説明

伝播空間監視装置

【課題】 無線技術を用いて監視空間への物体の侵入等を監視する装置において、実装が簡単で容易に実施できるようにする。
【解決手段】 監視すべき室内の一定位置にOFDM方式の送受信を行うUWB送信機100とUWB受信機200を設置する。監視状態に入る前の初期設定で、変化のない状態の伝播空間において、マルチパスで伝播する基準強度レベルの電波の受信強度をRSSIで測定し、基準強度として記憶しておく。監視時に基準強度レベルの電波を発信して、室内への人の侵入等がなく、監視空間に変化が起きなければ、受信電波は基準強度となるが、出入口のドアの開放、ガラス窓の破損などで監視空間の伝播状態が変わると、受信強度が基準から変動するので、侵入の警告等を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)により実現するUWB(Ultra Wide Band)の無線送受信機により、電波が伝播する空間に起きる変化を検出可能とした伝播空間監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、室内などの所定の空間に不法に人・移動体が侵入することを監視する装置やシステムが開発されている。その中には、監視する領域に赤外線を発射し、赤外線の遮断をセンサにより検知する方法、或いは、室内と室外を隔てる窓や扉の開放や破壊をマグネットセンサや振動センサにより検知する方法を採用したものが知られている。
赤外線の遮断を検知する方法は、センサモジュールが安価であるあることから、広く利用されているが、検出角度が狭く、実質的に直線に近く、検出距離も短いので、面で検出しようとすると、複数のセンサを設置する必要があり、空間で検出しようとすると、さらに多くのセンサを用いる必要がある。
マグネットセンサや振動センサにより検知する方法は、侵入が想定される窓や扉ごとにセンサを設置する必要があり、想定外の侵入経路については、検知不能である。
【0003】
また、これらのセンサの感度調整は、センサモジュールとして、ハードウェア的に設定を変更することで行うことが多く、設置条件が変化した場合、その都度、感度調整することは、実質的に無理な場合が多い。この結果、検知感度が過敏になりすぎて、誤検知が起き、信頼性を失う場合や、逆に感度が低すぎ、検知不能となって、センサの設置を無意味にする。
上記のように、検出が線でしか行えないことや局部に限定される、といった従来のセンサの問題を解決すべく、面や空間で検出することができるセンサが求められ、こうしたセンサとして、UWBセンサを利用する方法が提案されている(特許文献1,2参照)。
【0004】
特許文献1は、UWBレーダをベースとする運動センサで、パルス/エコーインターバルにより決定されるレンジにおける平均レーダ反射度の変化により運動を感知する方法による運動センサに関する。
また、特許文献2は、侵入物体の検知に比較的検知範囲の広いUWBセンサを用い、送信したインパルスを検知することで、侵入物体の検知、物体との距離測定を可能にした侵入物体の検知方法に関する。
【特許文献1】特表平8−511341号公報
【特許文献2】特開2007−18390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した特許文献1,2のいずれも、検知対象とする侵入物体や運動体に対し、検知する意図をもってパルス信号を送信し、検知対象で反射した信号を検知する方法をとっているので、この方法を採用する場合には、この検知方法に専用の手段を用意することが必要である。
つまり、この方法による監視装置を実装するためには、新たに、機器の購入や実装上の問題を解決し、このための投資が必要となって、実現を難しくしている。
本発明は、上記従来技術の問題に鑑みてなされたもので、その目的は、無線技術を用いて監視空間への物体の侵入等を監視する装置において、専用の手段を必要とせず実装が簡単で容易に実施できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の伝播空間監視装置に係る発明は、サブキャリアに割り当てた送信データをOFDMで変調し、送信する無線送信機と、受信信号をOFDM対応で復調する無線受信機を備えたデータ通信手段と、前記無線受信機で受信した信号の電波強度を測定する電波強度測定手段と、前記データ通信手段が一定位置で、所定のデータを送受信したとき、前記電波強度測定手段によって測定された強度と、前記データ通信手段が同一位置にあり、基準伝播空間の下で同一データを送受信したときに測定された電波強度をもとに予め定めた閾値と比較し、閾値を超えたときに、伝播空間に変化が生じたことを表す信号を出力する伝播空間変化検出手段を有したことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載された伝播空間監視装置において、伝播空間監視動作を行わせるために、前記データ通信手段、前記電波強度測定手段及び前記伝播空間変化検出手段を制御する制御手段を有し、前記制御手段は、伝播空間監視の指示に応じ、前記データ通信手段に、監視期間にわたって所定の周期で、伝播空間監視の実行を指示するデータの送受信を行わせるとともに、前記電波強度測定手段に、前記無線送信機からのデータ受信時における電波強度の測定動作を前記周期ごとに行わせ、かつ監視期間における初期動作で測定した電波強度をもとに前記閾値を設定し、その後、前記伝播空間変化検出手段に伝播空間変化の検出動作を行わせることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載された伝播空間監視装置において、前記データ通信手段は、コンピュータを端末とする通信手段であり、前記コンピュータは、ネットワークを介して伝播空間の監視結果を中央管理装置へ伝送する手段を備えたことを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載された伝播空間監視装置において、前記無線送信機を複数備え、各無線送信機から当該機の識別情報とともに伝播空間監視の実行を指示するデータを送信し、前記伝播空間変化検出手段は、無線送信機ごとの伝播空間変化の検出を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、例えば、一定位置に設置したコンピュータ間のデータ通信に用いるOFDM通信手段に、伝播空間を監視するための動作を行わせ、得られる伝播空間の変化を評価する方法をとることで、既存のデータ通信手段に簡単な手順を付加するだけで、伝播空間の監視、即ち監視空間への人・移動体の侵入および窓・壁などの破壊といった異常を検知することができ、広い監視空間を設定できる可能性を持つUWB技術を用いた監視装置を容易に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の伝播空間監視装置に係る実施形態を説明する。
本実施形態の伝播空間監視装置は、OFDM(直交周波数分割多重)送受信機によるUWB通信手段を用い、この通信手段によって電波が伝播する空間に起きる変化を受信信号の電波強度変化によって検出することを基本として監視動作を行う。
そこで、先ず、OFDM送受信機について、構成例を示す図1のブロック図を参照して説明する。
【0009】
送信機側は、信号の処理フロー順に、データ生成部101、変調器102、直並列変換部103、逆FFT(Fast Fourier Transform)部104、並直列変換部105、送信回路106、アンテナ107を有する。
送信機側の信号処理は、次のフローに従って行われる。
送信対象のデータは、データ生成部101で送信用データとされた後、変調器102でQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調を受ける。変調後にQPSKシンボルのビットストリームとされ、直並列変換部103に入力され、ここで、直列のビットストリームが並列に変換される。並列に変換されたデータ(QPSKシンボル)は、逆FFT部104に入力され、OFDMで多重化するサブキャリアへの変換が行われる。ここに示す例では、サブキャリアを128線で出力できるようにしている。逆FFT部104で変換されたサブキャリアの信号は、並直列変換部105で直列に変換(多重化)され、送信回路106の処理を経て、アンテナ107から、発信される。
【0010】
また、受信機側は、信号の処理フロー順に、アンテナ207、受信回路206、直並列変換部205、FFT部204、並直列変換部203、復調器202、データ復調部201を有する。
受信機側の信号処理は、次のフローに従って行われる。
アンテナ207からの信号は、受信回路206の処理を経て、サブキャリアを多重化した受信信号として、直並列変換部205に入力される。ここで、OFDMの受信信号は、並列の信号に変換され、FFT部204を通すことにより、各次数に対応するデータ(QPSKシンボル)に変換される。ここに示す例では、送信側と同様に128線で出力できるようにしている。FFT部204から出力される並列データは、並直列変換部203によって、QPSKシンボルのビットストリームへ統合され、復調器202の処理を経て、QPSKシンボルから通常のデータに戻される。この後、通信に必要としたデータを除く等の処理をデータ復調部201で行い、送信機側で送信対象としたデータを再現する。
【0011】
上記のOFDM送受信機を用いてUWBのデータ通信を行う際に、現在、このデータ通信においてデファクトスタンダードになりつつあるWiMedia(登録商標)方式を採用することができる。この方式は、OFDM変調の1つのチャネルバンドを110本のサブキャリアで使用し、約65mSec間隔のスーパーフレームで最高480Mbpsのデータ通信を行う方式である。
図2は、当該スーパーフレームの構成と送信動作時のタイミングチャートを示す。図2に示すように、スーパーフレーム150では、自(送信元)アドレス、相手(送信先)アドレス、暗号化データ、電文データ等を送信データとし、このデータが最高480Mbpsのデータ量となるように、フレームを構成する。このフレーム構成によると、送信動作時間は、250μSec程度となり、約65mSec間隔をとって、次のフレームの送信動作が行われる。この通信動作によって、最高480Mbpsのデータ通信を行うことができる。
【0012】
OFDM送受信機を用いるデータ通信では、動作の際、受信する信号電波の強度をできるだけ大きくとりたいので、送信機からの信号電波を受信するときに、直接伝播してくる電波と壁などで反射して伝播してくる電波(以下、1つの送受信機間にできる複数の電波経路を「マルチパス」という)とを併せて取り込み、利用することができる。
通常の無線機器では、マルチパスは、時間遅延があるため、データの復調に支障をきたすが、OFDM送受信機を用いるデータ通信、特にWiMedia(登録商標)方式では、OFDM変調時に128線ものサブキャリアで、送信時には逆FFT、また受信時にはFFTの周波数−時間演算を行うことからマルチパスに対しても問題なく復調を行える。
【0013】
OFDM送受信機を用いるデータ通信における上記した通信条件が、この実施形態において、伝播空間の変化を監視できる前提条件の1つとなる。つまり、この通信方式では、受信電波の強度が通常の無線通信より弱いレベルでも通信が可能であり、通常の動作状態では、送信電波の強度のレベル制御は不要であることから、送信電波の強度は、ほぼ一定に保たれている。なお、送信データによって送信電波の強度が変動する可能性があるが、図2に示したスーパーフレーム150で送信する場合には、送信データの同一性は保証され、送信電波の強度の変動は問題にならない。
よって、送信電波が伝播する空間の変化がなければ、受信電波の強度に変動がないが、伝播する空間に起きる変化は、受信電波の強度に影響し、伝播空間の変化を監視する目的を持って、受信電波の強度を測定することで、目的の監視動作を行うことができる。つまり、変化する前の伝播空間を基準に、その後、伝播空間に起きる変化によって受信電波が受ける強度変化が監視の対象になる。
【0014】
次に、受信電波の強度測定による監視空間への人・移動体の侵入および窓・壁などの破壊といった異常を監視するためのOFDM送受信機の構成及び動作について、さらに詳しく説明する。
上記のように、変化する前の伝播空間を基準に、その後、伝播空間に起きる変化によって受信電波が受ける強度変化を監視の対象とし、ここでは、監視空間への人・移動体の侵入および窓・壁などの破壊といった異常によって送信電波が伝播する空間に起きる変化を受信電波の強度変動として測定し、侵入の監視を行う。
従って、送信電波の強度レベルがほぼ一定でなければならない、という上記の条件に加え、送信機と受信機が一定位置にあることが必要となる。つまり、移動可能な送受信機であっても、監視時には、基準時の位置を保つ必要がある。
【0015】
このような条件を満たす、室内への人・移動体の侵入の監視に適用した本実施形態の伝播空間監視装置を図3に示す構成例を参照して説明する。
図3に示す伝播空間監視装置は、室内の一定位置にOFDM方式の送受信を行うUWB送信機100とUWB受信機200を設置した構成である。ここでは、UWB受信機200をPC(Personal Computer)300に接続するか、又は組み込むかして、PC300を通信端末としているが、UWB送信機100は、接続するか、又は組み込む機器を特定していない。
OFDM方式の送受信を行うUWB送受信機は、PCやその周辺機器或いはディジタルカメラ等のポータブル機器をワイヤレスで接続する、といった使用方法が当面考えられるので、必ずしも図3のPC300のような固定位置に、設置されない。
ただ、先に述べたように、監視時には、UWB送受信機を一定位置に保つ必要があり、図3に示す状態で、室内への人・移動体の侵入および窓・壁などの破壊といった異常の監視をする場合には、UWB送信機100は、固定位置を保つ必要がある。なお、UWB送信機100もPC端末に用いて、PC間の通信手段として機能させてもよい。
【0016】
UWB送信機100から発信される電波は、図3に示すように、UWB受信機200に直接伝播するほか、監視空間である室内の壁、出入り口のドア、ガラス窓などで反射して伝播してくる。この伝播状態は、室内への人等の侵入および窓・壁などの破壊といった異常によって変化する。侵入した人によっても伝播状態に変化が起きるが、例えば、ドアの開放やガラス窓の破損、或いはUWB送信機100自身が動かされることによっても起きる。この伝播状態の変化をとらえることで、伝播空間の異常を監視できる。
この方法で監視動作を行うときの手順としては、先ず、監視状態に入る前に、基準伝播空間として、変化のない状態の監視空間を設定する。即ち、動くものがない固定の監視空間に所定の強度レベルの電波を発信しているときに、受信信号の電波強度を測定し、その測定値を基準強度として記憶しておく。
その後、設定した監視空間に基準強度レベルの電波を発信して、監視動作を開始する。監視時に、室内への人の侵入等がなく、監視空間に変化が起きなければ、受信信号は基準強度を保ち、変動がない。他方、受信信号が基準強度から変動した場合には、監視空間の電波状態を変動させる人の侵入等があったことを推測することができる。
【0017】
図3において、例えば、出入り口のドアやガラス窓を持つ部屋がオフィスであり、夜間に無人になるこの室内を監視空間とする場合を想定する。
想定したケースでは、伝播空間監視装置が異常を検出したときに、これをオフィスの管理者に知らせることが望ましく、その方法として、UWB受信機200を持つ通信端末としてのPC300からネットワークを通じて、オフィスを管理する会社の中央管理装置へ、異常の検出を含む監視結果を伝える方法を採る。図3に示す例では、PC300からネットワーク回線で警備会社へ監視結果を伝送する手段を持った監視システムの例を示している。
【0018】
想定した監視空間における当該監視装置の動作を図4に示すフローチャートに従って説明する。
監視動作の開始に先立ち、UWB受信機200は、PC300に接続して、受信可能な状態にし、また、PC300は、接続したネットワークを介して、監視結果を警備会社へ伝えることができる状態にしておく。なお、UWB受信機200を通常の通信手段として使用している場合には、特に監視動作のための準備は必要としないので、そのままでよい。
オフィスを最後に退出する者は、ガラス窓等の戸締りをした後、UWB送信機100に対し、監視動作の開始を指示して(ステップS101)、出入り口のドアをロックしてオフィスから退出する。
【0019】
このとき、UWB送信機100は、監視動作開始の指示に応じ、監視動作に必要な初期設定を始めるが、指示を受けてから数分間は、退出者がオフィスを退出するのに十分な時間をとり、その後、基準の監視空間が定まってから初期設定を開始する。
初期設定は、UWB送信機100から基準の監視空間を通して、スーパーフレーム150(図2、参照)でデータを送信し(ステップS102)、UWB受信機200でこのデータを受信する(ステップS103)。このとき、スーパーフレーム150の電文データには、初期設定である旨を載せておくことで、UWB受信機200も監視モードの動作へ移行し、監視モードに対応する動作を開始する。
初期設定では、基準の監視空間を通して行うデータ送信は、発信する電波の強度レベルを一定にし、電波図2に示した約65mSec間隔のタイミングで、複数回繰り返される。
【0020】
UWB受信機200は、受信したスーパーフレームの電文データを読み取り、そのデータの指示に従って、監視モードの動作へ移行し、初期設定として次の動作を行う。
この動作の1つは、繰り返し送信され、基準の監視空間を伝播してきた電波の強度を測定する動作である。この受信電波の強度測定は、受信回路の一部に設けた測定回路でRSSI(Received Signal Strength Indicator:受信信号強度)値として測定される。なお、この基準強度として得るRSSI値は、マルチパスで伝播する電波を全部取り込み、処理できる測定回路を用いることが必要となる。なお、受信電波の強度を表すものとして、RSSI値に代えて、データ通信におけるLQI(Link Quality Indicator)を用いてもよい。ただ、LQIは通信ノイズがないことなどの制約が生じる。
もう1つは、初期設定で、UWB送信機100から繰り返し送信され、基準の監視空間を伝播してくる電波を複数回分測定し、得たRSSI値の平均値と分散値に基づいて、監視時に測定する受信電波に異常があるか、否か、即ち監視空間の異常を監視するための閾値を求める。この閾値は、測定誤差を含めて、予め実験により誤動作しない値を求めておき、この値と測定されたRSSI値の平均値と分散値とを対応付けるテーブルデータを記憶部に格納しておくことで、監視動作に用いる閾値を自動設定することができる。
このようにして、初期設定として、監視空間の異常を受信電波の強度をもとに検出するための閾値の設定を終えると、監視の準備が整うので、UWB受信機200は、UWB送信機100にACK(ACKnowledgement)信号を送信する(ステップS104)。
【0021】
UWB送信機100は、UWB受信機200からACKを受け、これまで行っていた初期設定を終了し、監視動作を開始する(ステップS105)。
UWB受信機100は、監視動作の開始時から、スーパーフレーム150の電文データには、これまでの初期設定に代えて、監視動作を指示する旨のデータを載せて電波を送信する(ステップS106)。なお、この監視動作において発信する電波の強度レベルを一定に保つこと、及び図2に示した約65mSec間隔のタイミングでデータ送信が行われることは、初期設定時と同様である。
UWB受信機200は、監視動作の開始後、UWB送信機100から監視動作を指示する旨のデータを載せた電波を受信し(ステップS107)、この受信データの指示に応じ、監視の実行手順に従った動作を行う。
【0022】
UWB受信機200における監視は、次の手順で実行される。
即ち、先ず、UWB送信機100からの電波を受信したときの電波の強度(RSSI値)を測定する。次いで、測定した電波強度を、先のステップS104で設定した閾値と比較し、閾値を超えるか否かを判定する(ステップS108)。
判定結果が閾値を超えている場合には、人の侵入等によって、伝播特性が変わり、異常が生じたとみなし、異常を示す信号をPC300に知らせる。PC300は、警備会社の中央管理装置に異常を通報するための手段を備えおり、UWB受信機200から異常を通知する信号を受けとると、この通知に応じ該通報手段を動作させ、ネットワークを通して異常の通報をする(ステップS109)。
他方、閾値による判定で閾値を超えていない場合には、伝播特性に変化がなく、異常が生じていないとみなし、特に何もしないで、監視を続ける。ただ、正常であるときにも、正常であることを知らせる信号の出力をしてもよい。
監視動作を続けるときには、図2に示した約65mSec間隔のタイミングで監視動作を指示する電文データを載せたスーパーフレーム150の送信を再び行う。
この送信動作は、監視期間中、繰り返して行われる。
【0023】
上記のように構成する伝播空間監視装置によると、1対のUWB送受信機で監視空間を伝播する電波の変化を監視できるので、この種の従来の監視装置([背景技術]及び[発明が解決しようとする課題]の記載、参照)に比べ、容易に設置をすることができる。
また、監視エリアは、約30m程度が可能であり、送信、受信の各アンテナを無指向性にすれば、電波は、全方向に送出し、室内の全面で反射した後、受信することが可能で、全方向の監視ができる。
さらに、電波の検知感度は、受信機によって受信できる受信信号強度(RSSI値)であり、また、この閾値を変更する方法は、監視する空間が違う場合に対しても、初期設定の調整で簡単に適応できる。

【0024】
ところで、上記実施形態では、1対のUWB送受信機で構成する伝播空間監視装置の例を示したが、1台のUWB受信機に対してUWB送信機を複数台にした構成でもよい。複数のUWB送信機を設けることにより、監視エリアを広げることや1台のUWB送信機では電波が届き難かったエリアを無くすことができる。例えば、監視エリアを広げたい場合には、UWB送信機を中央にして、両側に感度が得られる距離をとってUWB送信機を設置することで、監視エリアを確保することができる。
複数のUWB送信機は、それぞれ図2に示したスーパーフレーム150でUWB受信機との間でデータ通信を行うので、どのUWB送信機からの電波を受信しているかをスーパーフレーム150中に載せた自アドレスから判別することができる。
従って、監視動作の際、受信電波から異常を検知したときに、どのUWB送信機からの電波であるかを判別し、エリアを特定することができ、異常の実態をより詳しくとらえることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】OFDM送受信機の構成例を示すブロック図である。
【図2】WiMedia(登録商標)方式のOFDMにおけるスーパーフレームの構成と送信動作時のタイミングチャートを示す図である。
【図3】室内への侵入監視に適用した本実施形態の伝播空間監視装置の構成例を示す概略図である。
【図4】図3の伝播空間監視装置による監視動作の概要を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0026】
100・・UWB(Ultra Wide Band)送信機、102・・変調器、104・・逆FFT(IFFT:Inversed Fast Fourier Transform)、150・・WiMedia(登録商標)方式のスーパーフレーム、200・・UWB受信機、202・・復調器、204・・FFT、300・・PC(Personal Computer)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サブキャリアに割り当てた送信データをOFDMで変調し、送信する無線送信機と、受信信号をOFDM対応で復調する無線受信機を備えたデータ通信手段と、
前記無線受信機で受信した信号の電波強度を測定する電波強度測定手段と、
前記データ通信手段が一定位置で、所定のデータを送受信したとき、前記電波強度測定手段によって測定された強度と、前記データ通信手段が同一位置にあり、基準伝播空間の下で同一データを送受信したときに測定された電波強度をもとに予め定めた閾値と比較し、閾値を超えたときに、伝播空間に変化が生じたことを表す信号を出力する伝播空間変化検出手段を有したことを特徴とする伝播空間監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載された伝播空間監視装置において、
伝播空間監視動作を行わせるために、前記データ通信手段、前記電波強度測定手段及び前記伝播空間変化検出手段を制御する制御手段を有し、
前記制御手段は、伝播空間監視の指示に応じ、前記データ通信手段に、監視期間にわたって所定の周期で、伝播空間監視の実行を指示するデータの送受信を行わせるとともに、
前記電波強度測定手段に、前記無線送信機からのデータ受信時における電波強度の測定動作を前記周期ごとに行わせ、かつ監視期間における初期動作で測定した電波強度をもとに前記閾値を設定し、その後、前記伝播空間変化検出手段に伝播空間変化の検出動作を行わせることを特徴とする伝播空間監視装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された伝播空間監視装置において、
前記データ通信手段は、コンピュータを端末とする通信手段であり、
前記コンピュータは、ネットワークを介して伝播空間の監視結果を中央管理装置へ伝送する手段を備えたことを特徴とする伝播空間監視装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載された伝播空間監視装置において、
前記無線送信機を複数備え、各無線送信機から当該機の識別情報とともに伝播空間監視の実行を指示するデータを送信し、
前記伝播空間変化検出手段は、無線送信機ごとの伝播空間変化の検出を行うことを特徴とする伝播空間監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−80767(P2009−80767A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−251295(P2007−251295)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(304020498)サクサ株式会社 (678)
【Fターム(参考)】