回もしくは2回経口投与される。
【0161】
sEH阻害剤は、好ましくは、約0.10mg〜1000mg/日の範囲で投与され、より好ましくは、化合物は、約1mg〜800mg/日の範囲で投与され;より好ましくは、化合物は、約2mg〜600mg/日の範囲で投与され;より好ましくは、化合物は、約5mg〜500mg/日の範囲で投与され;なおより好ましくは、化合物は、約10mg〜200mg/日の範囲で投与され;なおさらにより好ましくは、化合物は、約50mg〜100mg/日の範囲で投与される。
【0162】
以下の実施例は、本発明の特定の局面を示し、そして、本発明を実施する際に当業者の助けとなるために提供される。これらの実施例は、決して、本発明の範囲を制限するものとはみなされない。
【0163】
(合成化学)
本発明のsEH阻害剤は、以下の一般的な方法および手順を用いて容易に入手可能な出発物質から調製され得る。典型的または好ましいプロセス条件(すなわち、反応温度、時間、反応物質のモル比、溶媒、圧力など)が与えられる場合、他のプロセス条件も特に断らない限り用いられ得ることが理解される。最適反応条件は、使用される特定の反応物質または溶媒で変り得るが、このような条件は、慣用的な最適化手順により当業者によって決定され得る。
【0164】
さらに、当業者には明らかであるように、従来の保護基は、特定の官能基が望ましくない反応を起こすことを防止するのに必要であり得る。様々な官能基の好適な保護基ならびに特定の官能基を保護および脱保護する好適な条件は、当該分野で周知である。例えば、多数の保護基がT.W.GreeneおよびG.M.Wuts、Protecting Groups in Organic Synthesis、第3版、Wiley、New York、1999年およびそこに引用された参考文献に記載されている。
【0165】
さらに、本発明のsEH阻害剤は、1つ以上のキラル中心を含み得る。したがって、必要に応じて、このような阻害剤は、純粋な立体異性体、すなわち、個々のエナンチオマーもしくはジアステレオマーとして、または立体異性体豊富化混合物として、調製または単離され得る。このような立体異性体(および豊富化混合物)の全ては、特に断らない限り、本発明の範囲内に含まれる。純粋立体異性体(または豊富化混合物)は、例えば、当該分野で周知である光学的に活性な出発物質または立体選択性反応物質を用いて調製され得る。好ましくは、このような化合物のラセミ混合体は、例えば、キラルカラムクロマトグラフィー、キラル分割剤などを用いて分離され得る。
【0166】
以下の反応のための出発物質は一般的に公知の化合物であるか、または公知の手順もしくはその明らかな変更によって調製され得る。例えば、多くの出発物質が、Aldrich Chemical Co.(Milwaukee、Wisconsin、USA)、Bachem(Torrance、California、USA)、Emka−ChemceまたはSigma(St.Louis、Missouri、USA)などの商業的供給業者から入手可能である。他のものは、FieserおよびFieserのReagents for Organic Synthesis、第1〜15巻(John Wiley and Sons、1991年)、RoddのChemistry of Carbon Compounds、第1〜5巻および補遺(Elsevier Science Publishers、1989年)、Organic Reactions、第1〜40巻(John Wiley and Sons、1991年)、MarchのAdvanced Organic Chemistry,(John Wiley and Sons、第4版)、ならびにLarockのComprehensive Organic Transformations(VCH Publishers Inc.、1989年)などの標準的参考教科書に記載される手順、またはその明らかな変更によって調製され得る。
【0167】
本発明の様々な出発物質、中間体、および化合物は、適切な場合に、沈殿、ろ過、結晶化、エバポレーション、蒸留、およびクロマトグラフィーなどの従来の技術を用いて、単離および精製され得る。これらの化合物の特徴づけは、融点、質量スペクトル、核磁気共鳴、および様々な他の分光分析によるなどの従来の方法を用いて行われ得る。
【0168】
以下のスキーム1は、式Iの化合物の調製のための一般合成方法を図示する。
【0169】
(スキーム1)
【0170】
【化6】

本発明の化合物の合成がスキーム1に示され、スキーム1において、Q、R、およびRは、先に定義されたとおりである。具体的には、アミン1.1は、適切なイソシアネート1.2と反応して、式Iの対応する尿素またはチオ尿素を形成する。代表的に、尿素の形成は、極性溶媒(例えば、DMF (ジメチルホルムアミド))を使用して0℃〜10℃で実施される。イソシアネートまたはチオイソシアネート1.2は、公知の化合物であり得るか、または従来の合成手順により公知の化合物から調製され得るかのいずれかである。適切なイソシアネートとしては、例のみとして、イソシアン酸アダマンチル、イソシアン酸シクロヘキシル、イソシアン酸フェニル、イソシアン酸トリフルオロメチルフェニル、イソシアン酸クロロフェニル、イソシアン酸フルオロフェニル、イソシアン酸トリフルオロメトキシフェニルなどが挙げられる。
【0171】
スキーム2は、式(I)のピペリジニル尿素の調製に関連する場合の、スキーム1の方法を図示する。
【0172】
(スキーム2)
【0173】
【化7】

スキーム2はまた、説明の目的で、環Aがピペリジニル環であり、そしてQ、Y、R、R、およびmが先に定義されている、式(II)の化合物の合成のために使用され得る。イソシアネート2.1とアミン2.2との反応は、2.3の対応する尿素またはチオ尿素を形成する。
【0174】
スキーム2において、N−(YR)置換ピペリジニルアミンは、以下のスキーム3に示されるように調製され得る。
【0175】
(スキーム3)
【0176】
【化8】

ここでYおよびRは上で定義されたとおりであり、そしてLGは、脱離基(例えば、ハロ基、トシル基、メシル基など)であり、そしてPGは、従来のアミノ保護基(例えば、tert−ブトキシカルボニル(Boc)基)である。3.1と保護されたアミノピペリジン3.2との反応は、官能基化されたアミン3.3を形成する。保護基の除去は、2.2を与える。これらの反応の両方は従来のものであり、そして充分に、当該分野の知識の範囲内である。
【0177】
以下のスキームは、式Iおよび/またはIIの化合物を調製する好ましい方法を図示する。具体的には、スキーム4において、4−アミドピペリジン基が説明の目的のみで使用され、そしてこのスキームは、N−(1−アシルピペリジン−4−イル)−N’−(アダマンタ−1−イル)尿素化合物の合成を説明する。
【0178】
(スキーム4)
【0179】
【化9】

ここでRは本明細書中で定義されている。
【0180】
スキーム4において、化合物4.1のアミノ基が、従来の条件を使用してアシル化される。具体的には、化学量論的に等価またはわずかに過剰のカルボン酸無水物4.2(これは、説明の目的のみで使用される)が、化合物4.1と、適切な不活性希釈剤(例えば、テトラヒドロフラン、クロロホルム、塩化メチレンなど)の存在下で反応させられる。酸無水物の代わりに酸塩化物が使用される場合、この反応は、代表的に、 この反応中に発生する酸を捕捉するための過剰な適切な塩基の存在下で行われる。適切な塩基は、当該分野において周知であり、そして例のみとして、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジンなどが挙げられる。
【0181】
この反応は、代表的に、約0℃〜約40℃の温度で、この反応の実質的な完了を行うために充分な時間にわたって(この反応は代表的に、約1時間〜約24時間以内で起こる)実施される。反応が完了したら、アシルピペリジルアミド(化合物4.3)が、従来の条件(例えば、沈殿、エバポレーション、クロマトグラフィー、結晶化など)により単離され得るか、あるいは単離および/または精製なしで次の工程において使用され得る。 特定の場合において、化合物4.3は、反応系から沈殿する。
【0182】
次いで、化合物4.3がホフマン転移条件に供されて、イソシアネート(化合物4.4)を従来の条件下で形成する。特定の場合において、ホフマン転移条件は、(ジアセトキシヨード)ベンゼン、塩基/臭素、塩基/塩素、塩基/次亜臭素酸塩、または塩基/次亜塩素酸塩から好ましくは選択される酸化剤との反応を包含する。具体的には、およそ化学量論的当量のN−アシル−4−アミドピペリジン(化合物4.4)と、例えば、(ジアセトキシヨード)ベンゼンとが、適切な不活性希釈剤(例えば、アセトニトリル、クロロホルムなど)の存在下で合わせられる。この反応は、代表的に、conducted 約40℃〜約100℃の温度で、好ましくは、約70℃〜約85℃の温度で、この反応(これは代表的に、約0.1時間〜約12時間以内に起こる)の実質的な完了を起こすために充分な時間にわたって実施される。反応が完了したら、中間体であるイソシアネート(化合物4.4)が、従来の条件(例えば、沈殿、エバポレーション、クロマトグラフィー、結晶化など)により単離され得る。
【0183】
あるいは、好ましくは、この反応は、アダマンチルアミン(化合物4.5)の存在下で実施され、その結果、イソシアネート(化合物4.4)の形成の際に、この化合物のイソシアネート官能基が化合物4.5のアミノ官能基とインサイチュで反応して、化合物4.6を提供し得る。この実施形態において、中間体であるイソシアネートの計算された量は、好ましくは、アダマンチルアミンと比較して過剰に使用され、そして代表的に、使用されるアダマンチルアミンの当量数に基づいて約1.1当量〜約1.2当量の量で使用される。これらの反応条件は、上に記載された条件と同じであり、そして得られる生成物は、従来の条件(例えば、沈殿、エバポレーション、クロマトグラフィー、結晶化など)により単離され得る。
【0184】
化合物4.4は、安定な中間体である。特定の場合において、化合物4.3は、実質的に不純物なしで形成される。従って、スキーム4は、順番にはめ込まれる(telescoping)反応プロセスとして実行され得る。
【0185】
以下のスキーム5は、尿素化合物の代替的な合成を図示し、このスキームにおいてまた、4−アミドピペリジンが例示の目的で使用される:
(スキーム5)
【0186】
【化10】

ここでRおよびPGは、本明細書中で定義されるとおりであり、そしてXは、OH、ハロおよび-OC(O)Rからなる群より選択される。
【0187】
具体的には、スキーム5において、アダマンチル尿素のピペリジニル環へのカップリングは、ピペリジニル窒素原子のアシル化の前に起こる。スキーム5において、化合物5.1のアミン官能基は、当該分野において周知である従来のアミノ保護基(PG)を使用して保護される。特定の場合において、このアミノ保護基は、塩化ベンジルおよび臭化ベンジルから誘導され得る、ベンジル保護基である。化合物5.3は、ホフマン転移条件に供されて、上に詳細に記載された方法で、イソシアネート化合物5.4を形成する。化合物5.4は、安定な中間体である。化合物5.4とアダマンチルアミンとの反応は、スキーム4に従って実施され、そして好ましくは、単一反応工程で実施され、この工程において、中間体化合物5.4がアダマンチルアミン(化合物5.5)とインサイチュで反応して、化合物5.6を形成する。化合物5.6は、保護基を除去する条件に供されて、化合物5.7を与える。特定の場合において、この保護基はベンジルであり、そしてこの除去条件は、メタノールおよびギ酸を用いるパラジウム−炭素である。化合物5.7が化合物5.8でアシル化されて、上記スキーム4に従って、化合物5.9を形成する。
【0188】
以下のスキーム6は、N−(1−アルキルスルホニルピペリジン−4−イル)−N’−(アダマンタ−1−イル)尿素の合成を図示する:
(スキーム6)
【0189】
【化11】

ここでRは、本明細書中に定義されている。
【0190】
具体的には、スキーム6において、アミノ化合物6.1がハロゲン化スルホニル(化合物6.2)(説明の目的のみで使用される)と反応して、スルホンアミド化合物6.3を提供する。この反応は、代表的に、化合物6.1を少なくとも1当量、好ましくは約1.1当量〜約2当量のハロゲン化スルホニル(例示のみの目的で、塩化スルホニルとして図示される)と、不活性希釈剤(例えば、ジクロロメタン、クロロホルムなど)中で反応させることによって、実施される。一般に、この反応は好ましくは、約−10℃〜約20℃の範囲の温度で、約1時間〜約24時間実施される。好ましくは、この反応は、適切な塩基の存在下で実施されて、この反応中に発生する酸を捕捉させる。適切な塩基としては、例えば、第三級アミン(例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリンなど)が挙げられる。あるいは、この反応は、ショッテン−バウマン型条件下で、水性アルカリ(例えば、水酸化ナトリウムなど)を塩基として使用して、実施され得る。この反応の完了時に、得られるスルホンアミド(化合物6.3)が、従来の方法(中和、抽出、沈殿、クロマトグラフィー、濾過などが挙げられる)により回収されるか、あるいは精製および/または単離なしで次の工程において使用される。
【0191】
化合物6.3は、上記のようなホフマン転移条件に供されて、イソシアネート化合物6.4を形成する。化合物6.4とアダマンチルアミン(化合物6.5)との反応は、スキーム4に従って実施され、そして好ましくは、単一の反応工程で実施され、この反応工程において、イソシアネート(化合物6.4)がアダマンチルアミン(化合物6.5)とインサイチュで反応して、化合物6.6を形成する。
【0192】
上記反応において使用される塩化スルホニルもまた、公知の化合物、または従来の合成手順により公知の化合物から調製され得る化合物のいずれかである。このような化合物は、代表的に、対応するスルホン酸から、三塩化リンおよび五塩化リンを使用して調製される。この反応は、一般に、このスルホン酸を約2モル当量〜5モル当量の三塩化リンおよび五塩化リンと、ニートでかまたは不活性溶媒(例えば、ジクロロメタン)中で、約0℃〜約80℃の範囲の温度で約1時間〜約48時間接触させ、塩化スルホニルを得ることにより実施される。あるいは、この塩化スルホニルは、対応するチオール化合物から(すなわち、式R−SHの化合物からであり、Rは本明細書中に定義されるとおりである)、このチオールを塩素(Cl)および水で、従来の反応条件下で処理することにより、調製され得る。
【0193】
化合物6.4は、安定な中間体である。特定の場合において、化合物6.3は、実質的に不純物なしで形成される。従って、スキーム6は、順番にはめ込まれる反応プロセスとして実行され得る。
【0194】
以下のスキーム7は、尿素化合物の代替的な合成を図示する。
【0195】
(スキーム7)
【0196】
【化12】

ここでR、XおよびPGは、本明細書中で定義されている。
【0197】
具体的には、スキーム7において、アダマンチル尿素(化合物7.5)のピペリジニル環へのカップリングは、ピペリジニル窒素原子のスルホニル化の前に起こる。スキーム7において、化合物7.1のアミン官能基は、当該分野において周知である従来のアミノ保護基(PG)で保護されている。特定の場合において、このアミノ保護基は、塩化ベンジルまたは臭化ベンジルから誘導され得る、ベンジル保護基である。化合物7.3はホフマン転移条件に供されて、イソシアネート化合物7.4を上に詳細に記載された様式で形成する。化合物7.4は、安定な中間体である。化合物7.4とアダマンチルアミン(化合物7.5)との反応は、スキーム4に従って実施され、そして好ましくは、単一反応工程で実施され、この工程において、中間体化合物7.4は、アダマンチルアミン(化合物7.5)とインサイチュで反応して、化合物7.6を形成する。化合物7.6は、保護基を除去する条件に供されて、化合物7.7を与える。特定の場合において、この保護基はベンジルであり、そしてこの除去条件は、メタノールおよびギ酸を用いるパラジウム−炭素である。次いで、化合物7.7は、化合物7.8でスルホニル化されて、上記スキーム6に従って化合物7.9を形成する。
【0198】
式(I)、式(II)および式(IIa)の化合物を調製するために適切なプロセスのさらなる詳述は、Glessの米国特許出願番号12/021,090(2008年1月28日出願。この出願は、米国特許法第119条第(e)項のもとで、米国仮特許出願番号60/887,114(2007年1月29日出願)および同60/972,177(2007年9月13日出願)の利益を主張する。これらの出願の全ては、その全体が本明細書中に参考として援用される)に開示されている。
【0199】
以下の実施例は、本発明の特定の局面を説明するため、および本発明を実施するのに当業者を補助するために提供される。これらの実施例は、本発明の範囲を限定すると考えられることを意図しない。
【実施例】
【0200】
以下の実施例ならびに本出願を通して、以下の略語は以下の意味を有する。定義されない場合、それらの用語はそれらの一般に認められた意味を有する。
【0201】
aq. =水性
bd =広い二重線
bm =広い多重線
brs =広い一重線
bt =広い三重線
Boc =tert−ブトキシカルボニル
d =二重線
DCM =ジクロロメタン
DMAP =ジメチルアミノピリジン
DMF =ジメチルホルムアミド
DMSO =ジメチルスルホキシド
eq. =当量
EtOAc=酢酸エチル
g =グラム
HPLC =高速液体クロマトグラフィー
LCMS =液体クロマトグラフィー質量分析
m =多重線
M =モル濃度
mg =ミリグラム
MHz =メガヘルツ
mL =ミリリットル
dL =デシリットル
mM =ミリモル濃度
mmol =ミリモル
m.p.=融点
MS =質量分析
N =規定
NMR =核磁気共鳴
s =一重線
t =三重線
TLC =薄層クロマトグラフィー
μL =マイクロリットル。
【0202】
以下の実施例における全ての場合において、「化合物X」(ここでXは1〜5の数字である)との指定は、上記表2において識別される化合物をいう。
【0203】
(実施例1)
(1−[1−(アセチル)ピペリジン−4−イル]−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)尿素(化合物3)の合成)
(4−アミノピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルの調製)
4−アミノピペリジン(5.0g,50mmol,1当量)を、Dean−Starkトラップおよび冷却器を備える250mLの3口フラスコ中の、ベンズアルデヒド(5.1mL,50mmol,1当量)のトルエン(130mL)中の溶液に添加した。窒素ラインをこの冷却器の頂部に接続し、そしてこの反応物を3時間還流し、この時間の間、水がDean−Starkトラップ中に凝縮するのが見られた。この反応物を室温まで冷却し、そしてBoc無水物(5.8mL,50mmol,1当量)を5分間かけて添加した。この反応物を、Nブランケット下で一晩攪拌した。次いで、溶媒を減圧下で除去し、そしてNaHSO(水中1M,50mL)をその残渣に添加した。得られた混合物を2時間激しく攪拌し、その後、ジエチルエーテル(250mL)と水(250mL)との間で分配した。その水層を分離し、ジエチルエーテル(3×150mL)で洗浄し、そしてpHが約11になるまでNaOH溶液で塩基性化した。得られた溶液をDCM(4×200mL)で抽出した。合わせた有機層をNaSOで乾燥させ、濾過し、そしてエバポレートして、8.0gの4−アミノピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルを黄色油状物として得た。
【0204】
(4−(3−(4−(トリフルオロメチル)フェニル)ウレイド)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルの調製)
イソシアン酸4−トリフルオロメチルフェニル(1.0当量)を、4−アミノピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル(1当量)のエタノール(10容量)中の溶液に添加した。この反応混合物を50℃で一晩攪拌した。溶媒を減圧下で除去し、そして粗製生成物をジエチルエーテル中で結晶化させて、4−(3−(4−(トリフルオロメチル)フェニル)ウレイド)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルを白色固体として得た。
【0205】
(1−(ピペリジン−4−イル)−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)尿素の調製)
4−(3−(4−(トリフルオロメチル)フェニル)ウレイド)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルを、MeOH/HCl中で一晩攪拌した。その溶媒を除去し、そしてその残渣を、白色固体沈殿物が見られるようになるまでジエチルエーテル中で攪拌した。この沈殿物を濾過により収集して、1−(ピペリジン−4−イル)−3−(4−(トリフルオロメチル)フェニル)尿素を塩酸塩として得た。
【0206】
(1−(1−アセチル−ピペリジン−4−イル)−3−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−尿素(化合物3)の調製)
氷水浴中で冷却した1−(ピペリジン−4−イル)−3−(4−(トリフルオロメチル)フェニル)尿素(10.3g,35.8mmol)のDCM(150mL)中の溶液に、EtN(14.9mL,107mmol)および無水酢酸(5.0mL,53.8mmol)を順番に添加した。室温で18時間攪拌した後に、得られた沈殿物を濾過し、DCM(2×50mL)で洗浄し、高真空下で4時間乾燥させて、1−(1−アセチル−ピペリジン−4−イル)−3−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−尿素を白色固体として得た(8.4g,71%)。HPLC純度99.0%;m.p.:240−248℃;MS:330[M+H]
H NMR(300MHz,DMSO−d)δ:8.79(s,1H,NH),7.62−7.48(m,4H),6.18(d,1H,J=7.5Hz,NH),4.11(d,J=15Hz,1H),3.89−3.72(m,2H),3.08(t,1H),2.91(m,1H),1.99(s,3H),1.85−1.77(m,2H),1.45−1.07(m,2H)。
【0207】
(実施例2)
(1−[1−(メチルスルホニル)ピペリジン−4−イル]−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)尿素(化合物4)の調製)
氷水浴で冷却した、1−(ピペリジン−4−イル)−3−(4−(トリフルオロメチル)フェニル)尿素(10.8g,37.6mmol)(上記のように調製した)のDCM(150mL)中の溶液に、EtN(15.7mL,113mmol)およびメタンスルホニルクロリド(4.37mL,56.4mmol)を順番に添加した。この反応物を室温で18時間攪拌した。水(200mL)を添加し、そしてこの混合物をさらに18時間攪拌した。得られた沈殿物を濾過により収集し、水(2×50mL)で洗浄し、そして18時間乾燥させて、表題生成物(3.6g)を得た。この濾過からの上清を相分離した。その有機層をNaSOで乾燥させ、濾過し、そして濃縮して、さらに4.0gの生成物を得た。合わせた粗製生成物(7.6g)をEtOAcから再結晶して、純粋な生成物を白色固体として得た(3.15g,23%)。HPLC純度93.8%;MS:366[M+H]
H NMR(300MHz,CDCl+DMSO−d):δ8.03(s,1H,NH),7.12−7.00(m,4H),5.86(s,1H),3.37−3.20(m,3H),2.95−2.82(m,1H),2.58−2.41(m,4H),1.72−1.58(m,2H),1.24−1.08(m,2H)。
【0208】
(実施例3)
(1−[3−(モルホリノ−4−カルボニル)フェニル]−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)尿素の調製(化合物1))
イソシアン酸4−トリフルオロメチルフェニル(350mg,1.87mmol)および3−アミノ安息香酸(450mg,3.28mmol)の、DMF(10mL)中の溶液を、70℃で一晩温めた。この反応をTLCにより監視した。この反応混合物を室温まで冷却し、そして水(5mL)および1N水性HCl(5mL)を、氷浴で冷却しながら添加し、そして1時間攪拌した。得られた固体を濾過し、水、ヘキサンで洗浄し、そして真空オーブンで乾燥させた。粗製生成物をアセトン/ヘキサンから再結晶して、310mg(51%)の生成物を白色固体として得た。m.p.271−274。
【0209】
上記生成物(254mg,0.782mmol)、モルホリン(150mg,1.72mmol)、およびDMAP(102mg,0.831mmol)の、DCM(15mL)中の溶液に、N−[(ジメチルアミノ)プロピル]−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(190mg,0.991mmol)を室温で添加した。この反応混合物を一晩攪拌した。この反応混合物を濃縮し、そしてその残渣を酢酸エチルに溶解し、そして1N水性NaOH、1N水性HCl、および水で洗浄した。酢酸エチル層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、そして濃縮して、粗製生成物を得、これをEtOAc/MeOHを使用するシリカゲルでのクロマトグラフィーで分離して、138mg(45%)の生成物を白色固体として得た。m.p.:167−171;質量394[M+1]。
HNMR(300MHz;CDCl);δ:3.5−3.9(m,8H,4×CH2,);6.94−7.5(m,8H,Ar.CH);7.8および8.2(brs,2H,2×NH);LCMS純度:98%。
【0210】
(実施例4)
(1−[1−(アセチル)ピペリジン−4−イル]−3−(アダマンタ−1−イル)尿素(化合物2)の合成)
(N−アセチルピペリド−4−イルアミドの調製)
反応器に、1.00モル当量の4−ピペリジンカルボキサミド、15.9モル当量のTHF、および1.23モル当量のN,N−(ジイソプロピル)エチルアミンを、窒素雰囲気下で入れた。得られた混合物を内部温度20℃まで冷却し、そして1.10モル当量の無水酢酸を、30℃未満の内部温度を維持するような速度で添加した。添加が完了した後に、20℃の内部温度を維持しながらこの反応混合物を攪拌した。未反応の4−ピペリジンカルボキサミドの量がN−アセチルピペリド−4−イルアミド生成物に対して1%未満になるまで(代表的に約4時間〜10時間)、この反応の内容物を監視した。沈殿した生成物を濾過により収集し、そしてTHFで洗浄して、過剰な(ジイソプロピル)エチルアミン塩酸塩を除去した。50℃以下の内部温度を維持しながら、真空オーブン中で窒素を供給しながら、一定重量になるまでこの固体生成物を乾燥させて、生成物を白色固体として、94%の収率で得た。
H NMR(CDOD)δ:4.48−4.58(bd,1H),3.92−4.01(bd,1H),3.08−3.22(m,1H),2.62−2.74(m,1H),2.44−2.53(m,1H),2.12(s,3H),1.88−1.93(m,2H),1.45−1.72(m,2H);MS:171[M+H];m.p.172−174℃。
【0211】
(1−(1−アセチルピペリジン−4−イル)−3−(アダマンタ−1−イル)尿素の調製)
反応器に、1.00モル当量のN−アセチルピペリド−4−イルアミド、0.87モル当量の1−アダマンチルアミン、および49.7モル当量のアセトニトリルを入れ、そして得られた混合物を、窒素雰囲気下で、内部温度75℃まで加熱した。(ジアセトキシヨード)ベンゼン(1.00モル当量)を、この反応混合物の内部温度が75℃〜80℃に維持されるような様式で滴下した。(ジアセトキシヨード)ベンゼンを添加した後に、この反応混合物を内部温度80℃まで加熱した。未反応の1−アダマンチルアミンの量が生成物であるN−(1−アセチルピペリジン−4−イル)−N’−(アダマンタ−1−イル)尿素と比較して5%未満になるまで(代表的に約1時間〜6時間)、この反応の内容物を監視した。完了後、この反応混合物を内部温度25℃まで冷却し、そして内部温度を40℃未満に維持しながら、約24モル当量の溶媒を減圧下で蒸留した。この反応混合物を、攪拌しながら内部温度0℃〜5℃まで冷却し、そしてさらに2時間攪拌した。テクニカルプロダクトを濾過により収集し、そしてアセトニトリルで洗浄した。50℃以下の内部温度を維持しながら、真空オーブン中で窒素を供給しながら、一定重量になるまで、この粗製生成物を乾燥させた。乾燥させた粗製生成物を、20±5℃の内部温度を維持しながら4時間、水と一緒に攪拌し、次いで、濾過により収集した。そのフィルターケーキをヘプタンで窒素雰囲気下で洗浄し、次いで、70℃以下の内部温度を維持しながら、真空オーブン中で窒素を供給しながら、一定重量になるまで乾燥させて、生成物をを白色固体として、1−アダマンチルアミンに基づいて72%の収率で得た。
H NMR(DMSO−d)δ:5.65−5.70(bd,1H),5.41(s,1H),4.02−4.10(m,1H),3.61−3.70,(m,1H),3.46−3.58(m,1H),3.04−3.23(m,1H),2.70−2.78(m,1H),1.98(s,3H),1.84(s,6H),1.64−1.82(m,2H),1.59(s,6H),1.13−1.25(m,1H),1.00−1.12(m,1H);MS:320[M+H];m.p.202−204℃。
【0212】
(実施例5)
(1−[1−(メチルスルホニル)ピペリジン−4−イル]−3−(アダマンタ−1−イル)尿素 (化合物5)の合成)
(N−メタンスルホニルピペリド−4−イルアミドの調製)
反応器に、1.0モル当量の4−ピペリジンカルボキサミド、16.4モル当量のTHF、および1.2モル当量のN, N−(ジイソプロピル)エチルアミンを、窒素雰囲気下で入れた。得られた混合物を内部温度0℃〜5℃まで冷却し、そして1.2モル当量のメタンスルホニルクロリドを、10℃未満の内部温度を維持するような速度で添加した。添加が完了した後に、この反応混合物を攪拌して、その温度を内部温度20℃まで上昇させた。未反応の4−ピペリジンカルボキサミドの量がN−メタンスルホニルピペリド−4−イルアミド生成物に対して1%未満になるまで(代表的に約2時間〜12時間)、この反応の内容物を監視した。沈殿した生成物を濾過により収集し、次いでジクロロメタンで洗浄し、過剰な(ジイソプロピル)エチルアミン塩酸塩を除去した。50℃以下の内部温度を維持しながら、真空オーブン中で窒素を供給しながら、一定重量になるまで、この固体生成物を乾燥させて、生成物を淡黄色固体として87%の収率で得た。
H NMR(DMSO−d)δ:7.30(s,1H),6.91(s,1H),3.46−3.59(m,2H),2.83(s,3H),2.60−2.76(m,2H),2.08−2.24(m,1H),1.70−1.86(m,2H),1.43−1.62(m,2H);MS:207[M+H];m.p.126−128℃。
【0213】
(1−(1−メタンスルホニルピペリジン−4−イル)−3−(アダマンタ−1−イル)尿素の調製)
反応器に、1.00モル当量のN−メタンスルホニルピペリド−4−イルアミド、1.06モル当量の1−アダマンチルアミン、および39.3モル当量のアセトニトリルを入れ、そして得られた混合物を、窒素雰囲気下で内部温度40℃まで加熱した。(ジアセトキシヨード)ベンゼン(1.20モル当量)を、この反応混合物が内部温度75℃未満に維持されるような様式で滴下した。(ジアセトキシヨード)ベンゼンを添加した後に、この反応混合物を内部温度65℃〜70℃で加熱し、そして未反応の1−アダマンチルアミンの量が生成物であるN−(1−メタンスルホニルピペリジン−4−イル)−N’−(アダマンタ−1−イル)尿素に対して5%未満になるまで(代表的に約6時間未満)、この反応の内容物を監視した。得られた混合物を内部温度20℃まで冷却し、そして濾過して、少量の不溶性物質を除去した。その濾液を48時間静置し、この時点で、沈殿した生成物を濾過により収集した。50℃以下の内部温度を維持しながら、真空オーブン中で窒素を供給しながら、この固体生成物を一定重量になるまで乾燥させて、生成物を、N−メタンスルホニルピペリド−4−イルアミドに基づいて58%の収率で得た。
H NMR(CDCl)δ:3.95−4.08(m,2H),3.74−3,82(m,2H),3.63−3.82(m,1H),3.78(s,3H),3.70−3.80(m,2H),2.02−2.12(m,5H),1.90(s,6H),1.67(s,6 H),1.40−1.50(m,2H);MS:356[M+H];m.p.228−229℃。
【0214】
(阻害の百分率)
化合物1〜5のそれぞれについての阻害の百分率を、以下の手順に従って決定した:
この反応のための基質は、以下のものであった:
【0215】
【化13】

炭酸シアノ(2−メトキシナフタレン−6−イル)メチル(3−フェニルオキシラン−2−イル)メチル(CMNPC;Jones P.D.ら;Analytical Biochemistry 2005年;343:66〜75頁)。
【0216】
標準的な96ウェルプレートは、代表的に文字により識別される横列、および数字により識別される縦列を有する。従って、ウェルA2とは、そのプレートの第一横列第二縦列のウェルをいう。
【0217】
黒色の96ウェルプレートにおいて、全てのウェルを150μLの緩衝液Aで満たした(緩衝液A:0.1mg/mLのBSAを含むBis/Tris HCl 25mM、pH7.0)。ウェルA2およびA3にDMSO(2μL)を添加し、次いで、A1およびA4からA12に2μLの阻害剤溶液を添加した。横列Aに150μLの緩衝液Aを添加し、次いで、数回混合し、150μLの溶液を横列Bに移した。この混合および移動を横列Hまで繰り返した。縦列1および2に20μLの緩衝液Aを添加し、次いで、縦列3から12に20μLの酵素溶液を添加した。プレートをプレートリーダー中、30℃で5分間インキュベートした。インキュベーションの間に、3.68mLの緩衝液Aを266μLの0.5mM基質溶液と混合して基質の作業溶液を調製した。時間=0で、30μLの基質作業溶液を添加し、読み取りを開始した([S]final:5μM)。30秒毎に10分間ex:330nm(帯域幅20nm)およびem:465nm(帯域幅20nm)で、経口プレートリーダー(Spectromax M5,Molecular Devices)を使用して読み取った。
【0218】
表3は、50nMで試験された場合の、化合物1〜5(表2に示されるとおり)の阻害の百分率を示す。
【0219】
【表3】

(実施例6)
(代謝症候群モデル1)
食餌誘発性の肥満マウスモデルを、代謝症候群およびそれに関連する有害な状態の処置のための、sEH阻害剤1−[1−(メチルスルホニル)ピペリジン−4−イル]−3−(アダマンタ−1−イル)尿素(化合物5)の有効性を評価するために用いた。
【0220】
この研究は、7〜8週齢の雄性C57Bl/6マウスを用いて行った。マウスは、研究開始前に最低5日間順応させ、そして、12:12明/暗周期のマイクロアイソレーター内で1ケージあたり5匹で収容した(全ての作業は、BioBubble Hood TMにおいて行った)。水および食物は自由に与えた。
【0221】
マウスに、合計11週間にわたり高脂肪、高フルクトースの食餌を与えたところ、最初の5週間で動物は肥満かつインシュリン抵抗性になり、そして、血漿中コレステロールが上昇し、中程度の高血圧となった。高脂肪、高フルクトースの食餌を与えて最初の5週間の後、マウスを各群10匹のマウスからなる3群に分けた。マウスには、高脂肪、高フルクトースの食餌を与え続けたが、合計11週間の研究の、残りの6週間の研究期間には処置も与え始めた。処置期間の間、第1群には、6週間にわたって1日2回、ビヒクルのみを経口投与した(対照群);第2群には、6週間にわたって1日2回、20mg/kgの化合物5を経口投与した;第3群には、6週間にわたって1日2回、60mg/kgの化合物5を経口投与した。研究の処置期間の開始後、3週間および5.5週間の間隔で、グルコース耐性試験を行った。処置期間の開始時および5週間の投薬後に、血漿中コレステロール測定のためにサンプルを回収した。研究の処置期間の開始から3週間後に血圧を測定した。
【0222】
(結果)
(肥満症)
いずれかの用量の化合物5で処置したマウスは、体重が増加し続けたビヒクル対照群と比較して、体重の安定化を示した(図1)。この体重の安定化は、化合物5の投薬開始と共に始まる。
【0223】
(グルコース耐性)
図2A〜Cおよび3A〜Bは、0分、15分、30分、60分、90分および120分におけるマウス被験体から採取した血清サンプル中のグルコース測定量(mg/dL)を示す。図2Aは、投薬前、化合物の投与から3週間後および化合物の投与から5.5週間後、すなわち、高脂肪、高フルクトースの食餌の開始から8週間後もしくは10.5週間後に血清サンプルを採取した、20mg/kgの化合物5を投与したマウスから得られたデータを示す。図2Bは、投薬前、化合物の投与から3週間後および5.5週間後、すなわち、高脂肪、高フルクトースの食餌の開始から8週間後もしくは10.5週間後に血清サンプルを採取した、60mg/kgの化合物5を投与したマウスから得られたデータを示す。図2Cは、投薬前、ビヒクルの投与から3週間後および5.5週間後、すなわち、高脂肪、高フルクトースの食餌の開始から8週間後もしくは10.5週間後に血清サンプルを採取した、ビヒクルのみを投与したマウス(対照群)から得られたデータを示す。図2Dでは、0分〜120分のデータについての曲線下面積(AUC)を全GTTデータについて計算した。AUCは、グルコースの投薬から0分後〜120分後の面積の線形台形和(linear trapaziodal sum)を用いて計算した。GTT結果を示すこの方法は、GTTが行われた異なる時点における群全ての定量的な比較を可能にする。図3Aおよび3Bは、高脂肪、高フルクトースの食餌の開始から8週間後(図3A)および高脂肪、高フルクトースの食餌の開始から10.5週間後(図3B)(すなわち、化合物の投与から3週間後および化合物の投与から5.5週間後)の、1日2回、20mg/kgの化合物5、60mg/kgの化合物5もしくはビヒクルのみのいずれかを経口投与されたマウスから得られた血漿中グルコースレベルデータを示す。
【0224】
これらの図に示されるように、化合物5で処置したマウスは、GTT(腹腔内グルコース耐性試験)試験によって決定したとき、対照群と比較して血清グルコースの低下を示した。この結果は、化合物5で処置したマウスが、グルコースのハンドリング(handling)を改善し、グルコース不耐性の減少をもたらすことを示す。20mg/kgの化合物5および60mg/kgの化合物5の両方を1日2回受けた動物は、ビヒクル処置した動物と比較して、そして、処置の開始時の値と比較して、グルコースの腹腔内注射後の血漿中グルコースについての曲線下面積が統計的に低かった(p<0.01)。化合物5を受けた両マウス群の血漿中グルコースの低下は、早くも化合物の投与開始から3週間後に(図2A〜2D)、そして、高脂肪、高フルクトースの食餌の開始から8週間後かつ化合物の投与開始から3週間後(図3A)、および、高脂肪、高フルクトースの食餌の開始から10.5週間後かつ化合物の投与開始から5.5週間後(このアッセイにおいて回収した最後の時点)(図3B)に検出可能である。血漿中グルコースのこの低下は、化合物5による処置による、グルコースのハンドリングの治療上の改善を反映する。
【0225】
(血圧)
ビヒクル群における収縮期血圧および拡張期血圧(mmHgで測定)は、高脂肪、高フルクトースの食餌を与え始めて8週間後に、C57Bl/6マウスにおける通常の血圧と比較して上昇する。化合物5で処置したマウスでは、収縮期血圧および拡張期血圧は共に、対照群と比較して低下した(図4Aおよび4B)。1日2回60mg/kgを与えた動物は、ビヒクル処置群に比べて、統計的に有意に低い血圧を有した(p<0.05)。化合物5で処置したマウスの平均血圧は、対照群と比較して同様に低下した(図4C)。3群全てのマウスの心拍数は、同じ範囲内であった(図4D)。したがって、化合物5は、心拍数は有意に変更させなかった。
【0226】
(コレステロールレベル)
血漿中コレステロールレベルは、対照群に比べて、化合物5で処置したマウスにおいて低下していた(図5)。1日2回60mg/kgを与えた動物は、ビヒクル処置した動物に比べて、統計的に低いコレステロールレベルを有した(p<0.01)。
【0227】
(結論)
まとめると、上記の結果は、本発明のsEH阻害剤、具体的には化合物1−[1−(メチルスルホニル)ピペリジン−4−イル]−3−(アダマンタ−1−イル)尿素が、代謝症候群の処置、ならびに、肥満、グルコース不耐性、高血圧および上昇した血清中コレステロールのような代謝症候群に関連する有害な状態を減らすことにおいて有用であることを示す。
【0228】
本研究のさらなる詳細を以下に提供する。
【0229】
(実験用の食餌)
食餌は、固形食物および液体の両方として規定する
カロリー計算で45%の脂肪を含むHF食餌(Research Diets,D12451)
高フルクトース(脱ガスされたもの(degassed)7up)
実験群:n=10匹/群
第1群)高脂肪の食餌
第2群)高脂肪の食餌+化合物5−20mg/kg p.o.(経口)b.i.d.(1日2回)
第3群)高脂肪の食餌+化合物5−60mg/kg p.o.(経口)b.i.d.(1日2回)。
【0230】
(試験手順)
研究期間全体を通して、体重、食物およびフルクトースの消費を週2回測定した。血圧および心拍数は週1回測定した。
【0231】
(アッセイのプロトコール)
0日目:
マウスを、平均体重ベースで3群の各々に無作為化した(n=10匹/群)。食餌を開始。
【0232】
28日目:
GTT−グルコース負荷(2g/kg体重)の後4時間にわたり動物を絶食させた。尻尾の先(3mm)を切除し、そして、T=0分、15分、30分、60分、90分および120分の時点で、グルコースクリアランスの測定(Glucometer)のために血液サンプルを採取した。この試験は、動物がグルコース不耐性を有するかどうかを決定する。
【0233】
34日目:
脂質および化学物質のパネル解析(脂質−総コレステロール、HDL、LDLおよびトリグリセリド、FFA)を用いて血漿を解析した。
【0234】
35日目:
5週間にわたるb.i.d.(1日2回)の20mg/kgおよび60mg/kgの化合物5のp.o.(経口)投薬を開始する。
【0235】
56日目:
非侵襲性CODA 6閉塞カフシステムを用いて血圧を測定する。
【0236】
(実施例6)
(代謝症候群モデル2)
食餌誘発性の肥満マウスモデルを、代謝症候群およびそれに関連する有害な状態の処置のための、3種のsEH阻害剤;1−[1−(アセチル)ピペリジン−4−イル]−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)尿素(化合物3);1−[1−(メチルスルホニル)ピペリジン−4−イル]−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)尿素(化合物4)および1−[1−(メチルスルホニル)ピペリジン−4−イル]−3−(アダマンタ−1−イル)尿素(化合物5)の有効性を評価するために用いた。
【0237】
10匹の野生型マウスの7群をこの研究に用いた。5つの群には、高脂肪、高フルクトースの食餌(HF)を自由に与えた;2つの群には、標準的なげっ歯類の飼料および水(NC)を与えた。この研究の全12週間にわたり、動物をそれぞれの食餌で維持した。8週目に開始し、そして、存命中の残りの期間に継続して、マウスには、ビヒクル(CMC−Tween)、飲用水中10mg/kg/日のロサルタン、または、1日2回の経口栄養による、60mg/kgの化合物3、化合物4もしくは化合物5を投薬した。ロサルタン(Cozaar(登録商標))は、高血圧の処置(高血圧症および左心室肥大を有する患者における発作のリスクを低下させる)、ならびに2型糖尿病および高血圧症の病歴を持つ患者における血清中クレアチニンの上昇および蛋白尿を伴う糖尿病性ネフロパシーの処置についてFDAによって認可された化合物である。
【0238】
7週目(投薬の開始前)および12週目(投薬から4週間後)にグルコース耐性試験(GTT)を行った。体重は研究の全体を通して週2回記録したが、飼料の消費および液体の摂取は、週1回記録した。未処置(7週目、投薬の開始前)および処置(存命中の最後)の動物から血漿を回収し、そして、血漿中コレステロールの測定に供した。存命期間の最後には、四肢から放血させた後に(after terminal bleeds)動物を屠殺して処分し;解剖は行わなかった。
【0239】
(結果)
sEH阻害剤は十分に耐性があった。NCを与えた動物の間では、ビヒクルを投薬しようと、または化合物5を投薬しようと、体重は同様であった。食物消費も、液体摂取も、総カロリー摂取も、ビヒクルまたは試験化合物の投薬開始後に見かけ上変化しなかった。
【0240】
HF給餌動物の間では、化合物3、化合物4、化合物5もしくはロサルタンを投薬した個体は、研究の間の体重増加が、ビヒクルを与えた個体よりも少なかった(図6)。しかしながら、化合物3および化合物5によるこの減じられた体重増加は、統計的に有意であり、投薬開始の第2週の間には統計的有意差を達成していた。化合物3、化合物4もしくは化合物5を投薬したHF給餌マウスは、ビヒクルを与えた動物と比べて、グルコース耐性の統計的に有意な改善を示したが、グルコース耐性は、依然としてNC給餌マウスのものとは一致しなかった(図7)。同様に、HFマウスへの化合物5の投薬は、コレステロールの統計的に有意な低下はもたらしたが、そのレベルは、依然としてNC給餌マウスのものよりも高かった(図8)。
【0241】
(結論)
まとめると、上記の結果は、本発明のsEH阻害剤、具体的には化合物1−[1−(アセチル)ピペリジン−4−イル]−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)尿素(化合物3);1−[1−(メチルスルホニル)ピペリジン−4−イル]−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)尿素(化合物4)および1−[1−(メチルスルホニル)ピペリジン−4−イル]−3−(アダマンタ−1−イル)尿素(化合物5)が、代謝症候群の処置、ならびに、上昇した体重増加、乏しいグルコース耐性および増加した血漿中コレステロールのような代謝症候群に関連する全てもしくは一部の有害な状態の改善において有用であることを示す。さらに、血漿中コレステロールが本発明のsEH阻害剤によって改善されるが、これらの化合物はまた、低密度リポタンパク質(LDL)レベルおよび/または高密度リポタンパク質(HDL)レベルの改善にも有用であることが企図される。
【0242】
本発明は、上記実施形態と組み合わせて記載されたが、上記説明および実施例は、本発明の例示であることが意図され、本発明の範囲を限定することを意図されないことが理解されるべきである。本発明の範囲内である他の局面、利点および改変は、本発明が属する技術分野の当業者に明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
代謝症候群に罹患しやすい哺乳動物被験体において、代謝症候群の発症を阻害するための方法であって、該方法は、該被験体に、有効量のsEH阻害剤を投与する工程を包含し、該sEH阻害剤は、式(II):
【化14】

の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であり、式(II)において、
Qは、OおよびSからなる群より選択され;
は、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキルおよび置換ヘテロシクロアルキルからなる群より選択され;
Xは、CまたはNであり;ただし、XがCである場合、環Aはフェニルであり、そしてXがNである場合、環Aはピペリジニルであり;
Yは、COおよびSOからなる群より選択され;
は、アルキル、置換アルキル、またはへテロシクロアルキルからなる群より選択され;そして
mは、0、1、および2からなる群より選択される、
方法。
【請求項2】
前記sEH阻害剤が、式(IIa):
【化15】

の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であり、式(IIa)において、
Qは、OおよびSからなる群より選択され;
は、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキルおよび置換ヘテロシクロアルキルからなる群より選択され;
Xは、CまたはNであり;ただし、XがCである場合、環Aはフェニルであり、そしてXがNである場合、環Aはピペリジニルであり;
Yは、COおよびSOからなる群より選択され;そして
は、アルキル、置換アルキル、またはへテロシクロアルキルからなる群より選択される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化合物が、1−[1−(メチルスルホニル)ピペリジン−4−イル]−3−(アダマンタ−1−イル)尿素、1−[1−(アセチル)ピペリジン−4−イル]−3−(アダマンタ−1−イル)尿素、1−[1−(アセチル)ピペリジン−4−イル]−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)尿素、1−[1−(メチルスルホニル)ピペリジン−4−イル]−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)尿素および1−[3−(モルホリノ−4−カルボニル)フェニル]−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)尿素からなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記化合物が1−[1−(メチルスルホニル)ピペリジン−4−イル]−3−(アダマンタ−1−イル)尿素である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記化合物が1−[1−(アセチル)ピペリジン−4−イル]−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)尿素である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記化合物が1−[1−(メチルスルホニル)ピペリジン−4−イル]−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)尿素である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
被験体において代謝症候群に関連する1つ以上の状態を処置するための方法であって、該方法は、該被験体に、有効量のsEH阻害剤を投与する工程を包含し、該sEH阻害剤は、式(II):
【化16】

の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であり、式(II)において、
Qは、OおよびSからなる群より選択され;
は、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキルおよび置換ヘテロシクロアルキルからなる群より選択され;
Xは、CまたはNであり;ただし、XがCである場合、環Aはフェニルであり、そしてXがNである場合、環Aはピペリジニルであり;
Yは、COおよびSOからなる群より選択され;
は、アルキル、置換アルキル、またはへテロシクロアルキルからなる群より選択され;そして
mは、0、1、および2からなる群より選択され、
該状態は、初期糖尿病、肥満症、グルコース不耐性、高血圧、上昇した血清中コレステロール、および上昇したトリグリセリドからなる群より選択される、方法。
【請求項8】
前記sEH阻害剤が、式(IIa):
【化17】

の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であり、式(IIa)において、
Qは、OおよびSからなる群より選択され;
は、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキルおよび置換ヘテロシクロアルキルからなる群より選択され;
Xは、CまたはNであり;ただし、XがCである場合、環Aはフェニルであり、そしてXがNである場合、環Aはピペリジニルであり;
Yは、COおよびSOからなる群より選択され;そして
は、アルキル、置換アルキル、またはへテロシクロアルキルからなる群より選択される、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記化合物が、1−[1−(メチルスルホニル)ピペリジン−4−イル]−3−(アダマンタ−1−イル)尿素、1−[1−(アセチル)ピペリジン−4−イル]−3−(アダマンタ−1−イル)尿素、1−[1−(アセチル)ピペリジン−4−イル]−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)尿素、1−[1−(メチルスルホニル)ピペリジン−4−イル]−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)尿素および1−[3−(モルホリノ−4−カルボニル)フェニル]−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)尿素からなる群より選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記化合物が1−[1−(メチルスルホニル)ピペリジン−4−イル]−3−(アダマンタ−1−イル)尿素である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記化合物が1−[1−(アセチル)ピペリジン−4−イル]−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)尿素である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記化合物が1−[1−(メチルスルホニル)ピペリジン−4−イル]−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)尿素である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記状態のうちの2つ以上が、前記sEH阻害剤化合物を投与することにより処置される、請求項7〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
被験体において代謝状態を処置するための方法であって、該方法は、該被験体に、有効量のsEH阻害剤を投与する工程を包含し、該sEH阻害剤は、式(II):
【化18】

の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であり、式(II)において、
Qは、OおよびSからなる群より選択され;
は、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキルおよび置換ヘテロシクロアルキルからなる群より選択され;
Xは、CまたはNであり;ただし、XがCである場合、環Aはフェニルであり、そしてXがNである場合、環Aはピペリジニルであり;
Yは、COおよびSOからなる群より選択され;
は、アルキル、置換アルキル、またはへテロシクロアルキルからなる群より選択され;そして
mは、0、1、および2からなる群より選択され、
該代謝状態は、肥満症、グルコース不耐性、高血圧、上昇した血清中コレステロール、および上昇したトリグリセリド、ならびにこれらの組み合わせを含む状態からなる群より選択される、方法。
【請求項15】
前記sEH阻害剤が、式(IIa):
【化19】

の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であり、式(IIa)において、
Qは、OおよびSからなる群より選択され;
は、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキルおよび置換ヘテロシクロアルキルからなる群より選択され;
Xは、CまたはNであり;ただし、XがCである場合、環Aはフェニルであり、そしてXがNである場合、環Aはピペリジニルであり;
Yは、COおよびSOからなる群より選択され;そして
は、アルキル、置換アルキル、またはへテロシクロアルキルからなる群より選択される、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記化合物が、1−[1−(メチルスルホニル)ピペリジン−4−イル]−3−(アダマンタ−1−イル)尿素、1−[1−(アセチル)ピペリジン−4−イル]−3−(アダマンタ−1−イル)尿素、1−[1−(アセチル)ピペリジン−4−イル]−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)尿素、1−[1−(メチルスルホニル)ピペリジン−4−イル]−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)尿素および1−[3−(モルホリノ−4−カルボニル)フェニル]−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)尿素からなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記化合物が1−[1−(メチルスルホニル)ピペリジン−4−イル]−3−(アダマンタ−1−イル)尿素である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記化合物が1−[1−(アセチル)ピペリジン−4−イル]−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)尿素である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記化合物が1−[1−(メチルスルホニル)ピペリジン−4−イル]−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)尿素である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記代謝状態が肥満症を含む、請求項14〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記代謝状態がグルコース不耐性を含む、請求項14〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記代謝状態が高血圧を含む、請求項14〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記代謝状態が上昇した血清中コレステロールを含む、請求項14〜19のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−516787(P2010−516787A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547460(P2009−547460)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/052226
【国際公開番号】WO2008/094869
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(509029335)アレテ セラピューティクス, インコーポレイテッド (11)
【Fターム(参考)】