説明

伝送エラーを減少させる光伝送方法及び光伝送装置

【課題】 光信号の高速伝送において伝送エラーを低減する。
【解決手段】 発光素子64から出射した多モードの光信号を光伝送媒体62の一端面に入射させるよう結合し、光伝送媒体62中を伝送された多モードの光信号を、光伝送媒体62の他端面に結合された受光素子66に入射させて受信することにより、光通信を行なうときに、光伝送媒体62で伝送可能な多モードの光信号の内、伝送エラーを許容範囲内に収めることができるモード間の差の範囲内に入るよう選択された単数又は複数のモード群である、モード選択群の光信号を取り出し、このモード間の差を少なく限定したモード選択群の光信号だけを読み取るようにして、伝送エラーを減少する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光素子から出射された複数モードで光信号を伝送する際に、伝送エラーを減少させる光伝送方法及び光伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器等のデジタル機器を相互に接続して、電気伝送では不可能な高速信号の長距離伝送を行う光通信の分野では、電気信号を光信号へ変換(トランスミッタ)して、トランスミッタから送信側の光結合手段により導光媒体(光ファイバ等)へ光を入射し、導光媒体を介して光信号を伝送し、導光媒体からレシーバへ受信側の光結合手段により光を入射し、レシーバにおいて光信号を電気信号へ変換するように構成した、光伝送装置(光リンクシステム)が用いられている。
【0003】
また、このような光伝送装置に係わる光通信の分野では、プラスチック光ファイバ等の多モード光ファイバ(マルチモード光ファイバ)を利用し、数十メートル程度の距離で百メガビット毎秒程度の信号を伝送するような、比較的短距離におけるデジタル光通信への応用が行われている。
【0004】
従来、デジタル機器を相互に接続してデジタル光通信を行なう場合には、図8に例示するように、各デジタル機器10、11と、光ファイバケーブル12の各対応する端部とを、それぞれコネクタ14、16を用いて着脱可能に接続するのが普通である。
【0005】
このコネクタ14、16は、図9に例示するように、光ファイバ接続装置18を、光学的にかつ機械的に対象物20に着脱可能に接続するよう構成する。この光ファイバの接続装置18は、いわゆる光ファイバ12の雄型のコネクタであり、これに対して対象物20は、デジタル機器10、11に設置される雌型のコネクタである。光ファイバの接続装置18は、本体22と、挿入端子24を備えている。本体22は、使用者が手で持って挿入端子24を対象物20の挿入穴26内に挿入したり、挿入端子24を挿入穴26から抜き取るために、使用者が手で持つための把持部を兼ねている。
【0006】
この挿入端子24の各端面には、光ファイバ12の対応する各端部が露出している。挿入端子24は、たとえば円柱状や角柱状の部材であり、その途中には、抜け止め部が設けられている。この抜け止め部は、対象物20の挿入穴26の途中に設けられた凹部に嵌まり込んで、光ファイバの接続装置18と対象物20とを光学的にかつ機械的に接続した状態を保つ。
【0007】
また、対象物20の挿入穴26の内底部には、レンズ28と受光素子30(または発光素子32)が配置されている。
【0008】
この光ファイバの接続装置18は、対象物20の挿入穴26に挿入端子24を嵌め込んだ接続状態で、光ファイバ12の端部を、レンズ28と受光素子30(または発光素子32)に対面させるよう構成する。
【0009】
そして、一方のコネクタ14の対象物20に受光素子30が設置されている場合には、光ファイバ12を通って導かれてくる光信号が、レンズ28を介して受光素子30に受光される。また、他方のコネクタ16の対象物20に発光素子32が設置されている場合には、発光素子32が発生する光信号が、レンズ22を通して光ファイバ12の端部に入射する。
【0010】
この一方のコネクタ14では、光ファイバ12の端部から出射された光ビームが、レンズ28を介して受光素子30に受光されたときの光エネルギーが最大量になるように構成する。これと共に、他方のコネクタ16では、発光素子32が発生する光信号が、レンズ28を通して光ファイバ12の端部に入射するときの光エネルギーが最大量になるように構成する。
【0011】
このように各デジタル機器10、11と、光ファイバケーブル12の各対応する端部とを、それぞれ光ファイバの接続装置18と対象物20とをエネルギー的な結合効率が最善になるように光学的にかつ機械的に接続した状態で、発光素子32が発生する光信号を、光ファイバ12を通して他の機器側に伝送し、受光素子30で受信することにより、デジタル機器の相互間でデジタル光通信を行なうための光伝送装置(光リンク手段)が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0012】
しかし、上述のように構成した光ファイバの接続装置18と対象物20とを、光伝送装置に利用する場合には、電気信号を光信号へ変換するトランスミッタから送信側の光結合手段により導光媒体(光ファイバ等)へ光を入射させるための光学素子と光伝送媒体との光結合構造を、トランスミッタからの光エネルギーを導光媒体へ可能な限り最大量になるように結合することを主眼とする。これと共に、このように構成する光伝送装置では、導光媒体を介して伝送された光信号をレシーバへ入射させて光信号を電気信号へ変換するため、導光媒体とレシーバとの間に設けた光学素子と光伝送媒体との光結合構造を、光伝送媒体からの光エネルギーをレシーバへ可能な限り最大量になるように結合することを主眼とする。このため、光エネルギーを可能な限り最大量になるように、光学素子と光伝送媒体とを結合することを主眼とした光結合構造では、高速伝送において伝送エラーを起こすことを防止できないという問題がある。
【特許文献1】特開2000−137150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上述の問題に鑑み、光信号の高速伝送において伝送エラーを低減可能とする光伝送方法と、この光信号の伝送エラーを減少させる光伝送方法を利用した光伝送装置とを、新たに提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に記載の光伝送方法は、発光素子から出射した複数モードの光信号を光伝送媒体を介して伝送し、受光素子へ受光させる光伝送方法であって、発光素子から出射した複数モードの一部のモードを選択して光伝送媒体へ入射するとともに、選択される一部のモード間の光伝送媒体中の伝搬時間差が、伝送エラーを許容範囲に収めることができる範囲であることを特徴とする。
【0015】
上述の光伝送方法によれば、伝送エラーを許容範囲内とできる伝播時間の差の範囲内に収まるような単数又は複数のモード群をモード選択群の光信号として選択して取り出し、この伝播時間の差を少なく限定したモード選択群の光信号だけを読み取るので、伝送エラーを減少することができる。
【0016】
請求項2に記載の光伝送装置は、複数モードの光信号を出射する発光素子と、光信号を伝送する光伝送媒体と、光信号を受信する受光素子とを備える光伝送装置において、複数モードの光信号の一部のモードを選択するモード選択手段を有し、モード選択手段を、発光素子と光伝送媒体の間又は、光伝送媒体と受光素子の間に備えたことを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の光伝送装置において、モード選択手段は、発光素子が出射する複数モードのうち、光伝送媒体中の伝搬時間差が、伝送エラーを許容範囲に収めることができる一部のモードを選択するものであることを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の光伝送装置において、モード選択手段は、発光素子又は光伝送媒体から光放射されるモード選択手段における光放射面のうち、光伝送媒体中の伝搬時間差が、伝送エラーを許容範囲に収めることができる一部のモードが存在する位置に開口又は窓を有する部材であることを特徴とする。
【0019】
前述のように構成することにより、モード選択手段によって、伝送エラーを許容範囲内とできる伝播時間の差の範囲内に収まるような単数又は複数のモード群をモード選択群の光信号として選択して取り出し、このモード選択手段が選択して取り出したモード選択群の光信号だけを受信するので、伝送エラーを減少することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の伝送エラーを減少させる光伝送方法及び光伝送装置によれば、光信号の高速伝送において伝送エラーを低減することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第1実施の形態)
本発明の、伝送エラーを減少させる光伝送方法及び光伝送装置に関する第1実施の形態を、図1乃至図4により説明する。
【0022】
図1に示すように、本第1実施の形態に係わる光伝送装置(光リンクシステム)は、入力された電気信号を光信号へ変換する回路を備えたトランスミッタ50と、このトランスミッタ50に設置されたレセプタクル52と、光信号を電気信号へ変換して出力するための回路を備えたレシーバ54と、このレシーバ54に設置されたレセプタクル56と、トランスミッタ50のレセプタクル52に光学的にかつ機械的に結合する光結合手段である入力用のプラグ58を一端部に設置し、他端部にレシーバ54のレセプタクル56に光学的にかつ機械的に結合する光結合手段である出力用のプラグ60を設置した伝送媒体としての光ファイバ(多モード光ファイバ)62(平板導光路等でも良い)とを備える。
【0023】
この光伝送装置では、レセプタクル52の内部に光学素子である発光素子64を配置し、レセプタクル56の内部に光学素子である受光素子66を配置して構成する。
【0024】
さらに、この光伝送装置は、マルチモード光ビーム伝送システムとして構成する。この光伝送装置では、マルチモード光ビーム(複数モード)で光信号を伝送する際の伝送エラーを削減し、伝送される光エネルギを適度に保てるように、レセプタクル52及び入力用のプラグ58と、レセプタクル56と出力用のプラグ60とを構成する。
【0025】
この光伝送装置では、伝送エラーを減少するための方法として、この光伝送装置により複数モードで光信号を伝送する際に、伝送可能な複数モードの光信号の内、伝送エラーを許容範囲内に収めることができる伝播時間の差の範囲内に入るよう選択された単数又は複数のモード群である、モード選択群の光信号だけを取り出して、信号の授受に利用する方法を採る。
【0026】
このような光伝送装置では、多モード光ファイバ62を利用して光信号を伝送すると、各モードの伝搬時間が異なるためモード分散を生じ、モード群速度の違いによるパルス分離を生じるから、伝送可能な全てのモードの光信号を信号の授受に利用すると、伝送エラーを増大させると考えられる。
【0027】
そこで、モード間の群遅延差が、伝送エラーの許容範囲内に収まるような単数又は複数のモード群をモード選択群の光信号として選択して取り出し、このモード選択群の光信号だけを利用して信号の授受を行うようにする。
【0028】
例えば、この光伝送装置の伝送エラーを減少するための方法では、多モード光ファイバ62を利用して伝送可能な、モード数0の基本モードから、導波される最大のモード数までの高次モードに至る全てのモードの中から、伝送エラーを許容範囲内に収められる範囲で、比較的に基本モード側となる低次モードに相当する単数又は複数のモード群をモード選択群の光信号として選択する。
【0029】
または、この光伝送装置の伝送エラーを減少するための方法では、伝送エラーを許容範囲内に収められる範囲で、比較的に導波される最大のモード数側となる高次モードに相当する単数又は複数のモード群をモード選択群の光信号として選択する。
【0030】
さらに、この光伝送装置の伝送エラーを減少するための方法では、伝送エラーを許容範囲内に収められる範囲で、基本モード側と導波される最大のモード数側との中間のモード数に相当する単数又は複数のモード群をモード選択群の光信号として選択しても良い。
【0031】
この光伝送装置の伝送エラーを減少するための方法では、伝送エラーを許容範囲内に収めることができる伝播時間の差の範囲内に入るよう選択された単数又は複数のモード群をモード選択群の光信号として選択して取り出し、この伝播時間の差を少なく限定したモード選択群の光信号だけを読み取るので、伝送エラーを減少することができる。
【0032】
次に、光伝送装置に設けるモード選択手段としての、伝送エラーを減少するための光学素子と光伝送媒体との伝送エラー減少用の光結合構造について、図2により説明する。
【0033】
この図2に示すモード選択手段である光学素子と光伝送媒体との伝送エラー減少用光結合構造では、レセプタクル52と入力用のプラグ58とを、いわゆるバット結合をするように構成する。
【0034】
このレセプタクル52では、そのハウジング82に設けた結合用挿入穴68の下方に光学素子パッケージ70を配置する。トランスミッタ50のレセプタクル52に設置する光学素子パッケージ70では、セラミック製等のパッケージ(メタルパッケージ又は樹脂パッケージ等でも良い)70Aの内部底面上に発光素子64を配置し、この発光素子64から発光されるマルチモード光ビームを透過させて外部に出射させるための窓部70Bを設けて構成する。この光学素子パッケージ70では、パッケージ70Aの底面から突出させた電極端子72によってトランスミッタ50の回路に接続されるように構成する。
【0035】
このレセプタクル52では、光学素子パッケージ70の窓部70Bの外側に隣接して伝送エラー減少手段を構成する開口制限部材100を配置する。この開口制限部材100は、遮光板に、伝送エラーの許容範囲内に収まるような単数又は複数のモード群をモード選択群の光信号として選択して取り出せるような所定形状で所定の大きさを持つ開口102を穿孔して構成する。
【0036】
このように構成した開口制限部材100は、その周囲を、ハウジング82の光学素子パッケージ70側に向いた内側面に固着して配置する。なお、この開口制限部材100は、光学素子パッケージ70の窓部70Bに設置しても良い。
【0037】
また、図示しないが、レシーバ54側のレセプタクル56は、発光素子64の代わりに受光素子66を設置する以外の構成を、トランスミッタ50側のレセプタクル52と同等に構成する。このレセプタクル56に設置する開口制限部材100は、光ファイバ62の端面から出射された光信号を遮光板に穿孔した開口102に当てることによって、伝送エラーの許容範囲内に収まるような単数又は複数のモード群であるモード選択群の光信号を、開口102から受光素子66へ出射させる。なお、この開口制限部材100に設ける開口102は、光ビームを透過させる透過窓として構成しても良い。
【0038】
このレセプタクル52に接続するための入力用のプラグ58には、その結合用挿入穴68に挿入するための挿入部58Aの中央に、結合用挿入穴68の中心軸に沿うように多モード光ファイバである光ファイバ62の端部を取り付けたフェルール74を一体的に設置して構成する。また、出力用のプラグ60も入力用のプラグ58と同等に、その結合用挿入穴68に挿入するための挿入部60Aの中央に、結合用挿入穴68の中心軸に沿うように光ファイバ62の端部を取り付けたフェルール74を一体的に設置して構成する。
【0039】
このように構成された入力用のプラグ58(又は出力用のプラグ60)は、その挿入部58A(又は挿入部60A)を結合用挿入穴68内に挿入して、レセプタクル52(又はレセプタクル56)へバット結合される。
【0040】
また、レセプタクル52(又はレセプタクル56)と、これにバット結合される入力用のプラグ58(又は出力用のプラグ60)との間に配置される、伝送エラー減少手段を構成する開口制限部材100は、その開口102の形状及び大きさを実験で求めて適正なものに設定する。すなわち、伝送エラー減少手段を構成する開口制限部材100の開口102は、その形状及び大きさを種々に変更して伝送エラーの量との関係を実験で求めて評価し、開口102の形状及び大きさを伝送エラーを削減できる適正なものに設定する。
【0041】
ここで、開口102の大きさを細く絞る程、伝送エラーが軽減されるという効果と、光エネルギを伝送する上でのエネルギー的な結合効率の制約とを加味して、決定する。
【0042】
さらにこの光伝送装置では、トランスミッタ50のレセプタクル52、又はレシーバ54のレセプタクル56の少なくとも一方に、開口制限部材100を設けるように構成しても良い。
【0043】
次に、伝送エラーを減少するためのモード選択手段である、光学素子と光伝送媒体との伝送エラー減少用光結合構造の他の構成例について、図3により説明する。
【0044】
この図3に示すモード選択手段である、光学素子と光伝送媒体との伝送エラー減少用光結合構造では、レセプタクル52と入力用のプラグ58とを、いわゆるバット結合をし、さらに
光学素子側の光束の中心線としての光軸と、光ファイバ62のコアの中心線としての光軸とを平行な状態を保ってシフトさせる(偏芯状態とする)ように構成する。
【0045】
すなわち、図3に示すモード選択手段である光学素子と光伝送媒体との伝送エラー減少用光結合構造では、レセプタクル52(又はレセプタクル56)における結合用挿入穴68部分を必要に応じて発光素子64(又は受光素子66)に対して所定の状態に偏芯して構成し、この結合用挿入穴68の内部に挿入部58A(挿入部60A)を挿入してバット結合で結合したときに、発光素子64(又は受光素子66)側に設定される光路の中心線としての光軸と、光ファイバ62のコアの中心線としての光軸とを平行に所定量偏芯した状態を保ってバット結合するように構成する。
【0046】
このように構成した図3に示すモード選択手段である光学素子と光伝送媒体との伝送エラー減少用光結合構造では、光ファイバ62の入射面における発光素子64から照射されたレーザビームの照射範囲Rと、光ファイバ62のファイバコアの端面Cとが図4に例示するようにシフトし、レーザビームの照射範囲Rとファイバコアの端面Cとが重なった部分に対応して選択された、伝送エラーの許容範囲内に収まるような単数又は複数のモード群であるモード選択群の光信号だけを取り出して、光ファイバ62で伝送することができるから、これを用いた光伝送装置で伝送エラーを減少させることができる。
【0047】
(第2実施の形態)
次に、本発明に関する第2実施の形態について、図5乃至図7を参照しながら説明する。
【0048】
本第2実施の形態では、光結合手段を構成するためのトランスミッタ50側のレセプタクル52(又はレシーバ54側のレセプタクル56)として、集光レンズ80を設置したものを用いる。
【0049】
この集光レンズを用いたトランスミッタ50側のレセプタクル52(又はレシーバ54側のレセプタクル56)では、図5に例示するように、レセプタクル52(56)のハウジング82に設けた結合用挿入穴68の底部に導光開口84を穿設する。このハウジング82には、導光開口84より光学素子パッケージ70側に、集光レンズ80を配置する。
【0050】
このハウジング82には、集光レンズ80で集光される光路上に、光学素子パッケージ70を配置する。この光学素子パッケージ70は、メタルパッケージの内部底面上に発光素子64(又は受光素子66)を配置し、この発光素子64から発光されるマルチモード光ビームを透過させて外部に出射させる(又は光ファイバ62から出射されたマルチモード光ビームを透過させて受光素子66へ入射させる)ための窓部70Bを設けて構成する。この光学素子パッケージ70では、パッケージ70Aの底面から突出させた電極端子72によってトランスミッタ50の回路に接続されるように構成する。
【0051】
さらに、この集光レンズを用いた光結合手段では、集光レンズ80の光学素子パッケージ70側に隣接して伝送エラー減少手段を構成する開口制限部材100を配置する。この開口制限部材100は、遮光板に、伝送エラーの許容範囲内に収まるような単数又は複数のモード群をモード選択群の光信号として選択して取り出せるような所定形状で所定の大きさを持つ開口102を穿孔して構成する。
【0052】
このように構成した開口制限部材100は、その周端辺を、ハウジング82における集光レンズ80を設置した開口内周面に固着して配置する。なお、この開口制限部材100は、光学素子パッケージ70の窓部70B側、又は集光レンズ80より光ファイバ62側に配置しても良い。
【0053】
また、図示しないが、レシーバ54側のレセプタクル56は、発光素子64の代わりに受光素子66を設置する以外の構成を、トランスミッタ50側のレセプタクル52と同等に構成する。そして、レセプタクル56に設置する開口制限部材100では、光ファイバ62の端面から出射された光信号を開口制限部材100の遮光板部分に穿孔した開口102に当てることによって、伝送エラーの許容範囲内に収まるような単数又は複数のモード群であるモード選択群の光信号を、集光レンズ80を介して開口102から受光素子66へ出射させる。なお、この開口制限部材100に設ける開口102は、光ビームを透過させる透過窓として構成しても良い。
【0054】
このように構成された入力用のプラグ58(又は出力用のプラグ60)は、その挿入部58A(又は挿入部60A)を結合用挿入穴68内に挿入して、レセプタクル52(又はレセプタクル56)へ結合する。
【0055】
また、レセプタクル52(又はレセプタクル56)と、これに結合される入力用のプラグ58(又は出力用のプラグ60)との間に配置される、伝送エラー減少手段を構成する開口制限部材100は、その開口102の形状及び大きさを実験で求めて適正なものに設定する。
【0056】
さらにこの光伝送装置では、トランスミッタ50のレセプタクル52、又はレシーバ54のレセプタクル56の少なくとも一方に、開口制限部材100を設けるように構成しても良い。
【0057】
次に、モード選択手段である、伝送エラーを減少するための光学素子と光伝送媒体との伝送エラー減少用光結合構造の他の構成例について、図6により説明する。
【0058】
この図6に示すモード選択手段である、光学素子と光伝送媒体との伝送エラー減少用光結合構造では、光学素子側の光束の中心線としての光軸と、光ファイバ62のコアの中心線としての光軸とを平行な状態を保ってシフトさせる(偏芯状態とする)ように構成する。
【0059】
すなわち、図6に示すモード選択手段である、光学素子と光伝送媒体との伝送エラー減少用光結合構造では、レセプタクル52(又はレセプタクル56)における結合用挿入穴68部分を必要に応じて発光素子64(又は受光素子66)に対して所定の状態に偏芯するよう構成すると共に、レセプタクル52(又はレセプタクル56)内に配置する集光レンズ80及び光学素子パッケージ70を、必要に応じて光ファイバ62に対して所定の状態に偏芯するよう構成する。
【0060】
このように構成した図6に示すモード選択手段である、光学素子と光伝送媒体との伝送エラー減少用光結合構造では、結合用挿入穴68の内部に挿入部58A(挿入部60A)を挿入して結合したときに、発光素子64(又は受光素子66)側に設定される光路の中心線としての光軸と、光ファイバ62のコアの中心線としての光軸とを平行に所定量偏芯した状態を保って結合する。
【0061】
このように構成した図6に示すモード選択手段である、光学素子と光伝送媒体との伝送エラー減少用光結合構造では、光ファイバ62の入射面における発光素子64から照射されたレーザビームを集光レンズ80で集光して照射した照射範囲Sと、光ファイバ62のファイバコアの端面Cとが図7に例示するようにシフトし、を集光レンズ80で集光して照射した照射範囲Sとファイバコアの端面Cとが重なった部分に対応して選択された、伝送エラーの許容範囲内に収まるような単数又は複数のモード群であるモード選択群の光信号だけを取り出して、光ファイバ62で伝送することができるから、これを用いた光伝送装置で伝送エラーを減少させることができる。
【0062】
なお、本第2実施の形態における以上説明した以外の構成、作用、及び効果は前述した第1実施の形態と同様であるので、同一部材には、同一の符号を付すこととして、その詳細な説明を省略する。また本発明は前述した第1又は第2実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、その他種々の構成を取り得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明のモード選択手段を用いた光伝送装置の要部を示す概略構成説明図である。
【図2】本発明の第1実施の形態に係わるモード選択手段である、光学素子と光伝送媒体との結合状態を示す説明図である。
【図3】本発明の第1実施の形態に係わるモード選択手段である、光学素子と光伝送媒体と他の構成例における結合状態を示す説明図である。
【図4】本発明の第1実施の形態に係わるモード選択手段である、光学素子と光伝送媒体との光結合構造の他の構成例における、光ファイバの入射面におけるレーザビームの照射範囲と、ファイバコアの端面とのシフトした状態を示す説明図である。
【図5】本発明の第2実施の形態に係わるモード選択手段である、光学素子と光伝送媒体と結合状態を示す説明図である。
【図6】本発明の第2実施の形態に係わるモード選択手段である、光学素子と光伝送媒体との他の構成例における結合状態を示す説明図である。
【図7】本発明の第2実施の形態に係わるモード選択手段である、光学素子と光伝送媒体との光結合構造の他の構成例における、光ファイバの入射面におけるレーザビームの照射範囲と、ファイバコアの端面とのシフトした状態を示す説明図である。
【図8】従来のデジタル機器を相互に接続してデジタル光通信を行なう光送信システムを例示する説明図である。
【図9】従来の光学的にかつ機械的に着脱可能な光ファイバ接続装置を例示する説明図である。
【符号の説明】
【0064】
50 トランスミッタ
52 レセプタクル
54 レシーバ
56 レセプタクル
58 入力用のプラグ
58A 挿入部
60 出力用のプラグ
60A 挿入部
62 光ファイバ
64 発光素子
66 受光素子
68 結合用挿入穴
70 光学素子パッケージ
80 集光レンズ
82 ハウジング
84 導光開口
100 開口制限部材
102 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子から出射した複数モードの光信号を光伝送媒体を介して伝送し、受光素子へ受光させる光伝送方法であって、
前記発光素子から出射した複数モードの一部のモードを選択して前記光伝送媒体へ入射するとともに、
前記選択される一部のモード間の前記光伝送媒体中の伝搬時間差が、伝送エラーを許容範囲に収めることができる範囲であることを特徴とする光伝送方法。
【請求項2】
複数モードの光信号を出射する発光素子と、
光信号を伝送する光伝送媒体と、
光信号を受信する受光素子とを備える光伝送装置において、
前記複数モードの光信号の一部のモードを選択するモード選択手段を有し、
前記モード選択手段を、前記発光素子と前記光伝送媒体の間又は、前記光伝送媒体と前記受光素子の間に備えたことを特徴とする光伝送装置。
【請求項3】
前記モード選択手段は、前記発光素子が出射する複数モードのうち、前記光伝送媒体中の伝搬時間差が、伝送エラーを許容範囲に収めることができる一部のモードを選択するものであることを特徴とする請求項2に記載の光伝送装置。
【請求項4】
前記モード選択手段は、前記発光素子又は前記光伝送媒体から光放射される前記モード選択手段における光放射面のうち、前記光伝送媒体中の伝搬時間差が、伝送エラーを許容範囲に収めることができる一部のモードが存在する位置に開口又は窓を有する部材であることを特徴とする請求項2に記載の光伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−157811(P2006−157811A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−348818(P2004−348818)
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】