説明

仮固定材

【課題】基材へのダメージを低減させつつ、精度の高い加工が可能であり、加工後の支持基材からの基材の脱離を適切な加熱温度で行い得る仮固定材を提供すること。
【解決手段】本発明の仮固定材は、半導体ウエハ(基材)3を加工するために、この半導体ウエハ3を支持基材1に仮固定し、半導体ウエハ3の加工後に加熱することで半導体ウエハ3を支持基材1から脱離させるために用いられ、多価カルボン酸と水酸基を少なくとも2つ以上有する化合物との重縮合体と活性剤を含有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮固定材、特に、基材を加工する際にこの基材を支持基材に仮固定するのに用いられる仮固定材に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハに研磨やエッチング等の加工を行うためには、半導体ウエハを支持するための基材上に半導体ウエハを一時的に仮固定する必要がある。
基材上に半導体ウエハを一時的に仮固定する方法は、様々な方法が提案されている。例えば、現在では基材としてのPETフィルムに接着層を設けた固定用のフィルム上に半導体ウエハを固定する方法が多く用いられている。
この方法では、研削に用いられる一般的なバックグラインドマシンの研削精度(約1μm)と、半導体ウエハを固定するための一般的なバックグラインド(BG)テープの厚み精度(約5μm)とを合わせると、要求される厚み精度を超えてしまい、研削されたウエハの厚みにバラツキが生じると言う問題がある。
また、スルー・シリコン・ビア(Through Silicon Via)に用いる半導体ウエハを加工する場合、BGテープが付いた状態でビアホールや膜の形成を行うが、そのときの温度は低くとも150℃程度に達し、BGテープの粘着力を上げてしまう。また、膜形成のためのメッキの薬液によってBGテープの接着層が侵され、剥がれが生じたりする。
また、化合物半導体に代表される脆弱な半導体ウエハは、機械的研削によってダメージを受ける場合があるので、エッチングによって薄化を行う。このエッチングにおいては、ストレス除去を目的とする程度のエッチング量であれば特に問題はないが、数μmエッチングする場合には、エッチングの薬液によってBGテープが変質してしまうことがある。
一方で、表面が平滑な支持基材に固定材料を介して半導体ウエハを固定する方法が採用されるようになっている。
例えば、ストレス除去の目的でエッチングを行うには、高い温度まで加熱する必要があるが、PETフィルムではこのような高温に耐えることができないため、このような場合には支持基材を用いた方法が好ましく適用される。
支持基材への固定材料には、高温で軟化して半導体ウエハの脱離が容易になるような固定材料や、特定の薬液によって溶解するような固定材料が提案されている。
しかし、このような材料はハンドリングが悪く、脱離後に、半導体ウエハや装置の内部に残留した固定材料を薬液等で洗浄する必要がある。
また、支持基材から半導体ウエハを脱離させる際に、薄化した半導体ウエハが耐えられなくなり破損するおそれがあるが、半導体ウエハの薄型化が進むにつれてこの可能性が高まることが予想される。
本発明とは利用目的が異なるが、例えば、特許文献1および特許文献2には半導体装置の製造に係るポリマーが開示されている。
このようなポリマーを固定材料として用いた場合、高温に加熱することによりポリマーが分解し、その結果、薄化した半導体ウエハを支持基材から容易に脱離させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2006−504853号公報
【特許文献2】特表2006−503335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、基材へのダメージを低減させつつ、精度の高い加工が可能であり、加工後の支持基材からの基材の脱離を適切な加熱温度で行い得る仮固定材を提供することにある。
【0005】
このような目的は、下記[1]〜[8]に記載の本発明により達成される。
[1] 基材を加工するために該基材を支持基材に仮固定し、前記基材の加工後に加熱することで前記基材を前記支持基材から脱離させるために用いられる仮固定材であって、多価カルボン酸と水酸基を少なくとも2つ以上有する化合物との重縮合体と活性剤を必須成分とすることを特徴とする仮固定材。
[2]多価カルボン酸と水酸基を少なくとも2つ以上有する化合物との前記重縮合体の数平均分子量は、1.6×10〜2.5×10である[1]に記載の仮固定材。
[3] 多価カルボン酸と水酸基を少なくとも2つ以上有する化合物との前記重縮合体のガラス転移温度は、50〜90℃である[1]、または[2]に記載の仮固定材。
[4]多価カルボン酸と水酸基を少なくとも2つ以上有する化合物との前記重縮合体は、分岐枝を有するものである[1]ないし[3]のいずれかに記載の仮固定材。
[5] 前記仮固定材の前記加熱により、前記仮固定材が分解することなく、前記基材から前記基材が脱離される[1]ないし[4]のいずれかに記載の仮固定材。
[6] 熱分解測定における前記仮固定材の1%重量減少温度が、250℃以上である[1]ないし[5]のいずれかに記載の仮固定材。
[7] 基材を支持基材に仮固定材を用い加熱により固定した後の基材と仮固定材との剪断強度は、その固定した後に、活性エネルギー線照射した後の剪断強度に比べ、高いことを特徴とする[1]ないし[6]のいずれかに記載の仮固定材。
[8] 活性エネルギー線照射した後、基材を支持基材に仮固定材を用い加熱により固定した後の基材と仮固定材との剪断強度は、0.1〜50kPaである[1]ないし[7]のいずれかに記載の仮固定材。
【発明の効果】
【0006】
本発明の仮固定材は、基材へのダメージを低減させつつ、精度の高い加工が可能であり、加工後の支持基材からの脱離を適切な加熱温度で行い得るという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の仮固定材を用いて、基材である半導体ウエハ等を加工する加工工程を説明するための縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本願明細書において、支持基材とは、基板を支持する平坦性を有する硬質基板のことであり、支持基材としては、例えば、ガラス基板、シリコン基板、金属基板等を挙げることができる。
【0009】
また、基板とは、半導体回路や電気回路を有する半導体部品、電気・電子部品のことであり、基板としては、例えば、半導体ウエハ、半導体チップ、コンデンサ等を挙げることができる。
【0010】
本発明の半導体装置の製造方法は、半導体ウエハ(基板)をガラス基板(支持基材)やシリコン基板(支持基材)に固定し半導体ウエハを裏面加工する場合やTSV加工する場合、さらには、fan−out構造の半導体パッケージを作製する場合等に用いることができる。
以下、本発明の仮固定材について詳細に説明する。
【0011】
<仮固定材>
本発明の仮固定材は、多価カルボン酸と水酸基を少なくとも2つ以上有する化合物との重縮合体と活性剤を必須成分とすることを特徴する。
このように、本発明の仮固定材は、このものを90〜200℃程度の温度範囲に加熱することで、溶融状態となり、加工後の基材に亀裂等の損傷が生じることなく、容易に行うことが可能となる。
また、本発明の仮固定材は、仮固定材を構成する樹脂組成物中に、酸または塩基を発生する化合物を含むことにより、加熱すると剪断強度が低下する樹脂成分と、前記活性エネルギー線の照射により酸または塩基を発生する活性剤とを含有することで、活性エネルギー線の照射後は、剪断強度を下げることができ、仮固定材と基板とを容易に剥離することができる。
以下、この仮固定材に用いることができる樹脂組成物の各成分について、順次、説明する。
【0012】
(重縮合体)
本発明に用いる多価カルボン酸と水酸基を少なくとも2つ以上有する化合物との重縮合体(以下、単に「重縮合体」という場合がある。)は、特に限定されないが、数平均分子量は、1.6×10〜2.5×10であることが好ましい。
これにより、精度の高い加工が可能であり、支持基材からの脱離後の洗浄を適切に行うことに加え、適度の耐熱性を有するものとなる。
【0013】
前記重縮合体のガラス転移温度は、50〜90℃であることが好ましい。
これにより、支持基材へのダメージを低減させつつ、精度の高い加工が可能であり、加工後の支持基材からの脱離を適切に行うことに加え、適度な耐熱性を有するものとなる。
また、仮固定の際の密着性も高まる。
よりこのましくは、55〜85℃であり、さらに好ましくは60〜83である。
上記範囲内であれば、より高いレベルで精度の高い加工を行うことができ、密着性にも優れる。
【0014】
前記重縮合体は、分岐枝を有するものであることが好ましい。
これにより、基材へのダメージを低減させつつ、さらに精度の高い加工が可能であり、加工後の基材の支持基材から脱離をさらに適切に行うことに加え、さらに最適な耐熱性を有するものとなる。
【0015】
前記重縮合体の製造方法は、特に限定されないが、例えば、常圧または加圧で多価カルボン酸と水酸基を少なくとも2つ以上有する化合物とを直接エステル化して重合する直接重合法、エステル交換法や少量のキシレンを添加して常圧で脱水反応を行う方法など公知の方法で合成される。
また、重合触媒も本実施例で示したテトラブチルチタネートなどのチタン化合物を始め、亜鉛化合物、アンチモン化合物、錫化合物、ゲルマニウム化合物などの公知の触媒が使用される。
【0016】
前記多価カルボン酸は、特に限定されないが、分子内に2以上のカルボキシル基を有するものであればどのようなものでのよく、多価カルボン酸としては、カルボン酸基を2つ有するフマール酸、マロン酸、アジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ジフェニルエーテル−4,4′−ジカルボン酸、ピリジン−2,6−ジカルボン酸等、カルボン酸基を3つ有するブタン−1,2,4−トリカルボン酸、シクロヘキサン−1,2,3−トリカルボン酸、ベンゼン−1, 2,4−トリカルボン酸、ナフタレン−1,2,4−トリカルボン酸等、カルボン酸基を4つ有するブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、ベンゼン−1,2, 4,5−テトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸等、脂肪族カルボン酸、不飽和カルボン酸等が挙げられる。
【0017】
水酸基を少なくとも2つ以上有する化合物との重縮合体は、特に限定されないが、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールポリオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等を挙げることができる。
【0018】
(活性剤)
本発明の仮固定材は、活性剤を必須成分とする。本発明の仮固定材は、活性エネルギー線の照射によってエネルギーを加えることにより活性種を発生する活性剤を含み、この活性種の存在下で上述した樹脂成分の50%重量減少温度が低下することが好ましい。これにより、基材へのダメージをより確実に低減させることができる。
【0019】
前記活性剤は、特に限定されないが、例えば、光酸発生剤、光塩基発生剤等が挙げられる。
【0020】
光酸発生剤としては、特に限定されないが、例えば、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート−4−メチルフェニル[4−(1−メチルエチル)フェニル]ヨードニウム(DPI−TPFPB)、トリス(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムテトラキス−(ペンタフルオロフェニル)ボレート(TTBPS−TPFPB)、トリス(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート(TTBPS−HFP)、トリフェニルスルホニウムトリフレート(TPS−Tf)、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフレート(DTBPI−Tf)、トリアジン(TAZ−101)、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(TPS−103)、トリフェニルスルホニウムビス(パーフルオロメタンスルホニル)イミド(TPS−N1)、ジ−(p−t−ブチル)フェニルヨードニウム、ビス(パーフルオロメタンスルホニル)イミド(DTBPI−N1)、トリフェニルスルホニウム、トリス(パーフルオロメタンスルホニル)メチド(TPS−C1)、ジ−(p−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリス(パーフルオロメタンスルホニル)メチド(DTBPI−C1)等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組合せて用いることができる。これらの中でも、特に、樹脂成分の熱分解温度を効率的に下げることができるという観点から、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート−4−メチルフェニル[4−(1−メチルエチル)フェニル]ヨードニウム(DPI−TPFPB)が好ましい。
【0021】
また、光塩基発生剤としては、特に限定されないが、例えば、5−ベンジル−1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノナン、1−(2−ニトロベンゾイルカルバモイル)イミダゾール等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組合せて用いることができる。これらの中でも、特に、樹脂成分の熱分解温度を効率的に下げることができるという観点から、5−ベンジルー1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノナンおよびこの誘導体が好ましい。
【0022】
前記活性剤は、仮固定材の全量の0.01〜50重量%程度であるのが好ましく、0.1〜30重量%程度であるのがより好ましい。
かかる範囲内とすることにより、仮固定材と基材との剪断強度を安定的に目的とする範囲内に下げることが可能となる。
このような活性剤の添加により、活性エネルギー線を照射することで、酸または塩基のような活性種が発生し、この活性種の存在下で加熱すること、仮固定材の樹脂成分の主鎖にその剪断強度が低下する構造が形成されると推察される。
従って、酸または塩基のような活性種が発生する場合のほか、活性エネルギー線を照射により、ラジカル開裂する場合、イオン乖離する場合も同様の効果を奏する。
ラジカル開裂する場合に用いる活性剤とは、ポリエステル樹脂をラジカル開裂させるものであれば、公知の化合物を用いることができ、例えば、仮固定材に過酸化ベンゾイル等のラジカル重合開始剤を含んでいれば良い。
イオン乖離するような場合に用いる活性剤とは、ポリエステル樹脂をイオン乖離させるものであれば、公知の化合物を用いることができ、例えば、仮固定材に硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウムを性能を悪化させない程度に含んでいれば良い。
以下に示す実施例の仮固定材は、光照射により、光照射前に比べ、仮固定材の剪断強度が低くなる。
【0023】
(溶媒)
また、仮固定材は、溶媒を含有していても良い。
溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、メシチレン、デカリン、ミネラルスピリット類等の炭化水素類、アニソール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジグライム等のアルコール/エーテル類、炭酸エチレン、酢酸エチル、酢酸N−ブチル、乳酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン、γ−ブチロラクトン等のエステル/ラクトン類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン等のケトン類、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド/ラクタム類が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。仮固定材が溶媒を含有することにより、仮固定材の粘度を調整することが容易となり、支持基材に仮固定材で構成される仮固定材層(薄膜)の形成が容易となる。
【0024】
前記溶媒の含有量は、特に限定されるものではないが、仮固定材の全量の5〜98重量%であることが好ましく、10〜95重量%であることがより好ましい。
【0025】
(増感剤)
さらに、仮固定材は、この活性剤とともに、活性剤の反応性を発現あるいは増大させる機能を有する成分である増感剤を含んでいても良い。増感剤は活性剤を活性化することが可能な波長の範囲を広げることが可能で、最適な増感剤としては、使用される光源近くに最大吸光係数を持ち、吸収したエネルギーを効率的に光酸発生剤に渡すことができる化合物である。特に光源がg線(435nm)とi線(365nm)などの波長の場合、増感剤は光酸発生剤を活性化するのに有効である。
増感剤としては、特に限定されるものではないが、光酸開始剤を含む場合、例えば、2−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、4−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサンテン−9−オン、フェノチアジンまたはそれらの組み合わせ等が挙げられる。
このような増感剤は、樹脂の光熱反応に直接影響を与えない範囲で加えられる。増感剤の含有量は、前述した光酸発生剤等の活性剤の総量100重量部に対して、100重量部以下であるのが好ましく、20重量部以下であるのがより好ましい。
【0026】
(酸化防止剤)
また、仮固定材は、酸化防止剤を含んでいてもよい。
この酸化防止剤は、仮固定材中における酸の発生や、樹脂組成物の自然酸化を防止する機能を有している。
酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、Ciba Fine Chemicals社製、「Ciba IRGANOX(登録商標) 1076」および「Ciba IRGAFOS(登録商標) 168」が好適に用いられる。
【0027】
また、他の酸化防止剤としては、例えば、「Ciba Irganox 129」、「Ciba Irganox 1330」、「Ciba Irganox 1010」、「Ciba Cyanox(登録商標) 1790」、「Ciba Irganox 3114、Ciba Irganox 3125」等を用いることもできる。
【0028】
酸化防止剤の含有量は、上述した仮固定材(樹脂成分)100重量部に対して、0.1〜10重量部であるのが好ましく、0.5〜5重量部であるのがより好ましい。
【0029】
(添加剤)
また、仮固定材は、必要により酸捕捉剤、アクリル系、シリコーン系、フッ素系、ビニル系等のレベリング剤、シランカップリング剤、希釈剤等の添加剤等を含んでも良い。
【0030】
シランカップリング剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらのうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
仮固定材がシランカップリング剤を含むことにより、基材と支持基材との密着性の向上を図ることができる。
【0031】
また、希釈剤としては、特に限定されないが、例えば、シクロヘキセンオキサイドやα−ピネンオキサイド等のシクロエーテル化合物、[メチレンビス(4,1−フェニレンオキシメチレン)]ビスオキシランなどの芳香族シクロエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルなどのシクロアリファティックビニルエーテル化合物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
仮固定材が希釈剤を含むことにより、仮固定材の流動性を向上させることができ、後述する仮固定材層形成工程において、仮固定材の支持基材に対する濡れ性を向上させることが可能となる。
【0032】
また、基材を支持基材から脱離させるための加熱時において、雰囲気中への仮固定材の拡散、すなわち仮固定材による雰囲気の汚染を防止するという観点からは、前記加熱の際に、仮固定材は、雰囲気中に気化することなく、基材と支持基材との間に存在しているのが好ましい。
したがって、仮固定材に活性エネルギー線を照射した後における、仮固定材の1%重量減少温度は、250℃以上であるのが好ましく、280℃以上であるのがより好ましい。
さらに好ましくは、310℃以上であり、特に好ましくは330℃以上である。
これにより、前記加熱時における雰囲気中への仮固定材の拡散を、的確に抑制または防止することができる。
なお、本明細書中において、1%重量減少温度とは、加熱により、窒素雰囲気下で30℃から500℃まで、10℃/分の速度で上昇させるときの1%の樹脂成分の重量が失われる温度を意味し、この樹脂成分の分解が開始し終了するまでの加熱温度の幅、換言すれば、樹脂成分の分解が開始する開始温度と、樹脂成分の分解が終了(完結)する終了温度とを、熱重量分析法(以下、TG/DTAという場合がある。)を用いて測定し、その結果に基づいて求められる。
具体的には、まず、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解した樹脂成分をシリコン基板上にスピンコート法を用いて塗布した後、加熱板上において約150℃で10分間ベークすることで溶媒を蒸発させる。次に、シリコン基板上に形成された樹脂成分で構成される薄膜(試料)を、窒素雰囲気下で30℃から500℃まで10℃/分で上昇させるTG/DTAにより分析する。
そして、このTG/DTAにおいて測定された、仮固定材(樹脂組成物)の1%の重量が失われた際の温度を、1%重量減少温度(Td50)として求めることが可能である。
【0033】
また、基材に仮固定材で仮固定された基材を加工する際などに、仮固定材の剪断応力を小さくすると、仮固定材と支持基材との接着強度が低下して、これらの位置ズレが発生して、半導体装置の歩留まりが低下するおそれがありえる。
したがって、仮固定材の剪断強度は高いほど接着強度は、高くすることが好ましい。基材と仮固定材の剪断強度は、175℃において、10〜350kPaであることが好ましい。より好ましくは、15〜200kPaである。更に好ましくは、20〜100kPaである。
前記範囲内であれば、作業効率よく基材を固定できる。また、特に、剪断強度が、20〜100kPaである場合は、その後に、支持基材を容易に剥離することができる効果がある。
【0034】
<剪断強度の測定方法>
仮固定材と支持基材との間の剪断強度の具体的な測定方法としては次の通りである。支持基材である直径200mmのガラス基板(株式会社水戸理化ガラス社製、テンパックス)上に塗布し、120℃で5分、大気中ホットプレート上で乾燥させ、ガラス基板上に厚み40μmの当該仮固定材の層を形成する。この仮固定材の層上に、基材として一辺10.5mm厚さ725μmのシリコンチップを荷重5N、90℃、大気中、時間10秒で固定する。その後、温度175℃で、シリコンチップが600μm/秒でガラス基板に対して移動するようにシリコンチップを押すことで剪断強度が得られる。
【0035】
<半導体装置の製造方法>
次に、本発明の仮固定材を、半導体装置の製造に適用した場合を一例に説明する。
すなわち、半導体装置の製造方法における、半導体ウエハの加工に適用した実施形態を一例に説明する。
この半導体ウエハ(基材)の加工には、支持基材上に、本発明の仮固定材を用いて仮固定材層を形成する工程と、仮固定材層を介して支持基材上に半導体ウエハを貼り合わせる工程と、半導体ウエハの支持基材と反対側の面を加工する工程と、仮固定材層を加熱することで支持基材から半導体ウエハを脱離させる工程とが含まれる。
図1は、本発明の仮固定材を用いて、半導体ウエハを加工する加工工程を説明するための縦断面図であるである。なお、以下の説明では、図1中、上側を「上」、下側を「下」とする。
以下、これら工程について順次説明する。
【0036】
(仮固定材層形成工程)
まず、支持基材1を用意し、この支持基材(基材)1上に、本発明の仮固定材を用いて、仮固定材層2を形成する(図1(a)参照)。
この仮固定材層2は、本発明の仮固定材を支持基材1上に供給した後、乾燥させることで容易に形成することができる。
また、本発明の仮固定材を支持基材1上に供給する方法としては、特に限定されないが、例えば、スピンコート法、スプレー法、印刷法、フィルム転写法、スリットコート法、スキャン塗布法等の各種塗布法を用いることができる。これらの中でも、特に、スピンコート法が好ましく用いられる。スピンコート法によれば、より均一で平坦な固定剤層2を容易に形成することができる。
また、支持基材1としては、基材3を支持し得る程度の強度を有するものであれば、特に限定されないが、光透過性を有するものであるのが好ましい。これにより、基材3が光透過性を有さないものであっても、活性エネルギー線照射工程において、支持基材1側から活性エネルギー線を透過させて、仮固定材層2に活性エネルギー線を確実に照射することができる。
光透過性を有する支持基材1としては、例えば、石英ガラス、ソーダガラスのようなガラス材料や、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリカーボネートのような樹脂材料等を主材料として構成される基板が挙げられる。
【0037】
(貼り合わせ工程)
次に、支持基材1上の仮固定材層2が設けられた面上に、半導体ウエハ(基材)3をその機能面31が仮固定材層2側になるように載置し、これにより、支持基材1に仮固定材層2を介して半導体ウエハ3を貼り合わせる(図1(b)参照)。
この貼り合わせは、例えば、真空プレス機、ウエハボンダー等の装置を用いて容易に行うことができる。
【0038】
(加工工程)
次に、仮固定材層2を介して支持基材1上に固定された半導体ウエハ3の機能面31と反対側の面(裏面)を加工する。
この半導体ウエハ3の加工は、特に限定されず、例えば、図1(c)に示すような半導体ウエハ3の裏面の研磨の他、半導体ウエハ3へのビアホールの形成、ストレスリリースのための半導体ウエハ3の裏面のエッチング、リソグラフィー、さらには半導体ウエハ3の裏面への薄膜のコート、蒸着等が挙げられる。
なお、本実施形態における半導体ウエハの加工では、仮固定材層形成工程において、本発明の仮固定材を用いて、その膜厚が均一で、かつ表面が平滑な優れた精度を有する仮固定材層2が形成されているため、優れた精度をもって半導体ウエハ3の加工を行え得るという効果を奏する。
また、このような加工工程において、上記のような加工の種類に応じて、仮固定材層2は加熱され、温度履歴を経ることとなるが、この温度履歴が上述した仮固定材の分解開始温度未満である場合に、本発明の仮固定材が選択される。かかる場合に、本発明の仮固定材を選択することで、この仮固定材に含まれる樹脂成分の分解が開始する開始温度以上であるため、本工程における加熱(温度履歴)により、樹脂成分が分解してしまうのを確実に防止することができる。その結果、半導体ウエハ3と支持基材1との間で剥離が生じることなく前記裏面を加工することが可能であるため、前記加工を優れた寸法精度で行うことができる。
【0039】
(活性エネルギー線照射/加熱工程)
次に、図1(d)に示すように、仮固定材層2に活性エネルギー線を照射する。
これにより、仮固定材(樹脂組成物)中に含まれる活性剤にエネルギーが付与され、その結果、活性剤から酸または塩基のような活性種が発生する。
また、活性エネルギー線としては、特に限定されないが、例えば、波長200〜800nm程度の光線であるのが好ましく、波長300〜500nm程度の光線であるのがより好ましい。
さらに、活性エネルギー線を照射する量は、特に限定されないが、1〜2000mJ/cm程度であるのが好ましく、10〜1000mJ/cm程度であるのがより好ましい。
活性エネルギー線を照射する条件を、上記のように設定することにより、剪断強度を低減するのに十分な量の活性種を活性剤から確実に発生させることができる。
次いで、図1(e)に示すように、仮固定材層2を加熱することで、仮固定材層2を溶融状態とする。
これにより、後述する脱離工程において、半導体ウエハ3を支持基材1から確実に脱離させることが可能となる。
ここで、本発明では、仮固定材層2の加熱に先立って、仮固定材層2に活性エネルギー線が照射されて、酸または塩基が発生し、この酸または塩基の作用により、樹脂成分の剪断強度が低下した状態となっている。
そのため、仮固定材層2を溶融状態とするための加熱温度を、比較的低く設定することができる。具体的には、前記加熱温度を、130〜200℃程度に設定することが可能である。そのため、この加熱による、半導体ウエハ3の変質・劣化を的確に抑制または防止することができるとともに、仮固定材層2を溶融状態とするために要する時間の短縮を図ることができる。
ここで、活性エネルギー線照射後の仮固定材と基材との剪断強度は、活性エネルギー線照射前より小さければ、特に限定されないが、活性エネルギーを照射前後で比較した場合、照射後の方が、剪断強度が低くなることが好ましい。
これにより支持基材や半導体ウエハ3等にダメージを与えることなく引き剥がすことでできる。
活性エネルギー線照射後の仮固定材と支持基材との剪断強度は、175℃において、0.1〜50kPaであることが好ましい。より好ましくは、0.5〜20kPaである。更に好ましくは、175℃175℃において、1〜15kPaであることが好ましい。
【0040】
(脱離工程)
次に、半導体ウエハ3を支持基材1から脱離させる。
この際、前記活性エネルギー線照射/加熱工程を経ることで、犠牲層2が溶融状態となっているため、半導体ウエハ3を支持基材1から容易に脱離させることができる。
ここで、本明細書中において、脱離とは、半導体ウエハ3を支持基材1から剥離する操作を意味し、例えば、この操作は、支持基材1の表面に対して垂直方向に半導体ウエハ3を脱離させる方法や、支持基材1の表面に対して水平方向にスライドさせて半導体ウエハ3を脱離させる方法や、図1(e)に示すように、半導体ウエハ3の一端側から半導体ウエハ3を支持基材1から浮かせることで脱離させる方法等が挙げられる(なお、図1(e)において、支持基材1面及び/または、半導体ウエハ3の機能面31に仮固定材層2が、残留するが、図1(e)おいて、仮固定材層2は省略する)。
【0041】
(洗浄工程)
次に、半導体ウエハ3の機能面31に残存する仮固定材層2を洗浄する。
すなわち、機能面31に残留した仮固定材層2の残留物を除去する。
この残留物の除去方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、プラズマ処理、薬液浸漬処理、研磨処理、加熱処理等が挙げられる。
なお、本実施形態では、仮固定材層2を支持基材1に形成する構成としたが、かかる場合に限定されず、支持基材1および半導体ウエハ3の双方に仮固定材層2を形成する構成としてもよいし、支持基材1への仮固定材層2の形成を省略して半導体ウエハ3に選択的に犠牲層2を形成する構成としてもよい。
以上、本発明の仮固定材を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
たとえば、仮固定材に含まれる各構成材料は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することができる。
【実施例】
【0042】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.仮固定材の調製
まず、以下に示すような実施例1〜2および比較例の仮固定材を調製した。
【0043】
[実施例1]
<重縮合体(A)の合成>
撹拌器、温度計、流出用冷却機を装備した反応缶内に、テレフタル酸83部、イソフタル酸81部、エチレングリコール77部、ネオペンチルグリコール79部を仕込み、230℃まで4時間かけてエステル化反応を行った。ついで系内を徐々に減圧していき、60分かけて10mmHgまで減圧初期重合を行うとともに温度を250℃まで上昇し、更に1mmHg以下で30分後期重合を行い、数平均分子量15,000の重縮合体(A)を得た。得られた重縮合体(A)は、NMR等の組成分析の結果、酸成分がモル比でテレフタル酸/イソソフタル酸=50/50であり、グリコール成分がモル比でエチレングリコール/ネオペンチルグリコール=50/50であった。また、重縮合体(A)のガラス転移温度63℃であった。
【0044】
<仮固定材の調製>
得られた重縮合体(A)100.0g、活性剤(光酸発生剤)としてGSID26−1(チバジャパン社製)2.0gをγ−ブチロラクトン198.0gに溶解し、樹脂成分濃度33重量%の仮固定材(1)を調製した。
【0045】
[実施例2]
<重縮合体の合成>
上記重縮合体(A)の合成方法に準じた方法により重縮合体(B)を合成した。得られたポリエステル樹脂(B)はNMR等の組成分析の結果、酸成分がモル比でテレフタル酸/イソソフタル酸=50/50であり、グリコール成分がモル比でエチレングリコール/ネオペンチルグリコール=45/55であった。また、重縮合体(B)の数平均分子量22、000、ガラス転移温度67℃であった。
【0046】
<仮固定材の調製>
実施例1得られた重縮合体(B)100.0g、活性剤(光酸発生剤)としてGSID26−1(BASFジャパン社製)2.0gをγ−ブチロラクトン198.0gに溶解し、樹脂成分濃度33重量%の仮固定材(2)を調製した。
【0047】
[実施例3]
<重縮合体の合成>
上記重縮合体(A)の合成方法に準じた方法により重縮合体(C)を合成した。得られた重縮合体(C)はNMR等の組成分析の結果、酸成分がモル比でテレフタル酸/トリメリット酸/p−ヒドロキシ酢酸=92/3/5であり、グリコール成分がモル比でエチレングリコール/プロピレングリコール=25/75であった。また、重縮合体(C)の数平均分子量17、000、ガラス転移温度82℃であった。
【0048】
<仮固定材の調製>
実施例1得られた重縮合体(C)100.0g、活性剤(光酸発生剤)としてGSID26−1(BASFジャパン社製)2.0gをγ−ブチロラクトン198.0gに溶解し、樹脂成分濃度33重量%の仮固定材(3)を調製した。
【0049】
[比較例1]
<重縮合体(D)の合成>
十分乾燥させた反応容器に、酢酸エチル(430g)、シクロヘキサン(890g)、5−デシルノルボルネン(223g、0.95モル)を導入し、この系中に乾燥窒素を40℃で30分流し、溶存酸素を除去した。ビス(トルエン)ビス(パーフルオロフェニル)ニッケル1.33g(0.275mモル)を12gの酢酸エチルに溶解したものを反応系中に添加し、上記の系を20℃から35℃に15分掛けて昇温し、その温度を保持しながら3時間系中を攪拌した。
系を室温まで冷却後、49gの30%過酸化水素水を添加した約1500gの純水に氷酢酸26gを溶解させ、これを前記反応系中に添加し、反応系を50℃で5時間攪拌した後、攪拌を止め、分離した水層を除去した。残った有機層を220gのメタノールと220gのイソプロピルアルコールを混合したものを、添加〜攪拌〜除去することで洗浄した。さらに、510gのシクロヘキサンと290gの酢酸エチルを系に添加し、均一に溶解した後、また156gのメタノールと167gのイソプロピルアルコールを混合したものを、添加〜攪拌〜除去することで洗浄することを、2回繰り返した。
洗浄後の有機層に180mLのシクロヘキサンを添加して系を均一に溶解し、さらに670gのメシチレンを添加した。そして、ロータリーエバポレーターで減圧下でシクロヘキサンを蒸発除去することにより、5−デシルノルボルネン付加重合体を、収量:543gの35%のメシチレン溶液の重縮合体(D)得た。
【0050】
<仮固定材の調製>
得られた重縮合体(D)98.0g、活性剤(光酸発生剤)としてGSID26−1(BASFジャパン社製)2.0gを溶解し、樹脂成分濃度35重量%の仮固定材(4)を調製した。
【0051】
[参考例1]
<仮固定材の調製>
ポリ乳酸 PURASORB PDL 45(PURAC社製)100.0g、活性剤(光酸発生剤)としてGSID26−1(BASFジャパン社製)2.0gをγ−ブチロラクトン448.0gに溶解し、樹脂成分濃度18重量%の仮固定材(5)を調製した。
【0052】
2.評価
以下に評価方法と、評価結果を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
2−1<重量減少温度>
上記で調製した仮固定材(1)〜(5)について、ぞれぞれ、TG/DTA装置(セイコーインスツルメンツ社製、「型番:6200型」)により、仮固定材の1%重量減少温度を測定した(雰囲気:窒素、昇温速度:10℃/分)。
【0055】
2−2<剪断強度>
上記で調製した仮固定材1〜5をスピンコート法でそれぞれガラス上に塗布し、大気中で120℃×5分間の条件でソフトベークした。次に、そのガラス上に実施例1、2および比較例で調製した仮固定材を再度同じ条件で塗布し、大気中で120℃×5分間の条件でソフトベークした後、さらに、大気中で220℃×5分間の条件でハードベークを行い、厚み50μmの仮固定材層を得た。その後、仮固定材層上に半導体ウエハを設置し、仮固定材を介して半導体ウエハとガラスとを、180℃、5kN,2分(実施例1〜3、比較例1)あるいは200℃、10kN,5分(比較例2)の条件で固定した。
次に、半導体ウエハの研磨を行い、その後、半導体ウエハとガラスの積層体を大気中で230℃×10分の条件で加熱した。
この状態での175℃における剪断強度を測定した。
測定方法は以下の通りである。
(1)光照射前の剪断強度
仮固定材と支持基材との間の剪断強度の具体的な測定方法としては次の通りである。支持基材である直径200mmのガラス基板(株式会社水戸理化ガラス社製、テンパックス)上に塗布し、120℃で5分、大気中ホットプレート上で乾燥させ、ガラス基板上に厚み40μmの当該仮固定材の層を形成する。この仮固定材の層上に、基材として一辺10.5mm厚さ725μmのシリコンチップを荷重5N、90℃、大気中、時間10秒で固定する。その後、温度175℃で、シリコンチップがガラス基板に対して移動するように簡易シェア測定機(形式2252、AIKOH Engineering)で600um/sでシリコンチップを押すことで剪断強度を測定した。
(2)光照射後の剪断強度
上記シリコンチップを押す前に、ガラス基板側から2000mj/cm2(i線換算)の条件でi線を照射し、その後、上記同様、温度175℃で剪断強度を測定した。
【0056】
2−3<脱離>
前記において、半導体ウエハとガラスとの間に仮固定材を有する積層体に、ガラス側から2000mj/cm2(i線換算)の条件でi線を照射した後、上下180℃の熱板ではさみ、真空吸着させた後、半導体ウエハを2.0mm/秒の速度でスライドさせ、ガラスから脱離させた。その後、半導体ウエハおよびガラスを、γ−ブチロラクトンに5分間揺動させながら浸漬し、半導体ウエハおよびガラス上の仮固定材の残渣の除去を行った。
その結果、実施例1、実施例2、および実施例3は、半導体ウエハに損傷を生じさせることなく、半導体ウエハを脱離させることができ、また、γ−ブチロラクトンへの浸漬で、仮固定材の残渣は除去できた。しかし、比較例1では、この条件では半導体ウエハを脱離させることができなかった。
なお、表1中の符号は以下の通り
○:半導体ウエハに損傷を生じさせることなく、半導体ウエハを脱離出来た場合
×:半導体ウエハを脱離させることができなかった場合
【0057】
2−4<位置ずれ>
実施例1と参考例1は、上記で調製した仮固定材1と5をスピンコート法でそれぞれガラス上に塗布し、大気中で120℃×5分間の条件でソフトベークした。次に、そのガラス上に上記調製した仮固定材を再度同じ条件で塗布し、大気中で120℃×5分間の条件でソフトベークした後、さらに、大気中で220℃×5分間の条件でハードベークを行い、厚み50μmの仮固定材層を得た。その後、仮固定材層上の所定の位置に半導体ウエハを設置し、仮固定材を介して半導体ウエハとガラスとを、180℃、5kN,2分(実施例1と参考例1、の条件で固定した。
次に、半導体ウエハの研磨を行い、位置ずれを確認した。
試料は、各々10個作成し、位置ずれがないものの個数を確認した。
結果を表2に示す。
なお、他の評価は、上記を同様の方法で行った。
【0058】
【表2】

【0059】
表2より実施例1は、参考例1に比べ、顕著に位置ずれしないことが確認できた。
これは、実施例1は、参考例1に比べ、光照射前の剪断強度が高いためと考えられる。
さらにガラス転移温度が55℃以上であり、仮固定の際の密着性も高まったためと考えられる。
【符号の説明】
【0060】
1 支持基材
2 仮固定材層
3 半導体ウエハ
31 機能面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材を加工するために該基材を支持基材に仮固定し、前記基材の加工後に加熱することで前記基材を前記支持基材から脱離させるために用いられる仮固定材であって、多価カルボン酸と水酸基を少なくとも2つ以上有する化合物との重縮合体と活性剤を必須成分とすることを特徴とする仮固定材。
【請求項2】
多価カルボン酸と水酸基を少なくとも2つ以上有する化合物との前記重縮合体の数平均分子量は、1.6×10〜2.5×10である請求項1に記載の仮固定材。
【請求項3】
多価カルボン酸と水酸基を少なくとも2つ以上有する化合物との前記重縮合体のガラス転移温度は、50〜90℃である請求項1、または2に記載の仮固定材。
【請求項4】
多価カルボン酸と水酸基を少なくとも2つ以上有する化合物との前記重縮合体は、分岐枝を有するものである請求項1ないし3のいずれかに記載の仮固定材。
【請求項5】
前記仮固定材の前記加熱により、前記仮固定材が分解することなく、前記支持基材から前記基材が脱離される請求項1ないし4のいずれかに記載の仮固定材。
【請求項6】
熱分解測定における前記仮固定材の1%重量減少温度が、が250℃以上である請求項1ないし5のいずれかに記載の仮固定材。
【請求項7】
基材を支持基材に仮固定材を用い加熱により固定した後の基材と仮固定材との剪断強度は、その固定した後に、活性エネルギー線照射した後の剪断強度に比べ、高いことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の仮固定材。
【請求項8】
活性エネルギー線照射した後、基材を支持基材に仮固定材を用い加熱により固定した後の基材と仮固定材との剪断強度は、0.1〜50kPaである請求項1ないし7のいずれかに記載の仮固定材。


【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−72066(P2013−72066A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214238(P2011−214238)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】