伝熱板の製造方法
【課題】少なくとも一部が湾曲した熱媒体用管を備える場合であっても、伝熱板の熱交換効率が高く、かつ、容易に製造することができる伝熱板の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、第一金属部材2に形成された第一凹溝5と、第二金属部材3に形成された第二凹溝6とを重ね合わるとともに、凹溝同士で形成された空間部Kに熱媒体用管4を挿入する準備工程と、この準備工程で形成された仮組構造体Uの表面及び裏面のうち少なくとも一方の面から挿入した流入攪拌用回転ツール25を空間部Kに沿って移動させ、熱媒体用管4の周囲に形成された空隙部P1〜P4に摩擦熱によって流動化させた塑性流動材Qを流入させる流入攪拌工程と、を含み、空間部Kの幅及び高さの少なくとも一方が、熱媒体用管4の外径よりも大きいことを特徴とする。
【解決手段】本発明は、第一金属部材2に形成された第一凹溝5と、第二金属部材3に形成された第二凹溝6とを重ね合わるとともに、凹溝同士で形成された空間部Kに熱媒体用管4を挿入する準備工程と、この準備工程で形成された仮組構造体Uの表面及び裏面のうち少なくとも一方の面から挿入した流入攪拌用回転ツール25を空間部Kに沿って移動させ、熱媒体用管4の周囲に形成された空隙部P1〜P4に摩擦熱によって流動化させた塑性流動材Qを流入させる流入攪拌工程と、を含み、空間部Kの幅及び高さの少なくとも一方が、熱媒体用管4の外径よりも大きいことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば熱交換器や加熱機器あるいは冷却機器などに用いられる伝熱板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換、加熱あるいは冷却すべき対象物に接触し又は近接して配置される伝熱板は、例えば板厚の金属部材に高温液や冷却水などの熱媒体を循環させる熱媒体用管を挿通させて形成されている。
【0003】
かかる伝熱板の製造方法としては、例えば、特許文献1に記載された方法が知られている。図13は、特許文献1に係る伝熱板を示した図であって、(a)は、斜視図、(b)は断面図である。特許文献1に係る伝熱板100は、表面に開口する断面視矩形の蓋溝106と蓋溝106の底面に開口する凹溝108とを有する第一金属部材102と、凹溝108に挿入される熱媒体用管116と、蓋溝106に嵌合される第二金属部材110と、を備え、蓋溝106における両側壁105,105と第二金属部材110の両側面113,114とのそれぞれの突合せ面に沿って摩擦攪拌接合を施して形成されている。蓋溝106と第二金属部材110の突合せ面には、塑性化領域W0,W0が形成されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−314115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図13の(b)に示すように、伝熱板100には、凹溝108と熱媒体用管116の外側面と第二金属部材110の裏面とによって空隙部120が形成されているが、伝熱板100の内部に空隙部120が存在していると、熱媒体用管116から放熱された熱が第一金属部材102及び第二金属部材110に伝わりにくくなるため、伝熱板100の熱交換効率が低下するという問題があった。したがって、凹溝108の深さや幅を熱媒体用管116の外径と同一に形成して、空隙部120が小さくなるように形成することが好ましい。
【0006】
一方、熱媒体用管116の少なくとも一部を湾曲させて第一金属部材102及び第二金属部材110の内部に埋め込む場合には、凹溝108に熱媒体用管116を挿入し、蓋溝106に第二金属部材110を配置する作業が困難となるため、凹溝108の深さや幅を熱媒体用管116の外径よりも大きく確保しなければならない。即ち、熱媒体用管116の少なくとも一部を湾曲させて第一金属部材102及び第二金属部材110の内部に埋め込む場合は、熱媒体用管116の外径に比べて凹溝108の深さや幅を大きくせざるを得ず、それに伴って空隙部120が大きくなってしまう。これにより、伝熱板100の熱交換効率の低下を招来するという問題があった。
【0007】
このような観点から本発明は、少なくとも一部が湾曲した熱媒体用管を備える場合であっても、伝熱板の熱交換効率が高く、かつ、容易に製造することができる伝熱板の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために本発明は、凹溝が形成された第一金属部材と、凹溝が形成された第二金属部材とを前記凹溝同士で中空の空間部が形成されるように重ね合わるとともに、前記空間部に熱媒体用管を挿入する準備工程と、前記準備工程で形成された仮組構造体の表面及び裏面の少なくとも一方の面から挿入した流入攪拌用回転ツールを前記空間部に沿って移動させ、前記熱媒体用管の周囲に形成された空隙部に摩擦熱によって流動化させた塑性流動材を流入させる流入攪拌工程と、を含み、前記空間部の幅及び高さの少なくとも一方が、前記熱媒体用管の外径よりも大きいことを特徴とする。
【0009】
かかる製造方法によれば、凹溝同士で形成された空間部の幅及び高さの少なくともいずれか一方が、前記熱媒体用管の外径よりも大きいため、熱媒体用管の一部が湾曲していても、準備工程を容易に行うことができる。また、流入攪拌工程により、熱媒体用管の周囲に形成された空隙部に塑性流動材を流入させることで、当該空隙部を埋めることができるため、熱媒体用管とその周囲の第一金属部材及び第二金属部材との間で熱を効率よく伝達することができる。これにより、熱交換効率の高い伝熱板を製造することができ、例えば、熱媒体用管に冷却水を通して伝熱板及び冷却対象物を効率的に冷却できる。
【0010】
また本発明は、凹溝が形成された第一金属部材と第二金属部材とを、前記凹溝と前記第二金属部材の裏面とで中空の空間部が形成されるように重ね合わせるとともに、前記空間部に熱媒体用管を挿入する準備工程と、前記準備工程で形成された仮組構造体の表面及び裏面のうち少なくとも一方の面から挿入した流入攪拌用回転ツールを前記空間部に沿って移動させ、前記熱媒体用管の周囲に形成された空隙部に摩擦熱によって流動化させた塑性流動材を流入させる流入攪拌工程と、を含み、前記空間部の幅及び高さの少なくとも一方が、前記熱媒体用管の外径よりも大きいことを特徴とする。
【0011】
かかる製造方法によれは、第一金属部材の凹溝と第二金属部材の裏面とで形成された空間部の幅及び高さの少なくとも一方が、前記熱媒体用管の外径よりも大きいため、熱媒体用管の一部が湾曲していても、準備工程を容易に行うことができる。また、流入攪拌工程により、熱媒体用管の周囲に形成された空隙部に塑性流動材を流入させることで、当該空隙部を埋めることができるため、熱媒体用管とその周囲の第一金属部材及び第二金属部材との間で熱を効率よく伝達することができる。これにより、熱交換効率の高い伝熱板を製造することができ、例えば、熱媒体用管に冷却水を通して伝熱板及び冷却対象物を効率的に冷却できる。
【0012】
また、前記流入攪拌工程では、前記流入攪拌用回転ツールの先端と、前記熱媒体用管に接する仮想鉛直面との最近接距離を1〜3mmに設定することが好ましい。また、前記流入攪拌工程では、前記流入攪拌用回転ツールの先端を、前記第一金属部材と前記第二金属部材とを突き合わせて形成された突合部よりも深く挿入することが好ましい。かかる製造方法によれば、空隙部に塑性流動材を確実に流入させることができる。
【0013】
また、前記第一金属部材と前記第二金属部材とを突き合わせて形成された突合部に沿って摩擦攪拌接合を行う接合工程を含むことが好ましい。また、前記接合工程では、前記突合部に沿って間欠的に摩擦攪拌接合を行うことが好ましい。
【0014】
かかる製造方法によれば、第一金属部材及び第二金属部材を固定した状態で流入攪拌工程を行うことができるため、流入攪拌工程の作業性を高めることができる。
【0015】
また、前記流入攪拌用回転ツールよりも小型の回転ツールを用いて前記接合工程を行うことが好ましい。かかる製造方法によれば、流入攪拌工程では深い部分まで塑性流動化することができるとともに、接合工程での摩擦攪拌接合における塑性化領域は小さくて済むので、接合作業が容易になる。
【0016】
また、前記第一金属部材と前記第二金属部材とを突き合せて形成された突合部に沿って溶接を行う溶接工程を含むことが好ましい。また、前記溶接工程では、前記突合部に沿って間欠的に溶接を行うことが好ましい。
【0017】
かかる製造方法によれば、第一金属部材及び第二金属部材を固定した状態で流入攪拌工程を行うことができるため、流入攪拌工程の作業性を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る伝熱板の製造方法によれば、熱媒体用管の一部が湾曲している場合であっても、伝熱板を容易に製造することができるとともに、熱交換効率の高い伝熱板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[第一実施形態]
本発明の最良の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、第一実施形態に係る伝熱板を示した斜視図である。図2は、第一実施形態に係る伝熱板を示した分解斜視図である。図3の(a)は、第一実施形態に係る伝熱板を示した分解断面図であり、(b)は、第一実施形態に係る第一金属部材に熱媒体用管と第二金属部材を配置した断面図である。図4は、第一実施形態に係る伝熱板を示した断面図である。なお、説明における上下左右前後は、特に断りのない限り図1の矢印に従う。
【0020】
第一実施形態に係る伝熱板1は、図1乃至図4に示すように、厚板形状の第一金属部材2と、第一金属部材2の上に配置される第二金属部材3と、第一金属部材2と第二金属部材3の間に挿入される熱媒体用管4とを主に備えている。熱媒体用管4は、平面視U字状を呈するように湾曲して形成されている。
【0021】
第一金属部材2と第二金属部材3は、図1及び図4に示すように、摩擦攪拌接合により生成された塑性化領域W1,W2によって一体形成されている。ここで、「塑性化領域」とは、回転ツールの摩擦熱によって加熱されて現に塑性化している状態と、回転ツールが通り過ぎて常温に戻った状態の両方を含むこととする。一方、第二金属部材3の表面3aには、塑性化領域W3,W4が形成されている。さらに、第一金属部材2の裏面2bには塑性化領域W5,W6が形成されている。
【0022】
第一金属部材2は、例えば、アルミニウム合金(JIS:A6061)で形成されている。第一金属部材2は、熱媒体用管4に流れる熱媒体の熱を外部に伝達させる役割、あるいは、外部の熱を熱媒体用管4に流れる熱媒体に伝達させる役割を果たす。図3に示すように、第一金属部材2の表面2aには、熱媒体用管4の一方側(下半部)を収容する第一凹溝5が凹設されている。
【0023】
第一凹溝5は、熱媒体用管4の下半部を収容する部分であって、平面視U字状を呈し、上方が開口するように断面視矩形に形成されている。第一凹溝5は、底面5cと、底面5cから垂直に立ち上がる立面5a,5bを備えている。
【0024】
第二金属部材3は、図2及び図3に示すように、第一金属部材2と同様のアルミニウム合金からなり、第一金属部材2と略同じ矩形断面に形成されている。第二金属部材3の両端面は、第一金属部材2の両端面と面一に形成されている。また、第二金属部材3の両側面3c,3dは、第一金属部材2の両側面2c,2dとそれぞれ面一に形成されている。第二金属部材3の裏面3bには、平面視U字状を呈し、第一凹溝5に重ね合わされる位置に対応して第二凹溝6が形成されている。
【0025】
第二凹溝6は、図3の(a)及び(b)に示すように、熱媒体用管4の他方側(上半部)を収容する部分であって、下方が開口するように断面視矩形に形成されている。第二凹溝6は、天面6cと天面6cから垂直に立ち下がる立面6a,6bを備えている。
【0026】
熱媒体用管4は、図2及び図3に示すように、平面視U字状を呈する円筒管である。熱媒体用管4の材質は特に制限されるものではないが、本実施形態では銅製としている。熱媒体用管4は、中空部4aに、例えば高温液、高温ガスなどの熱媒体を循環させて、第一金属部材2及び第二金属部材3に熱を伝達させる部材、あるいは中空部4aに、例えば冷却水、冷却ガスなどの熱媒体を循環させて、第一金属部材2及び第二金属部材3から熱を伝達される部材である。なお、熱媒体用管4の中空部4aに、例えばヒーターを通して、ヒーターから発生する熱を第一金属部材2及び第二金属部材3に伝達させる部材として利用してもよい。
【0027】
図3の(b)に示すように、第一金属部材2に第二金属部材3を配置すると、第一金属部材2の第一凹溝5と第二金属部材3の第二凹溝6とが合わさり、断面視矩形の空間部Kが形成される。空間部Kには、熱媒体用管4が収容される。
【0028】
ここで、第一凹溝5の深さは、熱媒体用管4の外径の1/2に形成されている。また、第一凹溝5の幅は、熱媒体用管4の外径の1.1倍となるように形成されている。一方、第二凹溝6の深さは、熱媒体用管4の半径の1.1倍に形成されている。また、第二凹溝6の幅は、熱媒体用管4の外径の1.1倍に形成されている。したがって、第一金属部材2に熱媒体用管4及び第二金属部材3を配置すると、第一凹溝5と熱媒体用管4の下端は接触し、熱媒体用管4の左右端及び上端は、第一凹溝5及び第二凹溝6と微細な隙間をあけて離間する。言い換えると、空間部Kの幅及び高さは、熱媒体用管4の外径よりも大きく形成されている。
【0029】
矩形断面の空間部K内に、円形断面の熱媒体用管4を挿入しているため、熱媒体用管4の周囲には、空隙部が形成される。例えば、図2に示すように、熱媒体用管4内を流れる媒体の流動方向を「Y」とすると、熱媒体用管4の周囲に形成される空隙部のうち、流動方向Yに対して左上側に形成される部分を「第一空隙部P1」とし、右上側に形成される部分を「第二空隙部P2」とし、左下側に形成される部分を「第三空隙部P3」とし、右下側に形成される部分を「第四空隙部P4」とする。また、第一金属部材2、第二金属部材3及び熱媒体用管4からなる部材を「仮組構造体U」とする。
【0030】
また、図3の(b)に示すように、第一金属部材2と第二金属部材3とが突き合わされて突合部Vが形成される。突合部Vのうち、仮組構造体Uの一方の側面に現われ部分を「突合部V1」とし、他方の側面に現れる部分を「突合部V2」とする。
【0031】
塑性化領域W1,W2は、図1及び図4に示すように、突合部V1,V2に摩擦攪拌接合を施した際に、第一金属部材2及び第二金属部材3の一部が塑性流動して一体化された領域である。即ち、突合部V1,V2に沿って、後記する接合用回転ツール50(図5参照)を用いて摩擦攪拌接合を行うと、突合部V1,V2にかかる第一金属部材2及び第二金属部材3の金属材料が、接合用回転ツール50の摩擦熱により流動化して一体化されることで、第一金属部材2と第二金属部材3が接合される。
【0032】
塑性化領域W3,W4は、図1及び図4に示すように、第二金属部材3の表面3a側から挿入した流入攪拌用回転ツール55(図5参照)を第二凹溝6に沿って移動させた際に形成されたものである。塑性化領域W3の一部は、熱媒体用管4の周囲に形成された第一空隙部P1に流入している。塑性化領域W4の一部は、熱媒体用管4の周囲に形成された第二空隙部P2に流入している。即ち、塑性化領域W3,W4は、第二金属部材3の一部が塑性流動して、第一空隙部P1及び第二空隙部P2にそれぞれ流入して一体化された領域であって、熱媒体用管4と接触している。
【0033】
塑性化領域W5,W6は、第一金属部材2の裏面2b側から挿入した流入攪拌用回転ツール55を第一凹溝5に沿って移動させた際に形成されたものである。塑性化領域W5の一部は、熱媒体用管4の周囲に形成された第三空隙部P3に流入している。塑性化領域W6は、熱媒体用管4の周囲に形成された第四空隙部P4に流入している。即ち、塑性化領域W5,W6は、第一金属部材2及び第二金属部材3の一部が塑性流動して、第三空隙部P3、第四空隙部P4にそれぞれ流入して一体化する領域であって、熱媒体用管4と接触する。
【0034】
次に、伝熱板1の製造方法について、図5乃至図7を用いて説明する。図5は、第一実施形態に係る伝熱板の製造方法を示した断面図であって、(a)は、切削工程、(b)は、挿入工程及び配置工程、(c)は、接合工程、(d)は、第一表面側流入攪拌工程を示した図である。図6は、第一実施形態に係る伝熱板の製造方法を示した断面図であって、(a)は、第二表面側流入攪拌工程、(b)は、第一裏面側流入攪拌工程、(c)は、第二裏面側流入攪拌工程を示した図である。図7は、第一実施形態に係る第一表面側流入攪拌工程を示した模式断面図である。
【0035】
第一実施形態に係る伝熱板の製造方法は、第一金属部材2及び第二金属部材3を形成するとともに、第一金属部材2に熱媒体用管4及び第二金属部材3を配置する準備工程と、突合部V1,V2に沿って接合用回転ツール50を移動させて摩擦攪拌接合を行う接合工程と、第二金属部材3の表面3a側及び第一金属部材2の裏面2b側から流入攪拌用回転ツール55を移動させて第一空隙部P1〜第四空隙部P4に塑性流動材Qを流入させる流入攪拌工程とを含む。
【0036】
(準備工程)
準備工程は、第一金属部材2及び第二金属部材3を形成する切削工程と、第一金属部材2に形成された第一凹溝5に熱媒体用管4を挿入する挿入工程と、第一金属部材2に第二金属部材3を配置する配置工程とを含む。
【0037】
切削工程では、図5の(a)に示すように、公知の切削加工により、厚板部材に断面視矩形を呈する第一凹溝5を形成する。これにより、上方に開口する第一凹溝5を備えた第一金属部材2が形成される。
また、切削工程では、公知の切削加工により、板厚部材に断面視矩形を呈する第二凹溝6形成する。これにより、下方に開口する第二凹溝6を備えた第二金属部材3が形成される。
なお、第一実施形態においては、第一金属部材2及び第二金属部材3を切削加工により形成したが、アルミニウム合金製の押出形材や鋳造品を用いてもよい。
【0038】
挿入工程では、図5の(b)に示すように、第一凹溝5に熱媒体用管4を挿入する。このとき、熱媒体用管4の下半部は、第一凹溝5の底面5cと接触し、第一凹溝5の立面5a,5bとは微細な隙間をあけて離間する。
【0039】
配置工程では、図5の(b)に示すように、熱媒体用管4の上半部を第二金属部材3に形成された第二凹溝6に挿入しつつ、第一金属部材2上に第二金属部材3を配置する。これにより、第一金属部材2、第二金属部材3及び熱媒体用管4からなる仮組構造体Uが形成される。このとき、熱媒体用管4と、第二金属部材3の裏面3bに形成された第二凹溝6の両立面6a,6b及び天面6cとは微細な隙間をあけて離間する。また、第一金属部材2と第二金属部材3とが突き合わされて突合部V1,V2が形成される。
【0040】
(接合工程)
次に、図5の(c)に示すように、仮組構造体Uのうち突合部V1が現れる面を上にした後、突合部V1沿って摩擦攪拌接合を行う。摩擦攪拌接合は、接合用回転ツール50(公知の回転ツール)を用いて行う。接合用回転ツール50は、例えば、工具鋼からなり、円柱形のツール本体51と、ツール本体51の底面52の中心部から同心軸で垂下するピン53とを有する。ピン53は、先端に向けて幅狭となるテーパ状に形成されている。なお、ピン53の周面には、その軸方向に沿って図示しない複数の小溝や径方向に沿ったネジ溝が形成されていてもよい。
【0041】
摩擦攪拌接合は、第一金属部材2及び第二金属部材3を図示しない治具により拘束した状態で、突合部V1に高速回転する接合用回転ツール50を押し込み、突合部V1に沿って移動させる。高速回転するピン53により、その周囲の第一金属部材2及び第二金属部材3のアルミニウム合金材料は、摩擦熱によって加熱され流動化した後に冷却されて一体化する。突合部V1に対して摩擦攪拌接合を行ったら、突合部V2に対しても同様に摩擦攪拌接合を行う。
【0042】
(流入攪拌工程)
流入攪拌工程では、図5の(d)、図6の(a)乃至(c)に示すように、第一金属部材2、熱媒体用管4及び第二金属部材3からなる仮組構造体Uの表面及び裏面から流入攪拌用回転ツール55を移動させて第一空隙部P1〜第四空隙部P4に塑性流動材Qを流入させる。本実施形態に係る流入攪拌工程は、第二金属部材3の表面3aで流入攪拌用回転ツール55を移動させて第一空隙部P1及び第二空隙部P2に塑性流動材Qを流入させる表面側流入攪拌工程と、第一金属部材2の裏面2bで流入攪拌用回転ツール55を移動させて第三空隙部P3及び第四空隙部P4に塑性流動材Qを流入させる裏面側流入攪拌工程を含むものである。
【0043】
なお、表面側流入攪拌工程のうち、第一空隙部P1に塑性流動材Qを流入させる工程を第一表面側流入攪拌工程とし、第二空隙部P2に塑性流動材Qを流入させる工程を第二表面側流入攪拌工程とする。また、第三空隙部P3に塑性流動材Qを流入させる工程を第一裏面側流入攪拌工程とし、第四空隙部P4に塑性流動材Qを流入させる工程を第二裏面側流入攪拌工程とする。
【0044】
第一表面側流入攪拌工程では、図5の(d)に示すように、熱媒体用管4の流動方向Y(図2参照)に対して左上側に形成された第一空隙部P1に、摩擦攪拌によって流動化させた塑性流動材Qを流入させる。流入攪拌用回転ツール55は、例えば、工具鋼からなり、接合用回転ツール50と同等の形状を有しており、円柱形のツール本体56と、ツール本体56の底面57の中心部から同心軸で垂下するピン58とを有する。流入攪拌用回転ツール55は、接合用回転ツール50よりも大型のものを使用している。
【0045】
第一表面側流入攪拌工程では、第二金属部材3の表面3aで、高速回転する流入攪拌用回転ツール55を押し込み、下方の第二凹溝6に沿って平面視U字状の軌跡となるように流入攪拌用回転ツール55を移動させる。流入攪拌用回転ツール55は、ツール本体56の底面57(ショルダ)の投影部分の一部が第一空隙部P1と重なるように移動させる。このとき、高速回転するピン58により、その周囲の第二金属部材3のアルミニウム合金材料は、摩擦熱によって加熱され流動化される。流入攪拌用回転ツール55が、所定の深さで押し込まれているため、塑性流動化された塑性流動材Qは、第一空隙部P1に流入し、熱媒体用管4と接触する。
【0046】
ここで、図3の(b)に示すように、熱媒体用管4の左右端及び上端は、第一凹溝5及び第二凹溝6と微細な隙間をあけて配置されているが、塑性流動材Qが第一空隙部P1に流れ込むと、塑性流動材Qの熱が熱媒体用管4に奪われるため流動性が低下する。したがって、第一空隙部P1に流入した塑性流動材Qは、第二空隙部P2及び第三空隙部P3には流入せずに、第一空隙部P1に留まって充填され、硬化する。
【0047】
第二表面側流入攪拌工程では、図6の(a)に示すように、熱媒体用管4の流動方向Y(図2参照)に対して右上側に形成された第二空隙部P2に摩擦攪拌によって流動化された塑性流動材Qを流入させる。第二表面側流入攪拌工程は、第二空隙部P2に行うことを除いては、第一表面側流入攪拌工程と同等であるため説明を省略する。なお、表面側流入攪拌工程が終了したら、第二金属部材3の表面3aに形成されたバリを切削除去して表面3aを平滑にするのが好ましい。
【0048】
裏面側流入攪拌工程では、図6の(b)及び(c)に示すように、仮組構造体Uの表裏を逆にした後、第一金属部材2の裏面2bで第一凹溝5に沿って流入攪拌用回転ツール55を移動させて第三空隙部P3及び第四空隙部P4に摩擦熱によって流動化させた塑性流動材Qを流入させる。
【0049】
第一裏面側流入攪拌工程では、図6の(b)に示すように、摩擦攪拌によって流動化させた塑性流動材Qを第三空隙部P3に流入させる。第一裏面側流入攪拌工程では、第一金属部材2の裏面2bで高速回転する流入攪拌用回転ツール55を押し込み、第一凹溝5に沿って平面視U字状の軌跡となるように流入攪拌用回転ツール55を移動させる。流入攪拌用回転ツール55は、ツール本体56の底面57(ショルダ)の投影部分の一部が熱媒体用管4の第三空隙部P3と重なるように移動させる。このとき、高速回転するピン58により、その周囲の第一金属部材2のアルミニウム合金材料は、摩擦熱によって加熱され流動化される。流入攪拌用回転ツール55が、所定の深さで押し込まれているため、塑性流動化された塑性流動材Qは、第三空隙部P3に流入し、熱媒体用管4と接触する。
【0050】
第二裏面側流入攪拌工程では、図6の(c)に示すように、摩擦攪拌によって流動化された塑性流動材Qを第四空隙部P4に流入させる。第二裏面側流入攪拌工程は、第四空隙部P4に行うことを除いては、第一裏面側流入攪拌工程と同等であるため、説明を省略する。裏面側流入攪拌工程が終了したら、第一金属部材2の裏面2bに形成されたバリを切削除去して裏面2bを平滑にするのが好ましい。
【0051】
なお、表面側流入攪拌工程及び裏面側流入攪拌工程では、第一空隙部P1〜第四空隙部P4の形状や大きさ等に基づいて、流入攪拌用回転ツール55の押込み量及び挿入位置等を設定する。熱媒体用管4がつぶれない程度に、流入攪拌用回転ツール55を近づけて、第一空隙部P1〜第四空隙部P4に塑性流動材Qを隙間なく流入させることが好ましい。
【0052】
例えば、図7に示すように、流入攪拌用回転ツール55のピン58の先端を、第二凹溝6の天面6c(裏面側流入攪拌工程の場合は第一凹溝5の底面5c)よりも深く挿入するとともに、流入攪拌用回転ツール55のピン58の先端と、熱媒体用管4に接する仮想鉛直面との最近接距離Lが1〜3mmであることが好ましい。これにより、熱媒体用管4を潰さない程度に第一空隙部P1に塑性流動材Qを確実に流入させることができる。最近接距離Lが1mmより小さいと、流入攪拌用回転ツール55が熱媒体用管4に近すぎて、熱媒体用管4が潰れる可能性がある。また、最近接距離Lが3mmより大きいと、第一空隙部P1に塑性流動材Qが流入しない可能性がある。
【0053】
また、流入攪拌用回転ツール55の押込み量(押込み長さ)は、例えば第一表面側流入攪拌工程において、ツール本体56が押し退ける第二金属部材3(又は第一金属部材2)の金属の体積が、第一空隙部P1に充填される塑性流動化されたアルミニウム合金材料の体積、及び塑性化領域W3の幅方向両側に発生するバリの体積との和と同等になるような長さとなっている。
【0054】
以上説明した伝熱板の製造方法によれば、第一金属部材2の表面2aに形成された第一凹溝5と、第二金属部材3の裏面3bに形成された第二凹溝6からなる空間部Kにおいて、空間部Kの幅及び高さを熱媒体用管4の外径よりも大きく形成したため、熱媒体用管4の一部が湾曲している場合であっても、前記した挿入工程及び配置工程を容易に行うことができる。
【0055】
また、表面側流入攪拌工程及び裏面側流入攪拌工程により、熱媒体用管4の周囲に形成された第一空隙部P1〜第四空隙部P4に塑性流動材Qを流入させることで、当該空隙部を埋めることができるため、伝熱板1の熱交換効率を高めることができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、表面側流入攪拌工程の前に、比較的小さい接合用回転ツール50を用いて、第一金属部材2と第二金属部材3とを接合しているので、表面側流入攪拌工程では、第二金属部材3が確実に固定された状態で摩擦攪拌を行うことができる。したがって、比較的大きい流入攪拌用回転ツール55を用いて大きい押込み力が作用する摩擦攪拌接合を、安定した状態で行うことができる。
【0057】
なお、本実施形態では、接合工程の後に表面側流入攪拌工程を行っているが、表面側流入攪拌工程の後に接合工程を行うようにしてもよい。このとき、第一金属部材2及び第二金属部材3を幅方向及び長手方向から図示しない治具を用いて固定しておけば、表面側流入攪拌工程における摩擦攪拌を安定した状態で行うことができる。
【0058】
また、本実施形態では、接合工程において、突合部V1,V2の全長に亘って、摩擦攪拌接合を施しているが、これに限定されるものではなく、突合部V1,V2に沿って所定の間隔を隔てて摩擦攪拌接合を間欠的に行って、第一金属部材2と第二金属部材3とを仮付けを施すようにしてもよい。このような伝熱板の製造方法によれば、接合工程に要する手間と時間を低減しつつ、第一金属部材2と第二金属部材3とを確実に固定した状態で表面側流入攪拌工程を行うことができるとともに、前記した作用効果と同様に、加工環境が良好で精度の高い伝熱板を製造することができる。
【0059】
また、本実施形態では、空間部Kの幅及び高さの両方を熱媒体用管4の外径よりも大きく形成しているが、いずれか一方を大きく形成すればよい。また、熱媒体用管4の断面形状は本実施形態では円形としているが、他の形状であってもよい。また、熱媒体用管4の平面視形状を本実施形態ではU字状としているが、例えば蛇行状や、円形状としてもよい。また、前記した第一凹溝5及び第二凹溝6の幅や深さ寸法はあくまで例示であって、本発明を限定するものではない。例えば、熱媒体用管4の平面視の形状が複雑になる場合は、それに伴って第一凹溝5及び第二凹溝6の幅や深さを適宜大きくしてもよい。また、本実施形態では、第一金属部材2に熱媒体用管4及び第二金属部材3を配置するようにしたが、これに限定されるものではない。例えば、第二金属部材3の第二凹溝6に熱媒体用管4を挿入した後、第二金属部材3の上方から第一金属部材2を覆うように配置してもよい。
【0060】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態に係る伝熱板の製造方法は、裏面側流入攪拌工程を行っていない点などで第一実施形態と相違する。
【0061】
図8は、第二実施形態に係る伝熱板の製造方法を示した断面図であって、(a)は、切削工程、(b)は、挿入工程及び配置工程を示した図である。図9は、第二実施形態に係る伝熱板の製造方法を示した断面図であって、(a)は、接合工程、(b)は、第一表面側流入攪拌工程、(c)は、第二表面側流入攪拌工程を示す。また、具体的な図示はしないが、熱媒体用管4は、第一実施形態と同様に平面視U字状を呈するものとする。
【0062】
第二実施形態に係る伝熱板の製造方法は、図8及び図9に示すように、第一金属部材12及び第二金属部材13を形成するとともに、第一金属部材12に熱媒体用管4及び第二金属部材13を配置する準備工程と、突合部V1,V2に沿って接合用回転ツール50を移動させて摩擦攪拌接合を行う接合工程と、第二金属部材13の表面13aで、流入攪拌用回転ツール55を移動させて第一空隙部P1及び第二空隙部P2に塑性流動材Qを流入させる表面側流入攪拌工程を含むものである。
【0063】
(準備工程)
準備工程は、第一金属部材12及び第二金属部材13を形成する切削工程と、第一金属部材12に形成された第一凹溝15に熱媒体用管4を挿入する挿入工程と、第一金属部材12に第二金属部材13を配置する配置工程を含む。
【0064】
切削工程では、図8の(a)に示すように、公知の切削加工により、板厚部材に断面視U字状を呈する第一凹溝15を切り欠いて第一金属部材12を形成する。第一凹溝15の底部15aは円弧状に切り欠かれており、熱媒体用管4と同等の曲率で形成されている。第一凹溝15の深さは、熱媒体用管4の外径よりも小さく形成されており、第一凹溝15の幅は熱媒体用管4の外径と略同等に形成されている。
【0065】
次に、公知の切削加工により、板厚部材に断面視矩形を呈する第二凹溝16を切り欠いて第二金属部材13を形成する。第二凹溝16の幅は、熱媒体用管4の外径と略同等に形成されている。また、第二凹溝16の深さは、図8の(b)に示すように、第一金属部材12に熱媒体用管4及び第二金属部材13を配置したときに、第二凹溝16の天面16cと熱媒体用管4とが微細な隙間をあけて離間するように形成されている。
【0066】
挿入工程では、図8の(b)に示すように、第一凹溝15に熱媒体用管4を挿入する。このとき、熱媒体用管4の下半部は、第一凹溝15の底部15aと面接触する。なお、熱媒体用管4を第一凹溝15に挿入すると、熱媒体用管4の上端は、第一金属部材12の表面12aよりも上方に位置する。
【0067】
配置工程では、図8の(b)に示すように、熱媒体用管4の上部を第二金属部材13に形成された第二凹溝16に挿入しつつ、第一金属部材12に第二金属部材13を配置する。このとき、熱媒体用管4と、第二金属部材13形成された第二凹溝16の両立面16a,16b及び天面16cとは微細な隙間をあけて離間する。即ち、第一凹溝15と第二凹溝16とで形成された空間部K1の幅は、熱媒体用管4の外径と略同等に形成されており、空間部K1の高さHは、熱媒体用管4の外径よりも大きく形成されている。
【0068】
ここで、空間部K1において、熱媒体用管4の周囲に形成される空隙部のうち、流動方向Y(図2参照)に対して左上側に形成される部分を第一空隙部P1とし、右上に形成される部分を第二空隙部P2とする。
【0069】
(接合工程)
接合工程では、図9の(a)に示すように、第一金属部材12と第二金属部材13との突合せ部である突合部V1,V2(図8の(b)参照)に沿って接合用回転ツール50を用いて摩擦攪拌接合を行う。これにより、第一金属部材12と第二金属部材13とを接合することができる。
【0070】
(表面側流入攪拌工程)
表面側流入攪拌工程では、図9の(b)及び(c)に示すように、第二金属部材13の表面13a側から第二凹溝16に沿って摩擦攪拌を行う。表面側流入攪拌工程は、本実施形態では、第一空隙部P1に塑性流動材Qを流入させる第一表面側流入攪拌工程と、第二空隙部P2に塑性流動材Qを流入させる第二表面側流入攪拌工程とを含む。
【0071】
第一表面側流入攪拌工程では、第二金属部材13の表面13a側から高速回転する流入攪拌用回転ツール55を押し込み、第二凹溝16に沿って平面視U字状を呈するように、流入攪拌用回転ツール55を移動させる。流入攪拌用回転ツール55は、ツール本体56の底面57(ショルダ)の投影部分の一部が第一空隙部P1と重なるように移動させる。
【0072】
このとき、高速回転するピン58により、その周囲の第一金属部材12及び第二金属部材13のアルミニウム合金材料は、摩擦熱によって加熱され流動化される。第二実施形態では、流入攪拌用回転ツール55の先端が、第一金属部材12と第二金属部材13との突合部Vよりも下方に位置するように押し込まれているため、塑性流動化された塑性流動材Qは、第一空隙部P1に確実に流入し熱媒体用管4と接触する。
【0073】
ここで、図9の(b)に示すように、熱媒体用管4の上端は、第二凹溝16と微細な隙間をあけて配置されているが、塑性流動材Qが第一空隙部P1に流れ込むと、塑性流動材Qの熱が熱媒体用管4に奪われるため流動性が低下する。したがって、塑性流動材Qは、第二空隙部P2には流入せずに、第一空隙部P1に留まって充填され、硬化する。
【0074】
第二表面側流入攪拌工程では、図9の(c)に示すように、熱媒体用管4の流動方向Y(図2参照)に対して右上側に形成された第二空隙部P2に摩擦攪拌によって流動化された塑性流動材Qを流入させる。第二表面側流入攪拌工程は、第二空隙部P2に行うことを除いては、第一表面側流入攪拌工程と同等であるため説明を省略する。なお、表面側流入攪拌工程が終了したら、第二金属部材13の表面13aに形成されたバリを切削除去して表面13aを平滑にするのが好ましい。
【0075】
以上説明した伝熱板の製造方法によれば、第一金属部材12に形成された第一凹溝15と、第二金属部材13に形成された第二凹溝16からなる空間部K1において、空間部K1の高さを熱媒体用管4の外径よりも大きく形成したため、熱媒体用管4の一部が湾曲している場合であっても、前記した配置工程を容易に行うことができる。
また、表面側流入攪拌工程により、熱媒体用管4の周囲に形成された第一空隙部P1及び第二空隙部P2に塑性流動材Qを流入させることで、当該空隙部を埋めることができるため、伝熱板の熱交換効率を高めることができる。
【0076】
なお、本実施形態では、第一凹溝15の幅を熱媒体用管4の外径と略同等に形成したが、これに限定されるものではなく、第一凹溝15の幅を熱媒体用管4の外径よりも大きく形成してもよい。また、第一凹溝15の底部15aの曲率を熱媒体用管4の曲率よりも小さくなるように形成してもよい。これにより、熱媒体用管4を挿入する挿入工程や、第二金属部材13を配置する配置工程を容易に行うことができる。
【0077】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態について説明する。第三実施形態に係る伝熱板の製造方法は、第一凹溝25及び第二凹溝26が共に曲面で形成されている点で第一実施形態と相違する。図10は、第三実施形態に係る伝熱板の製造方法を示した断面図であって、(a)は、切削工程、(b)は、接合工程、(c)は、表面側流入攪拌工程を示す。なお、具体的な図示はしないが、熱媒体用管4は、第一実施形態と同様に平面視U字状を呈するものとする。
【0078】
第三実施形態に係る伝熱板の製造方法は、図10に示すように、第一金属部材22及び第二金属部材23を形成するとともに、第一金属部材22に熱媒体用管4及び第二金属部材23を配置する準備工程と、突合部V1,V2に沿って接合用回転ツール50を移動させて摩擦攪拌接合を行う接合工程と、第二金属部材23の表面23aで、第二凹溝26に沿って流入攪拌用回転ツール55を移動させて熱媒体用管4の周囲に形成された第一空隙部P1及び第二空隙部P2に摩擦熱によって流動化させた塑性流動材Qを流入させる表面側流入攪拌工程を含むものである。
【0079】
(準備工程)
準備工程は、第一金属部材22及び第二金属部材23を形成する切削工程と、第一金属部材22に形成された第一凹溝25に熱媒体用管4を挿入する挿入工程と、第一金属部材22に第二金属部材23を配置する配置工程を含む。
【0080】
切削工程では、図10の(a)に示すように、公知の切削加工により、板厚部材に断面視半円形状を呈する第一凹溝25を切り欠いて第一金属部材22を形成する。第一凹溝25の半径は、熱媒体用管4の半径と同等に形成されている。
また、同様に板厚部材に断面視矩形を呈する第二凹溝26を切り欠いて第二金属部材23を形成する。第二凹溝26は、下方に向けて開口しており、開口部の幅は、熱媒体用管4の外径と略同等に形成されている。また、第二凹溝26の天面26cの曲率は、熱媒体用管4の曲率よりも大きくなるように形成されている。
【0081】
挿入工程では、図10の(b)に示すように、第一凹溝25に熱媒体用管4の下半部を挿入する。熱媒体用管4の下半部は、第一凹溝25に面接触する。
【0082】
配置工程では、図10の(b)に示すように、熱媒体用管4の上半部を第二金属部材23に形成された第二凹溝26に挿入しつつ、第一金属部材22に第二金属部材23を配置する。第一凹溝25と第二凹溝26とを重ね合わせて形成された空間部K2の高さHは、熱媒体用管4の外径よりも大きくなるように形成されている。
ここで、熱媒体用管4の周囲に形成される空隙部のうち、流動方向Y(図2参照)に対して左上側に形成される部分を第一空隙部P1とし、右上側に形成される部分を第二空隙部P2とする。
【0083】
(接合工程)
次に、図10の(b)に示すように、接合用回転ツール50(図5参照)を用いて突合部V1,V2に沿って摩擦攪拌接合を行う。これにより、第一金属部材22と第二金属部材23とを接合することができる。
【0084】
(表面側流入攪拌工程)
次に、図10の(c)に示すように、第二金属部材23の表面23a側から第二凹溝26に沿って摩擦攪拌を行う。表面側流入攪拌工程は、本実施形態では、第一空隙部P1に塑性流動材Qを流入させる第一表面側流入攪拌工程と、第二空隙部P2に塑性流動材Qを流入させる第二表面側流入攪拌工程とを含む。
【0085】
第一表面側流入攪拌工程における摩擦攪拌では、第二金属部材23の表面23a側から高速回転する流入攪拌用回転ツール55を押し込み、第二凹溝26に沿って平面視U字状を呈するように、流入攪拌用回転ツール55を移動させる。流入攪拌用回転ツール55は、ツール本体56の底面57(ショルダ)の投影部分の一部が第一空隙部P1と重なるように移動する。このとき、高速回転するピン58により、その周囲の第二金属部材23のアルミニウム合金材料は、摩擦熱によって加熱され流動化される。流入攪拌用回転ツール55は、所定の深さで押し込まれているため、塑性流動化された塑性流動材Qが第一空隙部P1に流入し熱媒体用管4と接触する。
【0086】
第二表面側流入攪拌工程では、熱媒体用管4の流動方向Y(図2参照)に対して右上側に形成された第二空隙部P2に摩擦攪拌によって流動化された塑性流動材Qを流入させる。第二表面側流入攪拌工程は、第二空隙部P2に行うことを除いては、第一表面側流入攪拌工程と同等であるため、説明を省略する。表面側流入攪拌工程が終了したら、第二金属部材23の表面23aに形成されたバリを切削除去して平滑にするのが好ましい。
【0087】
以上説明した伝熱板の製造方法によれば、第一凹溝25及び第二凹溝26をともに曲面となるように形成しても、第一凹溝25と第二凹溝26とで形成される空間部K2の高さHを熱媒体用管4の外径よりも大きく形成しているため、熱媒体用管4の一部が湾曲している場合であっても、前記した配置工程を容易に行うことができる。
また、表面側流入攪拌工程により、熱媒体用管4の周囲に形成された第一空隙部P1及び第二空隙部P2に塑性流動材Qを流入させることで、当該空隙部を埋めることができるため、伝熱板の熱交換効率を高めることができる。
【0088】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態について説明する。第四実施形態に係る伝熱板の製造方法は、第二金属部材に凹溝が形成されていない点で第一実施形態と相違する。
【0089】
図11は、第四実施形態に係る伝熱板の製造方法を示した断面図であって、(a)は、切削工程、(b)は、挿入工程及び配置工程、(c)は、表面側流入攪拌工程を示した図である。なお、具体的な図示はしないが、熱媒体用管4は、第一実施形態と同様に平面視U字状を呈するものとする。
【0090】
第四実施形態に係る伝熱板の製造方法は、図11に示すように、第一金属部材32及び第二金属部材33を形成するとともに、第二金属部材33に第一金属部材32を配置する準備工程と、突合部V1,V2に沿って接合用回転ツール50(図5参照)を移動させて摩擦攪拌接合を行う接合工程と、第二金属部材33の表面33a側及び第一金属部材32の裏面32b側から流入攪拌用回転ツール55を移動させて第一空隙部P1〜第四空隙部P4に塑性流動材Qを流入させる流入攪拌工程とを含む。
【0091】
(準備工程)
準備工程は、第一金属部材32及び第二金属部材33を形成する切削工程と、第一金属部材32に形成された第一凹溝35に熱媒体用管4を挿入する挿入工程と、第一金属部材32に第二金属部材33を配置する配置工程を含む。
【0092】
切削工程では、図11の(a)に示すように、公知の切削加工により、板厚部材に断面視矩形の第一凹溝35を切り欠いて第一金属部材32を形成する。第一凹溝35の深さは、熱媒体用管4の外径の1.1倍に形成されている。また、第一凹溝35の幅は、熱媒体用管4の外径の1.1倍に形成されている。
【0093】
挿入工程では、図11の(b)に示すように、第一金属部材32の第一凹溝35に熱媒体用管4を挿入する。
【0094】
配置工程では、図11の(b)に示すように、第一金属部材32の上方に第二金属部材33を配置する。即ち、第一凹溝35と第二金属部材33の底面(下面)33bとで形成された空間部K3に、熱媒体用管4が配置される。この際、図11の(b)に示すように、熱媒体用管4の下端は、第一凹溝35の底面35cと接触し、上端は、第二金属部材33の底面33bと離間する。
【0095】
(接合工程)
接合工程では、図11の(b)及び(c)に示すように、突合部V1,V2に沿って接合用回転ツール50(図5参照)を用いて摩擦攪拌接合を行う。接合工程については、前記した第一実施形態の接合工程と同様であるため詳細な説明を省略する。
【0096】
(流入攪拌工程)
流入攪拌工程では、第一金属部材32、熱媒体用管4及び第二金属部材33からなる仮組構造体Uの表面及び裏面から流入攪拌用回転ツール55を移動させて第一空隙部P1〜第四空隙部P4に塑性流動材Qを流入させる。
流入攪拌工程については第一実施形態に係る流入攪拌工程と略同等であるため詳細な説明を省略する
【0097】
以上説明した第四実施形態に係る製造方法によれば、第二金属部材33に凹溝を設けず、第一金属部材32のみに第一凹溝35を設ける場合であっても、第一凹溝35の幅及び深さを熱媒体用管4の外径より大きく形成することで、第一実施形態と略同等の効果を得ることができる。
【0098】
なお、第一凹溝35は、本実施形態では断面視矩形に形成したが、これに限定されるものではなく曲面を含むように形成してもよい。また、流入攪拌工程は、第一金属部材32、熱媒体用管4及び第二金属部材33からなる仮組構造体Uの表面及び裏面から行ったが、空間部K3と熱媒体用管4の形状によってはいずれか一方から行うだけでもよい。
【0099】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、これに限定されるものではなく本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、適宜変更が可能である。例えば、接合工程に替えて、溶接工程を行ってもよい。図12は、本実施形態に係る溶接工程を示した斜視図である。
【0100】
溶接工程では、前記準備工程で形成された仮組構造体(第一金属部材2、第二金属部材3及び熱媒体用管4)の側面に現れる突合部V(V1,V2)に沿って溶接を行う。溶接工程における溶接の種類は特に制限を受けないが、MIG溶接又はTIG溶接等の肉盛り溶接を行って、溶接金属Tで突合部V1,V2を覆うことが好ましい。このように、溶接工程を行うことで、第一金属部材2と第二金属部材3とを固定した状態で流入攪拌工程を行うことができるため、流入攪拌工程の作業性を高めることができる。なお、溶接工程では、突合部V1,V2の全長に亘って溶接を行ってもよいし、所定の間隔をあけて間欠的に行ってもよい。また、溶接工程では、突合部V1,V2に沿って溝を形成し、当該溝に溶接金属Tを充填させてもよい。
【0101】
また、前記した実施形態では、流入攪拌工程で使用する流入攪拌用回転ツール55を接合工程で使用する接合用回転ツール50よりも大型のものとしているが、接合工程で流入攪拌用回転ツール55を使用するようにしてもよい。このようにすれば、各工程で使用する回転ツールを統一することができ、回転ツールの交換時間を省略することができ、施工時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】第一実施形態に係る伝熱板を示した斜視図である。
【図2】第一実施形態に係る伝熱板を示した分解斜視図である。
【図3】(a)は、第一実施形態に係る伝熱板を示した分解断面図であり、(b)第一実施形態に係る第一金属部材に熱媒体用管と第二金属部材を配置した断面図である。
【図4】第一実施形態に係る伝熱板を示した断面図である。
【図5】第一実施形態に係る伝熱板の製造方法を示した断面図であって、(a)は、切削工程、(b)は、挿入工程及び配置工程、(c)は、接合工程、(d)は、第一表面側流入攪拌工程を示した図である。
【図6】第一実施形態に係る伝熱板の製造方法を示した断面図であって、(a)は、第二表面側流入攪拌工程、(b)は、第一裏面側流入攪拌工程、(c)は、第二裏面側流入攪拌工程を示した図である。
【図7】第一実施形態に係る第一表面側流入攪拌工程を示した模式断面図である。
【図8】第二実施形態に係る伝熱板の製造方法を示した断面図であって、(a)は、切削工程、(b)は、挿入工程及び配置工程を示した図である。
【図9】第二実施形態に係る伝熱板の製造方法を示した断面図であって、(a)は、接合工程、(b)は、第一表面側流入攪拌工程、(c)は、第二表面側流入攪拌工程を示す。
【図10】第三実施形態に係る伝熱板の製造方法を示した断面図であって、(a)は、切削工程、(b)は、接合工程、(c)は、表面側流入攪拌工程を示す。
【図11】第四実施形態に係る伝熱板の製造方法を示した断面図であって、(a)は、切削工程、(b)は、挿入工程及び配置工程、(c)は、表面側流入攪拌工程を示した図である。
【図12】本実施形態に係る溶接工程を示した斜視図である。
【図13】特許文献1に係る伝熱板を示した図であって、(a)は、斜視図、(b)は断面図である。
【0103】
1 伝熱板
2 第一金属部材
3 第二金属部材
4 熱媒体用管
5 第一凹溝
6 第二凹溝
50 接合用回転ツール
55 流入攪拌用回転ツール
K 空間部
L 最近接距離
P 空隙部
Q 塑性流動材
U 仮組構造体
V 突合部
W 塑性化領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば熱交換器や加熱機器あるいは冷却機器などに用いられる伝熱板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換、加熱あるいは冷却すべき対象物に接触し又は近接して配置される伝熱板は、例えば板厚の金属部材に高温液や冷却水などの熱媒体を循環させる熱媒体用管を挿通させて形成されている。
【0003】
かかる伝熱板の製造方法としては、例えば、特許文献1に記載された方法が知られている。図13は、特許文献1に係る伝熱板を示した図であって、(a)は、斜視図、(b)は断面図である。特許文献1に係る伝熱板100は、表面に開口する断面視矩形の蓋溝106と蓋溝106の底面に開口する凹溝108とを有する第一金属部材102と、凹溝108に挿入される熱媒体用管116と、蓋溝106に嵌合される第二金属部材110と、を備え、蓋溝106における両側壁105,105と第二金属部材110の両側面113,114とのそれぞれの突合せ面に沿って摩擦攪拌接合を施して形成されている。蓋溝106と第二金属部材110の突合せ面には、塑性化領域W0,W0が形成されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−314115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図13の(b)に示すように、伝熱板100には、凹溝108と熱媒体用管116の外側面と第二金属部材110の裏面とによって空隙部120が形成されているが、伝熱板100の内部に空隙部120が存在していると、熱媒体用管116から放熱された熱が第一金属部材102及び第二金属部材110に伝わりにくくなるため、伝熱板100の熱交換効率が低下するという問題があった。したがって、凹溝108の深さや幅を熱媒体用管116の外径と同一に形成して、空隙部120が小さくなるように形成することが好ましい。
【0006】
一方、熱媒体用管116の少なくとも一部を湾曲させて第一金属部材102及び第二金属部材110の内部に埋め込む場合には、凹溝108に熱媒体用管116を挿入し、蓋溝106に第二金属部材110を配置する作業が困難となるため、凹溝108の深さや幅を熱媒体用管116の外径よりも大きく確保しなければならない。即ち、熱媒体用管116の少なくとも一部を湾曲させて第一金属部材102及び第二金属部材110の内部に埋め込む場合は、熱媒体用管116の外径に比べて凹溝108の深さや幅を大きくせざるを得ず、それに伴って空隙部120が大きくなってしまう。これにより、伝熱板100の熱交換効率の低下を招来するという問題があった。
【0007】
このような観点から本発明は、少なくとも一部が湾曲した熱媒体用管を備える場合であっても、伝熱板の熱交換効率が高く、かつ、容易に製造することができる伝熱板の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために本発明は、凹溝が形成された第一金属部材と、凹溝が形成された第二金属部材とを前記凹溝同士で中空の空間部が形成されるように重ね合わるとともに、前記空間部に熱媒体用管を挿入する準備工程と、前記準備工程で形成された仮組構造体の表面及び裏面の少なくとも一方の面から挿入した流入攪拌用回転ツールを前記空間部に沿って移動させ、前記熱媒体用管の周囲に形成された空隙部に摩擦熱によって流動化させた塑性流動材を流入させる流入攪拌工程と、を含み、前記空間部の幅及び高さの少なくとも一方が、前記熱媒体用管の外径よりも大きいことを特徴とする。
【0009】
かかる製造方法によれば、凹溝同士で形成された空間部の幅及び高さの少なくともいずれか一方が、前記熱媒体用管の外径よりも大きいため、熱媒体用管の一部が湾曲していても、準備工程を容易に行うことができる。また、流入攪拌工程により、熱媒体用管の周囲に形成された空隙部に塑性流動材を流入させることで、当該空隙部を埋めることができるため、熱媒体用管とその周囲の第一金属部材及び第二金属部材との間で熱を効率よく伝達することができる。これにより、熱交換効率の高い伝熱板を製造することができ、例えば、熱媒体用管に冷却水を通して伝熱板及び冷却対象物を効率的に冷却できる。
【0010】
また本発明は、凹溝が形成された第一金属部材と第二金属部材とを、前記凹溝と前記第二金属部材の裏面とで中空の空間部が形成されるように重ね合わせるとともに、前記空間部に熱媒体用管を挿入する準備工程と、前記準備工程で形成された仮組構造体の表面及び裏面のうち少なくとも一方の面から挿入した流入攪拌用回転ツールを前記空間部に沿って移動させ、前記熱媒体用管の周囲に形成された空隙部に摩擦熱によって流動化させた塑性流動材を流入させる流入攪拌工程と、を含み、前記空間部の幅及び高さの少なくとも一方が、前記熱媒体用管の外径よりも大きいことを特徴とする。
【0011】
かかる製造方法によれは、第一金属部材の凹溝と第二金属部材の裏面とで形成された空間部の幅及び高さの少なくとも一方が、前記熱媒体用管の外径よりも大きいため、熱媒体用管の一部が湾曲していても、準備工程を容易に行うことができる。また、流入攪拌工程により、熱媒体用管の周囲に形成された空隙部に塑性流動材を流入させることで、当該空隙部を埋めることができるため、熱媒体用管とその周囲の第一金属部材及び第二金属部材との間で熱を効率よく伝達することができる。これにより、熱交換効率の高い伝熱板を製造することができ、例えば、熱媒体用管に冷却水を通して伝熱板及び冷却対象物を効率的に冷却できる。
【0012】
また、前記流入攪拌工程では、前記流入攪拌用回転ツールの先端と、前記熱媒体用管に接する仮想鉛直面との最近接距離を1〜3mmに設定することが好ましい。また、前記流入攪拌工程では、前記流入攪拌用回転ツールの先端を、前記第一金属部材と前記第二金属部材とを突き合わせて形成された突合部よりも深く挿入することが好ましい。かかる製造方法によれば、空隙部に塑性流動材を確実に流入させることができる。
【0013】
また、前記第一金属部材と前記第二金属部材とを突き合わせて形成された突合部に沿って摩擦攪拌接合を行う接合工程を含むことが好ましい。また、前記接合工程では、前記突合部に沿って間欠的に摩擦攪拌接合を行うことが好ましい。
【0014】
かかる製造方法によれば、第一金属部材及び第二金属部材を固定した状態で流入攪拌工程を行うことができるため、流入攪拌工程の作業性を高めることができる。
【0015】
また、前記流入攪拌用回転ツールよりも小型の回転ツールを用いて前記接合工程を行うことが好ましい。かかる製造方法によれば、流入攪拌工程では深い部分まで塑性流動化することができるとともに、接合工程での摩擦攪拌接合における塑性化領域は小さくて済むので、接合作業が容易になる。
【0016】
また、前記第一金属部材と前記第二金属部材とを突き合せて形成された突合部に沿って溶接を行う溶接工程を含むことが好ましい。また、前記溶接工程では、前記突合部に沿って間欠的に溶接を行うことが好ましい。
【0017】
かかる製造方法によれば、第一金属部材及び第二金属部材を固定した状態で流入攪拌工程を行うことができるため、流入攪拌工程の作業性を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る伝熱板の製造方法によれば、熱媒体用管の一部が湾曲している場合であっても、伝熱板を容易に製造することができるとともに、熱交換効率の高い伝熱板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[第一実施形態]
本発明の最良の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、第一実施形態に係る伝熱板を示した斜視図である。図2は、第一実施形態に係る伝熱板を示した分解斜視図である。図3の(a)は、第一実施形態に係る伝熱板を示した分解断面図であり、(b)は、第一実施形態に係る第一金属部材に熱媒体用管と第二金属部材を配置した断面図である。図4は、第一実施形態に係る伝熱板を示した断面図である。なお、説明における上下左右前後は、特に断りのない限り図1の矢印に従う。
【0020】
第一実施形態に係る伝熱板1は、図1乃至図4に示すように、厚板形状の第一金属部材2と、第一金属部材2の上に配置される第二金属部材3と、第一金属部材2と第二金属部材3の間に挿入される熱媒体用管4とを主に備えている。熱媒体用管4は、平面視U字状を呈するように湾曲して形成されている。
【0021】
第一金属部材2と第二金属部材3は、図1及び図4に示すように、摩擦攪拌接合により生成された塑性化領域W1,W2によって一体形成されている。ここで、「塑性化領域」とは、回転ツールの摩擦熱によって加熱されて現に塑性化している状態と、回転ツールが通り過ぎて常温に戻った状態の両方を含むこととする。一方、第二金属部材3の表面3aには、塑性化領域W3,W4が形成されている。さらに、第一金属部材2の裏面2bには塑性化領域W5,W6が形成されている。
【0022】
第一金属部材2は、例えば、アルミニウム合金(JIS:A6061)で形成されている。第一金属部材2は、熱媒体用管4に流れる熱媒体の熱を外部に伝達させる役割、あるいは、外部の熱を熱媒体用管4に流れる熱媒体に伝達させる役割を果たす。図3に示すように、第一金属部材2の表面2aには、熱媒体用管4の一方側(下半部)を収容する第一凹溝5が凹設されている。
【0023】
第一凹溝5は、熱媒体用管4の下半部を収容する部分であって、平面視U字状を呈し、上方が開口するように断面視矩形に形成されている。第一凹溝5は、底面5cと、底面5cから垂直に立ち上がる立面5a,5bを備えている。
【0024】
第二金属部材3は、図2及び図3に示すように、第一金属部材2と同様のアルミニウム合金からなり、第一金属部材2と略同じ矩形断面に形成されている。第二金属部材3の両端面は、第一金属部材2の両端面と面一に形成されている。また、第二金属部材3の両側面3c,3dは、第一金属部材2の両側面2c,2dとそれぞれ面一に形成されている。第二金属部材3の裏面3bには、平面視U字状を呈し、第一凹溝5に重ね合わされる位置に対応して第二凹溝6が形成されている。
【0025】
第二凹溝6は、図3の(a)及び(b)に示すように、熱媒体用管4の他方側(上半部)を収容する部分であって、下方が開口するように断面視矩形に形成されている。第二凹溝6は、天面6cと天面6cから垂直に立ち下がる立面6a,6bを備えている。
【0026】
熱媒体用管4は、図2及び図3に示すように、平面視U字状を呈する円筒管である。熱媒体用管4の材質は特に制限されるものではないが、本実施形態では銅製としている。熱媒体用管4は、中空部4aに、例えば高温液、高温ガスなどの熱媒体を循環させて、第一金属部材2及び第二金属部材3に熱を伝達させる部材、あるいは中空部4aに、例えば冷却水、冷却ガスなどの熱媒体を循環させて、第一金属部材2及び第二金属部材3から熱を伝達される部材である。なお、熱媒体用管4の中空部4aに、例えばヒーターを通して、ヒーターから発生する熱を第一金属部材2及び第二金属部材3に伝達させる部材として利用してもよい。
【0027】
図3の(b)に示すように、第一金属部材2に第二金属部材3を配置すると、第一金属部材2の第一凹溝5と第二金属部材3の第二凹溝6とが合わさり、断面視矩形の空間部Kが形成される。空間部Kには、熱媒体用管4が収容される。
【0028】
ここで、第一凹溝5の深さは、熱媒体用管4の外径の1/2に形成されている。また、第一凹溝5の幅は、熱媒体用管4の外径の1.1倍となるように形成されている。一方、第二凹溝6の深さは、熱媒体用管4の半径の1.1倍に形成されている。また、第二凹溝6の幅は、熱媒体用管4の外径の1.1倍に形成されている。したがって、第一金属部材2に熱媒体用管4及び第二金属部材3を配置すると、第一凹溝5と熱媒体用管4の下端は接触し、熱媒体用管4の左右端及び上端は、第一凹溝5及び第二凹溝6と微細な隙間をあけて離間する。言い換えると、空間部Kの幅及び高さは、熱媒体用管4の外径よりも大きく形成されている。
【0029】
矩形断面の空間部K内に、円形断面の熱媒体用管4を挿入しているため、熱媒体用管4の周囲には、空隙部が形成される。例えば、図2に示すように、熱媒体用管4内を流れる媒体の流動方向を「Y」とすると、熱媒体用管4の周囲に形成される空隙部のうち、流動方向Yに対して左上側に形成される部分を「第一空隙部P1」とし、右上側に形成される部分を「第二空隙部P2」とし、左下側に形成される部分を「第三空隙部P3」とし、右下側に形成される部分を「第四空隙部P4」とする。また、第一金属部材2、第二金属部材3及び熱媒体用管4からなる部材を「仮組構造体U」とする。
【0030】
また、図3の(b)に示すように、第一金属部材2と第二金属部材3とが突き合わされて突合部Vが形成される。突合部Vのうち、仮組構造体Uの一方の側面に現われ部分を「突合部V1」とし、他方の側面に現れる部分を「突合部V2」とする。
【0031】
塑性化領域W1,W2は、図1及び図4に示すように、突合部V1,V2に摩擦攪拌接合を施した際に、第一金属部材2及び第二金属部材3の一部が塑性流動して一体化された領域である。即ち、突合部V1,V2に沿って、後記する接合用回転ツール50(図5参照)を用いて摩擦攪拌接合を行うと、突合部V1,V2にかかる第一金属部材2及び第二金属部材3の金属材料が、接合用回転ツール50の摩擦熱により流動化して一体化されることで、第一金属部材2と第二金属部材3が接合される。
【0032】
塑性化領域W3,W4は、図1及び図4に示すように、第二金属部材3の表面3a側から挿入した流入攪拌用回転ツール55(図5参照)を第二凹溝6に沿って移動させた際に形成されたものである。塑性化領域W3の一部は、熱媒体用管4の周囲に形成された第一空隙部P1に流入している。塑性化領域W4の一部は、熱媒体用管4の周囲に形成された第二空隙部P2に流入している。即ち、塑性化領域W3,W4は、第二金属部材3の一部が塑性流動して、第一空隙部P1及び第二空隙部P2にそれぞれ流入して一体化された領域であって、熱媒体用管4と接触している。
【0033】
塑性化領域W5,W6は、第一金属部材2の裏面2b側から挿入した流入攪拌用回転ツール55を第一凹溝5に沿って移動させた際に形成されたものである。塑性化領域W5の一部は、熱媒体用管4の周囲に形成された第三空隙部P3に流入している。塑性化領域W6は、熱媒体用管4の周囲に形成された第四空隙部P4に流入している。即ち、塑性化領域W5,W6は、第一金属部材2及び第二金属部材3の一部が塑性流動して、第三空隙部P3、第四空隙部P4にそれぞれ流入して一体化する領域であって、熱媒体用管4と接触する。
【0034】
次に、伝熱板1の製造方法について、図5乃至図7を用いて説明する。図5は、第一実施形態に係る伝熱板の製造方法を示した断面図であって、(a)は、切削工程、(b)は、挿入工程及び配置工程、(c)は、接合工程、(d)は、第一表面側流入攪拌工程を示した図である。図6は、第一実施形態に係る伝熱板の製造方法を示した断面図であって、(a)は、第二表面側流入攪拌工程、(b)は、第一裏面側流入攪拌工程、(c)は、第二裏面側流入攪拌工程を示した図である。図7は、第一実施形態に係る第一表面側流入攪拌工程を示した模式断面図である。
【0035】
第一実施形態に係る伝熱板の製造方法は、第一金属部材2及び第二金属部材3を形成するとともに、第一金属部材2に熱媒体用管4及び第二金属部材3を配置する準備工程と、突合部V1,V2に沿って接合用回転ツール50を移動させて摩擦攪拌接合を行う接合工程と、第二金属部材3の表面3a側及び第一金属部材2の裏面2b側から流入攪拌用回転ツール55を移動させて第一空隙部P1〜第四空隙部P4に塑性流動材Qを流入させる流入攪拌工程とを含む。
【0036】
(準備工程)
準備工程は、第一金属部材2及び第二金属部材3を形成する切削工程と、第一金属部材2に形成された第一凹溝5に熱媒体用管4を挿入する挿入工程と、第一金属部材2に第二金属部材3を配置する配置工程とを含む。
【0037】
切削工程では、図5の(a)に示すように、公知の切削加工により、厚板部材に断面視矩形を呈する第一凹溝5を形成する。これにより、上方に開口する第一凹溝5を備えた第一金属部材2が形成される。
また、切削工程では、公知の切削加工により、板厚部材に断面視矩形を呈する第二凹溝6形成する。これにより、下方に開口する第二凹溝6を備えた第二金属部材3が形成される。
なお、第一実施形態においては、第一金属部材2及び第二金属部材3を切削加工により形成したが、アルミニウム合金製の押出形材や鋳造品を用いてもよい。
【0038】
挿入工程では、図5の(b)に示すように、第一凹溝5に熱媒体用管4を挿入する。このとき、熱媒体用管4の下半部は、第一凹溝5の底面5cと接触し、第一凹溝5の立面5a,5bとは微細な隙間をあけて離間する。
【0039】
配置工程では、図5の(b)に示すように、熱媒体用管4の上半部を第二金属部材3に形成された第二凹溝6に挿入しつつ、第一金属部材2上に第二金属部材3を配置する。これにより、第一金属部材2、第二金属部材3及び熱媒体用管4からなる仮組構造体Uが形成される。このとき、熱媒体用管4と、第二金属部材3の裏面3bに形成された第二凹溝6の両立面6a,6b及び天面6cとは微細な隙間をあけて離間する。また、第一金属部材2と第二金属部材3とが突き合わされて突合部V1,V2が形成される。
【0040】
(接合工程)
次に、図5の(c)に示すように、仮組構造体Uのうち突合部V1が現れる面を上にした後、突合部V1沿って摩擦攪拌接合を行う。摩擦攪拌接合は、接合用回転ツール50(公知の回転ツール)を用いて行う。接合用回転ツール50は、例えば、工具鋼からなり、円柱形のツール本体51と、ツール本体51の底面52の中心部から同心軸で垂下するピン53とを有する。ピン53は、先端に向けて幅狭となるテーパ状に形成されている。なお、ピン53の周面には、その軸方向に沿って図示しない複数の小溝や径方向に沿ったネジ溝が形成されていてもよい。
【0041】
摩擦攪拌接合は、第一金属部材2及び第二金属部材3を図示しない治具により拘束した状態で、突合部V1に高速回転する接合用回転ツール50を押し込み、突合部V1に沿って移動させる。高速回転するピン53により、その周囲の第一金属部材2及び第二金属部材3のアルミニウム合金材料は、摩擦熱によって加熱され流動化した後に冷却されて一体化する。突合部V1に対して摩擦攪拌接合を行ったら、突合部V2に対しても同様に摩擦攪拌接合を行う。
【0042】
(流入攪拌工程)
流入攪拌工程では、図5の(d)、図6の(a)乃至(c)に示すように、第一金属部材2、熱媒体用管4及び第二金属部材3からなる仮組構造体Uの表面及び裏面から流入攪拌用回転ツール55を移動させて第一空隙部P1〜第四空隙部P4に塑性流動材Qを流入させる。本実施形態に係る流入攪拌工程は、第二金属部材3の表面3aで流入攪拌用回転ツール55を移動させて第一空隙部P1及び第二空隙部P2に塑性流動材Qを流入させる表面側流入攪拌工程と、第一金属部材2の裏面2bで流入攪拌用回転ツール55を移動させて第三空隙部P3及び第四空隙部P4に塑性流動材Qを流入させる裏面側流入攪拌工程を含むものである。
【0043】
なお、表面側流入攪拌工程のうち、第一空隙部P1に塑性流動材Qを流入させる工程を第一表面側流入攪拌工程とし、第二空隙部P2に塑性流動材Qを流入させる工程を第二表面側流入攪拌工程とする。また、第三空隙部P3に塑性流動材Qを流入させる工程を第一裏面側流入攪拌工程とし、第四空隙部P4に塑性流動材Qを流入させる工程を第二裏面側流入攪拌工程とする。
【0044】
第一表面側流入攪拌工程では、図5の(d)に示すように、熱媒体用管4の流動方向Y(図2参照)に対して左上側に形成された第一空隙部P1に、摩擦攪拌によって流動化させた塑性流動材Qを流入させる。流入攪拌用回転ツール55は、例えば、工具鋼からなり、接合用回転ツール50と同等の形状を有しており、円柱形のツール本体56と、ツール本体56の底面57の中心部から同心軸で垂下するピン58とを有する。流入攪拌用回転ツール55は、接合用回転ツール50よりも大型のものを使用している。
【0045】
第一表面側流入攪拌工程では、第二金属部材3の表面3aで、高速回転する流入攪拌用回転ツール55を押し込み、下方の第二凹溝6に沿って平面視U字状の軌跡となるように流入攪拌用回転ツール55を移動させる。流入攪拌用回転ツール55は、ツール本体56の底面57(ショルダ)の投影部分の一部が第一空隙部P1と重なるように移動させる。このとき、高速回転するピン58により、その周囲の第二金属部材3のアルミニウム合金材料は、摩擦熱によって加熱され流動化される。流入攪拌用回転ツール55が、所定の深さで押し込まれているため、塑性流動化された塑性流動材Qは、第一空隙部P1に流入し、熱媒体用管4と接触する。
【0046】
ここで、図3の(b)に示すように、熱媒体用管4の左右端及び上端は、第一凹溝5及び第二凹溝6と微細な隙間をあけて配置されているが、塑性流動材Qが第一空隙部P1に流れ込むと、塑性流動材Qの熱が熱媒体用管4に奪われるため流動性が低下する。したがって、第一空隙部P1に流入した塑性流動材Qは、第二空隙部P2及び第三空隙部P3には流入せずに、第一空隙部P1に留まって充填され、硬化する。
【0047】
第二表面側流入攪拌工程では、図6の(a)に示すように、熱媒体用管4の流動方向Y(図2参照)に対して右上側に形成された第二空隙部P2に摩擦攪拌によって流動化された塑性流動材Qを流入させる。第二表面側流入攪拌工程は、第二空隙部P2に行うことを除いては、第一表面側流入攪拌工程と同等であるため説明を省略する。なお、表面側流入攪拌工程が終了したら、第二金属部材3の表面3aに形成されたバリを切削除去して表面3aを平滑にするのが好ましい。
【0048】
裏面側流入攪拌工程では、図6の(b)及び(c)に示すように、仮組構造体Uの表裏を逆にした後、第一金属部材2の裏面2bで第一凹溝5に沿って流入攪拌用回転ツール55を移動させて第三空隙部P3及び第四空隙部P4に摩擦熱によって流動化させた塑性流動材Qを流入させる。
【0049】
第一裏面側流入攪拌工程では、図6の(b)に示すように、摩擦攪拌によって流動化させた塑性流動材Qを第三空隙部P3に流入させる。第一裏面側流入攪拌工程では、第一金属部材2の裏面2bで高速回転する流入攪拌用回転ツール55を押し込み、第一凹溝5に沿って平面視U字状の軌跡となるように流入攪拌用回転ツール55を移動させる。流入攪拌用回転ツール55は、ツール本体56の底面57(ショルダ)の投影部分の一部が熱媒体用管4の第三空隙部P3と重なるように移動させる。このとき、高速回転するピン58により、その周囲の第一金属部材2のアルミニウム合金材料は、摩擦熱によって加熱され流動化される。流入攪拌用回転ツール55が、所定の深さで押し込まれているため、塑性流動化された塑性流動材Qは、第三空隙部P3に流入し、熱媒体用管4と接触する。
【0050】
第二裏面側流入攪拌工程では、図6の(c)に示すように、摩擦攪拌によって流動化された塑性流動材Qを第四空隙部P4に流入させる。第二裏面側流入攪拌工程は、第四空隙部P4に行うことを除いては、第一裏面側流入攪拌工程と同等であるため、説明を省略する。裏面側流入攪拌工程が終了したら、第一金属部材2の裏面2bに形成されたバリを切削除去して裏面2bを平滑にするのが好ましい。
【0051】
なお、表面側流入攪拌工程及び裏面側流入攪拌工程では、第一空隙部P1〜第四空隙部P4の形状や大きさ等に基づいて、流入攪拌用回転ツール55の押込み量及び挿入位置等を設定する。熱媒体用管4がつぶれない程度に、流入攪拌用回転ツール55を近づけて、第一空隙部P1〜第四空隙部P4に塑性流動材Qを隙間なく流入させることが好ましい。
【0052】
例えば、図7に示すように、流入攪拌用回転ツール55のピン58の先端を、第二凹溝6の天面6c(裏面側流入攪拌工程の場合は第一凹溝5の底面5c)よりも深く挿入するとともに、流入攪拌用回転ツール55のピン58の先端と、熱媒体用管4に接する仮想鉛直面との最近接距離Lが1〜3mmであることが好ましい。これにより、熱媒体用管4を潰さない程度に第一空隙部P1に塑性流動材Qを確実に流入させることができる。最近接距離Lが1mmより小さいと、流入攪拌用回転ツール55が熱媒体用管4に近すぎて、熱媒体用管4が潰れる可能性がある。また、最近接距離Lが3mmより大きいと、第一空隙部P1に塑性流動材Qが流入しない可能性がある。
【0053】
また、流入攪拌用回転ツール55の押込み量(押込み長さ)は、例えば第一表面側流入攪拌工程において、ツール本体56が押し退ける第二金属部材3(又は第一金属部材2)の金属の体積が、第一空隙部P1に充填される塑性流動化されたアルミニウム合金材料の体積、及び塑性化領域W3の幅方向両側に発生するバリの体積との和と同等になるような長さとなっている。
【0054】
以上説明した伝熱板の製造方法によれば、第一金属部材2の表面2aに形成された第一凹溝5と、第二金属部材3の裏面3bに形成された第二凹溝6からなる空間部Kにおいて、空間部Kの幅及び高さを熱媒体用管4の外径よりも大きく形成したため、熱媒体用管4の一部が湾曲している場合であっても、前記した挿入工程及び配置工程を容易に行うことができる。
【0055】
また、表面側流入攪拌工程及び裏面側流入攪拌工程により、熱媒体用管4の周囲に形成された第一空隙部P1〜第四空隙部P4に塑性流動材Qを流入させることで、当該空隙部を埋めることができるため、伝熱板1の熱交換効率を高めることができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、表面側流入攪拌工程の前に、比較的小さい接合用回転ツール50を用いて、第一金属部材2と第二金属部材3とを接合しているので、表面側流入攪拌工程では、第二金属部材3が確実に固定された状態で摩擦攪拌を行うことができる。したがって、比較的大きい流入攪拌用回転ツール55を用いて大きい押込み力が作用する摩擦攪拌接合を、安定した状態で行うことができる。
【0057】
なお、本実施形態では、接合工程の後に表面側流入攪拌工程を行っているが、表面側流入攪拌工程の後に接合工程を行うようにしてもよい。このとき、第一金属部材2及び第二金属部材3を幅方向及び長手方向から図示しない治具を用いて固定しておけば、表面側流入攪拌工程における摩擦攪拌を安定した状態で行うことができる。
【0058】
また、本実施形態では、接合工程において、突合部V1,V2の全長に亘って、摩擦攪拌接合を施しているが、これに限定されるものではなく、突合部V1,V2に沿って所定の間隔を隔てて摩擦攪拌接合を間欠的に行って、第一金属部材2と第二金属部材3とを仮付けを施すようにしてもよい。このような伝熱板の製造方法によれば、接合工程に要する手間と時間を低減しつつ、第一金属部材2と第二金属部材3とを確実に固定した状態で表面側流入攪拌工程を行うことができるとともに、前記した作用効果と同様に、加工環境が良好で精度の高い伝熱板を製造することができる。
【0059】
また、本実施形態では、空間部Kの幅及び高さの両方を熱媒体用管4の外径よりも大きく形成しているが、いずれか一方を大きく形成すればよい。また、熱媒体用管4の断面形状は本実施形態では円形としているが、他の形状であってもよい。また、熱媒体用管4の平面視形状を本実施形態ではU字状としているが、例えば蛇行状や、円形状としてもよい。また、前記した第一凹溝5及び第二凹溝6の幅や深さ寸法はあくまで例示であって、本発明を限定するものではない。例えば、熱媒体用管4の平面視の形状が複雑になる場合は、それに伴って第一凹溝5及び第二凹溝6の幅や深さを適宜大きくしてもよい。また、本実施形態では、第一金属部材2に熱媒体用管4及び第二金属部材3を配置するようにしたが、これに限定されるものではない。例えば、第二金属部材3の第二凹溝6に熱媒体用管4を挿入した後、第二金属部材3の上方から第一金属部材2を覆うように配置してもよい。
【0060】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態に係る伝熱板の製造方法は、裏面側流入攪拌工程を行っていない点などで第一実施形態と相違する。
【0061】
図8は、第二実施形態に係る伝熱板の製造方法を示した断面図であって、(a)は、切削工程、(b)は、挿入工程及び配置工程を示した図である。図9は、第二実施形態に係る伝熱板の製造方法を示した断面図であって、(a)は、接合工程、(b)は、第一表面側流入攪拌工程、(c)は、第二表面側流入攪拌工程を示す。また、具体的な図示はしないが、熱媒体用管4は、第一実施形態と同様に平面視U字状を呈するものとする。
【0062】
第二実施形態に係る伝熱板の製造方法は、図8及び図9に示すように、第一金属部材12及び第二金属部材13を形成するとともに、第一金属部材12に熱媒体用管4及び第二金属部材13を配置する準備工程と、突合部V1,V2に沿って接合用回転ツール50を移動させて摩擦攪拌接合を行う接合工程と、第二金属部材13の表面13aで、流入攪拌用回転ツール55を移動させて第一空隙部P1及び第二空隙部P2に塑性流動材Qを流入させる表面側流入攪拌工程を含むものである。
【0063】
(準備工程)
準備工程は、第一金属部材12及び第二金属部材13を形成する切削工程と、第一金属部材12に形成された第一凹溝15に熱媒体用管4を挿入する挿入工程と、第一金属部材12に第二金属部材13を配置する配置工程を含む。
【0064】
切削工程では、図8の(a)に示すように、公知の切削加工により、板厚部材に断面視U字状を呈する第一凹溝15を切り欠いて第一金属部材12を形成する。第一凹溝15の底部15aは円弧状に切り欠かれており、熱媒体用管4と同等の曲率で形成されている。第一凹溝15の深さは、熱媒体用管4の外径よりも小さく形成されており、第一凹溝15の幅は熱媒体用管4の外径と略同等に形成されている。
【0065】
次に、公知の切削加工により、板厚部材に断面視矩形を呈する第二凹溝16を切り欠いて第二金属部材13を形成する。第二凹溝16の幅は、熱媒体用管4の外径と略同等に形成されている。また、第二凹溝16の深さは、図8の(b)に示すように、第一金属部材12に熱媒体用管4及び第二金属部材13を配置したときに、第二凹溝16の天面16cと熱媒体用管4とが微細な隙間をあけて離間するように形成されている。
【0066】
挿入工程では、図8の(b)に示すように、第一凹溝15に熱媒体用管4を挿入する。このとき、熱媒体用管4の下半部は、第一凹溝15の底部15aと面接触する。なお、熱媒体用管4を第一凹溝15に挿入すると、熱媒体用管4の上端は、第一金属部材12の表面12aよりも上方に位置する。
【0067】
配置工程では、図8の(b)に示すように、熱媒体用管4の上部を第二金属部材13に形成された第二凹溝16に挿入しつつ、第一金属部材12に第二金属部材13を配置する。このとき、熱媒体用管4と、第二金属部材13形成された第二凹溝16の両立面16a,16b及び天面16cとは微細な隙間をあけて離間する。即ち、第一凹溝15と第二凹溝16とで形成された空間部K1の幅は、熱媒体用管4の外径と略同等に形成されており、空間部K1の高さHは、熱媒体用管4の外径よりも大きく形成されている。
【0068】
ここで、空間部K1において、熱媒体用管4の周囲に形成される空隙部のうち、流動方向Y(図2参照)に対して左上側に形成される部分を第一空隙部P1とし、右上に形成される部分を第二空隙部P2とする。
【0069】
(接合工程)
接合工程では、図9の(a)に示すように、第一金属部材12と第二金属部材13との突合せ部である突合部V1,V2(図8の(b)参照)に沿って接合用回転ツール50を用いて摩擦攪拌接合を行う。これにより、第一金属部材12と第二金属部材13とを接合することができる。
【0070】
(表面側流入攪拌工程)
表面側流入攪拌工程では、図9の(b)及び(c)に示すように、第二金属部材13の表面13a側から第二凹溝16に沿って摩擦攪拌を行う。表面側流入攪拌工程は、本実施形態では、第一空隙部P1に塑性流動材Qを流入させる第一表面側流入攪拌工程と、第二空隙部P2に塑性流動材Qを流入させる第二表面側流入攪拌工程とを含む。
【0071】
第一表面側流入攪拌工程では、第二金属部材13の表面13a側から高速回転する流入攪拌用回転ツール55を押し込み、第二凹溝16に沿って平面視U字状を呈するように、流入攪拌用回転ツール55を移動させる。流入攪拌用回転ツール55は、ツール本体56の底面57(ショルダ)の投影部分の一部が第一空隙部P1と重なるように移動させる。
【0072】
このとき、高速回転するピン58により、その周囲の第一金属部材12及び第二金属部材13のアルミニウム合金材料は、摩擦熱によって加熱され流動化される。第二実施形態では、流入攪拌用回転ツール55の先端が、第一金属部材12と第二金属部材13との突合部Vよりも下方に位置するように押し込まれているため、塑性流動化された塑性流動材Qは、第一空隙部P1に確実に流入し熱媒体用管4と接触する。
【0073】
ここで、図9の(b)に示すように、熱媒体用管4の上端は、第二凹溝16と微細な隙間をあけて配置されているが、塑性流動材Qが第一空隙部P1に流れ込むと、塑性流動材Qの熱が熱媒体用管4に奪われるため流動性が低下する。したがって、塑性流動材Qは、第二空隙部P2には流入せずに、第一空隙部P1に留まって充填され、硬化する。
【0074】
第二表面側流入攪拌工程では、図9の(c)に示すように、熱媒体用管4の流動方向Y(図2参照)に対して右上側に形成された第二空隙部P2に摩擦攪拌によって流動化された塑性流動材Qを流入させる。第二表面側流入攪拌工程は、第二空隙部P2に行うことを除いては、第一表面側流入攪拌工程と同等であるため説明を省略する。なお、表面側流入攪拌工程が終了したら、第二金属部材13の表面13aに形成されたバリを切削除去して表面13aを平滑にするのが好ましい。
【0075】
以上説明した伝熱板の製造方法によれば、第一金属部材12に形成された第一凹溝15と、第二金属部材13に形成された第二凹溝16からなる空間部K1において、空間部K1の高さを熱媒体用管4の外径よりも大きく形成したため、熱媒体用管4の一部が湾曲している場合であっても、前記した配置工程を容易に行うことができる。
また、表面側流入攪拌工程により、熱媒体用管4の周囲に形成された第一空隙部P1及び第二空隙部P2に塑性流動材Qを流入させることで、当該空隙部を埋めることができるため、伝熱板の熱交換効率を高めることができる。
【0076】
なお、本実施形態では、第一凹溝15の幅を熱媒体用管4の外径と略同等に形成したが、これに限定されるものではなく、第一凹溝15の幅を熱媒体用管4の外径よりも大きく形成してもよい。また、第一凹溝15の底部15aの曲率を熱媒体用管4の曲率よりも小さくなるように形成してもよい。これにより、熱媒体用管4を挿入する挿入工程や、第二金属部材13を配置する配置工程を容易に行うことができる。
【0077】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態について説明する。第三実施形態に係る伝熱板の製造方法は、第一凹溝25及び第二凹溝26が共に曲面で形成されている点で第一実施形態と相違する。図10は、第三実施形態に係る伝熱板の製造方法を示した断面図であって、(a)は、切削工程、(b)は、接合工程、(c)は、表面側流入攪拌工程を示す。なお、具体的な図示はしないが、熱媒体用管4は、第一実施形態と同様に平面視U字状を呈するものとする。
【0078】
第三実施形態に係る伝熱板の製造方法は、図10に示すように、第一金属部材22及び第二金属部材23を形成するとともに、第一金属部材22に熱媒体用管4及び第二金属部材23を配置する準備工程と、突合部V1,V2に沿って接合用回転ツール50を移動させて摩擦攪拌接合を行う接合工程と、第二金属部材23の表面23aで、第二凹溝26に沿って流入攪拌用回転ツール55を移動させて熱媒体用管4の周囲に形成された第一空隙部P1及び第二空隙部P2に摩擦熱によって流動化させた塑性流動材Qを流入させる表面側流入攪拌工程を含むものである。
【0079】
(準備工程)
準備工程は、第一金属部材22及び第二金属部材23を形成する切削工程と、第一金属部材22に形成された第一凹溝25に熱媒体用管4を挿入する挿入工程と、第一金属部材22に第二金属部材23を配置する配置工程を含む。
【0080】
切削工程では、図10の(a)に示すように、公知の切削加工により、板厚部材に断面視半円形状を呈する第一凹溝25を切り欠いて第一金属部材22を形成する。第一凹溝25の半径は、熱媒体用管4の半径と同等に形成されている。
また、同様に板厚部材に断面視矩形を呈する第二凹溝26を切り欠いて第二金属部材23を形成する。第二凹溝26は、下方に向けて開口しており、開口部の幅は、熱媒体用管4の外径と略同等に形成されている。また、第二凹溝26の天面26cの曲率は、熱媒体用管4の曲率よりも大きくなるように形成されている。
【0081】
挿入工程では、図10の(b)に示すように、第一凹溝25に熱媒体用管4の下半部を挿入する。熱媒体用管4の下半部は、第一凹溝25に面接触する。
【0082】
配置工程では、図10の(b)に示すように、熱媒体用管4の上半部を第二金属部材23に形成された第二凹溝26に挿入しつつ、第一金属部材22に第二金属部材23を配置する。第一凹溝25と第二凹溝26とを重ね合わせて形成された空間部K2の高さHは、熱媒体用管4の外径よりも大きくなるように形成されている。
ここで、熱媒体用管4の周囲に形成される空隙部のうち、流動方向Y(図2参照)に対して左上側に形成される部分を第一空隙部P1とし、右上側に形成される部分を第二空隙部P2とする。
【0083】
(接合工程)
次に、図10の(b)に示すように、接合用回転ツール50(図5参照)を用いて突合部V1,V2に沿って摩擦攪拌接合を行う。これにより、第一金属部材22と第二金属部材23とを接合することができる。
【0084】
(表面側流入攪拌工程)
次に、図10の(c)に示すように、第二金属部材23の表面23a側から第二凹溝26に沿って摩擦攪拌を行う。表面側流入攪拌工程は、本実施形態では、第一空隙部P1に塑性流動材Qを流入させる第一表面側流入攪拌工程と、第二空隙部P2に塑性流動材Qを流入させる第二表面側流入攪拌工程とを含む。
【0085】
第一表面側流入攪拌工程における摩擦攪拌では、第二金属部材23の表面23a側から高速回転する流入攪拌用回転ツール55を押し込み、第二凹溝26に沿って平面視U字状を呈するように、流入攪拌用回転ツール55を移動させる。流入攪拌用回転ツール55は、ツール本体56の底面57(ショルダ)の投影部分の一部が第一空隙部P1と重なるように移動する。このとき、高速回転するピン58により、その周囲の第二金属部材23のアルミニウム合金材料は、摩擦熱によって加熱され流動化される。流入攪拌用回転ツール55は、所定の深さで押し込まれているため、塑性流動化された塑性流動材Qが第一空隙部P1に流入し熱媒体用管4と接触する。
【0086】
第二表面側流入攪拌工程では、熱媒体用管4の流動方向Y(図2参照)に対して右上側に形成された第二空隙部P2に摩擦攪拌によって流動化された塑性流動材Qを流入させる。第二表面側流入攪拌工程は、第二空隙部P2に行うことを除いては、第一表面側流入攪拌工程と同等であるため、説明を省略する。表面側流入攪拌工程が終了したら、第二金属部材23の表面23aに形成されたバリを切削除去して平滑にするのが好ましい。
【0087】
以上説明した伝熱板の製造方法によれば、第一凹溝25及び第二凹溝26をともに曲面となるように形成しても、第一凹溝25と第二凹溝26とで形成される空間部K2の高さHを熱媒体用管4の外径よりも大きく形成しているため、熱媒体用管4の一部が湾曲している場合であっても、前記した配置工程を容易に行うことができる。
また、表面側流入攪拌工程により、熱媒体用管4の周囲に形成された第一空隙部P1及び第二空隙部P2に塑性流動材Qを流入させることで、当該空隙部を埋めることができるため、伝熱板の熱交換効率を高めることができる。
【0088】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態について説明する。第四実施形態に係る伝熱板の製造方法は、第二金属部材に凹溝が形成されていない点で第一実施形態と相違する。
【0089】
図11は、第四実施形態に係る伝熱板の製造方法を示した断面図であって、(a)は、切削工程、(b)は、挿入工程及び配置工程、(c)は、表面側流入攪拌工程を示した図である。なお、具体的な図示はしないが、熱媒体用管4は、第一実施形態と同様に平面視U字状を呈するものとする。
【0090】
第四実施形態に係る伝熱板の製造方法は、図11に示すように、第一金属部材32及び第二金属部材33を形成するとともに、第二金属部材33に第一金属部材32を配置する準備工程と、突合部V1,V2に沿って接合用回転ツール50(図5参照)を移動させて摩擦攪拌接合を行う接合工程と、第二金属部材33の表面33a側及び第一金属部材32の裏面32b側から流入攪拌用回転ツール55を移動させて第一空隙部P1〜第四空隙部P4に塑性流動材Qを流入させる流入攪拌工程とを含む。
【0091】
(準備工程)
準備工程は、第一金属部材32及び第二金属部材33を形成する切削工程と、第一金属部材32に形成された第一凹溝35に熱媒体用管4を挿入する挿入工程と、第一金属部材32に第二金属部材33を配置する配置工程を含む。
【0092】
切削工程では、図11の(a)に示すように、公知の切削加工により、板厚部材に断面視矩形の第一凹溝35を切り欠いて第一金属部材32を形成する。第一凹溝35の深さは、熱媒体用管4の外径の1.1倍に形成されている。また、第一凹溝35の幅は、熱媒体用管4の外径の1.1倍に形成されている。
【0093】
挿入工程では、図11の(b)に示すように、第一金属部材32の第一凹溝35に熱媒体用管4を挿入する。
【0094】
配置工程では、図11の(b)に示すように、第一金属部材32の上方に第二金属部材33を配置する。即ち、第一凹溝35と第二金属部材33の底面(下面)33bとで形成された空間部K3に、熱媒体用管4が配置される。この際、図11の(b)に示すように、熱媒体用管4の下端は、第一凹溝35の底面35cと接触し、上端は、第二金属部材33の底面33bと離間する。
【0095】
(接合工程)
接合工程では、図11の(b)及び(c)に示すように、突合部V1,V2に沿って接合用回転ツール50(図5参照)を用いて摩擦攪拌接合を行う。接合工程については、前記した第一実施形態の接合工程と同様であるため詳細な説明を省略する。
【0096】
(流入攪拌工程)
流入攪拌工程では、第一金属部材32、熱媒体用管4及び第二金属部材33からなる仮組構造体Uの表面及び裏面から流入攪拌用回転ツール55を移動させて第一空隙部P1〜第四空隙部P4に塑性流動材Qを流入させる。
流入攪拌工程については第一実施形態に係る流入攪拌工程と略同等であるため詳細な説明を省略する
【0097】
以上説明した第四実施形態に係る製造方法によれば、第二金属部材33に凹溝を設けず、第一金属部材32のみに第一凹溝35を設ける場合であっても、第一凹溝35の幅及び深さを熱媒体用管4の外径より大きく形成することで、第一実施形態と略同等の効果を得ることができる。
【0098】
なお、第一凹溝35は、本実施形態では断面視矩形に形成したが、これに限定されるものではなく曲面を含むように形成してもよい。また、流入攪拌工程は、第一金属部材32、熱媒体用管4及び第二金属部材33からなる仮組構造体Uの表面及び裏面から行ったが、空間部K3と熱媒体用管4の形状によってはいずれか一方から行うだけでもよい。
【0099】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、これに限定されるものではなく本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、適宜変更が可能である。例えば、接合工程に替えて、溶接工程を行ってもよい。図12は、本実施形態に係る溶接工程を示した斜視図である。
【0100】
溶接工程では、前記準備工程で形成された仮組構造体(第一金属部材2、第二金属部材3及び熱媒体用管4)の側面に現れる突合部V(V1,V2)に沿って溶接を行う。溶接工程における溶接の種類は特に制限を受けないが、MIG溶接又はTIG溶接等の肉盛り溶接を行って、溶接金属Tで突合部V1,V2を覆うことが好ましい。このように、溶接工程を行うことで、第一金属部材2と第二金属部材3とを固定した状態で流入攪拌工程を行うことができるため、流入攪拌工程の作業性を高めることができる。なお、溶接工程では、突合部V1,V2の全長に亘って溶接を行ってもよいし、所定の間隔をあけて間欠的に行ってもよい。また、溶接工程では、突合部V1,V2に沿って溝を形成し、当該溝に溶接金属Tを充填させてもよい。
【0101】
また、前記した実施形態では、流入攪拌工程で使用する流入攪拌用回転ツール55を接合工程で使用する接合用回転ツール50よりも大型のものとしているが、接合工程で流入攪拌用回転ツール55を使用するようにしてもよい。このようにすれば、各工程で使用する回転ツールを統一することができ、回転ツールの交換時間を省略することができ、施工時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】第一実施形態に係る伝熱板を示した斜視図である。
【図2】第一実施形態に係る伝熱板を示した分解斜視図である。
【図3】(a)は、第一実施形態に係る伝熱板を示した分解断面図であり、(b)第一実施形態に係る第一金属部材に熱媒体用管と第二金属部材を配置した断面図である。
【図4】第一実施形態に係る伝熱板を示した断面図である。
【図5】第一実施形態に係る伝熱板の製造方法を示した断面図であって、(a)は、切削工程、(b)は、挿入工程及び配置工程、(c)は、接合工程、(d)は、第一表面側流入攪拌工程を示した図である。
【図6】第一実施形態に係る伝熱板の製造方法を示した断面図であって、(a)は、第二表面側流入攪拌工程、(b)は、第一裏面側流入攪拌工程、(c)は、第二裏面側流入攪拌工程を示した図である。
【図7】第一実施形態に係る第一表面側流入攪拌工程を示した模式断面図である。
【図8】第二実施形態に係る伝熱板の製造方法を示した断面図であって、(a)は、切削工程、(b)は、挿入工程及び配置工程を示した図である。
【図9】第二実施形態に係る伝熱板の製造方法を示した断面図であって、(a)は、接合工程、(b)は、第一表面側流入攪拌工程、(c)は、第二表面側流入攪拌工程を示す。
【図10】第三実施形態に係る伝熱板の製造方法を示した断面図であって、(a)は、切削工程、(b)は、接合工程、(c)は、表面側流入攪拌工程を示す。
【図11】第四実施形態に係る伝熱板の製造方法を示した断面図であって、(a)は、切削工程、(b)は、挿入工程及び配置工程、(c)は、表面側流入攪拌工程を示した図である。
【図12】本実施形態に係る溶接工程を示した斜視図である。
【図13】特許文献1に係る伝熱板を示した図であって、(a)は、斜視図、(b)は断面図である。
【0103】
1 伝熱板
2 第一金属部材
3 第二金属部材
4 熱媒体用管
5 第一凹溝
6 第二凹溝
50 接合用回転ツール
55 流入攪拌用回転ツール
K 空間部
L 最近接距離
P 空隙部
Q 塑性流動材
U 仮組構造体
V 突合部
W 塑性化領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹溝が形成された第一金属部材と、凹溝が形成された第二金属部材とを前記凹溝同士で中空の空間部が形成されるように重ね合わるとともに、前記空間部に熱媒体用管を挿入する準備工程と、
前記準備工程で形成された仮組構造体の表面及び裏面の少なくとも一方の面から挿入した流入攪拌用回転ツールを前記空間部に沿って移動させ、前記熱媒体用管の周囲に形成された空隙部に摩擦熱によって流動化させた塑性流動材を流入させる流入攪拌工程と、を含み、
前記空間部の幅及び高さの少なくとも一方が、前記熱媒体用管の外径よりも大きいことを特徴とする伝熱板の製造方法。
【請求項2】
凹溝が形成された第一金属部材と第二金属部材とを、前記凹溝と前記第二金属部材の裏面とで中空の空間部が形成されるように重ね合わせるとともに、前記空間部に熱媒体用管を挿入する準備工程と、
前記準備工程で形成された仮組構造体の表面及び裏面のうち少なくとも一方の面から挿入した流入攪拌用回転ツールを前記空間部に沿って移動させ、前記熱媒体用管の周囲に形成された空隙部に摩擦熱によって流動化させた塑性流動材を流入させる流入攪拌工程と、を含み、
前記空間部の幅及び高さの少なくとも一方が、前記熱媒体用管の外径よりも大きいことを特徴とする伝熱板の製造方法。
【請求項3】
前記流入攪拌工程では、前記流入攪拌用回転ツールの先端と、前記熱媒体用管に接する仮想鉛直面との最近接距離を1〜3mmに設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項4】
前記流入攪拌工程では、前記流入攪拌用回転ツールの先端を、前記第一金属部材と前記第二金属部材とを突き合わせて形成された突合部よりも深く挿入することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項5】
前記第一金属部材と前記第二金属部材とを突き合わせて形成された突合部に沿って摩擦攪拌接合を行う接合工程を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項6】
前記接合工程では、前記突合部に沿って間欠的に摩擦攪拌接合を行うことを特徴とする請求項5に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項7】
前記流入攪拌用回転ツールよりも小型の回転ツールを用いて前記接合工程を行うことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項8】
前記第一金属部材と前記第二金属部材とを突き合せて形成された突合部に沿って溶接を行う溶接工程を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項9】
前記溶接工程では、前記突合部に沿って間欠的に溶接を行うことを特徴とする請求項8に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項1】
凹溝が形成された第一金属部材と、凹溝が形成された第二金属部材とを前記凹溝同士で中空の空間部が形成されるように重ね合わるとともに、前記空間部に熱媒体用管を挿入する準備工程と、
前記準備工程で形成された仮組構造体の表面及び裏面の少なくとも一方の面から挿入した流入攪拌用回転ツールを前記空間部に沿って移動させ、前記熱媒体用管の周囲に形成された空隙部に摩擦熱によって流動化させた塑性流動材を流入させる流入攪拌工程と、を含み、
前記空間部の幅及び高さの少なくとも一方が、前記熱媒体用管の外径よりも大きいことを特徴とする伝熱板の製造方法。
【請求項2】
凹溝が形成された第一金属部材と第二金属部材とを、前記凹溝と前記第二金属部材の裏面とで中空の空間部が形成されるように重ね合わせるとともに、前記空間部に熱媒体用管を挿入する準備工程と、
前記準備工程で形成された仮組構造体の表面及び裏面のうち少なくとも一方の面から挿入した流入攪拌用回転ツールを前記空間部に沿って移動させ、前記熱媒体用管の周囲に形成された空隙部に摩擦熱によって流動化させた塑性流動材を流入させる流入攪拌工程と、を含み、
前記空間部の幅及び高さの少なくとも一方が、前記熱媒体用管の外径よりも大きいことを特徴とする伝熱板の製造方法。
【請求項3】
前記流入攪拌工程では、前記流入攪拌用回転ツールの先端と、前記熱媒体用管に接する仮想鉛直面との最近接距離を1〜3mmに設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項4】
前記流入攪拌工程では、前記流入攪拌用回転ツールの先端を、前記第一金属部材と前記第二金属部材とを突き合わせて形成された突合部よりも深く挿入することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項5】
前記第一金属部材と前記第二金属部材とを突き合わせて形成された突合部に沿って摩擦攪拌接合を行う接合工程を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項6】
前記接合工程では、前記突合部に沿って間欠的に摩擦攪拌接合を行うことを特徴とする請求項5に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項7】
前記流入攪拌用回転ツールよりも小型の回転ツールを用いて前記接合工程を行うことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項8】
前記第一金属部材と前記第二金属部材とを突き合せて形成された突合部に沿って溶接を行う溶接工程を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項9】
前記溶接工程では、前記突合部に沿って間欠的に溶接を行うことを特徴とする請求項8に記載の伝熱板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−89147(P2010−89147A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263694(P2008−263694)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【Fターム(参考)】
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